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TVアニメ『響け! ユーフォニアム』(15年)の総集編映画『劇場版 響け!ユーフォニアム』(16年)が、2016年4月23日(土)より公開! つづけて、16年10月より第2期放映開始記念! とカコつけて……。『響け!ユーフォニアム』(第1期)評をUP!
『響け! ユーフォニアム』 〜良作だけれど手放しの傑作だとも云えない!?
(文・T.SATO)
(2015年7月26日脱稿)
主役女子が吹く金管楽器をタイトルに冠した、高校の吹奏楽部を舞台にしたアニメ。
本来あるべき『けいおん!』(09年)がココにある!?
高校の軽音(楽)部を舞台に、美少女たちが部室や自宅でマッタリとお茶とお菓子でダベっているだけでロクに練習もしていないのに、イザとなるや見事な演奏を披露していた『けいおん』。それとは対照的に、本作では延々とジミな練習光景が描かれる。
アニメ製作会社・京都アニメーションのスタッフも製作当時から内心ではツッコんでいて、自社がブランド化して自由度が増した今こそ、かつての自社作品へのアンチテーゼも行っているのに違いナイ! などと作り手の思いを、評者の意見で勝手に糊塗しちゃアカンですナ(汗)。
バンド活動なんてカッコつけて悦に入ってモテたい虚栄心の発露で、我々のような冴えないオタとは対極のリア充であり敵であったハズ! そんな作品が人気ダなんて、現実世界への怨念を日々募らせてきた筆者(笑)のような旧型オタは、それは3次元で主流の俗物たちの価値観への屈服だろ! などと、『けいおん!』のオタ間での大人気には違和感を禁じ得なかったモノである(笑)。
――若者間では非常ォ~に地味でカッコ悪いと思われてしまいがちな部活であるハズの高校の「文芸部」が舞台であった『涼宮ハルヒの憂鬱』第1期(06年)終盤における部員たちの文化祭へのロックバンドとしての参加や、エンディング主題歌映像での「ハルヒダンス」を3次元で「踊ってみた」動画の大流行にも同様の思いをいだいていたのであった(笑)――
そんな思いで長年いたトコロに登場した本作。
栗色ゆるふわヘアで一見フェミニン(女性的)なメインヒロイン。黒髪ロングの張りつめた風情の無口なサブヒロイン。
#1のアバンタイトルでは、中学時代の吹奏コンクールの結果に、前者が「こんなモンだよネ」などとサメているのに対して、後者が言葉少なにホンキで悔し涙を流して前者を驚愕させると同時に、悪いことを云っちゃった……と両者にミゾができる光景を見せつける。
後者と比すれば前者はサメてるけど、強豪校でナイのならば前者の態度もごくフツーであろう。とはいえ、漫画・アニメ・スポ根・部活モノの主役としてはたしかにサメていて――クールというほどではナイけれど――、グループの中心やその真逆のハズれ者にもなることもなさそうである、中心と周縁の中間地点にいるような平凡な主役女子とは実に珍しい。
・共にいっしょの高校へと進学して強豪でもない吹部に入ったふたり
・加えてオデコを出している初心者の元気女子
・吹部経験者の娘ムスメした女子
この4人を本作は作品の看板に据えている。しかし、「萌え」的な面での「華(はな)」にはなりえても、前述の3・4人目の娘たちはWヒロインとの対比の妙も一応は出せてはいたとしても、物語のメインストリームにまではカラんでいたとはいえない。
むしろナマっぽい内面も感じさせる、人間的・ヒューマン描写の担当は、この3・4人目の娘たちではない脇役たちの方であった!
・マジメだけれど胆力はなさそうで、それを自覚して少し悩んでいる風の女子部長
・湿っぽい内面が仮にあったとしてもオトナの態度で拘泥せずに、コミュ力が高くて大声で三枚目を演じてその場をナゴませてもいる、しかし皆とは心底からは交わっておらず、それを寂しがる風もなくタフそうな、ゆえに腹の内も読みにくいムードメーカーの黒髪ロングで銀縁メガネの副部長女子
・主役たちの入学前年の部活内紛では調停に奔走した人格者らしいけど、サブヒロインとはトランペッターの座を争って、しかして無情にも技量で敗退していくクール女子
・クール女子の信奉者でもあるらしい、馬鹿デカいリボンを付けているチビな女子。
彼らの人間描写は「点描」としてはとてもよかった。しかし、あくまでも個人としてのドラマに限定したかたちで完結していて、そのドラマ的帰結が各キャラが他人と交流する際の新たな行動原理へと昇華していったり、部活メンバーたちとの衝突後の化学反応で新局面の人間関係が進展していくといった風情はなく、優秀だけれども狡猾そうな吹部の男性新顧問の手のひらの上に乗せられて、遊びではなくガチで全国大会をめざそうという綿密な練習〜大会描写がすべてを呑み込んでしまっている。
「現実世界」においては、個人の「私的な葛藤」と「公的な行事」の「ピーク」や「底」が連動していることは、たしかにそうそうはナイものだろう。しかし、「物語世界」においては、それらの「ピーク」や「底」といった「波」がご都合主義でも連動していた方が、ドラマやテーマもシンボリックなものにも仕上げられるし、視聴者側の快感原則にも沿っていることで観ていて気持ちがよくなるものなのだ。
#8ラストの夜の高台でのメイン&サブヒロインの百合(ゆり)一歩手前の和解&高揚もイイとは思う。しかし、あくまでもこの2者間での情念の沸騰であって、その直後の展開で作品自体や吹部がご都合主義でも何らかの次のステージの高みへと向かっていくワケでもなく、平坦な日常がつづいていくあたりが、この作品の美点なのか弱点なのかについては悩んでしまうのだ。
もちろん、『アイドルマスター』(11年)や『ラブライブ!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150330/p1)に『Wake Up,GIRLS』(14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)などの美少女アイドルアニメでは、メンバー間での「技量の格差」問題についてはたとえ議題には登ったとしても、そこを本格的・リアルに描いてしまうと重たいどころか残酷なオチにせざるとえなくなるからか、技量において劣っているメンバーの分はみんなでがんばってフォローしよう! 助け合おう! 仲良くしよう! といったオチで終わっていた――あくまでもフィクションだし、美少女キャラのキャッキャウフフを気持ちよく見せることが主眼の作品なので、それはそれで「鬱(うつ)アニメ」にはならなくてもイイけれど――。
しかし、イジワルに見てしまえば偽善的であり欺瞞的に終わっていた、各個人の努力をも超えて存在してしまう「技量差」の問題をも、作品のメインストリームにも持ってきてしまうというチャレンジングな作劇! そして、たとえベタでも最終回での地区大会での優勝における感動! といった、お釣りが来るようなイイところや感動もたしかにあったのだけれども。
批評感想オタク界隈でも総じて好評ではあり、キャラ人気&売上的にも好調な本作。個人的にも悪くはないし、むしろ良作だとも思うのだけれども、今一歩のところで個人的にはややウス口に感じられてしまうのは、前述してきたようなことどもが理由であったようだ――あくまでも私見であって、本作を評価する方々にはご不興でしたならば、申し訳がない――。
音楽アニメならば、昭和41年(1966年)の高校生ジャズバンドを描いていた深夜アニメ『坂道のアポロン』、高校の少数男女によるはぐれ合唱部を描いていた深夜アニメ『TARI TARI(タリ・タリ)』(共に12年)といった傑作群のことも想起する。共に本作同様に個人の「私的な葛藤」と「公的な行事」の「ピーク」や「底」の描写は連動していなかったどころか分裂まであったという点では、先の筆者の主張とは矛盾するけど、それでも面白く感じられていたという両作についての作劇の妙が今さらながらに気になったりして……。
こう書いてくると誤解されそうだけど、2015年の春アニメの中では『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』(15年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)に次いで、あとで「まとめ見」ではなく、放映日の内に最新話を観たくなるほどには惹かれているし、相応に気に入ってもいる作品ではあるのだが。
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https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190908/p1(TVアニメ評のみ。直上記事のTVアニメ評と同一内容)
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天才バカヴォン 〜蘇るフランダースの犬〜(2015年)
http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150706/p1
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