(2018年9月8日(土)UP)
『LOGAN/ローガン』 〜老X-MEN映画に、活劇の教科書を見る! 殺ってもイイ悪党の造形法(笑)
『デッドプール』 〜X-MENも客演! 私的快楽優先のヒーローは、日本でも80年代以降は珍しからず!
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『デッドプール2』
(2018年6月1日(金)・日本封切)
『デッドプール2』 〜合評1
(文・くらげ)
(2018年6月15日脱稿)
『X-MEN(2000〜)』ユニバース最大のヒット作になってしまった『デッドプール(2016)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160705/p)。2作目も大ヒット中で興収ツートップは確定のようです。スピンオフの邪道ヒーローにトップの座を持ってかれて、本家『X-MEN』メンバーは複雑な心境じゃないでしょうか。監督は前作のティム・ミラーが降板し、キアヌ・リーブス主演のアクション映画『ジョン・ウィック(2014)』のデヴィッド・リーチに交替してます。
続編はいきなりデッドプール=ウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)が自殺する場面からスタートします。不死身なので自殺してもどうせ死なないんですが、何をそこまで落ち込んでるかと言うと……
【WARNING】ここから完全なネタバレですが、これに触れないと先に進まないので、観てない人は読み飛ばして下さい。
前作から2年後、麻薬の売人やマフィアの殺し屋として活躍するデッドプールは、恋人ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)と誕生日を祝い、子供の名前を考える幸福な日々でした。しかし好事魔多し、突然の賊の襲撃でヴァネッサはあっさりと殺されてしまいます。
始まって10分くらいだしどうせシャレでしょ? と思って観てるとどうやらそうではないようです。まあ『スパイダーマン』あたりのヒロインなら死んでもどうってことないんですが(←おい)、ヴァネッサはデッドプールという歪なパズルに唯一合うピースだと前作でさんざん描いてるので、まさか2作目で殺すとは思いません。こうなると「あんないい女二度と出会えないだろうに」と我が事のようにデッドプールに同情してしまいます。
唯一の心の支えを失ったデッドプールは絶望し、自宅に山ほどの可燃物を持ち込んで火をつけ、バラバラに吹っ飛びますが死にません。死後の世界でヴァネッサの元へ行こうとすると透明な壁に阻まれ現世に戻されてしまいます。不死身のヒーローの悲劇ですね。失意のデッドプールを慰めるため(というか放っておくと何するか分からないので)、X-MENのコロッサス(声・ステファン・カピチッチ)やネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(ブリアナ・ヒルデブランド)がX-MEN加入を勧めます。
色々あってX-MEN見習いとして働き始めるデッドプールですが、初仕事でミュータントの孤児院で暴れていたラッセル少年(ジュリアン・デニソン)に同情し、職員を射殺して逮捕されてしまいます。
何故かこの少年が未来から来た殺し屋、ケーブル(ジョシュ・ブローリン)に狙われていて、デッドプールが奮闘することになります。無宿渡世のヤクザ者が子供を押し付けられるのは『男はつらいよ』『座頭市』の時代から定番ですね。
デッドプールとラッセルはミュータント刑務所「アイスボックス」に収監され、特殊な首輪で超能力を封じられます。デッドプールはヒーリング能力を失ってガン患者に戻ってしまい、これでやっと死ねる、ヴァネッサの元へ行けるとか思ってるところへ、武装したケーブルが襲って来て刑務所は大混乱になります。
何故ケーブルがラッセルを狙うかというと、ラッセルは未来では“ファイヤーフィスト”を名乗る悪のミュータントになっていて、ケーブルの家族を殺した仇だったのです。成長して手に負えなくなる前に殺そうとするケーブルに対し、デッドプールはラッセルを正しい方向へ導くべきだと考えます。ヴァネッサの幻影に励まされ、ラッセルも自分も「いい人間」になれるはずと奮闘するデッドプールが、R指定の血まみれコメディとは思えない感動を呼びます。
デッドプールはラッセル救出とケーブル打倒のためミュータントを集め、チーム「Xフォース」を結成しますが、即席チームにしては豪華なメンバーが集まります。透明人間“バニッシャー”は透明なので見えませんがブラッド・ピットが演ってます。一瞬だけ姿が見えるので見逃さないように。何を間違えたか普通の人間の中年親父“ピーター”も面接に来ますが、やる気を買ってこれも採用します。Xフォースは移送中を狙って上空からパラシュート降下し、ラッセルを奪還しようとしますが、パラシュートが強風に煽られ着地前に全員死亡します(笑)。ただ一人「運のいい」ミュータント“ドミノ”(ザジー・ビーツ)だけが生き残ります。運がいい超人ってジャンプ漫画『とっても!ラッキーマン(1993)』みたいですね。
何の役にも立たなかったXフォースですが、ドミノの活躍でラッセル救出には成功します。ところが護送車から怪力のミュータント“ジャガーノート”が現れて、デッドプールの前に立ち塞がります。力ではジャガーノートに勝てないデッドプールは、あっさり真っ二つに引き裂かれます。
それでも死なないデッドプールは切り口から赤ちゃんみたいな下半身が生えてきて再生しますが、3頭身のデッドプールのよちよち歩きが気持ち悪いです。ちぎれた下半身の方はどうなったんでしょう。
そっちもデッドプールが生えて来て、プラナリアみたいにデッドプールが増殖したらイヤだなあと思ったんですが(笑)、逃走したラッセルはジャガーノートと共に孤児院へと向かい、自分を虐待した理事長(エディ・マーサン)に復讐を果そうとします。
クライマックスは理事長を殺そうとするラッセルと、それを止めるデッドプール達が入り乱れての戦いですが、敵を倒す戦いじゃなく未来の悪人が最初に手を汚すのを止めようとする戦いなのが面白いですね。
ケーブルもデッドプールに賛同し、協力してラッセルの最初の殺人を止めることになります。コロッサスやネガソニックらX-MENも参戦し、ジャガーノートと派手なバトルを繰り広げます。今回ネガソニックの恋人の“ユキオ”が登場するんですが、これを日本の若手女優・忽那汐里(くつなしおり)が演っていて、一瞬だけの登場かと思ったら電撃を操るミュータントとして派手に活躍します。
というか主役のデッドプールの戦い方が一番地味ですね。日本刀と拳銃ですから。それでもラッセルの未来のために命を懸けるデッドプールにはグッと来ます。デッドプールの誠意が少年の運命を変えた瞬間、ケーブルの運命もまた変わるのが感動的で、こんな映画なのに泣きましたね。
今回おふざけ要素は控えめに感じましたが、デッドプールの「第4の壁を破る」能力は健在で、スクリーンの中から観客に話しかけたり脚本に文句を付けたりします。ケーブル役のジョシュ・ブローリンに「サノス」(『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180619/p1)のラスボス)と呼びかけたりして。デッドプールの場合内輪ネタじゃなく「自分の世界がフィクションだと認識できる」超能力なんですよね。
予告編だとスタン・リー(原作者)に対して「黙れ! スタン・リー!」とツッコむギャグがありましたが、本編には無くて残念でした。『アナと雪の女王(2013)』の曲が「愛のイェントル」のパクリなんてネタも、バーブラ・ストライサンドがジョシュ・ブローリンの義理の母なんて芸能情報も知っておくと味わいが増すでしょう。そんなデッドプールでも「この映画、『ターミネーター(1984)』にそっくりだな」とは言わなかったですね(笑)。
この映画に限ってはエンドタイトルの途中で帰らない方がいいです。映画の内容をひっくり返す大どんでん返しがありますから。本家『X-MEN フューチャー&パスト(2014)』も真っ青の反則技で、映画の内容ついでに主演のライアン・レイノルズの黒歴史までひっくり返しますよ。
『デッドプール2』 〜合評2
(文・T.SATO)
(2018年6月16日脱稿)
前半は少々カッタるい。後半は人情ドラマとしても盛り上がる。
悪人にも一分の魂、ロクデナシのC調おしゃべりヒーロー・デッドプールが、施設で虐待されて育ったデブのイケてない、ミュータント(突然変異)能力が発現した白人少年を闇落ちから救うため、イイひとになってしまうあたり、このテはもう続編では使えなくなってしまったゾ!(笑)
まぁ後先考えずにヤリきってしまうのも、良作を作るためのひとつのテではあるだろう。前作の方が僅差で面白かったような気もするけれど(汗)。
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