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『ULTRAMAN(ウルトラマン)』
(文・T.SATO)
出来はイイし、それなりに面白いとは思う。
でも、マニア連中といっしょに絶賛したくはない。
作品批評は基本的には、作品の内実・クオリティを主眼にして論じるべきではある。しかしそれが全てではない。
作品外のこと。周辺から、内は作り手の内的必然、上はメタ、下は台所事情、果ては商業的成功まで、目配せしてこそ、総合的な作品評価たりうるとの考え方も成り立つ。
本作は、初期特撮マニアが70年代後半から夢見てきた、ハードでシリアスでリアルでアダルティな本格志向のジャンル作品の、もっとも良質な部類の成功作だ。
劇中事件の規模は、若干ミニマムだけど、平成『ガメラ』3部作(95〜99年)や、『ゴジラ モスラ キングギドラ大怪獣総攻撃』(01年)のクオリティを、ある点では上回る(とはいえ、マニア間で世評高いこれらの作品を、筆者個人はあまり評価はしてないが)。
オトナの眼で観ても楽しめることは認める。今やマスコミを『ガンダム』世代が占拠しているが、それ以前の怪獣世代しかまだマスメディアに進出していなかった80〜90年代初頭までに、本作のような高い完成度を持つ作品が登場すれば、スゴいインパクトもあったろうし、サブカルメディアで大きく扱われることもあったかもしれない。
しかし、ウェザリング(汚し塗装)的リアルこそ至上といえた素朴な時代もすぎて、平成『ライダー』的なオシャレなアダルトさや、平成『戦隊』的なチャイルディッシュでもポップな楽しさも評価されるように成熟し、現実に若いオタクや女性層に子供たちの支持をも集める今日に、本作がジャンルの未来を切り拓(ひら)く作品だとも思えない。
何より本作を幼児が観て面白い作品だとは思えない。『ウルトラ』が児童間でブームで、彼らの子供番組卒業期にブツケたなら効果的だろうが、今そんな畑はない。
また角川春樹や奥山和由が作るならスゴそうだという世間の空気の付加価値をまとえようが、バンダイビジュアルのサラリーマンプロデューサーが本作の脚本に感動したからってネ〜(笑)。
あと子役の登場をジャンルファン勃興期の初期特撮マニアはイヤがったものだが、本作にそーいう声が出ないのは(『劇場版ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』(01年・飯島敏宏監督)の評価にもいえるけど)、彼らが歳を喰い子役に寛容に(ニブく?)なったということだろう。それで構わないとも、二重基準でオカシイともいえる。
イイ物を作れば客が付くとはいえない。それはミクロ経済であってマクロ経済ではない。客のレベルの需要に合致した供給。作品の単独評価とは別に、今作るべきは、本作のような方向性ではナイだろうと確信もするのだ。
『假面特攻隊2006年号』「ULTRAMAN」関係記事の縮小コピー収録一覧
・中日スポーツ 2004年10月24日(日) 華やかに開幕 〜国際映画祭・紋付き袴で正装したウルトラの父・母・初代マン・ネクスト
・朝日新聞 2004年3月23日(火) 岐路の最前線5 自衛隊50年 メディア戦略 若者照準、映画に協力 〜自衛隊の近年ジャンル映画協力「ゴジラ×メカゴジラ」「劇場版 仮面ライダー剣」「ULTRAMAN」
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