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劇場版 機動戦士ZガンダムII-恋人たち-

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『劇場版 機動戦士ZガンダムII -恋人たち-』

(文・T.SATO)


 TVロボットアニメの金字塔『ガンダム』の不肖の続編『機動戦士Z(ゼータ)ガンダム』(85年)。その20年を経た劇場用リメイク版の3部作中の第2弾。
 猛烈なアンチ・TV版『Zガンダム』の筆者をして(何か文句ある?)、大喝采せしめたのが劇場版第1作『星を継ぐ者』。その第2作『恋人たち』ははたして……。
 性格悪い筆者は、今や神格化されている『Z』とそのファンをついつい挑発したくなってしまうのだが(笑)。
 いや第1作の気持ちよいテンポ&すばらしい盛り上げ方には全然負けていたと思う。特に私見では、冒頭1/3がツカミに欠けていた。正直キツかった。しかし中後盤2/3はまぁ盛り上がる。惹きつけられた。スキだ。許そう。
 中後盤2/3は、敵の軍閥ティターンズによる月面都市へのスペースコロニー落しを阻止せんとする攻防戦!
 敵の少女サラと主人公カミーユの、同じ月面都市での逢瀬および、彼女が爆弾テロリストであったという顛末!
 ラストバトルに第三勢力・初作の敵ジオン公国の残党アクシズの大部隊とその首魁の女傑美女ハマーンも介入!
 と、3つのヤマ場が存在していた(小ヤマ場は除く)。イベントがあっても弛緩していたTV中盤を、よくぞここまでサスペンスフルに! と大感心。初作劇場版第2作『哀戦士』が、壮年敵将との局地戦〜大規模戦への参画〜女スパイ〜軍本部での大攻防、と4つの物語の連なりだったことを思えば、特に本作が煩雑ということもないハズだ。
 が、世間の評価を見聞するに、後半の展開の妙(?)にふれてる奴は皆無。ヒロインが宣伝上も緑短髪フォウなのに、脇役だったハズのピンクの髪のサラが尺的にも実質ヒロインだったってことに、大騒動ってトコですか?(笑)
 フォウ嬢がスキな大勢には悪いが、劇場版の主眼がTV版の健全化であるなら、あんなイカレた低音ボイスの病的少女の強化人間フォウより、サラに比重を置くのもむべなるかな。てか、筆者にはTV版フォウ人気に作品同様、初作の下世代が自分たちの祭りや神輿を欲して過剰に持ち上げたヒイキの気配を感じてる。それとフォウを演じたのが当時、大人気だったトップアイドル声優島津冴子だったことが後押ししていることも否めないだろう。
 もちろんコレらは筆者の独断と偏見だと断るけど、筆者にはフォウの顛末が初作のヒロイン・ララァに相当するロマンスの段取り&水増しにしか見えなかったものだった。
 ついでに云えば、名作とされ多くのファンが涙したTV版フォウ再登場&死の回も……、連邦軍(実質ティターンズ)の新本部キリマンジャロ要塞に、難なく主人公は潜入できるワ再会できるワ初作ヒロインと相似形で死ぬワで、アキれ果てたものだった(むかしマニアの上映会で、この回で泣いていたコもいて心を打たれたけど……、ゴメンな)。
 ネットを見ると、舞台挨拶で富野監督はフォウはアレで終りと明言。確かに死んだとしか見えないしフェイントでないならそーだろう。でもTV版の初退場時だって、死んでるようにしか見えなかったけどネ(ファースト『ガンダム』はともかく、現在の『機動戦士ガンダム SEED DESTINY』(04年)どころか『Z』の時点でも、既にヒトの生死に関わるご都合はやってたョ)。
 ただフォウを実質殺す(?)、敵将ウッダー大尉の特攻に部下が付き従う、信望篤いトコが残っているのはビミョー。悪くはないけど、同時に死ぬフォウの比重がウスまるゾ。
 初作好敵手で続編主人公の先輩たるシャアが、ダカールの地でする地球連邦議会での演説は省略? と思いきや、資料では、本作ラストのアクシズ参戦後がキリマンジャロダカール編。ま、筆者はあの演説の内容自体にも説得力を……(以下略・笑)。
 以上、TV版の悪口。ただ劇場版本作は、中後盤ヤマ場以外にも滋味あるシーンが結構ある。そこがまたスキだ。
 「(キスのとき)サングラスは外してくれないの?」とか、シャアに失望してももたれかからず、シャアのことを余裕を持って大笑している茶髪短髪レコア姐とか、放映時はともかく監督発言や批評で深化した、シャアが女を最後まで面倒見ないイザとなると逃げてるダメ男ぶりの描写に失笑。
 ブライト艦長がカツ少年をそっちの船で使ってくれと頼むや、女に不器用デコのアゴ鬚ヘンケン艦長が、マジメ媚びてない系、でも女っぽい黒髪短髪エマ姐を、交換で自艦によこしてくれ発言も、公私混同だけどもスナオに笑える。
 ブライトが会議中、カミさん子供の動画を秘かに見ていて、それに気付いた一応の正義側エゥーゴヘの出資者・痩身銀髪背広のオジさんウォンの「(動画を)消すこともない」発言とか、ウォンさん子供らに自販機ジュースをおごる図とか、コイツらいたっけ程度のキャラにも追加&修正で、劇場版では血肉が増している。
 そう、コレらこそが初作にあってTV版『Z』に欠けていた、やっても失敗していた要素(生活臭や人間臭)の復活だョ!
 ただ、金髪美少女ベルトーチカの前作主人公アムロへの媚び接近とか、前作女性キャラ・ミライさんとアムロの会見に、新主人公カミーユが迎えに来て、そこでヒロイン・フォウと邂逅とか、TV版よりはイイけれど、映画の導入部としては何か散漫。
 ……でもTV版同様、やはり判りにくい作品なのかナ。好意的に本作を見んとする筆者も、広いイミで『Z』(富野)の重力の井戸に魂を奪われた人間か。TV版は愛さないけど(クドい?・笑)、この本作に関してだけは愛したい。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.38(05年12月30日発行))


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