假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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ウルトラマンX 5話「イージス光る時」・8話「狙われたX」・9話「われら星雲!」 ~ゼロ・マックス・闇のエージェント客演!

『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』 ~第2期ウルトラの「特訓」「ドラマ性」「ヒーロー共演」「連続性」も再考せよ!
『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』 ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!
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 『ウルトラマン クロニクル ZERO&GEED(ゼロ・アンド・ジード)』(20年)にて、『ウルトラマンX(エックス)』(15年)#5「イージス光る時」の編集映像が放映記念! とカコつけて……。『ウルトラマンX』前半評をアップ!


ウルトラマンX』前半評! 5話「イージス光る時」・8話「狙われたX」・9話「われら星雲!」 ~ゼロ・マックス・闇のエージェント客演!


ウルトラマンX』前半合評1 ~5話「イージス光る時」・8話「狙われたX」・9話「われら星雲!」 ~ゼロ・マックス・闇のエージェント客演!

(文・久保達也)
(2015年9月21日脱稿)

*第5話『イージス 光る時』 ―ウルトラマンゼロ客演!―


 先輩ヒーロー客演の傑作回がいきなり登場! 助っ人客演のウルトラマンゼロが主人公のウルトラマンエックスの噛ませ犬になることなく大活躍!


 しかし、タイトルからして、『帰ってきたウルトラマン』(71年)第38話『ウルトラの星 光る時』の完全なパクリである(笑)。


 この『帰ってきた』第38話では、その前編である第37話『ウルトラマン夕陽(ゆうひ)に死す』に続き、本話で再登場することとなった


・用心棒怪獣ブラックキング
・暗殺宇宙人ナックル星人


が初登場するのみならず、


初代ウルトラマン
ウルトラセブン


が、ナックル星人に処刑されようとしていたウルトラマンジャックを救うために、颯爽(さっそう)と登場した!


 劇中でこそ語られなかったものの、「ウルトラ兄弟」なる学年誌などで展開されてきたウラ設定を、映像の中で実質的に確立させた、まさに記念すべき作品なのである!


 私事で恐縮だが、本放映当時まだ5歳だった筆者は、『帰ってきた』リアルタイム視聴時の記憶はほとんど残ってはいない――『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)くらいになると、断片的ではあるが、当時の視聴した記憶がけっこう残っているのだが――。しかし、この『帰ってきた』第38話と第18話『ウルトラセブン参上!』だけは例外であり、当時に視聴した記憶がいまだ鮮明に残っているのである。


 私事で恐縮だが、第18話は祖母の家でスイカを食べながら観たものであり、『X』第4話『オール・フォー・ワン』にも再登場した、宇宙大怪獣ベムスターに痛めつけられるウルトラマンジャックの姿に、


「なんや、ウルトラマンって弱いんやなぁ」(爆)


と祖母がボヤいたことに、


「いつもはもっと強いんやぞ!」


と反発したことまで記憶しているくらいである(笑)。


 そしてこの第38話は、部屋の照明を暗くしクリスマスケーキのロウソクの灯火(ともしび)の中で観たという特殊状況下だったことも含めて、初代マンとセブンの登場はまさに「特別」なものとして、筆者も含めた当時の子供たちの幼い心に深く刻みこまれることとなったのである。


 筆者と同世代のマニアの方々も同様だと聞く。ほかのエピソードはリアルタイムでの記憶がまったく残っていないのにもかかわらず、この2編のみを記憶しているということは、再放送やあまたの絵本・雑誌などで知っていた初代マンやセブンがジャックと競演するのを、それだけ楽しんだということにほかならないだろう。


 『A』第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060604/p1)などもまた然(しか)りである。真船偵(まふね・ただしい)監督の魚眼レンズを駆使した独特のアングルや本編演出といった、我々のようなマニアが後年に評価しているような箇所についてはリアルタイムでの記憶はまったくない(笑)。エースが「SOS」のウルトラサインを放ち、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーが登場して以降の場面しか記憶していなかったりする。


 特撮マニアにかぎらず、同世代の人間に「最強のウルトラ戦士は誰か?」をたずねれば、すかさず「ゾフィー」と答える者が多い。実際には昭和ウルトラでゾフィーが「最強戦士」ぶりを発揮したのは、この『A』第5話くらいしか存在しない(爆)。しかし、当時の小学館での学年誌での「ゾフィー最強設定」はもちろん、それだけこの回におけるゾフィーの活躍が幼い子供たちに絶大なインパクトを与えたことにより、まさに「刷り込み」効果となっていたのだ。


 同じように「最強のウルトラ怪獣は何か?」をたずねれば、ほかの怪獣たちのことは忘れていても、ベムスターやブラックキングを即座に挙げる世代人は多いことであろう。それだけスーパーヒーロー大ピンチ&大逆転を描いた「イベント編」は、視聴者の心にのちのちまで印象を強く残すこととなるのである。


 なので、本話もマニア的な観点で視れば、オマージュ元の作品を強く意識した演出が多いことがわかる(笑)。


 本作『ウルトラマンX(エックス)』(15年)の特殊防衛部隊・XiO(ジオ)が所有する、怪獣たちのエネルギーを縮小化させたスパークドールズ(怪獣人形)輸送を怪獣ブラックキングが急襲するのは、先述した『帰ってきた』第37話で、防衛チームMAT(マット)の特殊火薬・サターンZ(ゼット)輸送をブラックキングが妨害していた場面に対するオマージュである。


 XiO隊員が各隊員の専用銃・ウルトライザーで発射できるスペシウム光線――ウルトラマンの必殺光線の縮小版を防衛隊の兵器から発射できるのだ!――をブラックキングが両手を合わせてかわすのも、ウルトラマンジャックスペシウム光線を跳ね返した際と同じ仕草であり、これまた芸コマである。


 ただ、本話に登場したナックル星人バンデロは、


・肩からボレロをまとって
・腰には拳銃の入ったホルスター付きのベルトを締め
・「お宝」のスパークドールズを見て、短い口笛を吹く(笑)


と、完全に西部劇調で演出されている。


 『帰ってきた』第37話のクライマックスバトルといえば、大木淳(おおき・じゅん)特撮監督による夕焼けに染まる演出が半(なか)ば伝説と化しているほど、古い世代のファンの心には実に印象強く残っている。夕焼けバトルといえば、クリント・イーストウッド主演の西部劇映画の名作『夕陽のガンマン』(65年)だという極めて単純な発想から、本話のバンデロはガンマンとしてのキャラクターづけがなされたのだろう(笑)。


 だが、そればかりではない。バンデロが奪ったスパークドールズを誰かに高値で売りつけようと通信している描写がある。その中で、


「怪獣兵器として使えますよ」


などと語っているのだ。


 おそらくその相手は、ゼロが主人公として活躍した映画『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)で、宇宙の彼方の怪獣墓場から磁力怪獣アントラー・双頭怪獣キングパンドン・用心棒怪獣ブラックキング・ミサイル超獣ベロクロン・暴君怪獣タイラントを強奪し、宇宙恐竜ハイパーゼットンを養殖して、並行宇宙の地球を「怪獣兵器」の実験場と化そうとした、触覚宇宙人バット星人の一族ではないのか!? あるいは、「怪獣兵器」とはそもそもバッド星人ではなくナックル星人が製造したものなのか!? しかも、かつてナックル星人がウルトラマンジャックの処刑台としても使用した「逆(さか)さ磔(はりつけ)台」をもサービスに付けるのだという(笑)。


 本話のナックル星人のキャラクターは、故・内山まもる(うちやま・まもる)大先生というよりは、むしろかたおか徹治(かたおか・てつじ)先生が、かつて小学館学年誌や『コロコロコミック』で描いていたウルトラシリーズのオリジナル展開の漫画作品に登場しそうな感じである。


 もっともその着ぐるみは、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)でリファインデザインにより新規に造形され、以降は『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100128/p1)や映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年)に『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200825/p1)や『ウルトラマンギンガS』(14年)などの作品で使い回されてきたものではなく、初代ナックル星人の姿に回帰している。これはやはり坂本浩一(さかもと・こういち)監督が新規デザインのナックル星人がイマイチ気に入らず、初代ナックル星人のデザインで造形されているアトラクションショー用の着ぐるみスーツを流用させたものだろうか?――後日付記:頭部のみ新規造形された着ぐるみだそうだ――


 ウルトラマンエックスに岩を投げつけたり、飛び回し蹴りを浴びせたり、倒れたエックスを執拗(しつよう)に踏みつけたりする、「どチンピラ」ぶりもまた、初代に忠実に演出されている。


 極めつけの擬人化・どチンピラぶりは、時空を超えてウルトラマンゼロが颯爽と姿を見せたときに、バンデロが


「面倒なヤツが来やがった」


とつぶやく前に、舌打ち(笑)をしていたことである!


ゼロ「ナックル星人バンデロ! やっと見つけたぜ!!」


ファントン星人の科学者グルマン「あれがウワサに名高いウルトラマンゼロ!」


 敵のナックル星人バンデロも味方のファントン星人グルマン博士もウルトラマンゼロのことを知っていることで、ゼロの名声がすでに宇宙人の間では響きわたっていることも示唆させるダブルミーニングな描写でもある。


 映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE(ザ・ムービー) 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)で作曲された勇壮な「ウルトラマンゼロのテーマ」もこのバトル場面に流れだすことでさらに盛り上がる!


 ゼロが空中から浴びせたウルトラゼロキックでヘシ折れたブラックキングの頭頂部のツノが、両者をロング(引き)でとらえた画面の中央で大地に突き刺さる!


 むかしからアニメや漫画ではよくあったような映像だが、直接的にはおかひでき監督が手掛けたゼロが大活躍するオリジナルビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(10年・バンダイビジュアルhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20200125/p1)や、短編シリーズ『ウルトラゼロファイト』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200314/p1)での同様シーンへのオマージュでもある。


 このあと、ブラックキングの頭頂部のツノはナックル星人によってドリル状のものが取り付けられる! これは小学館の幼児誌『てれびくん』で81年にグラビア展開された『ウルトラ超伝説』に登場した「改造ブラックキング」が元ネタではないのか!? 坂本監督は70年生まれなので、このグラビア展開の閲覧も年齢的にギリギリセーフだったか?(笑)


ゼロ「シケた顔してんなぁ、おふたりさん」
エックス「ちょちょちょ、アンタなにするんだ!」(笑)


 XiOのラボチームに所属するメガネっ娘(こ)隊員・ルイをさらったバンデロを追い、再び時空を超えたはずのゼロがエックスの変身アイテム兼通信機・エクスデバイザーの画面に割りこみ、エックスを押しのけて(笑)主人公の大空大地(おおぞら・だいち)に語りかけてくる!


 基本的にはギャグの描写ではあるのだが、ゼロのテレパシー(精神感応)超能力はエックスの変身道具に合うような特殊電波にも変換されて通信可能! といったウルトラ一族の超越性や圧倒性をも示唆していて、幼児はともかく小学生に達した子供であれば、憧憬を抱かせるような描写でもあった!


ゼロ「成層圏で待ってる。ちょっと顔貸しな」


 あいかわらずガラが悪い!(笑) だが、それでも、


「オレは宇宙警備隊のゼロ」


と、ゼロはエックスや大地に対し、新宇宙警備隊こと「ウルティメイトフォースゼロ」とは名乗らずに「宇宙警備隊」と名乗っている。初見の人間には意味不明なカタカナ言葉よりも「宇宙警備隊」の方が、名称からしてエックスにも視聴者にも(笑)通りがよくて意味もわかりやすくなる。「宇宙警備隊」に入隊していたとは初耳だが、仮に少々詐称が入っていたとしても、当たらじとも遠からずだからこれでよいのだ!(笑)
 と同時に、これでゲスト出演したウルトラマンゼロが「昭和ウルトラマン」たちの故郷であるM78星雲「光の国」の出身で、彼らが所属する「宇宙警備隊」系の組織に連なっているウルトラマンであることを、エックスにも視聴者にも紹介ができているのだ。昭和の時代から継承されてきた、この広大なバックボーンがある「世界観」をも想起させてくれる、ちょっとした点描セリフもまた、実に好感が持てるのだ!


 加えて、名作『ゼロVSダークロプスゼロ』が初出であった名セリフ「2万年早いぜ!!」を踏襲して、


「2万年早いぜ、おまえらには……」


などと本話でも、このセリフを期待にたがわず放つことで、お約束の様式美、歌舞伎(かぶき)の「待ってました!」的な見得(みえ)ともなりつつある。


 やはりヒト型をしていない未知の宇宙人や知的生命体であるのならばともかく、ヒト型をした巨大ヒーローを主人公とした作品自体がドコまで行っても「本格ハードSF」にはなりえない素材なのだ。そういった「ハードSF」作品を喜ぶのは、少数のマニア的な気質の人間や、幼少時から健全な子供らしい子供ではなくマニア予備軍であった我々だけなのだ。だから、そこに焦点を当てていては一般的な子供人気を獲得することはできないのだ(笑)。


 2010年代のいわゆる第2期平成ライダーもそうなりつつあるのだが、庶民・大衆・女性・ふつうの子供向けには、もっと積極的にこういう「様式美」的で「古典芸能」的で「ネタ」的な作劇に立ち返った方が、一般性も普遍性も獲得できるのではないのかとも思うのだ。


 地球と同じように夕焼け空に包まれた惑星ギレルモに、平行宇宙を越境してルイを助けに来たウルトラマンゼロが突撃!


――惑星ギレルモは地球人にも呼吸可能な空気があるという、天文学的にはレアな条件を満たした惑星であった。そこは「ハードSF」的にはリアルではない。しかし、ウルトラは「ハードSF」ではないのだし、そこはお約束なので突っ込むな(笑)。ギレルモの名前は一昨年に大ヒットしたハリウッドの巨大ロボット対KAIJYU(怪獣)映画『パシフィック・リム』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180613/p1)を手掛けたメキシコのオタク上がりのギレルモ監督の名前からの引用だろう――


 天空から飛びこんできたゼロが、そのままバンデロにパンチをカマすさまがいかにもゼロらしい!


ゼロ「お待たせ!」


 ここですかさず流れるのが、先述した『ゼロ THE MOVIE』の冒頭で、ゼロが宇宙の果てを突破して並行宇宙へ突入する場面で、1コーラスのみというもったいない使われ方をされてもおおいに盛り上がっていた、往年のヒーロー主題歌調の名曲『すすめ! ウルトラマンゼロ』である!


 勇ましい場面に主題歌を流すというのはありがちなパターン化された演出である。しかし、やはりヒーローが勇ましく活躍するシーンに挿入される、そのヒーロー専用の楽曲や歌曲の「ここぞ!」という場面での再利用は、勇壮な曲調に加えて過去作をも鑑賞してきた視聴者が興奮した際の「記憶のフィードバック」の援用も受けることで、倍々の相乗効果を発揮することができるのだ!


 本誌バックナンバー『仮面特攻隊2002年号』(01年冬コミ発行)でも特撮同人ライター・伏屋千晶(ふせや・ちあき)氏が批判的に言及していたが、『宇宙船YEAR BOOK 2001』(01年3月発行)に掲載された当時の同誌編集者(現・脚本家)・古怒田健志(こぬた・けんじ)による総括記事『仮面ライダークウガ「解析」』によれば、かの『仮面ライダークウガ』(00年)第10話「熾烈(しれつ)」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001110/p1)のラストバトルでは、主題歌を流す前提で渡辺勝也監督と編集マン・長田直樹氏が苦心惨憺して曲とカットとのタイミングを合わせて編集した戦闘場面に対して、通常の特撮変身ヒーロー作品のように主題歌を流すのはイヤだという、当時の東映プロデューサー・高寺成紀(たかてら・しげのり)の意向で急遽、主題歌が別のBGMに差し替えられてしまったのだそうだ。


 こういった処置は『クウガ』にかぎった話ではなく、1990年代後半~2000年代の「ウルトラ」では、テレビシリーズも劇場版も劇中で主題歌を使用する例が皆無に近いくらい少なかったものである。要するに、「それが子供っぽいから」「旧来の子供向けヒーロー作品のようにはしたくなかったから」「大人の鑑賞にも堪えうるようにしたかったから」であろう(爆)。
 そんな悪習を断ち切ったのも、2010年代に入って以降、「ウルトラ」や「ライダー」のテレビシリーズや劇場版の劇中でも惜しみなく主題歌を流すという、かつてはクライマックスを盛り上げるために当然のように行われていた音楽演出を復活させた坂本浩一監督その人なのであった!――平成ライダーであれば、第2期平成ライダーの筆頭となった『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)など――


 CGで描かれたゼロとバンデロがデジタル処理された岩壁の背景を超高速でヨコ方向に移動させることで表現した「横っ飛び」をしながら、ゼロが額のビームランプから必殺光線・エメリウムスラッシュを! バンデロが拳銃を連射する! このクライマックスバトルを最大に盛り上げるのに、『すすめ! ウルトラマンゼロ』はピッタリでもあった!


 ちなみに、この『すすめ! ウルトラマンゼロ』をはじめ、00年代中盤からのウルトラシリーズの主題歌・挿入歌多数を歌唱している男女ユニット・ボイジャーは、XiOのオペレーター役でふたりともチャッカリ出演していたりする。だが、タドタドしさもなく、あまりにふつうに演技しているために、筆者はつい最近までその事実に全然気づかなかったのであった。


 そして、Xioの博士ポジションの隊員でもあるファントン星人グルマン博士の「超科学力」によって、ウルトラマンゼロが映画『ウルトラマンゼロ』でウルトラマンノアから貸与された、並行宇宙を越境可能な白銀の神秘の鎧(よろい)である「ウルティメイトイージス」が解析されて――あれは科学的に解析できてH複製できるような存在だったのか!?(笑)――データカード化されるあたりも、おもちゃオモチャした鎧やカードに一応の「SF」的な理屈を与えることができている!


 エックスまでもがその複製版というのか完全に同一の型(笑)である「ウルティメイトイージス」を装着してウルトラマンエックス・ゼロアーマー(!)と化す!


 そして、本話の冒頭で「輪切りのパン」に箸を突き刺すという実に即物的なかたちで、「並行宇宙」の存在とその越境方法を説明していたことも伏線となって(笑)、エックスは並行宇宙を越境して惑星ギレルモに颯爽と登場した!


 なかなかどうして、「ウルティメイトイージス」もとい「ゼロアーマー」をまとったエックスもその姿が実によく似合う!


 しかし、本話に登場したナックル星人もウラ設定によれば、拳銃の銃撃で「空間」を切り取って、並行宇宙を越境できるのだそうである(笑)。おまえも何気にスゴい技術力だよ(爆)。


ゼロ「よくここまで来られたな」
エックス「2万年も待ってられないんでね」


 この掛け合い漫才的なゼロとエックスのカラみは、ゼロの名セリフ「2万年早いぜ!」と、先の「2万年早いぜ、おまえらには」のセリフとも、二重で係り結びの返歌となることで、視聴者に対してもクレバー(知的)で気の利いた言葉遊びとしての笑いも惹起できている!


 ゼロとエックスの声の主は、ロボットアニメ『機動戦士ガンダム00(ダブル・オー)』(第1シーズン・07年 第2シーズン・08年 サンライズ 毎日放送http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100920/p1)の好敵手同士の再共演でもある(笑)。


・主人公の刹那(せつな)・F・セイエイを演じた宮野真守(みやの・まもる)がウルトラマンゼロの声
・そのライバル青年であるグラハム・エーカーを演じた中村悠一(なかむら・ゆういち)がウルトラマンエックスの声


 『ガンダム00』出身の近年のイケメンボイス系の声優の華麗なる競演は、ふだんは『ウルトラマンX(エックス)』(15年)なぞは観ないであろう宮野や中村の女性ファンたちの一部も、おそらくはネットなどで情報を知るや、注目せずにはいられなかったのではなかろうか? 先述した『ゼロ THE MOVIE』などでも、ウルティメイトフォースゼロを演じた声優たちを目当てに、舞台挨拶(あいさつ)に女性ファンがつめかけたものであったし。いまやイケメンボイスの声優が演じるスーパーヒーローの競演は、そうした副次的な効果ももたらすのである!


 そして、本話は単なる2大ヒーローの競演でも終わらない!


 エックスはゴモラアーマー、エレキングアーマーと次々に鎧をまとい直して、各々の必殺技である「ゴモラ振動波」や「エレキング電撃波」を炸裂(さくれつ)させる!


 ブラックキングの尾をアオリでとらえて、その長さを強調したアングルもさることながら、エックスがブラックキングに向けてエレキング電撃波を放つさまを、真上から俯瞰(ふかん)して描いたアングルもまた実にカッコいいのだ!


 ゼロもまた、短編シリーズ『ウルトラゼロファイト』(12年)で初お披露目した、赤いストロングコロナゼロと青いルナミラクルゼロの姿へとタイプチェンジする!


 本話ではウルトラマンゼロを演じ続けてきた岩田栄慶(いわた・ひでよし)がエックスのスーツアクターを務めている。しかし、本話のオープニングではゼロ役としてもクレジットされていることから、おそらくはエックスとツーショットで映る以外の活躍場面の大半で、岩田氏が今回もゼロを演じているのだろう。ストロングコロナゼロが右腕をグルングルンと器用に回しながらバンデロにパンチを喰らわす演技は、どう見ても岩田氏のものとしか思えない(笑)。


 そして、ルナミラクルゼロが頭頂部のふたつのトサカであるゼロスラッガーをハズして宙に浮かべるや、そのふたつが無数に分身させてブーメランのように放つ技・ミラクルゼロスラッガー


 痛みを感じる暇(いとも)もなく、いつのまにか多数のゼロスラッガーが体を貫通していたことによる多数の細い空隙(くうげき)が、バンデロが夕陽を背にして手前に長く伸びている「影」の中に「木漏れ日」のように浮かび上がっているさまを描くことで、ゼロの圧倒的な強さを表現しているあたりもステキである!


 そして、ゼロはふたつのゼロスラッガーを両胸にパネルのようにハメて、そこから必殺光線・ゼロツインシュートを放った!


 改めて、我々のような高齢オタクから見れば、往年のロボットアニメ『マジンガーZ(ゼット)』(72~74年・東映動画→現東映アニメーション フジテレビ・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)が、その両胸の赤いパネルから発する熱線必殺技・ブレストファイヤーをパクったとしか思えない技であるがOKだ!(笑)


 坂本監督がメイン監督を務めた『ウルトラマンギンガS』でのウルトラマンギンガの敵怪獣撃破シーンのように、トドメのシーンだけが屋外でのオープン撮影となって(笑)、バンデロはデタラメにデカすぎる赤いガソリン火炎爆発の中でついに最期(さいご)を迎えた!!



ルイ「ゼロさま、ちょーカッコいい! トサカも2本あるし」(笑)
ゼロ「よせよ。オレにホレるとヤケドするぜ」(爆)


 映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)でデビューを飾って以来、2015年末で早くも6年を迎えるゼロではあるが、そのキャラクターはいささかも古びてはいない。


 これは、


・宮野のヤンキー口調(笑)
・岩田氏のフィンガーアクションを主体にしたボディランゲージ(爆)


が絶妙なコラボレーションとなり、「新しいウルトラマン」像を確立させたからだろう。


 もっとも、ルイにねだられて記念写真におさまった際のゼロの奇抜な指のポーズは、高齢オタクであれば70年代後半に小学館週刊少年サンデー』に連載されて大人気となった楳図かずお(うめず・かずお)原作の大人気ギャグ漫画だった『まことちゃん』(76~81年)に登場した幼稚園児の主人公・まことちゃんの決めポーズである「グワシッ!」を連想してしまったことだろう(爆)。
 恐怖漫画の大家でもある楳図かずおは、講談社週刊少年マガジン』で初代『ウルトラマン』(66年)のコミカライズを連載したこともあり、その単行本は70年代末期の第3次怪獣ブーム期にもブームに便乗して再刊されたことで、この時代の子供たちにも知られていた作品であった。



ゼロ「ウルトラマンエックスか。また次元のどこかで会えるのを楽しみにしてるぜ」
エックス「ああ、わたしもだ」


 そうなのだ。「キャラ立ちまくり」のウルトラマンゼロには、次元のどこかと云わず、今後のウルトラシリーズでもひんぱんにゲストとして登場してくれることを願わずにはいられない!


*第8話『狙われたX』 ―ウルトラマンマックス客演!―


 ウルトラマンマックスなどというビミョーな感じのウルトラマンを登場させるだなんて……なとという失礼なことを直感的に思ってしまったほどに、筆者は『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)がこの2015年で放映「10周年」を迎えたことをまったく意識してはいなかった。同作のファンの方々にはホントウに申し訳がないのだけど、もちろんマニアなのでリアルタイムで全話を鑑賞してはいたものの正直、『マックス』は個人的には想い入れがあまりない(汗)。


 「地方では「計測不能(!)」となったほどの低視聴率」「クリスマス商戦で関連玩具の売り上げが惨敗」など、商業的には完全な「失敗作」に終わり、現在へと直接につらなる「ウルトラ」の商品的価値の凋落(ちょうらく)の「元凶」になったと個人的には考えている『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)。1年間の放映予定が3クールで打ち切られたことで、急遽(きゅうきょ)ピンチヒッターとして立つこととなった『マックス』は、「原点回帰」を目指して初代『ウルトラマン』的なエンターテイメントに徹した作品にすると当時のスタッフたちは語っていたものである。


 だが……



「『マックス』序盤の明朗なカラーはしょせんはテレビ局やスポンサー向けの営業的な言い訳や客寄せパンダ的なハッタリに過ぎなくて、「本当はオレたちがやりたいのはそんなことじゃないんだよねぇ」などという本音が透けて見えるような作品が最近はチラホラ目につくような気がするのだ」

(特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンマックス』中盤合評3「老兵は潔(いさぎよ)く去れ! そして、マニアに媚(こ)びるな!」(久保達也)・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060315/p1



 手前味噌で恐縮だが、10年前の『マックス』に対する感慨はそのようなものであった――筆者の当時の感想文の数々のあまりにフザけた文体と論文タイトルについては恥じ入るばかりであり、ご容赦願いたい(汗)――。



「それが第13話『ゼットンの娘』と第14話『恋するキングジョー』であった(中略)。
 結論から書けばこの前後編においてはゼットンもキングジョーもほとんど「どうでもいい存在」「他の怪獣にも代替可能な存在」に過ぎなかった(中略)。
 それまで何が描かれているかといえば、大昔に変身怪人ゼットン星人によって「ゼットン・ナノ遺伝子」を植えつけられた人間の子孫である夏美(なつみ)という少女が、ゼットン星人に利用されてDASH(ダッシュ)基地に潜入したり、キングジョーを操ってマックスと戦ったりするのだけれども、夏美を演じているのが『忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021112/p1)でハリケンブルー・野乃七海(のの・ななみ)を演じていた長澤奈央(ながさわ・なお)だったものだから、ゼットン星人に操られる際には我々特撮マニアたちへの出血大サービスとして忍者のコスプレをさせていたワケなのだ(爆)(中略)。
 そんなネエチャンよりも早くゼットンやキングジョーを出してほしいワケなのだ(中略)。なぜ「最強怪獣」がコスプレ戦闘美少女の引き立て役にならねばならないのか!?(中略)
 この前後編の脚本を執筆したのは『ウルトラQ』(66年)以来、ウルトラシリーズに深く関わってきた大ベテラン・上原正三であるが、ワールドフォトプレス社の『フィギュア王』№92(05年・ISBN:4846525651)に氏のインタビューが掲載されている。それによれば氏が脚本を執筆した深夜特撮『ウルトラQ 〜dark fantasy〜』(04年)第17話『小町』を『マックス』のプロデューサーで今回の前後編の監督を務めた円谷プロ八木毅(やぎ・たけし)がエラく気に入っており、「『小町』をもう一度やってみたい」ということでこんな作風になってしまったらしい。そして上原自身が「まず長澤奈央ありきのエピソードですからね」などと暴露してしまっているのである(汗)。そんな「老いらくの恋」(爆)にカッコいいゼットンやキングジョーの大活躍を見たい子供たちがなぜ付き合わされねばならないのか?(中略) 「まず長澤奈央ありき」ではなく「まずゼットンありき」「まずキングジョーありき」でなければならないのではないのか!? そうでなければゼットンやキングジョーを再登場させる意味などはまるでないのだ!」

(出典同上)



 やはり10年前の「ウルトラ」は、「原点回帰」を掲げてはいても、実はさして「怪獣」中心・「事件」中心・「攻防」中心・「作戦」中心ではなかったのだ。むしろ、我々特撮マニアが思春期の多感なころに衝撃を受けたアンチテーゼ編の再現ばかりをやりたがっていた。そして、マニア予備軍ではない本来のターゲットであるべきふつうの子供たちに向いてつくっているようにはとても思えない作劇に思えたものだった。


 商業誌はともかく特撮評論同人界では1990年前後には勃興しだしていた、「マニア向け」というよりも「子供向け」を志向するべきである! といった論法が、約15年を経た2005年に至ってもなお、まだつくり手たちに届いていない状況に無力感と徒労感を覚えたものである(爆)。


 第13話『ゼットンの娘』と第14話『恋するキングジョー』に端を発して、第2クール以降の『マックス』は「原点回帰」どころか、やたらと「異色作」ばかりが目立つシリーズへと変質を遂げてしまった。


 そして、マックスの出自は当時としては久々に昭和のウルトラマンたちと同様の「M78星雲」出身のウルトラマンとして設定されたものの、先輩ウルトラマンとの競演はいっさい描かれることはなかったのだ――しかも、「M78星雲」出身とは謳(うた)ったものの、「光の国」=「ウルトラの国」の出身者であるとは、一言も語られてはいなかった!――。さらに、世界観が別モノだから仕方がないのだとして、昭和の人気怪獣が再登場しても、それらは地球にはじめて出現した完全なる「新怪獣」扱いとされており、昭和の同族怪獣との関連性は劇中ではまったく語られなかったのであった。


 「M78星雲出身のウルトラマン」と「過去の人気怪獣」が登場するにもかかわらず、『マックス』が昭和の旧作といっさいつながりのない、完全に独立した「閉ざされた」世界観であることに、筆者はなんとも歯がゆい想いをさせられたものであった。



ウルトラマンマックスは、その技は強力であるが種類は決して多くはなく、技が多彩すぎることによる印象の弱体化が考慮されているようだ」

(『KODANSHA Official File Magazine(こうだんしゃ オフィシャル・ファイル・マガジン) ウルトラマン VOL.10 ウルトラマンコスモスウルトラマンネクサスウルトラマンマックス』「ウルトラマンマックス能力・戦力」・講談社 05年9月22日発行・ISBN:4063671801



 光線技が多彩な第2期ウルトラシリーズの『ウルトラマンA』を揶揄するために、第1期ウルトラ世代のマニアたちが1970年代末期に編み出した論法を、その後の「第2期ウルトラ再評価」の機運も無視して、21世紀の初頭になっても飽きずに引用しつづけている、さして定見があるとも、新たな知見を付け加えようという志やセンスがあるとも思えないマニア上がりの特撮商業ライターたちによるこうした解説の類(たぐい)、カビ生えコケむしたような陳腐凡庸な論法にも頭を悩ませたものである。


 どう考えても、技が多彩で色彩も豊富な方が、子供たちの印象も強くなるのに決まっているではないか!? 子供番組として目を引くための派手な体裁を否定してどうするというのだ!?


 こうなると、平成ウルトラシリーズではすでに当たり前となり、『ネクサス』でさえ描かれていたウルトラマンの「タイプチェンジ」が、『マックス』では披露されなかったことも、「タイプチェンジ」が多彩になることによって、主役ヒーローの基本形態の印象の弱体化を考慮したということだったのか?(爆)


 タイプチェンジにしてもそうだが、これまた当時、平成ライダーシリーズではすでに当たり前となっていた複数ヒーロー制も、『ゼットンの娘』で初登場した『マックス』の2号ウルトラマンであるウルトラマンゼノンは、同話でこそ新たな大型武器・マックスギャラクシーをマックスに与えたり、短時間ながらも共闘が描かれたが、以後登場したのは最終回(第39話)『つかみとれ! 未来』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060503/p1)のラストで、M78星雲に帰還するマックスを迎えに来たのみであったのだ。
 せめてクリスマス商戦の12月放映回あたりでマックスだけでは敵わない強敵と戦うためにゼノンを再登場させたり、子供たちから募集した「怪獣デザインコンテスト」最優秀賞を基につくられた強敵怪獣が登場した年明け回にもゼノンを助っ人参戦させたりするような機転が働かなかったものなのか?


 これもまた、第1期ウルトラ至上主義者が第2期ウルトラにおけるウルトラ兄弟共演をかたくななまでに否定していた往年の論調にのっとり、なおかつ今どき時代錯誤にもバンダイの意向や商業主義に反逆してみせているつもりで気取ってでもいたのだろうか? 『マックス』放映終盤時期にバンダイ発売のウルトラマンゼノンのソフビ人形がトイザらスで「100円」(!)で投げ売りされたのも必然である(汗)。


 それにしても、


ウルトラマンの技が少ない
ウルトラマンがタイプチェンジしない
ウルトラマンが単独で活躍する


 初代『マン』的にやるというのは、つまりはこの程度のことだったのか?(爆)



 先述した上原氏や、故・実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)監督らによる『マックス』の「異色作」は、旧来のファンの間ではそれなりに話題を呼んだ。実相寺監督の第22話『胡蝶(こちょう)の夢』なんぞは、当時『マックス』の公式ホームページにおいて、


「実相寺監督はやっぱりすごい! 光、影、鏡。昔から変わらない監督らしいアイテムと映像を十分堪能(たんのう)しました」


などと、「鹿児島県在住39歳」から絶賛されていたものだ(爆)。


 だが、旧態依然としたマニアたちは「夢」ばかりで「現実」が見えてはいなかった。そうした路線の行き着く先がどうなるかを……


 『マックス』は毎週土曜7時30分にTBS系列の中部日本放送で、従来は子供向けアニメを放映していた枠で全国ネットされていた。だが、前番組の実写版『美少女戦士セーラームーン』(03年・東映 中部日本放送http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)と『ネクサス』によって低落したその枠の視聴率を『マックス』は好転させることができなかったのだ。
 その結果ではないかもしれないが、毎週土曜朝8時から放送されていた朝ワイド番組『知っとこ!』が、『マックス』終了後は7時30分から繰り上がって放送されることとなり、それまで連綿とつづいてきたTBS系土曜7時30分の「子供番組」の枠は消滅してしまったのである。そして、『マックス』に続く『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)は、土曜17時30分の全国ネットではないローカル枠に移動させられたせいで、一部の地方局では放映すらされないという屈辱(くつじょく)を味わうこととなったのだ。
 その「元凶」となったのは、やはり「まず長澤奈央ありき」などという、スタッフたちのあいかわらずの姿勢ではなかったのか?……――誤解のないように云っておくが、奈央チャン自身には何の罪もありません(笑)――


 早いもので、あれから10年が経過した。



 冒頭から何の説明もなく、ウルトラマンエックスがいきなりエレキングアーマーを装着し、大都会のど真ん中でゼットンと戦っている絵が映しだされる!


 エックスがゴモラアーマーを装着しようが、XiOが総攻撃を加えようが、「最強怪獣」のゼットンがビクともするハズがない!


 これこそがまさに初代『ウルトラマン』的な、あるいはイベント活劇編的な、子供たちが一番に観たいものである「まず怪獣ありき!」「まずゼットンありき!」「まず戦闘ありき!」の作劇となっている!!


 開幕一番、エックスがゼットンに投げられた衝撃で、超ローアングルでとらえられた洗濯物が干された物干し台が吹っ飛ぶという芸コマな特撮演出こそ、まさにその象徴である!


 昭和の『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)以来ではないかと思えるほど、CG全盛時代であるにもかかわらず『X』はミニチュアワークが充実している。それをゼットンは惜しみなく口から1兆度(!)の火球を浴びせて徹底的に破壊する!


 本話でゼットンを操るのは高速宇宙人スラン星人である――スラン星人は映画『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦! ウルトラ10勇士!!』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)にも登場したばかりだが、この映画のパンフレットによれば、『マックス』に登場した怪獣や宇宙人の着ぐるみはすでにこのスラン星人くらいしか現存していないそうだ。ゼットンは先述した『ゼットンの娘』で新造されて以来、有名怪獣だからだろうが補修を繰り返して、この10年、使い回され続けてきたというのに(汗)――


スラン星人「同胞の仇(かたき)を討つために、エックスを利用させてもらった」


 仇討ち! スラン星人はここで明確にマックスへのリベンジとしての作戦を語っている。歴代ウルトラシリーズとは一切無関係であった10年前の『マックス』とは異なり、本話の『X』においては10年前の『マックス』とも濃厚な関連性を持たせているのだ!


 このあたりは、ヒーローや怪獣との初遭遇のサプライズをねらっていた『ウルトラマンマックス』の初代『ウルトラマン』的な方法論では実はない。シリーズとしての連続性や同一世界観としての楽しさをねらっていた第2期ウルトラシリーズ的な方法論だともいえるのだ――実は初代『ウルトラマン』にも直前作『ウルトラQ』に登場した海底原人ラゴンや誘拐怪人ケムール人が再登場し、脚本段階ではウラン怪獣ガボラの代わりに地底怪獣パゴスが再登場していたりするので、マニア間で云われているほどには初代『ウルトラマン』もヒーローや怪獣との初遭遇のサプライズをねらった作品でもなかったのであるが――。


 そして、スラン星人の「仇討ち」の行為も、ゼットンのデータを基(もと)にXiOのラボ(研究所)チームに開発させた「ゼットンアーマー」をエックスが装着するや暴走させるという、実に手がこんだものである。


 『ウルトラマンメビウス』第27話『激闘の覇者』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061126/p1)でも、同作の防衛組織・クルーGUYS(ガイズ)が宇宙人由来の超技術を使って、怪獣のデータを基にマケット怪獣を実体化させて正義の怪獣として使役(しえき)していた。しかし、あの狂暴な宇宙恐竜ゼットンだけは、単なるデータに過ぎなかったハズなのに、未知のデータ起因ゆえか人間には制御ができなくなり、暴走してしまっていた。そして、そのようなかたちで、逆説的にゼットンの別格性・強敵性をアピールしていたのだ。
 本話でもこのエピソードと同様に、未知の超パワーを内包しているゆえに暴走してしまうような危険な存在を、主人公の強くて正しい精神力(笑)で制御してみせるような展開は、「暴力の快感」と「道徳説話」の両者の良いとこ取りなストーリーといった感じで(笑)、実にクレバー(利口)な感じの作劇にもなっている。


 そのゼットンアーマーが暴走するシーンでは、注意深く聞いてみると、『ウルトラマン』最終回(第39話)『さらばウルトラマン』において、ゼットンを拘束しようとして、初代ウルトラマンが全身をコマのように高速回転させて放った拘束光輪技・キャッチリングの効果音が使用されている! これまた実に手が込んでいるのだ(笑)。


 『マックス』で主人公のDASH隊員トウマ・カイト=マックスを演じた青山草太(あおやま・そうた)も、その後のテレビシリーズや劇場版でのゲスト出演がなかったことから、これまた10年ぶりの出演である。


 ビルの破片の下敷きになりそうになった親子を、カイトが高速で走り抜けてウルトラマンマックスへと変身! 無事に救出してみせるさまは、放映当時に強調されていた「最強! 最速!」の戦士であることを見事に再現した演出となり得ている!


 まぁ、カイト隊員は『マックス』最終回でウルトラマンマックスと分離して、その数十年後の老年時代まで描かれているので、本話のカイト隊員はウルトラセブンウルトラマンレオウルトラマンエイティやウルトラマンメビウスのように、マックスがカイト隊員と再合体しているのではなく、マックス自身が若き日のカイト隊員の姿を模して変身しているのだろう。それはそれで歴代シリーズにも前例があるのだし、ウルトラマンが人間にも逆変身が可能! といった万能性・超越性を強調するものにもなっているので、実によいとは思うのだ。


 『ウルトラマンX』の世界に出現したウルトラマンマックスは、ウルトラマンエックスを苦しめたゼットンを最初は圧倒! 実に強い!(笑)


 しかし、ゼットンアーマーの魔力に操られたエックス・ゼットン・巨大化したスラン星人の3体からタコ殴りにされるわ、一斉ビーム攻撃を浴びるわで、散々な目に遭わされる。


 けれど、最初は優勢として、そして途中で劣勢になることもまた重要なのだ。2大ヒーローが終始優勢で勝ち進んでしまってもよいのだが、カタルシスにはやや欠如してしまうかもしれないのだ。やはりお約束でも一度は苦戦しておいて、それからのちにお約束のスーパーヒーロー共闘による大逆転の「落差」から来るカタルシスを最大限に盛り上げるために、逆算された苦戦劇なのであろう(笑)。


 エックスの体内で大地がサイバーエレキングのデータカードから電撃を浴びせることで、エックスが正気を取り戻すという超ご都合主義(笑)により、形勢は一気に逆転!(カード単体でも電撃を発することができるのか!? でも、こういう万能描写もキライじゃない!)



大地「お帰り、エックス」


 この優しさにあふれる短いセリフが、大地とエックスの強い絆を象徴する!



 エックス対ゼットンのバトルを超アオリでとらえて、それを上空の太陽を中心にグルグル回転させて見せる!


 マックスの周囲で、分身したスラン星人が高速で走行しながら360度から円形に取り囲む!


 エックスが身体を高速回転させて繰り出す新必殺技・ゼットントルネードで巻き起こした竜巻が、ゼットンのバリヤーを打ち破る!



 『ウルトラマンギンガ』第1期(13年)第1話『星の降る町』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)のギンガ初変身場面では、着地したギンガを360度全方位から見せるなど、アベユーイチ監督はキャラクターを回して見せることに執念を燃やしている(笑)。SF洋画『マトリックス』(99年)や『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001102/p1)でも映像化された、被写体の周囲に円周状に多数のカメラを配置する「バレットタイム撮影」で実現させる360度全方位映像は、画面上のインパクトとしては絶大なものがあるのだが、撮影や後処理には多大なる時間と手間を要しそうではある(汗)。


 本話ではエックスが上空からゼットンに必殺光線を放つ際に、足の裏に描かれたサイバーチックな幾何学(きかがく)模様を見せているのもまた然り! 1964年生まれのアベ監督は世代的にも夢中になったハズである、かつての怪獣図鑑には必ず掲載されていたウルトラマンや怪獣の「足形」をも想起させる映像を、今風なかたちで描きたかったのではなかろうか?(笑)



 別れ際に、変身アイテム・マックススパークから大地の変身アイテム・エクスデバイザーにデータ転送して、ウルトラマンマックスの図版が描かれたデータカードを託したカイト。今後、エックスが新たな鎧・マックスアーマーなどを召喚することを期待せずにはいられない!


――後日付記:のちの第11話で、エックスがマックスのカードを使用するや、マックスアーマーは召喚されずに、マックスが所有していた大型武装・マックスギャラクシーが召喚されてきたのであった!(笑)――



「テレビは宝の箱だった。中でも、『ウルトラマン』は特別だった。(宇宙忍者)バルタン星人に(二次元怪獣)ガバドン、(汐吹き怪獣)ガマクジラ。(どくろ怪獣)レッドキングゼットンなどなど。破壊の快感と正義の暴力の虜(とりこ)になった。そして私はそのまま大人になった」

(『朝日新聞』夕刊 05年6月16日 『三池崇史(みいけ・たかし)のシネコラマ・ウルトラマン』)



 三池監督もまた、『マックス』では当時大きな話題となった第15話『第三番惑星の奇跡』と第16話『わたしはだあれ?』という「異色作」だけを残したが(笑)、初代『ウルトラマン』を回想する中で、子供時代の氏を虜にさせたのは「破壊の快感と正義の暴力」だったと語っている。本話の『狙われたX』はまさにそれを絵にしたものであり、それこそが「ウルトラ」最大の魅力であると筆者には思えるのである。



「そんな彼らがつくった『わたしはだあれ?』が、初期東宝特撮映画・第1期ウルトラシリーズ至上主義者の第1世代特撮マニアたちがあれほど否定してきた、第2期ウルトラのコミカル編的な演出や『タロウ』に出てきたウルトラの国のイメージを特にイヤイヤな風情ではなくスンナリと映像化していることは極めて重要なポイントだ。
 要するに三池監督たちが『ウルトラマン』から得たものは、ハードでシリアスでリアル・シミュレーションな要素やSF性でもテーマ性でもなかったのである。氏曰(うじ・いわ)く「破壊の快感と正義の暴力に夢中になった。そして私はそのまま大人になった」なのである。まぁ『第三番惑星の奇跡』はともかく『わたしはだあれ?』は「破壊の快感と正義の暴力」を主眼とした作品だったとはいえないのだが(笑)、特撮マニアではない世間一般のウルトラマン世代のウルトラマン観とは適度なコミカル演出やウルトラの国の設定をも含んだものであることが図らずも明示されたといえるだろう。
 もう特撮評論同人界では80年代中盤から第2期ウルトラシリーズ再評価の研究が散々進んできた中で、いまだに第2期ウルトラの一部コミカルな要素やウルトラ兄弟やウルトラの国の設定を、ウルトラマンの擬人化や神秘性の喪失につながるからといった論理で全否定にする輩の浅はかさ。氏の発言と作品によって第1期ウルトラにも第2期ウルトラで批判されたようなコミカル演出や児童ドラマなどもあったのであり、第1期ウルトラも第2期ウルトラも微差はあっても本質的には同じことをやっており、絶対的な優劣・勝敗を付けるといった行為はナンセンスであるということが少しは露呈されたのではあるまいか?」

(特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンマックス』中盤合評3「老兵は潔く去れ! そして、マニアに媚びるな!」(久保達也))



 10年前なので、我ながら理論武装面ではやや粗雑な物言いであることは重ねてご容赦を願いたいのだが、ドラマだのテーマだのは「破壊の快感と正義の暴力」を描くためのお膳立て・言い訳なのであり、あくまでその背景・舞台装置であるにすぎない、と解釈すべきところではないのだろうか?


*第9話『われら星雲!』 ―『ウルトラマンギンガ』の「闇のエージェント」3大宇宙人客演!―


 これまで「破壊の快感と正義の暴力」を主張してきたが、そういったものがほとんど描かれていない第9話『われら星雲!』も、これとて立派な「ウルトラ」であると筆者には思えるのだ(オイ・汗)。


 本話を観て、筆者の脳裏に真っ先に浮かんだのは、往年の人気バラエティ番組『ギミア・ぶれいく』(89~92年・TBS)の枠内で、かのビートたけしが企画した「動物さんチームVS怪獣さんチーム対抗ラグビー戦」であった(笑)。


 これはプロのラグビー選手が動物さん。たけしの弟子のたけし軍団


・水爆大怪獣ゴジラ――その後政界に進出し、宮崎県知事を務めたそのまんま東(ひがし)=東国原英夫(ひがしこくばる・ひでお)(『ウルトラマンサーガ』のバット星人の声)が演じた!――
・火炎怪獣ガメラ
・異次元宇宙人イカルス星人
・地底怪獣グドン
・L85星人ザッカル


などのアトラクション用の怪獣の着ぐるみを着用してラグビーの試合をするという、まさに無謀な企画であった。


 しかし、まさか本家でこのような「バカ展開」が描かれる時代が来ようとは!(爆)


 海獣サメクジラの子供――『ウルトラマンタロウ』(73年)最終回に登場した巨大怪獣だが、本話に登場したのは人間の手乗りサイズの幼体! 怪獣の「恐怖性」とは真逆な、こんな可愛らしいキャラクターが登場するだけでも個人的には許せてくる!(笑)――を賭けて、暗黒星人ババルウ星人・三面怪人ダダ・誘拐怪人ケムール人・変身怪人ゼットン星人の「暗黒星団」チームと、宇宙海人バルキー星人・イカルス星人・ナックル星人グレイの『ギンガ』第1期に登場した「闇のエージェント」宇宙人トリオにラグビーを挫折(ざせつ)した地球人青年の混成チームが、宇宙悪霊アクマニヤ星人を審判にして(笑)、ラグビーで対決したのである!


――後日付記:厳密にはこの3人は平行宇宙の別個体で、バルキー星人ハルキ・イカルス星人イカリ・ナックル星人ナクリが正式名称だそうだ――


 同時期に放映された『手裏剣(しゅりけん)戦隊ニンニンジャー』(15年)忍びの21『燃えよ! 夢の忍者野球』といった、同系のコミカル快作なども想起してしまったけど(笑)。


 しかし、「10年前」の『マックス』ではどこか仕方なく「バカ」をやってみせているといった風情がまだ残っていた。こうした真の意味で吹っ切れて気持ちよくスナオに笑える「バカ演出」のエピソードは少なかったとも思うのだ。


 地球人のダメ男と宇宙人トリオによるベタな友情話も、「写実的な演出」ではなくこうした「おバカな演出」であれば、むしろリアリズムよりも道徳テーマ性の方が先に立ってくる。しかも、説教クサさも減じてきて、がぜん面白くなるというものだ。特撮巨大シーンが極端に少なかったとしても、本編ドラマ部分に派手派手しい仮面キャラクター・着ぐるみキャラクターたちが多数登場することで、幼い子供たちの目もそこに向くだろうから彼らを退屈させることもないだろう。思春期以降の青年マニアをねらった作品ではなく、あくまで子供向けをねらった作品として、これほど有効な手法はないのだ(笑)。


 それでも、


・スタジアムの放送席からの主観で、巨大化した暗黒星団対エックスの特撮巨大バトルを窓ごしにとらえたり!
・スコアボードのミニチュアに、この第9話ではなく第4話のサブタイトルでもある「all for one(オール・フォー・ワン)!」の文字が電光表示で流れていたり!


などの我々年長マニアが喜んでしまうような小ネタの演出にもあふれている!


 しかも、オープニングのテロップでも明かされていたが、『ギンガ』の「闇のエージェント」宇宙人トリオの人間体は、それぞれの役の声優さんたちが演じているのだ(!)。皆あまりにも声から受けるイメージそのままのルックスであったことも(爆)、おおいに楽しませてもらったものである。



 ただ、これもまた、奇獣ガンQに変身させられたダメ男と少年の友情のペーソス(哀感)を描いた『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年)第11話『ガンQの涙』同様に、あくまでも「異色作」「変化球」としての魅力を楽しむべき性質のエピソードであるとは思うのだ。


 『ガンQの涙』は放映直後、「これぞウルトラだ!」「古き良き香りがする」などといって、マニア間ではかなり評価が高かった。筆者も「古き良き児童ドラマの香り」を楽しんだ。しかしながら、あくまでも「王道」ではなく「異色作」「変化球」としてのエピソードであろう。そして、そういった「異色作」や「変化球」をメインとして扱ったからこそ、『ネクサス』も『マックス』も商業的に成功できなかったのだと思うのだ。


 筆者も「異色作」「変化球」を完全否定しているワケではない。いや、むしろ『ガンQの涙』も『われら星雲!』も好きである。ただ、それらに共通して感じたのは、かつて『ゼットンの娘』『恋するキングジョー』にも見られたような、



「舞台は東京の下町で映画『三丁目の夕日』(05年・東宝)ばりに「むかしは良かった」と言わんばかりのオジサン的ノスタルジーぷんぷん」(爆)

(出典同上)



な作風であり、そんな「古き良き時代」を感じさせる作品ばかりをやたらと持ちあげる風潮には、少々危惧(きぐ)せずにはいられないものがあるのだ。


 これは筆者が(ひとり)ボッチものの深夜アニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』(15年・やはりこの製作委員会はまちがっている。続 TBS)の高校生主人公・比企谷八幡(ひきがや・はちまん)のように、


・過去を振り返れば後悔(こうかい)ばかりで死にたくなるし
・未来を想像すれば不安ばかりで逃げ出したくなるから


今が一番いい、とするスタンスだから云っているワケでは決してない(爆)。


 平均的な特撮マニアにとっての「古き良き時代」とは、やはり昭和の第1期ウルトラにおけるいくつかの牧歌的なエピソードのような1960年代的な時代を彷彿(ほうふつ)とさせる作風・路線のことを指しているのであろう。だが、そんな「昭和レトロ」な感覚こそが「ウルトラ」最大の魅力だなどと製作側もマニアも発信していたら、いずれは「ウルトラマン」が中年おじさんたちの記憶の中だけに残る「懐かしのヒーロー」と化してしまい、いよいよ平成の時代に必要とされない存在になってしまうのではなかろか?


 やはり『X』には、あくまでも現実ではなく現実ではなくフィクションなのだから、今後も「破壊の快感と正義の暴力」こそをメインで描いてほしいと、久々に『マックス』とその時代を振り返ったことで、筆者はより強く感じたものである。

2015.9.21.


(了)


ウルトラマンX』前半合評2 ~6話「星の記憶を持つ男」・7話「星を越えた誓い」

(文・戸島竹三)


 第7話。三浦浩一――『仮面ライダーオーズ』(10年)の右手だけの怪物が本体であるアンクを演じた三浦涼介の父――が演じる長官が前回の第6話での印象に反して、まともな人物に描かれていたのが大きな収穫。


 石化魔獣ガーゴルゴンの脅しに屈して異星人の青年・テル――映画『仮面ライダー THE FIRST』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060316/p1)で仮面ライダー1号・本郷猛(ほんごう たけし)役で主演した黄川田将也(きかわだ・まさや)!――を悪に差し出すような役のままだと、往年のNHK金曜時代劇『風神の門(ふうじんのもん)』(80年)の主人公・霧隠才蔵(きりがくれ・さいぞう)役からのファンとしてはツラい(笑)。


 メカ守護獣ルディアンの可愛いカッコいい戦いぶりもなかなか。早めの再登場を希望。


(了)


ウルトラマンX』前半合評3 ~ウルトラクロニクルを引き継ぐ『エックス』

(文・J.SATAKE)


 『ウルトラマンX(エックス)』(15)はこれまでのウルトラマンシリーズの良いとこどりで構成されている印象だ。


 主人公・大空大地(おおぞら だいち)は人形・スパークドールズとなった怪獣・ゴモラを、人類の技術・サイバー怪獣としてリアライズ・再実体化させる研究を進めるおとなしめの理系男子。熱血・やんちゃな主人公は東映作品が引き続き扱っていることもあってか、別のアプローチをするための選択であろう――ウルトラシリーズでも熱血系はいるが――。
 往年の『ウルトラマンガイア』(98・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)高山我夢(たかやま ガム)も類稀なる頭脳をもった主人公であったが、ウルトラマンと融合することで身体能力が決して高くなくてもヒーローになれる、という可能性を示すことは、同じように身体能力が高くないことを幼心にも自覚している子供たちにも希望を与えることであろう。


 『ウルトラマンギンガS(エス)』(14)では普通車両のみであった防衛組織の装備が、本作・Xio(ジオ)ではさらに拡充。ひとつの変形ユニットに乗用車・ワゴン車・トラックが合体することで戦闘機・宇宙艇・移動砲台へとパワーアップ! コストパフォーマンスを押さえつつ、兵器の種類を増やす工夫が良い。


 ウルトラマンがアーマーを装着するバリエーション展開も開始。スパークドールズからサイバー怪獣としてデータカードに落とし込んだ、それぞれの怪獣の特性を活かしたアーマーで防御・攻撃!


 さらに歴代ウルトラマンの客演も早々に実現! 戦いを通して超人同士の熱い思いが交錯、その証としてカードを授けられる。


ウルトラマンゼロからは時空を越えられるアーマー・ウルティメイトイージス!
ウルトラマンマックスからは必殺技・ギャラクシーカノンを放つことができる武器・マックスギャラクシー!


 作品の世界観が異なったとしても、並行宇宙を越境できるSF設定を、先の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』(09)や映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10)で作ったことで、何らかの方法で並行宇宙を越境可能となったのだろうと解釈できるものの、ウルトラマンダイナやウルトラマンゼロ以外のウルトラマンたちがどのようにして越境ができるのかについての細部はナゾである(笑)。しかし、完全なデタラメではなくちょっとした気の利いたウラ設定さえあれば越境も可能なように解釈できそうな余地がある空気を醸成できているところで、異なる世界観のヒーローたちを競演させること自体は大歓迎。


 さらに作品内のアイテムに沿ったかたちでエックスをパワーアップさせるという点も秀逸。


 そして第11話「未知なる友人」では、当初から実験を続けてきたサイバーゴモラリアライズ(実体化)についに成功! エックスと共闘し、宇宙から飛来したペダン星人の先兵・キングジョーを見事撃退する!


 『ウルトラセブン』(67)で登場したセブンの味方・カプセル怪獣たちを起点に、『ウルトラマンメビウス』(06)では遂に人類が様々な宇宙人由来のオーバーテクノロジーを習得して再現した怪獣をマケット怪獣として味方につけてきた。本作ではさらに『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)シリーズにおける、主人公・レイと怪獣・ゴモラの深い絆のドラマも踏まえた関係を描いた。


 技術的にはほぼ完成していたサイバー怪獣システムがついに起動したのは、ゴモラがスパークドールズとして大地のこれまでの行動を見てきたからだとされていた!


 父の希望を叶えるための研究の日々。そしてエックスと巡り会い、人々のために戦う姿。その熱い思いに応えるためのサイバーゴモラリアライズ! 黒いボディに走るメタリックブルーのラインと、胸のゴールドの文字・エックスがクール! 腕部の巨大な爪と赤いGの文字がエックスの装着するサイバーアーマーと同一であり、システムを共用していることを示す。


 エックスと抜群のコンビネーションを見せて――空中で身体をひねって繰り出す尻尾アタックも見せてくれた!――キングジョーを追いつめる。


 トドメはゴモラ定番となった必殺技・サイバー超振動波!――きらめく青白い光の粒子とともに突撃する姿もクール!――


 そして、エックスは以前にウルトラマンマックスから授かった大型武器・マックスギャラクシーで必殺光線・ギャラクシーカノンを放った!!


 単なる手駒ではなくともに戦う仲間として歩もうとする気持ちがあるからこそ、協力して敵に当たってゆく。種族を越えた同志の集まりの戦いがスタンダードとなる。そして、そういった行為こそが世界を真の意味で平和に導いていく端緒ではあるのだ……。


 ライバルとなる東映特撮作品と比較して、骨太の物語・不変の魅力を打ち出すべくドラマ性を強調する作劇を志向するのはウルトラマンシリーズの宿命なのかもしれない。その真摯な姿勢は評価されるべきだと筆者は思うが、現在ではそれが退屈で古臭いと捉えられてしまうこともあるだろう。


 ドラマ性を否定することなくウルトラマンというキャラの魅力をアップさせるアイテム・装備を投入、それを物語に巧く絡ませることで華やかさを演出する。ハード・シリアスだけでなく、おとぼけ・ほのぼのムードも取り入れる。


 『ウルトラマンギンガ』(13)で「闇のエージェント」(悪の組織の中堅幹部)として活躍したバルキー星人・ナックル星人・イカルス星人のトリオが、地球で安息を得るために宇宙人同士のラグビー対決に挑んだ第9話「われら星雲!」。シュール・熱血・ペーソスが絡み合った異色作だ――この流れはメタ的には『新ウルトラマン列伝』内でも「闇のエージェント」がナビゲーターとして度々登場して、そのキャラを浸透させてきたことの反映であった(笑)――。


 Xioの怪獣に対するスタンスも理想と現実を睨んでのもの。人命を守りつつ怪獣の生態も尊重。互いのテリトリーを侵さない境界線を引く役目を担う組織として戦うのだ。


 かつての『ウルトラマンコスモス』(01)が掲げた「怪獣保護」の精神は、筆者にはあまりしっくり来ない印象があった。本作では怪獣をスパークドールズとして従えるかたちとなり、この問題が完全に解消したわけではないが、それでもいかに怪獣といった異種族とも共存してゆくかを模索し続ける姿勢を示すことで、かえって安直なキレイごとの回答は示されてはいないためにムリな感じはなく、こちらも考えさせられる。


 硬軟取り混ぜた物語の展開で楽しませてくれる本作。さらなる強敵の出現でエックスのバージョンアップも! 次のウルトラヒーローの競演は? 後半も幅広い展開を見せてくれることを期待したい。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2015年秋号』(15年10月4日発行)~『仮面特攻隊2016年号』(15年12月30日発行)所収『ウルトラマンX』前半合評より抜粋)


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