假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありませんので、悪しからず!(笑)

ヴァイオレット・エヴァーガーデン ~ほか、私的には豊作だった2018年冬アニメ12本評!

『たまこラブストーリー』 ~親密な商店街にオタの居場所はあるか!?
『響け! ユーフォニアム』 ~手放しの傑作か!? 2015年春アニメ評
『映画 聲の形』 ~希死念慮・感動ポルノ・レイプファンタジー寸前!? 大意欲作だが不満もあり(長文)
『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-』 ~眼帯少女も高1なら可愛いけど高3だとヤバいかも…に迫る逸品
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[アニメ] ~全記事見出し一覧


 2019年9月6日(金)からアニメ映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝 ―永遠と自動手記人形―』が公開記念! とカコつけて……。
 京アニ製作の深夜アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(18年)評ほか2018年冬アニメ全12本のレビューをアップ!
 (先の事件で犠牲になられた方々のご冥福と、心身に重症を負われた方々のご回復を祈念いたしております)


ヴァイオレット・エヴァーガーデン』 ~ほか、私的には豊作だった2018年冬アニメ12本評!


(文・T.SATO)
(2018年4月27日脱稿)

ヴァイオレット・エヴァーガーデン


 第1次大戦直後の西欧に酷似した世界で、戦時には特殊兵として活躍したらしき、人情の機微には疎いけどオトナしげで健気な金髪美少女。その手袋をはぐと、両手&両指はミガかれた金属の義手となっている。
 彼女は生き別れたイケメン上官の命に従い、戦後は上官の友人が起業した都心の洋館の郵便会社で、顧客の煩瑣な口述の要点を捉まえ美文名文に仕立て直してタイプライターで代筆する「自動手記人形」なる新興の職に就く。
――第1次大戦レベルの科学&医術なのに、あの義手の原理は? なぞとツッコミしてはイケナイ(笑)――


 そこでの同僚・顧客・仕事を通じて、戦争と戦場での軍隊式の事務的な報告や連絡しか知らなかった彼女が、軍隊以外の一般社会や一般常識、ヒトをダマして陥れるためのウソではなく、思いやりや労り、否定・拒絶をするにしても婉曲に表現することでショックを和らげる、潤滑油としての優しいウソや物も云いようの人情の機微を学ぶことで、リハビリ・成長していくサマを描きつつ、ゲスト顧客たちのちょっとイイお話や人生模様も綴っていく作品だ。


 そーいう意味では、各話の展開の先は読めてしまうのだが、展開よりもその過程における、人物たちの繊細な描写の秀逸さや普遍的な心情が堪らない。
 天下の京都アニメによる、髪の毛や服装の線も実に多い美麗な8頭身キャラと、西欧の石造りの街々の雑踏やのどかな田園風景の高精細な背景美術で、ここで漫画的にフザケますとかナンちゃって頭ポリポリのギャグには逃げない、実にマジメで端正な空気感を醸すことにも成功。
 彼女が美文名文を書けるようになるのが早すぎる気もするけど、そこは1クールアニメなので仕方がナイ(笑)。


 ある意味では国際政治の犠牲かもしれないけど、戦後の平和を人々に実感させるために、某国の王子と別の国の王女を結ぶため、そしてそこに政略だけでなく、自分たちで選んだ主体的な愛もあるのだと感じさせ、その背中を押すために、主人公の金髪少女が王女の意を組んで恋文を代筆していく回も実によかった。王女役は『マクロスF(フロンティア)』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091122/p1)での少女ヒロイン役以来、少々キンキンと声に華がありすぎるせいか、もう少し弱そうな声質が望まれる美少女アニメ界にあっては役のゲットに恵まれなかった感もある中島愛(なかじま・めぐみ)がマリッジ・ブルーな儚げ少女の嫁ぐことへの不安を好演していた。


 病弱な娘を喪ってしまった湖畔に住む大劇作家。高山の大天文図書館での同業者一斉投入による古文書の筆写などの良編も挟みつつ、戦時に生き別れた忠誠を尽くした上官の生死のナゾと、彼女自身の戦時の罪にも迫るかたちで物語のクライマックスも作っていく……。


 天下の京都アニメ作品も、『涼宮ハルヒの憂鬱』などの一連の石原立也カントクのラインは面白く、『境界の彼方』の石立太一カントク作品はイマイチと私見してきたけど、失礼ながら石立カントク作品で初めて面白かったと思った次第。

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からかい上手の高木さん


 落ち着いてるけど少々コケティッシュな、栗色の髪を真ん中分けしたセミロングの女子高生・高木さん。彼女が片ヒジをついて傾げた小首を片手に乗せて、隣席の男子生徒をジッと見ているビジュアルが印象的だ。


 シニカルに解剖すれば、ある種の男子どもが女である自分の眼差しにテレてくれることで、広いイミで間接的・限定的に男子を手玉に取ってプチ・コントロールできるワケだから、彼女は自分のルックスや女性性にも自信を持てて、オボコい男子よりも精神的には優位に立てよう。
 あぁ何という不平等。近代的で対等な個人の付き合いとは程遠い。実に嘆かわしい。日本に近代がやってくる日は遠い。……と思いつつ、筆者もこんなコが相手なら屈服して溺れて靴の底までナメてみたい(オイ)。


 とはいえ、彼女にはクラスの中心で君臨するギャル娘ほどの強さやコミュ力はナイし、運悪く付き合った男がDV野郎だったら反撃できずに精神的に支配されてしまう程度の強さしかナイようにも思える(私見)。コレは彼女のことをバカにしているワケではない。強すぎずもせず弱すぎずもせず、ちょうどイイ塩梅だナと(笑)。


 ただし、キャラ造形はそれなりに秀逸でも、それだけで間が持つワケでもない。それ以外の面ではキャッチーさに欠けるようにも思えて、ワンアイデアだけの作品に留まっているとも私見。加えて、現在主流の萌え4コマの人畜無害な美少女キャラを愛するオタにもウケそうにはないけど、ニッチな鉱脈には思うので支持者は貢ぐべきだ……と思っていたら。意外な爆死の「漫画タイムきらら」系の萌え4コマ原作の同季深夜の美少女アニメスロウスタート』をはるかに上回る6千枚超のヒットを記録!

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メルヘン・メドヘン


 紺色セミロングの髪を後ろに編んだ、ほっぺたプニプニ系のキャラデザで、オドオドビクビクしていかにもトロそうな、他人に対して嫌悪や悪意もいだかず、しかも読書・空想好きの夢見がちで性格もよさげな女のコ。
 そんな彼女は、他人に話しかけられると内気・照れ屋さんなあまり、赤面してパニクって、その場から走って逃げ去ってしまうという(笑)。
 いかにも大好物が弱者女子である弱者男子の好みにもマーケティング的に沿った作品だが、そんな彼女がクールな黒髪ロング女子のサブヒロインを見掛けて、ストーカーのようにあとを付け(汗)、図書館経由で異世界へと転移して、序盤では魔法少女の修行をする作品だ。


 キャラデザ原案は、昨2017年秋の深夜アニメ『妹さえいればいい。』や早5年前の『変態王子と笑わない猫。』(13年)の原作ラノベ挿絵や、アニメ映画『ガラスの花と壊す世界』(16年)のキャラ原案などでも見掛ける、今をときめく「カントク」によるもので、そのへんでも売上を狙ってきている。


 書籍・図書館・魔法修行。こう書くと、女児向けアニメテイストもあるような、深夜アニメ『リトルウィッチ・アカデミア』や『魔法使いの嫁』(共に17年)みたいな良質のファンタジーになることを想起するのだが……。
 異世界の旅館みたいな大浴場で全裸となり、古式な革表紙の百科事典サイズの大部の書物で胸と前を隠して、廊下を一目散に駆け逃げる図で、その志は推して知るべし(笑)。萌えを前面に出したキャラ造形・キャラデザともに、いかにもオタ受けウケしそうだが、序盤の段階では文芸面では特筆すべきことはナイ(多分)。


 物語好きという設定があるのならば、そこを前面に押し出して、そのこととウラハラの浮き世離れや教室でのボッチぶりを深掘りし、現実・粗暴・実務・効率至上などを象徴させる物や者をゲストで対比的に登場させることで、いくらでもお話を肉付けできそうにも思うのだが……。
――そのへんの、物語愛好家のオタたちや、創作や二次創作に奇妙な執念を燃やす作り手たちの多様さや作劇秘術や業を描き究めたのが、昨2017年春の深夜アニメ『Re:CREATORS(レクリエイターズ)』と私見するけど、比較対象としては不適切だネ・笑)――


 もちろん甘ったるい美少女ウリ自体が罪というワケではないし、ターゲットを絞った嗜好品である以上は、ナイものねだりな要望をブチまけているようだったらスマンです。


(後日付記:中盤以降の作画崩壊~再放送連発~最終展開未放映(翌年CSで放映)については、ふれないでおきます・汗)

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キリングバイツ


 キリング。直訳すると殺人(汗)。人間が獣人に変身して、動物の能力で死闘をくりひろげる作品。
 こう書くと、昆虫や動物の能力を獲得した改造人間たちが、火星で直立二足歩行できる進化を遂げたゴキブリたちと戦う青年誌漫画『テラフォーマーズ』(11年・14年に深夜アニメ・16年に実写映画化)などを想起するけど、大雑把に云えば似たようなモノだ(?)。


 しかし、主人公が一応は可愛いけどギャルが入っていて目許も爛々、ボディーに厚みもあり太ももムッチリかつ筋肉や躍動も感じさせる、不敵な印象もあるミニスカ制服女子高生なあたりで、一般の少年・青年層向けではなく、オタ向けの気配がプンプンしてくる。


 しかもそのオタ向けの内実も、21世紀以降の主流・萌え美少女ではなく、80~90年代に隆盛を極めた今は懐かし、すっかり傍流・キワモノとなってしまった戦闘美少女というヤツだ。
 原作漫画の連載媒体は21世紀の『月刊少年キャプテン』こと『月刊ヒーローズ』! そうか、こんなニッチな媒体でかろうじて戦闘美少女は命脈をつないでいたのか? ところで、戦闘美少女専門の『月刊コミックヴァルキリー』、まだあったんですネ(笑)。
 古いタイプのオタとしては、こーいう戦闘美少女も決してキライではないのだが。


 ところで、現実世界に近しいヤンキーDQN・不良学生たちがガンを飛ばし、肩ヒジ張ってガニ股で周囲を威嚇しながら、生身の拳で喧嘩バトルをくりひろげる不良漫画の系譜がある。
 可愛いモノがわかってしまう僕(笑)でありつつ、「共感性羞恥」のケがあり、他人の痛みや羞恥に良くも悪くも敏感すぎてヒトに対してキツく当たれない傾向(汗)がある弱々しいオタの過半は、そのテの漫画の描写に幼いころから少々の肉体的痛みを想起してしまったり、力強いけど乱暴な描線にいくばかの汚ならしさを感じて苦手意識をいだいてしまい、それよりかは心秘かに少女漫画的なデオドラントな絵柄に、自身の感性に近しいモノを感じがちだったと私見する――個人の体験を一般化するなってか?(笑)――。


 ただまぁそれも小学生くらいまでで、思春期に入って弱いままでは生存できないことを悟ったり、ある種の男性ホルモンが分泌されだすことで(爆)、相変わらず現実に近しい肉体的痛みを想起させるヤンキー漫画は苦手でも、舞台を時代劇や昭和の任侠世界に変えたり、超能力が発現したり改造手術を受けたり遺伝子を操作されたりナゾの生物に寄生されて、手足が刃物や銃器や文房具(笑)などに変形してバトルするような作品だったり、相手も頑丈な人外の存在であったりすると、アラ不思議。
 途端にファンタジー・フィクション度が高まるのか、自身や相手の肉体的痛みに斟酌する必要なく、アクション・身体・ピカレスク(悪漢)の快楽に酔えて、むしろそれらに執着したりする。


 その一種として、戦闘美少女もあったと思うが、衰退したのはナゼか? 80年代後半以降、歴史的にはおしとやかであるよう抑圧されてきた女性の自由・本音・欲望が解放され、3次元の女子の過半は強くなり、それまでは男性側の専売であった女性の美醜のランク付けを、女性側も男性に対して逆レッテルすることで脅かし、若い非モテの弱者男子が勝ち気な戦闘美少女に、3次元女子の無遠慮な残酷さを微量に垣間見るようになったからだと私見するのだが。
 「自由」なんてそんなモノだ。「礼節」に裏打ちされない「自由」なぞは無意味。「自由」よりもはるかに上位の理念として「礼節」を対置せよと云いたいけど略。


 そんな鬱憤を晴らすべく(コジツケ・笑)、中肉中背の女子高生がいかにも悪そうな一回り大きい野郎獣人どもを倒していくのは小気味イイ。作画は粗いが、美麗さを要求される作品ではナイので無問題。ジャンルのトップ走者になれようとは微塵も思わないけど、本作のように円盤売上が爆死確定の作品も平気でアニメ化されるあたり、深夜アニメの豊穣さ(商売的デタラメさ?・笑)を言祝ぐべきかもしれない。

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刀使ノ巫女(とじのみこ)』


 女子高生たちが霊力ある日本刀を振るって巨大怪獣のごとき化け物を退治する深夜アニメ。
 こう書くとコテコテの作品だ。加えて、その巫女でもある妖怪退治集団が霞ヶ関(政府の官公庁)に関係し、警察&機動隊とも連携して作戦行動している#1冒頭の映像。長年のアニオタなら早くも10年も前の深夜アニメで、ワリと何度も(昨2017年秋も)再放送があった『喰霊―零―(がれいゼロ)』(08年)も想起してしまうかもしれない。


 いわゆる今は昔の戦闘美少女の系譜に連なる作品だが、キャラデザは肉体の厚みや筋肉や瞬発力を感じさせるものではナイ。昨2017年春の円盤売上が1000枚に満たずに爆死した『武装少女マキャヴェリズム』同様、描線も細くて淡泊でシンプルなもの。
 そして性格付けも、明朗短気なケンカっ早い胆力も度胸もある筋肉バカ少女なぞではなく、バトル抜きのフツーのキャッキャウフフな美少女アニメに出てきても違和感がない、元気少女・クールな黒髪ロング少女・控えめ少女・ロリロリ少女・銀髪ショートの薄倖少女・快活な金髪外人少女などの既視感あふれる記号キャラそのものだ。


 志が低いなぁと小バカにしようと構えていたら。コレがナンとも面白い。18年冬季深夜アニメのマイベスト!(恥)
 こーいう作品を見せつけられると、パッケージ・設定はテンプレそのものでも、その作品のクオリティなり本質・エッセンスというモノは、「見せ方」というのか文章で云うところの一種の「文体」、「話芸」「語り口」のようなモノにも規定され、砂を噛むような味気ない説明・アラスジなどの単なる「段取り」ではなく、みずみずしいプリプリ感・張り・テンションもありつつ、風情や叙情を通じた緩急ある劇中事物や人物への求心力をもたらす「叙述」のようなモノへと表現が昇華した作品に、人々は「面白み」や「ツカミ」を感じるのでは? とも思案する。


 本作で云うと、まずは岐阜県の田舎街の女子剣道部(?)の2強で幼なじみかつ親友でもある元気少女&控えめ少女の描写と試合、部活仲間たちとの日常ではじまり、選抜メンバーでもあるふたりが新幹線で新横浜まで上京するくだりが描かれる。
 下車するや駅前でのちに本格的に知り合う刀剣少女たちを見掛けて、神社大社のようなシックな雰囲気の建築物を前に勝ち抜き御前試合が開催。元気少女vs幼なじみ少女ならぬ、元気少女vsナゾのクールな黒髪ロング少女との決勝戦! と思いきや、黒髪少女は切っ先を女性の御前さまに向けて白昼堂々の暗殺を図らんとする!
 ……暗殺に失敗するや黒髪少女は御前の側近たちから逆襲されてその場から逃走! ところが元気少女は持ち前の白痴ぶりか博愛主義か、黒髪少女をとっさにカバい、自身も逃避行を共にすることで、無実なのに同罪扱いされてさぁドーする!? 相棒サブヒロインも幼なじみ少女ではなく、あとから登場した黒髪少女の方かヨ!? というところで、#1を幕とする。


 #2以降も、都内のカラオケ店や木賃宿ロードムービー風に奇妙な逃亡を続けるふたり。逃走中にも関わらず、近くに妖魔が出現したと知るや、現場に退治に出掛ける底抜けのお人好しぶり。それで居場所をつかんだ幼なじみ少女による説得作戦の失敗。残された選抜刀剣少女や大社の上層部、各主要高校の女校長たちの困惑なども描きつつ、記号的なキャラ付けをされたレギュラーの刀剣少女たちを刺客として小出しに登場させバトルさせることで、その人物像や関係性・他キャラとの相性なども描いていく。


 刺客と思ったら第3勢力によるテストだった! 敵だったけど女上司の暴君ぶりに疑問を持って寝返る! 敵でも常識人として職務に忠実な少女! モラルがない刀剣バトルだけに執着する性格異常な狂少女!


 第3勢力が意外な大組織で長年の観察により、大社の中核の御前自身が20年前の大妖怪退治の際に妖魔に憑依されたことが明らかになることで、黒髪少女の私怨を超えて反抗の大義も獲得、孤独な逃避行から大規模な反撃に転じていくストーリー展開の変転の妙もうまい。
――オタ向け作品中盤でお約束のハダ色成分サービス回も、逃走成功後の潜伏先での平凡に見える神社周辺での露天風呂&夏祭りでの浴衣姿でシッカリとノルマをこなしつつ(笑)――


 結論。設定や人物はナマっぽい女子ではなく漫画アニメ的なテンプレの萌え記号(悪口・批判ではなく)。しかし、お話の方はテンプレを超えて二転三転して技巧的。
 加えて、萌え記号なりに友人・母親・女校長などとの複数との関係性も描きつつ、各キャラに行動動機も持たせることで肉付けにも成功。
 母親・女校長・反抗組織・敵幹部たちの人物・立場・思惑・面従腹背なども描くことで、小は少女たちの私的紐帯、各種組織などの中間共同体、大は日本の危機といった積層構造も描けたことで世界観も狭くない。高尚に走らずベタなオタ層への目配りもできている。


 しかし、アイドル・戦車・戦艦などでの合戦による間接バトルとは異なり、拳ではない霊的刀剣とはいえガチンコ直接バトルの戦闘美少女といったあたりで、今の若年オタにはイマひとつウケないかもしれず。


(後日付記:本作は2クールアニメ。第1クール終盤で化け物の総本山たるラスボスの巨大な大妖怪を遂に撃退してみせる!――コレに伴ない、ラスボスに憑依されていた女御前さまも解放!――
 その後、第2クールでは平穏に戻った日々でも時折り、小者の化け物が出現し、コレを撃退する中での後日談が描かれていく。
 ……といったシリーズ構成が、古いタイプのオタとしては、怪獣よりも強い生物兵器「超獣」の家元である異次元人ヤプールを中盤で倒すも、シリーズ後半ではラスボス亡きまま「野良超獣」が跋扈する往年の『ウルトラマンエース』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070429/p1)のシリーズ構成を思い出す――『高速戦隊ターボレンジャー』(89年)でも可(笑)――。
 で、ラスボスが根絶できておらず、次第に復活を遂げて再戦することになるのだろうということはミエミエだが、ミエミエでも盛り上がるのであれば、やってくれなきゃウソである。
 大妖怪だったラスボスが、「破壊」・「共存(……といっても支配)」・「友和的で自己の実存を模索」といった3属性に分裂して3人の美少女(笑)の姿を取るのはこのジャンルのお約束でもある。
 しかし、ココに諸々の陣営の思惑(おもわく)もカラんで、単なるパワーゲームではなく――第1クールではキャラ紹介+パワーゲームでイイとも思うけど――、バトルに各々の思想や生き様も背負ったかたちで、バトル&ドラマを一体化させて単なる善vs悪ではなく三つ巴ともすることで、単調にはせず盛り上げてもみせている――女御前の過去への悔恨に基づく行動原理の付け方もうまいネ――。
 よくできた活劇エンタメであり、美少女キャラを記号の範疇でもナマっぽく魅惑的に見せることにも成功していたのだが、特段注目を集めたワケでもないのが、水商売の無情なところではある・汗)

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『citrus(シトラス)』


 美少女アニメでは悪者として登場するか存在しないことにされる(笑)金茶髪なギャル娘と、学園の御曹司でもある黒髪ロングの清楚な生徒会長。この水と油のようなふたりの女子高生の百合関係を描く作品。


 弱者男子にとっての都合がイイ、可愛さや健気さに特化した性格や、頭身も低くて描線も少なく丸っこい記号的な萌えキャラではなく、デッサン骨格しっかり系の繊細ナイーブな描線による8頭身で、ナマっぽい複雑な内面・人格も感じさせる造形のキャラデザでもある。
――アニメでも実写でも、物語である以上は、すべての人物には記号的な簡素化・性格の単純化が施されてるというツッコミはここではさて置き、程度問題として捉えてください――


 近年の単なる女性同士の友情すら「百合」と呼称してしまう風潮には個人的には疑問をいだく。それらが百合なら、ありとあらゆる美少女アニメはすべて百合だろう。百合ってのは、深夜アニメ『青い花』(09年)みたいなガチで嘆美で繊細でデリケートで、時には女性同士の性愛も伴う作品のことを云うのであって(以下略)。
 そこの『桜Trick』(14年)、すぐにキスするな! そこまでに至る押したり引いたり、付かず離れずな中間過程や揺れる心情を経ないと、キスの場面が盛り上がらん!(笑)
 3期も作られた美少女アニメゆるゆり』(11年)に至っては、どのへんが百合なのかが筆者にはサッパリわからない……。エッ、「ユルい百合」を省略したメインタイトルで全力でエクスキューズしている作品に、そのツッコミはナンセンス? コリャまた失礼いたしました。
 まぁ確信犯的にズラした総称にツッコミを入れるのはヤボですナ(汗)。


 一応ギャル娘が主役だけど、そこは野郎向け商品としてもよくできていて、彼女は真性ギャルではない。いやファッション&スイーツな輩ではあるし、ファミレスでは妄想彼氏とのHをギャル友たちに見栄っ張りにも罪悪感なくスラスラと自慢するけど、少女漫画『オオカミ少女と黒王子』(11年・14年に深夜アニメ化)の主人公とも同様、その実態は非常にウブだともゆーあたりで、我々非モテのオタク男子もホッとする。


 ここで「ウブなギャル」という語句に、昨2017年夏の深夜アニメ『はじめてのギャル』を連想した御仁は間違っている! いや、正しいのかもしれないが(汗)、繊細な描線の本作と豪胆な描線の「はじギャル」を同一視するのは、本作に対する冒涜である(爆)。本作でギャル娘を演じる竹達彩奈嬢は、「はじギャル」では清楚な黒髪ロングなのに自室ではギャルの隠れユーチューバーであったが(笑)。


 で、気合いを入れて化粧をして制服も適度に着崩し、転入先の高校に乗り込んだギャル娘は、校門の前で黒髪生徒会長に拒絶され……。
 トコロがドッコイ、この堅物そうな黒髪生徒会長が校舎裏で若手男性教師とキスをしているのを目撃したことから(!)、ギャル娘は黒髪生徒会長をその件で脅そうとするも、逆にその唇を奪われて……。
 果てはギャル娘の奔放な母の再婚により、その黒髪生徒会長と義理の姉妹として同居することになり! ……といった往年の少女漫画『イタズラなKiss』(90年・96年にTVドラマ・08年に深夜アニメ化)パターンにもなったりして、なかなかといわずともまぁまぁの序盤ではある。
 しかし、その後の展開は、キョーレツなヒキなり背徳感(汗)には少々欠ける淡泊なモノにも個人的には思えて……。


 とはいえ、アイドル声優竹達彩奈嬢の少々小生意気でも放埒の域には行かず節度も感じられるボイス演技は、本作のギャル娘役にはピッタリに思う。「あずにゃんペロペロ」の『けいおん!』(09年)からでも丸10年。この業界では中堅の域に達したにも関わらず、18年冬季は本作の他に『ラーメン大好き小泉さん』『だがしかし2』と3作ものメインヒロインをゲット!
 昨2017年の缶コーヒー・ダイドーブレンドCMではヒーロー課で黒い強化スーツをまとって顔出し出演を果たし――今やってるCMでは声優・内田真礼(うちだ・まあや)だが――、今年2018年の『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190526/p1)の女敵幹部役の妖艶な声も見事だし、まだまだ延命できそうだ。

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ゆるキャン△


 「ゆるいキャンプ」の略称に、テントを「△」に見立てた作品タイトル。ホンワカまったり系の美少女キャラたちがキャンプを楽しむという作品だ。
 同工異曲の山ガール初心者の女子高生たちを描いた登山アニメ『ヤマノススメ』(13年)が、山岳や登山装備やキャンプ装備などのウンチクも描いてウケたゆえの二番煎じだと容易に推測できる安易な作品でもある。
 とはいえ、二番煎じであろうが、面白ければオール・オッケー!


 しかし、リアルに考えたら、たとえ同好の趣味の士が泊まりこんでる半ば企業形態の安全なキャンプ場とはいえ、未成年の女のコがひとりでテントに寝泊まりするだなんて、どんな育児放棄な親御サンなんだヨ! あわよくば、ナンパして強引に付きまとってHに持ち込んじゃう悪い野郎なんてワンサといると思うけど――もちろんこの作品では、そーいうイヤ~ンな現実は描かない――。


 こーいう作品はストーリー展開の妙ではなく、ディテールのあるある感、もしくはアリそう感。あるいは、その道だけの「リアル」に根差したテクニカルな有用感……といったモノがキモである。
 しかも「リアル」といっても、それはアウトドア趣味の世界だけに特化した話である。世知辛い現実や社会問題にスクールカースト(爆)などの「リアル」は持ち込み不要!
 アウトドア趣味のウンチク以外は、ファンタジー・非リアルなまったり美少女たちの優しいポワポワしたやりとりだけがあればイイ(笑)。


 先の『ヤマノススメ』は、こまっしゃくれたイタズラ気質の黒髪ミニツインテ嬢に強引に巻き込まれるかたちで、インドア派で内気そうな銀髪ショートの影がウスそうなオボコい女子高生が、チョロそうな低山から登山に挑戦し、初心者目線で登山ウンチクを知りつつ、富士登頂には高山病で途中でリアイアさせることで、オタク男子の庇護欲を離脱するほどに成長することは回避させつつ(?)、とはいえ結局は登山そのものよりも、丸っこくて筋肉も感じさせない頭身も低い小学生みたいな女子高生キャラたち(笑)のまったりした可愛いやりとりが主眼ではあった。
――基本的にはそれでOKだが、5分アニメや15分アニメだったとはいえ、だったら1話まるまる登山装備の蘊蓄トークに回すような番外編もあった方がイイようにも思ったが――


 本作ではもう少々キャンプ装備ウンチクに重点を置きつつも、しかしてイイ意味で記号的な美少女キャラたちの入念な描写にも抜かりがない。富士五湖湖畔で「ひとりキャンプ」していたオトナしげなボソボソ喋る黒髪ショート女子――『ヤマノススメ』2期(14年)でも似たようなカメラ女子が出てきたナ……と思いきや、声優も同じ東山奈央(とうやま・なお)嬢――に、考えナシで富士を観に来て昼寝して帰宅できない時刻に目覚めた花守ゆみり嬢演じるピンク髪の元気女子が図々しくまとわりつく導入部で、リアルかはともかく漫画アニメ的には双方のキャラ&関係性も立つことでツカミもOK!


 #2以降はこのテの作品常套のご都合主義で、ふたりは同じ高校の生徒となって再会を果たし、仲間も増やしていって、試しに校舎の裏でテントを仮組みしてみせるといった内容。
 ここでオッサンオタもウンチクを披露すると、今は昔の80年代中盤にはもう、ここでお披露目されるカルくてウスい畳むと非常に小さくもなる化学繊維&プラスチック棒によるテントは登場してました(笑)。


 この作品、個人的には30分ワクだと少々間延びして見えるかも……と私見する。円盤売上も同季冬アニメの最大の話題作『ポプテピピック』の倍以上に達する1万3千枚の大ヒットを記録しているが、若年オタらの言動を見るに、バズったワードで配信サイトをポチッとしてしまうかたちの視聴が定着したことで一極集中が発生、かつ長いモノには巻かれろの奴隷根性が発動しているようでもあり、オタクシーンは多様な作品を輩出しつつも、多様でないようにも思えて……。

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博多豚骨ラーメンズ


 ネームバリューのワリには円盤売上的には爆死に終わった同季の冬アニメ『ラーメン大好き小泉さん』みたいな美少女グルメ漫画の二番煎じと思いきや。
 舞台は人口の3%が殺し屋(!)だという設定の北九州の大都市・博多……。博多に失礼だろ。博多に謝れ!(笑)
 しかも、博多を舞台に繰り広げられる正義や警察ヌキでの、個人の殺し屋や会社形態の殺し屋、ウラ仕事もする探偵さんたちウラ稼業同士による抗争劇だったとは。


 なのだが、不謹慎だけれども面白い。ふだんは制服女子高生の格好をしている個人経営のクールな美少年の雇われ殺し屋クン。暗殺相手がすでに死んでいたのに、コレ幸いと自身が殺したと偽ったことから(汗)、依頼元のヤクザ集団に睨まれ、許すかわりに自分らをカギまわる探偵を殺せと命じられ、待ち伏せして殺すのかと思いきや、青年探偵さんに自身を護衛にしろと高く売りつける。
 曲折あってそれを受け入れることで、このふたりが相棒としてウラ社会を渡世していく物語だとわからせる絶妙な導入部だ。


 とはいえ、女装殺し屋クンが中国の貧乏人出自であったり、博多市長もウラ社会とつながり、そのバカ息子に至っては女性に対する殺人淫楽症で、周囲の闇社会のスタッフが本来の業務をハズれて隠滅の後始末に走らざるをえないサマなども並行して描いていく。
 殺し屋には向いてなさそうなニコニコ笑顔で善人全開の、サード主人公である殺し屋青年社員クンの成長物語としても描いていきそうな倒錯については笑ってしまうが、それがまた狙いでもあり清涼剤にもなっている。

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デスマーチからはじまる異世界狂想曲


 デスマーチバターン死の行進(汗)。
 ゲーム会社のアラサーの青年プログラマーが、土日の感覚もなくなり連日、中古ビルに陣取る会社に出勤、ムクつけき同僚たちとぱちぱちプログラムを打ち続け、同時にメールや社内SNSを確認、並行してバグ(プログラム・ミス)つぶしや顧客からのクレーム対策などの指示も出す。
 経験者が描いたのであろう、さもありなん的なディテールに満ち満ちたリアルさ、地に足が着いたその業界特有のあるあるダと思わせる描写がキョーレツなツカミにもなっている。
 頭身の低い萌え美少女社員ばかりが出てくるゲーム会社を描いた深夜アニメ『NEW GAME!』(16年)とは大違いだ(笑)。


 とはいえ、デスマーチと称されるけど悲壮感はナイ。それはパワハラモラハラなどの人格悪が登場しないからだろう。長時間労働による過労死自殺とは表層的な見方で、その実態は他人に対する共感性に乏しく嗜虐的にふるまえるパワハラ上司や同僚に原因は尽きるワケで、ここに昨今のセクハラ騒ぎや不倫騒動並みに、経営陣というよりパワハラ上司個人に対する法の裁き(業務上過失致死)や、制度設計の次元で低劣な人格に対する道徳的な評価などが手当てされないかぎりは、解決や再発防止にもならず(以下略)。


 #1のAパートで、視聴者をグッと引き込んだところで、主人公青年が寝落ちして目覚めると、高校生くらいの顔面&肉体に若返りし、各種のゲーム用小窓画面なども順次宙に浮かぶ、しかして肉体的痛みも感じさせる全天球型・仮想現実ゲーム風(?)の異世界へと転生!
 コレは夢だろう、夢でもネタになるからしっかり味わおうと考えつつ、異世界を冒険していく展開となっていく。
 よって、異世界召喚モノというより、もう15年以上も前の深夜アニメ『.hack(ドット・ハック)』(02年)シリーズに始まり、『ソードアート・オンライン』(12年)や『オーバーロード』(15年)などの仮想ゲーム世界を舞台にした作品にカテゴライズされる感。


 ていねいな助走台を経て感情移入をさせた上で、ファンタジー異世界に引き込むので、序盤に対しては筆者も高く評価する。
 荒野にはじまり、中世風都市に行き着き、そこで遭遇する記号的な獣人美少女キャラたちにも、中世的な身分差別を重くならない程度に投影してアクセントを付けたり、大きな破綻やナンちゃって感もなく、実にていねいに作られてはいる。と同時にケレン味には欠けており少々地味かもしれないが。
 オッサンオタとしては、ゲーム世界に閉じ込められる前の社畜生活のその後の方も気になってしまい(笑)、そのことが数話を経ても語られないあたりは引っかかる。ドーせなら、社畜生活と異世界を交互に描けばよかったとも思うのだが。

デスマーチからはじまる異世界狂想曲 1 [Blu-ray]


グランクレスト戦記


 『この素晴らしい世界に祝福を!』(16年)みたいなナンちゃってローファンタジーではなく、昨2017年秋の『宝石の国』『クジラの子らは砂上に歌う』みたいな少々お高く取り澄ましたハイファンタジーでもない、実に中庸な8頭身の美男美女が登場する今となっては正統派のファンタジー
 テロップを見ると、80年代末期の今に直接連なるラノベの祖といえる『ロードス島戦記』(88年)を著わした水野良原作作品。


 庶民や貴族も見守る中、和平のためにか西欧中世風異世界の2大国の王族の婚儀が、大都市の大教会の神前で開催される直前、そこにブラックホールのごとき魔が復活して大混乱に陥り2大国の王さまは落命、婚儀もご破産。再び乱世に陥るアバンタイトルで#1は開幕。


 その大混乱を目撃した、両肩・鎖骨・おヘソ・ハイソックス&ミニスカ間の絶対領域フトモモのハダ色をチラつかせて、と同時にそれを隠すかのような白いロングコートもまとうことで、才媛・高貴・活発さの鼎立を体現したキャラデザの長身で利発な金髪少女導師が、地方へ下向中に田舎の下劣な領主と配下に襲われ、助けてもうらほど弱くもないのに(笑)、別の小村の領主であり旅の途中でもあった若き青年に助けてもらったことから、諸葛孔明のごとく軍師・参謀として仕えることで彼を利用して、この乱世を統一して平和に導こう……とするストーリーであるようだ。


 この世界では、君主や領主の右手の甲の上の数センチに聖なる紋様が浮かび上がり、敵国を滅ぼせばその聖印は譲渡され、勝者の聖印の紋様はより複雑となり、もろもろのパワーも増していくといった設定で、ビジュアル的にもわかりやすい。
 ザコの悪者はいかにも悪党で、多少オトコ気のあるゲスト悪党みたいな別の地方の無骨な青年領主は、アッサリと青年主人公領主に降って頼れる仲間となっていく。
 ムダなわかりにくさもなく、そんなに欲や大望もナイ主人公だけど、理想的な封建時代(笑)の周囲に推される徳のある君主とは? 統治とは? 善政とは何ぞや? 領土拡大もどうあるべきなのか? という命題には迫れる作品にはなっており、ポリティカルなセンスもあると思う。


 てなワケで個人的には面白いと思ったのだが、ゲームやライトノベルに耽溺する弱者な自分と同類の主人公を、メタな視点から俯瞰してセルフツッコミしつつ、召喚された異世界でも自虐ギャグをまぶしながら冒険をくりひろげるナンちゃってローファンタジーや、中世ファンタジー風仮想ゲーム世界に閉じ込められるような作品群が隆盛の昨今、オタクシーンのトップランナーになれる気もしないのであった(汗)。


(後日付記:本作も2クールアニメ。かつての大家が原作を務めていることから関係各位をダマくらかして、予算もかかる2クールで高作画作品を実現してみせたといったところか?(笑) マニア世間的には不人気で終わったようだが、個人的には作品トータルとしての出来もイイと思う。
 最終展開は国家間との攻防のみではなく、この世界のウラの支配者ともいえる宗教教団との攻防ともなっていく。そして、この西欧中世風の作品世界の由来・SF的出自・ワケありの禁忌にも斬り込む。超近代的な超古代文明が人間の「自由」や「欲望」に「進歩」を無条件に肯定してきたがゆえの破綻で滅亡を迎えて、それに対する反省として停滞文明を選択したという理由が明かされていくのだ。宗教教団の陰謀には一理も二理もあったのだ! それに対して主人公たちは、再度の「自由」や「発展」を選択する決断をしてみせる!
 ミクロでは公共心皆無の私的快楽至上主義、マクロでは結局は強者のみが得をして、ヒト・モノ・カネが過剰流動して地域・家族・個人の職業の安定性も毀損していく新自由主義経済(=グローバリズム自由貿易絶対主義)に通じるおキラクな主人公の選択に、筆者個人はやや疑義を唱えたいけど(笑)、劇中内の論理ではそれをもわかった上で「それでも!」といったところで「ベタ」ではなく「あえて」で決着するので、隙も少なくなって異論・反論を述べにくい。作品世界の「今」という中世レベルの歴史的発展段階においては、それ(「自由」の賞揚)でもイイかと思えてしまうのであった……)

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恋は雨上がりのように


 長身クールな陸上女子が、バイト先のファミレスの冴えない40代の店長に恋してしまうお話。未成年相手の不純異性交友の奨励だ。通報シマスタ(笑)。
 野暮なツッコミはさておき、冴えないオッサンの筆者としては勇気が出る話だ(オイ)。とはいえ、弱者男子にとっての都合がイイ女子像といった男目線の女性描写ではなく、基本的には女子目線の物語に思える。


 フジテレビ深夜の少々ハイソ系なアニメ枠「ノイタミナ」だからこその女性向けかと思いきや、原作漫画は『ビッグコミックスピリッツ』連載だったとは。こんな漫画が青年誌に連載されるとは業界も懐が深い。


 とはいえ、女性限定の狭い内容でも決してなくって、老若男女を問わない普遍性もある仕上がりにはなっていると私見するし、今は昔の80~90年代少女漫画的な線の数も少ないシンプルな描線は、その前代や後代の少女漫画と比したら、マユ毛・マツ毛・瞳の表現などもクドくなくムダにキラキラもしておらず、かえってそれが作品をオタク男子限定や女性顧客限定に陥らせず、結果的にではあるけれど間口を拡げる効果があったようにも私見する。


 冴えない中年店長のルックスは、年長オタ的には『機動警察パトレイバー』(88年・89年にTVアニメ化)の後藤隊長といえばイメージが沸く? とはいえ、冴えない中年とはいっても、腰は低いけど過剰にオドオドビクビクもしてないし、最低限はダンディーな風貌もしているところに、中年キモオタとしては超えられない壁を見て絶望もしてしまう(笑)。
 中年店長は独身だから不倫ではなく(バツイチだけど)、長身女子高生も媚び媚びしておらず抑制的なので、その点でも禁欲的で好感が持てるストーリーともなっている。

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刻刻(こっこく)』


 #1冒頭は就活の面接で快活な受け答えをするハキハキ女子で開幕。思わず、同様の図で開幕する昨2017年春の地方振興モノの傑作アニメ『サクラクエスト』を想起してしまったが……。
 帰宅するや、自宅は狭くて古い借家で、90年代青年誌漫画『重役秘書リナ』(95年)みたいだと想起しつつ、ウス汚いブ男の父親と祖父、それにニートでゲーム三昧のダメ兄貴の図で、全然違うと思い直す(笑)。


 飾らずにダラシなさも含めてサラけ出し合う庶民の日常描写にスッカリ引き込まれたあとで……状況は一変! ハキハキ女子の妹でシングルマザー(汗)の幼稚園児の息子の迎えにダメ兄貴がイヤイヤ向かった帰りに、イカツいチンピラどもが現れて問答無用で暴力を開始! ダメ兄貴と園児クンはワゴン車で拉致される! 加えて、身代金要求の脅迫電話!
 パニくり方の描き分け、怯え・怒り・包丁を持って差し違えてでも奪還などの相違で、家族の個々人の性格も描きつつ、ジイさんが一族の秘密を明かし……。というところで、超常フィクション世界へと変転していく助走台にはホレボレとする。


 やってることは、時間を止める――厳密には時間の流れの外に出る?――能力を持つジイさんたち家族が、停止時空の反則ワザで人質を奪還しようとするモノ。
 しかし三下のチンピラの上層部には同じ能力を持つ怪しげな集団がいて……。さらには、この停止時空に時折、全身に無数の樹枝を生やしたような異形の怪物が宙空に突如出現、停止時空で横暴にふるまいすぎた人間には処刑を下していく……。


 作品フォルムの類似だけで見れば、年配オタには往年の児童向けアニメ『ポールのミラクル大作戦』(76年)だが(笑)、劇中では時間停止ならば全物質も停止しているのに、なぜ動いても空気がぶつからず呼吸もできるのか? という元・科学少年ならば脳裏に浮かべたことがある疑念も劇中人物に口にさせることで、先行作を頭ひとつ抜きん出ることができている――疑念に対する回答もナイのだが(笑)――。


 ヤクザ的なナゾの集団に拉致された家族を警察の力も借りずに奪還せねばならないという切迫した状況を作ったあたりで、本作はキャラの行動原理も揺るぎないモノとはなっており、エンタメ作劇における「勝利の法則」にもベストマッチした仕上がりだ。
 円盤を購入するようなオタ層にウケるかはまた別の話だが。

TVアニメ『刻刻』オリジナル・サウンドトラック


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.71(18年5月4日発行))


後日付記:
 まぁ工業製品ならぬ嗜好品なので、作品批評に絶対的な正解はナイのだけど、とはいえしょせんは個人の好みだと云って割り切るのにも抵抗があって……。
 その上で云うけど、適度にロジカルで技巧もあるストーリー、なおかつ情動面でも喚起していれた作品を、結局は個人の好み(笑)で断定するならば、2018年冬アニメで心の底から面白かった作品を順位付けしていくと、


・『刀使ノ巫女
・『刻刻
・『キリングバイツ
・『博多豚骨ラーメンズ
・『ヴァイオレット・エヴァーガーデン
・『グランクレスト戦記


 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』以外は爆死アニメなので、現今のアニメマニアの主流の好みや評価――『ポプテピピック』・『ゆるキャン△』・『宇宙よりも遠い場所』・『ダーリン・イン・ザ・フランキス』など――とは異なりますけど(笑)、個人的にはコレらの作品はガチでお勧めしたいところです。いや、まぁそれでも好みに合わないやもしれませんが(汗)。


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2005年春アニメ評! 『英国戀(こい)物語エマ』

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2005年春アニメ評! 『創聖のアクエリオン』 ~序盤寸評

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2004年春アニメ評! 『鉄人28号』『花右京メイド隊』『美鳥の日々(みどりのひび)』『恋風(こいかぜ)』『天上天下

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2004年冬アニメ評! 『超変身コス∞プレイヤー』『ヒットをねらえ!』『LOVE♡LOVE?』『バーンアップ・スクランブル』『超重神グラヴィオン ツヴァイ』『みさきクロニクル ~ダイバージェンス・イヴ~』『光と水のダフネ』『MEZZO~メゾ~』『マリア様がみてる』『ふたりはプリキュア

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2003年秋アニメ評! 『カレイドスター 新たなる翼』 ~女児向け・美少女アニメから真のアニメ評論を遠望! 作家性か?映画か?アニメか? 絵柄・スポ根・複数監督制!

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2003年春アニメ評! 『妄想科学シリーズ ワンダバスタイル』『成恵(なるえ)の世界』『宇宙のステルヴィア』『ASTRO BOY 鉄腕アトム

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