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ウルトラマンマックス24話「狙われない街」


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(脚本・小林雄次 監督・実相寺昭雄 特技監督菊地雄一


(文・久保達也)
 『ウルトラセブン』(67年)第8話『狙われた街』の完全な続編として製作された話である。今から40年前に人間の理性を奪い、狂気と暴力性を誘発する赤い結晶をタバコに仕組み、北川町の住人が絡んだ事件を続発させ、社会を混乱に陥れた幻覚宇宙人メトロン星人が今回再登場した。
 ただしここでポイントとなるのが今回のメトロン星人は「幻覚宇宙人」ではなく、「対話宇宙人」という別名が付けられたことである。


 40年前の悪夢を甦らせるかのように、北川町で暴力事件が続発する。だがそれを起こした者には動機がなく、皆一様に事件の間の記憶を「覚えていない」と証言する。
 愛煙家の刑事とカイト・ミズキ両隊員が追跡した謎の黒服の男こそ、事件の張本人であった。彼はかつて地球侵略を企み、赤い結晶を仕組んだタバコで北川町に同様の事件を引き起こしたメトロン星人であったが、ウルトラセブンとの戦いで傷付いた身体を「怪獣倉庫」のメンテナンス係に介抱され、そのまま北川町に住みついていたのだった。メトロン星人は携帯電話の電磁波が人間の脳にある前頭葉に悪影響を及ぼすことに目を付け、特殊な電波を発信して人間たちを狂わせていたのだ。
 だがもはや人間は猿同然に退化したと考えるメトロン星人は既に地球侵略の意志はないとカイトに語り、燃えるような夕焼けの中、迎えに来た眼鏡型の宇宙船に乗ってメトロン星へと帰っていくのであった。


 かつて地球侵略に来た宇宙人が人間のあまりの馬鹿さ加減に失望し、侵略をやめて故郷の星に帰るというネタ自体は寓話としてはなかなか面白い話である。
 正規の続編であることを示すかのように、『狙われた街』のライブフィルムが随所に挿入されているのも往年のファンとしては嬉しい配慮であるし、過去の人気怪獣が登場する際は毎回ぜひやってほしいくらいである。
 同じ実相寺昭雄監督の第22話『胡蝶の夢』に名バイプレーヤー・石橋蓮司が登場したように、今回は六平直政が刑事役でゲスト出演。健康志向のご時世のためにあちこちで喫煙を注意され、肩身の狭い思いをする様子がコミカルに描かれ、発狂タバコによる地球侵略が不可能な時代であることを端的に表現しているあたりも良い感じだ。
 少なくともただ難解なだけの印象で終わった第22話よりは楽しむことができた。


 ただ『セブン』登場宇宙人の中では圧倒的な人気と知名度を誇り、05年だけでもメディコム・トイからアクションフィギュアが、マーミットとリバティ・プラネットからリアルタイプのソフビ人形が発売されるくらいのメトロン星人を再登場させるのであれば、もっと面白くできたんじゃないか、というのが筆者の正直な感想である。


 そもそも人間が猿同様に退化したから地球侵略をやめるという動機がよくわからない。
 『帰ってきたウルトラマン』(71年)第48話『地球頂きます!』でなまけ怪獣ヤメタランスによって怠け者になってしまった人間たちのように、猿同然に退化した人間たちなら自分の思い通りに自在に操ることができるわけであり、侵略するには絶好の環境なのではなかろうか?
 猿同然とされた人間は劇中では電車の中や歩行中でさえも携帯電話に夢中になっている若者たちしか描かれていない。相変わらず「いまどきの若者」批判にしかなり得てはおらず、猿の鳴き声の挿入なんぞはあまりに安直で極めて底が浅い。
 これならむしろ『セブン』第44話『恐怖の超猿人』に登場した宇宙猿人ゴーロン星人を再登場させ、「人間タチハ皆猿ニナッタ。モハヤワレワレガ猿人間ヲ作ル必要ハナイ」なんて云わせた方が良かったのではないか。


 かつてメトロン星人は人間たちの信頼関係を断ち切ろうとしてこの地球に来訪したのである。耐震構造偽造事件や塾で講師が女子児童を殺害したりとか、記憶に新しいところで人間たちの信頼関係が断ち切られた事件が次々に起きている。ライブドアグループの証券取引法違反や、米国産輸入牛肉の特定危険部位混入にしても、一体どれだけ多くの人間が「裏切られた」と感じたことであろうか。
 そうした社会の暗部に対し、メトロン星人が「もはや我々が人間たちの信頼関係を断ち切る必要はなくなった」とでも語るのであれば、一応は立派な社会風刺の作品にでも成り得たであろうに、ナゼそれが携帯に夢中の若者批判で終わってしまうのか?


 『狙われた街』同様に、今回もメトロン星人はちゃぶ台をはさんでカイト隊員とにらみ合う。じゃんけんに負けたらおとなしく自分の星に帰ってやるなどとカイトをおちょくりまくるコミカルなキャラクター自体はむしろ好ましいと思うくらいである。
 だがちゃぶ台の会話を再現するのはともかくとして、バトルの簡略まで再現するのはいかがなものか?


 『狙われた街』ではウルトラセブン登場後、メトロン星人とセブンは夕日をバックに互いに向かって走り出し、宙に舞い上がった後、メトロン星人はスタコラサッサと逃げ出してしまい、セブンにアイスラッガーで背中を斬られ、エメリウム光線で実にあっけない最期を遂げてしまう。
 間にウルトラホーク1号がメトロン星人の宇宙船を攻撃し、撃墜する場面が挿入されているので、メトロン星人とセブンのバトルは正味数十秒に過ぎないのである。


 あれだけかっこいいデザインの宇宙人なのだから、せめて尖った爪の先から破壊光線を出して夕焼けに染まる倉庫街を爆発四散させる描写くらいほしかったものである。
 だから今回は『狙われた街』で感じた欲求不満を解消させるくらいのマックスとメトロン星人の激しいバトルをどうしても期待してしまったのである。


 それがどうだ。今回メトロン星人は巨大化したと思ったら、マックスが登場するやいなや、いきなり自分の星へと帰ってしまったのである。バトルは全く演じられることはなかったのだ。
 筆者は93年2月にNHKで放映された土曜ドラマ『私が愛したウルトラセブン』の以下のシーンを思い出してしまった。


 脚本家の市川森一(いちかわ・しんいち)をモデルにした石川新一(演・香川照之)が書いたシナリオ『他人の星』に対し、三国プロデューサー(演・財津一郎)がセブンと宇宙人のバトルが描かれていないことにクレームをつける。そこで石川が放ったセリフ。
 「そんなの入れる必要があるんですか?」


 まるでそんなふうに開き直られているかのようである。三国プロデューサーは「視聴者が求めているのはセブンと宇宙人のバトルなんだよ!」と激しく石川を非難していたが、一体なんのために『マックス』は「原点回帰」を掲げたのか?  ウルトラシリーズの原点がリアルだのハードだのSF作品だのテーマ至上主義だのと円谷のスタッフが思っているのだとしたら勘違いもはなはだしいのである。


 『帰ってきたウルトラマン』放映前に幼かった筆者がウルトラに興味を示すキッカケとなったのは、講談社の『たのしい幼稚園ウルトラ怪獣絵本』をはじめとしたおびただしく刊行された出版物や、朝日ソノラマ『もーれつ怪獣大会』などのソノシートドラマ、『ウルトラマン』(66年)『ウルトラセブン』の決闘名場面集として当初スタートした『ウルトラファイト』(70年)などであった。
 まずそうしたもので怪獣やウルトラマンという魅力溢れるキャラクターを知った。そして彼らが街中で大暴れする決戦大画報や、何匹もの怪獣を相手にウルトラマンが大活躍するサウンドで夢想し、実作品の魅力を凝縮した短編に夢中になったのである。


 果たして今の子供たちが『狙われない街』に対してそんな魅力を感じることができるのか?
 メトロン星人だけではない。『マックス』第13話『ゼットンの娘』や第14話『恋するキングジョー』を観て、宇宙恐竜ゼットンや宇宙ロボットキングジョーのあまりの影の薄さに「なんや。たいしたことあらへんやないか。どこが最強怪獣なんや!」と失望した子供は多かったに違いない。なんせ彼らはあくまでコスプレ戦闘美少女の引き立て役として登場した、単なる道具に過ぎなかったのだから……


 『ウルトラマンA(ウルトラマンエース)』(72年)第7話『怪獣対超獣対宇宙人』、第8話『太陽の命 エースの命』のように、蛾超獣ドラゴリーや巨大魚怪獣ムルチ二代目とともに大暴れするメトロン星人を見せてはくれない実相寺昭雄監督。
 そして、あくまで「娘」を描きたかっただけの脚本家の上原正三
 彼らの起用は果たして「原点回帰」にふさわしいのであろうか?

2005.12.18.


(付記)


 『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)や『ウルトラマンガイア』(98年)の脚本を数多く執筆し、リアル&ハードな世界観を構築するのに寄与した小中千昭が第27話『奪われたマックススパーク』、第29話『怪獣は何故現れるのか』、第30話『勇気を胸に』と、このところ立て続けに『マックス』に参加しています。
 いずれも特撮場面の占める割合が高く、怪獣の暴れっぷりやDASH(ダッシュ)の攻撃、マックスのバトルなどに関してはかなりみごたえがあるのですが、悲しいかなその合間に挿入される本編ドラマがなんか湿っぽく(あるいは乾きすぎ? つまり“燃え"がない……)、せっかくの燃えさせてくれる展開に水をさすみたいで、個人的にはどうもいただけません。
 特に第29話。なんでまた劇中劇で『ウルトラQ』(66年)をやるかなあ。『ウルトラQ』の原題が『アンバランス』だったなんてこと、一般人は知るわけないし、今の幼児たちの親にあたる世代なんかヘタすりゃ『ウルトラQ』すらも知らないっちゅーの!(笑) だから佐原健二・西条康彦・桜井浩子が揃ったところでマニアしか喜ばないんだってば!
 あと登場する怪獣がゲロンガってなんやねん? あそこまでネロンガ(『ウルトラマン』第3話『科特隊出撃せよ』に登場した透明怪獣)にクリソツやったらネロンガの再登場でええやないか! まるで昔問題になった版権無視のパチモン怪獣みたいでメチャクチャかっこわるいぞ!
 まあとにかくやっとることがいちいち中途半端なんや。こんな調子で次回作『ウルトラマンメビウス』(06年)書くことがあるならホンマに大丈夫なんか?
 オレめっちゃ心配やわ……

2006.1.23.


(了)
(初出・特撮同人誌『ゴジラガゼット』19号(05年12月30日発行)に加筆〜『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンマックス』終盤合評①に収録)


『假面特攻隊2007年号』「ウルトラマンマックス」関係記事の縮小コピー収録一覧
朝日新聞 2006年12月1日(金) 実相寺昭雄監督逝去(11月29日)
朝日新聞 2006年12月1日(金) 宮内国郎(みやうち・くにお)作曲家逝去(11月27日)
静岡新聞 2006年2月25日(土) 佐々木守脚本家逝去(2月24日)


[関連記事] 〜『ウルトラマンマックス』全記事一覧

ウルトラマンマックス 〜中盤評 #13「ゼットンの娘」、#14「恋するキングジョー」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060315/p1

ウルトラマンマックス#24「狙われない街」 〜メトロン星人再登場

  (当該記事)

ウルトラマンマックス最終回 〜終盤評 #33、34「ようこそ地球へ!」バルタン星人前後編

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060503/p1


[関連記事] 〜実相寺昭雄監督作品

ウルトラマンダイナ#38「怪獣戯曲」 〜実相寺昭雄監督作品 合評

「怪獣戯曲」 〜評① 歪んだ真珠――実相寺昭雄の『ウルトラマンダイナ』
「怪獣戯曲」 〜評② 二大異色作に見る『ダイナ』その1

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971209/p1


[関連記事] 〜メトロン星人Jr.(ジュニア)登場!

ウルトラマンエース#7「怪獣対超獣対宇宙人」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060618/p1

ウルトラマンエース#8「太陽の命 エースの命」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060624/p1