假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

海賊戦隊ゴーカイジャー1話「宇宙海賊現る」


炎神戦隊ゴーオンジャー 〜ゴーオンレッド江角走輔 &ゴーカイ#35〜36
五星戦隊ダイレンジャー 〜リュウレンジャー天火星・亮 &ゴーカイ#33
超力戦隊オーレンジャー 〜オーレッド&オーピンク &ゴーカイ#31
超獣戦隊ライブマン総論 〜イエローライオン大原丈
鳥人戦隊ジェットマン総論 〜ブラックコンドル結城凱
忍風戦隊ハリケンジャー シュシュッとTHE MOVIE 〜絶賛合評 &ゴーカイ#26
救急戦隊ゴーゴーファイブ 〜前半総括・1999−9955!?
救急戦隊ゴーゴーファイブ 〜前半合評・ゴーピンク巽マツリ & 7月の傑作群!
轟轟戦隊ボウケンジャーVSスーパー戦隊 〜アカレッド! &ゴーカイ#21
轟轟戦隊ボウケンジャー 〜30作記念にふさわしいか!?
星獣戦隊ギンガマン 〜6人目・黒騎士ヒュウガ! &ゴーカイ#20
爆竜戦隊アバレンジャー前半合評 〜アバレキラー登場! &ゴーカイ#17
激走戦隊カーレンジャー 〜戦う交通安全! &ゴーカイ#14
女シンケンレッド志葉薫姫・スーツアクター大研究! &ゴーカイ#11〜12
百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊 〜&ゴーカイ#9
獣拳戦隊ゲキレンジャー最終回 〜後半肯定評 &ゴーカイ#7
特捜戦隊デカレンジャー#37「ハードボイルド・ライセンス」 &ゴーカイ#5
魔法戦隊マジレンジャー THE MOVIE インフェルシアの花嫁 〜絶賛合評・再UP!
スーパー戦隊シリーズ 〜全記事見出し一覧


 『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)今回の#37「最強の決戦機」〜翌週の#38「夢を掴む力」の前後編では、歴代戦隊の“大いなる力”ならぬ、ゴーカイジャー自身の“大いなる力”が発動して、後編ではハデハデな最強ロボ・カンゼンゴーカイオー(日本語の冠言葉じゃねーか!?・笑)が登場するそうで。


 戦隊シリーズはいつぞやのころから――『光(ひかり)戦隊マスクマン』(87年)のころとも、戦隊巨大ロボが初登場した『バトルフィーバーJ』(79年)のころからとも、商業誌のスタッフインタビューでも2種の証言があり判然としない(笑)――、初登場回や2号ロボや新メカ初登場編などを除き、特撮班ではなく本編班がスタジオ内にて巨大ロボ戦も担当している。
 それでも90年代前中盤から、当時の若手の渡辺勝也カントク回ではパターン破り的に、ガラス張りの壁面を含むミニチュアのビル群をロケに持ち出しての自然光のもとでのオープン撮影で、巨大感あふれる戦隊ロボ戦を果敢に試みてくれていたものだった。


 そして今やベテランの渡辺勝也カントクが2010年代に改めて挑む、『超獣戦隊ライブマン』(88年)中盤に登場するギガボルトや『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)終盤のベロニカのごとく、最初から巨大ロボとして登場する最強の決戦機・グレートワルズのオープン撮影!
 オッサンオタクとしては感無量(笑)。


 ところで、ミもフタもなく云っちゃうと、このテのヒーローものの常で、基本設定を説明的に描いていくことも宿命付けられているメインライターの作品より、良くも悪くもそのようなしがらみ抜きに変化球を投げたり、脇役に意外なドラマ性や肉付けをすることに専念できる――しかしそれは冷静に見れば、ゼロから構築したものではなく、アレンジャーとしての手腕でもある――サブライターの作品の方が一般的には、われわれ“大きなお友だち”としては面白かったり見応えがあったりもする。


 その伝で行くと、マヌケで弱いバカ殿(笑)である殿下ことレギュラー敵幹部ワルズ・ギルの、自身の立場も弱い実力も実は自覚していて、そのことに屈折や怒り・鬱憤も覚えていて、それをついに爆発させて、メカロボ(?)幹部であり忠誠心しか持たない(?)バリゾーグにだけは心を許している描写などには、哀れで敵キャラながらも同情を誘われてしまう。
 ま、それがメインライターではない脚本家・下山健人(しもやま・けんと)氏の欲張った狙いでもあったのでしょうから、その狙いにマンマとハマってるんですが。


 ただし、人生経験のない未就学児童の“小さなお友だち”にはほとんどわからないであろう心情描写でもあることは付け加えておこう。
 もちろん児童はともかく幼児にわからなくても、タイクツさせない点描程度ならば、このテの描写はシリーズ後半には入れてもイイだろう。それを入れ過ぎても、あるいはそれがシリーズ前半だったりしたら、作風がクラくなりすぎちゃうかもしれないのでアレですが。


 ただし、スーツアクターや声優陣、現場の撮影スタッフ的には、リキが自然と入っちゃうようなシーンではなかったかと(笑)。 


 とカコつけて、ムリクリだけど、『海賊戦隊ゴーカイジャー』#1合評をUP!



海賊戦隊ゴーカイジャー#1 〜合評1

(文・J・SATAKE)

海賊戦隊ゴーカイジャー 〜序盤評

(2011年3月6日執筆)
 昨2010年を振り返ると、一般・マニア共に好評であった『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)の一人勝ちという印象が強い。
 前作『侍(さむらい)戦隊シンケンジャー』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090712/p1)の反動や、世界観の広がりが感じられない=こじんまりとした印象の『天装戦隊ゴセイジャー』(10年)。
 支持盤石(ばんじゃく)の拡大ができずに苦戦する『ウルトラ』。
 今年2011年はいかに巻き返しをはかるか期待したいところ。


 その目玉となるのか? 35作記念の『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)が放映開始。
 マンガ・アニメで大人気の『ワンピース』からのいただき(?)の「海賊」プラス「スーパー戦隊」それ自体をモチーフとした、名前通り豪快な企画!!
 手法としては平成ライダー10周年記念作『仮面ライダーディケイド』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090308/p1)という先例があるので、インパクトは少々薄まってはしまうが、第1話の冒頭部分、敵宇宙艦隊の大部隊を相手にする歴代スーパー戦隊の面々が入れ乱れての活躍には心動かされずにはいられない!!
 チームのワクを外れて獣モチーフしばりや忍者モチーフしばりで戦うメンバー!!


 マニア的にはヒーローだけでなく大艦隊を迎え討つ戦隊巨大ロボのシーンがほしかった! とか、あれ? 『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031111/p1)の白の戦士アバレキラーはお亡くなりになってたんじゃ……とか、『超新星フラッシュマン』(86年)の5人は反フラッシュ現象で地球にはいられなくなったんじゃなかったっけ……
 などなど「レジェンド大戦」のシーンには長年のマニアは色々と言いたくなる気持ちもあるわけだが(笑)。


 元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)のアカレンジャー誠直也(まこと・なおや)氏の特別出演!(声のみでしたが))の号令の元、全ての力を結集したパワーによって大部隊を一掃!!
 ……しかし皆の姿は哀れ「鍵(かぎ)」(?)に……という段取りを見せて新ヒーローの活躍を描く。


 Aパート冒頭から宇宙空間で艦隊を撃破する海賊船=戦隊巨大ロボ!!
 目まぐるしくグルグル回転して『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説THE MOVIE』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)ばりにスピーディーなバリバリのCGアクションだったが、第2話の戦隊ロボット合体シーンはミニチュアワークと着ぐるみによる重量感あるものでメリハリをつけている!


 海賊船のカーゴから発進するビークルたち4台も良くできていた!
 『魔法戦隊マジレンジャー』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060313/p1)の巨大ロボ・マジキングと同様に、合体完了後に巨大ロボ・ゴーカイオーが海賊の特徴的な帽子をかぶるのもグッド!!
 胸の大砲が古式な丸い鉄球形なのもベタですが当然でしょう!


 5人のメンバーもなかなか!
 ジャニーズSMAP(スマップ)・香取慎吾にも少し似ている不敵なキャプテン・マーベラス=ゴーカイレッド。
 定番・クールなゴーカイブルー。
 メカに強いが気が弱いゴーカイグリーン。
 少し加藤夏希嬢似の強気なゴーカイイエロー。
 お姫様のゴーカイピンク。


 海賊を名乗ってはいるものの、ザンギャックの侵略に怒りを覚える彼らの戦いはスマート&クール。
 クラシカルな銃を形取ったデザインのゴーカイガンと、これまた海賊イメージの強い幅広の短剣デザインのゴーカイサーベル。
 状況に応じて仲間同士で得物を投げあって交換しながら雑兵を倒していくアクションが特徴的!


 そして今作の目玉、鍵(過去の戦隊ヒーローを形取ったレンジャーキー)を使って、歴代の戦隊メンバーにチェンジしてのアクション!
 第1話では年輩マニアには懐かしの元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』に変身して必殺技・ゴレンジャーストームが登場!  
 戦隊メンバー間のボールパスをCGで描いたのは最先端ながら、ボールがなぜか清掃車(笑)に変形して雑兵を吸い込んで走り去るくだりは、オリジナルの毎回ナンセンスな物体に変化するギャグ精神をしっかりと受け継いでいてGood!!


 しかし初めて見る子や若い特撮マニアたちに、このシュールさ(トンデモ感)こそ『ゴレンジャー』の特徴であることが伝わったかどうか……。


 「ここらでザコはひとまとめにするか!」
 「ゴミそうじといきますか!」


 みたいにメンバーの茶目っ気ある一言があれば、まだしも伝わったかな。



 さらに魔法戦隊マジレンジャー侍戦隊シンケンジャーとキーを使って次々とチェンジすることでゴーカイジャーの特徴を印象付け、自らの必殺技・ファイナルウェイブで5人が一斉にサーベルを降り下ろしトドメを刺す!!
 ――『仮面ライダーオーズ』(10年)の串田アキラ氏に負けじと、ナレーターでもある関智一(せき・ともかず。『ウルトラマンゼロTHE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年)でヒーロー・グレンファイヤーを演じたばかり!)氏が巻き舌で音を伸ばしてうなり声を上げるアイテムボイス! これもなかなか良いですな――



 お礼を告げる保育園児と保母さん(あの歳で35年前のゴレンジャーを知っているとは……マニアだね!・笑)に対して、


 「(サンギャックの侵攻の被害でスナックサファリの)カレーを食べられなかったから……」


 で助けたつもりはない……


 と偽悪的で素っ気ないゴーカイレッド。


 このあたりにも本作のチームカラーが感じれられて良いラストだ。


 (スナックサファリも当然、『ゴレンジャー』や『太陽戦隊サンバルカン』(81年)の飲食店を模したアジトでのイエローのカレー好きと掛けている……マニア上がりの脚本家・荒川稔久氏のこだわりもナイス!)



 一つ苦言があるのは、戦隊キャラ紹介のテロップが大きく入らないこと。
 主人公チームの映像とテロップはオープニング主題歌で毎回きちんと見せて、名前と顔を覚えてもらいやすくして、敵キャラも初めの数回は該当映像にテロップを入れてもらいたいですな。それだけで視聴者への浸透度もずいぶん違ってくると思うので……。


 エンディング曲は戦隊かぞえ歌!
 昨2010年度の関東ローカル日曜朝6時半から放映されていた『スーパー戦隊VS(バーサス)劇場』のように、現役戦隊メンバーが歴代それぞれのチームコスプレで登場!
 歌詞もワンフレーズで特徴を紹介するもので――『鳥人戦隊ジェットマン』(91年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110905/p1)が「トレンディ戦隊」って……どうなのよ!!――、CDで発売される曲仕様はどうなるのか楽しみ(?)ではあります。


 そしてこれからの注目は、歴代キャストのゲスト出演!
 早くも第3話では元マジレッドの小津魁(おづ・かい)が魔法使いの黒衣姿で登場して、いやが上にも期待が高まる!
 ヒーローだけでなく、戦隊巨大ロボにも往年の戦隊メカとのコラボレーション・合体という要素があるので、物語の展開と共に楽しみにしたいところだ。


(了)


 (ヤボな編註:『ジェットマン』をはじめて「戦うトレンディドラマ」と評した(ネタにした)のは
 ――トレンディドラマとは、90年前後のバブル期に大流行した当時の最先端の流行(トレンド)をまとったオシャレな男女の恋愛ドラマを指す言葉――、
 80年代後半〜90年代にあまたのアニメ・特撮雑誌やいくたの同人誌の読者投稿欄のネタ投稿で常連として一部に名をはせて、弊同人誌にもご寄稿をいただいていた畏友・戸島竹三氏。現在は主に特撮同人誌『ゴジラガゼット』誌でご活躍。
 当時も広く薄く引用されていたと記憶するけど、初出は『アニメージュ』誌の投稿欄ではなかったかしら?
 もちろんウチワウケ的に持ち上げようというのではなく、氏がレッテルしなくても、自然発生的にこのあだ名が付いたろうとも思いますけれど。
 それら『ジェットマン』の出来事ももう20年も前のことですが(汗)。


 いや、実は企画書にそのフレーズがすでに書いてあったとなるとアウトですけど・笑)


(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2011年春号』(11年5月1日発行)『海賊戦隊ゴーカイジャー』序盤合評1より抜粋)

 

海賊戦隊ゴーカイジャー#1 〜合評2

(文・鷹矢凪弥寿士)

海賊戦隊ゴーカイジャー』開巻評

 “スーパー戦隊シリーズ”の記念すべき第35作として「豪快に」《旗揚げ》したのは『海賊戦隊ゴーカイジャー』だ。


 既に御存知と思うが、ゴーカイジャーには大きな特徴がある。
 歴代34のスーパー戦隊のヒーローたちに変身することが可能なのだ。
 彼らがプレビューを兼ねて客演した映画『天装〈てんそう〉戦隊ゴセイジャーVS(たい)シンケンジャー エピックON〈オン〉銀幕』[11]――以下、本文の猥雑化を防ぐため、便宜上『ゴセイVSシンケン』と表記――で、早速それは披露された。
 これは、アニバーサリー〈記念〉シリーズ&チームならではの趣向と言えよう。


 その代り、21世紀以後の“戦隊”ではお馴染みだった見せどころの幾つかを敢えて取り払っている点も、却〈かえ〉って潔い。


※ヒーローが纏〈まと〉うシンボルカラーのユニフォーム(カラーは生かされているが、形はバラバラ)
※名乗り時のキャッチフレーズ
※人間の司令官・もしくは後見役(異世界・または異星の人間、「元・人間」含む)
※人面を出した敵幹部
※ED〈エンディング〉歌曲でのダンス

 
 さらに、「メンバー全員が宇宙から来た人間」というのも、大きな特徴のひとつである。
 「メンバーの誰かが宇宙人」或〈ある〉いは「宇宙人の末裔〈まつえい〉」は、従来にもあった。


 前者は『未来戦隊タイムレンジャー』[00・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001102/p1]のシオン=タイムグリーン〔演:倉貫匡弘〈くらぬき・まさひろ〉〕――未来戦争で滅びた“ハバード星人”の生き残り――、後者は『電子戦隊デンジマン』[80]のデンジマン――“ベーダー一族”に故郷を滅ぼされ、地球に漂着した“デンジ星人”の末裔――が挙げられる。


 だが、「メンバー全員が『当初から』宇宙人」は『ゴーカイジャー』が初となる。
 《『超新星〈ちょうしんせい〉フラッシュマン』[86]のフラッシュマンも宇宙から来たチームだが、物語中時間の20年前に宇宙へ拉致されてフラッシュ星系で育った子どもたちが成長した姿ゆえ、れっきとした地球人である。
 また前作『天装戦隊ゴセイジャー』[10]のゴセイジャー=護星天使たちも人間ではないが、彼らが住んでいた“護星界”〈ごせいかい〉も、地球から生まれた世界なので、本文では慮外視する》

 
 しかも彼らの目的は「地球を守ること」ではない。「地球にあるという“宇宙最大のお宝”を手に入れること」なのである。
 『海賊戦隊』と名乗る所以〈ゆえん〉とも見られるが。


 そんな彼らは、いかなる「船出」を迎えたのか……?
 取り敢えず見て行こう。

 
 なお、各段落・各項目の冒頭の記号には、以下の意味を持たせている。


1.番組の要素を以下の通りに分類する。
   ○●=人物
   ☆★=ストーリー
   □■=敵キャラ
   ◇◆=バトル
   △▲=その他


2.各要素にて気になった点に関し、白黒別の二評価に基づき詳細な感想を綴る。
 〔例:☆=ストーリーで良かった点
    ★=ストーリーで惜しかった点
    〈「悪かった点」ではないので誤解なきよう〉〕


3.必ずしも全ての項目ではなく、特に目を惹いた点に限る。


#1「宇宙海賊現る」

〈脚本:荒川稔久/監督:中澤祥次郎〉


☆本作の発端、そして根幹を成す大前提=“レジェンド大戦”が語られる。


 全宇宙征服を企む“宇宙帝国ザンギャック”が地球を襲ってきた。それに立ち向かったのは、「愛と夢と平和、人々の笑顔を守ってきた」34のスーパー戦隊だった。
 地球初のスーパー戦隊秘密戦隊ゴレンジャー』[75]のリーダー・アカレンジャー〔声:誠直也〈まこと・なおや〉〕の号令で、スーパー戦隊は全ての力を結集し、ザンギャックを撃退した。その代償に彼らは力を失い、伝説となった……。


 34のスーパー戦隊・計182人〈注1〉が入り乱れて戦う姿は、やはり壮観であった。
 同じく今年=2011年にアニバーサリーイヤーを迎えた日本特撮シリーズの両雄=「ウルトラマン」[66〜]・「仮面ライダー」[71〜]各シリーズの総人数(名前が明確な者のみ)を遥〈はる〉かに上回るメンバーが、画面狭しと駆け巡り、戦うのである。コレだけでも結構凄いことだ。


 “戦隊”の場合、基本的に5人編成で、途中で2〜3人増える場合もある上、36年間ほぼ途切れず続いていた――『ジャッカー電撃隊』[77]終了[77/12末]から『バトルフィーバーJ〈ジェイ〉』(以下便宜上『BFJ』と表記)[79]開始[79/2初]まで、約1年だけブランクがあるが――ため、当然とも言えるけど。


 “戦隊”の物語世界は、ごく一部を除き基本的に独立した存在である――Vシネマ&劇場映画の「スーパー戦隊VSシリーズ」[96〜]は別格として――ため、本来なら有り得ない現象なのだが、「すべてのスーパー戦隊が同じ地球で時間軸通りに活躍した世界」と解釈すれば良いだろう。〈注2〉


 ここで注意したいのは、スーパー戦隊の戦士たちは「力を失った」だけで「死んだ」とは言われていないことである。


 つまり、このシリーズが進めば、レジェンド戦士たちの素顔での出演もあり得る……ということなのだ。今後への期待が膨らむ。

 
 それはTVシリーズに続き、劇場映画版『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』[11/6/11]――以下同じく『映画ゴーカイ199』――で、一層凄いプレゼントとして現実化したのだが……。


アカレンジャーの声は、オリジナル『ゴレンジャー』でのアカレンジャー/海城剛〈かいじょう・つよし〉役=誠直也〈まこと・なおや〉氏が務められた。
 元祖戦隊ヒーロー33年ぶりの帰参に、感激した古参“戦隊”ファンは多かろう。


 誠氏は、円谷プロダクション制作の特撮巨大ヒーロー『ファイヤーマン』[73]でも主人公の岬大介〈みさき・だいすけ〉/地底人ミサキー=ファイヤーマンとして主演された。
 また、『爆竜〈ばくりゅう〉戦隊アバレンジャー』[03]の『劇場版 爆竜戦隊アバレンジャーDELUXE〈デラックス〉 アバレサマーはキンキン中!』[03・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031112/p1]では、爆竜たちの故郷=“ダイノアース”――太古に我々の地球と分離し、恐竜が絶滅せず超生命体“爆竜”として進化した、もうひとつの地球――の賢者・アクガルを演じられた。


 他の代表作としては、東映の刑事ドラマ『特捜最前線』[77〜86]の吉野竜次〈よしの・りゅうじ〉巡査長(のち巡査部長)役(#1〜435)がある。
 《以前書いたように、『特捜最前線』には特撮映画・特撮ドラマ主演経験者が数多く刑事としてレギュラー出演されていたため、特撮ファンからは『「特撮」最前線』とも呼ばれていた》。

 
 なお誠氏は、特撮ヒーロー番組史上初の「巨大ヒーローと人間大ヒーローの両方に変身した《※》主演俳優」にして、11年現在では唯一の俳優である。〈注3〉

 
 《※“戦隊”を別格にして、主人公格キャラが複数いる場合、タイトリングされているヒーローに限る》〈注4〉

 
☆時は流れ、宇宙を進む巨大な赤い帆船〈はんせん〉があった。
 それに乗り込んでいるのは、5人の若い男女。
 地球を見つけた彼らは、口々に感想を述べる。


 そこで暮らす人々に思いを馳せる者。
 宝石にしか見えないと笑う者。
 彼らは、地球にある“宇宙最大のお宝”を捜しに来たのだ。
 心配げな仲間たちに、船長らしい男がハッパをかける。


船長「上手〈うま〉くかかりゃ良い。それが……海賊ってもんだろ?」


☆そして、ナレーションが入る。

 
ナレーター「冒険とロマンを求めて、宇宙の大海原〈おおうなばら〉を駆ける若者たちがいた。宇宙帝国ザンギャックに叛旗〈はんき〉を翻〈ひるがえ〉し、海賊の汚名を誇りとして名乗る豪快な奴ら。その名は……!

『海賊戦隊!! ゴーカイジャー!!!!』」


 ナレーターの関智一〈せき・ともかず〉氏は、巨大ロボットアニメ『機動武闘伝〈きどうぶとうでん〉G〈ジーガンダム』[94]の主人公=ドモン・カッシュのような熱血キャラから『ドラえもん』新第2期[05〜]の骨川〈ほねかわ〉スネ夫のようなワガママだがどこか憎めないキャラまで、幅広くこなす人気声優。
 熱心な特撮ファンとしても知られ、今回の起用に意欲を燃やされているという。


 “戦隊”では『超力〈ちょうりき〉戦隊オーレンジャー』[95・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110926/p1]の敵=“マシン帝国バラノイア”の皇子〈おうじ〉ブルドント及びその成長態カイザーブルドントでのレギュラーを始め、多くの作品にCV〈シーブイ=キャラクターボイス〉としてゲスト出演。〈注5〉
 本作では変身時の音声も担当され、ゴーカイジャーの特性強調に貢献されている。

 
ゴーカイジャーのメンバーは、以下の通りだ。


 長身で落ち着いているが鋭さを醸し出す男、ジョー・ギブケン〔演:山田裕貴〈やまだ・ゆうき〉〕=ゴーカイブルー。
 活動的だが財宝に目がない女性、ルカ・ミルフィ〔演:市道真央〈いちみち・まお〉〕=ゴーカイイエロー。
 理知的そうだが臆病な男、ドン・ドッゴイヤー/通称「ハカセ」――以後、基本的呼称は「ハカセ」で統一――〔演:清水一希〈しみず・かずき〉〕=ゴーカイグリーン。
 物腰上品で口調も丁寧〈ていねい〉だが天然ぽい女性、アイム・ド・ファミーユ〔演:〔演:小池 唯〈こいけ・ゆい〉〕〈注6〉=ゴーカイピンク。
 そして、ドッシリ構えているがワイルドな雰囲気漂うキャプテン・マーベラス〔演:小澤亮太〈おざわ・りょうた〉〕=ゴーカイレッド。


 彼らは赤い帆船=“ゴーカイガレオン”、更にそれが変形し他のマシンと合体した――あとで詳述する――もうひとつの姿=巨大ロボット・“ゴーカイオー”を駆り、地球に迫りくるザンギャック軍を一蹴した。
 僅〈わず〉かな間でゴーカイジャー各人の性格や戦力を強烈に印象づけるセリフ回しや画面構成は、流石〈さすが〉と言えよう。


☆地球の東京のビルの屋上に降り立ったゴーカイジャー
 まずマーベラスが、人々に拡声器で「お宝の在りかを教えろ!」と迫る。


 彼の高飛車さを見かねたアイムが引き継ぎ、穏やかに訊〈たず〉ねる。
 でも、サラリーマンやOLの皆様は誰も知らないらしい(笑)。


 取り敢えずメシだ、とルカの指環を宝石屋で換金して「スナック・サファリ」のカレーを食べようとする海賊たち。
 これまた古参“戦隊”ファンならニヤリの店名だろう。そう、『太陽戦隊サンバルカン』[81]に登場した、サンバルカンのアジト……というより溜まり場にして秘密基地への入口に繋がるカレースナックだ。
 もちろんオリジナルとの関連は定かではない。

 
 ちなみに、『ゴレンジャー』でも同じようにゴレンジャーの“アジト”として、カレースナック「ゴン」が登場した。大岩大太〈おおわ・だいた〉〔演:畠山 麦〈はたけやま・ばく〉――夭逝〈ようせつ〉が惜しまれる――〕=キレンジャーがカレー好き故「ゴン」の常連だった件は、当時からのファンには懐かしい。

 
 だが、そこへザンギャックが襲撃してくる。
 先ほど彼らが撃破したのは、先遣隊に過ぎなかったのだ。


□再び地球に目をつけ、帝国の領域に組み込もうと狙うザンギャック軍。
 その構成は、以下の通りだ。


・皇帝の息子で、白鳥を思わせる優雅な出で立ちだが、傲岸不遜〈ごうがんふそん〉・冷酷非情な司令官ワルズ・ギル〔声:野島裕史〈のじま・ひろふみ〉〕。
・赤銅色の鎧に身を包んだ屈強そうな体格と、慇懃無礼〈いんぎんぶれい〉さを具える参謀長ダマラス〔声:石井康嗣〈いしい・こうじ〉〕。
・毒草を思わせる妖しげな佇〈たたず〉まいと、穏やかだが陰険さ漂う口調の開発技官インサーン〔声:井上喜久子〈いのうえ・きくこ〉〕。
・無気味さを滲ませる骸骨〈ガイコツ〉風な銀のボディを持つ寡黙な特務士官バリゾーグ〔声:進藤学〈しんどう・がく〉〕。〈注7〉


 前々作『侍戦隊シンケンジャー』[09]及び前作『天装戦隊ゴセイジャー』[10]に続き、今回も顔出しの幹部はいない。しかし、声だけでも十分存在感溢れる面々である。
 悪の幹部たちのネーミング由来は、それぞれ


・「悪過ぎる」
・「黙らす」
・「陰惨〈いんさん〉」
・「罵詈雑言〈ばりぞうごん〉」


 あくまで子供番組である本シリーズらしいダジャレと皮肉の利いた命名だ(笑)。

 
 ところで、ザンギャック4幹部は鳥がデザインモチーフという説もある。
 あくまで私のイメージだが、


・ダマラス=ワシ、
・インサーン=クジャク
・バリゾーグ=フクロウ……


 といったところだろうか。

 
□ザンギャックの行動隊長・シカバネン――もちろん、ネーミング由来は「屍〈しかばね〉」――〔声:太田哲治〈おおた・てつはる〉〕が、下級戦闘員・ゴーミンや上級戦闘員・スゴーミンとともに街を蹂躙〈じゅうりん:「ふみにじる」〉する。
 人々は逃げ惑うが、奴らの凶弾や凶刃〈きょうじん〉を浴びて、次々と斃〈たお〉れていった。


 ゴーミンとスゴーミンのネーミング由来は、それぞれ「ゴミ」・「凄〈すご〉み」か?
 さらにシカバネンと合わせて「ザンギャックの行く手を妨げるものは悉〈ことごと〉く屍やゴミと化す」という恐ろしい暗喩も見受けられる。


 幼稚園児数人と、その先生と思われる女性の保母さんふたりに銃を向けるシカバネン。悲痛な表情を見ても、寧〈むし〉ろ嬉しそうだ。
 弱いものを徹底的にいたぶり、子どもであっても一切容赦しない……文字通りの「残虐」さに、視聴者の怒りが募〈つの〉る。
 近年の“戦隊”では放送倫理などもあり珍しくなった大量殺戮〈さつりく〉描写――幾分ソフトになってはいるが――と合わせて、和解など有り得ない絶対的な“悪”として、ザンギャックは強烈に印象付けられる。


☆そんな状況を見詰める若き海賊たち。冷めてはいるが、僅かな憐〈あわれ〉みも浮かぶ。
 特に、やはり故郷をザンギャックに滅ぼされたらしいアイムの瞳は、悲しげに揺れている。


 #8で明言されるが、アイムには「その星の姫君だった」という背景がある。彼女の柔らかな言動は、そうした出自から来るものだろう。


 しかしマーベラスだけは、

 
マーベラス「気に入らねェな……」

 
 と呟き、ゆっくりと歩み出した。


 それで火がついたかのように、他の仲間4人も船長に従う。


○シカバネン「見逃してやるから、とっとと消えろ!」

 
 シカバネンが脅しても、海賊たちは怯〈ひる〉まない。


ルカ「うっさい、バーカ!」


ジョー「消えるのは、お前らの方だ!」


アイム「あなたたちの言うことを聞く耳など、ありません」


ハカセ「僕も、お前らみたいなの、大っ嫌いだ!」


マーベラス「気に入らねェ奴らは、ぶっ潰〈つぶ〉せ。それが……海賊ってもんだろ?」


 5人はおもむろに携帯電話型ツール“モバイレーツ”を取り出し、それに人型から変形した鍵を挿〈さ〉し、叫ぶ!


5人「ゴーカイチェンジ!!」


 彼らは、赤・青・黄・緑・桃色の特殊スーツ姿に変身した。


 海賊の兜〈かぶと〉のようなマスクと、同じくコートのようなスーツ、精悍な黒のアンダー。
 そして、交差した剣にハートともドクロともつかぬマークをあしらった、兜と胸の紋章。
 これこそ、彼らの戦闘モード=“海賊戦隊ゴーカイジャー”なのだ!


 彼らの姿を見て眼を見張り、


 「35番目のスーパー戦隊……?」


 と説明的な(笑)、でも格好良い台詞〈セリフ〉を呟く幼稚園の保母さん。伝説の健在を示す、痛快な演出だ。

 
ゴーカイジャーの変身シーンは、各人のシンボルカラーに彩られた3つの「X」と1つの「V」を象〈かたど〉ったオーラ(?)が次々飛んできて、メンバーの身体を潜り抜ける毎〈ごと〉にスーツが徐々に装着されていく――という形。
 「X」はローマ数字の「10」、「V」は「5」。
 即ち、彼らが「35番目」のスーパー戦隊であることを、シンボリックにアピールしているのである。


 また本文冒頭で書いたように、個人・チームいずれの名乗りでも、特徴や性格を現わすフレーズは告げられない。
 ポーズも、あまり大きい動作は取らない一方、名乗る毎にシンボルフラッグ〈旗〉がはためき、各シンボルカラーで軽く彩られた宇宙がバックとなっている。


 ゴーカイジャーの背景=「34のスーパー戦隊の力を受け継いで宇宙から飛来した、今までになくスケールの大きなチームである」を、シンプルかつ鮮烈に打ち出しているのだ。


◇ゴーカイレッド「派手にいくぜ!」


 ゴーカイジャーは、剣=ゴーカイサーベルと、銃=ゴーカイガンを自由自在に操り、ゴーミンやスゴーミンを次々に蹴散らしていく。
 手近なロープにぶら下がり、空中ブランコの要領で攻撃するゴーカイグリーン。アクロバティックな戦術が目を惹く。


 さらに彼らは、例の鍵型のアイテム=“レンジャーキー”を使い、伝説のスーパー戦隊に次々と変身していく!


 まずゴレンジャーになり、“ゴレンジャーハリケーン・ゴミ清掃車”を放つ。5色のラグビーボールがゴミ清掃車となり、戦闘員ゴーミンを吸い込み一掃する。


 そして、侍戦隊シンケンジャーの剣術、さらに『魔法戦隊マジレンジャー』[05]の魔法を駆使し、敵を討伐〈とうばつ〉していった。


 そして「面白い見せ物だった」と嗤〈わら〉いながら逆襲を図るシカバネンをものともせず、ゴーカイサーベルにレンジャーキーを刺し、決め技=“ファイナルウェイブ”を放つ! 刃〈やいば〉型のエネルギー波で敵を葬り去った!


 なお決め技“ファイナルウェイブ”には、武器の使い方により固有の呼称があるようだ。
 サーベル主体の場合は“ゴーカイスラッシュ”。
 ガン主体の場合は“ゴーカイブラスト”。
 サーベル・ガン混合の場合は“ゴーカイスクランブル”。
 ブラストはTV#3・スラッシュとスクランブルは『映画ゴーカイ199』で、それぞれ初呼称された。


 本文イントロで記した通り、ゴーカイジャーは本来の姿だけでなく、レジェンド戦隊にも変身できる。レンジャーキーは、多彩な変身を行なうための特殊アイテムだ。
 通常はゴーカイジャー及びレジェンド戦隊の形を模しているが、変身時にはカギに変形する。失われたはずのレジェンド戦隊の力が篭〈こ〉められているようである。
 ゴーカイジャーが如何にしてキーを手に入れたのか……ソレは、今後の物語で明かされていくだろう。
 取り敢えずは、重大な“鍵〈キー〉”として認識しておこう。〈注8〉


★戦いは、ひとまず終わった。
 だが、これでザンギャックにマークされる……とぼやきつつ、ゴーカイジャーはガレオンへ戻ろうとする。


 彼らに感謝する園児たちや保母さんたち。
 しかし海賊たちは、自分たちの目的は宝探しだから、礼など要〈い〉らない……と言い捨てて去っていく。


 ならば何故〈なぜ〉助けてくれたのか――と訊ねる人々に、マーベラス


 「カレーを食い損ねて腹が立っただけだ」


 と嘯〈うそぶ〉く。


 だが実際のところは、ザンギャックの非道ぶりを見ていて義憤した……とバレバレである。
 恩着せがましくしないためのポーズなのだろう。近年よく言われる“ツンデレ”的な言い回しが、逆に爽〈さわ〉やかな響きをもたらす。
 つい発揮してしまった正義感の反動で、照れ隠しめいた態度を執ったようにも受け取りができる。


 本エピソードは、ここで何のフォローもないまま幕を閉じる。素っ気ない締め括りだが、ゴーカイジャーの一筋縄で行かない“豪快さ”を見せつけて、不思議な余韻を呼んでいた。


△さて、本作もうひとつの重要モチーフ=“海賊”について語ろう。
 海賊といえば現実・フィクション問わず“悪”のイメージが強い。「残虐非道な無法者」という位置づけである。
 “戦隊”でも『星獣〈せいじゅう〉戦隊ギンガマン』[98・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110711/p1]の敵として“宇宙海賊バルバン”が登場した。
 しかし、同時に古来から先述の本作開巻ナレーションのように「自由と冒険を愛する旅の戦士」というムードを持ち、そのように描く作品も少なくない。
 年輩のジャンル作品ファンなら、以下の2作品を想起されようか。


◎『宇宙海賊キャプテン・ハーロック
 [松本零士〈まつもと・れいじ〉/原作漫画:77、TVアニメ:78/秋田書店
 ※超未来、極限まで発達した物質文明に溺れ堕落した地球人類。彼らに見切りをつけ宇宙で暴れていた海賊キャプテン・ハーロック。だが、女性だけの植物性異星人“マゾーン”が地球を第2の故郷とすべく進撃してきた。マゾーンから地球を守るため、ハーロックは親友の遺した海賊船“アルカディア号”及び40人の海賊たちと共に立ち向かう。

 
◎『コブラ
 [寺沢武一〈てらざわ・ぶいち〉/原作漫画:78、TVアニメ:82――タイトル『スペースコブラ』――/集英社
 ※超未来、精神波を弾丸にして敵を撃つ“サイコガン”を左手に携え、相棒のアーマロイド・レディーと共に宇宙を駆け巡る、不死身の海賊コブラ。自由を愛し無用な殺戮は好まないが、残忍な宇宙マフィア=海賊ギルドには容赦なく戦いを挑む。他にも大宇宙に鏤〈ちりばめ〉められた謎や秘宝に纏わる冒険に飛び込んでいく。

 
 近年の若いファンなら、やはりコレだろう。

 
◎『ONE PIECE〈ワンピース〉』
 [尾田栄一郎〈おだ・えいいちろう〉/原作漫画:97、TVアニメ:99/集英社
 ※“悪魔の実”を食べてゴムの身体となってしまった、少年海賊モンキー・D・ルフィが「ひとつなぎの大秘宝〈ワンピース〉」と海賊王を目指して、仲間たちとともに冒険航海を繰り広げる。

 
 《年代は、いずれも初発表時のものです》


 ゴーカイジャーは「敢えて誇りを持って海賊と名乗る」とのナレーションや、先述した#1幕切れの言動からも解る通り、かの3作に近い印象を受ける。

 
 (と言っても、私の場合申し訳ないが年齢的に『ONE PIECE』に関してはキチンと読み込んでいない)


 
 “海賊”といっても見るからの荒くれ者はおらず、少し浮世離れした見た目以外はごく普通の若者だ。
 地球に降り立ったあとも、多少の強引さは見えるが、食事をするにもキチンと地球のお金を手に入れている点からも解る通り、基本的に地球のルールから逸脱せずに行動している。
 個人に目を向けても、例えばハカセなど、子どもたちのところへわざわざ戻って、お礼なんか言わなくていい……と笑って断わる姿から、アイムに次ぐお人好しであることが見て取れる。


 声高に正義を主張せず、ワルぶりながらも「強きを挫〈くじ〉き弱きを助ける」姿を見せることで、海賊→“悪”のイメージを極力払拭しようとする、番組製作陣の配慮が伺える。
 正義ではないが悪でもなく、敢えて海賊という“偽悪”を背負って戦う……


 そんなゴーカイジャーは、ハカセ役の清水氏ほかキャスト諸氏が指摘されているように、従来の戦隊ヒーローとはひと味もふた味も違う、ダーティな自称とは裏腹のスマートさを湛えたヒーローとして、浸透していくに違いない。




〈注1〉追加メンバーも原則としてカウントされているが『映画ゴーカイ199』によれば、『デカレン』のデカマスターのように、司令官もしくは後見役キャラが変身した戦士は、別働隊扱いと思われる。
 また、『ギンガマン』の追加メンバー・“黒騎士ヒュウガ”――ギンガレッド=リョウマの兄――も別働隊のようだ。コスチュームがギンガマンと違い過ぎるためだろうか。

 
〈注2〉明確に同じ世界内の物語とされるのは『デンジマン』と『サンバルカン』のみである。デンジマンに敗れ氷河の中で眠っていたベーダー一族の支配者=ヘドリアン女王〔演:曽我町子〈そが・まちこ〉〕が、サンバルカンの敵=“機械帝国ブラックマグマ”により再生され、客分幹部としてサンバルカンと戦う。
 また、物語中途または終盤で死亡したメンバーもいるため、ここでも矛盾が生ずるが、本作の物語世界ではそのメンバーが死ななかった、或いは何らかの形で別の人物が受け継いだ――という見方もできよう。
 なお11年現在では、死亡したメンバー《※》は以下の10人である。


《※各シリーズ本編で、画面上明確に「死」が描写されたキャラに限る。一時的死亡や仮死状態は対象外》


・熊野大五郎〈くまの・だいごろう〉〔演:だるま二郎〕=2代目キレンジャー(『ゴレンジャー』#55〜67)


・白石謙作〈しらいし・けんさく〉〔演:伊藤武史〈いとう・たけし〉〕=初代バトルコサック(『BFJ』#1〜33)
 ※伊藤氏は『ゴレンジャー』の明日香健二〈あすか・けんじ〉=ミドレンジャーとしても知られる(当時「伊藤幸夫〈いとう・ゆきお〉」)。


・小泉ミカ〔演:矢島由紀〈やじま・ゆき〉〕=初代イエローフォー(『超電子バイオマン』[84]#1〜10/事実上は#9まで)
 ※矢島氏の急遽引退に因る臨時措置のため、「ミカ」としては#10ではイメージのみの登場。ミカ及びイエローフォーの声は、#8より声優の田中真弓氏が代行された。女性では初にして、後述するメレを別格にすれば今のところ唯一の死者である。


・結城凱〈ゆうき・がい〉〔演:若松俊秀〈わかまつ・としひで〉〕=ブラックコンドル(『鳥人戦隊ジェットマン』[91]#2〜50)


・ブライ〔演:和泉史郎〈いずみ・しろう〉〕=ドラゴンレンジャー(『恐竜戦隊ジュウレンジャー』[92]#17〜43、49〈イメージ〉)
※和泉氏は『電撃戦隊チェンジマン』[85]の大空勇馬〈おおぞら・ゆうま〉=チェンジペガサス役でも知られる。


・滝沢直人〈たきざわ・なおと〉〔演:笠原紳司(かさはら・しんじ〉〕=タイムファイヤー(『タイムレンジャー』#29〜49)


・本名不明=天空忍者シュリケンジャー〔声:松野太紀〈まつの・たいき〉〕(『ハリケン』)


・仲代壬琴〈なかだい・みこと〉=アバレキラー〔演:田中幸太朗〈たなか・こうたろう〉〕(『アバレンジャー』#18〜48)


・臨獣〈りんじゅう〉ライオン拳の理央〈りお〉〔演:荒木宏文〈あらき・ひろふみ〉〕=黒獅子リオ(『獣拳戦隊ゲキレンジャー』[07・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080817/p1])


・臨獣カメレオン拳のメレ〔演:平田裕香〈ひらた・ゆか〉〕=獣人メレ(同)


 ※理央&メレは、物語終盤でゲキレンジャーと共闘はしたものの正式加入しないまま戦死したため、本来ならばノーカウントである――本文初稿でも、その措置を執った――が、「『映画ゴーカイ199』で別働隊として活動していた」と判明したゆえ、改めて敢えてカウントした。
 なおメレは『ゲキレン』の物語前史で既に一度死亡しており、理央の手で仮の命を与えられて復活、最終決戦で2度目の死を迎えた形になっている。変則的ではあるが女性では二人目の戦死者となる。


 このうち、前期の3人は役者の都合によるもの。後期の7人はストーリー展開上落命した。
 ただし、直人・壬琴は役者=笠原&田中氏のスケジュール調整上の問題もあったという。
 また、敵との戦い無関係で死亡したのは、現状では凱のみである。


 さらに凱及びシュリケンジャーは生存の可能性も否定し切れない。しかし、彼らの場合自らの信念に基づいて、その命を全〈まっと〉うしたと納得できるゆえ本文では敢えて「死亡」と解釈する。
 (シュリケンジャーはVシネマ『爆竜戦隊アバレンジャーVS〈たい〉ハリケンジャー』[04]で僅かながら登場しているが、本文では同作をサービスストーリーと見なし、慮外視する)
 なお死亡の詳しい経緯についてはネタばれにもなるので、本文では敢えて触れない。皆様でご確認願いたい。



〈注3〉厳密には『ジャンボーグA〈エース〉』[73・円谷プロ]の立花ナオキ、及び『ザ・カゲスター』[76・東映]の姿影夫〈すがた・かげお〉/カゲスターを演じられた立花直樹〈たちばな・なおき〉氏がいる。
 が、前者は“操縦”(ジャンボーグAは“変形”)、後者は“分身”であり、いずれも“変身”とは言い難〈がた〉いため、ここでは考慮外とした。
 なお立花氏は『カゲスター』のあと惜しくも引退、スポーツ用品店を経営されるも、80年代に不祥事を起こされたというが、その後及び現状については不明。


 ちなみに『カゲスター』で影夫/カゲスターの相棒=風村鈴子〈かざむら・すずこ〉/ベルスターを演じられた早川絵美〈はやかわ・えみ〉氏は、現・誠直也氏夫人である。



〈注4〉「一方が主役或いは準主役、一方がレギュラー格或いは準主役」という範疇であれば、数人存在する。
 年長の濃ゆいマニアの皆様であればご存じだろうが(笑)、思い出の喚起や年若いマニアの便宜も考え、以下に列挙してみる。
〈◎=主役、○=準主役、●=レギュラー格〉


ケイン・コスギ
◎『ウルトラマンパワード』[93]:ケンイチ・カイ=ウルトラマンパワード〔声[吹き替え]:森川智之〈もりかわ・ともゆき〉〕
○『忍者戦隊カクレンジャー』[94]:ジライヤ=ニンジャブラック
 ※ただし“戦隊”の場合「メンバー全員が主役」という視点を執れば、ケイン氏は誠氏に続く二人目の「巨大ヒーローと人間大ヒーローの両方に変身した主演俳優」という見方も可能である。


萩原佐代子〈はぎわら・さよこ〉
●『ウルトラマン80〈エイティ〉』[80・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1]:星涼子〈ほし・りょうこ〉=ユリアン
○『科学戦隊ダイナマン』[83]:立花〈たちばな〉レイ=ダイナピンク


高野八誠〈たかの・はっせい〉
○『ウルトラマンガイア』[98・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1]:藤宮博也〈ふじみや・ひろや〉=ウルトラマンアグル
●『仮面ライダー龍騎〈りゅうき〉』[02・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021108/p1]手塚海之〈てづか・みゆき〉=仮面ライダーライア
○映画『仮面ライダーTHE FIRST』[05・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060316/p1]&『仮面ライダーTHE NEXT』[07]:一文字隼人〈いちもんじ・はやと〉=仮面ライダー2号

 
☆高槻 純〈たかつき・じゅん〉
◎『ウルトラマンネオス』[00]:カグラ・ゲンキ=ウルトラマンネオス
●『龍騎』:東條悟〈とうじょう・さとる〉=仮面ライダータイガ


内山眞人〈うちやま・まさと〉
◎『ウルトラマンネクサス』[04・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1]:千樹憐〈せんじゅ・れん〉=ウルトラマンネクサス・ジュネッスブルー
●『仮面ライダーカブト』[06・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070211/p1]:影山瞬〈かげやま・しゅん〉=3代目仮面ライダーザビー仮面ライダーパンチホッパー


☆石川 真〈いしかわ・しん〉(旧:石川功久〈いしかわ・かつひさ〉)
◎『真・仮面ライダー 序章〈プロローグ〉』[92]:風祭 真〈かざまつり・しん〉=仮面ライダーシン〈※便宜上の名。本編では未使用〉
●『ウルトラマンメビウス』[06・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1]:セリザワ・カズヤ=ウルトラマンヒカリ/ハンターナイトツルギ
 ちなみに、ライダー→ウルトラマンの例は、石川氏が初にして11年現在では唯一である。


 またケイン氏及び萩原氏も、初にして11年現在では唯一の、ウルトラマン→戦隊ヒーローという経歴をお持ちの男性俳優・女性俳優である。
 逆に戦隊ヒーロー→ウルトラマンという例は、残念ながら今のところ未登場。



〈注5〉近年では『劇場版・仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』[09/8/8・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091213/p1]の仮面ライダーアマゾン及びイカデビルの声、映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』[10/12/23]のグレンファイヤーの声を担当された。
 他にもオリジナル特撮Vシネマ『銀河ロイド コスモX〈エックス〉』の[01]プロデュースなども手掛けられている。


〈注6〉『仮面ライダーW〈ダブル〉』[09]最終回=#49「Eにさよなら/この街に正義の花束を」のゲストキャラ・青山唯〈あおやま・ゆい〉として、御記憶の読者諸氏もおられよう。
 「ミュージアムを継ぐもの」と豪語し残存ガイアメモリの蔓延を狙う不良少年集団“EXE〈エグゼ〉”に拉致されるも、弟・晶〈あきら〉〔演:嘉数一星〈かかず・いっせい〉〕の依頼を受けた鳴海探偵事務所の面々に拠り救出される……という役どころだった。


〈注7〉いずれも声優としては特撮番組には初出演の方々である。なお、ナビィ役・田村ゆかり氏も同様である。
 過去のシリーズに登場した悪の首領・幹部の登場やそのCVを担当された声優諸氏出演の可能性もあるため、敢えて初出演のメンバーを起用したとも言われる。


 野島氏はベテラン声優・野島昭生〈のじま・あきお〉氏を父君に持つ中堅声優。弟君の野島健児〈のじま・けんじ〉氏は、『魔弾戦記〈まだんせんき〉リュウケンドー』[06・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061225/p1]にて、主人公=鳴神剣二〈なるかみ・けんじ〉〔演:山口翔悟〈やまぐち・しょうご〉〕=魔弾剣士リュウケンドーの相棒である魔弾龍〈まだんりゅう〉=青い剣・ゲキリュウケンの声を務められた。


 井上氏は清楚で穏やかな“お姉さんキャラ”が多かったが、近年では冷酷な悪女キャラや熱血少年キャラも担当される。名乗られる時は


 「井上喜久子、17歳です、オイオイ」


 と自称されることでも知られる〈笑〉。


 進藤氏は俳優として『超星艦隊〈ちょうせいかんたい〉セイザーX〈エックス〉』[05・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060712/p1]に変身ヒーローであるアド/イーグルセイザー役で出演された。


〈注8〉なお、以後本誌で筆者が本作の感想文を記する時は、ゴーカイジャーが変身した戦士について、名前の前に便宜上「GK――ゴーカイジャーの略――」を着けて表記させていただきたい。



(了)
(初出・当該ブログ記事。『海賊戦隊ゴーカイジャー』開巻評(#1〜2評)より#1評のみを抜粋)



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