『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』合評 ~劇場先行お披露目で戦隊の起死回生は成功するのか!?
『騎士竜戦隊リュウソウジャー』最終回・総括 ~ラスボス・終盤・作品自体に対して賛否合評!
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『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』合評1 ~短評・騎士と怪盗と警察と
(文・仙田 冷)
(2020年2月29日脱稿)
まず前提として、ヒーローの競演というネタは無条件に燃える! ということは最初に明言しておきたい(爆)。その上で、思ったところを二、三。
まず、今回はキャラの交通整理がいい感じにまとまっていたと思う。
このキャラならこう動くだろうなというのが、違和感も過不足もなく描かれ、極端な話、今回競演した2作(3戦隊)を見たことがなくて本作が初見という人が見ても、キャラの人となりがある程度わかるようになっている。
マイナソー怪人や敵幹部クレオンがルパンレンジャーのメンバーを襲うくだりや、カナロ(リュウソウゴールド)がつかさ(パトレン3号)にモーションをかけるくだり、抜き身の剣をぶら下げて臨海公園に現れたバンバ(リュウソウブラック)とトワ(リュウソウグリーン)がパトレンジャーに逮捕されるくだりなどは、競演させる以上はこういうのが見たかったんだよというのを見せてくれている。
次に、危機的状況の設定の仕方が面白い。
今回の敵怪人、ガニマ・ノシアガルダは、体に5つの金庫を持ち、1個に1体ずつの騎士竜を閉じこめている。
で、金庫は5つ同時に開けなければ開かず、しかも騎士竜の力を取り込んでパワーアップしたために、1つの金庫を開けるのにダイヤルファイターが2ついるという、にっちもさっちも行かない状況。
最悪、世界平和のためには敵を倒すことを優先して騎士竜たちを犠牲にするのもやむを得ないというところまで追い込まれる。
その状況を突破する鍵となるアイテムが、最初から画面に出ているというのも、伏線の張り方としてはフェアで良い。
で、気がつくと今回は、巨大戦がなかった。だがまあ、これはしょうがないかも知れない。正直最近の戦隊ロボは、合体の関係が複雑で、ちょっとついてけないものも感じていたのだが、特に『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190401/p1)の場合は、事実上2つの戦隊の巨大メカが入り乱れてくんずほぐれつ状態で(個人的には、番組の受けが良かった割に玩具が売れなかったのは、その辺の複雑さも一因ではないかと思っている)、それに『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019)のロボット型恐竜・騎士竜たちまで加わった日には、混乱に拍車がかかること請け合い。見ている子供たちもこんがらがるかも知れない。
そういう判断があったのかどうかは知らないが、今回は等身大戦だけでけっこうきれいにオチがついており、巨大戦をやっても蛇足にしかならない感じもなきにしもあらず。個人的には、『バトルフィーバーJ』(1979・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120130/p1)以来、ルーティンのように続いてきた巨大戦を、ここらでちょっと見直してみた方がいいのではないかとも思うのだがどうか。
本作については、だいたいこんなところである。
『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』合評2
(文・フラユシュ)
(2020年2月29日脱稿)
さてあの年は、『HUG(ハグ)っと!プリキュア』と『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』(共に18)にハマっていたので懐かしくかつ嬉しい作品でした。きちんと後日談になってるし。
ところで『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190602/p1)放映開始直前の『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』(19・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190406/p1)の時点で直前作『ルパパト』の最終回から一年後という噂を聞いたが、今回の話はいつの時期?
しかし、今回はかなり気になる情報も。
結局、ルパンブルー・透真(とおま)は蘇らせた恋人と距離を置いているとか、ルパンイエロー・初美花(うみか)は専門学校生(?)に、ルパンレッド・魁利(かいり)はこの二人と一人距離を置いて探偵稼業をしているらしいことが示唆されているが、パトレン3号(ピンク)・つかさ先輩の発言からまだ指名手配はされているらしい気配もあり、またテレビシリーズの最後で蘇らせた三人のうち魁利の兄のみ語られないのも不安が残る。
ルパンレンジャーの変身前の3人は罪には問われなかったのかもしれないが、立場的に警察にはマークはされているのだろうな。
初美花の親友はある劇中の事象から大人気漫画家として活躍中が示唆されて、ルパンレンジャーの後見人・小暮さんも今回のメール(LINE(ライン)だったかも)の内容からいまだに彼らに資金的な支援はしているらしいことを示唆するかたちでのみ言及。パトレンジャー側の可愛い事務方ロボット・ジムカーターも出番があるとは! が、パトレンジャー側の黒人上司・ヒルトップ管理官は未出演か。彼の謎のワイフが遂に登場か? と期待したのだが。飄々としたルパンエックス(パトレンエックス)のノエル君は相変わらず変わらんな……。
彼らのこの近況だと『ルパパト』最終回後に何があったかすごく気になるぞ。うーむ小説版かなんかでフォローしてくれないかな?
で、肝心の内容の方は、ルパンレンジャーとパトレンジャーがリュウソウジャーのメンツと絡むならこうだろうという理想的なからみ方で、理詰め的な作劇というかとにかくこうなるだろうなという連続。
『ルパパト』側のヒロイン・つかさ先輩や初美花を結婚前提で口説くリュウソウゴールド・カナロとか(笑)、精悍になったというか逞しくなったパトレン2号(グリーン)・咲也がリュウソウグリーン・トワ少年を拘束して取り調べるとか、お互いに堅物であるパトレン1号(レッド)・圭一郎とリュウソウブラック・バンバの融通の利かなさのやり取りとかね。
群像劇としてもよくできている。各キャラの性格のクセが強い『ルパパト』のメンツは話を動かしやすいのかも? 脚本は『ルパパト』側のメインライターだった香村純子さん。道理で。パトレンジャーら国際警察から見たファンタジックなリュウソウジャーへの銃刀法的には違法な武器の所持への追及とかは好きだな。まぁ違法性を示唆するだけで深くは追及しないのがお約束(笑)。
映画の内容としては、『ルパパト』の悪の組織・ギャングラー残党の暗躍――親分のドラグニオー・ヤーブンはどうした?――と、それによる、いわゆる大の虫を生かすために小の虫を殺すか否かの「トロッコ問題」。これは『リュウソウジャー』初期編でも人間のマイナス感情から誕生するマイナソー怪人を倒すのに、発端となった人間が死亡すれば解決するのだという、子供番組としてはやや重たすぎる設定の問題提起があったのだが、それを角度と題材を変えてもう一度問い直してみたか? まぁスーパー戦隊的になんとか解決してしまう作品でしたが――お祭り映画だしね――。十分楽しめました。
ア、今気づいたけど、『リュウソウジャー』側含めて巨大ロボ戦がないや。こりゃ珍しい。まぁドラマ性重視の『ルパパト』なら巨大ロボ戦なしもさもありなんだからか、3大戦隊のメカの数が多いから尺が取られるのでいっそ削ちゃえー! となったのか? 巨大ロボ戦がないということは昔のスーパー戦隊ならばありえないことだが、そのあたりは臨機応変になってきたという好意的な解釈で。
まぁ20世紀の特撮マニアみたいにスーパー戦隊にはよけいな巨大ロボ戦があるから人間ドラマを描けなくなったとか、近年のように子供向け娯楽活劇なのだから必ず巨大ロボは出すべきだという様式美至上的な意見まである中で、それこそどちらかに絶対主義的に気張らずに臨機応変でやるのが一番いいのでは? と感じたりもする。まぁリュウソウジャーの恐竜ロボットたちの方が子供たちにはインパクトがありすぎてフェアに見えなくなるからなどの推察もできますが。
同窓会のような作品で楽しかった。またいつか彼らに会えんことを。
補足
女児向けアニメの近年の3大『プリキュア』との合同ダンスの特殊エンディングの実現は、モーションキャプチャーによる3DCG技術の向上と少子化対策と『ルパパト』放映途中での時間帯変更ゆえか? むかし円谷プロが目指した特撮とアニメの融合がここで達成されている!(そうか?)。
ただもう少しプリキュア側の説明とアピールとスーパー戦隊側の素顔の踊りも見たかったが、比較的シリアスな『ルパパト』メンツだとギャップがあるのかも。
まぁ来年以降に期待としておきますか。あくまでも噂ですが、白倉さん曰く「しばらくライダーと戦隊の競演はない」という話もあるから、『プリキュア』との共演を狙っているのか?
『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』合評3
(文・久保達也)
(2020年2月22日脱稿)
*「VS映画」、3年ぶりのロードショー公開!
2017年1月14日に公開された映画『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャーVS(たい)ニンニンジャー 未来からのメッセージ from(フロム)スーパー戦隊』(17年・東映)以来、現在放映中の最新作と直近の前作の世界観をクロスオーバーさせるスーパー戦隊シリーズの「VS映画」が、実に3年ぶりに帰ってきた!
もっとも厳密には『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180310/p1)と『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年)をクロスオーバーさせた映画『キュウレンジャーVS(ブイエス)ルパンレンジャーVS(ブイエス)パトレンジャー』(19年・東映・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191013/p1)が、2019年5月3日から3週間の期間限定で公開されてはいるのだ。
ただ『キュウレンジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』は東映ビデオが劇場先行公開と映像ソフトの発売で展開するブランド『東映 V CINEXT(ブイ・シネクスト)』の一環として公開されたため、その上映館は全国で40館にも満たず、お住まいの地域によっては劇場で観るのがかなわなかった人も多かったことだろう。
前作『ジュウオウジャーVSニンニンジャー』との間に2年4ヶ月ものブランクをはさんで公開された『キュウレンジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』がそのような変則的な上映となったことから、今後の「VS」映画もやはり『東映 V CINEXT』として一部の劇場のみの公開となってしまうのか? と危惧(きぐ)したのは決して筆者だけではあるまい。
なので今回の『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVS(ブイエス)ルパンレンジャーVS(ブイエス)パトレンジャー』(20年)が従来のスーパー戦隊や仮面ライダーの劇場版のように全国ロードショー公開となったことをおもわぬ朗報だと喜んだ人々は多かっただろうが、筆者はこの『リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』は、当初『東映 V CINEXT』の一環として製作されたかと思えてならないものがあるのだ。
*『V CINEXT』的な「VS」映画
まず従来の「VS」映画の尺が70分前後あったのに対し、今回は60分弱であり、これは『帰ってきた侍戦隊シンケンジャー 特別幕』(10年・東映ビデオ)から『帰ってきた動物戦隊ジュウオウジャー お命頂戴(ちょうだい)! 地球王者決定戦』(17年・東映ビデオ)に至る、放映終了後のスーパー戦隊の「その後」を描いてきたオリジナルビデオ作品である歴代の『帰ってきた』シリーズと一致するのだ。
もっとも『リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』は従来の「VS」映画が単品で公開されてきたのとは異なり、『スーパー戦隊MOVIE(ムービー)パーティ』なる新たな番組名にて、『リュウソウジャー』の後番組として2020年3月8日にスタートする新番組『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年)の前日譚(たん)となる映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1)と同時上映となったことから、その分尺を短くした可能性はたしかにある。
ただ今回気になるのが、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年)の後見人のレギュラーキャラで、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(93年・東映 フジテレビ)の怪人・フライドチキン男や、映画『ガメラ2 レギオン襲来』(96年・角川大映)に映画『ゴジラ×(たい)メカゴジラ』(02年・東宝)などの出演歴もある著名な俳優・吹越満(ふきこし・みつる)――往年の金曜ドラマ『ランデヴー』(98年・TBS)では『快獣ブースカ』(66年・円谷プロ 東宝 日本テレビ)の主人公キャラ・ブースカの人形を大事にするがために妻に家出される怪獣オタクの夫を演じていたことから、「怪獣オタクに対する差別を助長するものだ!」として当時筆者はTBSに抗議文を出してしまったものだ(大汗)――が演じる古生物学者・龍井尚久(たつい・なおひさ)とその娘・ういの親子がいっさい登場しないことだ。
ういは第42話『決戦のステージ』で「アメリカに行く」と称して実質的な途中退場していることから――いくら最終展開とはいえ、こうしたキャラをもてあますようではダメだろう――、映画公開のタイミングで不在なのは当然すぎるくらいなのだが、一方の龍井は『リュウソウジャー』にこれまで1話も欠けることなくパーフェクトに登場していることから、今回のみ出てこないのはやはり奇妙に思えるのだ。
リュウソウジャーがアジトとする龍井家の応接室のセットすらも使われていないのだが――ただしガレージのセットは使用されている――、本作の時系列がテレビシリーズの時間軸内で起きた出来事とするならこれは不自然でもある。
最初はビデオ販売のみのかなり低予算な作品として製作されており、だから高額なギャラが必要となる『リュウソウジャー』の後見人・吹越満、『ルパンレンジャー』の後見人であるコグレさんこと温水洋一(ぬくみず・よういち)、『パトレンジャー』の黒人上官・ヒルトップ管理官ことアイクぬわら氏などは使えなかったのではなかろうか? 当初からロードショー公開を前提として製作していたのなら、吹越氏クラスの著名な俳優を出してハクをつけるくらいのことは当然やったのではあるまいか?
つまり、本作は時系列としては『リュウソウジャー』の「その後」を描いているようにも解釈可能なのだ。クレオン以外のレギュラー悪の戦闘民族・ドルイドンの幹部たちがいっさい登場しないこともあるのだが。
クレオンは第46話『気高(けだか)き騎士竜たち』のラストでドルイドンの首領的存在・エラスに取りこまれて姿を消していることから今回の映画が第42話と第46話の間の出来事と解釈することも可能だが、終盤で改心の情を見せたこうしたコミカルキャラは、最終決戦でも倒されずに終わる場合もあるために、本作がテレビシリーズの続編として製作された可能性が捨てきれないのだ――放映前に予想するが、おそらくクレオンは最終回でエラスと切り離されて復活するだろう(笑)――。
ちなみに本作のキャッチコピーは「騎士竜たちと永遠の別れ!? 最強の敵を前に試されるそれぞれの正義!!」だが、時系列が放映中の時間軸なら『リュウソウジャー』最大のウリである騎士竜と「永遠の別れ」になるハズもなく(笑)、これもまた本作の時系列が「その後」であろうことをにおわせるものとなっている。
だが何といっても本作が当初『東映 V CINEXT』の一環として製作されたのかと筆者が思ってしまう最大の理由は、従来の「VS」映画のように現行作品の次にスタートを控える新番組の戦隊ヒーロー&ヒロインの競演が描かれなかったことだ。
ところで『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』と『リュウソウジャー』の間に放映された『4週連続 スーパー戦隊最強バトル!!』(19年)が印象づよく残っている人々はきっと多いことだろう。
これは『ルパVSパト』がマニア間では絶大な人気を博した反面、玩具の売り上げは前作『キュウレンジャー』より大幅に落ちこんで、21世紀のスーパー戦隊中でも最低を記録したことから(爆)、歴代スーパー戦隊の華麗な競演の中に新番組『リュウソウジャー』のキャラや世界観を事前に点描することで、『リュウソウジャー』を商業的になんとしてでも成功させようとする東映・バンダイ・テレビ朝日の思惑(おもわく)を背景として製作されたのだと筆者は考える。
だが『キュウレンジャー』と『ルパVSパト』がともに平均視聴率3.0%だったのに比べ、『リュウソウジャー』は第44話『試されたキズナ』の時点で平均が2.6%とさらに落ちてしまった。
玩具の売り上げも筆者が知る範囲の店で、放映終了間近になっても『戦隊ヒーローシリーズ』のソフビがほぼ全種残っているのは『リュウソウジャー』が初めてだ(大汗)。
あの国民的人気アニメ『ドラえもん』(79年~)と『クレヨンしんちゃん』(92年~)ですらも、ついに金曜19時台から土曜夕方の枠へと追いやられたほどなのだから、子供番組全体が苦境に立たされているのだろうが、先述した『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』も『4週連続 スーパー戦隊最強バトル!!』と同様に、今度こそ失敗はできないとする製作側の危機感から急遽(きゅうきょ)製作・公開されるに至ったのかと思える。
とはいっても30分の『エピソードZERO』のみを公開するワケにもいかないことから、『東映 V CINEXT』としておそらくは春以降に公開する予定だった『リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』を急遽繰り上げ、『スーパー戦隊MOVIEパーティ』として『エピソードZERO』と同時上映する運びとなったのでは? と筆者は推測するのだが。
もっとも『リュウソウジャー』の視聴率が低下したのは決して作品のみの責任ではなく、先述したように「VS」映画は『ジュウオウジャーVSニンニンジャー』、春に公開されてきたスーパー戦隊と仮面ライダーのコラボ作品『スーパーヒーロー大戦(たいせん)』シリーズは映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 超スーパーヒーロー大戦』(17年・東映)で打ち止めとなってしまい、2018年度以降のスーパー戦隊劇場版が夏に公開される単独映画だけとなったことが、スーパー戦隊シリーズ自体の人気や商品的価値に悪影響をおよぼした面は否(いな)めないのではあるまいか?
おそらくは2020年度も東映としては従来の「VS」映画はやらないつもりだったのが、『リュウソウジャー』、ひいてはスーパー戦隊シリーズの危機的状況により、あらたに『スーパー戦隊MOVIEパーティ』を立ち上げざるを得なくなったというところだろう。
*「VS」映画としての達成度は?
さて今回は『リュウソウジャー』の敵・ドルイドンのコミカルキャラ・クレオンが洞窟(どうくつ)内で牢(ろう)に囚(とら)われの身となっている前作『ルパパト』の敵・異世界犯罪集団ギャングラーの残党怪人を発見、その残党怪人のマイナス感情から『リュウソウジャー』に毎回登場する怪人・マイナソーを生みだし、連中たちと共闘することとなる。
残党怪人はその体に5つの金庫を持つが、『ルパパト』でギャングラーが集めていたルパンコレクションではなく、リュウソウジャーの相棒である騎士竜たちを金庫内に閉じこめ、その強大な力を発揮する怪人のためにコウ=リュウソウレッドらは序盤の戦闘で危機に陥(おちい)ってしまう。
そんな出だしでコウと夜野魁利(やの・かいり)=ルパンレッドが出会うのをはじめ、バンバ=リュウソウブラックとトワ=リュウソウグリーンの兄弟は公道でリュウソウジャーたちが常備するリュウソウケン(剣)を所持していたために、国際警察の朝加圭一郎(あさか・けいいちろう)=パトレン1号(レッド)と陽川咲也(ひかわ・さくや)=パトレン2号(グリーン)に「銃刀法違反」で逮捕され(笑)、メルト=リュウソウブルーとアスナ=リュウソウピンクはギャングラー怪人の金庫を開ける方法を高尾ノエル=ルパンエックス=パトレンエックスにたずねるが、マイナソーはその金庫を開けるアイテム・ダイヤルファイターを奪おうとルパンレンジャーたちをつけ狙う……
といった具合に、『ルパパト』のメインライターだった香村純子(こうむら・じゅんこ)と『リュウソウジャー』にサブライターとして参加した荒川稔久(あらかわ・なるひさ)の共同脚本によって、無理なく融合した『ルパパト』と『リュウソウジャー』の世界の中で強者が集結していくさまは、『リュウソウジャー』はともかく(笑)、いまだに『ルパパト』に想いが強い筆者は心の中で歓声をあげずにはいられなかったものだ。
特にお気に入りのユルキャラのフィギュアを当てるためにガチャガチャ自販機の前で悪戦苦闘していた明神(みょうじん)つかさ=パトレン3号(ピンク)に、そのフィギュアがダブったからとカナロ=リュウソウゴールドが近づくことに成功、「お礼に」とつかさがカナロを連れていったカフェは奇(く)しくも宵町透真(よいまち・とうま)=ルパンブルーが経営しており、つかさと透真が旧知の間柄と知ったカナロが「恋人?」と落胆したり(笑)、つかさと「今度結婚するんです!」と勝手に口走ったカナロに透真が真顔で「おめでとうございます」(爆)と祝福する一連の場面は、それぞれのキャラの特性を最大に描き尽くしたものだろう。
また大事な人たち=兄・婚約者・親友をせっかく取り戻したハズのルパンレンジャーの3人が、再度彼らと離れて生活している理由をつかさが透真に問いつめるのも、『ルパパト』の「その後」としては見逃せない部分だ。
さらにノエルが取り戻したいと願う快盗=アルセーヌ・ルパンがかつて海のリュウソウ族と出会っていた(!)とされたことで、海のリュウソウ族であるカナロの妹・オトが落としたルパンに関する書籍が契機となって早見初美花(はやみ・うみか)=ルパンイエローとオトが出会うのもさることながら、ルパンが海のリュウソウ族から受け取り、今はノエルが所持していた「はじまりのリュウソウル」によってリュウソウレッドがルパンレッドに、リュウソウブルーがルパンブルーに、リュウソウピンクがルパンイエローへとチャンジするクライマックスは、ヒーロー&ヒロインの強化形態自体に単にイベント性のみならず高いドラマ性とキャラクターの魂(たましい)を宿らせる作劇的技巧が光っていた。
そして『ルパパト』の続編としてとらえるなら、夜の歩道橋の上で圭一郎=圭ちゃんに好物の缶コーヒーを手渡した魁利が「おにいさん」(!)と話しかけるのには、『ルパパト』第49話『快盗として、警察として』で同じく歩道橋の上で、
「警察の立場ゆえに、目の前の君たちを救えないのなら……、オレは警察をやめる!!」
と圭ちゃんが宣言したことで、魁利にとって圭ちゃんが「熱血おまわり」からもうひとりの「にいちゃん」となった名場面――ふたりに昇る朝日が照らされるのが、その関係性の変化を最大に象徴していた――を彷彿(ほうふつ)とせずにはいられなかった観客も多かったことだろう。
この「にいちゃん」もそうだが、ラストシーンでコウが魁利を指(さ)して「オレと同じで素直だから」と語り、「んなこと初めて云われたよ」と謙遜(けんそん)する魁利の姿もまた、その成長ぶりを如実(にょじつ)に感じさせるものとなっていた。
本作は2020年2月7日および8日に公開された映画の中で、『ぴあ』映画初日満足度ランキングで第2位(!)となったが、それはやはりキャラクタードラマとしての充実度の高さゆえのものだろう。
ただそうした調査に本来のメインターゲットである子供たちが投票するハズもないことから(笑)、少し別の視点で本作をとらえてみると、やはり「特撮ヒーロー作品」としては見せ場が少なかったという印象が残る。
『リュウソウジャー』のドルイドンが悪の組織としてのスケール感には最終展開直前まで欠けていたことから、今回は劇場版としてそれなりの巨大さが描かれるか? と少し期待していたのだが、出てきたのは先述したギャングラーの残党怪人とマイナソーとクレオンの3人以外はギャングラーとドルイドンの戦闘員のみであり、テレビシリーズとさほど変わりがなかった(笑)。
残党怪人にギャングラーの女幹部だったゴーシュ・ル・メドゥの実験台としての出自が語られたり、マイナソーが頭部の冠(かんむり)が首領のドグラニオ、鼻が幹部のデストラ、両腕は魁利の因縁(いんねん)の敵だった氷結怪人ザミーゴの二丁拳銃など、ほかにもゴーシュやライモン、戦闘員のボーダマンに至るまでが体の各所にモチーフとされる、まさに『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100211/p1)や映画『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)に登場した暴君怪獣タイラントみたいなカオス的デザインなのは、タイラントがウルトラ兄弟に倒された怪獣たちの怨念(おんねん)の結晶だったのと同じく、高いドラマ性とキャラクターの魂のみならず、シリーズとしての連続性をも宿らせた完成度の高さが感じられるものだ。
ただそれだけに、連中が暴れるシーンは中盤で都市を破壊する場面がほんの十数秒あるだけで(爆)、全世界的・地球的規模の危機がほとんど描かれなかったのはやはりもったいなく、映画ならではのスケールの大きさが感じられることはなかったのだ。
また残党怪人の金庫から助けられた騎士竜たちが、残党怪人とマイナソーに逆襲をかける、つまり合体して巨大ロボットとなる描写すらもなかったのだ。
これはスーパー戦隊の魅力のひとつであるハズの「巨大戦」がやや軽視されてきたり、時に全カットされてきた先述したオリジナルビデオ作品『帰ってきた』シリーズとも共通する作風であり、やはり本作が当初は『東映 V CINEXT』の一環として企画されたがために、巨大戦がなくても満足してくれる年長マニア向け、あるいはハデな都市破壊場面や巨大戦を描くことができないほどに低予算だったのかと推測される。
動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)で全13話が配信された『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)の前半ではウルトラマンゼロが悪側によってずっと闇の空間に閉じこめられるものの、後半で後輩ウルトラマンたちに救われるのみならず、後輩たちからこれまでの恩返しとして贈られたパワーで最強形態・ウルトラマンゼロビヨンドへと進化する最大の見せ場が与えられたものだった。
今回の騎士竜たちもずっと割を食ってきたのだから、クライマックスでよりドラマ性を高めるためにもその活躍を描くべきではなかったのか?
騎士竜たちのパワーを失ったことでさほどの強敵ではなくなった残党怪人とマイナソーを、リュウソウジャー・ルパンレンジャー・パトレンジャーの13人がかりで痛めつけるさまは、正直集団イジメにしか見えなかった(爆)。
『ウルトラギャラクシーファイト』の終盤で因縁の敵、悪の超人・ウルトラダークキラーが一度倒されるも復活して超巨大化したように、今回も残党怪人が超巨大怪獣となり、先述した「はじまりのリュウソウル」=アルセーヌ・ルパンと海のリュウソウ族の絆(きずな)の象徴でパワーアップした騎士竜たちが合体して新型ロボットが誕生、リベンジ戦を展開することで、それまで描かれてきた3大スーパー戦隊の物語にさらに高いドラマ性とキャラクターの魂を宿らせることができたはずだと思えるのだが。
なお、本作のメガホンをとったのはスーパー戦隊の大ベテラン・渡辺勝也監督だが、氏は第25話『踊るクレオン』――これが3.6%だったのを最後に、以後『リュウソウジャー』は視聴率で一度も3%以上を記録していない(汗)――を最後にテレビシリーズは1本も撮っておらず、テレビ朝日側のチーフ・プロデューサー・佐々木基(ささき・もとい)氏の途中降板も含め、『リュウソウジャー』の現場では相応の確執があったのかと推測される(大汗)。
まぁ、先述してきたように本作が本来は高額な映像ソフトを購入するような熱心なマニア層に向けた『東映 V CINEXT』として製作されたのだと仮定するなら、今回のような作風になったのもある意味必然だったのかもしれないが。
いずれにせよ、スーパー戦隊を未来永劫(えいごう)継続させるなら、この『スーパー戦隊MOVIEパーティ』は決して休止させることなく、毎年の恒例(こうれい)行事としてその存在を世間にアピールしていくべきだろう。
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