『ウルトラマンジード』序盤評 〜クライシス・インパクト! 平行宇宙のひとつが壊滅&修復! その原理とは!?
『ウルトラマンジード』中盤総括 ~父とキングの力も! Wヒーロー・特オタ主人公・ラブコメ! 希代の傑作の予感!?
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『ウルトラマンジード』最終展開の出来はいかに!?
(文・T.SATO)
(2018年2月11日脱稿)
意欲作『ウルトラマンジード』(17年)もついに完結。その最終展開の出来はいかに!?
ウ〜ム。筆者個人は終盤直前までの展開にかぎれば、『ジード』という作品が大スキだし、高く評価もしているけれども、この最終展開は個人的にはイマイチとはいわないけど、イマ半だったかもしれないなぁ。
別に駄作だったとか失敗作だったとか云う気はなくって、十二分に及第作だったけど、先行した直前4作品の2010年代のウルトラシリーズ作品と比べると、最終展開にふさわしい通常回の敵とは異なる巨悪の襲来がもたらす絶望感、大スケール・大バトル・大逆転劇がもたらすスカッとした勝利のカタルシスは少々欠如してしまって、良くも悪くもシメった人間ドラマ寄りになってしまった感がある。
・『ウルトラマンギンガ』(13年)における、漆黒の人型巨人のラスボス・ダークルギエルとの最終決戦!
・『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年)における、正義側の防衛隊の秘密基地の建造物と融合してしまった巨大怪獣との攻防劇!
・『ウルトラマンX(エックス)』(15年)の世界における、怪獣出現の元凶である人型のラスボス怪獣の襲来&対決!
・『ウルトラマンオーブ』(16年)における怪獣、通称・魔王獣たちのラスボスにふさわしいボリュームある体躯(たいく)のマガタノオロチとの東京都心での大バトル!
ジードvsベリアル! 刀剣少女vsSF作家先生! 2つのバトルの分断
それらと比すると、『ジード』最終回のヤマ場は、
・我らがウルトラマンジード vs ジードの父にしてラスボスで悪しき黒きウルトラマンであるウルトラマンベリアル!
・メインヒロインである刀剣少女 vs ベリアルのしもべであり、正体は宇宙人でもあったダンディーなSF作家センセイ!
の2つの要素に分散してしまっているともいえる。
しかも、後者側の決着は、問答無用の大悪党をヤっつけて爆発四散させ、ヤッたぁ〜、ヤッたぁ〜! メデタシ、メデタシ……オ・シ・マ・イ。といった気持ちのイイのノリのものではない。
ほとんどキチガイの域に達しており、余命いくばくもなくなっていた、SF作家センセイの自滅がごとき死で終わる。
役者さんの狂気あふれる迫真の熱演ともあいまって、その我を失い正気も失った最期(さいご)の姿には憐れささえ漂い、今際の際(いまわのきわ)のSF作家センセイに対して、刀剣少女も文字通りの真剣勝負を中止して、ウソ偽りでもベリアルさまのフリをしてみせて、
「アナタの人生に意味はあった。ベリアルの役には立ったのよ(大意)」
とねぎらいといたわりの言葉をかけてあげる。その偽りの感謝の言葉に、ようやく自身が認められて報われた想いがしたのか、安堵の表情で彼は死出の旅に出る。
打倒すべき強敵から憐れむべき弱者へ転落した悪党への、広いイミでの優しいウソも交えたオトナの態度での赦(ゆる)し……。
ドラマ的・テーマ的にはそれなりに高度で、単なるフィクションを超えて現実世界における人間交際の機微の面でも含蓄があった決着ではあった。
評論オタクとしては、その一点だけでも内実を腑分けして延々と記せる語り甲斐もある描写であったとは思う。
とはいえそれゆえに、適度におバカな痛快娯楽アクション作品としては、おキラクに楽しむことができなくなってしまう半面もある。
少女vsSF作家の因縁の重さを、ウルトラマン勢揃いの華で中和か!?
スタッフもバカではないのだから、そのことにもちろん気付いてはいただろう。その分、前者のウルトラマンジードvsウルトラマンベリアルの戦いのパートは、ジードの全5形態が一挙に同時に出現!
歴代ウルトラマンたちも顔見せ程度ではあるけれど、チラリと登場させて、少しでもハデハデ・にぎやかなものとすることで、後者の等身大バトルのシメっぽさは中和して、人間ドラマ&アクションを並列させつつ、勢いで押し切ろうとしたフシもある。
ジード・プリミティブ!
ジード・ソリッドバーニング!
ジード・アクロスマッシャー!
ジード・マグニフィセント!
ジード・ロイヤルメガマスター!
近く(?)は仮面ライダー電王の全4形態が、ラストバトルで同時に大活躍する『劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080215/p1)。
古くは仮面ライダーブラック・RX・ロボライダー・バイオライダーといった同一個人の全4形態が『電王』同様、複数の異なる時間からタイムマシンによってか連れてこられて共演を果たす3D映画『仮面ライダー 世界に駆ける』(89年)。
コレはコレでタイプチェンジが常態化して久しいヒーロー番組における、常套のご都合主義ではある(笑)。しかし、ご都合・フィクションなりの原理や由来・ロジックを最低限、持たせているあたりが好印象なのだ。
ご存じ、ウルトラマンジードの全5形態は、ウルトラの星の科学者・ウルトラマンヒカリが製造した小型携帯アイテム「ウルトラカプセル」に秘められた先輩ウルトラマン個々の能力を模した力を利用することで、タイプチェンジできるとされている。
そこで、この全5形態が一斉出現を果たす直前、ウルトラの星のエメラルド色のクリスタルな建造物群を背景にした初代ウルトラマン・ウルトラセブン・ウルトラマンレオ・ウルトラマンヒカリが、次元を超えて昭和ウルトラの宇宙に届いた、ジードの熱血ド根性に気付いて呼応する。
昭和とは別宇宙のウルトラマンコスモスも気付くが、背景が惑星ジュランなのはうれしい(コスモスと分離したムサシ隊員の移住先だけど・笑)。
ウルトラマンゼロやウルトラの父は(ある意味ではウルトラマンキングも)、ジードvsベリアルの戦いの場にはすでにいる。
よって、コレらの描写は単なるにぎやかしを超えて、初代マン(とベリアルのカプセル)の力を借りたジードプリミティブ、セブンとレオの力を借りたジードソリッドバーニング、ヒカリとコスモスの力を借りたジードアクロスマッシャー、ゼロと父の力を借りたジードマグニフィセント、キング(とベリアル〜)の力を借りたジードロイヤルメガマスターが今回、緊急例外的に同時に併存できた一応の理由を、映像的にも補強してくれる。
さらにはイメージ・心象映像とはいえ、ベリアルさまが闇落ちする前、両眼も吊り上がっておらず、赤と銀の正義の姿をしていたころのウルトラマンベリアル・アーリースタイル(=早期・初期形態)までもが登場!
ウルトラの父ことウルトラマンケンvsウルトラマンベリアル!
加えて、ラストバトルの第1戦敗退とリベンジ第2戦の間には、あのウルトラの父が昭和ウルトラの宇宙から次元を超えて、ジードが活躍する世界の地球へと助っ人参戦!
劇中でも、正義の宇宙人連合組織・AIBのヒミツ基地のコンソール端末が検知した分析結果を受けて、黒スーツ姿なのにズッコケ(笑)のサブヒロイン・愛崎モアが「別宇宙から来た」と報告し、劇中マスコミも「ウルトラマンジードやウルトラマンゼロとは異なる別のウルトラマンだ!」と実況中継するあたりも、イイ意味での設定フェチ描写で、そのていねいさもマニア心をくすぐる。
3万年前の暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人によるM78星雲・ウルトラの星への侵攻=ウルトラ大戦争の際には戦友であり、その後は袂を分かったウルトラの父とウルトラマンベリアル! 彼らが旧友同士であったという設定も忘れず、後年の名誉称号である「ウルトラの父」の名ではベリアルには意地でも呼ばせず、「(ウルトラマン)ケン」という本名でシリーズ中盤回と同様に呼ばせつづける、少々マニアックでもナチュラルなキャラ描写の一貫性も、マニアや怪獣博士のケがある子供たちを喜ばせると思う。
むろん幼児や同伴視聴していたパパ・ママ層の大多数には意味が取れなかったノイズ音声ではあろうけど――何の予備知識もなく「ケン」こそがウルトラの父の本名であると察することができたリテラシー(読解能力)の高いパパ・ママ層もごく少数はいたろうが――、「ケン」の語句が何を意味するかが理解はできなくとも、この『ジード』という作品自体が理解困難となるような代物ではなく(笑)、遅滞なくサラッと流れていくような瞬時の一単語に過ぎないのだから、この程度のお遊びやマニアくすぐりは、スタッフたちの独り善がりに堕(だ)すこともナイ、巧妙な点描だとして評価してもイイと個人的には考える。
むしろ、即座に(あるいは永遠に・笑)理解はされなくとも、このテの歴代シリーズの各種設定に基づくキーワードなどを適度に散りばめておき、長じてからでの再視聴やネットサーフィンなどで、そのマニアックな世界観的奥深さに改めて感嘆させるような類いの消費も可能とするくらいの懐(ふところ)の深さが作品にはあった方が、歴代ウルトラシリーズ群をマニア・ファン・オタクたちに長年月にわたってアキさせずに関心をゲットしつづけるための戦略という意味でも、有益ですらあるともいえるだろう。
宇宙を修復するため宇宙と合体していたウルトラマンキングが遂に復活!
オーラスでは、『ジード』世界の「地球」どころか、6年前(?)にベリアルさまが東京上空で炸裂させた超時空消滅爆弾で一度は崩壊した『ジード』世界の「宇宙」を修復するため、宇宙の膨張速度を考慮した最新の天文学的知見によるとおそらく最低でも数百億光年の超広大さがある「宇宙」そのものと合体して拡散・稀釈化、時空それ自体を縫合・修復していた、その能力はほとんど天地創造の神レベルに達してしまったウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングまでもがついに完全復活!
映画ではともかく、TV作品では久々にウルトラの父とウルトラマンキングまでもが同一画面にそびえ立つスペシャル感も醸し出している。
『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)で初登場以来、ビデオ作品『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080914/p1)に至るまでキングの声を務めてきた、一般的にはロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110827/p1)の白髪の冬月コウゾウ爺さんでもおなじみ、我々古参の特撮マニアにはあまたの変身ヒーローもので敵怪人の声を延々と演じてきたことでも知られる、清川元夢(きよかわ・もとむ)センセイことモトムーが、本作におけるキングの声を演じなかったことは少々残念ではあるけれど、最長老格の大ベテラン声優だからギャラも高くて使えなかったのか?
本作放映と同時期には続編劇場版も公開された美少女アニメのヒット作『ご注文はうさぎですか?』(14年〜)シリーズでも、銀髪サブヒロインの頭上に常にツブれた偏平な帽子のように乗っかっている可愛い白ウサギ・ティッピー役なんぞで場違いな渋いボイス(笑)を披露していたくらいなのだから、健康面の都合やご多忙ということはなかったとは思うけど。
とはいえ、ジャンルファン的には、ロボットアニメ『勇者特急マイトガイン』(93年)と『勇者王ガオガイガー』(97年)の2大主人公、『五星戦隊ダイレンジャー』(93年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111010/p1)のイレギュラー3バカ敵怪人のリーダー・神風大将(笑)などの実に暑苦しいボイスの数々が思い浮かぶ、今ではキャリアを重ねて壮年のベテラン声優となった、本作の玩具ボイスも担当する檜山修之(ひやま・のぶゆき)が重厚に演じるウルトラマンキングも悪くはない。今のうちに世代交代を図っておくべきか?
――ズブズブのオタク的には近年の氏の声に、深夜アニメ『げんしけん』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071021/p1)シリーズの細身のオタク大学生・斑目(まだらめ)クンや、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)のデブのオタク高校生・材木座義輝クン、『SHIROBAKO』(14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20151202/p1)の同じくデブでオタク上がりのアニメ監督・木下などなどの、珍妙なテンション高い三枚目演技の数々をついつい連想してしまい、イマイチ荘厳に感じられなかったりもするのだが(笑)――
後半はジード世界の屋台骨「クライシス・インパクト」に迫るべきだった!?
ただまぁ『ジード』後半を振り返ってみたとき、後知恵(あとぢえ)で個人的に思うのは、2クールしかないのだからいわゆる通常編・異色作・遊び回などはオミットし、毎回毎回のエピソードをメインストリームに直結させて、作品の基本設定・舞台設定それ自体を煮詰めたかたちで、各話の事件やテーマを構築したり、スケール感を壮大にしていく方向の作劇をしていった方がよかったのではあるまいか? ということだ。
具体的には6年前(?)のベリアルさまの超時空消滅爆弾起動に伴なう、ひとつの「平行宇宙」=『ジード』世界の「宇宙」の消滅と、ウルトラマンキングのとっさの介入によるその「平行宇宙」のゴーインな修復、つまりは「クライシス・インパクト」それ自体のことである。
単なるウラ設定ではモッタイなさすぎる。やはり、劇中でも改めて、正義の宇宙人連合であるMIBや一路一帯AIIB(笑)ならぬAIBの超科学力で分析・仮説・推測してみせた……とかナンとかの言い訳をつけて、黒スーツ姿がキマっているダンディーなレギュラーのAIB上級官・シャドー星人ゼナさんなり、#4や#16に登場したピット星人の科学者のお姉ちゃんあたりに、「クライシス・インパクト」の詳細や、今この「宇宙」で起きているキングによる時空自体の大修復とはどのような重大事であるのか? ということをセリフで説明してほしかったようにも思うのだ。
ウルトラマンキングの痕跡「幼年期放射」はこう描けばよかった!?
最終的にはラスボス・ウルトラマンベリアルさまは、このウルトラマンキングが宇宙全体に遍在することで、「背景放射」――宇宙の生誕期・ビックバンの痕跡であり、全天球の背景全面から一律に発せられる微弱電波――ならぬ、「幼年期放射」なる微弱電波(?)と化したことを逆用して、「幼年期放射」=キングの力も吸収してパワーアップを図らんとする。
……このへんもなぁ。とても魅惑的な設定ではあるけれども、ビジュアル・一枚絵で幼児でも眼で見てわかる感じで描かれていないのがモドかしいよなぁ。それと、やはり少々唐突な感もある。
そうであれば最終バトル前に、「幼年期放射」を利用したウルトラマンキングの偽物なり人造キングを、ベリアルさまなりSF作家センセイが造ってジードにけしかけて、「幼年期放射」とは要はこーいうモノ(=ウルトラマンキング)なんだぞ! というような、設定はハイブロウでも表現は俗っぽい(笑)エピソードを1本、作ってもよかったのではあるまいか?
それでもって、エネルギーを吸われた本物のキング爺さんの方も弱体化してしまうことで、時空の因果関係にもほころびが生じて、歴史や人々の記憶や記録にも不整合や消失が生じてしまう珍騒動なども描く……とかネ。
「幼年期放射」を蓄積する「カレラン分子」や「分解酵素」はこう描け!?
「幼年期放射」なるエネルギーを生物の体内に蓄積させ、それが結集するや発光して超能力も宿主に発揮させる「リトルスター」として発現、ついには「幼年期放射」に混合して隠されていた(?)「ウルトラカプセル」を実体化させる効果もある、実はSF作家センセイが散布したと明かされた「カレラン分子」なども同様だ。
多少おマヌケでも、SF作家センセイが花咲ジジイのごとく(笑)「カレラン分子」を散布する回想映像もインサートしたり、「カレラン分子」そのものを密封した奇抜な形をした容器などを、争奪戦の主題に据えるような1エピソードなどもあった方がよかったのではあるまいか?
その「カレラン分子」を無効化する、ピット星人の科学者お姉ちゃんが開発した(?)「分解酵素」も同様だ。研究施設からの大型車両での「分解酵素」輸送をめぐって、要人警護やアイテム争奪戦をくりひろげる、初期スーパー戦隊みたいなノリの話を作りつつ、そこで「カレラン分子・分解酵素」の重要性やその何たるかを、「リトルスター」を発症したゲスト相手にその実効性をも、絵で見せてくれるようなエピソードもほしかった。
絵で見てわかる宇宙崩壊の危機再来、時空修復・改変もこう描けば!?
絵で見てわかるということであれば、キングの力を吸い上げたベリアルとの最終決戦でも、今はデジタル加工でさまざまな映像表現ができるのだから、再度の宇宙崩壊の危機を表現するため、暗雲の空がゆらめいたり、夜空の星々の一角が消滅、お月さまも瓦解して、ビル街の各所が徐々に蒸発・空き地(笑)になってしまったりといったベタな映像表現で、大宇宙全体の崩壊の危機を描くなどの描写があってもよかったのでは?
刀剣少女のメインヒロインの生誕の地の病院が、実は超時空消滅爆弾の爆心地かつ、時空修復の中心地点でもあるらしく、それゆえにメインヒロインがキングとも縁があり、その声が時々聞こえてくる……という中盤以降の描写については、機知にも富んでおりスナオによかったとは思う。
しかし、彼女は19歳だからその生誕の時間と、6年前の「クライシス・インパクト」の時間が合致していない(汗)。コレはドー解釈すべきなのであろうか? 凡ミスなのであろうか?
空間的に宇宙に遍在しただけではなく、過去&未来の因果律をも微改変するため、前後数十年間ほどの時間軸にもキングの身体は拡大・遍在して、その際に空間的には近い地点にいた19年前に死産する運命だったのやもしれないメインヒロインとその両親の祈りに感応して、キングは片手間に彼女をつい助命しその運命を変えてしまうことで、結果的にこの次元宇宙まで救ってしまったのであろうか?
いやいや、宇宙大に瞬時に拡大したなら、その際に光速を超えたワケで、タキオン粒子の原理で時間も遡行するから、それゆえ宇宙生誕時はムリでも宇宙の幼年期の超過去の時空まで身体が拡張して……なぞと正解などナイ、タチの悪いオタ的妄想・コジツケを延々と展開する筆者なのであった(笑)。
設定・内容も大スキな『ジード』だが、要は人間描写や戦いの動機面だけでなく、カラッとしたSFシチュエーションを煮詰めて、眼で見てわかる映像や戦闘の背景とすることだけでも、さらなるスケール・抑揚・カタルシスをもたらす大逆転劇で作品を盛り上げられたハズだと夢想するのだ。
刀剣少女がSF作家センセイにトドメを刺さなかったことの是非!
よくよく思い返してみると、実は#9でも、SF作家センセイにトドメを刺そうとした刀剣少女に、「やめなさい。君がすべきことじゃない……」とウルトラマンキングはその姿を見せずに声だけで語りかけている。
ウ〜ムムムムム。そう考えると、最終回でも刀剣少女がSF作家センセイにトドメを刺せずに終わる伏線が、すでにココにあったともいえるワケであり、周到なシリーズ構成および、その結末から逆算した伏線であったというべきか?
本作『ジード』において、宿敵であるSF作家センセイは、中盤で実は地球人ではなく、異星人=ストルム星人であったという正体バラしが行なわれた。ごくごく個人的には純然たる地球人でありながらも、狂気の野望の持ち主という設定であってほしかったので、少々残念ではあるのだが。
しかし、その姿は終始、着ぐるみの宇宙人に変身することはなく、地球人=人間の姿のままである。前作『オーブ』の好敵手ジャグラス・ジャグラー青年のように、「人間体」と「着ぐるみ宇宙人体」の2種の姿を持つ存在ではナイ。
とはいえ、時代劇や西洋中世ファンタジー風異世界ではなく、一応の現代日本を背景映像とした作品である場合、人間を……あるいは人間の姿を継続したままの悪党を、たとえその正体が宇宙人や異形(いぎょう)のモノであったとしても、必殺ワザで斬りつけてトドメを刺して爆発四散(笑)させると、そこに視聴者は現実社会における道徳・倫理・法律からの逸脱と、それに伴なう不快感をドーしても感じてしまうと思う。
そのために、過剰防衛・過剰反撃・殺人・私刑の罪に抵触したニュアンスが漂って、ダーティーヒーローものや闇社会モノならばともかく、家族そろってリビングで鑑賞できる健全さを無意識に期待される子供向け作品の場合は、悪党をヤっつける爽快感にはスナオにひたれなくなってしまう。
現実に実在する動物や我々人間が死する描写は、たとえフィクションとはいえやはりナマナマしくなってしまうけど、着ぐるみの空想上の巨大生物や宇宙人や敵怪人といった「人外」のキャラクターであれば、良くも悪くもファンタジー色が強まって、人間社会での法律の適用も見逃され、容赦なく爆破・粉砕してしまっても(笑)、フワッとした説話的な因果応報、悪党には相応の報いを与える勧善懲悪のカタルシス、勝利の爽快感だけが浮上して残ることとなるのが、人間一般の心理的機制であるようだ。
――ここに我々人間が持つ根深い「人種差別」などの根源を見てもイイのかもしれないが、実は原理的・生物の本能的な次元でこの峻別は根絶できないとも思うけど、脱線・煩雑に過ぎるのでそこは今回は詳述しない――
その伝で、SF作家センセイに刀剣でトドメを刺すことなく、広い意味での赦しで終わる人間ドラマでオトしたストーリー展開にも理解はできる。
しかし……。やはりいくばくか低俗・ロウブロウになろうとも、SF作家センセイを着ぐるみの悪い宇宙人に変身させるか、着ぐるみ新造予算がナイならば、顔面に黒いクマ取りの化粧・メイクを施して(笑)、最後はウルトラマンベリアルさまに変身なり合体なりして、その最期はいさぎよく華々しく散っていくモノでもよかったのではあるまいか?
その場合、メインヒロインとSF作家センセイの因縁決着はドーするか? コレもいっそ、数年前の『ウルトラマンギンガ』最終展開とカブるけど、ジードことリク少年と刀剣少女が男女合体変身したかたちでのウルトラマンジードと、SF作家センセイとベリアルが合体したかたちのウルトラマンベリアルとの精神世界での2対2の戦いとして描いて、戦場を一本化することで、両者の因縁の分断感を減少させる方法もあったのではなかろうか?
今後、悪のウルトラマンベリアルさまはいかにあるべきか!?
ヒーローが闇落ちしても最後には善性を取り戻す展開も、ジャンルが爛熟した現在、それはそれでミエミエのアリがちパターンと化したからか、ベリアルさまはさらにヒネった古典回帰で、最後も善の側に立ち返ることなく、不敵に哄笑する悪党に徹してきて、深みはナイけど(笑)善悪のメリハリはつくので、個人的にはそのブレない悪党描写を好意的に思ってきた。
しかし、イメージ・心象映像ではあるけれど、息子のジードがベリアルの長年にわたる怒り&屈辱にも理解を示して、それを一概に道理・理屈だけで否定せず、心理・心情の次元で寄り添って抱擁してあげたことで、彼に憑依していたレイブラッド星人が悪霊退散していくサマまで描かれて、ベリアルさまにも改悛の可能性があるやもしれないことが示唆された。
実の息子のジードが本作の対戦相手でもあったことから、そろそろ変化球でそーいう一面がベリアルさまにも描かれてもイイのだろう。
しかし、個人的にベリアルさま(&SF作家センセイ)には「ソレはソレ、コレはコレ」で、正義に立ち返って死んだハズなのに、昭和ライダーと平成ライダー間の空白期の3D映画やアトラクショーでは何度も甦って昭和ライダーたちにリベンジしてきた悪の仮面ライダー・シャドームーンさまとも同様、コレからも「限りなきチャレンジ魂」(笑)で何度でも下品に哄笑する悪党として復活し、ウルトラ一族とシメっぽさは排除したアタマの悪い(笑)ガチンコバトルをくりひろげてほしいものである。
『假面特攻隊2018年冬号』「ウルトラマンジード」終盤評・関係記事の縮小コピー収録一覧
・スポーツニッポン 2018年1月6日(土) 「チャップアップ育毛剤 育毛の父が、あなたを救う! 最も売れた育毛剤 本日より3日間限定半額以下」広告
・日刊ゲンダイ 2017年12月22日(金) 書籍『「ウルトラセブン」の帰還』広告
・週刊文春 2017年12月21日号(12/14刊) 「新 家の履歴書」森次晃嗣(俳優)
・福島民報 2017年7月14日(金) 「須賀川の円谷監督生家 公認ショップ開店 ウルトラマングッズ販売」&「ウルトラマンAR(拡張現実)スタンプラリー 配信始まる」
・福島民報 2018年1月12日(金) 愛称は「ウルトラFM」 故円谷監督にちなむ 須賀川・tetteに開設
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『ウルトラマンマックス』(05年)最終回 ~終盤評 #33、34「ようこそ地球へ!」バルタン星人前後編
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『ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO』(08年)最終回 #12「グランデの挑戦」・#13「惑星崩壊」
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