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異種族レビュアーズ ~異世界の性風俗を描いたアニメで、性風俗の是非を考える!?

2020年冬アニメ『映像研には手を出すな!』 ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由
2020年冬アニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』 ~『まどマギ』が「特撮」から受けた影響&与えた影響!
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『異種族レビュアーズ』合評1 ~東京MXでの放映打ち切りをドー見る!?

(文・久保達也)
(2020年2月20日脱稿)


 人間・エルフ・妖精・獣人・魔族・妖怪・天使・悪魔などが共存する世界で、黒髪ロン毛の風来坊の人間男性と金髪小柄なエルフ男性の主人公が、あらゆる種族とエッチをするために怪物退治などをしつつも各地の風俗店をめぐる大冒険を繰りひろげ、そのエッチの相手をクロスレビューで評価するという内容だ。


 たしかにかなり過激な性描写が目についたとはいえ、その作風はきわめて陽性でカラッとした明るさにあふれていたことから、個人的には本作に対しては低俗だの下劣(げれつ)だの不快だのといったマイナスイメージはほとんど感じられなかったものだ。


 だが、同じ地上波でもKBS(ケイビーエス)京都とサンテレビ、そしてBS放送のBS11(ビーエス・イレブン)では放映を継続し、CS放送のAT‐X(アニメシアター・エックス)では無修正版まで放映しているにもかかわらず、唯一(ゆいいつ)TOKYO‐MX(東京メトロポリタンテレビジョン)のみ放映打ち切りとなってしまった。


 ただ、外見は美少女だが実際は500歳のバアさんのエルフを推(お)す人間男性と、人間の50歳の太ったオバサンの風俗嬢を推すエルフ男性が云い争いになり、獣人や妖怪などさまざまな種族に判定させたら人間の太ったオバサンの方が高い評価となってしまう場面は、そうした多様な価値観の尊重を描くことで、さまざまな種族が共存可能である世界に説得力を与えているとさえ思えたほどだ。


 またここに書くのもはばかられるほどの主題歌の過激な歌詞の中でも、「同じ(風俗)店に行ったら種族が違っていても仲間だ」という一節は、趣味を共有できる仲間を求める我々のような種族にはおおいに共感できるものではなかろうか?


 少なくとも同じように人間・ウルトラマン・宇宙人・アンドロイドなどの「共存」を訴えながらも、実に湿っぽい陰鬱(いんうつ)な話に終始していた『ウルトラマンタイガ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200108/p1)に比べれば、たとえエロ描写ばかりとはいえ、本作の方がその「理想郷」をはるかに的確に描いていたのではないのか?


 意外にも、TOKYO‐MXでの打ち切りをネット上では「当然だ」「しかたがない」「どうでもいい」とする声ばかりで「残念だ」との声が皆無(かいむ)に近い(!)のは驚きだが、「表現の自由」が次第に失われつつあるこの国の風潮(ふうちょう)に、我々はもっと危機感を持つべきだと個人的には考えるのだ。


 案の定、この『異種族レビュアーズ』は2020年1月28日にBPO(ビーピーオー=放送倫理・番組向上機構)で開かれた「第221回 青少年委員会」の席上において、


・「性的なアニメが年齢制限もなしに青少年が観られる現状に憤(いきどお)りをおぼえる」
・「風俗店を男性が評価しており、女性キャラクターを蔑視(べっし)している」
・「下ネタばかりのアニメは子供に悪影響を与える」――深夜25時30分に子供にテレビを観せている親の方がよほど問題アリかと思うが(大爆)――


といった視聴者からのクレームによって審議されたものの、


・「気持ち悪いから」「下品だから」という視点での評価は、言論・表現の自由との関連で慎重に扱わねばならない。
・遅い時間帯の子供の視聴については、保護者にも配慮してもらいたい――当然だ(笑)――。
・テレビは子供だけを視聴者として対象にしているものではない。
・こうしたものが深夜枠から普通の時間帯に入ってくることには気をつけておくべきだ。


との意見が大勢を占め、BPOとしては本作を決して否定することなく、静観する構えを示したのだ。


 だからこそ、TOKYO‐MX以外の局では放映を継続することが可能となっているワケであり、TOKYO‐MXの過剰(かじょう)反応がより不可解に思えてくる。


 すっかりマニア御用達(ごようたし)の局となっているTOKYO‐MXではあるが、実は一部の報道番組やワイドショーの内容が、あまりにも安倍(あべ)政権に忖度(そんたく)しすぎとの批判がよく見られることからしても、今回の件は「巨悪」が濫用した大きな力にTOKYO‐MXが萎縮(いしゅく)したことによる自主規制なのか? と勘(かん)ぐらずにはいられないものがあるのだが。


 実際、BPOに同様のクレームが寄せられたアニメ『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20221211/p1)は当初土曜22時30分に放映されていたのを、第5話以降土曜26時に枠を変更することで放映を継続できていたのであり、それよりも遅い枠だった『異種族レビュアーズ』のみが打ち切りとなるのはやはり不自然極まりないだろう。


 本作が打ち切りとなった真の理由は不明だが、これを前例として認めてしまったら、ヘタをすれば将来的にはTOKYO‐MXの深夜アニメの放映が激減することにもなりかねないのではないのだろうか?
 繰り返す。これは断じて許してはならない暴挙なのだ。


(了)


『異種族レビュアーズ』合評2 ~異世界性風俗を描いたアニメで、性風俗の是非を考える!?

(文・T.SATO)
(2020年3月3日脱稿)


 異世界モノもジャンルの長い歴史の果てに、勇者ではなく魔王になったり、食堂・喫茶店・居酒屋を開店したり、冒険者だけど子育てがメインだったり、勇者だけどペットショップやプロレス興行(笑)していたり、書籍を作って司書になろうとしたり、中世に近代社会を招来せんとしたり(!)、ありとあらゆる職業を題材としたヒロイズムとも程遠い異世界作品が勃興して、異世界を舞台にヒトのすべての営みを包含せんとするメタ・ジャンルといった感を呈しており、爛熟の極みに達している。


 この作品はその中でも極め付け、異世界の「性風俗」(爆)を題材とした作品だ。より正確に云うならば、異世界の繁華街にある風俗街に足繁く通ってムッフンしたあとに風俗体験レビューの記事を書いて、それを冒険者が集うギルドの館のロビーの壁に貼り付けることで、小銭を稼ぐという作品である。
 もう少し云うなら、人間・妖精・獣人・悪魔・天使などとの異種通婚(姦通?)モノでもある。ぶっちゃけ、行き着くところまで行き着いた感もある。


 しかし、ワンアイデアだけの出オチ作品といった感じで、個人的にはあまり面白くない。しかもエロくない。具体的なサービスなり決定的な瞬間も描かれない。絵柄もリアルでナマっぽい肉体性を感じさせるモノではなく、まるっこくて柔らかそうなデフォルメされたモノである。
 もちろんそれが悪いというのでなく、だからこそリアリティの階梯も下がってコミカルなギャグとしても成立するのであって、コレをナマっぽい肉体性も感じられる絵柄で演じられたらシャレにならないとは思うけど(笑)。


 リアル寄りな背景美術やキャラデザだと、自然と作品世界のリアリティの階梯もあがってしまう。仮にお話のスジ的にはまったく同じストーリーであったとしても、非リアルな作品と比したらもっとインモラルに感じられてくるであろう。
 女を買いに行っている野郎も十人十色で、身勝手・喜悦だけの輩から逡巡・プチ罪悪感を抱いている輩まで。
 春を売っている女の方にも、イヤイヤ仕方なくから天性のビッチまで、あるいは地味な反復の炊事家事洗濯・農作業・職人仕事はタイクツで、華美な服装をして虚栄心も満たして異性とムダなおしゃべりでテンションを終始上げていたい! マジメで無口な男なんてツマラなくて大キライ!(爆) みたいな内面・自意識・各自の境遇、生まれついての「性に奔放」や「性に保守的」といった価値観の相違や先天的な性格の違い。
 リアリティの階梯があがれば、そんなモノまで浮上してきて、視聴者にもヒシヒシとそれを感じさせてしまうだろうとも思う。


 フィクションとはいえ、個人的にはそーいう多様な女性キャラ像をぜひとも観てみたい! とは思うのだけれども、往年の人気美少女アニメかんなぎ』(09年)非処女騒動なども思い返すに、おそらく潔癖なオタク視聴者の大勢にはウケないだろうとは思うので(汗)、本作のような記号的な絵柄と描写が適度な塩梅なのだろう。


 まぁフェミニズム的には性風俗・売買春なんぞは男尊女卑・ミソジニー女性嫌悪)な風潮に基づく社会的制度・文化的装置であり、近年の最新フェミ思想はともかく80~90年代においては、


「人間という存在は動物とは違って『性欲』という『先天的な本能』が壊れており、『後天的な文化』によって『性欲」が誘発されるだけであり、今ある男尊女卑的な文化を抹消して新たに「政治的に正しい」文化(笑)を樹立さえできれば、真の意味での男女対等な性愛文化も構築できるのだ!」


なる主張をしていたモノだ。


 もちろん野郎であれば、女の子のパンツ見たい・オシリ見たい・オッパイ見たい・裸を見たいという、個人差はあれども思春期以前の幼少時からある「性欲」が「本能」ではナイという言説は、実感的にもアリエないし生物学的にもナンセンスではある。
 心理学者・フロイトが喝破したように、人間は啓蒙思想的な「理性」だけでも動いておらず、「無意識」や「性欲」や動物的な「リビドー」などの鼻の先のニンジンでも駆動されている事実に到達した西欧思想史には疎(うと)い連中が、赤勝て白勝てレベルでフェミニズムになびいているようでもある。


 筆者からすれば、フェミニズムに一理も二理も認めつつもプチ違和感も手放さないのであれば、「男性中心主義」でも「フェミニズム」でもない「第3の学問」を樹立する絶好の契機であり、それこそが真の意味での理性的なふるまいではないのか? とは思えるものの、本作ごときのレビューにそのような大仰な話題は似つかわしくない(笑)。



 性風俗や売買春を積極的には肯定しないし減らすべきではあったとしても、人間に……特に男性側に男尊女卑以前の動物・オス的な本能がある以上は、そして禁酒法が施行されようが飲む・打つ・買いたい人間も相応にいるからには、かえってアル・カポネのようにウラ稼業でヤクザが肥え太るのが世の習いである以上は、日本でも売買春は禁止されているのに実際にはソープランドでは本番が可能というダブル・スタンダードで適度に発散させるのが、現実的な落としどころだとは思うのだ。


 性にまつわる問題といえば、古い世代には名作と名高い名脚本家・山田太一による往年のNHK土曜ドラマ男たちの旅路』第4部の第3話「車輪の一歩」(79年)で、車椅子の青年が両親も笑顔での公認で念願のソープ――当時はトルコ風呂と呼称――にひとりで行くも、あまたのお店で断られて終わって屈辱にまみれる名エピソードなども思い出す……。
 この作品のことも思い返すに、今や東京大学の総長にまで登り詰めた日本のフェミニズムのドン・上野千鶴子センセイは90年代、性的弱者の男性に対して「自力で女性をゲットできないモテない男性はひとりでセンズリしながら死んでいってください」と語っていたモノだけど(爆)、一理はあるにしてもそこまで逡巡なく断言してしまってイイのであろうか?
 筆者には昨2019年のエリート私立小学生20名を斬りつけて自殺した男に対して「ひとりで死ねばイイのに……」と語っていた言論人たちと、依って立つ立場&敵認定の対象が異なっているだけで、メタレベルでは同じ思考形態だとしか思えない。


 とはいえ、欧米に習って売春を禁止したのに、当の欧米では女性や障害者の「性的自由」の名のもとに「売春」や「身体障害者の買春」まで公認、国家が売春婦を登録制で管理する動きが90年代以降、拡充しているのは皮肉だ。
 たしかにヤクザやギャングが売買春を管理・搾取するよりかは、いっそ国家が管理するのも完璧とはいわずとも一理はあるのだろう。


 この延長線で、近年では往時の日本にだけ奴隷のように存在していたとされてしまった従軍慰安婦の世界的な見直しも望みたいところではある(爆)――むろん正当な商行為ではなく、女衒(ぜげん・仲介・ブローカー)にダマされて慰安婦になった女性や慰安所外で性暴力にあった女性の救済は必須――。
 仮にアナタやワタシには不要であっても、幼稚園~小中高の同級生たちのヤンキーDQN(ドキュン)やヤンチャな男子の比率を思えば、良心からではなく罰則があるから悪事をしないだけの人間が人類の過半なのであるから(汗)、前近代的・古代中世的なメンタル以前に食欲や性欲をも併せ持つ「動物」でしかない人間一般の性情をも見据えて、先回りして網も張ることが、真の意味での合理的な制度設計・社会デザインではないのかとも思うのだ。


 ただまぁ結婚制度や性道徳も地域・時代・個人で異なる相対的なモノではある。
――15年ほど前に(2004年)10代の女子ふたりがダブル芥川賞を受賞した際、清純派ではなくギャル子ちゃんの方の受賞作『蛇にピアス』で、ピアスを付けたワルの感じがする男にしか惹かれないギャル主人公が「健全とは何か? 餓死するくらいなら風俗で食べていく方がよほど健全だと思う」との価値観を躊躇なく語っていたくらいだし(笑)――


 だから、「性的自由」や「不倫」さえをも賞揚し、配偶者以外の第三者や社会が「不倫」を批判する必要はナイとする意見が一部のリベラル文化人の間では勃興している。
 しかし、コレは3手先・4手先が見えていない浅知恵に思える。この流れは男女対等の自由な性愛ではなく性的「新自由主義」となり、不倫や一夫多妻制もオールOK、女性の側でも金持ち男の2号・3号となっても豪奢な生活をしたい! という性道徳の自堕落な変容が起こって、数十年後にはディストピアが到来すると予見(爆)。


 天地創造の神さまが定めた「絶対普遍の正義」ではなく、人間社会の「便宜的な取り決めごと」にすぎなかったとしても、最大多数の最大幸福は一夫一婦制、不倫も実態はともかく社会的には糾弾しておこうというタテマエにしておいた方が、社会の安定や子供たちの感情の安定のためにも無難だとも思うゾ。
――むろん離婚しちゃイケナイとか、不倫は石打ちの刑に処すべきだ! とまでは云わないが(笑)――


 エッ、東京MXにつづいて神戸サンテレビや海外でも放映・配信中止なのが「表現の自由」に対する侵害だって? そんな「弾圧されてる俺、カッケーーー」みたいな映画『新聞記者』(19年)みたいなモノではないだろう。BS11やAT-Xでは観られるどころか、新たに岐阜では放映開始だし。
 つーか、コミケで販売中止処分を喰らうとハクが付くエロ・コスプレ円盤同様、放映中止になることを作り手・受け手も共犯関係で見越していて、放映中止自体でハクを付けたりネタや祭りにしてもらうことが前提の出来レースだ! くらいのことは云おうヨ(笑)。


(了)
(初出・当該ブログ記事~オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.84(2020年3月8日発行予定⇒コロナ禍で即売会中止により4月5日発行))


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