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2019年2月8日(金)からアニメ映画『劇場版 幼女戦記』が上映中記念! とカコつけて……。
劇場版の前日談たる深夜アニメ『幼女戦記』(17年)評をアップ!
幼女戦記 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者の魔法少女vs信仰を強制する造物主!
(文・T.SATO)
(17年4月27日脱稿)
魔法のホウキの代用品で空を飛ぶ魔法少女と、旧ドイツ軍との組み合わせ。
現役アニオタなら誰もが思うだろうが、前クール昨秋の『終末のイゼッタ』(16年)とも力ブるなぁ。両作共に人気声優・早見沙織がサブヒロインだしィ(笑)――アッチは気高き王女様、コッチは従順な二等兵っぽい副官で、正反対だけれども――。
健康的なイゼッタ嬢は大型銃器にまたがって劇中内ではほぼ唯一絶対の魔女だったけど、本作の幼女は眠そうかつ性格キツそうでもある面妖な声でしゃべるおチビの9歳(!)。
右足ブーツ底に付けた特製魔法鉄板をホウキ代わりに超高速で空を飛び、ライフル銃を撃ちまくる! 見開いた両眼も爛々、それを隅取る濃ゆいマツ毛もパッチリな、不敵な面構えの金髪ショートの碧眼幼女が魔法使い部隊を鬼隊長として率いる!
常に重苦しく垂れこめた暗雲と第1次世界大戦を想起させる幾重にも細長く連なる塹壕に、大砲の発砲と着弾の硝煙もただよう草木も粉砕された荒野の戦場。このへんのビジュアルの徹底もスゴいけど、名作反戦映画『西部戦線異状なし』(30年・79年にリメイク)の時代も遠くなりにけり。
一昔前の深夜アニメ『戦場のヴァルキュリア』(09年)にも感じたけど、偽史ではあっても前世紀の欧州世界大戦時の古式ゆかしい兵器や軍装や当時の欧州の牧歌的な田園風景に、レトロなロマンを不謹慎にも感じてしまうのは筆者だけか?(汗)
そして『イゼッタ』との決定的相違は、旧ドイツもどきの立ち位置。ナント、本作における旧ドイツは敵国ではなく自国である! この幼女は定番悪役のために戦っている「悪徳国家の犬」ですよ~(爆)。
#1は迫力ある陸戦や空戦を見せるだけといった感じで、中身はさしてナイけどそれだけで間が持つので、タイクツせずに鑑賞できた。けれど、作画だけ凝っていて中身はスカスカ、あるいは#2から作画は並の作品も珍しくはないことから、真価の判定は#2以降にお預け。
しかし、#2では#1を上回る衝撃が!(笑)
#2こそサブタイ通りのメタ時系列を遡った「プロローグ」。現代日本の大企業の人事部とおぼしき冷徹そうな長身エリートサラリーマンが、容赦なくダメ出しして中年社員をリストラ通知していく姿が延々描かれる。
ナンじゃこりゃ? と思いきや。電車待ちをしていた東京駅ホームで、逆恨みしたリストラ社員に背中をドンされて……。
この小憎らしいエリート男が本作主人公の幼女の前世かよ!?(爆) コレじゃ萌えアニメにならないじゃん!――アッ、萌えアニメじゃなかったんですネ(汗)――
そして彼を異世界に輪廻転生させる際には、グノーシス主義的な悪い(?)神さまも出現!――この世が不条理に満ちているのは、天地創造の神もまた不完全な存在であったからという紀元前からある異端思想。転じて『仮面ライダーアギト』(01年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011108/p1)でも引用されたように、物質世界を創造したのは悪い神で、それとは別の良い神もこの宇宙の外にいて、それが人類に精神や知性を与えてくれたなどのバリエーションもあり――
基本的に本作は、前世の記憶も引き継いだ反則キャラの幼女が、魔法もアリの異世界近代で、孤児院から士官学校に進んで軍人になって立身出世することで、身の安泰を図りつつ、かといってムダに戦闘狂でもなく、宮仕えの(サラ)リーマンの身だから仕方なく前線に投入されて、勝利を納めていく姿が描かれる――まぁそれでも、国際法規に準じた幼女の声での事前通告を、敵軍はイタズラだと思うことを見越して、奇襲に掛かるなどの悪知恵を働かせるあたり、狂人ではないけど悪人だとは思う(笑)――。
それと並行して描かれる幼女と神との対立劇。
「現代人は、特にオマエは信仰心がウスい。神への感謝が足りない」との理由で「自身を信仰しろ」と強制してくる神さまに対して、精神のレジスタンスを行なう幼女の方こそ正義なのだ! という内容だったら、個人的には今となっては陳腐凡庸だから鼻で笑うけど、そーはならない。
この幼女がまた、神に対して「市場原理主義(!)を叩き込んでやる!」(爆)とホザいてみせる、さすがに前世は現代日本のリストラ・首切り専門の人事部長の出自だけあって、神なき弱肉強食・優勝劣敗の新自由主義者であるあたり、どっちもベクトルは違うけど、双方ともに「正義」とは云いがたい(笑)、独仏戦のみならず、ロクでもない両極端の2者の対立劇でもあるあたり、本作の構図自体が尋常な作劇術ではナイ――しかも劇中では幼女が超魔法を発揮する際の神との交換条件でイヤイヤ形式的に神を讃えるけど、こんなの正しい信仰といえるのか?(笑)――。
この作品、旧独が大戦で勝っちゃう不道徳な作品なのかと思いきや。最終回では後年のド・ゴール大統領ならぬ旧仏のド・ルーゴ将軍(笑)の亡命政府まで登場。
日独伊が滅びても残ったスペインのフランコ独裁も、戦争や革命によらず数十年後には軟着陸して今ではノンポリのサッカーの国なんだから、旧独が勝ってもイイじゃんかと小一時間。
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http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181123/p1

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