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『聖女の魔力は万能です』・『異世界薬局』・『新米錬金術師の店舗経営』 ~医療や店舗経営まで題材としてしまう、爛熟の異世界ファンタジーアニメ3本評!
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後宮(こうきゅう=ハーレム)で夜伽(よとぎ=性的奉仕)ではなく下女として下働きする、異性には媚びていないローテンションな少女が主人公である中華ファンタジーの深夜アニメ『薬屋のひとりごと』(23年)が放映中記念! とカコつけて……。同様に、媚びてないローテンションの少女が主人公である深夜アニメ『後宮の烏(こうきゅうのからす)』・『虫かぶり姫』(共に22年)・『くまクマ熊ベアー』(1期)評をアップ!
『後宮の烏(こうきゅうのからす)』
(2022年秋アニメ)
(2022年12月25日脱稿)
女性オタク向けの中華ファンタジー。といっても、「異能バトル」が主体の作品ではない。宮廷内で生じる超常現象に「推理モノ」的な手法で迫って、最後にはオカルト的な手法で解決(成仏)していくといった作品である。
主人公は後宮(こうきゅう)、つまりハーレムの離れに住まっているクールな小柄少女。しかも、一応は皇帝の妃(きさき)でありながらも、夜伽(よとぎ=性的奉仕)をする必要がない、特殊な身分であるとされている。
お相手となるのは、若きイケメンのクールな青年皇帝。皇族間での陰謀によって一度は廃嫡(はいちゃく)され、母親も殺されてしまったようだが、紆余曲折の末に元凶であった人物を拘束して、皇帝へと就任した人物でもある。
妃の身分が与えられるも、夜伽をする必要がない、おそらくは異能の力を持った女性に対する「名誉称号」として高位の身分=「妃」の身分を与えられた彼女には、皇帝でもむやみに手が出せない。
そして、物事の理非もわきまえて、相手や女性の立場や心理にも斟酌(しんしゃく)してみせることができる上品な青年皇帝もまた、無理強いをすることもなく彼女を尊重してみせる……。
といったところで、各話のストーリーは「ナゾ解き」が主体ではある。しかし、レギュラーキャラクターたちのドラマとしては、この両者間での媚び媚びとはしていない、男女間での節度もある抑えたほのかな描写がまたキモ(肝)ともなっている。
これがまた、脇目も気にしないどころか周囲に見せつけるかのように男に思いっきりに甘えたり媚びたりしてみせれば、世の控えめな女性たちは内心では不快感や憎悪を募らせて、自分とはタイプが異なる女性像だと敵性生物認定(笑)をすることであろう。
しかし、そういった男女接近は寸止めにとどめて、鼻にはつかない塩梅ともすることで、そういった色恋とは縁遠いのであろう、女性オタク層を適度な塩加減で刺激もするのではなかろうか!?
――いやもちろん、我々男性オタクが愛好してする美少女アニメとも、メタレベルでは性別が反転しているだけなのであって、同等な受容のされ方なのである(汗)――
このあたりは、本作にとっての、あるいはメインターゲットのある種の性格類型の女子たちにとっての魅力的な性格の登場人物を造形するための「肉付け」やマーケティング的な次元でのディテール分析ではある。
各話のメインのストーリー自体は、オカルトや霊能力(霊視)も交えての広義での「推理モノ」といった作劇となっている。
そして、その両者双方がまた実によくできてもいるし、「雰囲気」演出も絶妙なのである。
シリーズ前半では1話完結的な良質の単発エピソードが配置されている。シリーズ後半では、この王朝よりも以前の滅ぼされた先代王朝。どころか、この中華風の異世界の発端や連綿とした歴史に、複雑な因縁などもカラんできて、舞台のスケールも拡大されていく……。そして明かされる巨大な真相! 良作である。
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『虫かぶり姫』
(2022年秋アニメ)
(2022年12月25日脱稿)
メインタイトルとはウラハラに、美麗な作画による西欧中世風の異世界を舞台とした、少女やある種の性格類型の女性向けの知的で上品なロマンス作品といったところだ。
本を読むことが大スキなおっとりとした金髪の小柄な令嬢。ダサいとか容姿には劣っているということは、女子向けの物語的な主人公補正でそれは絶対にナイにせよ、世の一般的な女性とは異なり、内面の充実や平穏といったモノには関心があっても、「服飾」や「宝石」などといった浮わついた外飾・虚飾といったモノには関心はウスいようでもあり、「私が! 私が!」と他人や世間へとアピールすることもないようで、そもそも見た目やトロトロとした話し方からして、そういった行為がいかにも苦手そうな御仁が主人公。
そんな彼女でも、あるいは本作の原作者センセイや、本作のような作品を好んで読んでしまうような女性読者たちにとっては、異性に媚び媚びとした同性はキライであったり、快活な元気女子には苦手意識を持っているものであろう。
しかし、だとしても、そんな彼女たちでも「魅惑的な男性にはやはり云い寄られてみたい……」といった秘めたる願望は、本能的にも持っているモノではあるのだろう。
そんな願望を当て込んでか、本作では「弱者男子にとっての性的ファンタジー」ともいえる「美少女アニメ」の「逆パターン」で、控えめで受動的な主人公令嬢なので自らでアプローチを掛けることは決してなかったのに、異性(男性)たちの方から逆にモーションを掛けてきてくれる作品なのではあった(笑)。
といっても、安直なストーリー展開といった感じにはなっていない。実に謙虚であり人格的にも温厚で知識にも優れていて、それがまた時折りに「問題解決」や「他人とのちょっとしたウィット(機知)にあふれる会話のネタ」などにもつながっていくので、そういった積み重ねがあれが、彼女が実はモテていたとしても不思議ではない! といった感じの描写として昇華もできているのだ。
どころか、ある意味ではトロくて善良に過ぎるので(汗)、気が強くて独占欲も強そうな女子や令嬢たちには嗜虐心をそそられて、しかも男性の注目も自然に浴びているので嫉妬心をいだかれてしまって、おとしいれられそうになっているあたりがまた、逆に「さもありなん」的にリアルであったりもする(爆)。
とはいえ、そこは女子にとってのファンタジー。そういった窮地でこそ、好ましい異性からの救いの手が差し伸べられて悪役令嬢は退けられることで、単なる「カタルシス」(爽快感)が発生するだけではなく、それを異性との「ロマンス」とともに発生させてもいるのだ。
コレまた傑作の誕生である。
『虫かぶり姫』などというタイトルだけを見ると、なにかイロもの作品的ではある。大むかしに高校の古典で習った平安時代末期の『堤中納言物語(つつみちゅうなごん・ものがたり)』の一編「虫めづる姫君」のような、貴族の良家の娘なのに昆虫が大スキな変人姫君のような少女が主人公といった作品を想像してしまう。しかし、中世風の身分制社会が舞台といった点を除けば、まるで共通点はない。
どころか、こんな控えな女子が主人公である作品が21世紀にもあったのか!? ある意味では、良くも悪くも古典的な作りでもあって、70年代的なイケてない控えめな少女像を主人公とした少女マンガを、そうだとはツッコミされにくいようにクレバーに再構築したような作品だといった整理もできるだろう。
作者の意図はさておき。そもそも、70年代少女マンガ自体を世代的にも読んではいないだろうとは思うものの……(笑)。
『くまクマ熊ベアー』(1期)
(2020年秋アニメ)
(2021年1月21日脱稿)
西欧中世ファンタジー風の異世界の片田舎が魔物に蹂躙されている。そこを辛うじて逃れてきた年端もいかない少年クンが冒険者ギルドに助けを求めてくる。しかし強敵相手に立ち向かえる冒険者は出払っており、その域に達していない冒険者たちは済まなさそうな顔をするしかない。そこに「ワタシが行こうか?」と声をかけてきたのは、顔出しでもフード付きでムクムクとした黒いクマの着ぐるみを着ている、やや低音ボイスの女の子!
超安直なタイトル。それゆえにインパクトはある(笑)。内容はオボコい女子オタ向け「俺TUEEE(ツエーー)系」作品と要約できるけど、バカにしているワケではない。その範疇で気持ちよくはできている。
別のモノサシで測れば、股旅・ロードムービーもので、旅先で困っている庶民をクマ女子がその超チート能力を善用して助けたり、悪人を懲らしめるといったもの。タドタドしい展開はなくフツーに楽しめる。
往年のオタク論『趣都の誕生―萌える趣都アキハバラ』(森川嘉一郎・幻冬舎・03年2月1日発行・ISBN:4344002873。08年12月1日に増補版が幻冬舎文庫化・ISBN:434441232X)的に観ちゃうと、自身のボディーラインを見て見て的なギャルとは対極的な、自身の体形を隠したい系、モフモフとしたクマ的な可愛いものが好きだけど、ベタベタと愛想よく異性に媚びるのには抵抗があるオタ少女にとっての、感情移入しやすい女子主人公&居心地のよい世界観の結晶といったイジワルな分析もしたくなる。
――それが悪いワケでもない。むしろマーケティング的には盲点だった新たな鉱脈の発見やも?――
オタク評論家・大塚英志の弟子筋だった女子オタによる往年の著作『少女民俗学パート2 クマの時代』(荷宮和子・大塚英志・光文社(カッパ・サイエンス新書)・93年9月1日発行・ISBN:4334060773)との通底なども想起する。
ただし、本作の異世界は当今流行りのゲームの中だったハズが、そのへんはあやふやとなり、むしろ引きこもりぎみで居場所がなかった彼女が、オボコい庶民少女との出逢いを契機に異世界に守るものや居場所を見つけたようにもなる展開は……。引いて考えるとオカシい。けど、絵柄的にも頭身が低くてファンシーでリアリティーの喫水線が下がった世界なので、筆者個人はあまり気にならない(笑)。
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https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211010/p1
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