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マクロスF最終回 〜キワどい最終回を擁護

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 TVアニメ『マクロスF(フロンティア)』(08年)映画版2部作前編『劇場版 マクロスF 虚空歌姫イツワリノウタヒメ〜』が2009年11月21日(土)より公開記念! とカコつけて、今さら『マクロスF』最終回評をUP!(執筆自体は放映直後)


マクロスF(フロンティア)』最終回「アナタノオト」評

(文・T.SATO)
(2008年10月執筆)


 今や『ガンダム』シリーズに一応つづく、良くも悪くもブランドと化した「メカ&歌&三角関係」を旗印としたリアルロボットアニメの金字塔『マクロス』(82年~)シリーズ最新作『マクロスF(フロンティア)』(08年)もとうとう完結!


 個人的には高く評価するけど、理詰めで……、あるいは放映終了後に冷静に振り返ってみると、いくらでもツッコミの余地があるすばらしい最終回だった!(笑)


 ある意味、作品自体の根本にある倫理性を崩壊させかねない、マクロスフロンティアとは別の宇宙移民船団が膨大な数の船民ともども宇宙昆虫により全滅してしまった原因は、悪気はなくとも幼いころのメインヒロインが持つ特殊能力のせいだった!! なぞという、そんな償いようもなく、精神的にも耐えようがないであろう、まさに「大罪」を背負わせる作劇をするのだろうかフツー?(笑)


 さらには最終回にて到着した宇宙昆虫たちの緑豊かな本拠惑星で、虫々さんたちと共存ができるのか? 虫々さんは襲ってこないのか? 家族を虫々さんに殺されてしまった遺族の気持ちはドーなんだ?――アレだけ大規模な人類とのまさに「戦争」を繰り広げた虫々さんたちの方は知性がナイようだから、人間たちを憎んだりもしなさそうなので大丈夫なのかもしれないが(笑)――。虫々さんたち同士の精神感応(超時空通信)の大元であり、感染すると死に至るというウイルスがこの惑星にもウヨウヨしているのでは!? などとみんなでツッコミしよう!


 2時間ミステリドラマのラストシーンのごとく、三島大統領代行の悪事を本作のレギュラーキャラたちがみんなで暴いて糾弾したあとは、「バトル&歌」そのものの勢い&ノリだけでひたすらにメドレーで押し切っていく、実に没入させてくれて酔わせてもくれる展開!


 歌舞伎役者上がりの美形青年パイロットと、姉御系歌姫と妹系歌姫の三角関係。最後にどちらかを選ぶことなく「お前たちがオレの翼だ!」って両手に花かよ!(笑) まぁ結婚適齢期の20代ならぬ、まだハイティーンの3人ではあるから、このオチでもイイのだナ。しかも、少年と姉御系歌姫のふたりは、妹系とはちがって恋よりも芸事を極めるタイプだろうから、このふたりについては完全に相思相愛の関係になるのもウソくさいかもしれないだろうしネ。


 とはいえ、男気があっても男女間のことでは実に優柔不断な主人公青年が、先の三角関係での選択同様に、「歌舞伎」・「飛行機乗り」・「女友達」どれかに限定せず、最終的には「すべて含めてオレだ!」としてしまう結論についても、個人的には結構スキだ――ただまぁ、「思わざれば花なり、思えば花ならざりき」などという逆説的な箴言(しんげん)については、ある程度の修練を積んだ人間だからこそ、上手くやろうという小賢しい作為・意識がなくても体が自然に動いてしまって、その方がまさに「花」になれる、かえって上手く役を演じられるのである……ということだろう。よって、血のにじむような修練なぞに励んでいない、サボってばかりである我々のような凡俗は、彼の発言を参考にしない方がイイと思う(汗)。むしろ、我々凡人は人の10倍は修練をして、意識的に気居いを入れて演じることで、ようやっと人並みに列伍することができるといいますか……・笑)。


 20世紀後半以降は「政治」よりも「経済」の時代になっている。本作におけるラスボス眼鏡美女の目的も超生命体となって銀河や全人類を監視して隷属させることだと明かされたが、それはいかにも悪者っぽくはあるものの、リアルに考え出してしまうとそこに経済的なメリットが何かあるといえるのだろうか? そんなことをしたら、かえって経済が萎縮してデフレ不況が起こってしまいそうだ(笑)。
 何らかの産業が興隆するならば、アニメやゲームやエロでも弾圧せずに自由にやらせて、しかしソコからは税金を取ろう! となるのが、いわゆるポストモダンな「後期近代」。ラスボス眼鏡美女の目的よりも、虫々さんやそのウイルス由来の「超時空電波」の技術を独占して大儲けせんとする流通業の大物、『マクロス』初作の敵巨人族のオッサンの方がよほど現実的じゃあなかろうか?(笑) ……なーんてツッコミは、最後はドンパチで終結させるのが宿命である戦闘ロボット活劇モノについての論評としてはヤボですな――いかにもな悪党ではなく、そんな経済ボス(汗)を倒してみせてもカタルシスはないだろうし、そもそも経済ボス程度だとソレを大掛かりな戦闘で倒してみせることが正義だとはいえなくなってしまう(汗)――。


 ところで、この鉄道ジオラマなども愛している邪気のないオタッキーで好々爺然とした流通業のドン。ラスボス眼鏡美女の企みに間接的には加担しつつも、実はそれは数十年前の『マクロス』初作に登場したアイドル歌姫に直に会いたかったためだったとゆー、年老いて功成り名を遂げてもアイドルに憧憬していた少年のころのハズかしい想いごときが動機であるらしかったことも、ひっそりと映像化されていた。それはそれで美しいようなメーワクなようなダブル・ミーニングなことでもあったけど……。


 そして、ここでも来ましたヨ! 近年だと特撮ヒーロー『仮面ライダーカブト』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070211/p1)などでも使用されていたオールドSFな「タキオン粒子」という概念が、ここでは虫々さんやウイルスや超時空鉱石由来の「超光速粒子」として!――アインシュタイン相対性理論では「光速」こそが「絶対」不変で、「時間・空間」の方が「相対」的であって伸縮してしまうというモノ。そこを転じて、光より速いスピードで動く粒子が仮に存在するとした場合に、原理的にはその超光速粒子は「時間」を「逆行」することが可能だというアレ!――


 この何でもアリアリな設定があれば、本作終盤では虫々さんたちの女王虫として進化してしまった妹系歌姫によるテレパスな超能力やご都合主義なども、すべてが説明できるのだけれども……。あんまりにもな反則設定だというツッコミも入りそうなので、そのSF的な解読については自粛いたしますが(笑)。


 もちろんウイルス感染者でもない主人公青年が妹系歌姫と精神感応できたのは、虫々さんの体内で生成される超時空電波による「群れ」まるごとの交感をも強化していた超時空水晶(フォールド・クォーツ)を彼個人の耳飾りにしていたからだ! という物理的なリクツも付けてはいたけれど……。


 しかしそれも、虫々さんのウイルスに感染したことで、フツーは死亡フラグが立ってしまった姉御系歌姫の死に至るハズである「脳内細菌」が、透過光処理をされたキラキラした映像で、瞬時に「脳内」から「腸内」へと移動していって助かってしまう超展開で台無しに!(笑) トドメには胃カメラが急降下していくような主観映像! 短い尺のショットでもヒロインの食道内を見せつけてくれたTVアニメなんて今まで観たことがなかったゾ!(爆笑!)


妹系歌姫「バジュラ(宇宙昆虫)はおなかで歌うんだよ」
美青年主人公「そうか!」


 ……って、本作最終回を視聴後に、もう一度ビデオで冷静に再鑑賞をしていると、何が「そうか!」……だったのかが、チッとも判らなくなってくることに気付いたりもする(笑)。女王虫の頭部への攻撃は無効なのだ! 本体である腹部への攻撃のみだ! とまぁ、そーゆーことを「映像」「音楽」の勢いも込みとして、有無も云わさずにナットクさせるのが「演出」というモノのまさにマジックなのだろう!(必ずしも悪い意味ではなく、良い意味で!)


 いやもう、今回は本作『マクロスF』否定派にツッコミされる前に自分で指摘してしまって、議論をせずに逃げを打とう! という作戦の文章だったりしますけど(汗)、このムチャを歌&勢いだけで洗脳的に持っていく「演出」! 延々と描かれた虫々さんとの「共生不可能性」も「死亡フラグ」も、妹系歌姫が最後にひっくり返してしまうという「ウソ八百」の夢物語!



 それでも、本作を肯定しますよ、ワタクシは。否定派の御仁を論理的に反駁・説得する自信はまったくナイけれど(笑)。


 SF(?)設定面では前述してきた通り、相当にムチャもやっているけど、もちろん人間ドラマ部分での群像劇の決着のさせ方としては堅実な作りだったことは指摘しておきたい。終盤で唯一死亡してしまったレギュラーの金髪イケメン眼鏡くんの青い戦闘機の銃器を、実らなかった恋仲のクラン嬢が、さらには主人公にリレーして、妹系歌姫の実は兄ちゃんでもあったサイボーグ男子クンにもサポートされつつ、ラストシューティングに用いてみせる! というように。


 ナノテクサイボーグでもあり最後は巨大怪物化していたとはいえ、元は人間であったラスボス眼鏡美女ひとりだけに本作における巨悪を体現させて殺しちゃってもイイのか!? と多少のひっかかりも正直あるけれども、その図体からして逮捕・拘束しての近代的な裁判にはかけられそうもないのだし(笑)、『マクロス7(セブン)』(94年)のように最後にラスボスまでいっしょに主人公と同じ歌を歌いだして和解の方向に持っていったら、本作の世界観・リアリズムの喫水線ではギャグにすぎて台無しになってしまうので(笑)、リアリズムが優先されるワケでもないSF活劇としてはこのオチでもイイのではなかろうか?


 もちろん他にも、虫々さんの母星に移住しなければフロンティア船団の人々は絶滅してしまうから仕方がないともいえるけど、この移住もある意味では侵略なのでは? そして、移住自体も成り行きの結果論で、そもそもの発端はラスボス眼鏡美女とはまた別の悪人キャラによる計略だったじゃん! とか、プチ疑問も浮上してくるけど、現実社会の歴史もそんなモノだろうから「まぁイイか」。旧約聖書でモーゼが紅海を割って移住していった先のカナンの地で「聖絶」(=先住民虐殺)していたのと比すればマシだ!?(汗)


 って、「善悪はあざなえる縄のごとし」を描く歴史モノでもないのに、フツーのSF物語・SF活劇でこの設定はドーなんだ? という気持ちも脳裏の片スミにはあるけれど……。私的には許容範囲にしておこう!(今回の論の説得力がかぎりなくゼロに近くなるかもしれないけど・汗)


 小さな要望を云わせてもられば、ごくごく個人的には、『マクロス7』みたく作画がイマイチになろうとも1年間の放映作品にしてもらって、シリーズ前半の半年分くらいは地方のドサ回り営業を延々と経験させてから妹系ランカ嬢にメジャーな歌姫としてブレイクしてほしかったとも思う。しかし、そもそも作画がイマイチの作品だったら今どきの若いオタクたちにはそこでウケないだろうし、一応の「大作」感も醸せないだろうから、半年放映のシリーズだったこと自体もコレはコレでよしとしよう!


 長いキャリアのワリには大ヒット作には恵まれなかった河森カントク。今季はついにベタ層についてもねらいに行って、若年マニアにも届くヒット作を出せたことが長年の河森ファンとしてもとても嬉しい。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.45(08年12月28日発行))


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