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快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー前半合評 ~パトレン1号・圭一郎ブレイク!

(2019年5月26日(日)UP)
『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』序盤合評
『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』中盤合評
『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』終盤評
『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』
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[戦隊] ~全記事見出し一覧


合評1 意外にも作劇の「勝利の法則」は、「警察戦隊」側の描き込みにあった!?


(文・T.SATO)
(18年6月17日脱稿)


 「快盗戦隊」「警察戦隊」ともに、変身アイテムでもある同型の白色オモチャ銃を、メイン武器として終始手に持って戦っているあたり、ヘタをすると両者の絵的な差別化が困難になりかねないけど、本作では「快盗戦隊」は片手でぶっらきぼうに乱射する一方、「警察戦隊」を両手にシッカリ持って狙いを定めて銃撃することで、差別化もバッチリだ。


 近年の空騒ぎ「戦隊」と比すると、夜の闇に舞う「怪盗」というイメージも必要とするためか、ビジュアルイメージ的は少々シックでクラいかもしれない。ドラマ的にも少々マジメかもしれない。オッサンオタからすれば、これくらいのドラマ性やクラい過去は、70年代の日本特撮ではデフォルトではあったとも思うけど、現今の幼児たちから観たらドーなのであろうか?
 いやまぁ児童はともかく幼児なんて、ごく少数の文学青年気質やマニア予備軍気質の繊細ナイーブなガキはともかく、大多数の健全な体育会系のガキどもであれば、アクション部分はともかく人間ドラマ部分なんてロクに観ちゃいないであろうし(笑)、2大戦隊が登場するだけでもハデハデに映っているやもしれないので、少々クラいドラマ性の部分でドン引きするようなこともナイのやもしれない。


 加えて、往年の人造人間キカイダー(72年)に対するハカイダー、あるいは忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー(02年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021110/p1)に対する第2戦隊(?)ゴウライジャーみたく、比較的プレーンで公明正大もしくはお坊ちゃまな明朗ヒーローよりも、チョイ悪の兄貴風も吹かすニヒルなダークヒーローの方が、子供たちにもカッコよく見えるものである。
――だからといって、明朗ヒーローを除外してダークヒーローを主人公に据えれば大ヒットするのか? といえば、そーでもないあたり(笑)、自力で輝く太陽である明朗ヒーローとの対比の妙があって、はじめて光る惑星や衛星のような存在がダークヒーローなのではあろうけど――


 本作であれば、タイトルの頭である「快盗戦隊」の方がチョイ悪であり、タイトルのトリを取る「警察戦隊」の方が毎回「快盗戦隊」を捕り逃しているともいえるので、設定的にも陳腐凡庸に作ると「警察戦隊」の方が分が悪くなってしまうのだが……。


 そこはさすがに近年の戦隊スタッフ! アニメ・漫画だと80年代以降、特撮でも90年代以降に隆盛して、「公」よりも「私」を過剰に重視し、「公」は即座に全体主義軍国主義・自己犠牲の賞揚に結びつくといわんばかりの、個人的には一理はあっても違和感も大であった安直な図式には本作は陥(おちい)ってはいない。
 「快盗戦隊」はその生命を奪われてしまった大切な兄弟・恋人・親友を生き返らせるためにルパン・コレクションを集めようとしている。ギャングラーの魔手から人々を守らないワケではないけれど、それはあくまでも片手間であるとウソぶく――偽悪もあろうけど――。「物質的な富」や「肉体的な快楽」などの俗な欲望充足を求めているワケでもないが、私情といえば私情が動機ではある。


 それを知ってなお、「警察戦隊」はこう吐く。


「おまえらは怪盗という手段を採った時点で、すでにまちがっている!」


 それに対して「快盗戦隊」にも、「そうかもナ……」とつぶやかせ(しかし内心、「俺たちにはコレしか手段がナイ!」とも叫ばせて)、とはいえ「イタいところを突いてきた……」との弱音も吐かせる。


 こう来たか!? それであれば設定的にも毎回、「快盗戦隊」を捕り逃がすことが宿命付けられて分が悪い「警察戦隊」にも、道義面では「快盗戦隊」を上回ることができるワケだ。チョイ悪の「快盗戦隊」と道義を知る「警察戦隊」はここではじめて五分五分となり、作劇的にも拮抗することができるのだ!
 その照射によって、「快盗戦隊」側にも亡き友の復活以外の弱み・悩み・陰影をもたらすこともできる。本作のカギは意外にも「警察戦隊」の肉付けの方にあったようだ。


 もう早くも20年以上も前の「戦隊」になってしまうが、90年代後半に製作スタッフが世代交代してから、アニメでは70年代から当たり前ではあったけど、レッドが未熟な熱血バカと化して、対するに優等生キャラは副主人公にまわるように「戦隊」のキャラシフトも変わってきた。
 そこで悪意を持って描かれたワケでは決してナイのだが、優等生キャラをガチでは描かず、その融通の効かなさや空気・文脈の読めなさをコミカルな方向で描くことで、そのキャラを逆説的に立てるような作劇もなされるようになっていく。私見では『電磁戦隊メガレンジャー』(97年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111121/p1)の優等生キャラ・メガブラックなどに顕著で、アレが転機になったようにも思う。それはそれで寸止めに留めて小バカにせずに、愛あるオチョクリとしていて楽しかったのだが、しかし、もう少しイイところを見せてほしいような、ヘタをするとマジメで不器用な人間に対する蔑視にもあと少しで陥りかねないキワドさも、その描写にはあったと思うのだ。


 本作では、無鉄砲な無頼の域にまでの熱血には陥らせない、モラル・常識の範疇での古典的な熱血漢の役回りを、「警察戦隊」のリーダー・レッドことパトレン1号が務める。
 そして、作品の基本設定を固めた第1クール終盤以降、先の「おまえらは怪盗という手段を採った時点で、すでにまちがっている!」とのセリフを吐かせて、彼に記号的なマジメさだけでなく、背骨に一本スジが通った哲学・理念を持たせてもみせる。


 ドリルメカ登場の前後編では、実質的なエピソード主役を務めさせて、ゲスト怪人の毒で弱りながらも鬼気迫る病人メイクの顔出し熱演で、幼稚園児たちとの約束を守るためにも、ドリルメカを操縦して新ロボで巨大怪人を倒してみせる!
 そんな彼になぜだかホレた、留学間近の深窓の白いドレスのピアノ美少女の遠回しの告白に、彼はその気持ちに気付きつつも応えないハードボイルドなエピソードまでをも1本用意する。
 そんなパトレン1号をめぐって、パトレン2号&3号もヒューマンなリアクションを与えられることで肉付けされていく。


 まさに地固めが完了したところで、コレらを台なしにしそうなファンキーな追加戦隊戦士が登場して、番組をワチャクチャの狂騒・狂躁状態にするのも近年では通例のことだが(イイ意味で!)、それはそれで番組の化学反応を楽しんで観ていきたいモノだ。


追伸
 撮影面においては、軽量小型カメラと自撮り棒のようなモノも導入されたのであろうか? 明らかにクレーン機材の動きではない、カメラが地面スレスレを高速移動したり、上方に高速で昇って見下ろしたりする映像が、本作では多用されるようになった。
 加えて、低姿勢で開脚して足蹴りするようなアクロバティックなアクションも多用され、それをパース(遠近感)が強調されるレンズで捉えてみせる画面ショットもスタイリッシュでカッコいい!


(了)


合評2 『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』序盤寸評

(文・フラユシュ)


 まず#9までの視聴感想。


 世間一般ではおそらくルパンレンジャーひいき多そうだが、アッシは珍しくパトレンジャーのレッド(パトレン1号)ひいきです。
 生真面目すぎてここ最近のオバカ系レッドに近くはあるのだが、常に市民のことを考え「必ずあなた方の思いに応えます」との誠実さに、ただのオバカ系ではないものを感じさせます。
 まぁ怪盗側が個人の義VS警察側が公共側の正義で、個人の義を過剰にありがたがる風潮もあるでしょうが、それとは対立する公共とのバランス感覚も必要なわけでして。


 怪盗側も自分の目的のためなら他への犠牲はやむをえないとするのかと思えば、ガジェットたるルパンコレクションを金で買い取ろうとしたり(『富豪刑事』か?・注)、怪人に呑み込まれた際、先に呑み込まれた一般人を怪人の腹の中で助けていたり、特に消化ガスに落ちそうな子供を助けていて、怪盗の矜持は守ったりなど押さえるべきところは押さえている展開は感心。
 今のところ怪盗側のレッドの兄ちゃん、少し『超光戦士シャンゼリオン』(96年)の主人公・涼村暁(すずむらあきら)や『仮面ライダー龍騎』(02年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021109/p1)の仮面ライダー王蛇を演じた荻野崇さんに似てるなー。一見チャラ男でもその裏に優秀な兄へのコンプレックスと失われた兄を取り戻すため、イエローは親友を救うために高校中退、ブルーが失われた恋人を救うためなど、バックボーンが最近の戦隊にしちゃ重いなーという感じ。


 警察側はインチキ外人上司・ヒルトップ管理官に、事務専門のロボ・ジムカーター(声はツンデレといえばこの人の釘宮理恵!)とか、キャラ立では怪盗側に負けてるかな。
 まぁ警察側もグリーン(パトレン2号)はルパンレンジャー側が疑われた時にもそれを信じようとしたりなどこちらもチャラそうでいで誠実だったり、ピンク(パトレン3号)の姉ちゃんも男勝りで冷静かつ義理堅いが実はカワイイもの好きという、今期の女児向けアニメ『HUG(はぐ)っと! プリキュア』(18年)の3人目の黄色いプリキュア・キュアエトワールと少しキャラ被りしてるか?


 今回は怪盗側の協力者のコグレさんが神出鬼没でどう見ても常人じゃなさそう。敵側も底の知れないドグラニオ・ヤーブンや、何か企んでいそうなゴーシュ・ル・メドゥ(声はなんと萌え系声優・竹達彩奈だ)。
 ここ数年、途中で視聴停止が多かった『戦隊』だが、今回はかなり楽しんで観ています。


#10話以降の視聴感想。


 とりあえずギャク話にかなり当たりありという印象かな?
 しかし実写で人物交換・性別反転ネタは難しいと思うが、ジム・カーターもストレス爆発するは、『仮面ノリダー』(87年)ネタもやるは(同時期公開の映画『いぬやしき』(18年)の主演の人に引っ掛けたのか?)、怪人とルパンブルーの中身入れ替わりとか、あとでグリーン(パトレン2号)とピンク(パトレン3号)にブルーが説教されるとか、なんていうかもうお前ら十分友達じゃん。
 怪盗側の兄・恋人・親友の死亡事件の鍵を握る氷食いのライバル怪人・ザミーゴ登場とか(なんと人間態は元キカイダー役者!)、警察戦隊司令官ヒルトップさんにワイフいるとか色々情報出てくるな。
 ルパンコレクションは基本過去戦隊アイテムがモチーフでその戦隊の話にちなんだ話が基本?
 ところで怪人の声優わりと有名どころ多いが、近年の戦隊の傾向なのか?


 圭一郎に惚れた女編。同じ夢にイエローがいたことで一度は晴れた怪盗への疑惑が? 彼の夢はギャングラーのいない平和な世界で警官をすることか……。
 敵首領ドグラニオ・ヤーブンも大物なのか、何も考えていない意外にバカかも説もネットで出ていますが、どう転ぶか? まぁ自叙伝映画楽しみにしてたり、自分の像を楽しみにしてたりとお茶目な人だとは思うが。
 グットストライカー過去編。演出がコミカルというか往年の東映不思議コメディシリーズの脚本家・浦沢義男作品っぽいとの意見が。筆者は往年の東映ヒーロー『超神ビビューン』(76年)の母艦・ベニシャークを思い出したが。アルセーヌ・ルパンもあれでは怪盗というより科学者だな。
 ギャングラー側も警察にスパイ送り込んでる? まあフランス支部(?)とかなんかコグレさんも含めウサン臭い人多いが誰が裏切り者か、あるいは新キャラか現時点では推測できないな。以上#18まで。


補足小ネタ。今回、放送時期が『ルパン三世 PART5』(18年)と同時期だ!


(注) 『富豪刑事』はSF作家・筒井康隆が1975年に発表した小説。カネの力で事件を解決する。のちに何度か映像化。


(了)


合評3 『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』前中盤評

(文・久保達也)
(18年6月15日脱稿)

「私」から「公」へ、「個人」から「全体」への回帰?


「失ったものを取り戻すために戦う快盗!
 世界の平和を守るために戦う警察!
 君はどっちを応援する?」


 おいおい、どっちも応援したらあかんのか?(笑)


 インターネットのマイナビニュースでは、「『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』キャラ人気に異状あり、朝加圭一郎(あさか・けいいちろう=パトレン1号)がきてる!」と題した記事が、18年4月23日付で配信された。
 なんでも「朝加圭一郎」「圭ちゃん」などといったワードがTwitter(ツイッター)でトレンド入りするほど、日曜の朝は「圭一郎まつり」(笑)と化しているのだそうだ。


 失ったものを取り戻そうとするルパンレンジャーは「私」のため、世界の平和を守るパトレンジャーは「公(おおやけ)」のため、が、それぞれの戦う動機である。
 「平成」仮面ライダーシリーズの放映開始以降、「私」のために戦っているかに見えるヒーローも珍しくはなくなったご時世で、「公」のために戦うヒーローの方が人気面で優勢という状況には、やはり注目せざるを得ないのだ。


 地味な紺のスーツに赤ネクタイ、ベージュのトレンチコートに缶コーヒーを愛飲する、「昭和」の刑事ドラマかよ! とつっこみたくなるような、まだ20代半ばなのに妙にオヤジくさく見える圭一郎が株をあげたのは、第6話『守るべきものは』放映後のことなのだ。
 快盗に対する怒りで缶コーヒーをにぎりつぶすほど(笑)、常に正義に燃える熱血漢で不器用な圭一郎が、この回では敵組織・ギャングラーの怪人を早急に倒そうとせず、国際警察が所有していたお宝アイテム・ルパンコレクションをルパンレンジャーから取り戻すために、彼らをおびきだそうとして戦いを引き延ばしたことがアダになり、怪人を逃がすこととなった。


 常に「公」のために戦ってきた圭一郎が、あせりからつい「私」を優先してしまう姿を見せ、決してまじめ一筋ばかりではない別の一面を描いたことも大きかったが、その後立ち直ったパトレン1号=圭一郎は怪人の襲撃から逃げ遅れた母子を助け、おれが守るべきはプライドじゃない、人々を守ることだ! と熱く叫ぶのだ。
 この姿を見て、ルパンレッドが「いや、今日は負けたわ」と、再度警察の手に渡ったルパンコレクションを取り戻すのをあきらめる描写が、パトレン1号=圭一郎を、よりかっこよく見せることに最大限に機能していたかと思える。


 そのスタイルも戦法もスタイリッシュなルパンレンジャーと、地に足のついた立ち回りを見せるパトレンジャーとを絶妙に対比させてきた積み重ねが、第6話で功を奏したと云うべきであろう――ルパンレンジャーのVS(ブイエスビークルが飛行マシン、パトレンジャーのビークルが地上走行の車両であるのは、その最大の象徴だ――。


 圭一郎のみならず、チャラ男・クール・キャピキャピ(笑)のルパンレンジャーとの対比として、陽川咲也(ひかわ・さくや)=パトレン2号、明神(みょうじん)つかさ=パトレン3号もまた、まじめ・誠実・実直といった面が強調されているようだ。


 第6話でつかさは「私」を優先して怪人を逃がしてしまった圭一郎に、問答無用でいきなりビンタを食らわせるが、日頃から妙にドスのきいた声で男言葉で話すつかさは、演じるネエチャンがかなり気の強そうな美人であることから、たとえこれまでにキャラの掘り下げがなかったとしても、こんなとき絶対に殴るだろうなと、視聴者も予想がついてしまう(爆)。
 だが、つかさは国際警察に入った当時、圭一郎が「我々が手にしたのは、人々を守るための力だ」と語ったのを回想し、自分はあのときの圭一郎の言葉を胸に、これまでやってきたのだと主張する。


 また、夜野魁利(やの・かいり)=ルパンレッド同様のチャラ男にも見える咲也も、第11話『撮影は続くよどこまでも』で、やはり国際警察に入った当時にくじけそうになったとき、涙の先にこそ、我々がめざすものがあるのだという、圭一郎とつかさの言葉を胸にがんばってきたと語るのだ。


 つまり、つかさも咲也も、その行動の指針・動機は仲間の言葉が発端(ほったん)であり、「たとえ誰かが倒れても、残った誰かが願いをかなえる」と、序盤で誓っていたルパンレンジャーの個人主義との、絶妙な対比となっているのだ。


 第11話では国際警察のPR映画の撮影にイマイチやる気が出ない圭一郎とつかさに対し、咲也だけは「先輩たちのかっこよさを世間に広めたい!」とノリノリだったが、第7話『いつも助けられて』では、宵町透真(よいまち・とおま)=ルパンブルーが魁利を評して「らしくないな。おまえが仲間をかばうとは」と語っており、同じようにチャラっぽく見えても、魁利と咲也は実に好対照なキャラだと云えるだろう。
 第8話『快盗の正体』では、つかさが魁利たちをルパンレンジャーでは? と疑ったことに対し、咲也がナンパ相手(笑)の早見初美花(はやみ・うみか)=ルパンイエローの潔白を「僕は信じています!」と、最後まで主張しつづけたほどであり、これではパトレンジャーの株があがるのも必然だ(笑)。


 第14話『はりめぐらされた罠(わな)』&第15話『警察官の仕事』の前後編では、圭一郎の自己犠牲・滅私奉公(めっしほうこう)ぶりがさらに強調され、これに影響されるかたちでつかさと咲也が奮起することで、パトレンジャーが強力怪人に逆転勝利するさまが描かれた。
 すべての男子のあこがれ・ドリル戦車(笑)で地底を進む圭一郎は、小学生のころ、通り魔事件の犯人を自ら捕まえようとしていたのを、「つかまえるのは僕たちの仕事」とたしなめ、約束どおり逮捕してくれた若い警官のさわやかな敬礼を回想する。
 ルパンレンジャーのコスプレをして怪人を倒そうとする幼稚園児と自身を重ね合わせた圭一郎が、最後まで子供との約束を果たそうとするさまは確かに激アツだった。


 それに加え、自身も負傷しながらも、怪人に重傷を負わされた圭一郎に代わって幼稚園児に会いに行き、あらためて「僕たちが倒すよ」と敬礼する咲也もまた、これまでに圭一郎とつかさを敬(うやま)う姿が積み重ねられてきたことから、いかにも咲也らしいすがすがしい行為に見えたものだ。


 すべてが解決し、「ありがとう!」と駆け寄る園児を、圭一郎が両腕を広げて迎えようとするも、ピュ~とすり抜けて咲也のもとへと走り去る、係り結び的なオチも絶妙だが、笑顔がひきつったまま固まってしまう圭一郎の演技が絶品であり、また「圭一郎まつり」が盛大に繰り広げられたのではないのかと(笑)。


 「平成」仮面ライダーの登場以降、世間的には「公」よりも「私」、「全体」よりも「個人」を優先する風潮(ふうちょう)が形成されてきた、いや、そうした作風が支持されやすい風潮が00年代以前にすでに完成していた、と見るべきであろうが、時代が一巡(いちじゅん)して「私」よりも「公」、「個人」よりも「全体」を重視する世論が、再び形成されているのかもしれない。
 そんな空気を肌で感じたスタッフが、ルパンレンジャーを近年支持されてきたかと思える、敵を倒して「永遠に、アデュー(笑・さよなら)♪」とホザくような、軽妙なヒーロー&ヒロインとして描くことで、いまどきむしろ珍しい、「遊び」の部分が少ないかと思えるパトレンジャーを逆に印象づけ、「私」よりも「公」を、「個人」よりも「全体」をかっこよく見せてしまう作劇は、実にあざやかではあるまいか?


「私」イコール「快楽主義」ではない


 ただし、ルパンレンジャーは「私」のために戦うとは云え、おおいなる力を秘めたルパンコレクションを、決しておのれの欲望を満たすだけの、「快楽主義」のために集めているワケではない。
 第5話『狙われた国際警察』で、魁利が圭一郎に「オレたちはこれしかないからやってんだ!」と、その動機を叫んだように、魁利は兄を、透真は恋人を、初美花は高校の同級生だった親友をと、各人の奪われた大切な存在を取り戻すために、なんでも願いをかなえてくれるルパンコレクションの力を必要としているのだ。
 その「私」の動機は、ゲストとその回の主役の境遇を重ねあわせて各キャラを掘り下げる、「平成」ライダーファンからは俗に「お悩み相談」と呼ばれる手法を用いて、第1クールでは反復して描かれていた。
 本作のメインライター・香村純子(こうむら・じゅんこ)が参加した『仮面ライダーウィザード』(12年)も、まさにこの形式だった。


 第9話『もう一度会うために』では、姉と仲違(たが)いして家出したフランス人女性のエマと魁利を、第12話『魔法の腕輪』では、大会で1位になる姿を車イスの少女に見せたいと願う陸上部の中学生・勇気と透真を重ねあわせていた。
 第9話では、兄のようにバスケットボールで活躍したいと願った幼いころの魁利が成長してバスケ部に所属するも、ロクに活躍できなかった過去が回想で描かれる。
 これが魁利の説明セリフではなく、「姉はきれいでやさしくてなんでもできて」とのエマのセリフをかぶせることで、そのコンプレックスから兄や姉に次第に反発するようになった魁利とエマを、視聴者に同一視させる演出は実に秀逸(しゅういつ)であった。
 「会えるうちに会った方がいい。会えなくなったら遅い」と魁利がエマを説得するさまは、魁利が決して単なるチャラ男ではないことを、明確に視聴者に印象づけていたのだ。


 また第11話で、高速で走る能力を持つルパンコレクションの腕輪を勇気が怪人から奪ってしまい、透真がそれを奪おうとするも、勇気が話した「魔法の腕輪」が登場する絵本を、恋人も好きだったことを回想した透真が、腕輪に手を出せなくなったのは視聴者の感情移入を誘ったことだろう。
 夢物語はつらい現実に立ち向かえるように、背中を押してくれるなどと、透真の恋人は我々がいい歳をして変身ヒーロー作品を視聴する動機を明確に語ってくれたが(爆)、夢物語を否定していたハズの透真は、恋人と勇気を重ねあわせたことで、初美花に「意外と乙女(おとめ)チック?」(笑)と云われてしまうまでに心の変遷(へんせん)が生じたのだ。
 怪人の襲撃から勇気を逃がそうとしたルパンブルー=透真が、「行け!」と、文字どおりに背中を押す描写は、ドラマ演出とバトル演出のクライマックスを華麗に融合させていた。


 さらに第13話『最高で最低な休日』では、ゲストではなく、つかさと初美花の親友を重ねあわせて初美花のキャラが掘り下げられた。
 ひょんなことからつかさと初美花はペアで遊園地をまわるハメになるが、その中で、つかさはオバケが苦手という意外な事実が明かされる。
 オバケ屋敷をこわがっていた親友の姿をつかさに見た初美花が、「大丈夫だよ」と、本来は一応の敵であるハズのつかさをうしろから抱きしめるさまには、百合(ゆり)=女性同士の性愛を描いた18年冬季の深夜アニメ『citrus(シトラス)』(18年)を連想したものだ(爆)。
 怪人の攻撃から初美花をかばったがために、親友は氷の中に閉じこめられて行方不明となったのだが、第7話で自責の念にかられ、自身の非力さを嘆(なげ)いていた描写につづき、今回初美花が遊園地に来たのも、親友が好きだったキャラクターのぬいぐるみを入手するためであり、初美花のいいコぶりに好感を増した視聴者も多かろう。
 普段は誰に対しても高圧的な(笑)つかさが、ラストで「初美花ちゃん」(!)と呼んだのが象徴的だが、このように「お悩み相談」形式でキャラを掘り下げ、多面的に描くことは、今後ルパンレンジャーとパトレンジャーの関係性に次第に変化を生じさせ、いずれは共闘へと至るまでの積み重ねとして、必要不可欠な作劇の手法なのだ。


 後輩の咲也に「そんな洞察(どうさつ)力じゃ警察官失格です!」(爆)と云われてしまうほど、女心に鈍感(どんかん)な圭一郎と、圭一郎に恋する良家のお嬢様との、恋のキューピッドになろうとする初美花が主役の第17話『秘めた想い』は、まさにその転機として描かれた回かと思える。
 「オレはふたつのことは同時にできん」とする、圭一郎の不器用ぶりを改めることはできなかったものの、敵である圭一郎に「お願いします!」と、ひたすら頭を下げる初美花の姿は感情移入すること必至であり、このひたむきさには、いずれはルパンレンジャーとパトレンジャーとのわだかまりを解消させる力がある、と感じさせたものだ。
 これまで「私」のために戦ってきたハズの初美花が、この回ではアジトとする喫茶店の常連客であるお嬢様のために、必死で圭一郎と戦う滅私奉公ぶりを見せるのであり、それはいずれ、誰かを守るための戦いへと昇華するのであろうから。
 それにしても、第7話で鬱(うつ)演技を披露したかと思えば、第13話ではつかさとかけあい漫才的なやりとりを演じ、怪人に対しては定番で「アンタなんか、クシャクシャのポイだよ!」(笑)と、ハスキーボイスで吐(は)き捨てたりと、いくらアイドルグループ・モーニング娘。出身でそれなりに芸歴があるとは云え、初美花役の工藤遙(くどう・はるか)の演技は、すでに完成の域に達していると云っても過言ではない!


グッとくる群像劇・アクション&特撮演出!


 こうした流れと並行して、ルパンレンジャーから大切な存在を奪った因縁(いんねん)の敵であり、人間態も怪人態も、西部劇のようなテンガロンハットにポンチョを着たガンマンスタイルの統一感が絶妙なザミーゴ・デルマが、繁華街で口笛を吹いていたり、氷を食いながら歩く姿や、まさにマフィアのボスであるかのようなギャングラーの首領=ドグラニオ・ヤーブンが、彼を「後継者候補」と語るのが点描されていく。
 そして第10話でついにルパンレンジャーの前に現れるも、決着をつけずに退場させるまでの積み重ねもまた、ザミーゴが最大の強敵である印象を醸(かも)しだすとともに、今後の展開に期待させる演出としては充分にすぎるくらいだろう。
 第14話&第15話の前後編では、かつてパトレンジャーの合体ロボ・パトカイザーの戦いに巻きこまれて絶命した兄怪人の仇(かたき)をとろうとする、弟怪人の恨(うら)みを巧妙に利用する幹部怪人が登場するも、作戦の失敗で失ったドグラニオの信頼を取り戻そうとして必死に暴れる姿が、サラリーマンの視聴者からすれば同情を禁じ得ないほどに(笑)、ギャングラー側にもさまざまな因縁や思惑が交錯する群像劇が、「平成」仮面ライダー並みに構築されているのは実に魅力的だ。


 アクション演出としては、第9話でエマを守るルパンレッドがエレベーターの中で怪人との密室バトルを展開したかと思えば、広場で戦うルパンイエローVSパトレン2号&3号を俯瞰(ふかん)してとらえたアングルから、そのままカメラがパンして高い場所から飛び降りるルパンブルーとパトレン1号が着地するのをとらえ、怪人を含めて乱戦となるまでを、ワンカットで各方位から追いつづける演出には舌を巻いたものだ。
 第11話で撮影所の屋上からそろって宙返りしたり、CGではなく、ワイヤーアクションで宙を舞って三方から怪人に攻撃をかけるルパンレンジャーの演出も、まさに「らしさ」を最大限に表現したものだった。
 そして第13話では、女怪人に鎖(くさり)で手をつながれてしまったつかさと初美花が、そのままでまわし蹴りやらすべりこみを演じるという、初心者にここまでやらせるか? と思えるほどの超絶なアクションを披露する!
 かと思えば、ルパンレッドとルパンブルーが、パトレン1号とパトレン2号の頭を踏み台にしてジャンプするという、あまりに非人道的な演出も(爆)。


 一方、第1クール終盤の巨大戦演出では、本編でルパンレンジャーが中心だった回のクライマックスでパトレンジャーの合体ロボ・パトカイザーが、逆にパトレンジャー中心の回でルパンレンジャーの合体ロボ・ルパンカイザーが活躍するといった、変則的な演出が例外として見られた。
 これはその回のグッとくる気分でどちらにつくかを選ぶマスコットメカ・グッティの存在を無視するかのようであり、実際「あっちに行ってろ」と邪険(じゃけん)に扱われるグッティが気の毒だったものだ(笑)。
 もちろん第14話&第15話の「圭一郎まつり」(笑)とか、近年は箸(はし)休めのギャグ回で定番として描かれてきたキャラ入れ替わりネタを、魁利と透真の強い絆(きずな)を描く物語に昇華させた第16話『仲間だからこそ』が端的な例であるように、本編ドラマでグッとさせた方にグッティが加担することで、その盛りあがりが巨大戦までなだれこむ作風こそが、本来の『ルパパト』の醍醐味(だいごみ)なのだ。
 ただ、序盤からすでに充分すぎるくらいにキャラの掘り下げ・積み重ねが行われたために、両陣営の人物像が公平に構築できて視聴者にも定着していたことから、片方の陣営だけを中心にして本編を描き、もう片方には巨大戦の方で活躍させて最低限の存在意義を示すことで、両者を立てるという実験的な試みは、パターン化を避ける意味でも正解だったのではなかろうか?


 ルパンレンジャーもパトレンジャーも、ともに新しく入手したルパンコレクションを合体ロボの兵器に転用してマイナーチェンジを繰り返しているが、右手のクレーンで巨大怪人をつかみあげ、左手のドリルを突きたてるパトカイザーの姿には、やはりグッとくるものがある(笑)。
 ちなみに第7話では、パトレン3号が「警察とヨーヨーは相性がいいらしい」と、パトカイザーの武器としてヨーヨーを使用している。
 かつて東映が製作した『スケバン刑事(デカ)』シリーズ(85~87年・東映 フジテレビ)のことなんだろうが、メイン視聴者の子供たちの親世代ですらわからないであろうこのネタ、いったい誰トクなんだろうか?(笑)
 まぁ、古い世代としては、ロボットアニメ『超電磁ロボ コンバトラーV(ブイ)』(76年・東映動画→現東映アニメーション NET→現テレビ朝日)の必殺技・「超電磁ヨ~ヨ~!」もおもいだしてしまったが(爆)。


 さて、例年と比べて追加戦士の登場が遅れている『ルパパト』だが、新戦士の変身アイテムや武器の玩具発売は7月中旬になるのだとか……
 ただ、新ヒーローが銀色のルパンエックス、金色のパトレンエックスのどちらにも変身可能って、これグッティの人間態じゃないのか?(爆)
 もちろんそれも楽しみだが、Vシネマ『宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース・スクワッド』(18年・東映)とのコラボ企画は、公開日の18年6月30日前後に行われるのであろうか?
 「今日の『ルパパト』は、いつも以上にグッとくるねぇ~!」と、視聴者にもグッティみたく云わせてほしいものだ(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年初夏号』(18年6月17日発行)~『仮面特攻隊2019年準備号』(18年8月11日発行)所収『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』前半合評1~3より抜粋)



『假面特攻隊2019年準備号』「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」中盤評関係記事の縮小コピー収録一覧
西日本新聞 2018年2月2日(金) テレ朝系 戦隊シリーズ42作目 史上初 二つの「レンジャー」 11日から
西日本新聞 2018年2月9日(金) 伊藤あさひ結木滉星ら出演 「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」 11日からテレ朝系


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  (近日中にUP予定)

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