『天気の子』『薄暮』『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』 ~「天気の子」は凡作なのでは!? 2019年初夏アニメ映画評!
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出演者の不祥事トラブルによる放映開始遅延やコロナ禍による放映中断に見舞われながらも無事に完結したNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(20年)では沢尻エリカもとい川口春奈が、やはり同様にコロナ禍で撮影や放映が大幅に遅延したフジテレビの特番時代劇『桶狭間(おけはざま)』(21年)でも広瀬すずが、戦国大名・織田信長の正妻である隣国・美濃(みの)から来た濃姫(のうひめ)こと帰蝶(きちょう)を演じた記念! とカコつけて……
2019年に放映された濃姫が実質主役として登場する深夜アニメ2本『ノブナガ先生の幼な妻』『胡蝶綺 ~若き信長~』評ほかをアップ!
『ノブナガ先生の幼な妻』『胡蝶綺 ~若き信長~』『織田シナモン信長』 ~信長の正妻・濃姫が登場するアニメ2本他! 『超可動ガール1/6』『女子かう生』
『胡蝶綺 ~若き信長~』
(2019年夏アニメ)
(文・T.SATO)
(2019年8月3日脱稿)
アニメの神様のイタズラか、前季につづいて戦国大名・織田信長の正妻でもある胡蝶ならぬ帰蝶(きちょう)こと濃姫(のうひめ)が主要キャラとして登場する深夜アニメが連続して登場!
前季の『ノブナガ先生の幼な妻』では、
「♪クルりんクルりんクルりん、パッ!」
とオープニングで回転ダンスを踊っていた、ポーカーフェースの無表情でも可愛いくて華のある赤い着物のロリロリした低頭身な萌えキャラ14歳で、子作りを迫ることをもっぱらのギャグとして(笑)、現代の信長の子孫宅に出現した幼女の帰蝶。
伊豆の北条早雲につづく戦国大名第2号(?)で隣国・美濃のマムシこと斎藤道三(さいとう・どうさん)の娘として、表向きは婚儀でも信長暗殺(!)という大命で遣わされた、本作のニヒルでクールで武術・忍術もたしなんでいる8頭身な成熟した美女の帰蝶。
このふたりはその解釈が真逆であるどころか、同一人物であるとはとても思えない(笑)。
#1では帰蝶は登場せず、彼女の語りで、後世では魔王と称せられ、繊細な内面などナイ、思い立ったら即行動の旋風児と思われている信長も、そこまでキレている無礼な奇人変人ではなく、悩める文学青年的な内面も持ち合わせ、領内で麗しい娘を見掛けて眼だけでホレても、古代の雄略天皇のように催して草むらに連れ込んでヤっちゃったりはしない(爆)姿が描かれていく。
信長の乳母の乳兄弟で、江戸期も子孫が大名として延命したお付きの池田恒興(いけだ・つねおき)とともに、領内の浮浪児集団に肩入れし、彼らが食べていけるように、父・織田信秀の南蛮貿易の品々を港湾での輸送中、あるいは倉の中から掠め取る日々を送り、屋敷の隠し部屋にも南蛮の品々を溜め込んで、聖母像がかたどられたペンダントに理想の女性像を夢見る、夜はメガネ(!)をかけて読書に勤しむ知的・内省的・ロマンチックな姿も描かれる。
信長は隣国・美濃の現・岐阜城――織田家が国盗りする前の斎藤家の時代なので当時の名称は稲葉山城――下にお忍びで出掛けて、帰途の国境で忍者姿の帰蝶と一戦!
そして、輿入れしてきた正妻があのときの忍者だと知り、暗殺される恐怖にビビるサマも、パターン破りゆえでもあるけれども実に新鮮。覚悟を決めてホタルの舞う夜景を彼女に魅せることで心が通じ合う兆しとなるサマも少女漫画チックだけども悪くない。
本作の帰蝶を演じるのは、ドチラかといえばいつもは繊細儚げボイスを披露することが多い印象が私的にはある花守ゆみりだが、本作では甘えたり媚びたりしないオトナの自立した女性をクールなボイスで演じている。
ググってみると、メディアミックス展開もあるとはいえ、原作なしのアニメ主導のオリジナル作品であるようだ。それでいて、この作劇&作画クオリティの高さ!――それだけでも人気が出ないのが近年だけど、私的には応援したい――
『ふたばにめ!』
(2019年春アニメ)
(月曜24時 TOKYO‐MX他)
(文・久保達也)
(2019年5月27日脱稿)
双葉社刊行のコミックを原作とした『超可動ガール1/6(ろくぶんのいち)』『女子かう生』『ノブナガ先生の幼(おさ)な妻(づま)』を、3本立てで放映する30分枠。『双葉社』の漫画の深夜アニメ化3本立てだから、その枠名も『ふたばにめ!』(笑)。
30分ものを予算をかけて1本製作するよりも、低予算で短編を3本つくってセットにすることで、その全部とまではいかなくともひとつでも興味をもってもらえるなら儲けものであり、たしかに効率の良い商売の手法ではある。
『超可動ガール1/6』
『超可動ガール1/6』は、ナマ身の女子に興味がなく「自分たちの価値観をフツーだと押しつけるな!」と合コンの誘いまで断ってしまう――おもいっきり共感(爆)――主人公青年が購入した、黄色髪のロングヘアで縦長の目をしたロリ顔にボディも手足もかなり華奢(きゃしゃ)である美少女フィギュア(!?)がメインヒロイン。
実はこの美少女フィギュアは「巨人の星」(笑~地球のこと)に飛来した本物のスーパーヒロインであり、主人公青年がヒロインの股間に触れようとするや、主人公を敵だと認識して自己防衛モードを発動し、赤ビキニに装着された装甲からマシンガンをブッぱなしたりする。
しかし、やがて主人公の人間性に惹(ひ)かれて、ひとつ屋根の下で夫婦のような生活を送るという、我々みたいな非モテのオタク男性にとってはまさに夢のようなお話となっている(笑)。
在宅プログラマーらしい主人公青年は、前髪のみを部分的に茶色に染めており、デブではないが筋肉質な体型の強(し)いていうなら見た目はマッチョでミリタリー系のオタである。彼はアニメ・マンガ・ゲームが大好きなものの、美少女フィギュアにだけは手を出したら取り返しがつかないことになるとして、これまで自制をしてきたという。
女性や美少女フィギュアへの欲望はあってもそれを抑え込んでいるという、それはそれでオタ間でも一定数はいそうな、真の意味での硬派かはともかく一応は「硬派(笑)」な彼の信念を見事に見事に体現した無骨な彼のキャラクターデザインと彼の態度や言動も、この作品をベタベタの自堕落に落ちてしまうことからギリギリで救ってみせている(笑)。
『女子かう生』
『女子かう生』は3人の女子高生の日常を描く正味数分の短編。原作が「吹き出し」をほぼ使っていない、つまり、登場キャラが明確なセリフをいっさい口にしないことを踏襲(とうしゅう)した無声アニメ(笑)である。
とはいうものの、まったく声を発しないワケではなく、教室の机で大股開きで寝そべっている(汗)いまどきの女子高生に、友人のショートヘアのおとなしそうな低身長のコが近づくや、フトモモで首を締められて
「アワワワワ」
と苦しんだり、やはり友人のギスギス体型のメガネっコがいまどき女子高生の両足をつかみ、軽快にステップを踏みながら何度も開閉を繰り返した末に、いまさら股間が露出していることに
「ヒェ~~~ッ!」
と悲鳴をあげて教室を出ていったりなど、リアクションとして発せられる奇声や絶叫・笑い声などが、本作に出演する声優の仕事なのだ(笑)。
まぁ、ある意味では最も声優の力量が試される仕事ではあるだろう。
『ノブナガ先生の幼な妻』
『ノブナガ先生の幼な妻』は、戦国武将・織田信長の末裔(まつえい)であるも、ギャルゲー(美少女ゲーム)が大好きで彼女いない歴28年(笑)の中学教師・織田信永(ノブナガ・笑)が、西暦1549年からタイムスリップしてきた信長の妻・斎藤帰蝶(さいとう・きちょう)をはじめ、次々と現世で覚醒(かくせい)した信長に関係する娘たちに囲まれてハーレム状態になるという、これまた我々オタクにとっては夢のようなお話(笑)。
「さっそく子づくりをはじめましょう」
などと信永の実家で赤い着物を脱ぎ捨てた帰蝶はまだ14歳。
当時はともかく、現在は手を出したら確実に逮捕される(爆)だけに、信永は
「こういうことは好きな人とやるもんだ」
と諭(さと)すが、
「好きかどうかなんて関係ない。早くはじめましょう」
と帰蝶はやる気マンマン(笑)。
そんな世代間ギャップ(?)や、この現場を目撃した妹と母親が信永をヘンタイ呼ばわりするドタバタギャグは爆笑必至だが、黒髪ロングのストレートヘアでしっかりとしたクールな口調で話す帰蝶のキャラクターデザインが、「ジト目」であるのがまた絶妙(爆)。
ただ、帰蝶が信長に嫁(とつ)ぐ直前の470年前の戦国時代の家屋とさして変わらないと思えるほどに、信永の実家は和室が中心で蔵(くら)などもある旧家(きゅうか)のたたずまいであることから、帰蝶がふとんの上で三つ指をつき、
「よろしくお願いします」
などと頭を下げる場面にも妙に説得力があり、帰蝶が時間を超えてきたことにしばらく気づかないのにもリアリティーが感じられたものだ。
彼女は現代のコンクリ造りで再建された、中身は今では歴史博物館にすぎない山頂にある岐阜城にも登頂して、歳月の変化を実感する(笑)。
なんとも楽しい3本立てを締めるのは、『超可動ガール』のヒロインによる、かの国民的アニメ『サザエさん』(69年~)の予告編をパクった視聴者とのジャンケン。
「ジャン・ケン・ポン!」ではなく、「チッ・ケッ・タッ!」であるのが、あらためて萌(も)えさせてくれる(爆)。
『織田シナモン信長』
(2020年冬アニメ)
(土曜25時23分 テレビ東京他)
(文・久保達也)
(2020年2月20日脱稿)
1582年=天正10年6月2日、家臣(かしん)・明智光秀(あけち・みつひで)が起こした謀反(むほん)により、戦国武将・織田信長(おだ・のぶなが)は
「来世は犬畜生(いぬ・ちくしょう)にでも堕(お)ちるか。それも一興か」
とつぶやき、京都・本能寺で炎の中に散った……
その信長が現代ニッポンで本当に犬畜生として転生した世界観である(笑)。完全なギャグアニメではあるものの、現実世界ではヘタレだったオタがファンタジー世界でヒーローとなって活躍する異世界転生モノの逆パターンとして描かれた変化球といってよいだろう。
本作は赤いスカーフを首に巻かれ、飼い主の女子高生に「シナモン」と名づけられた(笑)、元・信長の柴犬=織田シナモン信長が、名前が気にいらないだの飼い主の小娘がエラそうだのとボヤいている。その一方で、その小娘の両手を皿にして飲む水はかつて信長に仕(つか)えた千利休(せんのりきゅう)が立ててくれたお茶並みにウマいなどと至福にひたる(爆)などのモノローグを中心に進行していく。
実はこの世界では信長だけではなく、数多くの戦国武将が犬として転生を遂(と)げているのだ。
・フレンチ・ブルドッグの伊達(だて)ブー政宗(まさむね)
・ポメラニアンの武田ラッキー信玄(しんげん)
・ボルゾイの上杉ジュリアン謙信(けんしん)
・ミニチュアダックスフンドの今川ギルバート義元(よしもと)
・トイプードルの黒田チャーリー官兵衛(かんべえ)
・コーギーの真田(さなだ)マルタロウ幸村(ゆきむら)
彼らが、飼い主たちが井戸端(いどばた)会議をしている間に公園の芝生(しばふ)で寝そべりつつ、信長を暗殺したのは本当に光秀なのか? と大激論を繰りひろげるさまは、たとえ姿は犬だろうが立派な群像劇である(笑)。
エンディングクレジットを見ると、元・武将の犬を演じる声優たちは皆名前の一字が「犬」となっているが、正体はバレバレである(笑)。
・織田信長が堀内賢雄(ほりうち・けんゆう)
・伊達政宗が古川登志夫(ふるかわ・としお)
・武田信玄が玄田哲章(げんだ・てっしょう)
・上杉謙信が杉田智和(すぎた・ともかず)
・今川義元が櫻井孝宏(さくらい・たかひろ)
・黒田官兵衛が井上和彦
・真田幸村が鈴村健一
大ベテラン声優と現在人気絶頂の声優たちによる布陣(ふじん)はまさに戦国武将並みの群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)状態である。彼らが実にノリノリで楽しく演じているさまが目に浮かぶほどに実に微笑(ほほえ)ましい好感度の高い仕上がりとなっている。
もっともシナモン=信長は明智光秀のことを「今度会ったらブッ殺す!」などといまだに恨(うら)んでいる。しかし、その光秀はシマリスに転生しており(爆)、そのリスを飼っているのが光秀にソックリなイケメン大学生・三津秀人(みつ・ひでと)なのだ(笑)。
「大好きだ~~!!」と叫んで抱きしめてくる光秀もとい・三津秀人(笑)に、果たして信長は復讐(ふくしゅう)を果たすのか? これは今後の展開から目を離さずにはいられないだろう(爆)。
なお、エンディング映像と予告編には本作に登場するキャラのモデルであるかに見える犬たちが実写映像で登場する。個人的には実は犬より猫派なのだが、つい本編キャラとリンクさせてしまうほどにカワイイと思えてならない。