『ウルトラマントリガー』前半総括 ~『ティガ』らしさは看板だけ!? 後日談かつリメイク! 昭和・Z・ギャラファイともリンク!
『ウルトラマンZ』序盤総括 ~セブンガー大活躍! 「手段」ではなく「目的」としての「特撮」!
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『ウルトラマントリガー』(21年)最終章の総集編が、再編集・総集編番組『ウルトラマン クロニクルD』(22年)にて放映記念! とカコつけて……。『ウルトラマントリガー』最終章評をアップ!
『ウルトラマントリガー』最終回「笑顔を信じるものたちへ」 ~新世代ウルトラ各作終章の出来も含めて賛否総括! 光と闇を包摂する真理!?
(文・T.SATO)
(2022年2月19日脱稿)
2013年度から始まったニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズ第9作こと『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA(ニュー・ジェネレーション・ティガ)』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211021/p1)。通例では7月に始まってクリスマス商戦の年末12月に完結するニュージェネ・シリーズだったのだが、同作はイレギュラーな番外の総集編を3本挟んで、歳を越えた翌年1月下旬に完結した。
各話のゲスト怪獣よりも強い敵幹部級の存在として、シリーズを通じて登場してきた、悪のウルトラマン3人衆こと「闇の3巨人」。彼らはシリーズ終盤ではひとりまたひとりと敗退していき、悪の3人衆の筆頭である女ウルトラマンことカルミラは、闇の力を借りて超巨大怪獣と化す! その名も邪神メガロゾーア! ……というようなストーリー展開になるだろうことは、子供たちはともかく我々大きなお友だちにはミエミエであっただろう。
ただし、ミエミエだから悪いということでもない。原典の女ウルトラマンことカミーラ同様、カルミラが3000万年越しでティガもといトリガーを妄執込みで愛していたと描かれてきた以上は、彼女とのドラマ的・バトル的な決着が本作のラストに配置されていなければ、それはそれで腰の座りの悪いオカシな作品となったことであろう。
原典『ティガ』最終回&後日談映画のシャッフル作劇!
ところで、この邪神メガロゾーアとは、本作の原典でも『ウルトラマンティガ』(96年)最終章3部作(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1)に登場したラスボス超巨大怪獣こと邪神ガタノゾーアや、『ティガ』の後日談映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』(00年・ttp://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1)に登場した悪の女ウルトラマンことカミーラがラストで変身した超巨大怪獣こと邪神デモンゾーアのリメイクでもある。
本作『トリガー』最終回は、一応の『ティガ』の次世代作品を謳(うた)っているので、この『ティガ』最終章3部作と『FINAL ODYSSEY』をシャッフルした作りともなっていた。もちろん、この2作品のいずれかそのまんまの内容では、子供たちはともかく大きなお友だちからはブーイングが飛ぶだろう。その逆に、あまりにも別モノであっても、それでは『ティガ』の次世代作品を謳っている意味がないとイチャモンを付けられることだろう。
メインターゲットは今現在の子供たちである以上は、大きなお友だちの反応なぞは無視してもイイだろう。しかし、それもまた現実的には、そして人間の人情としても困難なことではある。
そこで本作『トリガー』では、原典とは異なりラスボス怪獣はまずは新宿都心に出現させたものの、原典とも同様に最終的には海上で決戦させることになる。
原典ではシリーズ後半の1エピソードにのみ登場した悪のウルトラマンティガことイーヴィルティガの変身前の「中の人」である青年科学者が、変身能力を失って改心したことで最終章3部作では再登場して、その人間としての頭脳だけを活かして活躍するかたちを採っていた。
本作『トリガー』では、その立ち位置はカナリ異なるモノのお宝ハンター宇宙人・イグニス青年が「闇の残留エネルギー」をゲットして、ウルトラマントリガーの3000万年前の姿であった闇の巨人・トリガーダークへと変身! 敵対関係から和解に転じて、トリガー&トリガーダークの2大ヒーローが共闘して邪神メガロゾーアに立ち向かって、一度はコレを撃破してみせることで原典との差別化を果たしている。
『ティガ』最終回&後日談映画とも異なる新機軸部分!
しかし、クトゥルフ神話の怪物『這いよれ! ニャル子さん』(09年。12年に深夜アニメ化・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150601/p1)ことニャルラトホテップ、もとい細身の邪神・メガロゾーアは異形で幅広で「名状しがたい」((C)クトゥルフ神話・笑)醜悪な第2形態へと変化! トリガー&トリガーダークを打ちのめす!
一度は撤退するトリガーたち。だが、トリガーことケンゴ隊員や怪獣攻撃隊の隊員たちの発案で、「光」単体の力だけでは「闇」に対して拮抗する程度に過ぎなくても、「光」&「闇」のダブルパワーであれば「闇」をも陵駕することが可能なのだ! という、ある意味では計量的・合理的な、別の意味では言葉のお遊び・頓知的な発想の作戦を発案!――「擬似SF性」というヤツです(笑)――
イグニス青年がトリガーダークの「闇のエネルギー」をケンゴ隊員ことトリガーへと返すことで、「光」と「闇」の両方の力を併せ持たもったトリガー最強形態・トリガートゥルースも誕生する!
そして、しばし優勢に活躍するも、それでも敗北(汗)して海底へと沈んでいく……。
といったところで、原典『ティガ』の最終回とも同様に、コレら一連のTV中継を観ていた各地の子供たちが声援を送る! すると、トリガートゥルースもその光のエネルギーで充填!
さらに、怪獣攻撃隊の空中母艦・ナースデッセイ号を中継器として、本作のキーとしても描かれてきた「エタニティ・コア」なる超エネルギーの力もチャージすることで大逆転! といったところで、いったんのオチとなっている……。
邪神ガタノゾーアやデモンゾーアもどきの出現! TV中継を通じた子供たちの応援によるウルトラマンの復活&大逆転劇! といったところで『ティガ』らしさを醸し出しつつも、「光」のエネルギーの強大化だけで邪神を打倒できていたティガとは異なり、「光」と「闇」の両方の力と「エタニティ・コア」の力を秘めている最強形態と化すことで、『トリガー』最終回は原典『ティガ』最終回との差別化を果たすこともできていた……といった交通整理はできるだろう。
伝説化された原典『ティガ』最終回も当時は賛否両論!
とは云うものの、もう四半世紀が経ったので往時の議論百出が均(なら)されてしまって、「総合的・最大公約数的には『ティガ』最終回は傑作だった」という見解に平均化・一般化がなされることで神格視されてはいるけれども、ココの扱いが実はムズカしい。
往時にもうすでに大きなお友だちであった特撮マニア諸氏は覚えていることだろう。この『ティガ』最終回についても、当時は賛否両論であったことに。そして、そのようであった最終回を踏襲してしまうことに、否定とは行かなくても少々複雑な感慨を覚えるロートルな諸氏も一定数はいることだろう。
具体的に著名人で云えば、オタク第1世代の怪獣絵師こと開田裕治(かいだ・ゆうじ)画伯などは、当時の月刊アニメ雑誌『ニュータイプ』のモノクロ情報ページの最下段を数ページにわたって占拠していた、オタク業界人多数による各人の数行程度の近況報告の中で、「『ティガ』も最終回は子供がたくさん出てきて、あんなんだったしなぁ(大意)」といった主旨の否定的なコメントを残していたのだ(汗)。
この意見が大変不愉快であったらしい、『ティガ』最終回を執筆した脚本家・小中千昭(こなか・ちあき)などは、出典の書籍は失念してしまったものの、開田との対談でノッケからソレに対する先制パンチ(反論・当てこすり)をカマしていたものである。
当時の特撮雑誌の読者投稿や特撮評論同人界でのマニア論客たちによる賛否の論陣は整理してみせれば、以下の通りであった。
●いわく、人間の知恵&科学を用いた現実的&物理的な努力で、邪神に敗北して石化したティガを復活させてみせてこそ、非民主的で選民思想的にもなりかねない「光」なぞではなく、非力な凡人ではあっても努力を実らせることができる「人」としての民主的&自力的な解決法を賞揚できるのだ。大人たちの努力が水疱に帰したところで子供たちがオカルト・精神主義的に奇跡を起こすのであれば、それは「人」としての努力の賞揚にはならないし、旧態依然の他力&神頼みのそれに過ぎないのだ。
●いわく、「大人の観賞にも堪えうる」というような旧態依然のテーゼで、メインターゲットである子供たちをないがしろにしてはイケナイ。大人たちでも達成できなかったティガ復活が、子供たちの純真な想い&合体でこそ達成ができたのであれば、それもまた子供たちにとっては痛快でもあっただろう。
ちなみに、筆者個人は双方の意見いずれにも組してはいない。双方の意見それぞれに一定の理はあるとも思うが、ドチラかが圧倒的に正しくて、片方が圧倒的に間違っているとは思われない。
もちろん、不肖の筆者も作品批評の最終審判者などにはなりようがない。しかし、子供たちの想いが金色のエネルギー奔流と化して、それらが結集してティガとも合体! ティガのインナースペースの中で大勢の子供たちが同時に一斉にパンチを繰り出したり、所定のポーズを取って必殺光線を放つ姿に対して、個人的には好意的であり微笑ましく捉えてもいたのだ。
原典『ティガ』最終回における子役大挙登場が議論の的!
けれど、同時にこうも思ってはいた。コレらの描写は幼児~小学校低学年であれば抵抗はないであろう。
しかし、小学校中学年~中学生の時分に視聴すれば、自身よりも年下の子供たちがややタドタドしい演技でパンチを放ったり所定ポーズを取っている姿に、やはりしょせんは子役たちによる絵空事の演技に過ぎないと看て取って、気恥ずかしさ&少々の幻滅を覚えてしまったのではなかろうかと。
されど、さらに長じて高校生以上にもなってくれば、今度は子役たちの未熟な演技も割り切って観られて、その下手ウマさもまた微笑ましくて健気なモノにも思えてきて許せてくるのではなかろうかと(笑)。
子供にかぎらず人々や庶民の祈りが「光」のエネルギーとなってヒーローが大逆転! といった作劇は、往年の合体ロボットアニメ『六神合体ゴッドマーズ』(81年)最終回や合体ロボットアニメ『元気爆発ガンバルガー』(92年)最終回の1話前などでも先行例はあった。広義では「光」のエネルギーではなくても戦いを見守っている人々の「声援」がそれに当たるものではあった。
よって、『ティガ』最終回は画期的なのだ! なぞという意見には少々抵抗を覚えてはいた。むろん、主人公以外の人々の尽力や祈りも決してムダではなかったという「テーマ」を体現してみせる作劇意図の具現化としての映像表現としては有効なものであったとは思うし、『ティガ』以降のジャンル作品でもこのテの作劇は一般化もしていく……。
しかし、げに作品批評とはムズカしい。一律に子供といっても、子供たちの成長段階に応じて、その受け取るであろう感慨には相応の違いが生じてしまうモノなのだ。
そして、筆者個人も小学校中学年~中学生の年齢の時分に『ティガ』最終回に接したならば、子供たちの光がティガに結集していくあたりはともかく、そのあとにおける子役たちがパンチやキックやポーズをタドタドしく取っている姿で興醒めしてしまったのではなかろうかとも思うのだ(汗)。
――コレが逆にTVアニメ作品で全編が最初から作画&プロ声優で統一表現されていれば、子役と大人の役者さんとの演技の技量差・リアリティーラインの相違なども発生することはないので、そこで幻滅することなどもなくスンナリと受け容れることができていたかもしれない可能性なども含めて想起する――
てなワケで、子供の味方をしてみせたつもりであっても、それは3~4歳児だけの味方に過ぎなくて、小学3~4年生にとっての味方ではなく敵になってしまっている可能性があるのだ(爆)。安倍ちゃんやトランプのせいにもできない、自らも免れえない人間一般が持っている「原罪性」(汗)。子供番組のレビューというモノも実にムズカしい。コレは永遠のアポリア(難問)でもあり、最終アンサーにはついに至ることもないのだろう。
『ティガ』のリメイクにして続編という命題に沿いつつも、『ティガ』とは異なる差別化された新作でもあらねばならない……。個人的にはその命題に本作『トリガー』は一応は応えてみせていたとは思うのだ。
『トリガー』最終回に弱点アリとすればソレは何なのか!?
しかし、そのことともまったく無関係に、「大きな危機に見舞われるも、最後には大逆転で観客にカタルシスを与えること」が主目的でもある「勧善懲悪エンタメ活劇」として、『トリガー』最終章が『ティガ』最終章と比して劣って見えてしまう箇所は、まずはその前段たる「クライシス描写のスケール感の小ささ」であろう。
まがりなりにも世界規模・地球規模での危機が起きている! といった描写を入れることで、通常回とはケタ違いの危機を描いていた『ティガ』と比すれば、『トリガー』は日本の一部で局所的な危機が発生していた……といった程度の描写に収まってしまっている。
世界各都市での戦闘特撮をたとえ点描でも挿入するのにも工数や予算もかかるのはわかる。しかし、本作の怪獣攻撃隊・GUTS-SELECT(ガッツ・セレクト)には海外支部の存在は描かれなかったものの、その上位組織はTPUこと地球平和同盟なのだから、昭和ウルトラシリーズ以来の伝統で世界各地に支部は存在するのだろう(笑)。であれば、
●『劇場版ウルトラマンX(エックス) きたぞ!われらのウルトラマン』(16年)終盤のように、あるいは『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)最終章(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)ではセリフや静止画写真のみだったものの(笑)、世界各地で同時に昭和や平成期の怪獣たちが出現しているのだとか
●邪神メガロゾーアの周辺だけしか「闇」には包まれてはいなかったようにも見えるので(汗)、『ティガ』最終章や『ウルトラマンタロウ』ムルロア前後編に『ウルトラマンジード』の最強形態登場編のように、邪神が全身から噴き出した「暗雲」で日本のみならず世界・地球の全体が「闇」に覆われてしまった……
などといった、眼で見てもスケールが大きい危機が到来しているのだと子供でもわからせる点描、ワンカットの特撮映像――加えて、闇夜の世界各都市でも各支部の戦闘機・GUTSファルコンが「闇怪獣(やみ・かいじゅう)」とも交戦中など!――も描いてほしかったモノなのだ。
逆に云うならば、筆者がイマ半だと思ったのはその点だけだったともいえるのだ。
そーいう意味では、『ティガ』最終章に似ているのか否や? 子供の声援をドー見るのか? 子供の「光」と「スマイル」が同質か否かなぞは二次的なことである。そこが『トリガー』という「勧善懲悪エンタメ活劇」の成否に直結していたとも思われない――そもそも「光」も「スマイル」も「ポジティブ属性」であって「正義」という言葉の云い換えにすぎない――。
もちろん、『ティガ』肯定派&否定派である年長マニア双方がソコを気にしてしまうのは心情的にはまぁわかる。
しかし、それら「勧善懲悪エンタメ活劇」としての本質・成否・巧拙とは無関係でしかない些事がごときに、作品や事物の本質・構造・真善美などを虚心坦懐に究明・接近していくためのロジック(ロゴス)ではなく、枝葉末節についての言葉遊び・イチャモン的な珍妙なロジック(屁理屈)を、物事を改善したいという想いよりも論敵をツブしたいといった劣情の方が勝った礼節を欠いた物言いで延々と紡いでみせている行為などは、中世キリスト教的な神学論争・空理空論にしか見えないのだ(笑)。
仮に『トリガー』最終章に問題点があったとしても、その根本原因は些末なディテールなどにはないだろう。
「巨悪が攻めてきた!」→「巨悪に立ち向かう孤高のヒロイズム!」→「押されている!」→「反撃!」→「勝利!」
といった一連である「エンタメ活劇」の普遍の大構造に即していて、各パーツがピタッとハマったかたちでウマく描けていたのか?
「強敵感」や「絶望感」に、そこから来る「対比」「落差」の効果としての「逆転の快感」などを十全に描けていたのか?
それらの成否についてをこそ、「作劇術」や「批評」はキモにすべきなのであって、その他についての議論なぞは事物の本質とは無関係な些末なことだとしか思えない。
『トリガー』最終章の弱点とは、一にも二にも「通常回」とは異なるモノとしての「最終章」にふさわしいスケール感の少々の欠如。あるいは、ラスボス怪獣がもたらす被害の小ささだろう。
スケールも大きい巨悪や絶望感あふれる危機の「絵図」を描いてこそ、そことの対比・落差の大きさから出る「逆転劇」の壮快さ、ラスボス怪獣をも上回るヒーローの強さ、もしくはサポーターとの共闘がもたらした勝利から来るカタルシスも強くなるからだ。
そして、それこそが「勧善懲悪エンタメ活劇」の普遍的な骨格なのである――こう書くと、実に陳腐・凡庸なジャンルなのだけど(汗)――。
子供たちの応援だの光&闇だのスマイルだのといった議論なぞは無意味だとまでは云わないものの、「テーマ」モドキを感じさせるための意匠・トッピング・スパイスに過ぎないのであって、「エンタメ活劇」の成否の理由を論じるにあたっては枝葉にすぎないのだ。
――しかし斯界(しかい)を見るに、作品の欠点を指摘するのにあたって、壮快な「勧善懲悪エンタメ活劇」を構築するための作劇術の巧拙や活劇としての深層構造などには眼を向けずに、擬似テーマ主義的に表層的な上っ面の劇中要素をダシに道徳的に論難して、作品論をただの通俗道徳論へと堕さしめてしまうような「重力の井戸」は、やはり今でもあまりにも強いことは痛感してしまう――
近作ウルトラシリーズにもあった最終章における弱点!
ただまぁ、最終回にふさわしい大バトル&大逆転劇の巧拙における問題点は近作にも共通することであって、実は本作『トリガー』だけにかぎった話ではなかったのであった。
個人的にはニュージェネ・ウルトラシリーズ各作の「最終回」は、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)~『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)や『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)については、各作ごとの「通常編」よりもスケールアップされた大バトル劇で申し分がなかった。しかし、
●『ウルトラマンジード』(17年)最終章(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)では、ジードvsジードの父でもある黒くて悪いウルトラマンことウルトラマンベリアルと、ヒロインである刀剣女子vsベリアルと通じていたダンディーなSF作家先生との戦いが分離気味であり、後者がバトルよりも人間ドラマ寄りになることで活劇度がウスれてしまっている
●『ウルトラマンタイガ』(19年)については、作品自体にタテ糸や宿敵キャラである青黒色の悪いウルトラマンことウルトラマントレギアとの因縁要素がウスかったために、その最終章(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1)も取って付けたような少々の異物感がある
●『ウルトラマンZ』(20年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)なども、主人公青年&ヒロイン隊員の恋情確認の絶叫ドラマがキモなのであって、バトルとの一体化は辛うじて保たれてはいたモノの、純然たる攻守逆転劇にはなっていない。加えて、ベリアルの残骸細胞であったデビルスプリンターが意味を持ってこなかったり、宿敵たる寄生生命体・セレブロが倒すべき巨悪へと昇格していかなかったあたりにも不満
……などなど、各作自体の致命的な欠陥だとは云わないまでも、それぞれの作品に小さな不満を感じてはいたのだ。そして先にもふれた通りで、本作『トリガー』の最終展開や同作シリーズ後半にも上記の作品群に対するソレと同じ程度のレベルで、個人的にはいくつか小さな不満はあったということだ。
よって、やはり1年間・全50話も放映されるTVシリーズとは異なり半年・全25話しかないTVシリーズなのだから、少々残念でも1話完結の単発ゲスト回などは極力排して、もっとメインストリームや基本設定それ自体にガッツリとカラんだエピソードだけを配置していくべきではなかっただろうか?――そのかぎりで単発話やゲスト話がほとんどなくって、基本設定や主要登場人物の人間関係を煮詰めることだけでストーリーを進行させていく近年の「仮面ライダー」シリーズはエラいと思うのだ――
『ウルトラマンジード』シリーズ後半~最終章の弱点!
『ウルトラマンジード』のシリーズ終盤回である、往年の『ウルトラセブン』(67年)#26に登場した巨大怪獣ことギエロン星獣が登場する#20「午前10時の怪鳥」なども、単発話としてはまぁ面白くはあったのだ。同作の実質のシリーズ構成を務めていた女性脚本家・三浦有為子が第1期ウルトラシリーズ的な乾いたSF的不条理感をも再現したかったのであろう気持ちはよくわかるし、それも成功していたとも思うのだ。
しかし、そんなエピソードなぞよりも(汗)、『ジード』という作品においては、全宇宙に偏在している「幼年期放射」なる微弱電波とは何ぞや!?――その正体は宇宙サイズかつ宇宙の幼年期にまで拡散・稀釈化して、大宇宙自体を修復中であるウルトラマンキング!―― 「カレラン分子」とは何ぞや!?――それは生物の体内で幼年期放射を結晶化させて、リトルスターやウルトラカプセルとしての実体化を促進!―― 「分解酵素」とは何ぞや?――そのカレラン分子を無効にする物質!――
一度は宇宙全体を破壊した「クライシス・インパクト」は6年前の出来事だったというのに、爆心地付近の病院で誕生した19才のヒロインの生誕にキングが干渉していたのはナゼなのか!?――光よりも速い速度で宇宙全体に拡大したことで、超光速タキオン粒子の原理でキングの身体は時間も逆行して、宇宙の幼年期の太古の時代にまで偏在していた!――
……といったところを、要人警護やアイテム争奪戦にカラめて、劇中設定も小ムズカしくないかたちの「絵」として説明すべきであっただろう。
『ウルトラマンタイガ』シリーズ後半~最終章の弱点!
『ウルトラマンタイガ』なども同様であった。外国人移民や難民問題を地球人の姿に変身しているゲスト宇宙人たちに仮託して描く方針を、子供向けヒーロー番組でやることを手放しで絶賛する気にはなれないモノの、その志の高さは認めよう。
しかし、各話のドラマ性&テーマ性は高くはなってもやや陰気な作風になりがちであった以上は、主人公青年に憑依(ひょうい)していてコップのフチ(笑)などで余人には見えない小人姿でコミカルな挙動を見せていたユカイな新人ウルトラマン3人に、ゲストキャラの境遇に対する同情や論評などを加えさせるかたちでカラませて、作風を明るくしてバランスも取るべきではなかったか? 3人ウルトラマン各々の過去とゲストキャラとの境遇をオーバーラップさせるかたちで、彼らの肉付けももっと増量できたであろうし、子供たちにとってもその方がドラマ&テーマも伝わりやすかったことだろう。
レギュラーかと思えばほとんど出なかった人間サイズの悪い着ぐるみ宇宙人集団・ヴィランギルドも、シリーズ途中で第3勢力からラスボス・トレギアの軍門に降るなどして目先の変化、敵のスケール感&攻防劇をも強調しておけば、かえって「移民・難民」問題もその説教臭がウスれてビビッドにイヤミなくそのテーマ性が浮かび上がってきたようにも思うのだ。
タイガを昭和のウルトラマンタロウの息子だと設定、同作のラスボスであるウルトラマントレギアもタロウの旧友だとしたからには、タロウとトレギアが決別した理由を徐々に小出しに明かしていくようなタテ糸もあってしかるべきであった。
トレギアも当初はタイガをヒヨっ子扱いにして愉快犯的に弄(もてあそ)んで、自身と戦うに足る強さを兼ね備えるまで余興的に待ったところで鼻っ柱を叩き折ることで嗜虐心を満たそうとはしたものの、予想を超えて強くなったことで焦ってホンキでツブしにかかってくる。終盤ではタロウが復活参戦するも苦戦。成長したタイガが最終的にトレギアを打倒してみせることで「父超えの物語」ともする。
などといった、アリガチで常套的で先行きの予想が付いたとしても(笑)、カタルシスはあるビルドゥングスロマン(成長物語)としての構築をナゼに怠ってしまうのか? それらの要素が入っても、現今の「ライダー」「戦隊」と比すれば、まだまだ劇中要素は決して多くはないだろうに。
関係各位の証言を読むに、かの実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)カントクの会社・コダイ上がりの監督で、現在では円谷プロ側の雇われチーフ・プロデューサーを務めている北浦嗣巳(きたうら・つぐみ)の意向で、『タイガ』では昭和ウルトラシリーズ的な1話完結性を重視してしまったことのコレは弊害でもあっただろう。
ここで玩具会社・バンダイなり円谷プロの若手スタッフの心ある誰かがダメ出しをして「オレがやる!」と手を挙げて主導権を握るべきでもあったのだ。最後は個別具体の特定個人の人格力・交渉力・声の大きさ、権力や権利の善用なのである。正しき者こそ強くあれ!
――『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)~『ウルトラマンX』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)はバンダイから出向の岡崎聖・制作統括。『ウルトラマンオーブ』(16年)~『ウルトラマンR/B』(18年)は現場上がりの鶴田幸伸プロデューサーが主導していたことは各位の証言で明らかだ――
『ウルトラマンZ』シリーズ後半~最終章の弱点!
『ウルトラマンZ』においてもシリーズ中盤以降は、罪のないイイもん怪獣を倒してしまった主人公青年が悩みつづけたり、怪獣攻撃隊の巨大ロボット4号が異形のラスボス合体怪獣へと変化することで、行き過ぎた武力行使や科学に軍事力への警鐘ともしていた。テーマ的には一応は誠実だともいえるし、若手役者さんにとっても演技の振り幅を体験するという意味では有意義なことだったとは思うのだ――個人的には問題視すべきなのは「用途」なのであって、「技術」や巨大ロボットそれ自体が悪だとも見えかねない描写にはやや不満もあるのだが――。
しかし、シリーズ前半同様にもっとおバカな熱血路線で、地球外生物セレブロに寄生されている怪獣攻撃隊の研究所に所属するカブラギ青年なども、若いオタク連中いわく近作の「円谷のヤベェ奴ら」同様に、キモいけど半分は笑ってしまう演技による「ネタキャラ」的な宿敵として(笑)、彼との攻防劇を主眼に描くべきではなかったか?
『ウルトラマンX』のシリーズ後半ではダークサンダーエナジーにてゲスト怪獣が凶暴化するパターンが採用されていたが、『Z』後半でもカブラギ青年がデビルスプリンターを使ってゲスト怪獣を凶暴化させるべきではなかったか? 少なくともラスボス怪獣の組成にはデビルスプリンターをカラめるべきではなかったか?
そうすれば最終回では、ベリアルの息子でシリーズ前半では客演も果たしたウルトラマンジードが! 怪獣攻撃隊のヘビクラ隊長とも因縁があるのでウルトラマンオーブが! ウルトラマンゼットの両脇を固めて、変身シーンのためだけに(笑)、1シーンのみ「中の人」も登場・変身して参戦させることでイベント性をさらに高めることも可能になったハズである!?――もちろん、ラスボス怪獣に対するトドメはゼットが刺すにしてもだ!――
……我ながら延々と「ボクの考えた最強の○○」といった類いを披瀝しており、お恥ずかしいかぎりではある(汗)。要は自分が好む作品については採点が甘くなるのは良くも悪くも人間の常だとしても、本作『トリガー』のみならず近作に対しても甘い採点に開き直ってしまったり、欠点や弱点は無視して一言も言及しなかったり、そも気付きもしない! などといった「お友だち内閣」的な言動ではアンフェアなのである。
『ウルトラマントリガー』シリーズ後半~最終章の弱点!
ここまで記してきた通り、『トリガー』も近作と同様の問題点を抱えているのだ。シリーズ前半には登場していたデビルスプリンターならぬ「闇怪獣」といったカテゴリーの怪獣たちが、シリーズ後半には登場しないのはいかがなモノか? それこそ後半では闇の3巨人がその闇の力で、着ぐるみは既成の怪獣の流用でも別名だけは「闇怪獣」(笑)へと凶暴化させて繰り出すべきではなかったか!?
超古代文明の実態や滅亡の要因が判然とはしなかったことも、原典『ティガ』とも共通する欠点であった――『ティガ』も放映前のマニア誌などでは「超古代文明は怪獣や宇宙人の襲撃に遭っていた」という基本設定の紹介はあったのだが、映像本編ではそのようには言及されなかったのだ(汗)――。
『ティガ』や『トリガー』とは世界観を異にする初代『ウルトラマン』(66年)に登場した、原典に準じて3億5千万年ならぬ3億5千年(笑)のむかしから復活した超古代怪獣アバラ&バニラスを登場させたこと自体はイイ。
しかし、トリガーや闇の3巨人とも同じ3000万年前が出自だったとマイナーチェンジし、彼らこそが『トリガー』世界の超古代文明を滅亡させた元凶だったとして、そこで超古代文明の実態も明かしていった方がよかったのではあるまいか!?――むろん、3000万年前&3億余年前の文明双方を滅ぼしていたことにしてもイイ!――
『ティガ』の代表的な悪役でもある人間型の悪の超人・キリエル人(びと)を『トリガー』にも登場させたこともよかったのだが、原典ではキリエル人も3000万年前の超古代文明よりも古い出自であったハズで、彼らにも往時の超古代文明の実態を語らせるべきではなかったか!?
そこまでやってくれれば、「『トリガー』は『ティガ』をも余裕で超えることができていた!」と個人的には手放しで認定したくなったのに……。
――主人公青年が育てていた、ツボミのままのお花の名前は「ルルイエ」なので(クトゥルフ神話における超古代遺跡の名前で、転じて『ティガ』後日談映画での舞台とされた)、これを悪ではなく善の存在だとして終わらせてしまったあたりもイマ半だけど、まぁ許そう(笑)――
なお、本作『トリガー』には前作のヒーロー・ウルトラマンゼット、ネット配信作品『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズ(19年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)で主役級で活躍しているウルトラマンリブット、本作の原典であるウルトラマンティガがゲスト出演するイベント編を3編も用意した。
その試み自体はそれ以前のシリーズとは世界観を完全に刷新していた原典『ティガ』とも異なる手法なのだけど、筆者個人はヒーロー共演や異なる世界観の連結といった要素に、物語一般の無限の豊饒性や高揚感があると見ている者なので肯定的に捉えてはいる。
――その伝で、ウルトラシリーズ50周年記念作であった『ウルトラマンオーブ』なども、『オーブ』の前作『ウルトラマンX』における21世紀以降の先輩ウルトラマンたちが数話に一度はゲスト出演するというイベント要素を継承して、昭和や平成の先輩ウルトラマンたちが数話に一度はゲスト出演するような、アニバーサーリーにふさわしい作品を見せてほしかった。しかし、各種の人気投票企画でもご承知の通り、『オーブ』は先輩ウルトラマン登場がなくても若い特撮オタク間では高い人気を保っていることも認める――
1話完結を連続形式に変える者としてのライバルキャラ!
●ウルトラマンゼロとウルトラマンジードに対するウルトラマンベリアル
●ウルトラマンオーブに対するジャグラスジャグラー
●古いところでは、キカイダーに対するハカイダー
●ライオン丸に対するタイガージョー
●近年(?)では、ゴッドガンダムに対するデビルガンダム(笑)
世界征服などという「大義」ではなくって、実はツンデレ――ツンツンと反発しているようでもデレデレと甘えた態度も取ること――な「恋情」や「私怨」が行動原理でもあることが恒例でもあるダークヒーローやライバルヒーローたちとも同様で、前々作『ウルトラマンタイガ』におけるウルトラマントレギアなどとは異なり、本作『トリガー』における悪のウルトラマンたちである闇の3巨人も「恋情」だったり第3勢力キャラ・イグニス青年とも「因縁」を持たせたり、今時の作品の通例でシリーズ途中ではお笑い担当として「ネタキャラ」化もしつつ、本作の背骨・一本線には成りえてはいたことで、作品を空中分解の危機からは救っていた。
その意味では、往時の特撮マニア間では3度目・4度目の再登場や最終章ではラスボスとしての決戦も待望されていたのに、原典『ティガ』には実質2回しか登場しなかったキリエル人の扱いからは進歩して、同時期の90年代中盤の東映メタルヒーローで、
●主役ブルービートに対する宿敵ブラックビートが登場した『重甲ビーファイター』(95年)
●次世代ビーファイター3人に対して悪のビークラッシャー4鎧将(しがいしょう)が登場した『ビーファイターカブト』(96年)
あるいは、マグマ星人がレギュラー敵として登場していた内山まもる先生による学年誌連載『ウルトラマンレオ』コミカライズ(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061028/p1)の域に、2010年代以降のウルトラシリーズもようやくに到達したのだ! その伝で『トリガー』にかぎらず、ニュージェネ・ウルトラシリーズの方が平成ウルトラ3部作なぞよりも上回っているのだ! なぞというマッピング・見取り図で捉えている御仁は全然いないようだけど(笑)、ロートルな筆者はそのように『トリガー』も含めたここ10年ほどのウルトラシリーズを上位の作品としては捉えているのだ。
悪の女超人カルミラに見る、ジャンル近作での悪の救済!
たとえば「大坂の陣」における淀殿(よどどの。幼名・茶々)は、2時間尺の映画やTV時代劇であれば単なる悪女にした方がブレずにキャラも立つ。しかし、1年間・全50話の大河ドラマであれば単なる悪女キャラだけでも飽きてくるので、愚かしくても豊臣家&息子・秀頼を守るために尽くした健気さも徐々に小出しにしていった方が、逆にキャラも立ってくるというモノなのだ。
そのような尺数にも影響される作劇理論で(笑)、ティガとダイゴ隊員は別人であるハズなのに恋慕していた原典におけるカミーラの取って付けたような改心的な最期(さいご)よりも、トリガーダークに芽生えた良心の輪廻転生がケンゴ隊員であったとした本作における、トリガーの腕の中に抱かれての少々の「救い」もあるカルミラの最期の方がスムーズで、ナットクもできるものではあった。
活劇的にはともかくドラマ面では妥当なあるべき決着なのだし、人間はその最期に看取ってくれる知己さえいれば、それだけで救われるモノでもあるのだろう……。
――個人的には昭和の芸人たちや名俳優・藤田まことなどの発言のように、飲んだくれてドブ川に落ちて最期は誰をも恨まず自らの滑稽さを笑いながら、明るくひとりで死んでいくダンディズムのカッコよさを世間はもっと賞揚してくれよ! なぞと思っていたりもするけれど(笑)――
あくまでも「エンタメ活劇」としての成否をこのテの変身ヒーロー作品の批評では論じるべきだとは思うのだ。しかし、それを原理主義の域で捉える必要はないだろう。
「悪」にはなりきれなかったジャグラスジャグラー同様に、悪の女ウルトラマンことカルミラに対しても、女児向けアニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズ(92年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)や『プリキュア』シリーズ(04年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201227/p1)に、かの庵野秀明カントクの映画『キューティーハニー』実写版(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041103/p1)やアメコミ洋画の最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21年・日本公開22年)などとも同じく、チンピラ三下(さんした)はともかく幹部級の悪党には彼らのやむをえなかった事情なども描いて「心理的救済」や「成仏」をも与えてみせるといった作劇。
「エンタメ活劇」だとはいっても、そーいった作劇も二次的には許容されてしかるべきではあろうし、盲目的で独善的ではあっても「恋情」を彼女の行動原理としてきた以上はこのように落とすべきでもあっただろう。
――たとえば良くも悪くも『ウルトラマンジード』の最終回などもこのパターンであって、本作『トリガー』最終回の作劇にも通じており、「闇」をも包摂するほどの器量の大きさを持った人格への成長・大慈悲の境地がテーマ的な着地点でもあったのだ――
活劇としてはともかく、あえて光と闇のテーマ性を解題!
「光」と「闇」の力を併せ持ったという意味を持たせるために、そのデザインのカラーリングの一部に黒を加えただけのトリガートゥルースも、おそらくは円谷側での文芸設定的な意向などではないのだろう。往年の『ティガ』後日談映画などもそうだったのだろうが、バンダイ側が玩具の金型はそのままもしくは微改修で色彩だけを変えた商品点数を増やしたいというゴリ押しで、往年の「ティガダーク」ほかや近年の「黒い仮面ライダービルド」に「白骨の仮面ライダーセイバー」などとも同様に「販促ノルマ」として押しつけられたモノでもあったことは想像にかたくない(笑)。しかし、それすらも文芸的に劇中内にて必然性があるモノだとして昇華してみせるのが、作家たるべき者の務めなのである。
本作では「闇」を拒絶して「光」だけを賞揚するといった展開は採らなかった。たしかに「正論」「理屈」だけでもヒトは救われないところがある。「人」個々人の内にもまたまぎれもなく怒りや恨みといった「闇」の劣情なども常に湧いてきてしまうモノでもある以上は、劣情にも寄り添って「共感」を示してこそ、当人も認められたと感じて癒やされたりして、そこを経過してこそはじめて改心できるのだという心理的メカニズムもあるだろう。
――ただまぁ、筆者個人について自分語りをさせてもらえば、この生きにくい世の中を「理屈」で解釈して、手のひらの上に「縮図」として載せて、「価値判断」としては肯定はしなくても「事実認定」としてはナットクをすることで、擬似的に状況よりも上位に立って安心・救いを得ようとするタイプなので、他人なぞに寄り添ってもらって支えてもらいたいとは思わないけれど(笑)――
「光」と「闇」の力を併せ持った最強形態・トリガートゥルース。そこにも文芸的な必然性を与えようとするならば、それはもうカルミラの「闇」をも包摂してみせる所業にしかなかったことであろう。ムリやりにテーマ面・文芸面を賞揚的に抽出してみせれば、そのあたりが一応の新機軸たりえていたとはいえるだろう。
――とはいえ、先ほどの発言とは矛盾するけど、「善」と「悪」とは対等な実在であるのか? 「善」(光)だけが真の実在で、「悪」(闇)とは実在ではなく善(光)の欠乏状態にすぎないと見るのか? 「光(源)」と「陽」(=光が当たっている側の物体の表面)と「陰」(=光が当たっていない側の物体の表面=SHADE)や「影」(=地面に映ったSHADOW)に「闇」といった5階層など、神学論争的には千年一日の議論ではあったりするという意味では決して新しくはなく、古来からの普遍的な問題設定なのかもしれないが――
『トリガー』における怪獣攻撃隊の面子をドー見るか!?
加えて本作最終回では、怪獣攻撃隊の隊員たちが最終決戦にて単なるヒーローvsラスボスとの戦いの傍観者、バトルとドラマの分離も避けるべく、邪神の力の余波で生前の意識はナシで復活した闇の2巨人も怪獣攻撃隊の空中母艦内に人間サイズで出現して白兵戦! といったかたちで、隊員たちにも活躍の見せ場を与えていた。
なお、ググってみると、彼ら隊員たちに漫画アニメ的・記号的なキャラ付けしかなされていないことには不満の声も上がっていたようだ。……そ、そーかなぁ。往年の『帰ってきたウルトラマン』(71年)や『ウルトラマンティガ』(96年)における怪獣攻撃隊のレギュラー隊員たちのようにリアルというよりナチュラルな人間描写もイイとは思うけど、子供向け番組一般の登場人物の造形法としては適度にマンガ的に誇張・極端化もされている方に筆者個人は軍配を上げるけれどもなぁ――100かゼロかという話ではなく、両方ともにあってイイという話ですヨ――。
過去話やゲストキャラとのカラみなどでムリに肉付けなどしなくても、単体でキャラを立てることができていたという意味では、空中母艦・ナースデッセイ号を操艦する体育会系・テッシン隊員も、無人戦闘機を遠隔操縦するややエキセントリックな女性隊員・ヒマリも個人的にはスキだし評価もしている。
『トリガー』最終回における自己犠牲テーマもドー見る!?
本作最終回では最終決戦後にもうひとつのクライマックスが設けられている。超エネルギーであるエタニティ・コアの暴走を鎮(しず)めるために、主人公青年がウルトラシリーズではともかく昭和の特撮やアニメではよくあった自己犠牲的な行為に及ぶのだ――このあたりは偶然なのだが、同時期に放映されていた『仮面ライダーセイバー』(21年)の最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220116/p1)とも通じるものがあった――。
ただし、それを旧日本軍的な特攻だという批判を浴びせないようにするためにか(笑)、別れの悲壮感などは極力排されてはおり、むろん特攻死などにもなっていない。
『セイバー』とは異なりエンディング主題歌が流れ終わったあとにも彼は生還しないで終わるのだけど(爆)、映像面ではエタニティ・コアの中で眠りながらも生存はしていることが明示されて明朗なエンドとなっている……。
――むろん、最終回の数話前から本作の中CMなどでも流されてきた最終回後の後日談映画『ウルトラマントリガー エピソードZ(ゼット)』(22年)の予告編映像にて彼は元気に活躍もしているので、近い未来に無事に生還することは確定済!(笑) 作品外での情報も駆使して、過剰に湿っぽい雰囲気を与えてしまう危険の回避もできていた――
総括:『トリガー』人気の高低を何でドー測定すべきか!?
いろいろと書いてきたが、マニア間では大人気作となった直前作『ウルトラマンZ』と往年の人気作『ウルトラマンティガ』との板挟み、双方の批判の論拠は真逆で異なるものの、そこは自覚・整理されずにフワッとした野合となることで、『トリガー』はマニア間ではカナリな矢面に立つ作品となってしまったことは事実である――『ティガ』を未見の特撮マニアの方が今となっては多数派なのだが、むろん仮に実は少数派による批判であったのだとしても、それに対しても一定の尊重はされるべきではある――。
ただし、それら自体がまた、あくまでも大きなお友だち・年長マニア間での評価にすぎない。子供間での人気の測り方もまた実にムズカしいものではあるけれど、玩具の売上高が一応の参考にはなるのだろう。
今年2022年には判明する2021年度のウルトラシリーズの玩具売上高の発表を待って改めての参考ともしたい。筆者個人の作品評価と玩具売上(子供人気)が相反するものであった場合でも、それはそれで虚心坦懐に受け容れて、本作に対する見解も釈明・修正していきたいとは思うのだ。
――「謝ったら負け病」の人間なぞではないので(笑)。もちろん、作品は不人気でも玩具単独の魅力だけで売上高が上がるといったこともゼロではないのだろうけど、そのようなこともまた滅多にはないであろう――
追伸
本作『トリガー』の次作は、『ウルトラマンティガ』の次作である『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)がフィーチャーされることがすでに明かされている。『ティガ』主演のジャニーズ・長野博とは異なり、変身前の「中の人」であるつるの剛士(つるの・たけし)のギャラは相対的には安いであろうし、客寄せパンダ的にも喜んで大いに協力してくれそうではある。
この流れで前作『ウルトラマンZ』までの作品が次々と順番に毎年リブートされるなどというようなことはないだろう。しかし、同じく「平成ウルトラ3部作」である『ティガ』と『ダイナ』はリブートされたのに、残りの『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)だけがリブートされないとなると、それはそれでかわいそうな気がしてくる。よって、『ガイア』まではリブートしてあげてもイイのでは?(笑)
追伸2
「鵜の目 鷹の目(うのめ・たかのめ)」で作品の細部をチェックしていて、個人個人の見識としてはともかく、結果的に集合知といったモノが浮かび上がってくる巨大掲示板やまとめサイトなどでの本編画像検証によれば、ウルトラマントリガーが第4形態・グリッタートリガーエタニティに強化変身した2021年10月9日(土)に放映された#12「三千万年の奇跡」の撮影日が、ヒロイン・ユナ隊員のデジタル腕時計の拡大映像(笑)にて判明している。少なくとも同話は2021年5月22日(土)に撮影されていたというのだ。
よって、放映の約5ヶ月前には撮影がなされていたことになる。それにも関わらず、本作では3本の総集編が入った末に通常は年内で終わる放映が翌年1月に3話分もハミ出していた。
昭和~90年代後半の平成ウルトラ3部作までの放映日ギリギリ納品の時代とは異なり、その反省に立って『ウルトラマンコスモス』(01年)以降は放映から半年ほどは先行して撮影を済ませていることは、往時からのマニア向け書籍などでのスタッフの証言でも明かされている。2010年代以降のニュージェネ・ウルトラシリーズも同様であるから、つまり『トリガー』も撮影自体は特に遅延していたとは云えないことになる。
ニュージェネ以降は製作費を削減する大前提もあって、「本編」と「特撮」の2班体制はなくなりスタッフは「本編」「特撮」の兼任ともなっている――スタッフ・インタビューによると、コレによってやむをえずカナリの早撮りとなっているようだ――。よって、「本編」は撮影が順調ではあったものの「特撮」だけが遅延していたとも考えにくい。
ということは、物理的な実体がある在り物・現物――役者・風景・ヒーロー・怪獣着ぐるみなど――の撮影さえできれば2話1組にて2週間ほどで撮了となるのであろう「撮影現場」側の都合ではなく、「ポスプロ」(ポスト・プロダクション=後処理=CGや合成)チーム側での不都合・遅延などがあったのであろうか?――CGや合成も予算はともかく一定以上のクオリティーを確保するためには日数を要するのだ(汗)――
しかし、ご存じの通り『トリガー』においては、全話に登場するゲスト怪獣をすべてソフビ人形化するというバンダイ側の目論見もあった。そう考えると、多種にわたるソフビ人形の中国での製造や輸入に国内玩具店への配備などの問題で、ゲスト怪獣が登場する放映日に合わせたかたちで発売することが困難であったために総集編が3本も挿入されて、その分が翌年放映分に繰り越しになったといったことなのであろうか?――放映に連動したタイミングで都度都度に新発売にしていった方が、やはり売上もイイそうなので(笑)――
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