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ゴブリンスレイヤー ~レイプに売春まで!? 周縁のまつろわぬ民は常に憐れで正義なのか!?

『幼女戦記』 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者の魔法少女vs信仰を強制する造物主!
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 2020年2月1日(土)から深夜アニメ『ゴブリンスレイヤー』(18年)の新作OVA『ゴブリンスレイヤー GOBLIN’S CROWN(ゴブリンズ・クラウン)』が劇場先行公開記念! とカコつけて……。
 深夜アニメ『ゴブリンスレイヤー』評をアップ!


ゴブリンスレイヤー』 ~レイプに売春まで!? 周縁のまつろわぬ民は常に憐れで正義なのか!?

(文・T.SATO)
(2018年12月26日脱稿)


 顔面までヨロイで覆った騎士さんもいるけど、手脚の素肌を隠した白のロングコートに白い大きな帽子をかぶり、青色の色彩アクセントで清潔感と崇高さも醸しつつ、金髪ロングに性格良さげで垂れぎみなお目々もパッチリ、両手で杖を抱えた美少女をキービジュアルに据えていることから、アリガチなナンちゃって感が満載の西欧中世ファンタジー風味の志が低いラノベ原作アニメかと思いきや。


 #1のAパートでは、元気なオボコい剣士の少年が、武闘家の少女・魔法使いの少女・治癒魔法で後方援護する先の金髪ロングの少女とともに、洞窟に潜むファンタジー世界お約束の二等兵、ヤラれ役の戦闘員キャラでもある緑褐色の低身長、低知能な小人(小鬼?)族・ゴブリン退治に勇ましくもおキラクに出掛けたら……。
 当初は鬼退治に善戦するも、次々出現するゴブリンで形勢逆転。殴打や棍棒フルボッコ、刀矢で斬られ刺され射られ、リアルな肉体性のある暴力や撲殺(!)が描かれて、あげく重傷で動けない武闘家少女にゴブリンたちがよってたかって陵辱してバックから……。上がる悲鳴!


 ヒエェ~~!! 公式・本家自体が二次創作エロ同人と化してるヨ(爆)。
 「ゴブリンって強くネ?」という謳い文句で深夜アニメ『灰と幻想のグリムガル』(16年)でもファンタジー世界に重たいリアリズムを導入する試みはすでにあったけど、同秋季2018年の深夜アニメ『転生したらスライムだった件』におけるコミカルに描かれて主人公との意思疎通も可能な可愛らしいゴブリン族の描写とはエラい違いだ。


 その洞窟に悠然と現れるゴブリン殺し専門のヨロイ騎士。毒塗り刃でもう助からず苦悶する魔法使いの少女にはせめてもの情けか躊躇なく介錯のトドメを刺し(!)、剣や盾や弓矢や体術でバッタバッタとゴブリンを嬲り殺していく!
 直前でゴブリンの蛮行が描かれたので、ヨロイ騎士のカナリ暴力的な戦い方に辟易(へきえき)すると同時に、喝采も送ってしまうような背徳感も味あわせるのが本作のミソ。


 しかし、悪徳でも結果的には正義を守っている一応のヒーローとして描かれるアメコミヒーロー洋画のデッドプールhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20160705/p1https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180625/p1)やヴェノムなどとは異なり、生き残りのゴブリンの幼体たちまで惨殺!
 下宿先の大家さんが「あんたはタガが外れてる」と評したように、劇中内での一応の正義ではなくやや相対化、冷淡に突き放され視聴者の感情移入を阻むようにも作劇・造形されている。


 つづく#2のAパートでは、物悲しげな家族たちに見送られて、赤毛ショートの幼女が馬車に乗せられ去っていく光景が描かれる。次のカットは安宿のベッドで全裸にウスい掛け布団で物憂げに横たわる豊満に成長したサブヒロインたる少女の図。
 その後もお喋りな幼女のころとは異なり、ニコニコ笑顔でもひとりだと口を半開きに少々虚ろで放心ぎみ。そしてトロトロと喋る少女に、思わず彼女は両親に売られて売春婦に身を堕とし、それをゴブリン殺し専門のヨロイ騎士さんが身請(みう)けでもしたのか? なぞと憶測してしまったけれども。
 軽くググってみると、そのような出自設定はナイようで(?)、スレたマニアたちにはそーと思わせようとしたミスリード演出でもあったのか?


 洋の東西を問わず、娘を身売りするような貧しい時代がかつてあり、善し悪しは別に人類最古の商売としての売春もあって――レイプや性奴隷は商行為ではナイから別モノですよ~――、第1次世界大戦が舞台のヘミングウェイの小説『武器よさらば』(1929年・32年と52年に映画化)でも軍や義勇兵に売春婦が追随、中世末期の百年戦争が背景の深夜アニメ『純潔のマリア』(15年)でも傭兵たちに売春婦団が伴走していた。


 それでは忌まわしき戦時売春を全廃すれば万事解決なのかと思いきや、ナチドイツ陥落後の首都・ベルリンでは女性の過半が、独全土では数百万人もがソ連兵のレイプに遭う大惨事――満洲でもしかり――。
 小は子供間で絶えないイジメもそーだけど、法律がなくても身を律せる人間は極少数で、ほとんどは罰則があるから悪事をしないだけのヒトの皮をカブった悪魔であるから、権力者のみならず庶民・大衆・子供のことをも信じるナというのが筆者の結論だ(笑)。


 近年では世界的に売春の歴史が失念され、歯の浮くようなキレイ事が跋扈して、往時の日本にだけ慰安婦が奴隷のように存在したかに語られているけど、仮にアナタやワタシにとっては風俗産業が不要であっても、庶民・大衆の圧倒的大多数にとってはそーではナイのだから(爆)、人間一般の汚い性情をも踏まえて制度設計しておかないとイザというときに危険だとも思うゾ。その意味で公的には売春やギャンブルが禁止でも、ソープでは本番可能でパチンコ屋のヨコでも景品の換金が黙認されているのはダブル・スタンダードではあるけれど、オトナの知恵だとも思う――警察官も非番の日にはお世話になっていますから(笑)――。
 人間の全員とはいわず、人間一般には蕩尽(とうじん)的な欲望もある以上は、ヘタに禁酒法なぞを作ったら、高額でも飲みたい輩もいる以上、アル・カポネみたいなヤクザが大儲けする逆説も歴史が教えているワケだから、徹底弾圧でもなく積極的な賞揚でもない適量の発散は必要だ――その上で、ブローカーにダマされて連行された女性の救済、慰安所外での性的暴行への重罰も必須――。


 陽気でコミュ力がある売春婦たちが傭兵と行軍中でも大声でエロ話に興じていたのは『純潔のマリア』だけど、沖縄でも日本人より米軍人とHする方がお株が上がると豪語するギャルたちがいて、90年代カンボジアで選挙監視に各国のPKOが駐留したらすぐに売春宿ができ、高収の売女が地元の男を蔑み、旧東ドイツ地域の女性たちも華美を夢見て故郷と故郷の男たちを捨てて去っていく。
 他方で往年のTV時代劇『大奥』1983年版では、「目黒のサンマ」の逸話でおなじみ5代将軍・綱吉の母となる八百屋あがりのコケティッシュな天真爛漫少女とは対照的に、3代将軍・家光(演・沖雅也。~本役が遺作となった・汗)に見初められた性に無知な少女が床入りで恐怖にかられて逃げ出して江戸城内の井戸に身投げし自殺しちゃうけど、そんなウブな娘もいるだろう。
 そして、普段はイケメンやマッチョにナビいてカタギを見下す娼婦たちが、ソ連兵から身を呈して一般子女らを守った逸話は、作詞家・なかにし礼原作の満洲引き揚げ映画『赤い月』(04年)での光景であったか? 女性も実に多様で複雑な存在だ。


 そんなソ連兵ならぬゴブリンに、冒険者や辺境の村落の子女は陵辱され、心を病んだ少女が修道院に入ることもよくある話だと語られて、ヨロイ騎士の姉もそんなひとりであったという。ならば、復讐に燃えるのもムリはない――歴史的にも「周縁の民」は常に虐げられてきた「弱者」というワケではナイ。天高く馬肥ゆる秋になると農耕民の収穫や民生品に子女らを強奪しに来る存在でもあった――。


 しかし、相手がハエや蚊やゴキブリにペストや天然痘や化け物ならば殲滅に罪悪感もナイけれど、人間に近しくて種族内での親子・仲間間での情愛や知能もあるゴブリンを殲滅するとなると、途端に倫理的・ポリティカルコレクトネス(政治的に正しい)的な複雑性も帯びてくる――そこが作者のねらい目なのだろうけど――。
 と同時に、数百~数千年スパンでは融和の可能性があっても、数年~数十年スパンでは和解の余地などナイように見えるのならば、ゴブリン殲滅もやむなし、殺れ殺れ殺っちまえ! という暗い情念を、虚構世界で秘かに発散させる適量の毒物作品ではあり、筆者も結局は下賤の輩なので、その情念に身を浸(ひた)すのであった……(汗)。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.73(18年12月29日発行))


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