『映画 スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』 ~言葉が通じない相手との相互理解・華麗なバトル・歌と音楽とダンスの感動の一編!
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2019年10月19日(土)から女児向けアニメ『映画 スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』が公開記念! とカコつけて……。
TVアニメ『スター☆トゥインクルプリキュア』(19年)評をアップ!
『スター☆トゥインクルプリキュア』 ~日本人・ハーフ・宇宙人の混成プリキュアvs妖怪型異星人軍団! 敵も味方も亡国遺民の相互理解のカギは宇宙編ではなく日常編!?
(テレビ朝日系 8時30分~9時00分)
(文・J.SATAKE)
(2018年6月脱稿・11月加筆)
新作『プリキュア』の舞台は宇宙?!
放送前はどう扱うのか不安しかなかった本作だが、様々な星へと飛び出す冒険のワクワクと、地球での日常交流から生まれる喜びを並行して描いて、独自の「プリキュアらしさ」を確立している。
宇宙や星座に興味津々の星奈ひかる。しかしガチガチの理系ヲタクではなくオリジナルの星座を夢想する少女だ。
「それってキラやば~っ☆」
の台詞で好奇心旺盛、広大な宇宙に大きな可能性を信じる天真爛漫さを強調する。
そこに現れる不思議生物・フワと、そのお供・プルンス。そしてサマーン星人・ララ。語尾に
「ルン」
をつける口調や髪飾りにも見える触覚で「異星人」をアピールする。
ララたちは宇宙侵略を目論む組織・ノットレイダーに追われていた! 小さきかよわいフワを守りたいという純粋な心から誕生した「スターカラーペンダント」のペンで憧れの自分を描き、伝説の戦士プリキュア=キュアスターへと変身するひかる!!
「宇宙に輝くキラキラ星! キュアスター!!」
この変身シーンのBGMにこれまでにない変化が。本作では各キャラが歌唱する挿入歌が流れることで、ミュージカルのように「変身のトキメキ」をより表現するシーンへと昇華させる見事な演出となっている!!
「天にあまねくミルキーウェイ! キュアミルキー!!」
科学技術が発達しAIに情報をもらって行動を選択することが常であるサマーン星のララにとって、自分の感情を第一に動くひかるはまったく想定外の人物。
しかし故障した宇宙船の修理をめぐって意見がぶつかったり、ひかるを通じて巡り会う地球の人々と接することで理解を深め、次第に心を開いてゆく。
その成長とリンクして、ひかるにもらった名前・羽衣ララはキュアミルキーへと変身する! プリキュアシリーズに通底する、様々な立場の人との相互理解と思いやりの心が大切であることを説いている。
「宇宙を照らす灼熱のきらめき! キュアソレイユ!!」
第三の戦士・キュアソレイユに変身する天宮えれなは、褐色の肌とブロンドの持ち主。これはアニメ特有の記号表現ではなく、メキシコ人の父と日本人の母をもつダブルだからだ。
サッカー好きで五人の弟妹の面倒を見つつ、家業の花屋も手伝う快活な彼女は「観星中の太陽」と呼ばれ、ひかるたちの憧れの先輩だ。
「夜空に輝く神秘の月明かり! キュアセレーネ!!」
第四の戦士・キュアセレーネに変身する香久矢まどかは生徒会長を務め、弓道をたしなむ淑女。
厳格な家風のため完璧主義であった彼女だが、ひかるたちとふれあいプリキュアとなったことで、仲間と高め合う過程に大切さを見いだしてゆく。さらにまどかの父は政府の宇宙開発特別捜査局長であり、プリキュアの正体とララの宇宙船の存在を知られてはならないという秘密を抱えることに……。
地球で日常メインの話があれば、十二星座を守護するスタープリンセスを解放するため、様々な星へと飛び出す冒険メインの話もあるのが本作の特徴。
ひかるたちは訪れた星に住むキャラとの交流を経て、「妖怪」をモチーフにしたノットレイダー幹部とのプリンセススターカラーペン争奪戦を繰り広げる!
「河童」のキザ男・カッパード、「天狗」の女王様・テンジョウ「一つ目小僧」のマッドサイエンテスト・アイワーンは、カラーペンを闇の感情でダークペンへ変化させ、人々を怪物・ノットリガーに変えてしまう!!
ひかるたちは言葉や文化の異なる他の星の生き物たちにも物怖じせずふれあい、交歓することでプリンセススターカラーペンを手に入れてゆく。キュアスターたちがペンに込められた星座のパワーによって異なる特性を持った技を繰り出すのも見どころのひとつだ。
解放されたスタープリンセスは全員が集うスターパレスへと復活するのだが、ひかるたちへ感謝するリアクションが少々薄く見えるのは残念。ここは『聖闘士星矢(セイント・セイヤ)』(85)の十二星座を司る黄金聖闘士(ゴールドセイント)のように個性的なキャラを当ててほしかった!
シリーズ中盤のヤマ場は追加戦士の登場。他のメンバーとは毛色の変わった変身アイテムやコスチュームのキャラクターを投入することで、敵味方両陣営に変革をもたらす重要なファクターとなる。
ひかるたちが星々をめぐるなかで出会ったのは宇宙怪盗ブルーキャット。彼女もスターカラーペンを狙って宇宙を股にかけていた。
あるときは宇宙アイドル・マオとして歌声を響かせ、またあるときはアイワーンの忠実な執事・バケニャーンとなってノットレイダーに潜入するなど、目的のためには手段を選ばぬ大胆な行動力を発揮する彼女。その正体はアイワーンによって母星の民が全滅させられた猫型種族の少女・ユニであった。
「銀河に光る虹色のスペクトル! キュアコスモ!!」
ノットレイダーへの憎しみと母星の復活という重大な宿命を抱え、孤独に突き進んできたユニ。一方怪盗やバケニャーンであった過去も含めて彼女を認め、スターカラーペンを集めて母星復活を手助けしようとするひかるたち。
幾度かのぶつかり合いを経て頑ななユニの心もその優しさで解放され、新たな戦士・キュアコスモが誕生する!
夏休み期間はララの母星へと遠征することに。ララはAIに頼ることなく自分で考え行動する力を両親・兄に示すことで、心の奥のコンプレックスを払拭する。
そしてノットレイダーに対抗している宇宙星空連合なる星間文明組織も登場! 連合にはひかるたちがプリキュアであることが発覚!
一般のヒーロー作品ならば宇宙戦争に突入なのだが……『プリキュア』の作風にはそぐわない。
代表のトッパーがひかるたちに連合への参加を促すのだが、彼女たちは中学生としての生活があると辞退する。
それは戦い自体を拒否するものではなく、敵対するものを打ち倒す=滅ぼしても根本的な解決・幸せは訪れないことを示すためだ。力を誇示するのではなく、互いを理解しようと努力を続ける姿勢こそが調和をもたらす。
理想論といわれればその通りかもしれないが、それを信じて行動するからひかるたちはフワとめぐり会い、プリキュアへ変身することができたのだ。連合に縛られることなくこれまで通りに行動することを容認するトッパー代表。自分では守れなかったプリンセスたちの復活を果たしたひかるたちの「未来への可能性」を信じたのだ。
ノットレイダーの実態も徐々に明らかに。カッパードたちを束ねる「青鬼」の指揮官・ガルオウガは空間を歪め瞬間移動し、圧倒的な力でひかるたちを蹂躙する!
その力への執着心の源は、母星の壊滅を止められなかった後悔と、救済がもたらされない世界への絶望だった……。
宇宙星空連合はそれぞれの星の文明を尊重し、干渉はしない主義のようだ。自らの発展で宇宙に進出してはじめて連合と関わる。それが多種多様な文明と調和できる段階を越えた証しとされるのだろう。
しかしその影で救われない者たちもいる。首領・ダークネストはその隙を取り込み、組織を拡大させてきた。ままならない世界なら邪悪な力でも変えてしまえ。
「盗人にも三分の理」だが、彼らの行いがさらなる悲しみを生み出している以上、許されることではない……。キュアスターたちはガルオウガらの憎しみを理解し、争いの連鎖を断ち切ることができるのか?!
そしてより対立の溝が深いユニとアイワーン。母星と大切な人たちを闇に封じたアイワーンを憎むユニだが、アイワーンもダークパワーを利用する技術を研究することでダークネストでの「居場所」を手にするしかなかった孤独な生い立ちであり、それを奪うユニ=キュアコスモは憎き相手なのだ。
互いに感情をぶつける戦いでアイワーンの境遇を知ったユニは、誰もが運命に立ち向かっていることに思い至り、自身の怒りを抑えて、彼女を「許す」と声をかける!
簡単には修復できない関係・感情のもつれだが、勇気をもって一歩を踏み出す。その心が「希望」を形作るはずだ……。
宇宙編での壮大で困難な相互理解の問題。
その答えとなるのが、日常編での家庭や学校のひとたちとの交歓やぶつかり合いにひそんでいる。フィクションだからこそ、身近なコミュニティから社会の大海原へと飛び出す成長の物語と地続きであることが示せる。こうしたさりげなさも『プリキュア』シリーズの魅力だ。
ひかるたちがひとりの中学生として、そしてプリキュアとしてどのような道を進むのか、最後まで注目したい作品だ。
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