『騎士竜戦隊リュウソウジャー』序盤合評
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『騎士竜戦隊リュウソウジャー』中盤評 ~私的にはスッキリしない理由を腑分けして解析。後半戦に期待!
(文・久保達也)
(19年10月30日脱稿)
*「6番目の戦士」登場! だったが……
改元の1ヶ月半前にスタートしたことで事実上「平成」最後のスーパー戦隊となった『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年)の第2クール開幕となる第14話『黄金の騎士』で、スーパー戦隊ではもはや恒例(こうれい)の「6番目の戦士」となるカナロ=リュウソウゴールドが初登場した。
主人公となるリュウソウジャーの5人はリュウソウ族なる古代人類の末裔(まつえい)だが、6500万年前にそのリュウソウ族の間で起きた激しい対立を機に、一部の人々が決別して海中生活をすることとなり、カナロはその海底人類の末裔なのだ。
古い世代的には『ウルトラセブン』(67年)第42話『ノンマルトの使者』に登場した海底原人ノンマルトを彷彿(ほうふつ)とさせる設定だが、その海のリュウソウ族が少数民族となっているため、カナロは子孫を増やすために「婚活」として次々と女性をナンパする。
いや、近年の「6番目の戦士」といえば、『手裏剣(しゅりけん)戦隊ニンニンジャー』(15年)に登場した、忍者のクセにカウボーイスタイルでエレキギターをかきならし、ハンバーガーのアイテムで変身した(笑)キンジ・タキガワ=スターニンジャーとか、『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)の、子供のころから体も気も弱くて友達がいなかった(ひとり)ボッチ青年(爆)の門藤操(もんどう・みさお)=ジュウオウザワールドとか、『快盗戦隊ルパンンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190404/p1)で、ルパンンレンジャー側のルパンエックスとパトレンジャー側のパトレンエックスに変身して双方を行き来する、コウモリみたいな高尾ノエルなど、一見とんでもねぇキャラなのがあたりまえになっていた。
なので、それらに比べりゃカナロの「婚活」なんかむしろおとなしいくらいだ(笑)と思っていたものだが、カナロ=「6番目の戦士」の参入で『リュウソウジャー』も活性化するかと思いきや、あくまで個人的な印象ではあるのだが、第1クールに感じた一種のもどかしさは、第2クールに入ってもしばらくは解消されていないような感が強かった。
そもそもカナロ初登場の第14話の本編ゲストが、高利貸しからの借金を返せずに苦しむ男の婚約者というのは……それならいっそのことカナロがアスナ=リュウソウピンクに結婚を迫るような、ドタバタラブコメディの方が子供にもウケたのではないのだろうか?
『リュウソウジャー』ではかつてリュウソウ族と地球の覇権(はけん)をめぐって争っていた戦闘民族ドルイドンが敵組織として登場し、人間のマイナス感情を利用してマイナソーなる怪人を生みだしている。
この設定によってゲストとなる一般人のマイナス感情が描かれてきたのだが、そのためにどうしても本編のドラマがやや陰鬱(いんうつ)で湿っぽい印象に陥(おちい)りがちといった感が強かった。
一般人のほかにも第13話『総理大臣はリュウソウ族!?』に登場した狩野澪子(かのう・みおこ)や、第21話『光と闇の騎士竜』&第22話『死者の生命!?』で復活したマスターピンク=先代リュウソウピンクなど、リュウソウ族からマイナソーが生まれる回は通常回以上に陰鬱となり(笑)、「平成」ウルトラマンシリーズが得意とした「光と闇」は、やはりスーパー戦隊にはふさわしくないと痛感させられたものだった。
ただ、人間の欲望や怒り・憎悪(ぞうお)などのマイナスエネルギーが怪人化するのは「平成」仮面ライダーでは定番だったものだが、少なくとも『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100809/p1)以降の第2期「平成」ライダーの作風に対しては、陰鬱な印象は微塵(みじん)も感じられなかったものだ。
では同様の設定で怪人が誕生する『リュウソウジャー』には、ナゼその印象がつきまとうのか? その原因は作品の根幹(こんかん)をなす要素が、以下のようであることに尽(つ)きるかと思える。
*『リュウソウジャー』がスッキリしない理由とは?
まずマイナソーが従来のスーパー戦隊に登場した怪人とは異なり、人間の言葉でベラベラしゃべることがなく、自身が最も想いを寄せるモノをひたすら口走るだけであることだ。
2019年10月から無料動画配信サイト・YouTube(ユーチューブ)で配信が開始された『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011113/p1)の時点ですでにそうだったのだが、00年代以降のスーパー戦隊に登場する怪人たちは、それ以前の怪人がひたすら凶暴だったのとは異なり、デザイン自体は正統派の怪人でカッコいいにもかかわらず、その言動や行動はギャグ系なのが圧倒的であり、戦隊ヒーロー&ヒロインとのバトルの中でさえも、ボケとツッコミのかけあい漫才的なやりとりが描写されるのがあたりまえとなっていた。
20年にも渡ってそれを観せられてきただけに、マイナソーに視聴者が違和感をおぼえるのもある意味当然かと思えるのだが、少なくともマイナソーが従来のようなギャグ系の怪人として描かれていたならば、本編に対する陰鬱な印象もかなり軽減されるのではあるまいか?
また従来のスーパー戦隊に登場した悪の組織といえば、宇宙に浮かぶ巨大な艦船とか闇夜を背景にした異様な城とか暗闇の中の洞窟(どうくつ)とかに拠点(きょてん)をかまえ、大首領を中心に粗暴犯・知性派・悪女などの複数の幹部が存在し、怪人たちや戦闘員を従える大軍団として描かれたものだった。
だが『リュウソウジャー』の敵・ドルイドンは、これまでにタンクジョウ・ワイズルー・ガチレウスと幹部交代は描かれたものの、それら幹部と毎回マイナソーを生みだすコミカルキャラ・クレオンとのコンビ以外には戦闘員が登場するのみであり、彼らの背景に巨大な悪が存在することすらにおわせる描写もない。
そして当初は「ひみつ基地」すらも用意されておらず、ドルイドンの幹部とクレオンが人間界で野宿生活(爆)の末に、ようやくかまえた悪の巣窟(そうくつ)は天井(てんじょう)にミラーボールが回るカラオケスナックなのだ……
つまり、ドルイドンは悪の軍団としてのスケール感がただでさえ圧倒的に不足していたにもかかわらず、そこにゲストのマイナス感情を中心にした話が描かれたために、その世界観がより小さく見えてしまっていた。
おまけに粗暴犯だったタンクジョウとガチレウスが比較的短い期間で退場したのに対し、最も長く登場している、青を基調にシルクハットとマント姿のマジシャン風のワイズルーが、それこそ『ウルトラマンタイガ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)の敵キャラ・ウルトラマントレギア並みに陰険(いんけん)な奴(笑)であることも手伝い、作風としては序盤からのやや陰鬱な印象をひきずったままといった感が強かったのだ。
これが従来のように粗暴犯・知性派・悪女といった幹部たちが週替わりでそれぞれの個性を活(い)かした作戦を展開するのであれば、少なくとも毎回似たような話がつづくといった印象もなかったのではなかろうか?
シリーズ前半のレギュラー悪だった異次元人ヤプールが、人間の妄想(もうそう)・欲望・執念(しゅうねん)などを利用して、怪獣を超える生物兵器・超獣を生みだす設定を途中で投げだした『ウルトラマンA(エース)』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070430/p1)の場合、少なくともそれ以降の方が視聴率は上昇したのだから、その前例に従ってマイナソーの設定を放棄(ほうき)せよ(笑)などと主張するつもりはない――ちなみに『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971121/p1)の場合は、人間のマイナスエネルギーが怪獣を生む初期の設定を捨てて以降の方が、逆に視聴率は右肩下がり(汗)となったのだから、そんな単純なものでもないのだろう――。
だが、せめて「6番目の戦士」の初登場回くらいゲストのドラマを描くのは遠慮して、新ヒーロー・カナロ=リュウソウゴールドのカッコよさを描くことに徹するべきではなかったのか?
カナロの登場から約1ヶ月後に公開され、本来ならそのキャラクターを売る絶好の機会であったハズの映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE(ザ・ムービー) タイムスリップ! 恐竜パニック!!』(19年・東映・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190818/p1)でも、カナロがリュウソウゴールドにいっさい変身せず(!)、ひたすらナンパするのみだったのもなんだかなぁ、と思ったものだが……
*『ゴセイジャー』における「6番目の戦士」!
先述した『百獣戦隊ガオレンジャー』と同じく、2019年夏以降にYouTubeで配信されている『天装戦隊ゴセイジャー』(10年)の「6番目の戦士」初登場回はepic(エピック)17『新たな敵! 幽魔獣』だったが、冒頭では内閣総理大臣や国民的アイドルグループ、人気スポーツ選手たちが次々に行方不明となる、全地球的規模とはいかなくとも日本を震撼(しんかん)させる大事態を描いてスケール感を拡大させていた。
それを起こしていたツチノコ型の強力怪人と新たな幹部を相手に、ゴセイジャーがビルの屋上で絶体絶命の危機に陥ったそのとき、戦隊ヒーローというよりはシルバーを基調としたメタルヒーローを彷彿(ほうふつ)とさせる「6番目の戦士」・ゴセイナイトが登場!
怪人たちを圧倒するパワーをゴセイジャーに見せつけ、ツチノコ怪人が巨大化して『ウルトラセブン』第28話『700キロを突っ走れ!』に登場した戦車怪獣・恐竜戦車みたいなキャタピラスタイル(!)に変化するや、ゴセイナイトも戦車型の巨大メカでこれに対抗したのだ!
つづくepic18『地球(ほし)を浄(きよ)める宿命の騎士』では、冒頭でゴセイナイトが地球の環境を汚染する湾岸工業地帯を破壊してしまう(汗)。ゴセイジャーが駆けつけるや、自分は人間を守るのではなく、あくまで地球を守るために戦っているのだと主張してゴセイジャーと対立する。
まさに『ウルトラマンガイア』(98年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19981206/p1)の2号ウルトラマン・ウルトラマンアグルを彷彿とさせるものの、延々と人類批判セリフを口走る(笑)ワケではなく、「人類は愚(おろ)かだ。守る価値もない」とひとことつぶやくのみであり、陰鬱な印象は皆無(かいむ)に等しかった。
それはミイラ怪人がテレビ局をジャックして放送を観た視聴者を凶暴化させるスケールの大きな作戦を展開しながらも、テレビ朝日の長寿番組『徹子(てつこ)の部屋』(76年~)のスタジオセットを再現して司会のミイラ怪人がゴセイジャーをゲストに迎える(笑)といったコミカルな描写や、「人類を守る気はない」とラストバトルを放棄して立ち去ろうとしたゴセイナイトに、アラタ=ゴセイレッドがいっしょに戦わなくてもいいからオレたちが何のために戦っているか見てくれよと呼びかけ、それを合体ロボ・ゴセイグレートが巨大化したミイラ怪人を倒すことで体現したように、両者の関係性を役者の語りではなく、あくまでバトルアクションで示した演出も大きかったのだ。
ちなみに『ゴセイジャー』では悪の組織が宇宙虐滅(ぎゃくめつ)軍団ウォースター→地球犠獄(ぎごく)集団幽魔獣→機械禦鏖(ぎょおう)帝国マトリンティスと、幹部交代にとどまらず侵略宇宙人軍団→未確認生物軍団→ロボット軍団と組織そのものの交代劇が描かれ、ゴセイナイトはウォースターよりも強力な幽魔獣の出現とともに登場したことで、その印象をより強めることに成功していた。
だから『リュウソウジャー』もカナロの登場を機に、人間のマイナス感情で怪人を生むドルイドンを退場させて、もっと強力な悪の組織への交代劇を描くことで、リュウソウゴールドを印象強く見せる手法もあったかと思えるのだ。
また『ゴセイジャー』のepic15『カウントダウン! 地球の命』&epic16『ダイナミック・アラタ』はウォースターの壊滅劇を描く前後編であり、第2クール初頭の時点で早くも地球最大の危機が描かれていたのは特筆に値する。
空に浮かぶ映像で人類に宣戦布告する首領のドレイクの声を務めたのが、『人造人間キカイダー』(72年・東映 NET→現テレビ朝日)のダークヒーロー・ハカイダー以来、東映変身ヒーロー作品で悪の声を長年演じつづけてきた大ベテラン・飯塚昭三だったのも説得力を高めていたかと思える。
ただ、そこに至るまでの『ゴセイジャー』の第1クールは、そのキャラを掘り下げるために毎回特定のメンバーを主役にした、かなりコミカルなカラ騒ぎ的な作風に徹していたのだ。
特にエリ=ゴセイピンクを演じたさとう里香(りか)とモネ=ゴセイイエローを演じたにわみきほはすでにバラエティ番組やグラビアなどの活動実績があったためか、『ゴセイジャー』はヒロインを強調する演出が多くて個人的にはありがたかったのだが(笑)、やや軽薄なその作風はマニア諸氏からの風当たりは強かったようで(汗)。
*少々心配な『リュウソウジャー』の周辺事情
「6番目の戦士」にとどまらず、『リュウソウジャー』でも新たな騎士竜が定期的に続々登場したり、ヒーローのパワーアップや合体ロボのバリエーションはそれなりに描かれてきたのだが、それらを印象強く見せるための前後編が『リュウソウジャー』では従来と比べて数が少なく、その作風もイベント編というよりは人間ドラマ主導の感が強かった。
またティラミーゴやディメボルケーノ、モサレックスなど、騎士竜が人間の言葉でしゃべりまくる演出もなされ、特に中心となるティラミーゴは等身大となってリュウソウジャーとからむ描写も見られるようになったものの、これも毎回というワケではないために、『炎神(えんじん)戦隊ゴーオンジャー』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080824/p1)の動物と乗り物を融合させた機械生命体・炎神たちが終始にぎやかだったのと比べるとその印象はやや弱かったのだ。
これは序盤から「話が重い」との指摘が多い(笑)『ウルトラマンタイガ』でもそうなのだが、ウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマが半透明のミクロ化した姿となり、本編ドラマで主人公の周囲をチョロチョロする描写が初期には多く見られたものの、その後はご無沙汰(ぶさた)となってしまっているのと同様だ。
「子供番組」で重い話をやりたいのなら、バランスをとるためにそれは必須ではないのだろうか?
『リュウソウジャー』は第1話『ケボーン!! 竜装者』&第2話『ソウルをひとつに』が現時点での最高視聴率3.7%を記録して以降、第5話『地獄の番犬』までは3%台を維持したものの、それ以降は第13話と第15話『深海の王』以外は2%台を推移した末に、第22話はいわゆる「夏枯れ」もあったのだろうが1.4%と、それこそテレビ東京で土曜の朝に放映されているウルトラマンシリーズと変わらぬ低い数字を記録してしまった。なお、第28話『ミクロの攻防』時点での平均視聴率は2.7%である。
ちなみに前作『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』の最高視聴率は第5話『狙われた国際警察』の4.5%、最低視聴率は第26話『裏のオークション』の1.8%――やはり「夏枯れ」となる8月の放映だった――であり、平均視聴率は3.0%だったことから、『リュウソウジャー』は現時点ではこれを下回っているのだ。
実は先述した『炎神戦隊ゴーオンジャー』の途中からスーパー戦隊、『仮面ライダーウィザード』(12年)の終盤から『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080824/p1)までの仮面ライダーと、長らく『スーパーヒーロータイム』の両シリーズをチーフ・プロデューサーとして手がけてきたテレビ朝日の佐々木基(ささき・もとい)が、やはりテレ朝側のプロデューサー・菅野(すがの)あゆみとともに、第18話『大ピンチ! 変身不能!』をもって『リュウソウジャー』を降板している――第18話のサブタイトルが、この事態を端的に象徴しているような(大汗)――。
これは個人的には『仮面ライダー響鬼(ひびき)』(05年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070106/p1)の東映側のプロデューサー・高寺成紀(たかでら・しげのり)が、商業的な不振や撮影の遅延(ちえん)などを理由に途中降板したことをどうしても彷彿としてしまうのだ。
また『リュウソウジャー』のパイロットとなる第1話&第2話は上堀内佳寿也(かみほりうち・かずや)監督が演出したことから、『リュウソウジャー』のメインは上堀内監督なのかと思いきや、氏はほかに第19話『進撃のティラミーゴ』&第20話『至高の芸術家』、第32話『憎悪(ぞうお)の雨が止(や)む時』と計5本しか撮っておらず、この時点で単純に本数で見ると渡辺勝也監督と坂本浩一監督がともに計7本と上堀内監督よりも多いため、いったい誰がメイン監督なのかがわからない状況となっている(爆)。
それにしても、かつて東映の宇都宮孝明プロデューサーから「巨大戦の達人」とまで評されたほどに、スーパー戦隊の巨大メカ戦に深いこだわりを見せる竹本昇(たけもと・のぼる)監督が『リュウソウジャー』に参加していないのは実に不可解だ。
さらにメインライターの山岡潤平(やまおか・じゅんぺい)もクールの変わり目や新ヒーロー・新メカ登場などの主要回は書いているが、氏がアニメすらも書いたことがない初心者のためか、ベテランの荒川稔久(あらかわ・なるひさ)をはじめとするサブライターの参加が従来と比べるとかなり多いことも、『リュウソウジャー』の特異な点ではある――ちなみにアスナの体内にコウ=リュウソウレッドとメルト=リュウソウブルーが突入する第28話『ミクロの攻防』は『ウルトラセブン』第31話『悪魔の住む花』を彷彿とさせたが、もちろんウルトラマンを書きたくて脚本家になった荒川先生の作品だ(笑)――。
こうした製作事情を見るにつけ、『リュウソウジャー』はシリーズ構成的に果たして大丈夫なのか? と不安にさせるものがあったのだが……
*『リュウソウジャー』最大の弱点とは!?
総集編だった第23話『幻のリュウソウル』以降、『リュウソウジャー』は明らかにコミカル演出をかなり強調した作風へと転じ、ゲストのドラマに深入りすることも少なくなったが、その第23話を観て筆者はあることに気づかされた。
こんなカッコいい場面あったか? と何度も思わされたほどに、アクション演出や特撮演出はやはり光るものがあったのだが、その印象を薄くしてしまうほどに本編ドラマの陰鬱さの方が強かった、ということもあるのだがそれだけではない。
思えば近年のスーパー戦隊で放映された総集編は単なる名場面集にとどまらず、シリーズの縦糸となる要素の進展が、たとえ断片的ではあっても描かれるのが常だったものだ。
だが『リュウソウジャー』の総集編は、この回限定のリュウソウルをめぐるメンバーたちのカラ騒ぎが描かれたのみであり、それ以外は単なる名場面集だったのだ(笑)。
陸のリュウソウ族・リュウソウジャー、リュウソウゴールドをはじめとする海のリュウソウ族、そして敵のドルイドンの間には6500万年前に端を発する因縁(いんねん)があるにもかかわらず、総集編の枠を使ってまで描くほどでもないくらいに、彼らの間の6500万年もの深い因縁を活(い)かした縦糸となる要素があまりにも希薄(きはく)である。
これこそが『リュウソウジャー』が連続ものとしてではなく、「昭和」のスーパー戦隊のように1話完結形式で1回くらい見逃してもかまわないといった印象を、視聴者に植えつけてしまっているのではなかろうか?
たとえばリュウソウレッドの先代のマスターレッドに倒されたドルイドンの幹部の子孫とか、カナロ以外の海のリュウソウ族が、リュウソウジャーや陸の人類に復讐(ふくしゅう)しに来るとか。
変身アイテムやさまざまな特殊能力を持つリュウソウルにしろ、単に集めるのみではなく、『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』のルパンコレクションとか『仮面ライダージオウ』のライドウォッチみたいに、それらを集めることでごほうびがもらえる(笑)ように描かなければ、子供も集め甲斐(がい)がないのではなかろうか?
*ついに「救世主」登場か!? 「7番目の戦士」!
そんなことを考えていたら、第2クールのラストとなる第26話『七人目の騎士』で「7番目の戦士」としてナダ=ガイソーグが登場した。
関西弁で話す気のいいにいちゃんとして当初は描かれていたが、かつてマスターレッドの弟子としてバンバ=リュウソウブラックとともに修行していたものの、リュウソウジャーに選ばれなかったことに恨(うら)みをつのらせ、宇宙の辺境で最強の鎧(よろい)=ガイソーグを発見し、それを装着することで強大な力を身につけたという、リュウソウジャーと実に因縁が深いキャラとして設定されているのだ。
ちなみにガイソーグは先述した映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE』に登場した6500万年前のリュウソウ族・ヴァルマ――大のゴジラ好きで知られる俳優・佐野史郎(さの・しろう)が演じた――が対ドルイドン用の鎧として開発したものであり、これを映画1回こっきりの設定に終わらせるどころか、テレビシリーズ後半の縦糸となる要素にまで昇華させたことはおおいに評価されるべきだろう。
第29話『カナロの結婚』&第30話『打倒! 高スペック』は坂本浩一監督によって、消防法違反ではないのか? と思えるほどに(笑)廃工場内でハデに火薬を爆発させる中でバトルアクションが演じられたり、近年のウルトラマンシリーズのように巨大怪人をオープンセットで超あおりでとらえたり、ミニチュアセットの部屋の主観で巨大メカ戦を撮ったりと、見せ場自体も確かに充実していた――第2クールまでに坂本監督はすでに4本も撮っていたのだが、その作家性すらも『リュウソウジャー』ではあまり活かされてはいなかったような気が……――。
だが、カナロが結婚=「私」よりもリュウソウジャー=「公(おおやけ)」を選択したり、500年前にトワ=リュウソウグリーンの先祖であるマスターグリーンがガイソーグを装着し、鎧の呪(のろ)いによって仲間たちを殺害した末に人知れず亡くなった過去をナダが語ったり、そのナダがガイソーグであることを知ってさえも仲間として受け入れようとしたコウが、「おまえのそういうとこがホンマに嫌い」としてナダに斬りつけられたり……といったキャラの心の変遷(へんせん)や関係性の変化が点描されたことで、本編ドラマの群像劇と等身大アクション&巨大戦特撮のクライマックスが華麗に融合して双方をもりあげることとなったのだ。
当初はリュウソウジャー側の味方のように描かれていたナダの立ち位置をシャッフルさせることで、第3クールに入るや「平成」仮面ライダーを彷彿とさせる様相を呈(てい)してきた『リュウソウジャー』だが、ここに至るまでが実に長かった(笑)。
まぁ、後半戦には期待していいのかも。
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