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魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー ~2大戦隊共闘を劇的に盛り上げるための助走台ドラマとは!?

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 映画『機界戦隊ゼンカイジャーVSキラメイジャーVSセンパイジャー』(22年)が公開記念! とカコつけて……。映画『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』(21年)評をアップ!


映画『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』 ~2大戦隊共闘を劇的に盛り上げるための助走台ドラマとは!?

東映系・2021年4月29日公開 同年8月4日に東映ビデオから映像ソフト発売)
(文・久保達也)
(2021年5月21日脱稿)

*新型コロナ感染拡大下における製作・公開実現に、まずは感謝!


 オリジナルビデオ作品として製作しつつも、期間限定で一部の劇場で上映も行うブランドとして立ち上げられた『東映 V CINEXT(ブイ・シネクスト)』の最新作として、映画『魔進(マシン)戦隊キラメイジャーVS(たい)リュウソウジャー』(21年・東映ビデオ)がこのほど公開された。


 本作のパンフレット(東映ビデオ・2021年4月29日発行)に掲載されたスタッフ&キャストインタビューでは、このコロナ渦での製作中止を危惧していたと皆が一様に語っており、その状況下で製作・上映にこぎつけた関係者の方々にまず謝意を表したい。
 ただ、公開直前に東京都・大阪府兵庫県京都府、つまり最も集客が見こまれる東京&関西の地域に実に3度目となる緊急事態宣言が発令され、映画館にも休業要請がなされたことから、個人的にはまた公開延期になると思っていただけに、無事に鑑賞できたことには先述した該当地域在住の方々に対して罪悪感が募ったりもするのだが……


 さて、スーパー戦隊のいわゆる「VS映画」としては、本作は2020年2月8日(土)公開の『スーパー戦隊MOVIE(ムービー)パーティー』の中の1本として上映された映画『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVS(ブイエス)ルパンレンジャーVS(ブイエス)パトレンジャー』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200321/p1)につづく作品である。
 周知のとおり、『魔進戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)のテレビシリーズは2021年2月28日で放映を終了したが、その2ヶ月後に公開された本作は実はテレビシリーズの続編ではない。
 敵組織だったヨドン軍の幹部=ガルザ・クランチュラ・ヨドンナが登場し、ガルザとヨドンナがラスボスのヨドン皇帝の復活を示唆(しさ)する描写により、時系列としてはテレビシリーズの最終決戦直前の出来事だと示されているのだ。


 元々、新旧2大スーパー戦隊の「VS映画」は年明け早々の新春映画としての興行だったのであり、テレビシリーズの現行作品が放映終了を間近に控えた時期にあたるために、今回も内容的にはそれを踏襲(とうしゅう)したといえるだろう。
 これは前年2020年の「夏映画」として公開されるハズだった映画『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE(ザ・ムービー) ビー・バップ・ドリーム』(21年・東映)が新型コロナウィルスの影響で2021年2月20日公開の『スーパー戦隊MOVIEレンジャー』の一編として上映されるまで公開が延期されていなければ、今回の『キラメイジャーVSリュウソウジャー』が本来ならばその『スーパー戦隊MOVIEレンジャー』の中での公開を意図して企画されたことをもうかがわせるものだ。


 やはり、メインターゲットの子供たちの観点からすれば、『キラメイジャー』が放映終了して次作『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)に興味関心が移っているであろう時期なので、公開のタイミングとしては微妙に間が悪いかとも思えるし、個人的にも期間限定で上映館もかぎられた『V CINEXT』ではなく、全国ロードショーでの興行にしてほしかったという想いはある。
 ただ、高年齢層向けのファンムービーとしての性質が強い『V CINEXT』だからこそ、テレビシリーズの劇場版としては時期的に少々ムリのある今回のような企画が実現できたことも事実として受けとめるべきだし、『キラメイジャー』の大ファンとしては素直に喜びたい。


*異例! 劇中内での映画のかたちで描かれた、新旧2大戦隊の「VS」!(笑)


 さて、今回はテレビシリーズの『キラメイジャー』中盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220501/p1)以降の幹部レギュラー悪として登場した、ヨドン軍のよどんだマドンナ(笑)であるヨドンナがメインの悪役として全編に渡って活躍が多く描かれる。
 先述した映画『キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』は、時系列的にはヨドンナ登場以前の出来事だったために、劇場版でのヨドンナの活躍自体が本作は初となるのだ。


 ヨドンナを演じる現役コスプレイヤー桃月なしこチャンの名で検索しては彼女のグラビアでの仕事ぶりを見て喜んでいる筆者としては、ヨドンナの劇場版への登場が今回が最初で最後とならないことを祈らずにはいられず、今後も遠慮なく何度も復活してほしいものだ(笑)。
 まぁ、『V CINEXT』とはそのような放映終了後も根強く作品を支持する熱心なファンに向けたものなので、時系列を云々(うんぬん)するよりも自身が好きなキャラの活躍の方を優先して楽しむのもアリだろう。



 物語自体は、ヨドンナがプロデューサーを務めておりヨドン軍の怪人・ムービー邪面と『リュウソウジャー』の敵組織・戦闘民族ドルイドンの怪人・カントクマイナソーが撮影している映画の世界にキラメイジャーとリュウソウジャーが取りこまれてしまい、「VS」の果てに共闘へと至るようになっていくという展開だ。
 筆者にかぎらず、「映画メイキング・ネタ」なので、本作も坂本浩一監督の担当作品かもしれないと推測してしまった特撮マニア諸氏は相当数にのぼることだろう(笑)。


・『キラメイジャー』序盤ではクールなキャラだったハズの押切時雨(おしきり・しぐる)=キラメイブルーを「ネタキャラ」にしてしまった諸悪の根元(爆)である『キラメイジャー』エピソード3『マンリキ野郎! 御意見無用』
・『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)のブレイブ40『グッとくーる! オッサンはつらいよ』


などなど、近年のスーパー戦隊シリーズの劇中で「映画のメイキング」を題材としたエピソードは、やはり坂本監督の担当作だとの印象が強いからだ。


 ちなみに、時雨が「ネタキャラ」化したことについて、監督は本作のパンフで「責任を感じている」と語っているが(笑)、時雨を演じた水石亜飛夢(みずいし・あとむ)もこのエピソード3の時点で「おもしろくしよう」とするクセがついたのだとか(爆)。


 ヨドンナは「ヨドン映画」を全世界に公開することで、地球をヨドン軍の故郷・ヨドンヘイムと同じ環境にしようとたくらんでいる(笑)。その映画のタイトルが『ヨドン原人』である。
 その元ネタは、怪獣映画『キングコング』リメイク版(76年)の世界的な大ヒットにあやかろうと香港(ホンコン)の映画会社ショウ・ブラザーズが1977年に製作して日本では1978年3月11日に松竹系で公開された、身長25メートルに巨大化した北京原人(ペキンげんじん)が香港の摩天楼で大暴れする特撮映画『北京原人の逆襲』(77年・香港)や、90年代に東映岡田裕介(おかだ・ゆうすけ)社長の鶴の一声でつくられるも大ゴケしてしまった怪作映画『北京原人 Who are you?』(97年・東映)なのだろう。
 前者は世代人にはいわゆる「特撮冬の時代」の70年代後半に公開された特撮怪獣映画として、当時の特撮マニアや子供たちの注目も集めた映画ではあったし、小学生であった坂本監督も同作を夢中になって観たことかと思われる。
 ちなみに、日本での『北京原人の逆襲』の同時上映は、あの有名劇画原作者・梶原一騎(かじわら・いっき)の弟でもあり、同じく漫画原作や極真カラテの師範代も務めていた真樹日佐夫(まき・ひさお)が自身で主演(!)も果たした映画『カラテ大戦争』(78年・松竹)であった(爆)。


 その「ヨドン映画」の中で、


・「アクション映画」では、速見瀬奈(はやみ・せな)=キラメイグリーンが「ミニスカポリス」、トワ=リュウソウグリーンが「大泥棒」――全身が白のスーツでとても「泥棒」には見えないが(笑)――
・「時代劇映画」では、押切時雨=キラメイブルーが「美剣士」、バンバ=リュウソウブラックが「浪人(ろうにん)」
・レディース映画では、大治小夜(おおはる・さよ)=キラメイピンクとアスナリュウソウピンクがともに女暴走族の「総長」
・「ギャンブル映画」では、射水為朝(いみず・ためとも)=キラメイイエローが「ギャンブラー」、メルト=リュウソウブルーが「ディーラー」を


それぞれが演じる劇中劇の中で、役柄としての「VS」が描かれるかたちだ――ちなみに、ギャンブル映画のタイトルは、故・松田優作の主演映画『最も危険な遊戯(ゆうぎ)』(78年・東映)が元ネタである『最もヨドンだ遊戯』であった(爆)――。


 まぁ「VS」とはいっても、それこそアニメ映画『マジンガーZ(ゼット)対デビルマン』(73年・東映)のむかしから、正義のヒーロー同士が全面的に争うハズもなかったのだが(笑)。


 こうした構図は新旧東映ヒーロー共演映画では毎度のことではある。特に現行テレビ作品の撮影と並行している役者たちをその撮影現場から引きはがして別の映画に全員集合させることはスケジュールの調整的にも困難なことだが、ひとりずつであれば別撮りで済むことから相対的にはラクだし、「やはりVSなのでなんらかのかたちで争うくだりを入れたい」という東映の塚田英明プロデューサーの意見を反映させることで生み出されたようだ。
 そのために、本作では変身前の人間態を演じる役者たちがド派手なアクションを繰り広げる場面がかなりの部分を占めることとなり、その中でキラメイジャー&リュウソウジャー個々のメンバー間の互いに対する想いの変遷・関係性の変化が、共闘に至る過程としても点描されていく。


 塚田がチーフプロデューサーを務めて、坂本監督も多くのエピソードの演出を手がけた『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・ http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)や『仮面ライダーフォーゼ』(11年)、オリジナルビデオ作品『宇宙刑事 NEXT GENERATION(ネクスト・ジェネレーション)』(14年・東映ビデオ)に『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』(17年・東映ビデオ)などもそうだったが、本編の人間ドラマと特撮のバトルアクションを決して分け隔(へだ)てることなく、双方を絶妙に融合させながら盛り上げていくという両氏の方法論はやはり正しいと実感させられたものだ。


 実に意外だったのだが、テレビシリーズの『キラメイジャー』では変身前のキャラにアクション演出がほとんどなく、戦うのは常に変身後であったとパンフ掲載のキャストインタビューで皆が語っていたことである。そういえば、そうだったかもしれない。『リュウソウジャー』のキャスト陣が久々に披露した見事なアクションに、『キラメイジャー』の若手役者たちは圧倒されたとか。


 坂本監督によれば、キラメイレッドこと熱田充瑠(あつた・じゅうる)を演じた小宮璃央(こみや・りお)と為朝を演じた木原瑠生(きはら・るい)から「アクションやりたいです!」と直談判されたほどだそうだ。
 そのような彼らの要望を最大限にかなえるとともに、「『キラメイジャー』キャスト陣、初の本格的アクション!」をウリにするためにも、本作はアクションが増量されたようにも思える。


 ちなみに、劇中内での「アクション映画」の場面でも、台本にはフランスの軍事訓練を出自とする、障害物があるコースを自身の身体能力だけで素早く通り抜けるスポーツ「パルクール」のように……という指定があった。そして、キラメイグリーンこと瀬奈が人間を飛び箱代わりにして跳躍(ちょうやく)するアクションなどは、スタントではなく瀬奈を演じた新條由芽(しんじょう・ゆめ)自身によるものだったとか!


 それにしても、ヨドンナプロデューサーの意向が強すぎてムービー邪面が思うように映画が撮れずに悩むさまは、坂本監督のかつての実体験が入っているとしか思えないが、業界「あるある」ネタでもあるのだろう(爆)。
 映画とは実は脚本家がつくるものではなく、監督がつくるものでもない。それ以上にエラい役職であるプロデューサーが強い権限を持っていることの傍証にもなっている。


*同色キャラ同士ではなく、年少キャラ同士・ネタキャラ同士・作戦参謀同士での「VS」で、各キャラの個性を出す!


 ムービー邪面はテレビシリーズの『キラメイジャー』に登場した敵怪人こと邪面師たちのように、カメラをモチーフにした頭部の口の周囲にフィルムが巻きついた造形以外は簡素なスーツにマントの「出(い)で立ち」だが、カントクマイナソーはかなり重厚な着ぐるみとして造形されている。
 腹部にある大きなクチバシや脚部、背中の羽根はおそらくは「撮り」と掛け合わせて「鳥」をモチーフにしたのかと思われる(笑)。その頭部には映画監督用のディレクターズチェアに座った人間の髑髏(しゃれこうべ)がまんま造形されており(!)、右手にカチンコ、左手にメガホンを所持しているとはいえ、一見かなりグロテスクな印象だ。


 もっとも、『リュウソウジャー』の一応の幹部級のレギュラー悪として登場したキノコ頭のコミカルキャラ・クレオンの体液がムービー邪面の口に入ったことで、


・アクションカントクマイナソー
・時代劇カントクマイナソー
・レディースカントクマイナソー
・ギャンブルカントクマイナソー


の4体が一度に誕生し、それぞれの頭に、


・警察帽
・ちょんまげ
・ピンクのロングヘア


などが造形されることで、かなりマヌケな印象をも醸(かも)し出しているので、子供向け特撮ヒーロー番組としてはバランスが絶妙にとれている(笑)。


 必要最小限のマイナーチェンジで一体の着ぐるみを複数体として見せつける技法が駆使されたカントクマイナソーたちの声を演じたのは、先述した『獣電戦隊キョウリュウジャー』では敵組織・デーボス軍の幹部である哀(かな)しみの戦騎・アイガロンを演じた大ベテラン声優の水島裕(みずしま・ゆう)である。その器用な演じ分けこそが、カントクマイナソーを複数体がいる存在として見せる演出に大きく貢献(こうけん)していたといえよう。


 さて、カントクマイナソーが撮る映画の中で体の自由が効かなくなり、敵同士として設定された対戦相手と不本意ながらも「VS」を演じるハメになったキラメイジャーとリュウソウジャーの組み合わせは、各人のシンボルカラーよりも個々のキャラクター性を重視して選ばれたのかと思える。


・かなりお茶目な「妹系」の瀬奈VS「弟系」のトワという、「年少キャラ」同士――実際にトワはバンバの実の弟だ――
・ともに最年長の時雨VSバンバという、「ネタキャラ」同士(笑)
・知的戦略が得意な為朝VSメルトという、「作戦参謀(さくせん・さんぼう)」同士


といった具合であり、色の組み合わせで見ると、順にグリーンVSグリーン、ブルーVSブラック、イエローVSブルーとなっていたのだ。
 ちなみに、ブルーVSブラックの対決は、キラメイブルーとリュウソウブラックのどちらもジャパンアクションエンタープライズの竹内康博が演じていたという共通点があったりもする。


 だが、


ミニスカポリス姿の瀬奈が終始ワーキャーと騒ぎながら、障害物をアクロバティックにかわして、狭い路地で泥棒のトワをひたすら追いかけている「アクション映画」
・やや着崩した黒の和服姿が実によく似合うバンバと元々がアクション俳優である時雨が、江戸の町で剣劇を繰り広げている「時代劇映画」
・ムーディーなジャズが流れるカジノバーで、スーツ姿の為朝とバーテンダー姿のメルトがポーカー対決をしながらも、卓をはさんで映画の世界から脱出する策をひそかに練(ね)っている「ギャンブル映画」


 それらを対比しながら観ることで、マニア観客であれば実に絶妙な舞台と対戦の組み合わせにはウナらされたのではあるまいか?
 もちろん似た者同士を対比させることで微妙な差異を浮き彫りにする意図も当然あっただろう。しかし、個人的には彼らのそれぞれの舞台でのハマリ具合の方が印象強く残り、そのキャラクターを最も効果的に活(い)かすための采配ぶりは実に秀逸(しゅういつ)だったと感じられた。


 唯一(ゆいいつ)、同じピンク同士だとはいえ、かなりのおっとり系の小夜と、どちらかといえば瀬奈に近い元気キャラであって怪力の持ち主(笑)でもあるアスナは、完全に相反する組み合わせでもある。女暴走族の特攻服姿も鉄パイプで殴りかかるさまも「総長!」と呼ばれた際の表情演技も実にリアルだったアスナ(爆)と対比することで、小夜はそのいずれもがムリやりヤラされているような違和感やムリ感(笑)が残ってしまうキャラとして印象づけるための確信犯的な対戦だったのだろう。
 「お姉さんキャラ」の小夜を演じた工藤美桜(くどう・みお)は、各種インタビュー映像などを見るかぎりではどちらかといえば素(す)は「妹系」の印象が強い。加えて、筆者も長年、特撮作品を観つづけているマニアなので、『仮面ライダーゴースト』(15年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160222/p1)の2号ライダー・深海マコト(ふかみ・まこと)=仮面ライダースペクターのことを「マコト兄ちゃん」と呼んでいたローティーンの「妹キャラ」こと深海カノンを演じていたころの印象がいまだに残っているためかもしれない。


 ちなみに、この『仮面ライダーゴースト』と『仮面ライダーセイバー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220116/p1)をコラボレーションさせた作品『仮面ライダーセイバー×ゴースト』(21年)が坂本監督作品として2021年5月23日(日)から東映特撮ファンクラブで配信予定であり、同作では工藤は今度は成人したカノンを演じているので要注目だ!


 そして、『キラメイジャー』の「6番目の戦士」であるクリスタリア宝路(くりすたりあ・たかみち)=キラメイシルバーと『リュウソウジャー』の「6番目の戦士」であるカナロ=リュウソウゴールドのふたりは、映画の世界に引きずりこまれるのを免れて、彼らはクライマックス近くまでコンビを組んで活躍する。
 ふたりはともに「6番目の戦士」であることはもちろんのこと、宝路には宝石の国・クリスタリアの王女・マブシーナ姫、カナロには海のリュウソウ族・オトという妹がいるという共通点もあるのだ。


 それにしても、妹がいる「6番目の戦士」が2年つづくことは異例であり、「妹キャラ」や「妹もの」の傑作(?)を多数生みだしてきた深夜枠のアニメの影響だろうか?(爆)
 いっそのこと、今後の「6番目の戦士」も皆が妹がいる設定にして、それこそ作品の枠を越えた妹アイドルユニットを組ませるくらいのことはした方がよいのかもしれない(笑)。


 ただ、


・宝路が暗い場所ではガーガーといびきをかいて寝てしまうために、映画の世界に引きずられるのを免れるとか、
・テレビシリーズの『リュウソウジャー』でずっと「婚活」をしていたカナロがヨドンナを見た途端に、♪パララ~というフラメンコのようなお約束の曲が流れて(爆)、結婚を前提とした交際を迫るとか、


近年では「6番目の戦士」すらもがカッコいい強者としてだけではなく、「ネタキャラ」として描かれることが当たりまえとなっている……
 いや、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)の伊狩鎧(いかり・がい)=ゴーカイシルバーあたりから、ここ10年来ずっとそうであったことを思えば、むしろそうしたキャラクター造形こそが、今の時代のファミリー層向け、いや大きな友だち向けとしても、エンタメ活劇としては正しいのだと認識すべきなのだろう。


*2大戦隊共闘や先輩戦隊復活に、助走台としてのドラマ性を与えたからこそ、バトルも盛り上がる!


 さて、充瑠とコウはムービー邪面が監督する「青春純愛映画」に出演させられる。ちなみに本作のタテ軸として、充瑠は冒頭で描かれた「悩み」のことをクライマックスの直前に至るまでずっと引きずっており、コウのアドバイスがそれを解決に導くことで、キラメイジャーとリュウソウジャーに逆転の契機がおとずれるかたちとなっていた。


 ところで、コウが着用させられる学生服が、普段コウがリュウソウ族の衣装として着用する赤というよりかは渋みのあるエンジ色の上着と色調を同じにしているのは、センスのよさを感じるところだ。


 本作冒頭でも、為朝が充瑠に対して絵画コンテストへの応募を勧めてみせた動機を、為朝はメンバーたちに「あいつの才能を世間で認めさせたい」からだと語っている。テレビシリーズの序盤ではかなりギクシャクしていたふたりの関係性が劇的に好転した証(あかし)としてのこの描写には、感慨を深くした観客も多かったことだろう。


 だが、このことが想定外にも充瑠に過度なプレッシャーを与えてしまって、充瑠は思うような絵が描けなくなってしまうのだ!
 世界旅行からイカダ(笑)をこいで東京湾に帰ってきたリュウソウレッドことコウと埠頭(ふとう)で初対面を果たした充瑠は、コウの見事な似顔絵を描き上げたものの――本編美術スタッフによるものだろうが、まさに「キラキラ」とした出来だ――、


「楽しい絵なら描けるんだけどね」


などとコウに嘆いている描写が、本作の劇的なクライマックスの伏線としても機能していたのだ。


 充瑠とコウはムービー邪面の映画製作を中止させるためには、邪面が持っている映画撮影の開始や終了を合図するカチンコを奪う必要があると気づいた。そして、映画のヒロインに起用された女子高生姿のマブシーナ姫が見せたパンチラ(笑)に感動したムービー邪面がカチンコを落としたことから、それを奪うためにムービー邪面を感動させようとする。
――余談だが、以前はフェティッシュなアングルで女優を撮りまくっていた坂本監督がその手法を近年「封印」していることが筆者はやや不満であり、マブシーナ姫のパンチラもどきの演出には溜飲(りゅういん)が下がったものだった(爆)――


 だが、すっかりスランプに陥(おちい)ってしまった充瑠はいつもの「ひらめキ~~ング!」が発揮できずに、ムービー邪面を感動させるための名案が全然浮かばない。


 そんな充瑠を先輩レッドのコウが叱咤激励(しったげきれい)する!


「考えるな! 楽しめ!」


 このセリフの原典はもちろん、往年の名作カンフー映画燃えよドラゴン』(73年・香港)における「考えるな! 感じるんだ!」である(笑)。


 それはともかく、「考えるな! 楽しめ!」という言葉が、テレビシリーズの『リュウソウジャー』に登場したキャラの心の変遷(へんせん)と成長から導かれたものだとコウが語ることで、キラメイジャーとリュウソウジャーの華麗なる逆転劇にいっそうの高いドラマ性が与えられたのだ!
 コウは該当キャラクターの具体名は伏せて「いつも動画を撮影していた友だち」だとしか語らないが、『リュウソウジャー』でそれに該当するキャラといえば、リュウソウジャーがその居候(いそうろう)生活でお世話になった古生物学者・龍井尚久(たつい・なおひさ)のひとり娘・龍井ういのことだ。


 ういは自ら開設した動画サイト「ういちゃんねる」で撮影した動画を配信するも、ネット上での評判は散々なものだった。しかし、それを気にするよりも自身が楽しいと思える動画を撮ることこそが大事だと悟(さと)ったういは、最終展開では映画撮影スタッフとしてハリウッドに招かれるまでに至ったものとして描写されていたのだ!
――なお、テレビシリーズの該当場面が回想としていっさい流れなかったのは残念だが、ういを演じた金城茉奈(きんじょう・まな)は2020年12月1日に24歳の若さで亡くなられたばかりである。ご冥福をお祈りいたします――


 ラストシーンでは、コウは充瑠にういを「今度、紹介する」と云って「仲良くなれると思うよ」とも語っていた。それは充瑠もういも「生みの苦しみ」をかかえているような「クリエイター的気質」を持つという共通点のみではなかった。
 『リュウソウジャー』の序盤では、ういがコウ・メルト・アスナを自宅に連れてきた際に、龍井は「娘が初めて友達を連れてきた!」と大喜びしたものだったのだ。
 『キラメイジャー』の実質的な第1話として製作された映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1)にて描かれたように、充瑠もまた絵の才能を理解されない同級生から「落書き野郎!」とさげすまれ、女子生徒たちからもバカにされる(ひとり)ボッチ高校生だったのだ。
 ういと同様の気質を充瑠に見い出したからこそ、コウは充瑠がういと「仲良くなれると思うよ」と確信したのであって、ういの成功談からコウが会得(えとく)した「考えるな! 楽しめ!」というセリフを、ういに「似た者」でもある充瑠にコウが投げかけるのは実に説得力にあふれているのだ。


 まぁ、「似た者同士」という観点からすれば、充瑠もコウもレッドとしては熱血度がかなり低いという点では共通しているともいえるだろう。
 今回の「VS」対決があくまで劇中劇の中での「お芝居」にとどまって、キラメイジャーVSリュウソウジャーの全面対決という作劇にはならなかったのは、両戦隊のリーダーのキャラ・気質からすれば相応の理もあったかとも思えるのだ。


 そして、大逆転劇の作劇として実に秀逸なのは、『リュウソウジャー』の最終回(第48話)『地球の意思』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200323/p1)にてリュウソウジャーが相棒であるメカ獣こと騎士竜たちを封印した件もキチンと踏襲しており、クライマックスに至るまでリュウソウジャーを変身不能とすることで、その変身と騎士竜ティラミーゴ・トリケーン・ミルニードル・タイガランス・アンキローゼの復活、さらにそれらが「竜装合体!」した巨大ロボ・キシリュウオーファイブナイツの誕生を、ご都合主義に終わらせずに高いドラマ性を持って描き切ったことだろう。
 その前段として、リュウソウジャーが変身前の人間態で戦闘員・ベチャットの大軍勢と戦うもやや苦戦モードで描くことで、「変身の必然性」を与える「やられの美学」に徹した演出も、クライマックスバトルの感動を深くするには絶大なる効果を上げている。
――なお、「やられの美学」とは、『仮面ライダーV3(ブイ・スリー)』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140901/p1)にて主人公の風見志郎(かざみ・しろう)=仮面ライダーV3を演じた宮内洋(みやうち・ひろし)が、仮面ライダーへの変身に必然性が感じられるようにスタッフ諸氏に提言した手法のことだ。もちろん、変身前のナマ身の自分を少しでも長くテレビに映したいという意図もあったようだが(笑)――


 充瑠が即興で歌ったミュージカル調の歌曲は、充瑠とコウの「青春学園映画」の世界のみならず、ほかの映画の世界でも並行して皆がコレに合わせて踊りだす演出は、まさにアイドルアニメ『ラブライブ!』シリーズ(13年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1)などを彷彿とさせる(笑)。
 この歌曲に感動(笑)したムービー邪面が落としたカチンコを、コウが「カット!」よろしく鳴らしたことで、キラメイジャーとリュウソウジャーは映画の世界からの脱出に成功する!


 だが、現実世界=造成地(爆)に戻るや、ムービー邪面はマブシーナ姫を人質に!
 とらわれたマブシーナ姫が流した涙が水色の結晶と化した宝石を為朝は拾い集めて、「ギャンブル映画」の中でともに映画の世界からの脱出策を練っていたメルトにそれを手渡した。
 宝石に騎士竜たちが復活するように願いを掛けろと語った為朝にリュウソウジャーたちは不可能だと返す。しかし、ここで充瑠が「考えるな!」とリュウソウジャーたちを逆に諭(さと)してみせることが、コウによる「考えるな! 楽しめ!」との絶妙な係り結びともなっていた。


 キラメイジャーから贈られた宝石を手に、コウ・メルト・アスナ・トワ・バンバが順番にそれぞれの相棒の騎士竜復活を願う場面では背景が黒一色となり、テレビシリーズの『リュウソウジャー』で定番だった静かなメロディで、実に勇壮で荘厳(そうごん)に響いていた劇中音楽が流れる演出が、観客の感情移入と場面を一気に高めるのに絶大なる効果を上げていた。


 復活した騎士竜たちが合体して巨大ロボ・キシリュウオーファイブナイツの勇姿をリュウソウジャーの前に現す! そこにキラメイジャーの相棒であるメカ生命体こと魔進(マシン)たちもにぎやかに駆けつけてくる。
 そして、一同がせいぞろいしたところで、2大戦隊がいっせいに変身をとげる様式美におおいなるカタルシスが感じられたのは、「考えるな! 楽しめ!」として互いを高めあってきたリュウソウジャーとキラメイジャーの関係性が、ここまで実にきめ細かく描かれてきたからに相違ないのだ。


 さらに、キラメイレッドがスケッチブックにリュウソウレッドが「キラメイ装」した姿を想像して描いたところで、リュウソウジャーが変身に使うアイテム・リュウソウルがキラメイソウルへと変化して、それをリュウソウケン(剣)へとセットしたリュウソウジャーたちが充瑠の定番セリフ「ひらめキ~~ング!」を叫ぶや、5人全員が充瑠のイメージどおりのキラメイ装リュウソウジャーと化していた!


 ラメの入ったシルバーの5枚の羽根にはそれぞれレッド・イエロー・グリーン・ブルー・ピンクの宝石があしらわれており、胸部のプロテクターにはやはり5色の宝石とキラメイシルバーと同じようなオレンジのラインが、さらに両肩にはマブシーナ姫やオラディン王をはじめとするクリスタリア人の姿を彷彿させる水色と金の装甲と、リュウソウジャーの「キラメイ装」のデザインはキラメイジャーの意匠を絶妙にブレンドさせている!


 また、本作では短い出番に終わった『キラメイジャー』のレギュラーキャラであり、地球防衛組織・CARAT(カラット)の代表・博多南無鈴(はかたみなみ・むりょう)によって騎士竜が封印された場所に連れていってもらったオトが、リュウソウジャーの専用剣・リュウソウケンを持ち帰ったことでリュウソウジャーと騎士竜は復活を果たすことができたのだ!


 そうした周辺キャラにもクライマックスバトルで多大なる勝機を与えるほどの大活躍をさせている展開も心地よい。そして、オトは戦闘員のベチャットにとらわれたマブシーナ姫の救出までしてしまうのだ!――オトを演じた田牧そら(たまき・そら)チャンによれば、これは台本にはなくて現場で監督によって加えられたものだったのだそうだ――
 もちろん、テレビシリーズで描かれてきたように、オトが要所要所でメルトへの愛を語ることも忘れられてはいない(笑)。
 ついでに、マブシーナ姫も例によってベチャットに頭突きをカマしており、「妹キャラ」推しのファンにはタマらないであろう、こうした演出も実にポイントが高いのだ。


*人員や時間の不足を感じさせないビジュアル・特撮・アクション!


 それにしても、今回は火薬の量がハンパない。特にキラメイイエローとリュウソウブルーが駆け抜ける周囲で連続爆破が繰り出されるカットは、スローモーションの効果でより印象に残ったとはいえ、おもわずスーツアクターの安否が心配になるほどのレベルだった(汗)。


 本映画のパンフレットによれば、本作公開時点でのスーパー戦隊シリーズ最新作『機界戦隊ゼンカイジャー』がほぼ「仮面劇」でスーツアクターアクトレスが大量に動員されているために、本作ではジャパンアクションエンタープライズ所属のメンバーの参加は実は少数にとどまっており、


・映画『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(09年・東映http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091213/p1
・映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦(たいせん)』(12年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201115/p1
・映画『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z(ゼット)』(13年・東映
・『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190406/p1


といった、あまりに多数の仮面キャラが登場していた作品には人手不足で応援として招かれていた「B.O.S.(ビー・オー・エス)アクションユニティ」所属のメンバーがほとんどを占めている。
 代表の岩上弘数(いわがみ・ひろかず)は昭和の時代から仮面ライダースーパー戦隊で活躍してきたスーツアクター・新堀和男(にいぼり・かずお)が創業したレッドアクションクラブの出身である。2004年に退団後にB.O.S.アクションユニティを設立。かつて坂本監督が深く関わっていたアメリカ版のスーパー戦隊パワーレンジャー』シリーズ(93年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1)をはじめ、平成の仮面ライダースーパー戦隊にも多数参加してきた経歴を持った人物だそうだ。


 「ヨドン映画」が上映された映画館の外側にある階段を移動しながらベチャットと戦うキラメイレッド&キラメイグリーンは、坂本監督によればテレビシリーズと同じくそれぞれ伊藤茂騎(いとう・しげき)と五味涼子(ごみ・りょうこ)がなんとか演じることができたそうだ。
 しかし、逆に云うならば、それ以外のシーンや映画館のバルコニーから宙返りして着地するキラメイイエローなどもB.O.S.のメンバーなのだろうか?
 テレビシリーズでもアクロバティックなアクションが多かったキラメイイエローの忠実な再現具合は筆者には到底見分けがつかないほどなのだが、マニアであれば本来のアクター&アクトレスとの微妙な所作の違いを探してみるのも面白いかもしれない。
 ちなみに、クランチュラはテレビシリーズと同じく神尾直子が演じているが、口元が露出したキャラだからかやはり代役は難しいのだとも思われる(笑)。


 そして、アクター&アクトレスの演技もさることながら、


・『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)中後盤の大ピンチ回がおそらく初出で、『仮面ライダーエグゼイド』(16年)や『仮面ライダービルド』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181030/p1)のころから散見されるようになった、小型無人飛行機・ドローンを使用しての等身大バトルの俯瞰(ふかん)撮影
・『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190402/p1)でよく見られた、YouTuber(ユーチューバー)御用達(ごようたし)の長い棒の先に付けた自撮り用小型カメラが縦横無尽(じゅうおうむじん)に壮絶な敵味方のバトルの中に入りこみ、アップとロング(引き)なども交互に繰り返しながら全方位からとらえる演出
・坂本監督独自の手法ではないものの、氏が多用するカメラを斜めに傾けたり不安定に揺らす撮影


などなど、本作では近年はエスカレートしていく一方のアクション演出の技法をすべてごった煮として、クライマックスバトルを料理したかのような印象だ。
 まぁ、監督陣も負けず嫌いの人が多いのだろうから(汗)、その監督同士のバトルの成果として迫力あふれる演出が新たに生みだされるのならば、今後もおおいに張り合っていただきたいものだ。
 そういえば、2010年代以降のニュージェネレーションウルトラマンシリーズの巨大特撮でも、近年は坂本監督と田口清隆(たぐち・きよたか)監督が互いの技法をパクりあってるように思えてならない(笑)。


 本作の巨大ロボ戦も坂本監督によれば、スケジュールの都合でなんと等身大のクライマックスバトルが撮影されたロケ地で等身大戦と並行して撮ったのだとか(汗)。
 近年のニュージェネレーションウルトラマンでもよく見られる、ウルトラマンと怪獣とのバトルを真下から超アオリでとらえる演出も、今回の巨大戦演出では採用されている!
 しかも、2大戦隊ロボと対決する巨大怪獣・ムービーマイナソーはカントクマイナソーと名前が違うだけで、着ぐるみの造形は完全に同じだったりする(笑)。


 にもかかわらず、今回の巨大戦が近年の「VS」映画と比べても充実感・カタルシスが得られたのは、見るからに動きにくそうなゴテゴテとした装飾の多い造形のキラメイジンやキシリュウオーファイブナイツがアクロバティックな動きを披露したり、各種必殺ワザの美しいCGもさることながら、先述してきたように合体ロボの登場や復活へと至る助走台も高いドラマ性を持って描いてきたことが大きかったためだろう。


 また、真下からの超アオリ演出にしてもそうだが、ムービー邪面のマイナス感情と4体のカントクマイナソーが合体する描写を入れることで、同一の着ぐるみなのにムービーマイナソーを別モノに見せてしまう映像のマジックなど、時間や予算の制約を逆手にとったアイデア満載の演出も炸裂していたのだった。


*『キラメイジャー』真正後日談をめぐる逆境をも、逆手にとった新展開であるべきだ!


 さて、この『キラメイジャーVSリュウソウジャー』の公開をはさんだかたちで2021年4月11日の静岡県静岡市を皮切りに、4月17日&18日の愛知県名古屋市、4月25日の北海道札幌市、5月16日の宮城県仙台市、5月22日の広島県広島市、5月23日の福岡県福岡市、5月29日&30日の大阪府大阪市の全国7都市で『魔進戦隊キラメイジャー ファイナルライブツアー2021』の公演が組まれていた。
 内容は第1部『ファイナルライブ~さらば愛(いと)しのやつら~』と第2部『キラトーーク!&キラメイ音楽祭』の2部構成である。
 第1部は最終回におけるヨドン軍崩壊~ラストでの3ヶ月後のキラメイジャー久々の再会に至る、空白の「3ヶ月」の間に起きた出来事、つまり『キラメイジャー』最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220503/p1)では描かれなかった部分を、同作のメインライターを務めた荒川稔久(あらかわ・なるひさ)自身が書き下ろした脚本による正史ともいえるアトラクションショーなのである! 第2部はメインキャスト6人のトークと主題歌を歌唱した大西洋平&出口たかしによるライブステージだった。


 だが、周知のとおり2021年4月中旬以降、全国各地で新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の発令が相次ぎ、『ファイナルライブツアー2021』の開催都市も静岡市以外はすべて緊急事態宣言が出されたために、ゴールデンウィークをはさんだ後半の公演に影響を及ぼしてしまった。
 仙台市は公演直前に宣言が解除されたが、広島市と福岡市は公演前の5月中旬に追加で宣言が出されたものの、「収容人員の50%(パーセント)の動員上限」で座席販売を行い、万全の感染対策で予定どおりの開催が決定した。


 問題は「千秋楽(せんしゅうらく=最終公演)」の開催が予定されていた大阪市だ。大阪ではコロナの感染拡大が最も深刻な状況になっていただけに、29日の通常公演は中止。魔進たちの声を演じたメイン声優たちや博多南を演じた古坂大魔王(こさか・だいまおう)、ヨドンナ役の桃月なしこ、クランチュラの声を演じた高戸靖広(たかど・やすひろ)らも登壇する30日の「スペシャル公演」は無観客で開催し、有料ナマ配信を実施することとなった――東映ビデオから2021年9月8日発売予定であるブルーレイ・ディスク用の収録も行われるとのことだ――。


 前年度の『騎士竜戦隊リュウソウジャー ファイナルライブツアー2020』は、日本ではじめてコロナの感染が深刻化した2020年春の開催予定であったために全公演が中止(!)となったことを思えば、『キラメイジャー ファイナルライブツアー』はまだ救われた方なのかもしれない。
 ただし、特撮やアニメにかぎらず、ありとあらゆるイベントが無観客開催でのネットでの有料ナマ配信が当然となってきている現状については、他人の助けを待つだけだったり、座して死を待つだけのような乞食的で卑屈な負け犬根性・奴隷根性なぞではなく、転んでもタダでは起きない、たくましくも自らの足で立ち上がっていく、新たなるビジネスモデルも急速に構築されてきているようで、実に頼もしいかぎりではある。


 しかし、テレビシリーズも含めれば、『魔進戦隊キラメイジャー』は「最も新型コロナウィルスの影響を受けたスーパー戦隊」として後世に名を残すこととなってしまった。
 おそらくは、今後のスーパー戦隊もなんらかのかたちで悪影響がおよぶことはもう避けられないことと思えるのだが、せめて『キラメイジャー』ほどの被害がないことを願うばかりである。

2021.5.21.


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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