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ウルトラマンマックス33~34話「ようこそ! 地球へ」バルタン星人前後編〜終盤・最終回・マックス総括!

『ウルトラマン80 宇宙大戦争』 ~マンガ版最終章は連続活劇! TVでも観たかったウルトラ兄弟vsバルタン軍団総力戦!
『ウルトラマン80』#37「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」 ~UGM&子役らの石堂節のセリフ漫才が炸裂!
『ウルトラマン80』#45「バルタン星人の限りなきチャレンジ魂」 ~俗っぽい侵略の超合理性!
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ウルトラマンマックス』33~34話「ようこそ! 地球へ」バルタン星人前後編〜終盤・最終回・『マックス』総括!

(脚本・千束北男 監督・飯島敏宏 特技監督菊地雄一

ようこそ! バルタン星人

(文・久保達也)
(2006年4月14日脱稿)


 「こんな強いバルタン星人、見たことない!」


 宇宙怪獣エレキング・どくろ怪獣レッドキング・友好珍獣ピグモン・磁力怪獣アントラー・宇宙恐竜ゼットン・宇宙ロボットキングジョー・古代怪獣ゴモラ・幻覚宇宙人メトロン星人・変身怪人ピット星人…… 『ウルトラマンマックス』では、初代『ウルトラマン』(66年)と『ウルトラセブン』(67年)に登場して子供たちに絶大な支持を得た人気怪獣の数々が、次々に再登場を遂げた。


 そして、ついに真打ちである宇宙忍者バルタン星人の出番がやってきた!


・初代『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』に登場したバルタン星人(初代)
・初代『ウルトラマン』第16話『科特隊宇宙へ』に登場したバルタン星人2代目
・初代『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』に登場したバルタン星人3代目
・5分枠の平日帯番組『ウルトラファイト』(70年)に登場した「星人」呼称は抜きのバルタン
・同じく5分枠の平日帯番組『レッドマン』(72年)に登場したバルタン星人
・『帰ってきたウルトラマン』(71年)第41話『バルタン星人Jrの復讐』に登場したバルタン星人Jr(ジュニア)
・『ザ★ウルトラマン』(79年)第8話『ヒカリ隊員の秘密が盗まれた!?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090621/p1)に登場したアニメ版・バルタン星人
・『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)第37話『怖(おそ)れていたバルタン星人の動物園作戦』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110108/p1)に登場したバルタン星人5代目
・『ウルトラマン80』第45話『バルタン星人の限りなきチャレンジ魂』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110327/p1)に登場したバルタン星人6代目
・『アンドロメロス』(83年)に登場したメカバルタン
・『ウルトラマンパワード』(93年・日米合作)第1話『銀色の追跡者』に登場したパワードバルタン星人
・『ウルトラマンパワード』第13話(最終回)『さらば ウルトラマン』に登場したサイコバルタン星人
・『劇場版ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT(ファーストコンタクト)』(01年)に登場したバルタン星人ベーシカルバージョン、戦闘形態ネオバルタン、チャイルドバルタン


 その圧倒的な人気から昭和のウルトラシリーズでは何度も再登場を果たしてきたバルタン星人が、地上波新作に限定すれば実に25年ぶりにブラウン管(笑)に帰ってきたのだ!


 その25年の間にバルタン星の「科学」は飛躍的な進歩を遂げたようである。
 今回の『ウルトラマンマックス』第33話『ようこそ地球へ! 前編 バルタン星の科学』~第34話『ようこそ地球へ! 後編 さらば! バルタン星人』に登場したバルタン星の過激派であるダークバルタンは、その「科学」を悪用して地球を大混乱に陥れてウルトラマンマックスを絶体絶命の危機へと追いやったのである!


 行き過ぎた経済活動と繰り返される戦乱によって地球の環境を破壊しただけでは足りず、月をゴミ捨て場に、火星には移住することを考えている人類。彼らに対して、バルタン星の過激派たちはそれらを侵略行為であると解釈し、「全宇宙共通の敵」であるとして地球に殴りこみをかけてきたのだ!


 「地球」が「全宇宙共通の敵」として名指しされてバルタン星人の襲撃を受けるという設定を聞くと、長年の特撮マニアであれば往年の名書籍『怪獣大図鑑』(朝日ソノラマ・66年11月5日発行・97年に復刻版・ISBN:4257035226)に添付のソノシート(安価なミニ・アナログレコード)に収録されていた音声ドラマ『なぐりこみバルタン連合軍』を想起したことだろう(筆者もリアルタイム世代ではないのだが・笑)。
 同作はバルタン星人が、宇宙怪獣ベムラー・火星怪獣ナメゴン・隕石怪獣ガラモンといった宇宙怪獣たちを引き連れて地球を襲撃! これに対抗するために友好珍獣ピグモンが、冷凍怪獣ペギラ・透明怪獣ネロンガ・怪奇植物グリーンモンス・磁力怪獣アントラー・どくろ怪獣レッドキング・ウラン怪獣ガボラ・脳波怪獣ギャンゴといった地球怪獣たちを集結させて、東京・丸の内でバルタン連合軍VS地球怪獣連合軍の「怪獣大戦争」を繰り広げるという作品だったのだ!
 飯島監督は単なる悪役としての後年のバルタン星人には否定的なようだが、初代『マン』放映時点ですでに第1期ウルトラシリーズのメインライターであった金城哲夫(きんじょう・てつお)先生が直々に脚本を務めたこの音声ドラマで、すでにバルタン星人は悪の首領を務めていたのであった(爆)。



 ダークバルタンは「ちょっとしたあいさつ代わり」と称して、お手軽に地上に無重力状態を引き起こして、大量の人間や自動車を宙に浮かばせてしまう!
 飯島監督作品ではないが、金城哲夫脚本の初代『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』でも、悪質宇宙人メフィラス星人が空中にタンカーを航行させたり飛行機を消失させたり、防衛組織・科学特捜隊の専用車を宇宙空間に瞬間移動させてしまったシーンをも彷彿(ほうふつ)とさせる!
 これぞ「日常」ではアリエない光景である「非日常」を「特殊映像」で「驚き」とともに描いてみせる「ザ・特撮!」といったものである! 「特撮」ジャンルというもののアイデンティディー・キモ・本質とは、こういった「非日常」的な映像への驚きを描くところにこそあるのだ!


 その情景は古い特撮マニアであれば、草創期のマニア向け書籍などで散々に見てきた東宝特撮映画『宇宙大怪獣ドゴラ』(64年・東宝)の宣伝用スチールに描かれていた、ドゴラが自動車や電車を地上から吸い上げてしまう地獄絵図をも想起するだろう!
 とはいえ、CG全盛の当世でもなかなかお目にかかったことがないようなスペクタクルな映像だが、その大胆でインパクトにあふれる特撮映像には舌を巻くばかりであった!


 ダークバルタンの「あいさつ代わり」はそれだけにとどまらない。マックスをも重力破壊光線で金縛りにして、その隙にバルタンは工業地帯へと飛んでいき、その両腕の巨大なハサミから光線を連射して破壊活動を繰り広げるのだ!


 マックスはなんとか金縛り状態を脱出、バルタンのもとへと急行する。


ダークバルタン「ウルトラの星の科学では、しょせん我々の科学には敵(かな)うまい!」


 オオッ! 飯島監督が参加していた1960年代後半の第1期ウルトラシリーズの時代には、ウルトラ一族の故郷には「光の国」という呼称しかなかったのに、飯島御大(おんたい)自らが第2期ウルトラシリーズ以降に付与された新名称である「ウルトラの星」という言葉を用いているぞ!(笑)


 そして、ダークバルタンはその身体を何100メートル、いや1000メートルをも超えようかと思われるほどに超巨大化するサプライズが!


 毎度、科学的には「質量保存の法則」を無視しているインチキではある。しかし、B級SF・ヒーローもの・勧善懲悪活劇とは、「攻守逆転」を連発させていく「シーソーバトル劇」がキモなのだと考えれば、このインチキな巨大化も作劇的には実に正しいのだ!(笑)


「おまえが同じマネをすれば、エネルギーは1分と持たないだろう!」


 ダークバルタンが「超巨大化は、ウルトラマンマックスには不可能な技なのだ!」とダメ押しまでしてくる!


 そして、身長1000メートル近い超巨大バルタンは、この身長48メートルの我らが巨大ヒーロー・ウルトラマンマックスを踏み潰さんとする! この圧倒的なビジュアルインパクトはどうだ!


 ダークバルタンが嘲笑(あざわら)ったのはマックスに対してだけではない!
 バブル期の大ベストセラー書籍であった『ウルトラマン研究序説』(91年・SUPER STRINGS サーフライダー21編 中経出版ISBN:4806105600・98年に扶桑社文庫・ISBN:4594025501)だの、同じくベストセラー書籍『空想科学読本』シリーズ(96年〜・柳田理科雄 宝島社・ISBN:479661074X)などなどで、「身長50メートルのゴジラが体重2万トンでは、その自らの体重に押し潰されて死ぬハズだ!」なぞと、科学的な見地から「クソ真面目」に娯楽フィクションを論じてみせたり、クソ真面目ではなく愛があっても「愛がないように見える嘲笑・冷笑的なカルいノリ」だけで特撮作品を語ってしまっているような輩たちの「ヤボさ加減」や「頭の堅さ」や「夢のなさ」、そしてそれらを実作品で実践してみせたかのような90年代中盤以降のリアル指向の特撮ジャンル作品やそのスタッフたちをもダークバルタンは嘲笑っていたのだ!?


――これらの書籍はベストセラーとなる一方で、各作品のファンたちからは当然「キャラクターに対しての愛情が感じられない」との批判にさらされた。しかし、その科学的考証自体にも誤りが多いという批判もある。なお、『空想科学読本』は著者と宝島社のトラブルから文庫化の話がポシャってしまい、文庫版はメディアワークスから出版されている(03年・ISBN:4840108161・06年に新装版・ISBN:4840115656)。ちなみに、柳田理科雄も関わっていた若者向け雑誌『宝島』の読者投稿欄をまとめた書籍『怪獣VOW(バウ)』(94年・宝島社・ISBN:479660880X)シリーズなども、同様の理由で宝島社から文庫化される可能性は極めて低いようである――



 ダークバルタンのあまりにも巨大な足がついにマックスを踏み潰して、マックスは地面に埋もれてしまう!


 しかしマックスは、超巨大ダークバルタンの巨大な片足を、足の裏から持ち上げてしまうのだ!!


 これぞ、スーパーヒーロー! これぞ、超人のゆえんである超越性や万能性! 変身ヒーローものの本質・エッセンスもここにあるのだ!!(……単にご都合主義ともいうのだが・笑)


 もちろん、両者の「質量」の大小関係・比率というものをリアルに考えてみると、これはインチキである。マックスの身長が約50メートル、ダークバルタンの身長が約1000メートルだとすると、その差は1対20! 小学校の高学年で習う「体積」の計算方法で考えてみると、タテ×ヨコ×高さの3次元で、20×20×20の3乗だから実に8000倍もの体重差があるのかもしれないのだから!(笑)


 そして! そして! ついにウルトラマンマックスも、ダークバルタンと同じく超巨大化を遂げる!! まさにこの圧倒感! カタルシス!!


 超巨大ダークバルタンVS超巨大ウルトラマンマックス! という、あまりにもスペシャル感あふれるスーパーバトルを魅せつけられた日には、もう「リアル指向」などはクソ食らえである!


 初代『マン』第2話では空中戦、初代『マン』第16話では光線やバリヤーの応酬と、意外にもウルトラマンとバルタン星人はそれほど派手な格闘戦は演じてこなかった。それを思えば、今回の前後編の2話にわたってたっぷりと描かれた、ボディブローだの廻し蹴りだのを乱発したウルトラマンマックスVSダークバルタンの肉弾戦は、完全に「原点」をも超えているのだ!


 『マックス』主題歌のインストゥルメンタル(歌抜きの演奏バージョン)をバックにして戦うマックス!


 マックスは頭部のトサカ部分に装着されている必殺の宇宙ブーメラン・マクシウムソードを放った!
 しかし、ダークバルタンはその腕を切断されても、すぐに再生を遂げてしまう!


 マックスは宇宙から召喚して右腕に装着した武装・マックスギャラクシーから必殺光線・ギャラクシーカノンも放った!
 すると、ダークバルタンは宇宙忍者の異名の通りにお得意の分身術でこれをカワしてみせた!


 両者の必殺技や得意技の応酬の数々!
 真にリアルに絶対平和主義的に考えるのならば、フィクションとはいえ戦闘行為すら楽しんではいけない行為なのだし、否定されるべきものでもあるのだが……


 知ったことか!(笑) 不謹慎でも「アクション作品」の「本質」というものは、戦闘過程の一挙手一投足の技の応酬といったものにこそあるのだ!


 しかし、「バルタンの星の科学」は「ウルトラの星の科学」をも上回っているという厳然たる事実を、マックスはダークバルタンに見せつけられることになる!


 ダークバルタンの両腕の巨大なハサミから発する紅蓮の熱線が、容赦なくマックスを襲ってきたのだ!


 そして、ついにマックスはそのエネルギーを失って消滅してしまうのだ!


 マックスと合体している地球人の青年である防衛組織・DASH(ダッシュ)のカイト隊員が、その体力を消耗してフラフラになって廃墟をさまよい歩いている。


 ダークバルタンが巨大なハサミでその廃墟をも破壊し尽くすというラストシーン!! 果たしてどうなるマックス!? というところで、前編は幕となる……


 本来ならば、宇宙恐竜ゼットンという初代ウルトラマンをその最終回で倒した「最強怪獣」が登場した『マックス』第13話『ゼットンの娘』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060315/p1)こそ、こういう次回へのヒキに強いラストにして、ゼットンの通常回の怪獣とは別格である強敵ぶりを印象付けてほしかったのだが……(汗)




 後編である第34話では、ヒーローもののお約束で奇跡的(笑)に復活を遂げたウルトラマンマックス


 マックスはダークバルタンの重力破壊光線を、光学バリアー技・スパークシールドで防御した!
 そして、ギャラクシーカノンでスパークシールドごと重力破壊光線をダークバルタンに浴びせ返した!


 ダークバルタンは猛烈な竜巻に包まれて、ついに身体がバラバラになってしまった!
 これでようやくマックスが勝利したのか!?


 だが、弾き飛ばされたダークバルタンのナマ首は、


「我々の科学では、クローンなんぞ『お茶の子さいさい』なのだ!」


 などと叫んでみせるのだ! 「お茶の子さいさい」(笑)。


 『ウルトラマン80』での石堂淑朗(いしどう・としろう)脚本回である第45話『バルタン星人の限りなきチャレンジ魂』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110327/p1)における、マニア間では物議を醸(かも)したバルタン星人・6代目の迷セリフ、


「お釈迦さまでもご存じあるめぇ」(笑)


 のようなSF性のカケラもないセリフを、本家の千束北男(せんぞく・きたお)こと飯島敏宏監督自身が結局は吐かせていたのだった!(爆)


 バラバラになった身体は結集して、たちまちのうちに再生を遂げてしまう!


 空中高く舞い上がったダークバルタンは、今度はその身体を数百数千にも分裂させた!!


 空一面を暗黒に覆い尽くすダークバルタン。「ウルトラの星の科学」も「バルタン星の科学」には遠く及ばないのであろうか!?


 いや、決してそうではなかった! なんとマックスもまた、その身体を数百数千にも分裂させたのだ!!(超ご都合主義・笑)


 数百数千ものウルトラマンマックスVS数百数千ものバルタン星人との空中大戦争の幕が切って落とされたのである!!


 こんなスペクタクルな光景をお茶の間(死語)のブラウン管(笑)でお目にかかれる日が実際に来ようとは…… デジタル合成、バンザイ!(笑)


 1970年代の小学館の学習雑誌・『コロコロコミック』・『てれびくん』などで連載されていたウルトラシリーズのオリジナル展開の漫画では、ウルトラ兄弟どころかウルトラ一族の一般兵士たちが数百数千名も登場するビジュアルをすでに実現させており(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210117/p1)、当時の子供たちを驚愕させて大コーフンもさせてきた!


 「テレビでもこういうのをやってくれたらなぁ……」などと当時の子供たちは夢想をしていたものである。


 しかし、このアキラめていた大スペクタクル映像が、ついに21世紀の御代(みよ)に至って実現を果たしたのである!


 ウルトラマンマックスの必殺光線を、バルタン星人がその両胸のパネルを左右に開扉してスペルゲン反射鏡でハネ返しているヤツまでいたりして……(感涙にむせぶ)


 まぁ、おそらくここまで細かいアクション演出はシナリオ上では描かれてはいなかったことだろう。
 このへんの特撮ビジュアルは菊地雄一特技監督の裁量の範疇であろうと推測されるのだし、世代人である氏の趣味がまた濃厚に入っていると思われる、手間と暇をかけて撮影したのだろうマックスVSバルタンの膨大な数の「組み手」のカットをデジタル技術で縮小表示させて、一挙に同一画面に反映させた特撮演出の勝利だろう!(笑)


――ちなみにスペルゲン反射鏡とは、バルタン星人・2代目が初代マンの必殺技・スペシウム光線をハネ返すために装備した鏡である。2006年2月18日にエクスプラスから発売されたリアルソフビ『大怪獣シリーズ ウルトラマン 宇宙忍者バルタン星人二代目』(ASIN:B018PEEW7E)は、なんと劇中同様にこの開閉ギミックが再現されていた・笑――


 これこそ劇場の大スクリーンでもぜひとも観せてもらいたかったものである。『劇場版 ウルトラマンコスモス』でもバルタン星人を登場させた飯島敏宏監督は、同作ではなぜこういうカッコいい特撮バトルを実現してくれなかったのだろうか? そのへんの特撮ビジュアル部分は、その過去の功績は偉大でも昭和のアナログ・センスにとどまっていた佐川和夫特撮監督の裁量の範疇だったのだろうけど。



 しかし、この「ウルトラ大戦争」を最後にとめさせたのは、地球とバルタン星の子供たちであった!
 「怪獣が出た!」などとホラを吹いて静かな漁村を騒がせていたウソつき少年(笑)が、ダークバルタンの地球侵略を告げるために来訪したバルタン星の穏健派・タイニーバルタンと知り合いになっていたからだ。
 タイニーバルタンは地球人(日本人)の14~15歳と思われるなんとも可愛らしい少女に姿を変えており、地球の危機を救うべくウソつき少年と行動をともにする。彼女はそれまでも、魔法使いのごとくホウキに乗って空を飛び、遊園地のジェットコースターに夜間飛行をさせて、たくさんの紙飛行機を永遠に宙に浮かせたりと、ダークバルタンが悪用していた「重力」を自在に操る能力を使って、さまざまな夢を垣間見させてくれていた娘なのだ。


 ダークバルタンのカッコよさを強調するべく、ここまで言及を控えてきたことにもふれていこう。
 今回の前後編は、実は地球人とバルタン星人の子供たちの友情を主軸としたファンタジー色の強いジュブナイル作品としての側面が強い。バルタン星人も一部の過激派を除けば、その大勢は善良な存在ということになっている。
 単なる時代劇のチンピラ悪党のような存在ではなく、初代バルタン星人が「生命? ワカラナイ。生命トハ何カ?」などと片言言葉(笑)でしゃべっていた人類とのコミュニケーションは不可能そうな「宇宙の神秘」としてのSF的なキャラクターを至上とする尺度で見てみても、天下のバルタン星人が登場するエピソードとして、これらのヒューマンな描写がふさわしかったのか否かの問題はたしかに残るのだ。


 しかし近年、大評判をとった洋画を振り返ってみても『ハリー・ポッター』(01年〜)シリーズしかり、『ナルニア国物語』(05年〜)しかり、長年にわたって全世界の子供たちを虜にしてきた児童文学作品を原作とする子供が主役のファンタジー風味の作品がだんぜん多いのも事実なのである。


 強引にコジツケるのであれば、そんな良質のジュブナイルの怪獣映画のシリーズがかつて我が国にも存在していた。映画『大怪獣ガメラ』(65年・大映)~映画『宇宙怪獣ガメラ』(80年・大映)までに至る昭和のガメラシリーズである。
――ただし、シリーズ第2作『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(66年・大映)のみ子役はまったく登場せず、画面も作風も妙に暗い異色の仕上がりになっている。この作品にヒロインとして出演して、ラストシーンで「ひとりじゃないわ……」などと大人のドラマを演じていた江波杏子(えなみ・きょうこ)は2006年現在、東京電力のCMで『ゴジラVSビオランテ』(89年・東宝)に出演していた鈴木京香と共演して、『ガメラ対バルゴン』とはまったく正反対のコミカルな演技を披露している・笑――


 それらの作品で描かれていた、いかにも牧歌的な子供像には賛否両論はあるだろう。当時の子供間でも、その子供像がイヤで東宝の『ゴジラ』シリーズの比較的にシャープでスマートで近未来的な映像や空気感を押す者が多かったのも事実ではある。しかし、それはまたマニア予備軍的な気質を持った子供たちの感慨といった面が大きかったのかもしれない。
 後出しジャンケンではあるが、マニア第1世代たちがそうした作品群を「子供だまし」であると位置づけて徹底的に軽視したことが、日本に年齢相応の子供たちやファミリー層に向けたジュブナイル作品が育たないどころか絶滅する要因までをも作り上げて、世間の目を海外ファンタジー映画にばかり向けてしまう結果となったようにも思うからだ。
 そもそも、特撮マニアが1980年代前半にそのような運動に邁進している最中に世間が注目していたのは、彼らの主張とは真逆である年端も行かない少年が主人公であり、宇宙人の子供との友情をお涙ちょうだい的に描いていたスティーヴン・スピルバーグ監督による大ヒットSF洋画『E.T.(イー・ティー)』(82年)であった(笑)。
 彼らが唱えていた、ハードでシリアスでリアル・シミュレーションで恐怖の象徴としての巨大怪獣を復活させれば「日本特撮の復興」は達成される! という理念とは、その時点でも真逆の現象が起きていたのであった(爆)。


 よって、2006年4月29日公開の『小さき勇者たち 〜GAMERA〜』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060714/p1)がそうしたジュブナイル作品として製作されるのも、リアル&ハード路線として製作された平成ガメラシリーズ(95〜99年)がマニア間での高評価とはウラハラにそれほどには当たっていなかったワケなのだから――実は平成ゴジラシリーズの興行収入の半分程度しかなかったのだ(汗)――、ある意味では当然の帰結なのである。古今東西、我々特撮マニアが望んできたリアル&ハード路線の作品が、児童文化の頂点に昇りつめたことなどはないのである(爆)。


――とはいえ、それでは『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)や平成ライダーシリーズの大人気はどうなのだ!? という声も出てきそうではある。……そ、そうだなぁ(汗)。そのドラマ自体はリアル&ハード志向でも、前者はそのプラモデルがいまだに根強い人気を誇っているほどに登場するモビルスーツ(人型巨大ロボット)が魅力的なのであり、リアル志向といっても『マジンガーZ』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)的なヒーローロボットアニメとしてのアクションのカタルシスもまだ残ってはいたし、後者はヒーローのタイプチェンジや複数のライダーの共闘にバトルロワイアルやカードゲーム要素などで、両者ともに全編にわたって「おもちゃ箱」的な要素が散りばめられていたからこそ、ヒット作となりえたのではなかろうか!?・笑――



 ダークバルタンVSマックスの激闘の最中に、タイニーバルタンはバルタン星に瞬時に戻って(笑)、古くから伝わる銅鐸(どうたく)を持参してきた。タイニーバルタンはそれを地球の子供たちにひとつずつ手渡して、空に向けて皆で一斉に銅鐸を振って「平和の鐘」ともいえる音色(ねいろ)を響かせていく……


 すると、たちまちダークバルタンは戦意を喪失してしまった!


「そんなもん、最初から持ってこいや!」


 などというツッコミは可能ではある(汗)。しかし、最初から持ってきたのならば、ダークバルタンVSマックスとの「ウルトラ大戦争」は観られないっちゅーの!(笑)



 そして、初代『ウルトラマン』の科学特捜隊の発明担当で、バルタン星人とは因縁浅からぬイデ隊員を演じていた二瓶正也(にへい・まさなり)が演じるダテ博士がここで唐突に登場!


 初代『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』でも、イデ隊員はバルタン星人に対して宇宙語(笑)による対話を試みていた。そのときに彼の相手をしたのはバルタン星人に身体をのっとられていた科学特捜隊のアラシ隊員である。アラシ隊員を演じた毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)も今回、紙飛行機を飛ばす警備員の役で出演。『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)のレオこと主人公・おおとりゲンを演じていた真夏竜も、ウソつき少年と仲良しである警官役で出演している。過去のシリーズに出演していた俳優たちによるゲスト出演は特撮マニアたちを大いに喜ばせたことだろう。
 ただし、一般のパパ・ママ層の目から見れば、第25話『遥かなる友人』の河相我聞(かわい・がもん)、第37話『星座泥棒』の萩原流行(はぎわら・ながれ)といった、著名な俳優たちによるゲスト出演の方がはるかに驚きであったには違いないだろうが(汗)。
 ちなみに、第27話『奪われたマックススパーク』にピット星人の片割れとして出演した益子梨恵(ましこ・りえ)は、写真集やイメージ・ビデオやキャンペーンガールなどで活躍したあとに女優に転じて、円谷映像製作の深夜美少女特撮『千年王国Ⅲ銃士(せんねんおうこく・さんじゅうし)ヴァニーナイツ』(99年)にもレギュラーキャラ・浅木あきら/ラハミエル・ヴァニー役でレギュラー出演していた御仁である。


 ダテ博士はなんでも本来の姿に戻してしまうというメタモルフォーザーをダークバルタンに浴びせかける――メタモルフォーザー。大人気漫画『ドラえもん』の秘密道具みたいな安直なネーミングだなぁ・汗――。
 すると、ダークバルタンは人間大サイズに縮小! ギリシャ神話の登場人物のような青年の姿と化したのだ!――そ、そんな展開でよいのか!?・笑――


 DASH隊員たちや嘘つき少年に見送られる中、タイニーバルタンとダークバルタンは、崩壊したバルタン星を再建して地球と同じような本来の美しい星にすることを願いながら、巻き貝型の宇宙船に搭乗して、惜しまれつつ母星へと帰還するのであった……
 そう、マックスの正義とは全宇宙の平和を守ることであり、ダークバルタンの正義とは相反するものなのだ。トミオカ長官が「戦いを仕掛ける者にいかなる正義もない!」と語っていたように……



 実は『マックス』では、ダークバルタンと同様の「正義」を主張して、それを地球侵略や人類皆殺しの理由にしていた異星人や怪生物がこれまでにも度々、いやしょっちゅう登場してはいた(笑)。


・第7話『星の破壊者』に登場した宇宙工作員ケサム
・第17話『氷の美女』に登場したニーナ
・第38話『地上崩壊の序曲』~第39話『つかみ取れ! 未来』(最終回)に登場した機械獣サテライト・バーサーク


 などなど。要するに彼らの主張する正義とは、「人間は戦争と自然破壊を繰り返し、地球の環境を汚してばかりいる愚かな存在だから滅ぼさなければならない」などといった、平成ウルトラシリーズ3部作(96〜98年)でも再三繰り返されてきた、もっとさかのぼると70年代の「人類ダメSF(小説)」でも散々に展開されてきたアンチテーゼ・ネタであったのだ。
 いやまぁ、こういうネタもタマにならばよいのだが、『マックス』はあまりにも多すぎて、しかもネタがカブっていて「シリーズ構成」はいったいどうなっていたのだ!? と疑問に感じてしまうほどなのだ――「シリーズ構成」という役職自体がなかったのだろうが・汗――


 むろん、「アンチテーゼ編」や「人類警鐘SF」のようなネタを絶対にやってはイケナイ! などという言論統制のような主張をするつもりはない。
 しかし、それらのテーマを劇中で盛り込むにしても、「人類の存続」よりも「地球環境の存続」の方を主張する宇宙人と、たまたま地球人の代表になってしまったDASH隊員――第7話はミズキ、第17話はコバ、第38~39話はカイト――との既視感(笑)あふれる堂々巡りの長々とした議論を聞かされるよりも、今回のバルタン星人再登場編のようにそれはとりあえず隅に置いておいて(笑)、あくまでもダークバルタンVSマックスとの激しいバトルを主軸に据えることで、ともすれば陰欝になりそうなテーマを持つエピソードでもカラッとさわやかに戦闘シーンの面白さで魅せることは可能であったハズなのだ! ということなのである。


 極論すれば「人類批判」を飽きずに繰り返すくらいならば、宇宙人が地球を侵略する理由なぞはもっと即物的なものにした方がよい。
 実際、かの『ウルトラセブン』でも、その第1クールに登場した宇宙人たちの中でマトモで切実な侵略理由が存在したのは、第11話『魔の山へ飛べ』に登場した宇宙野人ワイルド星人と、第12話『遊星より愛をこめて』に登場した吸血宇宙人スペル星人くらいのものであり、ともに絶滅寸前である自分たちの種(しゅ)の存続のために、前者は地球人の若い生命、後者は新鮮な血液を求めて地球に来訪したのである。


 『セブン』の真の面白さとは、


・第1話『姿なき挑戦者』に登場した宇宙狩人(ハンター)クール星人が、「人間標本」をつくるために地球人を多数誘拐するとか
・第2話『緑の恐怖』で生物X(エックス)ワイアール星人が、人々を自分同様の怪物に仕立てあげてしまうとか
・第4話『マックス号応答せよ』で反重力宇宙人ゴドラ星人が、原子力大型船を宇宙空間に運んでしまうとか
・第8話『狙われた街』で幻覚宇宙人メトロン星人が、発狂タバコを駅前の自販機で売るとか
・第9話『アンドロイド0(ゼロ)指令』で頭脳宇宙人チブル星人が、子供たちに玩具に偽装したホンモノの兵器をバラ撒くとか


 「侵略理由」そのものなどではなく、奇抜な「侵略行為」や「侵略作戦」の摩訶不思議さを、「特撮映像」で具体的に魅せていたことにあったのではなかったか?


 第3話『湖のひみつ』で、変身怪人ピット星人が宇宙怪獣エレキングを引き連れて地球に来訪したのを皮切りに、


・第11話『魔の山へ飛べ』に登場した、ワイルド星人と宇宙竜ナース
・第14話~第15話『ウルトラ警備隊西へ』前後編に登場した、策略星人ペダン星人と宇宙ロボット・キングジョー
・第20話『地震源X(エックス)を倒せ』登場に登場した、暗黒星人シャプレー星人と核怪獣ギラドラス
・第23話『明日を捜せ』に登場した、宇宙ゲリラ・シャドー星人と猛毒怪獣ガブラ
・第25話『零下140度の対決』に登場した、ミニ宇宙人ポール星人と凍結怪獣ガンダー


 などなど、のちに第2期ウルトラシリーズにも継承された、侵略宇宙人が手下の怪獣を引き連れて地球を襲撃する王道パターンも、実は『セブン』が元祖だったのである。


 「原点回帰」を掲げた『マックス』は、そのような良い意味で即物的なストーリーを立派に継承してくれるのでは? と筆者は大いに期待していた。


 ところが、『マックス』は2クール目以降、抱腹絶倒のギャグ編と完全にドラマ主導の妙に陰欝な話が交互に繰り返されるようになる。当初、目指していた「原点回帰」を至上のモノサシとはしなくても、作品世界の統一感が消失して方向性を完全に見失ってしまったようにも見えたのだ。


 思えば、『セブン』もまた3クール目以降は、予算の削減やTBS側の橋本洋二プロデューサーの意向もあったのかもしれないが、特撮場面よりも人間ドラマを重視した作風へと変化して、実は視聴率が下降線をたどるなどして迷走を続けていたものだ――『セブン』後半よりも『帰マン』後半の方が、実は平均視聴率は5%近く高いくらいなのだ!――。
 そんなときに呼び戻されたのが、初代『ウルトラマン』では最も初期に製作された第2話『侵略者を撃て』・第3話『科特隊出撃せよ』・第5話『ミロガンダの秘密』などを監督し、ウルトラマンの必殺技・スペシウム光線や宇宙忍者バルタン星人の生みの親でもある飯島敏宏であったのだ。
 そこで氏が監督したのが、第38話『勇気ある戦い』と第39~40話『セブン暗殺計画』前後編であった。徹底的に見せ場を盛り込んで、独特のユーモアをも盛り込んでいたそれらの作品群は、低迷を続けていた『セブン』に対してゲキを飛ばしてエンタメ性を見事に復活させるものとなっていた。


 ちなみに第38話は、鉄不足に悩んでいる強盗宇宙人バンダ星人がロボット怪獣クレージーゴンを地球に派遣して自動車を腹部にたっぷりと詰め込むが、これらを回収した宇宙船はウルトラ警備隊のスベリウム爆弾で粉砕される。だが、クレージーゴンはしぶとく生き残って機能を狂わせて街を手当り次第に破壊する。セブンが前半Aパート・後半Bパートと劇中2回も登場するし、これまでの『セブン』ではなかなか描かれなかった派手な都市破壊描写もたっぷりと楽しめる一編である。
 第39話『セブン暗殺計画』前編は、いきなり白黒フィルムでウルトラセブンと豪力怪獣アロンの対決から始まるのも度肝を抜くが、時折りかかるストップモーションとともに響き渡る分身宇宙人ガッツ星人の不気味な声が、セブンVSアロンを通じてセブンの能力を分析するシーンに異様なムードを醸し出している。セブンが使役するカプセル怪獣ウインダムが破壊されてしまうのに唖然とするのも束の間、激闘の末にセブンは十字架に磔となり、地球防衛軍の戦車部隊はガッツ星人の宇宙船に全滅させられて…… と息つく暇もないほどの見せ場の連続! 個人的には『セブン』の最高傑作であると考える。
――なお、1978年5月21日にキングレコードから発売されたLPレコード『サウンドウルトラマン!』には、この『セブン暗殺計画』の音源が10分30秒に編集されて収録されていた。当時は家庭用ビデオすら普及していなかった時代なので、これは本当に嬉しくて飽きることなく繰り返して聴いたものである――



 「困ったときの飯島頼み」というわけでもなかろうが、同様に迷走を続けていたと私見する『マックス』が当初、掲げていた「ウルトラマンマックス憲章」。


・STORY(ストーリー)  それはワクワクし心が踊るような、明るく楽しい物語。
・SIMPLE(シンプル)  それは単純明快、かつ深みのある爽快なドラマ作り。
・SPEED(スピード)  それは一瞬たりとも、目が離せないスピーディーな展開。
・STRONG(ストロング)  それを見れば、勇気づけられるような力強く期待を裏切らないヒーロー像。 
・S・F(サイエンス・フィクション)  それは人間の想像力をフルに働かせる空想科学としての原点に返ること。
・SENSE of WONDER(センス・オブ・ワンダー)  それは世界中全ての人々に共通する摩訶不思議な現象への好奇心の喚起。


 上記の6箇条を裏切らないために…… というワケでもなく、『マックス』企画当初から飯島監督にバルタン星人ネタでのご登板を願っていたのだろうが、氏はその期待に見事に応えてくれていた。
 しかし、氏以外の脚本家・監督たちによるシリーズ中盤以降の作品群は、『マックス』が当初に目指していた路線からはかなり逸脱していたのではなかろうか?


 70年代末期に起こった第3次怪獣ブームのころ、当時の草創期の年長マニアたちが「ウルトラ」シリーズの本来あるべき姿だと主張していたのは、飯島敏宏監督作品のような娯楽活劇路線ではなく、実相寺昭雄監督作品を代表とするアンチテーゼ編であり、つまりは本来であれば主流とは呼べない作品群のことであった(汗)。
 バルタン星人登場編の第2話と第16話、透明怪獣ネロンガが登場する第3話、どくろ怪獣レッドキングほか複数の怪獣が登場する第8話『怪獣無法地帯』、および第25話『怪彗星ツイフォン』を再編集した劇場用作品であり、その第8話が円谷一つぶらや・はじめ)監督作品であった以外はすべてが飯島敏宏監督作品になっていた映画『ウルトラマン 怪獣大決戦』(79年7月公開・松竹富士)よりも、アンチテーゼ編をもっぱらとしていた佐々木守脚本&実相寺昭雄監督が担当していた初代『ウルトラマン』5話分を再編集した映画『実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン』(79年3月公開・松竹富士)の方が先に公開されてしまったという厳然たる事実が、あの時代の特撮マニアたちの風潮を象徴しているのだ。そして、その考え方は現在でも一部の特撮マニアたちや円谷プロのスタッフたちの中で脈々と生き続けているようだ。


 脚本家の小中千昭(こなか・ちあき)が担当した『ウルトラマンマックス』最終回の前後編である第38話~第39話の前後編がそういったことを露呈させていたと私見する。
 「エコ・テーマ」「人類批判」「光」「滅びの美学」…… 平成ウルトラですっかりおなじみとなったキーワードが散りばめられており、『ウルトラセブン』に対するオマージュも捧げられていた、いつもの小中節が炸裂しているこの最終回前後編は、筆者としては(初代『ウルトラマン』への)「原点回帰」を掲げていたシリーズが最後に着地すべきものだったとは到底思えなかったものであるが、こうしたものこそが「高尚」だと考える人々にはやはり楽しめたのだろう。個人の好みはさまざまなので、そこにまでケチをつける気は毛頭ないし相応に尊重はしたいと思う。


 「ウルトラ」の「原点」なり「理想」といったものをどう捉えるのかによって、その違いが明白となった最終第3クールの2本の前後編。果たしてどのような作品と方向性が、ウルトラシリーズの目指すべきものであるのかについては、マニアの中でも意見が別れるところだろう。
 しかし、06年4月に発行された『TFC.3(新・円谷プロファンクラブ3号)』で紹介されていた『マックス』に対する感想・意見を見るかぎりでは、筆者に近い考えを持っている人々も多いようである……



・子供にも理解しやすい内容で、特撮の王道ともいえるストーリー展開なところがよいと思います。
・毎週楽しくみています。本に載ってる怪獣がたくさん出てくるのでみていて楽しいです(中略)。もうひとつぐらい必殺技を増やしてほしい。ウルトラマンゼノンももう少し出してほしい。
・古いファンも楽しませる仕掛けがあちこちで見られて楽しんでいます。ただ、マニアの内輪受けにならないで、子供の心に残したいイフの回(引用者註:第15話『第三番惑星の奇跡』)のような話をもっと、というのが正しいのでしょうね。
・昭和ウルトラマンに出てきたゴモラゼットンアントラー、キングジョーなどが再び出てくれるのはうれしいです。いい作品だと思います。
・怪獣がシンプルでとてもわかりやすい。ブースカ(引用者註:『快獣ブースカ』(66年)の主役キャラ)を出演させてください。
・あまり込み入った話になると子供はおもしろくないようです。淡々と話が進むと、大人の私には笑いのツボだったりしても、息子は画面から離れてしまったり。その辺のバランスがイイのかもしれませんが、我が家ではこんな感じです。
・あまり中年のマニア受けに固執せず、王道のヒーローものであってほしい。ウルトラヒーローはその時々の子供たちの思い出ではありますが、『マックス』は今の子供たちのもの。一部の大人がニヤリとする楽屋落ちのために、子供が難解になるのはどうかと思います。



 人気怪獣の再登場は概(おおむ)ね視聴者から好評をもって受け入られているようだが、一部のマニアや年長者向けのバランスを崩して浮いてしまって見える演出については批判的であるようなのだ。


 個人的には『マックス』の最終回前後編はもっと脳ミソ筋肉なノリで、先に挙げた往年の名書籍『怪獣大図鑑』に添付の音声ドラマ『なぐりこみバルタン連合軍』のごとき、当時の怪獣書籍の挿絵でも存分に描かれてきたような十数匹もの怪獣軍団の再登場を、今度こそ現代の特撮技術でパノラミックな映像で実現して、千切っては投げ千切っては投げを繰り返す、ノン・テーマのバトルだけで展開するような作品を観たかったのだが……(笑)


 第13話にチョイ役としてしか登場しなかったウルトラマンゼノンも、やはり最終回ラストにマックスの帰還を宇宙でお出迎えするだけでなく、12月の放映分にはクリスマス商戦合わせで助っ人参戦させたり、最終回のラストバトルに超巨大化はしなくてもよいけど(笑)、なんらかのサポート参戦はさせてもよかったのではなかろうか? ほとんど登場しなかったあおりを喰らって、売れ行き不振の在庫処分で300円に値下げされてしまったバンダイ発売のウルトラマンゼノンのソフビ人形を目にするのは辛かったぞ(汗)。



 『マックス』の実質的な最終回である第39話の翌週には、「総集編」として『スペシャル・フィナーレ 〜ウルトラの未来へ〜』が放映された。


――このエピソードは2006年4月1日(土)に放送。本来、『マックス』は3クール放映=全39話の契約であったが、1本だけハミだしたのはTBS側の都合によるところが大きいと思われる。本来ならば4月1日から春の番組改編となるところだが、TBSは毎年4月の第2土曜日は早朝から『全米マスターズゴルフ』を中継するために、せっかく第1週の土曜日朝から改編して新番組を放映しても、『全米マスターズゴルフ』を挟んでしまうと1週分が空いてしまって視聴習慣がつかないために、こうした措置がとられたのだと思われる。1週おいた4月15日の朝7時30分からは、これまで8時からの放送開始だったワイドショー番組『知っとこ!』(03年~)が30分繰り上がって放送されるようになった。TBS系がこの時間帯で90年代中盤から放映してきた子供向け番組枠を撤退させる要因となったのは、残念ながら『マックス』の前々番組である実写版『美少女戦士セーラームーン』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)と前番組『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)からはじまる視聴率的な不振ゆえだろう――


 しかし、この総集編を観ていて、個人的にはやはり『マックス』はトータルでは楽しめる作品であったのだと感慨を深くした。
 『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)に登場した防衛組織・ZAT(ザット)のような、いつも元気で明るいチームDASH(ダッシュ)、個性豊かで迫力あふれる怪獣たち、そしてパワフルでカッコいいウルトラマンマックスの勇姿……


 「ウルトラ」の原点や理想とは、やはりそのようなものではなかろうか?

2006.4.14.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年準備号』(06年8月12日発行)〜『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンマックス』評より抜粋)


『假面特攻隊2007年号』「ウルトラマンマックス」関係記事の縮小コピー収録一覧
・全話視聴率:関東・中部・関西。各クール平均・全話平均視聴率
・読売新聞 2006年12月1日(金) 訃報欄「ウルトラマン」演出 映画監督 実相寺昭雄さん死去 〜11月29日午後11時45分、胃がんで死去。69歳
・読売新聞 2006年12月1日(金) 訃報欄「ウルトラマン」作曲 宮内国郎さん(みやうち・くにお=作曲家) 〜11月27日、大腸がんで死去。74歳
静岡新聞 2006年2月25日(土) 訃報欄 佐々木守 〜2月24日午前1時10分、大腸がんで死去。69歳


編集者付記:


 拙ブログ主宰者の『マックス』最終回の感想も余白に少々。編集者個人は『マックス』最終回には好印象。攻防劇中心の作劇で、清涼かつ部分的にはけっこう泣かせる場面も挿入した好仕上がりになったと私見する。同じく小中千昭が手掛けた世評高い『ウルトラマンティガ』(96年)最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1)や『ウルトラマンガイア』(98年)最終回と比較したら、ごくごく個人的には『マックス』最終回の方を採るなぁ(あくまでも個人的な感慨です)。
 とはいえ、ミズキ女性隊員を主人公カイト隊員が、神秘の奇跡に頼るのではなく人事を尽くして心臓マッサージで命を救うシーンで、『ザ☆ウルトラマン』(79年)の最終章プレリュード(前奏)である#46『よみがえれムツミ』(脚本・吉川惣司 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100320/p1)で隊員たちが紅一点の星川ムツミ隊員を救おうとする同様シーンを思い出してしまう腐れ『ウルトラ』オタクな当方……。
 本スジのメインストーリーには関わるものではないけれど、ラストで数十年後の後日談とはいえ、パスト・フューチャー(過ぎ去った未来。むかしの近未来観)のようなメトロポリスな超近代的未来都市のビジュアルを見せてくれたのにも好印象。
 今後のウルトラシリーズは、都市部はメトロポリス、郊外住宅地は現代、田舎は1960年代風のカヤブキ屋根の農村家屋(笑)、しかして木星土星の軌道上には地球防衛軍の宇宙戦艦が多数航行しているような世界観を希望したい!



ウルトラマンマックス』平均視聴率:関東4.0%・中部4.2%・関西4.4%
 1クール目:関東4.0%・中部3.8%・関西4.7%
 2クール目:関東4.1%・中部4.1%・関西4.6%
 3クール目:関東3.9%・中部4.7%・関西3.9%
 最高視聴率:関東5.3%(#1)・中部6.5%(#37)・関西5.6%(#22)
 最低視聴率:関東3.0%(#28・29)・中部2.7%(#17)・関西2.3%(#27)
 (平均視聴率EXCEL表計算:森川 由浩)
・弊サークル同人誌『2007年号』掲載の『マックス』各クール平均視聴率に、EXCEL計算式の範囲指定ミスによる誤りがありました。直上の記述が正規の値となります。伏してお詫びを申し上げます。全話および3クール目平均視聴率には、#40(仮)の番外特番「スペシャルフィナーレ」の値も含んでおります。


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ウルトラマン80(エイティ)』(80年)最終回 #50「あっ! キリンも象も氷になった!!」 ~実は屈指の大名作!

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ようこそ!地球へ 前篇 バルタン星の科学

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バルタン星人登場「ようこそ地球へ!」前後編が配信中とカコつけて!
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『マックス』バルタン星人前後編評! ~バルタン星人が全ウルトラ怪獣大投票で3位記念!
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