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CSにて懐かし舶来アニメ『ドラ猫大将』(61年)放映! 〜40年ぶりの再会。ベトナム戦争直前の黄金時代のアメリカ 〜今では大家の豪華喜劇人による失われし江戸弁での吹き替え!

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[アニメ] 〜全記事見出し一覧


21世紀に再見する「ドラ猫大将」への考察

(文・Y.AZUMA)

多チャンネルの大恩恵

 ケーブルテレビ会社のキャンペーンで安く工事をやってくれたため、我が家に若干のCS放送も入る多チャンネル時代を迎えてからもう一年になる。


 工事が入るまでは「またつまらない道楽を」と我関せずという態度だった妻も、実際に茶の間のテレビに何十局ものチャンネルが映るようになると、ケーブルテレビを楽しみにするようになった。
 毎月送付される番組案内表は、到着したその日に目を通し、見たい番組にはピンクのマーカーを塗っている。とにかく、多チャンネルは家庭生活の一部になっているのである。


『ドラ猫大将』ほぼ40年ぶりの再会

 そんなチャンネルの中の一つ、アメリカのマンガばかりを流している「カートゥーンネットワーク」でこの三月からハンナ・バーベラの四本立てが始まった。
 その二本目に流れ出したのが、『ドラ猫大将』(61)である。
 ひまに任せてつけて見たら……、懐かしさと新鮮さと面白さと驚きと、とにかく複雑な感情が私の心に湧き上がってきたのである。そんなこんなを取り敢えず報告することとする。


簡単なストーリー紹介

 本作品、ご覧になったことのない人(たぶんほとんど見てないと思う)のために簡単にストーリー紹介。


 たぶんニューヨークの裏通りの一角、ドラ猫横丁のゴミバケツに住むネコのドラ猫大将が本編の主人公。
 彼は電柱に取り付けてある警察電話を無断使用し地域担当の警察官のデイブルさんに怒られてばかり。
 そこに友だちのネコ、ベニ公(本名:ベンジャミン)が妙な問題や変なモノをもって現れる。
 それをめざとく見つけた大将がそれを元に一儲けしようと、仲間ネコ(チューチュー、おタマ、クロヘエ、サンタ)を呼び集めて、一計案じる、と言うのが基本的なストーリーの骨子。


 たいていの場合、うまく行きかけたところで大将のおバカな作戦ミスやうぬぼれで一攫千金や億万長者の夢がパアというオチとなり、エンディングが流れる一巻30分モノのアニメである。
 1961年の作品。日本での放映は1962年である。


キャラクター紹介

 ついでにキャラクター紹介。

ドラネコ大将(Top Cat)

 ドラ猫横丁の大将。毛並みは黄色、赤のチョッキとカンカン帽を着用。
 五匹のネコを従えるほど統率力があり、地元の警察官・デイブルさんともサシで話ができる人望のあるネコ。貧困層出身であるために当然出世欲や金儲けへの欲望は人一倍あるが、お人好しでツメが甘いが故にいつも後一歩のところでおジャンになるそんな性格。そのためますます仲間に好かれている。

デイブルさん(Officer Dibble)

 ニューヨーク市警の巡査。通常は制服を着用。
 ドラ猫横丁が担当。ぼつぼつ恩給が貰えそうな年齢であるため、若さと欲望を余している大将たちが悪いことをしでかさないかと常に目をかけている心やさしいお巡りさん(多分巡査)。大将たちがしでかすインチキやイタズラにいつも悩まされる。

ベニ公(Benny the ball)

 ドラ猫大将の友だち。毛並みは青、白のブレザーを着用。
 ドラ猫大将に妙な問題を持ちかけてくることが多い彼は、他の仲間たちとはちょっと別格扱いのネコ。ちょっと背が低い。「無欲の勝利」は彼のためにある言葉。

チューチュー(ChooChoo)

 ドラ猫大将の仲間。毛並みはピンク、しっぽの先が黒。白のタートルネックを着用。
 ちょっとアンニュイな物言いでシャイな性格な彼は、大将の仲間たちの筆頭扱い。

おタマ(The Brain)

 ドラ猫大将の仲間。毛並みはオレンジ系。この時期よりすでにTシャツ着用。
 頭があったかい彼の言動は、往々にして大将の作戦を多いに狂わせる要注意人物。しかし、本当はお話を面白くしてくれる無くてはならないキャラクター。

クロヘエ(Spook)

 ドラ猫大将の仲間。毛並みはオリーブドラブ色系。黒のネクタイを着用。

サンタ(Fancy Fancy)

 ドラ猫大将の仲間。毛並みは茶色系。しっぽの先が黒。白いマフラー着用。


豪華絢爛・声の出演

 声の出演が、こいつがまた豪華版。


・大将 → 谷幹一
・デイブルさん → 前半 長門勇、後半 田の中勇
・ベニ公 → 三遊亭歌奴(現在の三遊亭円歌
・チューチュー → 柳家小ゑん(現在の立川談志
・おタマ → 向井真理子
・クロヘエ → 和久井節緒
・サンタ → (残念ながら照合できず。よく聞く俳優さんなんだけれど)(後日編註:名優・長門勇で、デイブルさんと二役のようです)


 21世紀の現在の視点では、皆さん、それぞれの場所の大御所ばかり。
 円歌師匠は現在、社団法人落語協会会長に上り詰めている。
 談志師匠は立川流家元におさまってしまった。
 谷幹一長門勇は浅草軽演劇出身で喜劇界の大看板になっている。
 田の中勇は「目玉おやじ」として日本じゃ知らない人がいない声優だし、向井真理子マリリン・モンローが当り役である。
 思いきりドラ猫声(これはエノケン師匠の称号とか)の和久井節緒さんは惜しくも73年1月18日に亡くなられたようだ。


大将たちの話す言葉

 この二癖も三癖もあるおじさんおばさんが二十代駆け出しの時期の仕事である。面白くない訳がない。
 前半での大将とデイブルさんと掛け合いは、そのまま浅草フランス座の舞台のコメディだし、ベニ公は落語に出てくる商家の若旦那、チューチューなんか見事に東京の職人言葉である(「ねぇタイショ」なんて最後に「ウ」がつかないところなんて正当な東京語である)。


コメディのセンス

 アメリカのコメディ映画には詳しくないけれど、この作品はアメリカのスラップスティックの伝統を全て背負っている作品である。その作品の声を江戸落語・東京軽演劇の未来の大器が声を当てているのである(21世紀の未来になってから言っているのだから間違いはない)。日米二つのコメディ文化のミクスチュアである。


大人対象のシチュエーション!

 出てくるシチュエーションも振るっている。


カーネギーホールのオーディション
・ハワイへ船で旅行
・プールバー(例のビリヤード場のことよ)
・ハリウッドの監督がスカウト
・億万長者が遺産相続人を捜索
・病院にもぐりこむため担当医の専門の難病のふりをする
・憧れのハリウッド女優に恋焦がれ、セントラルパークの池で入水自殺を試みる
・外国の大金持ちからお金を貰うため高級ホテルにもぐりこむ
・ピザ屋のオープンにグルメなレストラン評論家がタダ飯を食らいに来る
・図書館で六法全書で法律のすきまを探す
・悪徳株屋が貧乏人の小金を騙し取る


 これらのシチュエーションは、四十面下げた今になって初めてわかるものも多い。かなり大人の世界な話である。
 果たしてこんなに難しい内容を学齢前後の子どもたちがわかったのかと思う。試しに、再放送時この番組を一生懸命に見ていた当時六歳の私に心の中で尋ねてみた。返ってきた答えは、「それなりにわかっていた」とのことであった。「なんだかよくわからないけど「大人になればわかる仕組み」の中で大将が失敗したことが面白かった」そうだ。


40年前のニューヨーク 自信にあふれる風景

 作品が出来たのは1961年。この頃のアメリカは、若くて希望に満ちたJ=F=ケネディが大統領で、キューバ危機の回避により共産主義とは一旦手打ちを済ましたばかりで自信にあふれている。その国の一番大きな街、ニューヨークが舞台である。
 作った人たちは意識しなかったんだろうけど、この国の豊かさがアニメのセルの上に次々と描かれている。
 プールバーやピザ屋やアメリカンコーヒーのサーバーなんて、放映後二十年以上経たなければ日本に上陸しないし、我々の日常生活に定着したのはつい最近である。そんな豊かさは、文字通りブラウン管の向こう側の漫画の中のお話だし、その当時は日本も考えてみれば貧しかったわけだ。
 しかし、アメリカも変わってしまった。
 ベトナム戦争による退廃やドラッグ中毒の蔓延、新中間層が解体するその後のアメリカを知っている私たちにとって、大将たちのいる世界は単純で底抜けに楽しい楽園である。多分私の憧れる、そして好きな「アメリカ」は大将とデイブルさんのいるニューヨークのドラ猫横丁なのだろう。
 仕方がない。大将と同様に金がない私たちは、ケーブルテレビで流されるドラネコ大将の活躍を楽しむことでしか、「アメリカ」は満喫できないようだ。残念である。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2003〜04年春のアニメ号』(04年4月29日発行)より抜粋)


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