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仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010

『仮面ライダーW』 〜序盤評 本邦探偵ものに見る「探偵物語」の色濃い影響
『仮面ライダーディケイド』最終回「世界の破壊者」!
『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』
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 映画『仮面ライダー×仮面ライダーオーズ&ダブル  MOVIE大戦CORE(ムービーたいせんコア)』公開記念! ……とカコつけて(汗)、昨2009年の映画『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010(ムービーたいせん・にせんじゅう)』評をUP!


仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』

(2009年12月12日封切)
(脚本・米村正二 三条陸 監督・田崎竜太 アクション監督・宮崎剛 特撮監督・佛田洋

速報! これが『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』だ!!

(文・森川由浩)
(2009年12月30日執筆。同人誌折込みコピー速報用短縮版 〜完全版は後日上書きUP予定)

第一幕『仮面ライダーディケイド〜完結編〜』

 

 何よりも今回の映画化により、『仮面ライダーディケイド』(09・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090308/p1)が、ポスト『電王』化していることに気付いた。
 そう、『仮面ライダー電王』(07・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)は近年の平成ライダーではヒット作の部類に属し、シリーズの活性化に貢献、テレビシリーズが終了後も続編の映画が何本も製作される活況を呈した。
 が、今年(2009年)のGW(ゴールデンウィーク)にいくら『超・電王』と銘打って、『劇場版 超・仮面ライダー電王&ディケイド NEO(ネオ)ジェネレーションズ 鬼ヶ島の戦艦』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100524/p1)として再スタートを切ったとはいえ、『ディケイド』があの宙ぶらりんな最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090829/p1)のあとに映画で続編(完結編)を描くと宣言した時点で、既に『電王』の時代は終わったようにも思える。そう思うのも最近の『電王』関連の諸展開の沈静化は、昨年までのフィーバー振りがまるで嘘のようだからだ。


 実際、筆者も『ディケイド』がここまで注目を集めるとは思っていなかった。オリジナルキャストを再度招集できない状況を逆手に取り、オリジナルとは別の世界の名のみ同じの平成仮面ライダーで別人たちが変身する姿を描く、パラレルワールドを旅していくロードムービーは、多くの視聴者の関心を集め、下降気味のテレビシリーズの視聴率は上昇、マーチャンダイジングの業績も同様。夏に公開した映画『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(09・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091213/p1)も歴代ライダー映画シリーズ最高の興行収入達成と、平成仮面ライダー10周年を飾るに相応(ふさわ)しい業績を上げている。


 “ウルトラマン誕生40周年”を銘打ってアニバーサリー作品を強調したが、作品の質とは裏腹に視聴率と玩具面の売り上げでは苦戦していた『ウルトラマンメビウス』(06・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)とは正反対の結果であることが、今更ながら実に対照的である。そんなことを秋口から痛感している。


 その『ディケイド』最終章を映画で描くことが本作の目印となり、多くのファンの注目を集めたが、映画公開直前にネット媒体「日刊サイゾー」にアップされた東映プロデューサー・白倉伸一郎のコメントがまた、視聴者=観客をはぐらかすような発言であった。


 “「テレビはテレビで終わっている」んです。”
 “その後に映画の告知をしたので、直結してそういう風に見えただけ。実は中途半端に終わっているのではなく、第一話に戻って終わっているだけなんです。告知を抜きにしてもらえば、円環構造を持ったシリーズとして完結しているんです。” 


 白倉が担当した(今のところ)最後の戦隊『五星(ごせい)戦隊ダイレンジャー』(93・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111010/p1)の最終回では、老人になったダイレンジャーたちが同窓会を行う中、そこに第一話登場に登場した敵怪人・紐男爵(ひもだんしゃく)が再登場する。ここぞとばかりに彼らの孫による新世代ダイレンジャーが登場し、敵を倒して終わった描写を、この発言に思い出した。
 『ダイレンジャー』最終回のラストは、番組としては一旦終了したが戦いはこれからも続くことを示唆する結末で終える形式によるフィナーレであり、第一話に戻ったわけではなく、次世代ダイレンジャーによる第一話とでもいうべき描写で終わったのであって、純粋な円環構造であったとは言い難い。しかし、『デイケイド』最終回は『ダイレンジャー』最終回のオマージュやリメイクとまでは言わないが、どことなく手法的に相通ずる結末だなといった見方はできるのだ。 


 ここで『ディケイド』最終回から数ヵ月も経った今頃になって、白倉が“円環構造”なる言葉を持ち出したのは、明らかに「苦し紛れ」であったとしか思えない。しかし、中にはその言葉巧みな釈明(言い訳?)に納得する向きもあるのだろう。明確なラストを見せずに続編で引っ張る手法も方法論ではあろう。映画人としてのビジネスライクな手法の匂いも感じつつ、何よりも“世間の関心”を集めることには成功している。


 そんな話題性で盛り上がる最中(さなか)、いよいよ封切りの時が来た。


  
 まず、冒頭での昭和仮面ライダーとの戦いが衝撃を与える。仮面ライダーディケイド・門矢士(かどや つかさ)は既に“世界の破壊者”という立場を自覚、ひたすら目前に現れるライダーたちとのバトルを展開していく。
 確かにテレビシリーズで「BLACK・RXの世界」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090802/p1)、「アマゾンの世界」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090809/p1)といった昭和ライダーたちが住むパラレルワールドを見せてきたのだから、昭和ライダーの登場は別段不思議ではない。
 CGをフルに活用したスカイライダーの飛行シーンなどスピード感溢れるとはいえ、やはりオリジナルの飛行シーンを見慣れた者としては違和感があったことは否めないが、実はパワーアップしたスカイライダーの飛行シーンは今回が初めてであることに気付き、文句はあってもいざ思い起こせば嬉しい描写であったのは事実だ。
 続いて仮面ライダースーパー1(ワン)、平成ライダーではあるが仮面ライダーカブトが登場、ディケイドと対戦するが、その強大なパワーの前に敗北していく。


 そして巨大化変身が可能な昭和ライダーである仮面ライダーJ(ジェイ)が巨人の姿で出現。ライダーJは先の夏映画『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』にも登場していたが、そこでの活躍は悪の巨人幹部・キングダークとの戦闘要員でしかなかった。しかも、ディケイド自身が巨大なディケイドライバー(変身ベルト)に超絶変形=ファイナル・フォーム・ライドして、巨大化している仮面ライダーJの変身ベルト部分に合体して、巨人サイズの仮面ライダーディケイド・コンプリートフォームとなった際の素体に留まってしまっていた。
 しかし、ここでは映像本編で見たかったライダーJの巨大なボディが繰り出すビル破壊の大胆なアクションを見せてくれる。これは山間で巨大化変身していた本家の映画『仮面ライダーJ』(94)の映像本編でもなかったシーンだ。こういう巨大ヒーローでしか出来ない特撮アクションを心行くまで見せてくれて、本当に満足であった。


 だがいきなり昭和ライダーとのバトルを展開するということは、他の昭和ライダーも同様に既にディケイドと闘ったのだろうか? こうした疑問が脳裏を過(よ)ぎったが、おそらく既に闘ったあとなのだろう。。


 その仮面ライダーディケイド・門矢士は、通称「ライダー大戦」なる旅の同行者として今回、岬ユリコ(みさき ゆりこ)・電波人間タックルを連れている。
 この電波人間タックルは、本来は『仮面ライダーストロンガー』(75)の主人公・城茂(じょう しげる)、電気人間ストロンガーこと仮面ライダーストロンガーの相棒の女戦士であり、平成になってからは時折登場するようになった女性ライダーの先駆け的な戦士である。


 「リ・イマジネーション」の名の下に、数多くの歴代ライダーを別人によるキャスティングにて復活させた『仮面ライダーディケイド』の中で、この映画で描かれる『仮面ライダーディケイド完結編』にこのタックルが復活させたことは、戦隊シリーズとは違い変身ヒロインの少ない『仮面ライダー』ワールドの世界でも大いに「華やかさ」をもたらしてくれる。
 だがこのタックル・岬ユリコは既に死んでいるという設定である。死にながらも死に切れない中途半端な存在であることがこの作品に於ける彼女の設定で、パラレルライダーワールドの旅を続ける士にも相通ずる“行き場のない者の悲哀”の存在を色濃く打ち出そうとしたのが解る。


 士には夏海・ユウスケ・大樹といった仲間がいる。一方ユリコは一人で孤独に闘っている。ここでは原典である『仮面ライダーストロンガー』に登場するライダーストロンガー、またはそれに準ずる人物は登場せず、彼女はこれまでも一人で闘ってきたのであったろう。


 “行き場のない者の悲哀”も本作のテーマであり、それ故にひたすら破壊の限りを尽くす士の行動が、本能のまま相手と戦う野獣のようにも見えるのが興味深い。


 彼は「闘うことでしかライダーと向かい合うことが出来なかった」と発言している。



 だが“少女の涙が奇跡を呼んだ”などとどこかで耳にした表現を用いる訳ではないが、その極悪ライダーと化したディケイド=士を止めるために、『ディケイド』のメインヒロイン・光夏海(ひかり なつみ)は自ら立ち上がり、旅の仲間の一人(一匹)であった魔女コウモリ・キバーラの力を得て仮面ライダーキバーラへと変身した!


 ディケイドの変身ベルトにキバーラの剣による一撃が決まり、ディケイドは士に戻り、彼は手元のライダーカードを夏海に託して息絶える。



 この女性ライダーにとどめを刺されたディケイドの末路に、お笑いタレント・明石家さんまの歌『真っ赤なウソ』の歌詞で「どんなに男が偉くても女の乳房にゃかなわない」のフレーズをふと思い出した。あれだけライダーを倒してきた猛者(もさ)が、いとも簡単に女の夏海ことキバーラに倒されたのだから。


 人間社会の男女の性差、しかも能力的・腕力的な差を持ちながらも男は女には勝てないという印象はある。いざという時、女の方が肝が据わっているとは昔からよく言われるし、男の中に女性を暴力・腕力でねじ伏せるのはアンフェアだという世間一般の暗黙の了解に見られる良識もある。
 ひたすらパワーで押し切る戦法でライダーバトルを勝ち抜いた男の士=ディケイドも、腕力を超えた女の力に男はかなわないという隠喩なのだろうか。


 尚、講談社の児童向けの絵本では、これらの描写を「暴れるディケイドの心を元に戻した」とキバーラはディケイドの悪い心を正したかのように、例えればまるで東映特撮『星雲仮面マシンマン』(84)で、主人公ヒーロー・マシンマンが毎週ラストで発するカタルシスウェーブ(超能力)で悪人を改心させたかのようなイメージみたいな書き方をしていたのが印象に残った。年少の読者には映画の内容を順に追ってストレートには伝えられないから、こうした簡潔な表現が適切なのかも知れない。
 


 夏海やユウスケが結局「お礼返し」とばかりに士を甦らせる。『ディケイド』テレビ本編では見れらなかった、「その人間に対する人々の『記憶』さえあれば、その存在はタイムパラドックスで消滅せずに復活できる」とする、むしろ『仮面ライダー電王』におけるSF設定が、この『ディケイド』完結編で伏線もなく唐突に導入されたともいえるのだけど、『ディケイド』の世界観が「何でもあり」の緩いものなので、その違和感は小さなものに留めることができている。
 その時、士の死とともに甦ったパラレルワールド平成ライダーたちも士の存在を思い出し、復活を祈る。思わず「お前たちを死に追いやった奴だぞ!」との突っ込みが入るシーンだ。
 が、テレビシリーズ最終回のサブタイトルにも謳(うた)われている“世界の破壊者”のコンセプトをここで徹底して描き、一度は極悪の限りを尽くしたとはいえ、夏海やユウスケや海東の“友情”、そう、『仮面ライダーディケイド』第26話にて士が仮面ライダーBLACK RXこと南光太郎(みなみ こうたろう)の前で「嫌いなもの」と言った“友情”の力により、士は甦るのである。


 「結局きれいごとじゃないか?」との声も出そうだが、“汝(なんじ)の敵を愛せよ”“罪を憎んで人を憎まず”という普遍的なテーマを言外に掲げて(?)、スタンダードなヒーロードラマの面も残すには、人間の表裏一体の善悪両面を描くのが効果的だったと好意的に解釈できなくもない。少々ムリはあるのだが、「大切なのはこれから、今後なのだ」という、多少陳腐(ちんぷ)でも旧来型の道徳的な主張も垣間見ることができるかもしれない。



 そのパラレルライダーの面々は、先頃『ディケイド』に出演した面々が顔を揃えるが、仮面ライダー555ファイズ)のみ素顔の俳優が出演しなかった。このパラレル555こと尾上タクミを演じた制野峻右(せいの しゅんすけ)は、現在公式サイトやブログも閉鎖。芸能界から半引退状態らしく、結局映画への出演が実現しなかった。(編・紙幅の都合で中略)


 そしてこの『ディケイド』最終章の敵であるスーパーショッカーの存在にも目を向けよう。
 おでん屋の主人になっている鳴滝が突如、『仮面ライダー』一作目(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)の敵組織ショッカーの初代幹部・ゾル大佐へと変身する。
 『ディケイド』における正義の若者たちの後見人、いわゆる昭和ライダーにおける「おやっさん」ポジションである光栄次郎(ひかり えいじろう)も、おでん屋で出されたイカとビールにショックを受けて自身の前身を思い出したか、「イカとビールでイカデビル(=『仮面ライダー』一作目に登場したショッカー二代目幹部・死神博士の怪人体)」の駄洒落よろしく、突如空から飛んできた赤と黒のマントをまとってスーパー死神博士へと変身した。


 先の夏の映画『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』での“お約束”化したシチュエーションにより再登場を飾った新・死神博士、今度はショッカー怪人・イカデビルには変身しない。そして今回初登場した新・ゾル大佐も本家のようにショッカー怪人・狼男には変身しなかった。折角の復活幹部、今回も怪人への変身を披露してもらいたかったのは、筆者が生粋(きっすい)のライダー一作目世代人だからだろうか?



 今回のスーパーショッカーの面々で一番の注目を集めているのが、東映ヒーロー番組の女怪人のコンセプトを見事に転換したショッカー怪人・蜂女(はちおんな)の復活であろう。
 しかも『炎神(エンジン)戦隊ゴーオンジャー』(08・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1)でレギュラーの敵幹部ケガレシアを演じ、元AV女優の過去に始まり、また藤原紀香(ふじわら のりか)の元夫であったお笑いタレント・陣内智則の愛人として“格差婚”の“破壊者”の張本人として祭り上げられ、芸能界にスキャンダルで名を上げ、2009年夏にはパチンコでも彼女の名を冠した機種がリリースされ、確実に今年2009年の芸能界にその名を刻んだ及川奈央(おいかわ なお)の配役によるものだ。(編・紙幅の都合で中略)


 オリジナルの蜂女にはルックスもスタイルも遠く及ばないという印象はあるとはいえ、元AV女優の及川のイメージもあり、昔のコスチュームをそのまま作成するのではなく、ガーターベルトやブラジャーといった女性の下着のスタイルでボンデージ風のコスチューム構成になっているのがセールスポイントだろう。


 結局お父さん向けのエロ要員ではあるのだろうが、素肌の露出を多くするのではなく、コスチュームの構成とデザインコンセプトのかもし出す“エロティシズム”を描いたという部分は、演者の個性を生かしてのリニューアルとしては評価できる。またマスクを着用しても、目が見えるのがリニューアルアレンジの特徴だが、これは有名女優・及川奈央の素顔を生かすコンセプトがあってのことだろう。


 他にも旧ショッカーの怪人はザンジオー・ジャガーマン・毒トカゲ男・ヒルカメレオンが復活登場するが、ヒルカメレオンは初代のゲルショッカー幹部・ブラック将軍が変身する怪人とは違い、最初からこの姿での登場である。



 だがスーパーショッカーの誇る最強の戦士は旧ショッカーの復活怪人ではない。ネオ生命体・ドラスの登場である。このネオ生命体のことを懐かしく感じる特撮マニアもいるだろう。とはいえ、ドラスの本来の宿敵であった仮面ライダーZO(ゼットオー)は登場しない。


 既に映画『仮面ライダーZO』(93)公開から17年の時が経ち、『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015/p2)、『仮面ライダーBLACK RX(ブラック アールエックス)』(88・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20001016/p1)にすら間に合わなかった世代にとって、初めて見た仮面ライダーが『ZO』という人もいるだろう。
 思えばテレビシリーズとしての『仮面ライダー』が夢の時代、Vシネマや映画というメディアにて、特撮技術のレベルアップにも貢献するべく誕生したこれら1990年代ライダーの存在も、世代人には重要な位置を占めると思われる。そうした幅広いサービスとしては好意的に受け止めたい。


 
 甦った士・ユウスケ・海東・夏海は仮面ライダーディケイド仮面ライダークウガ仮面ライダーディエンド・仮面ライダーキバーラに変身し、スーパーショッカーに立ち向かう。
 そこへパラレルライダーであるアスムとワタルの少年ライダーが登場、仮面ライダー響鬼(ひびき)と仮面ライダーキバに変身して加勢する。
 やがて仮面ライダー電王仮面ライダーアギト仮面ライダー龍騎(りゅうき)・仮面ライダー剣ブレイド)・仮面ライダーカブトも登場、スーパーショッカーとのライダー大戦が幕を開ける。


 しかも皆が通常のフォームから各々(おのおの)のパワーアップフォームに変身して応戦するが、そこへスーパーショッカー大要塞(外観は『仮面ライダーBLACK RX』のクライシス要塞がベース)が登場、戦っていたディケイドは異空間へと吹き飛ばされた。


 そこで物語は一旦終了する。
 

第二幕『仮面ライダーW〜ビギンズナイト〜』


 ニューヒーロー・仮面ライダーW(ダブル)の誕生秘話を明かすエピソードで、尚且つ物語はクリスマスの映画公開時期的なタイムリーさと、先に存在が明かされた主人公・左翔太郎(ひだり しょうたろう)の師である鳴海壮吉(なるみ そうきち)の素性が明らかにされるのが概要である。


 翔太郎の夢に出てきた“おやっさん”こと彼の探偵の師である鳴海壮吉。その活躍と存在、翔太郎との関係。そして何より仮面ライダーWにふたりで変身する翔太郎とフィリップとの出会いが物語の中心だが、この映画での事実上の主役がこの鳴海壮吉である。


 鳴海壮吉は、本作のヒロインであり現在、鳴海探偵事務所の所長の鳴海亜樹子(なるみ あきこ)の父親であり、仮面ライダースカルでもあったのだ。(編・紙幅の都合で中略)

 
 今回その“おやっさんライダー”に扮する吉川晃司(きっかわ こうじ)は、芸歴25年を誇り、俳優としてだけでなく、本来は歌手・ミュージシャンとしても多くのヒット曲を持つベテランアーティストだ。今のアラフォー世代なら、吉川がアイドル時代(1980年代中盤から後半)に足上げやバック転を決めた華麗なボディアクションで歌番組に出演していた頃を懐かしく思い出したと思われる。(編・紙幅の都合で中略)


 吉川はハードボイルド文学にも精通しており、本作のフィリップの名前の由来である作家、レイモンド・チャンドラーの本は読破したことを各所でのインタビューにてコメントしている。そうした俳優個人のプライベートな部分での蓄積が役柄に反映されている印象も受けた。


 また映画公開直後、吉川は大阪で行われたライブのアンコールの折り、仮面ライダーWと仮面ライダースカルをステージに登場させ、自分も劇中の鳴海壮吉の衣装で登場するパフォーマンスを行った。“芸能生活25周年”を迎える俳優が、“平成仮面ライダー10周年”記念作に出演する訳である。この積極的なコンピレーション振りには嬉しくなってしまう。


 
 そして本作では仮面ライダーWの片割れ・フィリップの名前の由来も明かされる。おなじみのフィリップの検索をイメージする電脳空間内(?)の本棚が現れ、そこに壮吉が立ち、名前のない少年に「フィリップ」と命名する。そしてレイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』の単行本が本棚より現れる。


 レイモンド・チャンドラーの小説の主人公・フィリップ・マーロウが由来であるのだが、それをこの映画で観客に明かすのがこのシーンである。その『長いお別れ』(53年・邦訳58年・文庫76年・ISBN:4150704511)の単行本は、早川書房刊行の別名“銀背(ぎんせ)”と呼ばれる、銀色の背表紙の装丁による新書版(58年・ASIN:B000JATSCW)である。


 この早川の銀背は、好きな人ならわかるだろうが、この“銀背”も、東映特撮ファンには全く無縁ではないレーベルである。あのイアン・フレミングの長寿スパイ映画シリーズの原作である『007(ゼロゼロセブン)』シリーズはもとより、スペースオペラの古典『キャプテンフューチャー』(エドモント・ハミルトン作)が最初に刊行されたのもこの銀背だ。日本にミステリや推理小説、SF小説の名作を広めた一大ブランドである。
 ちなみに東映テレビ部の渡辺亮徳(わたなべ よしのり)や植田泰治(うえだ たいじ)は、1966年に日本で初めて発売された“銀背”版『キャプテンフューチャー』に眼をつけ、『キャプテンウルトラ』(67)を誕生させたのだ。


 その早川書房推理小説を代表する雑誌としては、『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』が有名だが、その初代編集長は故・都筑道夫(つづき みちお)。都筑は東映テレビ作品では『スパイキャッチャーJ3(ジェイスリー)』(65)『一匹狼(ローンウルフ)』(67)の原作者であり、前述の『キャプテンウルトラ』や『キイハンター』(68〜73)の監修者でもある。この都筑が1960年代東映テレビとは縁深い作家であることは平成東映ヒーローファンにも認識していただきたい。


 画面に現れたこの“銀背”は、その歴史の象徴に見えてくる。『仮面ライダー』シリーズもこれら諸作品の延長線や周辺に位置することを物語っているのだ。“平成仮面ライダー10周年”に、そうした歴史的背景の存在もあるのだと好事家たちには匂わせるシーンでもあった。



 この映画で登場、翔太郎の前に現れた仮面ライダースカル・鳴海壮吉は既に死んでしまった人物だが、これは敵の怪人デス・ドーパントの死人還(しびとがえ)りの術による偽者であった。だがその幻と闘い、幻の登場により師である壮吉の教えを思い出し、彼は戦いに勝った。壮吉が生きている頃、未熟さを事あるごとに指摘されていた彼だが、その未熟さを克服して幻に打ち勝ったのだ。


 そしてライダーWのドーパントに対する決め口上の


 「さぁ、お前の罪を数えろ!」


 が、師である鳴海壮吉が敵に対して述べる口上に起因するものであることも明かされ、師弟関係の絆と教えを忠実に守っている翔太郎の恩義を描いているのも特徴である。


 
 本作では完全に主役扱いの鳴海壮吉・仮面ライダースカルの活躍が最大の見所であるのだが、それ以外のキャラクターにも目を向ける。
 今回翔太郎に捜査を依頼した睦月安紗美(むつき あさみ)の死んだはずの姉・睦月恵理香(むつき えりか)役は、実写版『美少女戦士セーラームーン』(03・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)のセーラームーン月野うさぎ役の沢井美優(さわい みゆう)。何らかの形で『セラムン』ではタキシード仮面役であった仮面ライダー威吹鬼(いぶき)こと渋江譲二(しぶえ じょうじ)との共演が見たかったなと、筆者のような生粋の兼・セラムンファンには思わせられたキャスティングであった。


 

第三幕『MOVIE大戦2010』

 
 画面が二分割となり、両方とも東映マークが映し出される。
 そして片方は先の『仮面ライダーディケイド 〜完結編〜』のラストシーンの続き、もう一方は終わったばかりの『仮面ライダーW 〜ビギンズナイト〜』の続きだ。両方ともバイクでの疾走シーンだ。


 片側の映像が静止するやら、もう一方の映像で物語が展開される。もう一方が静止すると、今度は片側の映像の物語が進行する。同時に両方が展開すると、観客も双方を追うのが苦しいためか、一方が進行中にはもう一方の画面を停止するシステムで物語を進行させている。


 やがてヒーローのキメ口上が炸裂する。


士(ディケイド)「俺は」


翔太郎・フィリップ(W)「俺たちは」


士(ディケイド)「通りすがりの」


翔太郎・フィリップ(W)「二人で一人の」


三人「仮面ライダーさ!!!」


 それが両方ともリンクし、画面は一つになる。二台のバイクが同じフレームに収まり、二大ヒーローのジョイントが完成した。


 「なるほど、今回のジョイントはこのシーンのためだったのか!」


 と唸らせるタイミングの良さ、映像としてのまとまりに驚愕、快感的に決まっていたのには絶句させられた。DVD発売時にはここのシーンだけリピートプレイして見てしまいそうだ。“快感”溢れる名シーンである。


 最終決戦ではさっき甦った平成ライダーたちが総登場する。そして超絶変形ファイナルフォームライドにて、パラレルライダーたちが久々に武器やメカニックに変身、スーパーショッカーの繰り出す怪人や要塞に応戦するのである。

 
 そして最新の平成ライダー仮面ライダーWは、合体変身の設定にディケイドの手によるファイナルフォームライドがジョイントされ、左右に別れる。
 しかも別れた半分の体に無いはずの半身が合わさり、全身黒色のジョーカーモード、全身緑色のサイクロンモードの二人の仮面ライダーWが出現した。
 しかも二人が一人の仮面ライダーではなく、翔太郎ライダー、フィリップライダーの独立したフォームである。


 その三人によるトリプルライダーキックが炸裂、ネオ生命体とダミー・ドーパントが合体して誕生した最強怪人・アルティメットDは倒された。スーパーショッカーはライダーたちの前に倒されたのだ。


 
 戦い終わり、それぞれが自分の世界に戻るときが来た。


 士は手元のカードの中に見慣れぬライダーのカードがあり、それを翔太郎に渡して去る。それは何とスカルのカードであった。


 そしてその時、仮面ライダースカルがバイクと共に現れ、マスクを取り鳴海壮吉の素顔を出し


 「帽子が様になるのも一人前の証拠だ」


 と翔太郎に告げて去る。


 夢で見たとおり、翔太郎は壮吉に今や彼のトレードマークとなった帽子を


 「半熟のお前に帽子はまだ早い。帽子は男の目元の冷たさと優しさを隠すのがこいつの役目さ。オマエにはどっちもねぇだろ?」


 と諭(さと)されたことがあった。(編・紙幅の都合で中略)


 ここでのスカル=荘吉は、既に死んだはずの人物でもあり黒いオーロラ越しに出現したことから、フィリップの台詞(セリフ)もあり『ディケイド』のパラレルライダー同様、パラレルワールドの別世界の別人という解釈が出来る。


 流石(さすが)にパラレルワールドライダーの仮面ライダーディケイドとのジョイントストーリー、スカルも別世界ライダーとして存在するのには驚かされた。こうなると「スカルの世界」として、独立したパラレルワールドでのスカルの活躍を見てみたいと思わされた。


 また吉川晃司のマシンに跨(またが)る姿には、彼主演の映画『テイク・イット・イージー』(86)を彷彿させるものもある。こちらはビンデージ風のサイドカーだったとはいえ、バイクに乗る吉川のイメージとしての共通項は感じ取れる。
 オマージュといえば、第二部『ビギンズナイト』でダブー・ドーパント(女怪人)の攻撃に対し、


 「撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだぜ……レディ?」


 と呟(つぶや)く壮吉。


 そして翔太郎・フィリップが変身する時に使うガイアメモリのジョーカー。この二つがリンクして“レディジョーカー”になるのには驚かされた。


 そう、吉川が先に出演した映画『レディ・ジョーカー』(04)へのネタ振りでもあるのだ。この映画もハードボイルド路線の推理ドラマだ。『レディ・ジョーカー』といい、細部に吉川の出演作品へのオマージュを感じ取れる演出の光るキャラクターであった。


 
 本作のドラマ、しかも両作品・ディケイド&Wのテーマとして、人生の選択は自分自身の意志で行えといった思想が如実に伺える。当たり前のことだろうが、現実社会でこれが出来ないことが意外に多い。周囲の状況に妥協したりして、已(や)む無く自己の思いとは逆の選択をせざるを得ないことは誰しもあったとは思う。


 とはいえ、士も自分自身の判断でライダーと戦い、そして夏海が変身したライダーキバーラに敗れた。
 翔太郎は、自分の判断で壮吉の言うことを聞かず、いいところを見せてほめてもらおうとしてフィリップを追いその場を離れた。それ故に壮吉は殉職した。
 フィリップは生まれてからライダーWになるまで自分の意思で物事を行ったことがなかった。
 自分の選択の誤りによる闘いでの敗北や心に刻まれた傷を乗り越えての成長がここにある。



 スポーツ報知のWeb(ウェブ)サイトにて、“[業界プロジェクトX(エックス)]「平成仮面ライダーシリーズ」生みの親・白倉伸一郎さん”と題し、白倉伸一郎のインタビュー記事が掲載されているが、そこでも、


 「勧善懲悪よりも『自分自身は何だと考えながら、前を見つめ、未来に向かっていくこと』に重きを置いている」


 とのコメントがあり、現代の自分自身で物事を決められない若者へのエールとでも表現できるような製作意図をコメントしているのが興味深い。

 
 今回の映画では、そうしたテーマが双方の作品の中に存在していることを認識した。大人は勿論(もちろん)、子どもたちも映画が訴える思想や人生訓をいつの日か、本作と共に思い出し、そして苦難を乗り越える時に心の支えにしてくれれば幸いであると思わされた。


 第一部では映画としてのまとまりや設定のあやふやさという難点を、前作『オールライダー対大ショッカー』同様、多少なりとも感じたとはいえ(脚本担当の米村正二の問題点か?)、それを最も顕著に象徴する台詞が仮面ライダーキバこと紅渡(くれない わたる)とゾル大佐の二人が吐いた


 「ディケイドに物語は無い……」


 という、ある意味自虐とも解釈できる意味合いを匂わせるメタ発言だろう。


 しかしこうしてそれなりのテーマを訴えていれば、観る側としても満足はできる。



 話題性豊富な2009年の「平成仮面ライダー10周年」を締めくくるに相応しい成果を見せてくれたこの映画、来年の11周年には平成仮面ライダーシリーズは如何なる前進を遂げるのか、その期待を胸に本項を終わらせて頂こう。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2010年号』(09年12月31日発行・速報折込みコピー)『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド』評より抜粋)


[関連記事] 〜『仮面ライダーW』

仮面ライダーW』 〜序盤評 本邦探偵ものに見る「探偵物語」の色濃い影響

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1


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仮面ライダーディケイド』#28〜29「アマゾンの世界」編

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仮面ライダーディケイド』#30〜31(最終回)「ライダー大戦の世界」編

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