『騎士竜戦隊リュウソウジャー』序盤合評
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『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』 ~因縁&発端の恐竜絶滅寸前の時代に時間跳躍!
(文・J.SATAKE)
(2019年8月3日脱稿)
東映特撮ヒーローの夏映画が今年も公開。『騎士竜戦隊リュウソウジャーTHE MOVIE タイムスリップ! 恐竜パニック!!』(19・脚本/山岡潤平氏・監督/上堀内佳寿也氏)はテレビシリーズの前日譚につながる内容となっていた!
6500万年前、リュウソウ族とドルイドンとの戦いは地球に落下した隕石によって断絶。ドルイドンは地球を脱出し、恐竜たちは絶滅した……。しかしその最後の戦いにはコウたちリュウソウジャーのメンバーが深く関与していたことが明かされる。
劇場版とはいえ、テレビシリーズ1本とほぼ同等の尺である本作。過去の戦いの歴史・背景と現在のリュウソウジャーたちをつなぐため、みっちりとバトルアクションドラマを展開する。過去におけるリュウソウ族とドルイドンの雑兵・ドルン兵との集団戦を、TVではロケ地となったことがない広大な山岳部の裾野を舞台に繰り広げる様。そして幹部怪人・タンクジョウ&ガチレウスを相手に恐竜形態で突撃し、巨大ロボット形態では素早く回転して二刀流の斬撃を繰り出す巨大戦を見せる新キャラクター・キシリュウジンのアクションの切れの良さで、冒頭から観客を引きつける!!
――キシリュウオーの一部パーツとカラーリングを変更したリデコレーション版なのだが、濃紺と金色の組み合わせが大きく印象を変えている!――
リュウソウジャーたちの等身大アクションにも工夫が凝らされている。グルグルと視点が回転するカメラワークが特徴であった『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190401/p1)ほどではないが、高低差の大きい場所での各自のバトルに密接しながらも途切れることなくそのアクションを捉える「長回し」で混戦の臨場感を伝える画が印象的であった。
コウたちが過去へ飛ばされ様々な恐竜と出会うシーンも劇場版ならではの特撮シーン。まあ、海辺にあれだけ多くの種類の恐竜たちが集うことが本当にあったかどうかはわからないが、造形物による恐竜の卵と生まれたばかりの個体、CGでの大型恐竜たちの姿をアップそして俯瞰で海岸線をも収めた画で見せることで、古代の地球の雄大さを演出していた。
本作のクライマックスバトルを展開するのは、テレビシリーズでも謎の暗躍を続けている鎧(よろい)騎士・ガイソーグ。それは騎士竜たちを生み出したリュウソウ族のひとりヴァルマが作り上げたものであった! ――特撮に造詣の深い俳優・佐野史郎氏は、学者肌のヴァルマが「力による支配」に取り憑かれてゆく姿を好演!!――
恐竜の絶大なパワーを利用して力を得たガイソーグ。しかしそれがリュウソウ族の心を犯し、ヴァルマは力ある者のみを隕石落下から守る選民思想へ向かわせる! ――これが原因となってテレビシリーズでの「海」と「陸」のリュウソウ族の争いへと至ったのか? ガイソーグの今後の動向と共に注目すべきポイントとなりそうだ――
一方、邪心に飲み込まれたヴァルマの娘・ユノが時を超えてコウたちリュウソウジャーと邂逅することで、未来へと続く希望を象徴させる。父の非道に心を痛める子の情愛と、隕石からリュウソウ族と恐竜を守りたい使命感に挟まれる健気な彼女を、アイドルグループ・AKB48(エーケービー・フォーティエイト)を卒業し女優として活動している北原里英嬢が熱演。未来の世界で騎士竜たちと心を通わせるリュウソウジャーの勇姿を目の当たりにしたユノが、父を鎧の呪縛から解き放って欲しいとコウに願う。それに応えるべく戦うリュウソウレッドこそ真のヒーローの姿だ!
ジャンル作品の定番の図式ではあるが、力ある者の支配が正しいと吠えるヴァルマ=ガイソーグに、みんなを守り一緒に笑える世界を創りたいと応えるコウ! 騎士竜ディメボルケーノを竜装したリュウソウレッドが放つ猛火炎がガイソーグを撃退するバトルシーンこそが、種族を超えて手を取り合う仲間の強さを強くアピールしている!!
そして地球に迫る巨大隕石にはメルト(リュウソウブルー)・アスナ(リュウソウピンク)・トワ(リュウソウグリーン)・バンバ(リュウソウブラック)の4人が操る戦隊ロボ・キシリュウジンが立ち向かう。騎士竜の何万倍はあろうかという強大な質量に挫けそうになる4人だが、何者にも負けず挑み続けるコウの姿と「限界を決めるのは自分だ!」の言葉に勇気を奮い立たせ隕石を粉砕!
結果は隕石による恐竜の絶滅を防ぐことはできなかったが、現在に続く地球の歴史を守ったのがコウたち未来のリュウソウジャーであったとする。無事現在に帰還したコウたちは、福井県立恐竜博物館に佇む恐竜たちの化石と、ユノら過去のリュウソウ族が残してくれたリュウソウジャーの姿を描いた石板に胸を熱くする。コウたちが守った過去が師匠であるマスターの生命につながり、その彼らの精神を受け継いで今の自分がある……彼らが騎士竜戦隊としての使命感を一層強めるラストシーンだ。
一方で残念な面もあった。ユノが本シリーズにおける敵怪人・マイナソーの源である点は絶望的な未来を変えたい、という思いで理解できるのだが、そのマイナソーもコウたちの操るキシリュウオーに比較的あっさりと撃退されてしまうため、中盤のバトルに盛り上げが欠けたように思う。
ここは追加戦士であるカナロ=キシリュウゴールドと騎士竜&ロボであるキシリュウネプチューンの出番を願って短いながらも活躍させてあげるのが理想なのだが、本作のカナロは恐竜博物館で理想の結婚相手探しにご執心! キシリュウゴールドへの変身シーンもなしという初見の方にはタダの女たらしキャラとなってしまった感が……(涙)。映画はテレビでの初登場よりも先行して撮影するスケジュールの都合もあるのだろうが、追加戦士としては非常に残念なスクリーンデビューであった。
ヒーローの持つ「使命感」がテレビシリーズでは今ひとつはっきりとしていない印象であった『リュウソウジャー』だが、本作を経たことでコウたちにもそうしたキャラクターの厚みが少しずつついてきたように感じている。これからの展開に期待を持たせてくれる劇場版であった。
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