(ファミリー劇場『ザ★ウルトラマン』放映「全話評」連動連載!)
『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #50「ウルトラの星へ!! 完結編 平和への勝利」 ~40年目の『ザ☆ウル』総括!
『ザ☆ウルトラマン』#19「これがウルトラの星だ!! 第1部」 ~怒涛の新展開! 精神生命体が寄生の3大怪獣! 敗死した超人の同族出現!
『ザ☆ウルトラマン』#21「これがウルトラの星だ!! 第3部」 ~宇宙戦艦数千隻! 機械惑星の重力波攻撃! 超巨大怪獣! ウルトラ人を進化させた超物質ウルトラマインド争奪
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『ザ・ウルトラマン』第20話「これがウルトラの星だ!! 第2部」 ~古代ギリシャ風のウルトラ人が住むU40! その10億年史! 7大ウルトラ戦士も活躍!
凶悪星人バデル族登場
(作・吉川惣司 演出・辻勝之 絵コンテ・小田経堂)
(視聴率:関東9.0% 中部8.6% 関西7.6%。
以上、ビデオリサーチ。以下、ニールセン 関東13.9%)
『ザ・ウルトラマン』第20話「これがウルトラの星だ!! 第2部」 ~合評1
(文・内山和正)
(1997年執筆)
主人公である科学警備隊のヒカリ隊員は、地球から200万光年離れたウルトラの星・U40(ユーフォーティ)でめざめた。そこは予想に反して自然にあふれた古代ギリシャのような世界であった。最高実力者という大賢者をはじめエレク、ロト、そしてヒカリの世話を務める乙女・アミアらU40人は、地球人と変わらぬ姿をしていた。
ヒカリは自分に乗り移っていたウルトラマンが、この星の最強戦士でジョーニアスという名であることを知らされる。しかし、そのジョーニアスはいまだ回復してはいなかった。
そこにU40人の宿敵・バデル族の宇宙戦艦が、空間ジャンプで突如出現して奇襲をかけてきた。エレクとロトは変身しウルトラマンとなって戦う。ここの人々は全員がウルトラマンに変身できて、どちらの姿も真の姿であった。
U40は痛手を負ったものの、とりあえず敵は引き上げていった。次の大戦闘の前にヒカリを帰そうとするU40人たちだったが、ヒカリは事情を何も聞いていないからイヤだと言って拒む。仕方なくU40の歴史を立体映像で体験させて帰すことになる。
10億年前、U40人は様々な星に移住し子孫を残そうとした。星によっては定住できずに死に絶えた例もあったが、地球では成功してネアンデルタール人と出会い、地球文明が誕生した。
しかし、宇宙には爬虫類から進化したバデル族も存在し、彼らとは意思疎通ができなかった。彼らの攻撃によりU40は危機に陥るが、100万年前に「物質であって物質ではない命の素(もと)であるウルトラマインド」を発見して、ウルトラヒューマノイドことウルトラ人に進化できたことで危機を脱せたというのだ。
ヒカリはジョーニアスが言った「爬虫怪獣は乗り移りだ」との言葉を口にした。アミアはうろたえて再確認すると、U40の指導者たちのところへ知らせに走った。皆は慌てだし、バデル族が暗黒星雲に隠しておいたウルトラマインドを盗んだとしか考えられないという結論になった。
そのとき、バデル族の母星である、星全体が機械化されたバデルスターが襲来して来た!!
(以上、ストーリー)
自分の足で歩いたり船に乗ったりといった、いわば不自由な生活を贅沢(ぜいたく)と捉えて、それを楽しむために昔のままの大自然を残しつつ、地下には超科学を生かした未来都市を築いているという、TVアニメ版のウルトラマンの故郷であるウルトラの星・U40。当時の筆者には驚きであった「爬虫類から進化したために、我々ヒューマノイドとは絶対に判り合うことができない」という設定のバデル族など、壮大な設定で本放送当時は圧倒された。
しかし、あまりにも印象が強かったために、些細な部分を除くとほとんどを暗記するほど明瞭に覚えていて、新鮮な気持ちでは視聴できなかったほどだった(笑)。
ジョーニアスの妹・アミアは天真爛漫、多少コケティッシュでもある印象的な美少女キャラクターで――当時は大ブームであった『宇宙戦艦ヤマト』(74・77年に劇場アニメ化・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101207/p1)や『銀河鉄道999(スリーナイン)』(78・79年に劇場アニメ化)などの原作漫画家・松本零士(まつもと・れいじ)作品のアニメ化的なキャラクターデザインの顔立ちではあったが――、彼女の登場以後は本作の防衛組織である科学警備隊の紅一点・ムツミ隊員がくすんで見えたほどだったし、知名度では上である“ウルトラの母”や“ユリアン”といった他の女性ウルトラマンよりも魅力的だと思ってきた。
しかし今見ると、たしかに魅力的ではあっても、当時は段違いに思えたほどの圧倒的な魅力的には感じられなかった。声も今の基準でいうとオバサンくさいかもしれない。
先輩ウルトラマンたちのゲスト出演を望んでいた本放送当時の筆者にとって、初代ウルトラマンタイプの“エレク”とウルトラセブンタイプの“ロト”の登場は、これで先輩ウルトラ兄弟は出演しないのだろうと失望を同時に味あわせるものでもあったが、それを忘れさせて上回る面白さがこのU40編には溢れていた。
『ウルトラマンA(エース)』(72・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)以来、名前(固有名詞)のついたウルトラマンに慣れていた当時の筆者にとって、4年ぶりのシリーズ再開の本作で、通常回では“ジョーニアス”が「ウルトラマン」としか呼ばれないことは不満を感じさせるものだった。しかし、それでいて本話においては、「ウルトラマンは皆がウルトラマンには違いないが、それぞれに名前を持っている」という設定が確立したのではないかとも思い、その点でも評価している。
だから、放映から10年以上も経った1983〜84年に『帰ってきたウルトラマン』(71年)こと新マンに“ジャック”という名前――もともとは『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)の企画時のNGネームのひとつ――が付いたときにも、多くの旧(ふる)い特撮ファンとは違って喜んで迎えたのであった。
地球人がジャックという名を知らなくても、ウルトラマン同士はジャックと呼ぶということでいいのではないかと思うのだ。反対意見が多いようだが、むしろ初代ウルトラマンにもハジメでも何でも名前をつけて徹底してほしかったくらいだ(ウルトラ兄弟としては次男だからハジメはまずいか?・笑)。
話が横に逸(そ)れたが、本作は特撮系のウルトラマンの設定を流用しつつも、新しい解釈や要素を取り入れ、特撮系ではあとから徐々に作られた故に曖昧にもなっているウルトラマンワールドを、特撮系とは別の世界でありながら確立させたといえるのではないか?
●地球人の姿と変わらないU40人がウルトラマンへと進化した理由
●のちの第27話「怪獣島(じま)浮上!!」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091102/p1)で明らかになる、胸の中央にあるカラータイマーにあたる「★」型の“スターシンボル”を授かった勇者のみが、宇宙空間を飛行してよその星へ行けるという設定(スターシンボルが変身後にカラータイマーになる)
●力の強い、10名にも満たない選ばれし戦士のみが巨大化できるという設定
●バデル族によるウルトラマインドの悪用
これらの設定をストーリー中でも説明していくことで、本話は大いに楽しませてくれる。
「楽しい」「凄い」といった半面、再視聴では気になってしまった点もあるので、最後にそれについてふれてこの項を締め括る。
バデル族が爬虫類に寄生して怪獣化させるのは、ジョーニアスがヒカリに寄生しているのと同じ原理だとのことだそうだ。しかし、バデル族の場合はバデル族自体が元から憑依後の怪獣の姿をしているわけではないから、厳密には異なるのではなかろうか? まぁ、万能に近いウルトラマインドには様々な能力があるのかもしれないが。
今回のラスト、爬虫怪獣が「乗り移り」だということでU40人たちは騒然となる。しかし、それならば前回のラストでアキヤマ隊長が「あの怪獣を倒す方法はありませんか?」と聞いたのに対して、エレクが「今はありません」と言ったのはどういう意図での発言だったのだろうか? 少なくとも爬虫怪獣がウルトラマインドの悪用の力で「乗り移り」する超強敵であるから「倒せない」ということはまだ知らなかったということにはなるわけで、単にやっつけても次から次へと「乗り移り」するから駆除が困難だという程度の意味だったということになるのだろうか?
また、中盤の戦いでケガを負ったロトが、ラストでは元気(?)に戦いに赴くが、あんなに短期間で回復できてしまう描写も少し残念(無理して出撃したようには見えないし)。
まあ細かい不整合は、本作に限らずどの作品にも存在するものなので、鵜の目・鷹の目で見なければ気にならない程度の不整合に目くじらを立てる気はないのだが……
※:製作No.20 シナリオ原題『これがウルトラの星・U40だ!!』第二部
『ザ・ウルトラマン』第20話「これがウルトラの星だ!! 第2部」 ~合評2
(文・久保達也)
(2019年10月20日脱稿)
モロに松本零士(まつもと・れいじ)キャラ(笑)のウルトラの女戦士・アミア。
●超巨大円盤・ワープ・宇宙艦隊など、当時の『宇宙戦艦ヤマト』(74年)の総集編映画(77年)が巻き起こした第1次アニメブーム
●映画『未知との遭遇(そうぐう)』(77年・日本公開78年)や映画『スター・ウォーズ』(77年・日本公開78年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200105/p1)を発端(ほったん)とするSFブーム
これらの影響が濃厚に感じられるのみならず、最後はついに、内山まもる先生が学年誌や児童誌「コロコロコミック」で連載していた漫画オリジナル展開、
●ウルトラヒーローたちが総登場して、地球ではなく大宇宙をまたにかけて大活躍する名作連載漫画『ザ・ウルトラマン』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160914/p1 ~本作『ザ☆ウルトラマン』(79年)とは別作品)
のようなスペースオペラまでもが描かれた!
第2クール初頭までつづいたオーソドックスな怪獣ものもよいのだが、当時の子供たちが最も観たかったのはこの3部作のような世界観なのだろう。
超科学を誇りながらギリシャ神話のような衣装を着て原始的な生活をするウルトラ人の描写は神秘性にあふれている。ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーが「ウルトラの国」の歴史を『ウルトラマンタロウ』(73年)第25話『燃えろ! ウルトラ6兄弟』で語ったように、当時は小学館の学年誌でしか明かされなかったような史実をアミアが長々と語るのも好印象だ。
あと、『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971121/p1)のシリーズ後半(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101113/p1)でピンチの場面に流用された曲が、凶悪星人バデル族襲撃の場面で初使用されているのにも注目である。
#20『これがウルトラの星だ!! 第2部』 ~合評3
(文・T.SATO)
(2010年1月脱稿)
本作の主人公ウルトラマンであるウルトラマンジョーニアスが登場しなかったパターン破りの回であることも忘れてはイケナイ! 『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)#16「アグル誕生」を遡(さかのぼ)ること、その約20年も前に主役ウルトラマンが登場しなかったパターン破りの初の回でもあったのだ!
その代わりにエレク、ロト、そしてウルトラの5大戦士たちの7人が、変身アイテムである星型のビームフラッシャーを、
「ウルトラッッッ、チェーーーーンジッッッッ!!」
との掛け声とともに額に当てて、一斉に神々しく跳躍しながら変身していき、7大ウルトラマンが登場するシーンには当時、大感動したものだった。
特撮同人誌『夢倶楽部』VOL.10~12「ザ☆ウルトラマン」特集(97~98年発行)に全文採録されたこの3部作のシナリオによると、ウルトラマンジョーニアスはその「肉体」をウルトラの星に置いたまま、「精神」のみをヒカリ超一郎に「寄生」させているという設定になっていた。つまりそのかぎりで、バデル族(の精神生命体)と爬虫怪獣との関係は、ジョーニアス(の精神体)とヒカリ隊員の関係と同じであったのだ。
脚本を執筆した吉川惣司(よしかわ・そうじ)ご当人が、小田経堂(おだ・きょうどう)――小田急線の経堂駅に由来――名義で手懸けた絵コンテを元に完成されたフィルムでは、尺の都合か、結果的に特撮系のウルトラマンとも同様に、肉体を持った存在のままで地球人と合体していたという描写に改変されてはいるのだけど……。
70年代前半のタツノコプロ作品にも関わった名アニメーター&作画監督で、往年の名作TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999(スリーナイン)』などのマンガ家・松本零士(まつもと・れいじ)原作のアニメ作品などにもペンネームを含めて参加して、『機動戦士ガンダム』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990801/p1)を手掛けた富野カントクによる本邦リアルロボットアニメ第2弾『伝説巨神(でんせつきょじん)イデオン』(80年)などのキャラクターデザイン&作画監督などでも有名な湖川友謙(こがわ・とものり)御大も、本作『ザ☆ウルトラマン』にはペンネームで参加していたという話があるのだが、本話がその担当回だとも思われる。
当時のTVアニメはゲストキャラクターのデザインを、キャラクターデザイン担当者ではなく各話の作画監督が務めることも多かったので、アミアをはじめとする大賢者やエレクやロトの人間体の方のデザインは湖川の手によるものではなかろうか?(変身後のエレクやロトや5大戦士たちも?)
湖川は本話の前年である1978年8月に超絶大ヒットした名作アニメ映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』と、同年9月から放映が開始されたTVアニメ『銀河鉄道999』の共に総作画監督を務めており、松本零士キャラそのもののアミアのキャラデザは、まだ20代(!)の湖川がついやらかしてしまったものではなかったかと思われる(汗)。
しかし、当時はまだまだルーズな時代であったし(アレがイケナイという声も当時はなかったハズ!)、もう30年も前の作品ですから、関係各位にはご容赦を願いたいとは思いますけど……(笑)。
……と思っていたのだが、2008年に購入するも2010年1月にはじめて開封した(汗)、本作のDVDボックス(ASIN:B0012ULS3U)のライナーノーツを参照していて考えが変わった。
このDVDライナーは、アニメ製作会社・サンライズに保存されていた設定資料や絵コンテなどにもあたって、かなりの調査を行なって新事実なども発見されている。
●不明であった初期編の絵コンテ担当者名
●TBS側の局プロデューサー・忠隈昌(ただくま・あきら)が、人手不足で1本だけゲスト的に横山裕一郎――『ザ☆ウル』後期の監督・神田武幸のペンネーム――ならぬ横山裕二郎の名義で絵コンテを担当した件
●一部のメカ怪獣のアニメ作画用の決定稿のみ、本作のキャラクターデザイナーであった二宮常雄(にのみや・つねお)が担当されずに、本作のシリーズ後半のメカニックデザイナーであった河森正治(かわもり・しょうじ)が担当
……等々。
このライナーには、各話の主要ゲストキャラの設定画も掲載されている。しかし、二宮氏による独特の筆使いだとしか思えない一貫した画風となっているのだ。たとえば、#31「ウルトラの女戦士」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091129/p1)にて、ジョーの妹・アミアが憑依することになる地球人の少女・京子のキャラデザの顔アップなども、明らかにアミアの設定画の改稿・マイナーチェンジでもあったのだ。
これらのことから類推するに、特にライナーノーツ側での「例外である」といった明記もないので、やはりアミアなどのキャラクターデザインもまた、湖川デザインではなく二宮デザインであったのだろうと筆者は考え直している次第なのである。
まぁ、下請けに出した先の本話の作画監督が湖川氏であることも知っていて、無意識のうちに(?)当時の湖川氏には描きやすいであろうと、松本零士調のキャラデザにしてしまったのかもしれないけど……(笑)。
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http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1
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