冷凍怪獣マーゴドン登場
(作・石堂淑朗 監督・満田かずほ 特撮監督・佐川和夫 81年3月25日放映)
(視聴率:関東11.3% 中部14.5% 関西14.7%)
(文・久保達也)
(2011年11月13日脱稿)
本作における怪獣退治の専門組織・UGMが単独で怪獣を撃破! ウルトラマンが実質登場しない最終回! 最後の最後でこんなにも異色な、しかしてテーマ的には高度でもある名作エピソードが登場するとは! 傑作認定には異存はない。しかしてそれは諸刃の剣(もろはのつるぎ)でもあるのだ。そしてこの最終回は、子供たちにも楽しめるエピソードであったのだろうか? この最終回の高邁(こうまい)さと問題点を腑分けして解析してみよう。
ナレーション「九州の南原市、今まさに春の真っ盛りであった。暖かい日差しを浴び、動物たちもノンビリとしていた」
おそらく宮崎県あたりの都市をモデルにしたと思われる架空の都市のイメージシーンで導入部は幕を開ける。ミニチュアの田園都市を上空から「俯瞰(ふかん)」で見下ろしたあと、桜並木や一面の菜の花畑、海岸で戯(たわむ)れる家族の姿など、「春」をイメージさせるカットを連続させて、キリン・アシカ・鳩・ペンギンなどの実写映像の連発で近辺に「動物園」が存在することも、視聴者にイメージさせていく。
ナレーション「ところが、平和なこの町に、奇怪な事件が待っていた!」
ビル群を背景にして、ロン毛にアゴひげを生やして派手な赤いネクタイが目立つ背広姿の胡散(うさん)クサさプンプンの紳士が歩く姿が、真横からバストアップで捉えられる。一瞬、まるでこの男が「奇怪な事件」を巻き起こすかのように視聴者を錯覚させる。しかしこのあと、この男は「被害者」となるので、別にごく普通の平凡なサラリーマンを描けばよいワケなのだが、そこはちょっとしたフェイク演出・兼サプライズ演出によって作品へのツカミとしているのだ。
下から見上げた「煽(あお)り」で撮影されたミニチュアのビル街の上空から白い気体が静かに舞い降りてくる。
胡散クサい紳士が首を傾(かし)げていると、周囲のビル群が次々に凍りついていった!
画面手前の中央には街灯、その両端にヤシの木が画面の奥の方へと林立、その奥にはビル群という、奥行きを感じさせるミニチュアの街が、白い冷気を浴びて一瞬で凍っていく!
この異常事態に伴ってサイレンの警報音が挿入され出すのがまた尋常ではない不穏感も醸(かも)し出していく。
上空から俯瞰されたミニチュアセットが白い冷気を浴びてみるみる凍結していくサマを見せつけたあとに、水道やその下に置かれている洗面器の水が凍る描写をはさんで、水槽で泳いでいる金魚の映像を静止させて、水槽ごと金魚が白く凍結してしまうという表現。さらには動物園のライオン・キリン・象などが全身ツララで覆われた氷のオブジェと化した姿がミニチュアで描かれることで、瞬時に万物が凍結したことが示唆される……
・初代『ウルトラマン』(66年)第25話『怪彗星ツイフォン』に登場した冷凍怪獣ギガス
・『ウルトラセブン』(67年)第25話『零下140度の対決』に登場した凍結怪獣ガンダー
・『帰ってきたウルトラマン』(71年)第40話『冬の怪奇シリーズ まぼろしの雪女』に登場した雪女怪獣スノーゴン
・『ウルトラマンA(エース)』(72年)第42話『冬の怪奇シリーズ 神秘! 怪獣ウーの復活』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070209/p1)に登場した氷超獣アイスロン
・『ザ★ウルトラマン』(79年)第1話『新しいヒーローの誕生!!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090505/p1)に登場した冷凍怪獣シーグラ
それまでの昭和ウルトラシリーズにも、冷凍怪獣は登場してきた。
上記はビル街のセットが組まれない山間部や平原などに登場した冷凍怪獣の例だが、
・『ウルトラQ』(66年)第14話『東京氷河期』に登場した冷凍怪獣ペギラ
・『帰ってきた』第39話『冬の怪奇シリーズ 20世紀の雪男』に登場した雪男星人バルダック星人
・『ウルトラマンタロウ』(73年)第36話『ひきょうもの! 花嫁は泣いた』に登場したねこ舌星人グロスト
など、都会を凍らせた冷凍怪獣の事例も存在してはいる。
今回は最終回で、次回以降の撮影での都合を考慮する必要もないことからか、特撮スタジオの背景であるホリゾントの空の色もまさに「真冬の空」を思わせる「やや薄暗い青色」に塗られている――広大なホリゾントの全面をスプレーで塗装したり、また青空に塗り直して乾かすのにも数日は要することだろう・汗――。70年代初頭のフォークソング、70年代後半以降はニューミュージック、それ以降も日本の音楽シーンを牽引してきたシンガーソングライター・井上陽水(いのうえ・ようすい)初期のミリオンセラー歌曲(73年)ではないが、まさに「氷の世界」といったところだ。
オオヤマ「九州の南原市が突然の異常寒波に襲われた。小坂隊員」
ユリ子「はい」
オオヤマ「気象班としての意見は?」
ユリ子「原因はわかりません。ひょっとすると……」
・第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110101/p1)では大気の層の温度差によって生じる光の屈折である「逆転現象」
・第47話『魔のグローブ 落し物にご用心!!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210224/p1)では「オゾン層」
科学的なレクチャーをする際には、石堂脚本回では小坂ユリ子隊員が気象班の面目躍如(めんぼくやくじょ)とばかりの活躍を見せることが多い。
イケダ「な~に。もし怪獣だったら、オレたちUGMが一発でなぁ、ポ~ン!! アハハハハ……」
イケダ隊員はフジモリ隊員に頭突きをカマすポーズを見せて、それに対してフジモリ隊員はイケダ隊員の頭にゲンコツをカマすポーズを見せる。ノーテンキに爆笑するふたりだったが……
オオヤマ「イケダ! フジモリ! 軽々しい口を叩くな!」
イケダ「ハイ!」
フジモリ「はぁ……」
返事の仕方ひとつを取っても、両者のキャラクターの描き分けをすることも忘れない(笑)。
オオヤマ「果たしてこれまで怪獣を倒してきたのは、本当に我々だっただろうか……? とにかく南原市に異常事態が起こっている。いつでも出動できるよう待機だ!」
一同「了解!」
「これまで怪獣を倒してきたのは、本当に我々だっただろうか……?」。さりげにウルトラシリーズの根源的な問題点についてサラッと言及してみせている。そう、ウルトラシリーズで怪獣を倒してきたのは、怪獣攻撃を旨(むね)とする地球人による防衛組織ではなく、それは基本的には巨大超人である宇宙人・ウルトラマンが倒してきたのだ。そして、それはまた地球人による防衛組織の存在意義、ひいては地球人自身による努力自体は基本的には徒労であるどころかムダでさえあるのかもしれない……という疑問符は、幼児はともかく児童であれば誰もが脳裏には微量に浮かんでいて、時に口に出してさえいる(爆)根本矛盾ですらある。
この一連の場面では、一同がそろっているUGM作戦室を螺旋状の階段の踊り場越しで捉えている。いつもとは異なった凝ったカメラアングルを採用することで、いつもの舞台でありながらも、いつもとは異なる深刻なムードを微量に生じさせる「異化作用」も発揮して、映像面でも画面への求心力を高めていく……
続けて、UGM広報班のセラ隊員が司令室に入室してくる。その際、赤いランプが明滅している計器盤を画面の下手前に配して、それ越しの煽りで一同を捉えてみせるといった、さりげに凝ったカメラアングルの連発も!――一般に人々は赤ランプに警告的な意味を感じてしまうものなので、それが視聴者にも通常回とは異なる微量な不穏感をも増している――
「実は企画書を作っている段階から、全体の3分の1くらいは自分で監督したいと思っていたんだよね。ところが社内のプロデューサーはみんな手いっぱいの状態だったので、結局自分がやらざるを得なくなってしまった。それでも途中で監督できるだろうと思っていたんだけれど、番組が始まったらもう準備、準備で忙しくて。それで結局最終回になっちゃったわけ。最終回なら次の準備もないからね(笑)」
(タツミムック『検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版・06年2月5日発行 05年12月22日実売・
ISBN:4777802124)プロデューサー・監督 満田かずほインタビュー)
本作『80』では円谷プロ側のプロデューサーを務めていた満田氏がウルトラシリーズを監督するのは、実に『ウルトラマンA』(72年)第1話『輝け! ウルトラ五兄弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060514/p1)~第2話『大超獣を越えてゆけ!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060515/p1)を、筧正典(かけい・まさのり)監督と共同で担当して以来のことである。本来は監督出身である満田プロデューサーによる今回の本編演出は、久しぶりの登板で以前から試してみたかったのであろう奇抜なカメラアングルなど、実に本領発揮といった感もある。結果的にこの『80』最終回が氏の監督作としては最後のものになってしまったが……
セラ「南原市の住民はみんな避難したそうです」
オオヤマ「ン」
作戦室から出ていくオオヤマキャップ。
しかし、振り向きザマに矢的をジッと見つめることで、ふたりの間に緊張の時間が流れる!
矢的「(心の声)キャップは何かを心に決めているようだ。もしかしたら、ウルトラマンエイティの……」
もちろんこのセリフは、「キャップはもしかしたらウルトラマンエイティの正体が僕(矢的)だと見抜いているのかもしれない……」という意味である。しかし、それを皆まで云わせないのがミソなのだ。そして、幼児はともかく児童であれば、その省略されて口にはしなかった発言が何であったのか? といった程度のことは容易に推測がつくだろう。
劇中内ではこの時点ではあくまでも矢的の仮説にすぎない。しかも、その仮説もハッキリと言明されてしまっては、後々のストーリー展開もまたミエミエとなってしまって、ここでシラケさせてしまったことだろう。のちのストーリーの伏線として機能させつつも、ミエミエのストーリー展開にさせるワケにもいかない。その中間の微妙なあわいに位置させる塩加減とするためにも、このセリフの末尾は省略技法こそが望ましい……
しかし、それだけでも視聴者に与える「印象」としてはやや弱くなってしまう。そのせいだろうか次のシーンでは、内心では自身の正体がウルトラマンエイティであることがオオヤマキャップにはバレている懸念を浮上させていた矢的のバストショットに対して、画面左右の両サイドから「UGM」のロゴが入った自動ドアが閉じてきて無情にもピシャッ! と閉まってしまうというプチ・ショッキング演出も!――シナリオではなく本編演出側での裁量だろうと憶測――
矢的とオオヤマキャップの間に生じた小さな「距離感」が、そして本エピソード自体にも小さな「不穏感」を生じさせる演出でもある。これは別に両者の決定的な「決裂」や「対決」を描いているワケではない。
けれど、「娯楽活劇作品」や「変身ヒーローもの」といった範疇を超えた「人間ドラマ」一般というものは、このような小さな「不和」や「不穏」にもスポットを当ててみせて、そこで人間同士の葛藤(かっとう)ドラマをつくって、視聴者にも何かを感じさせていくものでもあるのだ。
そのころ、南原市に全身がフサフサとした白くて長い体毛で覆われた、古代に絶滅した寒冷地帯の象・マンモスが巨大変異化したような化け物と形容するのがピッタリな冷凍怪獣マーゴドンが出現していた! 南原市を「氷の世界」にしたのは、細長い鼻から冷凍ガスを、全身からは白い冷気を噴出する、この怪獣の仕業(しわざ)だったのだ!
基地アナウンス「UGM、発進ゲートへ! UGM、発進ゲートへ!」
点滅する赤い警報ランプがアップで撮られて、その赤い光に顔面が照らされているイトウチーフが、
「行くぞ!」
とヘルメットを小脇に抱えたUGM隊員たちを先導して、基地内の通路を画面手前に進んでくるサマは、怪獣退治の専門家集団である彼らのカッコよさが、久々に引き出されてもおり、実にヒロイックな場面に仕上がっている。
そして、本作『80』のシリーズ後半では長らく流用されてこなかった、戦闘機がズラっと並んでいてその中を作業用の車両も行き交っている様子までもが確認できる、地球防衛軍・極東エリア基地の広大な野外飛行場をガラス窓越しに眺望しながら、その手前には管制塔内でパネル操作をしながら通信もしているオペレーターたちを合成したバンクフィルムも久々に流される。そのバンクフィルムと、戦闘機シルバーガル・スカイハイヤー・エースフライヤーの発進場面、それら各機に搭乗するオオヤマと矢的・フジモリ・イケダ・イトウの姿を交錯させていくという、実にカッコいいワンダバ演出!
――公式設定か否か、企画書にも書かれていたか否かは不明だが、『80』放映開始当初の児童誌『てれびくん』には、この極東エリア基地は神奈川県厚木市(あつぎし)付近にあるというキャプションが付いていたと記憶する。いわゆる広大な飛行場を有している米軍厚木基地に措定(そてい)させているのだろうが、『80』の世界ではこの厚木基地が日本に返還されているのだろうか?(笑) 『80』第1クールの「学校編」の舞台を東京都世田谷区あたりだとすると、矢的が都心からUGM基地に移動するのにも1時間くらいはかかってしまいそうだが(汗)。余談になるが、厚木基地は実際には厚木市には存在していない。厚木市の東側の2つ隣の市町村に所在しているのだ・笑――
シルバーガル1機・スカイハイヤー1機・エースフライヤー2機が4機編隊で飛行する!――それらを側面から撮影したカットでは、画面の手前に鉄塔や工場の煙突なども配置する――
・マーゴドンが長い鼻から冷凍ガスを吹きかける姿!
・凍りついたビルに合成で黒いヒビ割れが入る描写!
・爆発四散するビル!
凍結した地面をスベるように(!)ビルへと突進していくマーゴドン!
その画面の手前には、例によって「歩道橋」「電話ボックス」「民家」などのミニチュアも配置することで、対比としての「奥行き」と怪獣の「巨大感」もが強調されている。
当のUGMが九州へと急行しようとしている間にも、マーゴドンは猛威を奮い続けている! といった時間の流れも感じさせており、いやがおうでも緊迫感を煽り立ててくる。
画面の左奥にいるマーゴドン、その手前に広がる凍結した市街地、そこに画面の右手の方からスカイハイヤー・シルバーガルが飛行してくることで、UGMがようやく現地に到着したことも表現されている。
オオヤマ「全機攻撃!!」
合図とともに、操縦悍が左に切られる描写のあと、4機が一斉に画面の手前に向かって、きれいに並んで降下していくサマも映し出される。
第47話『魔のグローブ 落し物にご用心!!』評(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210224/p1)でもそのインタビューを引用させていただいたが、同話の監督を務めていた東條昭平(とうじょう・しょうへい)監督は、佐川和夫特撮監督のことを「飛行機の飛びをやらせたら、あの人はピカイチ」だと賞賛していた。佐川特撮監督がパイロット編の特撮を担当した『ウルトラマンA』(72年)第1話『輝け! ウルトラ五兄弟』や『ウルトラマンタロウ』(73年)第1話『ウルトラの母は太陽のように』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)でも、いわゆる戦闘機の「飛び特撮」が印象的だった。1960年代後半に製作された第1期ウルトラシリーズ至上主義の風潮が特撮マニア間では強かった20世紀のむかしでも、佐川特撮監督による気持ちのよい滑空表現を達成した戦闘機の特撮だけは、彼らの間でも実に評価が高かったことをも思い出す。
矢的「発射!!」
オオヤマキャップが操縦するシルバーガルの後部座席で、マーゴドンに向けて攻撃ボタンを押す矢的隊員!
イケダ「発射!!」
エースフライヤーに搭乗しているイケダ隊員も、マーゴドンに攻撃を加える!
イトウ「発射!!」
イトウチーフが搭乗するもう1機のエースフライヤー! そのコクピットからの主観アングルでマーゴドンに迫っていくという特撮カットも描かれる!
続けて、シルバーガルの操縦悍が右に切られる様子がアップで映し出されて、シルバーガルが右旋回していく描写、加えてマーゴドンに攻撃を仕掛けるといったカットの連続も!
フジモリ「発射!!」
フジモリ隊員が搭乗するスカイハイヤーがマーゴドンを攻撃!
だが、マーゴドンはUGMが浴びせる攻撃をすべて体内に吸収してしまうのだ!
マーゴドンの着ぐるみから着火した火薬のフィルム撮影を逆回転させているだけの映像であるのは、当時の子供たちにもミエミエで、ややショボくはあるのだが(笑)。
スカイハイヤーの操縦悍が上へと切られる描写がアップで映し出されたのに続いて、スカイハイヤーがマーゴドンの手前で急上昇!
フジモリ「これは驚いた!」
マニアの視聴者もそう叫びたくなるほど(笑)、今回の満田かずほ監督による本編演出は、おそらく氏自身が少なくとも戦闘機特撮とのカットバックが必要となるシーンについてだけは、特撮カットも含めて「絵コンテ」を描いて、それに合う戦闘機カットを佐川和夫特撮監督に撮ってもらうように指示出ししていたのだと推測する。
もちろんフジモリ隊員が驚いていたのは、本編と特撮を融合させた戦闘機特撮のことではなく、マーゴドンの特異な習性のことである。
イトウ「エネルギーを全部、吸っちまってるぞ!」
ついにオオヤマキャップが決断をくだす!
オオヤマ「垂直降下して怪獣に接近するぞ!」
矢的「キャップ! それはちょっとムチャじゃありませんか!?」
オオヤマ「人間にはできないというのか!?」(!)
矢的「(心の声)やはりいつものオオヤマキャップとは、なにか違う!」
「人間にはできないというのか!?」 それは学校でも習った文法用語で云うならば「反実仮想」の表現であり、「人間ではなく宇宙人にならばできるというのか!?」という意味をも言外には込めているのだ。
シルバーガルが垂直降下していく様子が煽りで撮られて、機体底部の前方1ヶ所・後方2ヶ所から白いジェットが噴出して浮遊する。
画面の左奥にはマーゴドンを配して、右手前にジェット噴出によって自由落下していく速度を低減させているシルバーガルが地上へと降下していく姿も捉えられる。そして、ここでも画面手前にはフェンスを配置することで、「遠近感」が強調されたカットとなっている。
オオヤマ「発射!!」
地上からマーゴドンへの射撃をはじめるシルバーガル!
だが、やはりマーゴドンはシルバーガルの攻撃をすべて吸収! 逆にシルバーガルに猛烈な吹雪を浴びせかけてきた!!
吹雪の勢いに押されて、地表を回転しながら吹き飛ばされていくシルバーガル!
オオヤマ「緊急発進!!」
矢的「了解!!」
オオヤマキャップが操縦悍を握りしめている姿が見えるシルバーガルのコクピットのキャノピー(風防ガラス)には、白いスプレーも吹きつけられて、空気中の水分が凍結して付着したサマも手を抜くことなくきちんと表現することで臨場感も高めている! 通常は固定カメラで撮影されがちな戦闘機のコクピットが画面右へと流れていく様子も側面から捉えられている。カメラだけを移動させているのか、スタッフ総出でコクピットのセットも押して動かしているのかまでは不明だが(笑)。
シルバーガルのアフターバーナー部分が光って、そこから離陸のためのジェットが噴射されていることが表現される!
白い冷気と吹雪の中で、後方から迫ってくるマーゴドンの巨体の脅威! マジでそのご尊顔がコワく見えてくる(汗)。
その手前を地上スレスレに画面手前に向かって飛行をはじめるシルバーガル!
画面の右奥には小さなシルバーガルを後方から捉える。
その左手前には意外にシッポが長く造形されていることがわかるマーゴドンの巨体を背面から撮影する。
畳み掛けるようなカットの連続が、オオヤマキャップと矢的に迫っている危機を煽り立てる!
矢的「ダメです! スリップして飛び上がれません!」
画面の奥にビル群を配した猛吹雪の中で、豪雪に埋もれた地表スレスレに手前を画面右へと滑走していくシルバーガル!
マーゴドンがその長い鼻から冷凍ガスを放つサマを側面からアップで描写!
シルバーガルの操縦悍を上方に引くサマがアップで捉えられる!
アフターバーナーを光らせて、画面右へと進んでいくシルバーガルを右後方から描写!
それに合わせて、オオヤマキャップが操縦するシルバーガルの実物大のコクピットが画面右へと移動していくかのように描写されていく!
画面の左手前には民家、中央手前には電柱、その電柱からは画面右方に向かって電線も伸びており、その下にはところどころに樹木が植えられた屏が並行して配置されている、立体感ある配置での特撮ミニチュアセット。
その中で、シルバーガルを追ってくるマーゴドンが画面中央の奥に背面から撮られている。
背景も見えないほどに真っ白になったミニチュアセットの中で、雪に埋もれた地上をスリップするかのように画面の右側へと進んでいくシルバーガル!
なおもシルバーガルに迫ってくるマーゴドンの表情が側面からのアップで映される!
画面の左奥にいるマーゴドンが、その前をシルバーガルが画面手前に向かって進んでくる!
もう何も見えないほどに、ミニチュアセットは白銀の世界となっている!
シルバーガルの操縦悍を上に引くサマが再びアップになる!
そしてシルバーガルのアフターバーナーが大きく光るサマがアップで映し出されることで、エンジンが最大出力でのジェットも噴射されていることを表現!
ナレーション「接近した怪獣を反動の壁にし(!)、シルバーガルはかろうじて脱出した!」
画面左奥にマーゴドンを配したミニチュアセットの中から、シルバーガルが画面右上空へと急上昇を遂げていく!
接近してきた怪獣自体を「反動」の壁とすることで、推進力を高めて脱出できたとするあたりもまた科学的なリアリティーを醸してくる。
本編班による操縦席のカットと特撮班による特撮カットを歯切れ良く切り替えて、「本編」と「特撮」を一体化させていく一連は、緊迫感も最高に煽り立てており、本エピソードの特撮面での最大の見せ場だと云っても過言ではないだろう。
ただし欲を云うならば、スカイハイヤーが設定では両翼と機首を折り畳んで「戦車」形態へと変型可能と設定されており、玩具もそのような変型機能を有しながらも、結局は劇中では未登場で終わっていたので、今回のようなシチュエーションでこそ「戦車」形態でのバトルを観たかった気もする――いかにも玩具的で非リアルではあっても、こういうところに子供たちも喜ぶものなので――。
無事に脱出に成功したシルバーガルに、イトウチーフが搭乗する戦闘機・エースフライヤーが左旋回しながら近づいてくる……
イトウ「キャップ、大丈夫ですか!?」
オオヤマ「大丈夫だ! いったん基地へ戻る。作戦の立て直しだ」
イトウ「了解!」
画面の左に飛行するシルバーガル、右にイトウチーフが操縦するエースフライヤー、左手からイケダ隊員が搭乗するもう1機のエースフライヤー、右手からはスカイハイヤーも加わって、4機がそろって画面手前に向かって飛行してくる、実にカッコいい編隊飛行の特撮カットもここで披露されている。
続けて、凍結したビル群や民家が立ち並んでいるミニチュアセットの左手前に、白い冷気ガスを吹き続けている怪獣マーゴドン!
その上空の画面奥には飛行している4機編隊のUGM戦闘機!
ここでも「奥行き」と「距離感」が強調された立体的な画面が「一幅の絵画」になっている感もある。
暴れ続けるマーゴドン!
その手前に配されている電柱から伸びている電線にまで、ツララがブラ下がっているあたりは(!)、たとえ特撮美術監督がクドクドと指示など出さなくても、特撮美術スタッフたちが最後にしてみせた自発的な頑張りだろうと思われる――おそらく彼らは美大(美術大学)などから集めてきた凝り性な学生バイトたちなのでは?――。
ナレーション「冷凍怪獣はマーゴドンと名づけられ、UGMの総力をあげて、データが分析調査された。そして、その結果が出た」
よくヌルい特撮マニアや怪獣映画世代の一般大衆が、怪獣に最初から名前がついているのはオカシい! そのへんの命名過程をていねいに描写した怪獣映画である平成『ガメラ』シリーズ(95~99年)はスゴい! なぞとのたまってきた。本エピソードにかぎった話ではないのだが、ウルトラシリーズでも時々、ゲスト怪獣に対する命名過程がていねいに描写されていたことは、賢明なる読者諸氏はご承知のことだろう。
そしてここでまた、オオヤマキャップ・イトウチーフ・ユリ子隊員の姿が見えているUGM作戦室が、階段の踊り場から俯瞰で映し出されている。画面左手前から階段を降りてきた星涼子隊員の姿も捉えられるが、いったん見えなくなって、しばらくしてから作戦室内にその姿を現わすといった、アングルの外にもある空間の広がりも感じさせる、実に凝った構図による演出もなされている。
「特撮」や「戦闘」といった見せ場でなくても、ちょっとしたアングルで、幼児やあるいは大人でも画面への求心力、ひいては作品への集中力を高めていくものなのだ。特撮ジャンルにかぎらず、映画やテレビドラマやアニメなどの映像作品全般の「本質」というものは、まさにこのさまざまな手練手管で――「映像」「会話劇」「ストーリー」「演出」「芝居」のもろもろで――、視聴者をまずは「画面」へと「吸引」していくことの絶え間のない連発、そして「画面」の中で生じている「時間」の「流れ」を局所的に切り取って引き延ばしたり、時に省略技法でちょっと先の時間へと飛ばすことでの「コンティニュイティー」、つまりは事物・被写体の「動き」や「流れ」や「継続」の一連のことでもあるのだ!
涼子「キャップ、最終データです」
オオヤマ「みんな」
計器に目を向けていたフジモリ・イケダ・セラが振り返って、オオヤマキャップに歩み寄ろうとする。
この3人の姿もまた、階段のフェンス越しに、踊り場からの主観で低位置にカメラを据えて撮られている。
オオヤマ「ああ、そのまま聞け。今度の怪獣は、地球のように炎のある暖かい星のエネルギーを片っ端から吸い取って冷凍にしてしまう、宇宙から来たスゴいヤツだ。一刻も早く怪獣を始末しなければ、日本はもちろん地球全体が確実に破滅して、暗黒の星になってしまう!」
この場面でのオオヤマキャップは、ユリ子隊員の背面越しの画面奥にいるかたちで撮られており――そのまた右奥にはイケダとセラの姿がある――、その手前のデスク中央にはUGMの宇宙戦艦・スペースマミーの模型が置かれて、その左に置かれた地球儀を先のセリフとともに回してみせる様子がアップで撮られることで、「アングル」と「小芝居」の両者も両立させている。ただし、この地球儀自体は子供向けの市販の安っぽいものに見えてしまうのがタマにキズなのだが(笑)。
オオヤマ「これは私も予想だにしなかった、太陽系全体の破滅に結びつくかもしれん。万一そうなれば、それは皆、我々UGMの責任だ。我々はこれまで色々な怪獣と戦ってきた。しかし今度のヤツこそ最大で最後のものだと思う。ヤツに勝てば、もうUGMは無敵だ!」
単なる「地球」規模での危機ではなく「太陽系」規模での危機! そのような言葉を使うことで、舞台それ自体は単なる九州の一地方都市ではあっても、最終回ひいては第3期ウルトラシリーズのいったんの終焉(しゅうえん)にもふさわしいスケールの大きさを、少しでも視聴者に感じさせようとしているのだ。
太陽系規模での大カタストロフを描いた作品といえば、アーサー・C・クラークによる古典SF小説『太陽系最後の日』(1946年)などが想起される。日本のSF小説であれば、「東京」には改称されずに「江戸」という地名のままで維新を迎えて西暦1999年へと至った並行宇宙の地球に、「太陽系消滅」の流言飛語が飛んだ末に、全宇宙の破壊と消滅をもくろむ幻魔(げんま)一族が襲撃してきて地球も滅亡! 幻魔に対抗できる超能力者たちを播種によって増やすために江戸時代にタイムリープすることで、分岐並行宇宙を創造する『新幻魔大戦』(1971年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160521/p1)なども想起する。
――ここで誕生した並行宇宙が、先行する「週刊少年マガジン」連載の1967~68年を舞台とした漫画版『幻魔大戦』(1967年・79年に小説化)や、また別の歴史のやり直しによる分岐並行宇宙での1979年を舞台とする『真幻魔大戦』(79年)の世界の母胎となっている――
ウルトラシリーズでも宇宙の星々をも食してしまうという超巨大怪獣である暗黒怪獣バキューモンといった存在が、本エピソードも担当した石堂淑朗(いしどう・としろう)先生の筆によって描かれたこともある。しかし、戦前生まれの世代一般に共通することなのだが、石堂先生にはやはりあまりSFセンスがなかったのだというべきか、あるいはそれを映像化してみせる同じく戦前生まれの特撮スタッフ側でのテクニックや映像イメージがやや貧困であったというべきか、設定相応にスケールが大きいストーリーやスペクタクルな特撮映像が達成できずに、いつもの必殺技・ウルトラブレスレットで打倒してしまうあたりで、肩すかしの感が否めなかったものではある……
この暗黒怪獣バキューモンの現代的なアップ・トゥ・デート版が、同じように星々を喰らってしまうほどの超巨大天体がラスボスの正体であった、後年の平成ウルトラシリーズ『ウルトラマンダイナ』(97年)の第49話、そのサブタイトルもそのものズバリである『最終章Ⅱ 太陽系消滅』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971211/p1)に登場した、地球の直径の2倍のサイズ(!)を有する暗黒惑星グランスフィアだろう。その暗黒惑星グランスフィアも結局は、渾身の力を振り絞ったとはいえウルトラマンダイナのいつもの両腕を十字に組んで放つ必殺技・ソルジェント光線で倒してしまえるのには、昭和ウルトラ同様のパワーバランス的な疑問が個人的には生じたものだけど(笑)。
イケダ「いやぁ、最悪の場合はウルトラマンエイティに……」
セラ「そうそう、ウルトラマンエイティ様におすがりして……」
怪獣退治の専門家としては職務放棄にも近しい不謹慎な発言だが、最終回でもその元からのキャラクターにふさわしく「笑い」をとろうとしてみせるふたり。手を合わせて頭を下げて拝んでいるポーズも含めて、息もピッタリの演技である(笑)。
オオヤマ「バカもん!!」
モノスゴい剣幕に、おもわず抱き合ってしまうイケダとセラ(笑)。
オオヤマ「もうウルトラマンエイティは現われない!」
鋭い目つきで矢的に視線をやるオオヤマキャップ!
ギョッとしてオオヤマキャップと目を合わせる矢的!
オオヤマ「エイティの助けはいらない! 断固としてエイティの力を借りないで、怪獣をやっつける!」
オオヤマキャップのただならぬ様子に、互いに見つめ合って再びオオヤマに目をやる、その正体はエイティでもある矢的隊員と同じくウルトラ一族の王女・ユリアンでもある涼子隊員。
フジモリ「キャップ、攻撃したエネルギーを吸収してすべて冷たくしてしまうんだから、手がつけられませんねぇ」
ユリ子「キャップ、冷たいものは原則として硬く、モロくなっています。その性質を利用した怪獣作戦はありませんか?」
イトウ「ウ~ン、硬くてモロいか。ウン、硬くてモロいのは、セラの頭ぐらいかな?」
セラ「硬いけどモロくはありません! ワァ~~~っ!!」
石堂脚本回でのイトウチーフ像は、武張っていて頭脳派ではないゆえにムズカしい科学的な話などはできずに、その手の話になるとトンチンカンな発言をしたり、理解ができずに眠ってしまったりするボケキャラ(笑)、つまりは場面の緊張緩和の役回りを与えられることが多かった。しかしこのシーンでは、「天然としてのボケ」ではなく、オオヤマキャップの剣幕によって生じた張り詰めすぎてしまった「場の空気」を、彼が逆にメンバー全員への「気遣い」「心配り」として緩和してみせようとして、あえて「演技としてのボケ」や「三枚目」を演じてみせている……といったあたりで、おそらくはその意味するところは異なるのだ。
この一連でも、階段の踊り場からの主観で、UGM隊員一同を捉えるアングルになっている。そのねらいは先にも指摘した通りだろう。
そんな作戦会議をしている最中にも、南原市では猛威をふるっている強敵怪獣マーゴドン!
立ち並んでいる街灯を手前に配して、画面の中央奥にあるビルに、マーゴドンは意外にもジャンプすることで、その巨体でのしかかってくる!
その体重でたまらず崩れていくビルの手前にも歩道橋を配することで、常に対比物も配置して画面構成を片時も単調にはさせていない。
イトウ「キャップ、こないだパトロールのとき、古いビルを壊していましたね」
首に巻いて下げる細い金属製の鎖(クサリ)がついたペンダントを示して、オオヤマキャップに語りかけてくるイトウチーフ。
ピントをボカしたイトウチーフのご尊顔の手前で、振り子のように揺れているペンダントがアップでピントも合っていく。
オオヤマ「そうか、ビルを壊すアイツか!」
ナレーション「ビル取り壊し用の鉄の球(たま)を使って、ジャイアントボール作戦が開始された。鉄の球で怪獣を打ち砕く作戦だ」
イトウチーフとイケダ隊員が搭乗するシルバーガルと、フジモリ隊員が搭乗するスカイハイヤーの2機が、左右からワイヤーで鉄の球を吊り下げて、南原市へと再出撃する!
画面下の手前にある鉄塔や工場の煙突などを「鉄球」がカスめるように2機が飛行していくという画面構図もカッコいい。
UGM作戦室でそれを固唾(かたず)を飲んで見守っているオオヤマキャップ・矢的・涼子・ユリ子・セラ。
オオヤマ「よし、次の揺れで行くぞ!」
イトウ「了解!!」
オオヤマ「よ~し、Go(ゴー)!!」
ここでまた、操縦悍を上に引く描写がアップで撮られる!
マーゴドンはシルバーガルとスカイハイヤーに冷凍ガスを浴びせかけてくる!
しかし、ここでシルバーガルのワイヤーから、鉄球を吊り下げていた鎖がハズれてしまった!!
イトウ「しまった!!」
冷凍ガスの猛威でたまらず地上へと落下していくシルバーガル!
その手前に配されている鉄塔越しに落下していくことで、常に画面に変化を付けてやはり単調にはさせないようにしている工夫も見て取れる。
イトウ「脱出!!」
イケダ「了解!!」
シルバーガルのキャノピーが開いて、細部までリアルに塗装されたイトウチーフとイケダ隊員の人形が脱出!
パラシュートも開くが、なんとホリゾントに描かれた雲をバックにしてではなく、白煙で表現された雲の中を人形が降下していくという、歴代ウルトラシリーズであまた描写されてきた脱出描写ともまた異なる特撮カットも、最後の最後である最終回だからこそか見せてくれるのだ。
イトウ「キャップ、ワイヤーがハズれて失敗しました! 別のシルバーガルでもう一度トライしましょう!」
オオヤマ「よし、オレも行く!」
しかし、UGMが苦戦している光景をモニターで目撃していた矢的と涼子が、勢いよく作戦室を飛び出していく!
無言でふたりに視線を送るオオヤマキャップ……
通路を駆けていく矢的と涼子。
先の通路のシーンでは、画面手前に向かって走ってくるかたちでUGM隊員たちが描写されていたが、ここでは逆に画面奥へと駆けていく矢的と涼子の後ろ姿として表現されている。同じ出撃でも「先んじて進んでいく勇ましい出撃」と「あとから追いかけていって後方支援」するといった相違を演出面でも象徴させてみせたといったところか?
UGMの赤レンガの外壁である建造物から出てきて、階段を駆け降りていく矢的と涼子!
矢的が手にした変身アイテム・ブライトスティックがアップで映し出される!
矢的「エイティ!!」
オオヤマ「矢的!!」
オオヤマキャップの突然の呼びかけによって、ウルトラマンエイティへの変身を阻止されてしまう矢的隊員!
同じ階段を駆け降りてきたオオヤマキャップの姿に、ブライトスティックを手にしたまま背中に隠すしかない矢的であったが……
オオヤマ「これまでウルトラマンエイティにはずいぶん助けられた」
それまでのウルトラマンエイティと怪獣たちとの決戦場面が回想として流れ出す……
・第1話『ウルトラマン先生』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100502/p1)より、青空を華麗に宙返りして、その勢いで月の輪怪獣クレッセントの胸めがけて両足で蹴りこんで、頭部にはチョップを見舞って、その両腕をL字型に組んで放つサクシウム光線でトドメを刺してみせるウルトラマンエイティ!
・第14話『テレポーテーション! パリから来た男』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100801/p1)より、両手から放つ光のカッター・ウルトラダブルアローでテレポート怪獣ザルドンの両肩や頭部のトゲを切断して、サクシウム光線を喰らわすウルトラマンエイティ!
・第18話『魔の怪獣島へ飛べ!!(後編)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100829/p1)より、吸血怪獣ギマイラの首にムーンサルトキックを浴びせて、木っ端微塵(こっぱみじん)に粉砕するウルトラマンエイティ!
・第22話『惑星が並ぶ日 なにかが起こる』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100926/p1)より、古代怪獣ゴモラⅡのシッポをつかんでブン投げて、サクシウム光線で葬り去るウルトラマンエイティ!
・第37話『怖(おそ)れていたバルタン星人の動物園作戦』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110108/p1)より、宇宙忍者バルタン星人5代目の両足をつかんで宙に放り投げて、巨大戦闘母艦に激突させるウルトラマンエイティ!
・第46話『恐れていたレッドキングの復活宣言』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210223/p1)より、どくろ怪獣レッドキング3代目に背負い投げを喰らわして、サクシウム光線で爆発四散させるウルトラマンエイティ!
クレッセント・ザルドン・ギマイラ。いずれも『80』では印象深い怪獣たちである。ゴモラⅡ・バルタン星人5代目・レッドキング3代目などは、歴代ウルトラシリーズでも人気が高かった復活怪獣たちの復活だが、『80』だけではなくウルトラシリーズのいったんの終焉をも象徴させることまで意図させるのであれば、復活怪獣たちのセレクトにも頷けるのだ。
これらの一連の回想場面のバックに流れるのは、『交響詩 ザ★ウルトラマン』第四楽章『栄光への戦い』の最終ブロック『勝利の戦い』であり、『ウルトラマン80』でもそのシリーズ後半ではエイティ反撃~勝利の特撮シーンを彩った荘厳かつ勇ましさもある名楽曲でもある。
この楽曲はもともとは、前作『ザ★ウルトラマン』(79年)の第19話~第21話『これがウルトラの星だ!!』3部作(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090914/p1)で、昭和ウルトラシリーズとはその世界観を異にする同作オリジナルのウルトラマンの故郷であるウルトラの星・U40(ユー・フォーティ)と、そこを舞台とする壮大なる敵味方の宇宙戦艦数千艘同士による宇宙大戦争を描くにあたって、荘厳なるBGMが必要と判断されたことで、追加録音用に作曲されたものであった。
1960年前後生まれのいわゆるオタク第1世代が青年期に達した70年代後半。『ゴジラ』シリーズや『ウルトラ』シリーズや大人気テレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74年・77年に総集編映画化・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101207/p1)、そしてあまたの旧作テレビアニメなどの再評価を目的とした本邦初の青年マニア向け書籍が雨後の竹の子のように発刊ラッシュを迎えて、それと並行して旧作や現行作品の特撮やテレビアニメの劇中BGMも「LPレコード」(A・B両面で約1時間分を収録)の形態で発売されるようになり、いずれも高い発行部数や売上枚数を博するようになっていた。特に『宇宙戦艦ヤマト』や『ウルトラ』シリーズなどは、フルオーケストラを用いた新録音の「交響詩」まで新録されるようになってヒットも相応にしていたのだ。
この流れで大編成となる楽曲の制作費も回収できるとレコード会社側も踏んだのだろう。『ザ★ウルトラマン』でも、歴代ウルトラシリーズのBGMを手懸けてきた冬木透(ふゆき・とおる)先生によって『交響詩 ザ★ウルトラマン』が作曲されて、同作放映中の79年8月25日には早くも日本コロムビアから発売された2枚組のLPレコード『テレビ・オリジナルBGMコレクション 冬木透作品集』の2枚目のB面に収録されたのだった。
ちなみに、このLPレコードの1枚目のA面には『ウルトラセブン』が、B面には『帰ってきたウルトラマン』が、2枚目のA面には『ウルトラマンA』のBGMが、冬木先生ご自身による構成(!)で「組曲」風に大胆に編集されて収録されていた。ライナーノーツの作品解説も、この2011年6月27日に逝去された特撮評論家・竹内博(たけうち・ひろし)が酒井敏夫(さかい・としお)のペンネームで手懸けたものだった。
『交響詩 ザ★ウルトラマン』は、2006年9月20日にコロムビアミュージックエンタテインメントから発売された『ウルトラサウンド殿堂シリーズ(8) ザ★ウルトラマン』(ASIN:B000H30GT0)にもまるごと収録されているので、若いマニア諸氏には機会があればぜひとも聴いていただきいものである。ウルトラの星・U40出身の主人公ウルトラマンであるジョーニアス、そしてエレク・ロト・5大戦士ら8大ウルトラ戦士たちのモチーフが弦楽器によって力強いリズムで演奏されて、正義の勝利を高らかに歌いあげる『勝利の戦い』は、まさにこの一連を飾るにこそふさわしい。
オオヤマ「これまでのお礼を云うよ…… ウルトラマンエイティ」
矢的の表情のアップが白黒反転のネガ写真状の映像で映し出されて、オオヤマの表情のアップとカットバックする! まさに矢的の衝撃の大きさを演技面だけではなく映像面でも補強したカットでもある。
だが、その直後に意外なことに、矢的はにっこりと微笑(ほほえ)んだ。
矢的「やはり知ってたんですね。僕がウルトラマンエイティであることを……」
オオヤマ「ン。私とイトウチーフは知ってしまった…… といっても、ついこの間だがね。矢的、いや、ウルトラマンエイティ。君には感謝している」
感慨深い表情でうなずく矢的。一触即発のコジレやシコリなどのプライドをめぐった対立劇などには発展せずに、互いに揺るぎのない真相へと到達した者が達する平静心の境地が、両者に安堵の念をもたらしたのかもしれない…… 「ずいぶん前」からではなく「ついこの間」に知った、といったところがまたリアリティーも醸すのだ。
オオヤマ「しかし、いつまでも宇宙人である君に力を貸してもらうことに悔(くや)しさもあった。地球はやっぱり地球人の手で守らねばならん」
矢的「でも広い意味では、地球人も宇宙人です!」
「地球はやっぱり地球人の手で守らねばならん」。これは1960年代後半に放映された初代『ウルトラマン』の最終回と『ウルトラセブン』の最終回でも語られたセリフでもある。70年代前半に放映された第2期ウルトラシリーズの最終回でも、「地球人」をレギュラーキャラの「少年」に代入するかたちで変奏されて、ウルトラマンや主人公の青年には頼らずに少年が自立することを促すドラマが展開もされてきた。
前作『ザ★ウルトラマン』の最終章4部作(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200508/p1)では、敵の軍団に占領されたウルトラの星を、ウルトラマンに頼らずに地球人自身が救ってみせるというマクロな大スジと並行して、ミクロではウルトラマンと合体している地球人青年・ヒカリ隊員の苦悩を、そんなストイックな彼にも微量に残っているウルトラマンへの依存心、そしてそれを断ち切って人間としての自力だけで戦ってみせる隊員たちの姿をまさに主眼に据えたストーリーが展開されていた。
そして、本作『80』最終回もまた、ウルトラマンに頼ってしまうことがもたらす矛盾を晴らすために、この根源的な地点へと到達したのであった!
「広い意味では、地球人も宇宙人です!」というセリフもまた、長年のウルトラシリーズのマニアとしては実に感慨深いものがある。
宇宙人にも善悪双方の膨大な種族が存在するであろう可能性をまるで無視した、地球人以外の宇宙人はそのすべてが「一枚岩」(笑)であるかのように表現してきたウルトラシリーズや昭和のラフなつくりのアニメ・特撮を観てきた身としては、ここで「SF的・科学的にも正しい」宇宙人観が提示されたことには、今さらながらの「再発見」としての意外の念もおぼえるのだ。
第1期ウルトラシリーズのメインライターであった金城哲夫(きんじょう・てつお)先生が手懸けた初代『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』で、悪質宇宙人メフィラス星人は初代ウルトラマンと一心同体で合体している防衛組織・科学特捜隊のハヤタ隊員に向かって、
「おまえは人間なのか!? 宇宙人なのか!?」
という疑問符を投げかけていた。
このセリフには、その是非はともかくとしても、ウルトラマンも宇宙人であるのならば地球人の味方をするのはオカシい! ウルトラマンは同じく宇宙人である我々メフィラス星人の味方をするべきだ! といった意味として捉えるのがふつうであろう。いや、メフィラス星人とウルトラマンは地球人から見たらば同じ「宇宙人」ではあるけど、メフィラス星人の立場から見ればメフィラス星人以外の地球人も含む全宇宙人のことが「宇宙人」だろうし、ウルトラ一族の立場から見ればウルトラ一族以外の地球人も含む全宇宙人のことを一括して「宇宙人」として呼称をするハズである。それはアメリカ人から見れば日本人もイギリス人も「外国人」であるのと同じリクツである(笑)。
だから、メフィラス星人とウルトラマンが共闘して地球侵略に加担するような義理やリクツなど微塵もないではないか!? ……などと浴びるように「宇宙人」などの超常存在が登場する特撮ヒーローやテレビアニメを観てきて、「日本人至上主義」ならぬ「地球人至上主義」なども自然に相対化ができるようにリテラシー(読解能力)を向上させてきたオタク第1世代以降の子供たち、つまりは第1期ウルトラ世代のみならず第2期ウルトラや第3期ウルトラ世代も含む子供たちではあっても、こういったセリフには子供心にも小さな違和感をいだいたものである。第1期ウルトラシリーズの脚本陣の中では比較的に「SFセンス」があった金城哲夫先生にしてから、このように「SFセンス」的にはツッコミどころがあるセリフを吐かせてしまっていたのであり、まだまだそういった世代のスタッフたちがウルトラシリーズを手懸けていた時代ではあったのだ(汗)。
ちなみに、本エピソードを執筆した石堂先生ご自身も、『帰ってきたウルトラマン』第36話『夜を蹴ちらせ』に登場させた吸血宇宙星人ドラキュラスに、
「裏切り者ウルトラマン。どうして人間の味方をする!? 我々宇宙人の味方をなぜしない!?」
などと非難をさせている。本エピソードの10年前の石堂先生もまた、この1971年の時点では「地球人以外の宇宙人はみないっしょ!」といった感覚だったのである(笑)。
しかし、おそらく石堂先生の小学生のご子息などから「地球人以外の宇宙人はみないっしょ!」などといった「宇宙人」観はオカシイ! といったツッコミでも入っていたのではなかろうか?(汗) 裏返して「宇宙人はみないっしょ」であるならば、さらにそれを裏返してみせれば「広い意味では、地球人も宇宙人」といった「初歩SF」的な境地に、石堂先生や満田監督といったオジサン世代も、1981年の時点でようやく到達することができたのだ……といったところだろう。
同作『帰ってきたウルトラマン』第51話(最終回)『ウルトラ5つの誓い』でも、触覚宇宙人バット星人がウルトラ兄弟たちのことを「宇宙の裏切り者」呼ばわりをしている。おそらく同じような宇宙人観から発したセリフだったのだ。70~80年代の日本のアニメ・特撮を牽引してきた脚本家・上原正三先生もまた例外ではなかったのである(笑)。
その伝では70~80年代当時の子供たちの「SF観」の方がオジサン世代よりも勝っていたのが、あの時代でもあったのだ。
もちろん脚本というものは、脚本家諸氏の一存だけで通るものではない。テレビ局や製作プロダクション側のプロデューサーの注文や意向でOKが出るものなのだ。よって…… プロデューサー諸氏も同罪だったのである(笑)。
――余談だが、上記で例示した『夜を蹴ちらせ』では、死んだ娘の死体に防腐処理を施して保存しているネクロフィリアな父親も登場。ウルトラ一族のようにその娘に宇宙人が合体していることを防衛組織・MAT(マット)の面々が非人道的だと非難することで、石堂先生が意識していたかはともかくとしてウルトラマンたちのことまで相対化がされている。そして、美女でもあるその娘に手を出そうと、自分の部屋へとお持ち帰りした青年も毒牙にかかって死んでしまう…… という実に子供番組らしからぬキワドい描写も存在しているのだ(爆)。帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックやウルトラマンレオがバラバラ殺人事件のように解体されてしまうエピソードなども石堂脚本回だったが、ミステリ小説の大家・江戸川乱歩のような猟奇的な描写もまた、後期の石堂脚本では失われてしまったものなのだが、前期の石堂脚本では見逃せにできない隠微な魅力でもあったのだ・笑――
矢的「でも広い意味では、地球人も宇宙人です!」
本エピソードではそれまでずっと影が薄かったユリアンこと星涼子隊員が、ここでニッコリとうなずくのが実に効果的である。
そう、宇宙に生きている「知性体」という意味では、地球に住んでいる「地球人」も、地球以外の惑星に住んでいる「宇宙人」も同じ「宇宙の人間」には相違ないのである。
ここで流れてくるのが、『ウルトラマン80 ミュージックコレクション』(日本コロムビア・96年8月31日発売・ASIN:B00005ENF5)では『無償の愛』というタイトルで収録されていた、『宇宙戦艦ヤマト』の劇中音楽でも有名な川島和子による「安息」と「哀愁」の念をもよおさせるスキャットを奏(かな)でるM-17-2である。それがまた、このオオヤマキャップとの広い意味での「和解」と、ひいては正体がバレてしまったことでのオオヤマや地球との「別離」を予感もさせてくるのだ……
矢的「宇宙人同士、力を合わせて敵に向かうのは、当たり前じゃありませんか?」
オオヤマ「いや、君の方に事情があることも知ってしまった。ウルトラの星に戻らなければならんだろ。それに今度の戦いで君は傷ついてしまった」
前話である第49話『80最大のピンチ! 変身! 女ウルトラマン』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210307/p1)における、合体怪獣プラズマ&マイナズマの2大怪獣に徹底的に痛めつけられるエイティの姿がここで回想として流される。先述の「勝利の戦い」の一連とは違って、こちらの方はモノクロ画像で処理されることで、先の勇壮さとは真逆であるダメージ感が強調されている。
オオヤマ「もう、エイティに変身しないでくれ…… オレは行くぞ!」
ウルトラマンエイティによる助太刀を断って、南原市へと急行していくオオヤマキャップ。レンガ造りの建造物を背景にして、オオヤマキャップは矢的と涼子の許を離れて、画面の左方向へと走り去っていく……
本エピソードを何度も観返していると、先の建造物の方へと戻っていくのが正解なのでは? などとヤボなことも思ってしまう(汗)。おそらくUGM戦闘機の発進ゲートへ向かうには画面の左方向へと走り去るのが近道なのだと好意的に脳内補完をしておきたい(笑)。
手にした変身アイテムを見つめて立ちつくしている矢的隊員と、彼を見つめている涼子隊員。この両者をロング(引き)の映像で捉えて、画面手前にはチューリップをはじめとする「春」を象徴させる花々が植えられている花壇を配している。「氷の世界」に閉ざされた「南原市」。そして、「春」がもうすぐそこにまで来ている「UGM基地」。映像的にも対比させるあたりがまた、両者のエッジも立ってきてメリハリも付くというものなのである……
もう1機のシルバーガルで、南原市に急行してきたオオヤマキャップ!
オオヤマ「ワイヤー・フック!」
操縦悍の下側(!)からの煽りで見上げられた、またも臨場感あふれるカメラアングルで撮られたオオヤマキャップの映像!
続いて、シルバーガルから吊り下げられていたワイヤーの先端が「鉄球」の鎖を引っかける様子をアップで捉えられる!
さらに、ワイヤーの根元がシルバーガルの機体底部に格納されていくサマも煽りで撮られることで、いわば重たい「鉄球」を吊り下げながらの戦闘機2機での飛行バランスも考慮せざるをえない操縦における「綱引き」感覚も出せている。
オオヤマ「Go!!」
画面の左奥にはマーゴドン、左手前には立ち並んでいる民家、右手前にはビル群を配して、それらをカスめるように「鉄球」を前後に揺らしながら、マーゴドンへと向かっていくシルバーガルとスカイハイヤー!
だが……
ナレーション「肝心なとき、スカイハイヤーにトラブルが起こった!」
フジモリ「燃料がピンチです!」
オオヤマ「あと1分、もたないか!?」
スカイハイヤーが地上へ降下していき、それに釣られてシルバーガルの機体も片側へと大きく傾いてしまう!
特撮部分だけではなく、本編部分でもカメラを左へと大きく急激に傾けるかたちでコクピットにいるオオヤマキャップを撮影するという、「特撮」だともいえない超・原始的な手法でこのピンチは表現されているのだが、それとわかっても感情移入をさせて試聴を続けさせるだけの吸引力&緊迫感がたしかにある「演出」が達成されている。
しかし、やがて機体が元の体勢へと戻った!
オオヤマキャップの目に、見慣れない戦闘機の姿が映っている……
オオヤマ「なんだ、その赤いジェット機は!?」
ここで流れてくる楽曲のイントロが、第1話~第39話までのエンディングに使用されてきた、軽快かつカッコいい副主題歌でもあった、そして『80』のシリーズ前半の「UGM」それ自体を象徴していたともいえる名歌曲『レッツ・ゴー・UGM』のインストゥルメンタル! ここで形勢が逆転したことを音楽演出面でも象徴させているのだ!
タジマ「オオヤマキャップ、おひさしぶりです! タジマです!」
ハラダ「ハラダです! オーストラリアゾーンから駆けつけました!」
タジマ「燃料を空中給油します。安心してください」
ハラダ「キャップ、いいところでやってきたでしょ」
第26話『タイムトンネルの影武者たち』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101023/p1)をもって、何の説明もなし(汗)に降板していたハラダ・タジマ両隊員が最後の最後で頼りになるオイシい役回りで再登場を果たしたのだ! ついでに、彼らはUGMのオーストラリアゾーンに転任していたことがここで明らかにもされる!――こういう補足設定的なセリフの挿入も、幼児はともかく児童たちにとっては、虚構作品なりにその作品世界にワールドワイドなウラ打ちを与えてくれるという意味でも実に重要なのだ。ちなみに、第6話『星から来た少年』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100606/p1)でも「オーストラリアUGM」の存在がすでに言及されているので、取って付けたような新設定や超展開ではない、既存の基本設定をも活かすかたちでの描写であることもサイコーである!・笑――
オオヤマ「ありがとう! ありがとう!!」
心の底からの感謝の念が込められたオオヤマ演じる中山仁(なかやま・じん)のセリフ回しがまた真に迫っている!
やはり操縦悍の下側からの煽りで撮られたオオヤマキャップは、右手を操縦悍から離して親指を立てて、ハラダ・タジマに感謝のサインを送る!(感涙)
ちなみに、この赤い戦闘機はアメリカのダグラス社が開発して、1957年にアメリカ海軍に正式採用されたA-4Eスカイホーク攻撃機であるそうだ。
ナレーション「再びジャイアントボール作戦が開始された!」
オオヤマ「攻撃開始!!」
画面の手前には広がる市街地、左奥にはマーゴドンを配して、画面の左手からはハラダ・タジマが搭乗するオーストラリアゾーンの赤い戦闘機が画面中央に向かって飛行して、マーゴドンに向かって左旋回することで注意も引きつける!
右手の上空にはジャイアントボールを吊り下げたシルバーガルとスカイハイヤーが控えている!
続けて、画面左手前にマーゴドンを背面から捉えて、ビル群を背景に画面手前に向かって飛行してくる3機編隊も配置する!
『80』では初である四つ足歩行タイプの怪獣であった怪獣マーゴドンだが、最後にプチ・サプライズ演出もなされる! その巨体を二足歩行型の怪獣のように立ち上がらせるのだ!
側面から撮影されたマーゴドンの姿を見ると、その着ぐるみも最終回に登場する怪獣にふさわしく、かなり大きな造形であることもわかって、必然的に巨大感の表現も半端ない!
ハラダ「怪獣に、冷凍液をお見舞いします!」
ハラダ・タジマの搭乗機が側面からアップで撮られることで、その機首には黄色いラインが塗装されていることも確認できる。
続いて、機体底部のハッチが開いて、ジャイアントボール同様の「黒い球体」がマーゴドンに向かって投下されていくサマも煽りで撮影される!
マーゴドンの頭上で「ベチャッ!」と破裂する冷凍液!
たちまちのうちに全身が氷のオブジェと化すマーゴドン! やはり線画合成で黒いヒビ割れが入っていくことで、急速冷凍による物質や分子の収縮で、硬くてモロくなったサマが表現されていく!
氷のオブジェと化したマーゴドンの背面からの姿を画面左手前に配して、カメラ側に向かって飛行してくる黒い鉄球を吊り下げているシルバーガル&スカイハイヤー!
続けて、この前後に揺らしていた鉄球による直撃も!!
見事に盛大に砕け散っていくマーゴドンの断末魔が横から捉えられる!!
おそらくは上下2パーツからなるマーゴドンの巨大なカポック自体に凍結したような装飾を施して、それをジャイアントボールが当たるタイミングで分割することで、粉砕を表現しているのであろうが、実に説得力にあふれる表現である! まさにガラスが粉々に砕け散るかのような効果音の使用も見事だ!
オオヤマ「やった!!」
やはり煽りで撮られたオオヤマキャップ、今度は左手をこぶしにしてガッツポーズ!
矢的「やった! さぁ、みんなを迎えに行こう!!(喜)」
涼子「はい!!(悦)」
地球人たちの勝利に、歓喜の表情で作戦室を飛び出していく矢的と涼子!
ついにウルトラマン抜きでも、UGMは単独で強敵怪獣を倒してみせたのだ!!
ナレーション「南原市は春の陽(ひ)を浴びる、平和な町に戻った」
白銀の世界と化していた南原市全景のミニチュアセットが元の姿へと戻っていく……
木々の間から照りつけてくる太陽。水槽で泳ぎだした金魚。桜並木。菜の花畑。ペンギン・アシカ・キリン・象などの実写映像も続いていく……
リアルに考え出したら、一部の植物などはちょっとした霜でも枯れてしまうものなのだし、特に動物などは凍死しているハズなのだが(爆)、子供向け番組なのだから、すべてが生き返ったという描写が穏当なところだろう(笑)。
UGM基地の通路を凱旋(がいせん)してくる隊員たち。イケダが「もうエイティなんていらないっすね~」などと口走っている(笑)。
自動ドアが開いて、UGM作戦室で一同を出迎えたのは……
一同「アッ!」
オオヤマ「城野(じょうの)…… 城野エミ」
アンドロイド・エミ「ハイ。私ハ、UGMノ科学班ガ作ッタ、城野えみノあんどろいどデス」
イトウ「アンドロイド」
第43話『ウルトラの星から飛んで来た女戦士』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110219/p1)で侵略星人ガルタン大王から矢的をかばって殉職した城野エミ隊員を演じた石田えりも、久々に再出演を果たしてくれたのだ!
死人のことを忘れられずに本人そっくりのロボットを作ってしまうことには倫理的には賛否がありそうだ。巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)では主人公の父親かつ司令官が自身の亡き妻のDNAから薄幸そうなクローンの少女・綾波レイをつくって、『ウルトラマンタロウ』第41話『幻の母は怪獣使い!』でも交通事故で妻を失った科学者が妻そっくりのアンドロイドを製造していたのだが、当然のことながらいずれも劇中では倫理的には肯定されてはいなかったのに……(汗)
むろん最終回だから、降板した出演者たちにも感謝とねぎらいの意を表して、そして視聴者へのファンサービスも兼ねての、堅苦しい倫理的な議論は度外視したところで、数シーンだけでも登場させてあげよう……といったねらいなのだろう。そうなると、すでに死してしまった城野エミ隊員については、復活させるワケにもいかない以上はアンドロイドとして登場させるくらいしか手がないのだ(笑)。
ただ、オオヤマキャップ・矢的・イトウチーフを出迎えるアンドロイド・エミが背面から撮られていて、全身ラメが入った銀色のタイトなスーツのために、石田えりのヒップラインもクッキリと浮かび上がっており…… 辛抱たまらんです(爆)。
ユリ子「はい。皆さんがいつまでも亡くなった城野隊員を懐かしく思われているので、私とセラさんがこっそり科学班に作っていただいたんですよ」
まぁ、石田えりは途中から『80』のようなジャリ番組には出たくなくなっていたようだから、この一連はシナリオ上にはなくて、出演交渉でOKが出たところで撮影現場で急遽、満田監督が付け加えたものなのかもしれないが……
アンドロイド・エミ「ホンモノ同様、可愛ガッテクダサイ」
発声回路にやや難があるという設定であるために、その話し声は機械的に加工されたものが使用されている――ひょっとしたら石田えり本人によるアフレコではなかったりして・爆――。ただ最後に、首をチョコッと傾けてニッコリと微笑むなど、当時の流行語で云えば「ブリっ子」的な仕草も見せて可愛らしさには満ちあふれている。
――1980年前後にはまだギャル的な女性像は台頭しておらず、女性アイドル歌手の「可愛らしさ」を模倣することが若い女性たちの間で急速に流行した時期だった。そうなるとインフレが発生して、それもまた演技であることが急速にバレてしまって(笑)、当時のアイドル歌手・松田聖子(まつだ・せいこ)やそれらを模倣した女性たちを揶揄(やゆ)するのに、「それらはアザトい演技であってしかも鼻につく!」というような否定的なニュアンスで「可愛い子ブリっ子」、略して「ブリっ子」なる新造語も誕生。若者間でも広く使用される用語となって、30年後の現在でも細々と残っている・笑――
しかしこの銀色のタイトなスーツは、ゴジラ映画『メカゴジラの逆襲』(75年・東宝)において、ブラックホール第3惑星人によってサイボーグ少女にされてしまった悲劇のヒロイン・真船桂(まふね・かつら)のコスチュームにも似ているように思えるのだが、それの流用だろうか? 5~6年も前のこのスーツは果たして1981年初頭の時点でも残存していたことなどあるのだろうか?
たしかに石田えりの体型に合わせたスーツもこの最終回のためだけに万円単位の予算をかけて新造したとも考えがたいので、衣装班が探してきたレンタル衣装だろうか? もしもサイボーグ少女・桂のコスチュームの流用であったのならば、『ウルトラマンレオ』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090405/p1)のシリーズ中期から後期にかけての防衛組織・MAC(マック)の松木晴子(まつき・はるこ)隊員も演じた藍とも子(あい・ともこ)のスレンダーな体型に合わせていただろうこのコスチュームは、石田にとってはその巨乳が窮屈だったことだろう(爆)。
ところで、このコスチュームのベルトのバックルにあるイナズマを模したマークだけは、どこかで見たような記憶があるのだが、思い出せない(汗)。
オオヤマ「いよいよお別れだな。ウルトラマンエイティ」
矢的の肩に手を置くオオヤマキャップ。
一同「エェ~~ッッッ!?」
ナレーション「一同の驚きが消えないまま、ふたりのお別れパーティがささやかに行なわれていた」
ここで上空から見ると「UGM」のアルファベット文字に見える基地全景のバンクカットが久々に入るのも嬉しい。
オオヤマ「これまで我々はいつもエイティの助けを借りてきた。我々はいつも弱かった。それは知らず知らずのうちに、エイティに頼ろうとする気持ちが、みんなの心のどこかにあったからだろう」
フジモリ隊員とイケダ隊員が「あちゃ~っ」という表情をする(笑)。
オオヤマ「残念ながら私もそうだった」
「なぁ~んだ」というような、安堵の表情を見せるフジモリとイケダ。これもまた弱さも持っている人間の偽らざる姿だろう。もちろん全面的に開き直って「弱さ」や「依存心」を手放しで肯定するワケにはいかない。目指すべき目標の「理想」としての人間像とはまた別に、一方では不完全な身である「現実」の人間像を自覚することも大切ではあるのだ。そしてその次には、この両者を架橋するための適切な直線・ロードマップを引いてみせることも必要になってくるのである……
オオヤマ「しかし、私はあるとき決心した。自分たちの手で戦い抜かねばならないんだ。それはウルトラマンエイティが怪獣との戦いで傷つき、さらにウルトラの星に事情ができて、星涼子隊員こと、このユリアンがウルトラマンエイティを呼びに来たことがわかってしまったからだ。今、我々は怪獣に勝った。エイティの力を借りないで、地球最後かも知れぬ大怪獣をやっつけることができた。これで我々は胸を張ってウルトラマンエイティにさよならを云える。ふたりは今日かぎり、ウルトラの星に帰っていく……」
イトウ「どうしてもそうしなければならないのか?」
矢的「ええ。我々ふたりはいったんウルトラの星へ帰り、しばらく休養すると、また別の星に派遣されます」
涼子「私はホンの短い間でしたけれど、この美しい星・地球のことは、絶対に忘れません」
泣き崩れてしまう気象班のユリ子隊員……
ここではさりげに「また別の星に派遣されます」とも云っている。地球以外の別の惑星に住んでいる善良なる宇宙人たちをウルトラ一族が守っているという描写は、この当時までの映像本編でのウルトラシリーズではまだ存在はしていない。しかし、それにも関わらず、このような地球以外の星々をも守護しているウルトラ一族という設定に基づくセリフが与えられているのは、70年代前半の小学館の各学年誌での毎号のウルトラシリーズ特集記事で、ウルトラ兄弟たちの故郷であるM78星雲・ウルトラの星にある宇宙警備隊には、
・M25星雲支部
・SP5星雲支部
・LP372星雲
・アンドロメダ星雲支部
・ペルセウス座星雲支部
・銀河系星雲支部
などの支部が存在するという設定に端を発している。このウラ設定を受けて、70年代末期の児童漫画誌『コロコロコミック』やその『特別増刊号ウルトラマンPART1』~『PART4』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1)に掲載されて大人気を博してきたウルトラシリーズのオリジナル展開の漫画群が、地球以外の別の惑星種族をも守護しているウルトラ一族の姿といった、壮大なるSFビジョンをすでに描いていたからでもある――このへんも宇宙人の実在を信じていなさそうな石堂脚本上のセリフではなく(笑)、学年誌の特集記事の監修も務めてきた円谷プロ側の満田監督が脚本上に加筆した、もしくは撮影現場で即興で付け加えさせたセリフではなかろうか?――。
矢的「いろんなことがいっぱいありました。みんなのことはいつまでも、忘れません!」
オオヤマ「今日の別れは永遠の別れでなく、また会うときの仮の別れのつもりでいてほしい。本当は…… 本当は…… ウルトラマンエイティにいつまでもいてほしかった……」
手にしたグラスの酒を一気に飲み干して万感(ばんかん)胸に迫るといった表情のオオヤマキャップ。感無量といった面持ちの矢的隊員……
矢的「さよならは終わりではなく、新しい思い出のはじまりって云います。じゃあ、みんな、元気で!」
一同「乾杯!」
どこまでも明るく元気に、一同と固く握手を交わしていく矢的。泣き崩れたままだったユリ子隊員を起こしてみせる優しさも忘れない……
「矢的猛は学校の先生だし、(『セブン』の主人公)モロボシ・ダンみたいにあんまり謎の人物っぽくはしたくなかったんですよ。明朗快活なイメージで(当時の人気タレント)太川陽介(たがわ・ようすけ)くんなんかを考えていた時期もありました。長谷川初範(はせがわ・はつのり)くんは、森光子(もり・みつこ)さんから「彼はいいわよ」って推薦があったんですよ。彼は『80』の前にTBSのドラマで森光子さんの息子役をレギュラーでやってたらしいんだよね。彼も森さんのところへ相談に行ったら「ぜひやりなさい」と言われたそうですよ」
(『君はウルトラマン80を愛しているか』満田かずほインタビュー)
ちなみに、このインタビュー中のTBSのドラマとは、当時の人気ホームドラマ『熱愛一家・LOVE(ラブ)』(79年)である。ちなみに、長谷川のお相手役は当時の人気アイドルでもあり、のちに特撮ジャンルでは『特捜戦隊デカレンジャー』(04年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20041112/p1)で地球署エンジニア・白鳥スワン(しらとり・すわん)を演じることとなった石野真子(いしの・まこ)であった!
あの大女優・森光子のお墨つきをもらったほどの長谷川氏の起用は、満田氏がねらった「明朗快活」なイメージを主人公・矢的猛にもたらし、ひいては『80』という作品自体にも良くも悪くもアクのない澄み渡った柔らかいイメージをももたらしていった……
ナレーション「ふたりは地球での思い出を胸に焼きつけるため、地球最後の一日をおもいっきり楽しむことにした。ウルトラマンエイティの物語は今終わろうとしている。だが我々のために、新しいウルトラマンがきっとやって来るに違いない。ウルトラの星がいつまでも輝き続けるかぎり……」
『80』最終回のラストでは、通常回で流されるエンディング主題歌は流されずに、挿入歌が使用された……
♪ 熱い心の 燃える炎(ひ)が
瞳に映って 輝いた
自分が走る 道を馳(は)け
空に向かって 呼んでいる
遠い星から~ 来~た~ あいつ~~
今~は~ 青い~ この~星で~~
愛する 小さな 友のため
心~を~燃やす~~ ああ~ あいつ~~
そこに流されたのは、名曲『心を燃やすあいつ -矢的猛の歌-』であった。
朝日ソノラマ『宇宙船』Vol.6(81年4月30日発行)に掲載された『ウルトラマン80放映終了特集』によると、満田監督自身が「ラストに流すのはあの曲にしようと決めていた」と語っている。この楽曲は作詞の才能もある満田監督自身が作詞を務めており、冬木先生が作曲、ぬまたこうじがその歌唱力でエモーショナルに朗々と歌い上げた、まさに名曲だ。
70年代末期になってからのマニア向けの商売であるBGM集の発売以前に、70年代には特撮やテレビアニメの子供向けの挿入歌集が発売されるようにはなっており――劇中で使用されないことも多々あったが――、そういった音盤を一部の熱心なマニアたちも購入する文化はすでにあったことから、そういうものの一環としてレコード会社側の主導でこの歌曲もつくられたのだと思われる。
もちろんこの歌曲は『80』放映当時に早々に録音されており、LPレコード『ウルトラマン80 テーマ音楽集』(日本コロムビア・80年6月10日発売・04年3月27日にCDで再発・ASIN:B0001A7VC4)のB面1曲目に収録される栄誉をすでに勝ち得てもいたのだ。その歌抜きのインストゥルメンタルは、『80』序盤のころからエンディングなどにその一部分が多用されてはいたものの、しかし歌入りの正規のバージョンはずっと未使用のままであった、知る人ぞ知る名曲にとどまってもいたのだ――第1期ウルトラシリーズ至上主義者のマニアたちは、よほどのBGMマニアや冬木先生の大ファンでもなければ『80』のBGM集などは購入していなかったので・汗――。
結果論ではあるのだが、だからこそ最終回のラストシーンで使用されたことが、この歌曲をすでに知っていたごく少数のマニアたちにも、知らなかった大多数の視聴者たちにも、最終回にふさわしいスペシャル感と別格感、そして静かでも内に染み入ってくるような静かな感動を呼び起こすこととなっていく。
きれいに咲き誇った桜並木を眺めたり、歩行者天国をアイスクリームをナメながら散策したり、遊園地でゴーカートや回転遊具などを楽しんだりと、「地球最後の一日」を満喫する矢的と涼子……
海岸を並んで走るふたり。続いて照りつける太陽を背にして矢的と涼子がバストアップの煽りで捉えられて、陽光が波間でキラめいている海が描写されていく……
変身アイテム・ブライトスティクを静かに海に向けてかざしてから、空へと掲げる矢的。
同じく変身アイテム・ブライトブレスレットをはめた右腕を、ゆっくりと空へと掲げる涼子。
ふたりの姿が青い光のウズに包まれてウルトラマンエイティの姿へ、そして女ウルトラマンことユリアンの姿へと巨大化していく……
この静かなる変身シーンへの言及で、蘊蓄(うんちく)トークに走ってしまうことは、我ながらややヤボな行為ではあるのだが、変身ヒーローものにおける必殺技に次ぐ見せ場といえば「変身シーン」ではある。本作『80』では、
・矢的の姿が人間大サイズのウルトラマンエイティへと一度変身して、それから巨大化する第1クールで主に披露されたバージョン
・従来のウルトラマンたちのように、右腕を前方に大きくパースペクティブを強調して突き出したウルトラマンエイティのリアルな造形の人形が、様式美的な赤いウズの中からカメラに向かってくることで巨大化を表現していた第2クールから多用されるバージョン
都合2種類の変身パターンが用いられてきたが、最終回ではパターン破りの意図と、そして何よりもこれから戦いに挑んでいくような勇ましさを演出するものではないことからだろう、バンクフィルムではなく新撮の映像となっている。子供、特にマニア予備軍の気がある怪獣博士タイプの子供というものは、こういうパターン破りのシーンにもカタルシスを感じて、特別に傾注してしまうものなのである(笑)。
『ウルトラセブン』第9話『アンドロイド0(ゼロ)指令』・第25話『零下140度の対決』・第42話『ノンマルトの使者』・第48話『史上最大の侵略(前編)』と、『セブン』での満田監督回では戦いを終えたウルトラセブンが光のウズに包まれて人間の姿であるモロボシ・ダンへと戻っていく、実は子供たちも観たがっていた「逆変身」の描写も描かれていた――脚本上で執筆されていたものでなければ、満田自身にそういった子供っぽいセンスを実現してみせたい嗜好があったのだろう・笑――。
『セブン』第4話『マックス号応答せよ』と第6話『ダーク・ゾーン』で、同作では以降に最も多用された変身アイテム・ウルトラアイを一度、カメラの前にワザとらしく様式美的に突き出して(笑)、それから着眼してみせる変身スタイルを編み出した満田監督が、『80』最終回限定となった変則的な変身パターンを、『セブン』の逆変身パターンである光のウズを想起させるイメージで、ウェットなこのシーンに実にふさわしく、コレ見よがしではなく静かに描いてもおり、「映像的な見せ場」と「ウェットなドラマ」が両者ともに控えめではありながらも静かには主張してみせているような、水と油の両立の成功といった感じがまた実に味わい深いものがあるのだ。
互いに見つめ合って大きくうなずいたウルトラマンエイティとユリアンが今、大空の彼方へと飛翔する!
宇宙のかなたにあるウルトラの星へと帰還していくエイティとユリアン。歩行者天国や遊園地で戯れる矢的と涼子の姿。その両方の映像を交錯させていく……
そして、通常回ではクレジットがなされない各技術パートのセカンド・サードの担当者名までをも網羅したドラムロール式のエンディングタイトルが下から上へと流されていくことで、このエピソードが通常回とは異なる別格のものである、まさに最終回であったことを実感させていく……
♪ 今~は~ 青い~ この~星で~~
平和を愛する 皆のため
心~を~燃やす~~ ああ~ あいつ~~
地球で心を燃やし続けたアイツが、いま遠い星へと帰っていく。その先には輝き続けるM78星雲・ウルトラの星……
矢的「エイティ!!」
矢的による力強い変身時の掛け声で、ウルトラマンエイティの物語は幕を閉じていく……
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