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幼女戦記 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者の魔法少女vs信仰を強制する造物主!

『異世界かるてっと』 ~原典『幼女戦記』・『映画 この素晴らしい世界に祝福を!-紅伝説-』・『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』・『盾の勇者の成り上がり』・『劇場版 幼女戦記』評  ~グローバリズムよりもインターナショナリズムであるべきだ!
『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』1期&2期  ~ネトウヨ作品か!? 左右双方に喧嘩か!? 異世界・異文化との外交・民政!
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 2019年2月8日(金)からアニメ映画『劇場版 幼女戦記』が上映中記念! とカコつけて……。劇場版の前日談たる深夜アニメ『幼女戦記』(17年)評をアップ!


幼女戦記』 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者魔法少女vs信仰を強制する造物主!

(文・T.SATO)
(2017年4月27日脱稿)


 魔法のホウキの代用品で空を飛ぶ「魔法少女」と、「旧ドイツ軍」との組み合わせ。
 現役アニオタならば誰もが思っただろうけど、前クール昨秋の『終末のイゼッタ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201101/p1)とも内容が力ブるなぁ。両作ともに人気声優・早見沙織がサブヒロインだしィ――アッチは気高き「王女様」、コッチは従順な「二等兵」っぽい副官で、正反対だけれども――。


 健康的なイゼッタ嬢は大型銃器にまたがって劇中内ではほぼ唯一絶対の「魔女」だったけど、本作の幼女は眠そうかつ性格キツそうでもある面妖な声でしゃべるおチビの9歳(!)。
 右足ブーツ底に付けた特製魔法鉄板をホウキ代わりに超高速で空を飛び、ライフル銃を撃ちまくる! 見開いた両眼も爛々、それを隅取る濃ゆいマツ毛もパッチリな、不敵な面構えの金髪ショートの碧眼幼女が魔法使い部隊を鬼隊長として率いるのだ!


 常に重苦しく垂れこめた暗雲と第1次世界大戦を想起させる幾重にも細長く連なる塹壕に、大砲の発砲と着弾の硝煙もただよう草木も粉砕された荒野の戦場。このへんのビジュアルの徹底もスゴいけど、名作反戦映画『西部戦線異状なし』(1930年・79年にリメイク)の時代も遠くなりにけり。
 一昔前の深夜アニメ『戦場のヴァルキュリア』(09年)にも感じたけど、偽史ではあっても前世紀の欧州世界大戦時の古式ゆかしい兵器や軍装や当時の欧州の牧歌的な田園風景に、レトロなロマンを不謹慎にも感じてしまうのは筆者だけであろうか?(汗)


 そして、『イゼッタ』との決定的な相違は、旧ドイツもどきの立ち位置。ナンと、本作における旧ドイツは敵国ではなく自国である! この幼女は定番悪役のために戦っている「悪徳国家の犬」ですよ~(爆)。


 #1は迫力ある陸戦や空戦を見せるだけといった感じで、中身はさしてナイけどそれだけで間が持つので、タイクツはせずに鑑賞ができた。けれど、作画だけ凝っていて中身はスカスカ、あるいは#2からは作画が並レベルになってしまう作品も珍しくはないことから、真価の判定は#2以降にお預け。


 しかし、#2では#1を上回る衝撃が!(笑)
 #2こそサブタイトル通りのメタ時系列を遡った「プロローグ」。現代日本の大企業の人事部長とおぼしき冷徹そうな長身エリートサラリーマンが、容赦なくダメ出しして中年社員をリストラ通知していく姿が延々と描かれる。
 ナンじゃこりゃ? と思いきや。電車待ちをしていた東京駅ホームで、逆恨みしたリストラ社員に背中をドンされて……。
 この小憎らしいエリート男が本作主人公の幼女の前世かよ!?(爆) コレじゃ萌えアニメにならないじゃないか!?――アッ、萌えアニメじゃなかったんですネ(汗)――


 そして、彼を異世界に輪廻転生させる際には、グノーシス主義的な「悪い(?)神さま」も出現!


――この世が不条理に満ちているのは、「天地創造の神」もまた「不完全な存在」であったから……という紀元前からある異端思想。転じて『仮面ライダーアギト』(01年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011108/p1)などでも引用されたように、我らが住まう「物質世界」を創造したのは「悪い神さま」で、それとは別に「良い神さま」とでもいった存在がこの「物質宇宙」の「外側」にはいて、それが人類の体内にタネをまくように「精神」や「知性」を与えてくれたのだ!(「肉体」や「肉欲」や「劣情」などの物質的なモノの方は「悪い神さま」由来のモノなのだ!)……などのバリエーションもあり――


 基本的に本作は、前世の記憶も引き継いだ反則キャラの幼女が、魔法もアリの異世界近代で孤児院から士官学校に進んで軍人となって立身出世をすることで、身の安泰を図りつつも、かといってムダに戦闘狂でもなく宮仕えの(サラ)リーマンの身だから仕方なく前線に投入されてしまって、その上で勝利を納めていく姿が描かれている――まぁそれでも、幼女の声での「国際法規」に準じた「事前通告」を、敵軍は「子供のイタズラだろう」と思うことを見越して、「国際法規」に反しないかたちで奇襲を仕掛けるなどの悪知恵を働かせたりするあたりで、狂人ではないけど充分に悪人ではある(笑)――。


 それと並行して描かれる幼女と神との対立劇。
 「現代人は、特にオマエは信仰心がウスい。神への感謝が足りない」との理由で「自身を信仰しろ!」と強制してくる神さまに対して、精神のレジスタンスを行なう幼女の方こそ正義なのだ! という内容だったら、個人的には今となっては陳腐凡庸だから鼻で笑うけど、本作ではそーはならない。
 この幼女がまた、畏(おそ)れ多くも神さまに対して「市場原理主義(!)を叩き込んでやる!」(爆)などとホザいてみせる、さすがに前世は現代日本のリストラ・首切り専門の人事部長の出自だけあって、神なき弱肉強食・優勝劣敗の「新自由主義者」であるあたりで、どっちもベクトルは違うけど、双方ともに「正義」とは云いがたい(笑)、独仏戦のみならず、ロクでもない両極端の2者の対立劇でもあって、本作の構図自体が尋常な作劇術ではナイのだ――しかも、劇中では幼女が超魔法を発揮する際の神との交換条件でイヤイヤ形式的に神を讃えているけど、こんなの正しい信仰といえるのか?(笑)――。


 この作品、旧独が大戦で勝っちゃう不道徳な作品なのかと思いきや……。最終回では後年のド・ゴール大統領ならぬ旧仏もどきのド・ルーゴ将軍(笑)の亡命政府までもが登場。
 日独伊が滅びても残ったスペインのフランコ独裁政権も、戦争や革命によらず数十年後には軟着陸して今ではノンポリのサッカーの国なのだから、旧独が勝ってもイイじゃんか!? と小一時間……。
劇場版 幼女戦記 クリアファイルB

幼女戦記 2 [Blu-ray]
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(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.69(17年5月4日発行))


『劇場版 幼女戦記』 ~グローバリズムよりもインターナショナリズムであるべきだ!

(2022年3月1日追加)
(2019年冬アニメ映画)
(2019年4月27日脱稿)


 大企業の人事部で非情なリストラを断行していた冷徹なサラリーマンがその不信心を神さまになじられ、演技派のロリチビ系アイドル声優悠木碧(ゆうき・あおい)が眠たそうで狡猾そうでもある面妖なボイスで演じる金髪ショートの不敵な9歳児の幼女として、西欧近代チックな異世界へと転生。
 前世の知識を持ち越した彼(彼女?)は、生活のために軍人に志願。魔法部隊の部下を率いて敵国と戦い、イヤイヤながらも神を讃える呪文で発動する超魔法の力も借りて(汗)、旧独モドキ国家を勝利へと導いていく……。そんな背徳感にも満ち満ちた深夜アニメの続編が映画で登場だ。


 今度の主敵はソ連ソビエト連邦)モドキ。さすが市場原理主義者(=新自由主義・経済絶対主義)を自称する幼女だけあって、劇中でも自身のポリシーとは真逆な共産主義者や共産イデオロギーへの蔑視や敵視を公然として隠さない(イイのか?)。とはいえこの作品も、主人公幼女を劇中内絶対正義として描く作品ではない。「神」・「新自由主義」・「共産主義」すべてを懐疑してみせる視線がある。


 ちなみに筆者も、90年代以降は「右派」や「左派」よりもグローバリズムな「新自由主義」こそが最大の悪であり、日本のみならず世界中に「競争至上」・「利己主義」・「貧富の格差」・「駅前風景同一化」をもたらしたと考える。「新自由主義」経済による「ヒト・モノ・カネ」の「過剰流動性」に人間一般が適応できるワケがない。持続可能な「地域」・「家族」・「個人」・「職業」の安定性をも毀損する。
 だから、対抗策として「毒には毒を」で、「ナショナル」で「ローカル」で「インディビジュアル(個人)」な「右派」や「左派」を「新自由主義」経済にブツけて、せめてこの風潮に対してブレーキをかけることこそが喫緊であるとは私見する――筆者個人は「右派」「左派」ともに信じちゃいないけど(笑)――。


 「世界」は「人類補完計画」な無個性で均質な溶けたスープとも実質的には変わらない世界統一ルールに基づく「グローバリズム」で統一されるべきではない。粒度が粗い粒立った「インターナショナル」で「インターローカル」で「インターインディビジュアル(インター個人)」な、各々が「個性」や「地域性」や「お国柄(くにがら)」を保ったままで、個別で相互に都度都度で交渉・調整するような世界になるべきで、その伝でアメリカのトランプ大統領現象や各加盟国の「関税」を撤廃するTPPからの離脱、イギリスのEU離脱も大局では正しい! とすら考えているのはココだけの内緒である(爆)。
 上から目線でザル頭向けに書いておくと、「日本は鎖国をすべきだ!」などとは云っていない。「細胞膜」を通して早すぎず遅すぎず、「適度なスピード」で養分を摂取したり老廃物を排出することこそが肝要なのだ。コレが早すぎると経済的にはインフレ、もしくは国内産業や体内器官・内臓の破壊や体液の流出、遅すぎると経済的にはデフレ、老廃物も蓄積してしまうのである。
 「適度なスピード」で「ヒト・モノ・カネ」がバランスよく内外に流動・輸出入をしつづけることが望ましいのであって、「グローバリズム」はコレを急加速する方向性で破壊をしてしまうモノなのだ。


 むろん、人間や生物の「細胞膜」なり「体表」なり「皮膚」に相当する、各国における「国境」なり、自宅と隣宅や道路との「境界線」、自分と他人の「輪郭」それ自体を撤廃することなどは論外ですらある。
 各個や各国が自我やアイデンティティー・個性を保って、各自の必要性に応じて外物を摂取し、自身にとっての毒物であれば排除をする。あるいは、善悪両面があるモノであれば条件を付けて適量で摂取をする。国内の産業や雇用を破壊するモノであれば、「関税」をかけることで産業や雇用は保護すべき、もしくは世代交代に費やす数十年分をかけて退場させるべきモノなのであり、その「関税」収入は「富の再分配」などに回すべきなのだ。
 「自由貿易」それ自体を疑え! 「保護貿易」を再評価せよ! 経済学には元々「幼稚産業保護理論」といったモノまであるのだ! 「グローバリズム(一体化主義)」ではなく「インターナショナリズム(国際主義)」であるべきなのだ! 


 「国家」には「富の再分配」機能が一応は潜在している。しかし、公的な「国家」を弱体化させて私的な「企業」のみを優先させる「グローバリズム」には「富の再分配」機能がそもそも備わってはいないのだ。
 ネット上の巨大掲示板2ちゃんねるの投稿小説出自の深夜アニメ『まおゆう魔王勇者』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200123/p1)終盤では、破綻国家が「変動為替レート制」を導入。自国通貨を「為替安」に誘導して輸出増で稼ぐことで自国経済&国家財政の再建を果たしていた。しかし、ドル通貨を残したイギリスを除くEU諸国は統一通貨・ユーロを採用してしまったばかりに、財政破綻国家・ギリシャはこのテも使えなくなってしまったのだった。EUから離脱してユーロから元の通貨・ドラクマに戻して「変動為替レート制」に戻した方がイイと思うゾ(汗)。


 脱線が過ぎたので本題に戻ろう。


 TVアニメシリーズ『幼女戦記』は神懸かった大傑作であったとは私見する。しかし、この『劇場版』は駄作ではないけどイマ半な感じがする。その理由のひとつは、幼女が本作では終始、苦戦が続いていることで勝利のカタルシスには乏しいこと。そして、幼女を父の仇と付けねらうメリケン義勇兵の少女の描き込み不足にあると私見する。


 実に合理的な戦術・戦略・政略眼で今まで快勝を重ねてきた幼女が、脅しのハズの首都・モスクワ奇襲を、好悪の情からヤリ過ぎてしまったがために、「過ぎたるは及ばざるがごとし」の「窮鼠、猫を噛む」で、ソ連モドキによる人海戦術での大反撃を惹起してしまう。史実の独ソ戦でもいくつかあったようなソ連軍の雲霞のごとき物量投入による、倒しても尽きない絶望感あふれる東部戦線での都市包囲戦が本作では描かれる。


 それと並行して描かれる、前日譚たるTVアニメシリーズでは幼女との連戦の果てに戦死してしまった連合国の魔法軍人の遺児である娘さんの復讐劇! 新大陸(アメリカもどき)へと疎開した清楚であったお嬢さんが、軍規違反を繰り返して幼女を執拗に付けねらう狂気の義勇兵として再登場するのだ。
 しかし、ソ連モドキとは異なる、顔や人格も見える敵役として、彼女が戦う動機や変貌の経緯も相応に尺を割いて描くべきだったと思えるのにコレがウスい。製作予算(=短めの上映時間=約1時間40分)の問題があったのやもしれないけど、ならばなおのことTVシリーズでのその娘さんや、その親父vs幼女との歴戦の映像を本映画の冒頭や端々でそのまま再利用するかたちで尺数を増やして、ベタでも舞台設定や背景設定を説明して、義勇兵と化したお嬢さんに対しても観客にももっと「感情移入」といわずとも何らかの「同情」なり「一理」はあるのだと思わせるべきだったのではなかろうか?


 亡命先の自由な新大陸でも保守的・敬虔な(狂信的な?)宗教者に徹していた義勇兵少女と、それとは対極的な存在である無神論国家のソ連モドキ。この両者を幼女が同時に敵に回してみせる、「2元論」ではない「3元論」な構図自体はとても魅惑的なのだけど、完成作品ではそのへんのエッジもあまり立ってはいなかった。
劇場版 幼女戦記(dアニメストア)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.74(19年5月4日発行))


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  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210912/p1(『幼女戦記』系の記事は当該記事と同一内容)


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幼女戦記』評! 新自由主義の幼女vs信仰を強制する神! 再放送中記念!
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