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ヒーリングっど♥プリキュア終盤評 ~美少年敵幹部の命乞いを拒絶した主人公をドー見る! 賞揚しつつも唯一絶対の解とはしない!?

『映画 プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』 ~テーマ&風刺ではなく、戦闘&お話の組立て方に注目せよ!
『映画 スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』 ~言葉が通じない相手との相互理解・華麗なバトル・歌と音楽とダンスの感動の一編!
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 『ヒーリングっど♥プリキュア』(20年)のTOKYO MXでの週1の再放送が終了間際! とカコつけて……。斯界を騒がせた『ヒーリングっど♥プリキュア』終盤評をアップ!


『ヒーリングっど♥プリキュア』終盤評 ~美少年敵幹部の命乞いを拒絶した主人公をドー見る! 賞揚しつつも唯一絶対の解とはしない!?

(文・T.SATO)
(2021年5月7日脱稿)


 女子中学生が変身した魔法少女ヒロインが、ポップな色彩・デザインの怪獣怪人を倒してみせる、女児向けアニメシリーズ第17作。


 スーパー戦隊シリーズや平成仮面ライダーシリーズ同様に、長命な歴代シリーズとしての何らかのイメージの統一性は必要だ。しかし、それだけでもワンパターンと化して、子供たちに飽きられて、かえって卒業を早めてしまう可能性もある。
 作り手たちもキャラクターデザインや各話のネタが、そして何よりも創作のモチベーションが枯渇してしまうからだろうか? 近年では、「花嫁」・「魔法」・「料理」・「チアガール」・「宇宙」だのと、各作の主題なり副主題・サブモチーフを明瞭化して差別化を果たしてきた。


 各作のモチーフの選定自体は、玩具会社・バンダイ側での玩具デザインのコンセプトの方が主導だろう。しかし、モチーフに劇中内での「必然性」を少しでも持たせるための「作劇」や「作品テーマ」は、もちろんTVアニメ側のメイン監督&メインライターといった文芸陣の裁量の範疇だろうが、各作ごとにそれらの構築がキチンとできてもいた。


 本作『ヒーリングっど♥プリキュア』は、「看護士(看護婦)」=「看護」=「医療」がメインモチーフとなっている。よって、敵側の設定はその対極となる「病原菌」がモチーフであって「ビョーゲンズ」と命名(笑)。
 子供向け作品にふさわしい駄洒落ネームがユカイだけど、奇しくもちょうどコロナ禍となってしまった2020年の世相とも符合している。ただまぁ、それゆえに本作が優れているのだ! なぞといった、縁起担ぎかジンクスのような、一見は批評的な装いでもオカルト的な作品擁護なぞは筆者はしないけど(……イヤミ)。


 いやホント、「褐色肌の混血」や「宇宙人」に「アンドロイド」のプリキュア戦士までもが登場したから、「ダイバーシティー(多様性)」だ! とか、「美少年」がプリキュア戦士になったからといって、「ジェンダー」的にもドーコーなどなどといった、各話の「作劇の出来の巧拙」などではなくって、扱っている題材が「PC(ポリティカル・コレクトネス)」に沿っていて「政治的に正しい」から即、本作をはじめとする『プリキュア』シリーズが作品的にも優れているのだ! などといった論法の跋扈は実に不快ですらあるのだ(笑)。


 それじゃあ、「デブ」や「ブス」や「ブ男」のプリキュアも出してみろ! もっとさらに左翼・リベラル・ポリコレな連中が、プリキュアの敵である怪獣怪人とのアクションで多用されている猛烈なパンチやキック! そもそも、善と悪との「戦い」、つまりは敵国や敵民族を仮想認定した構図を採っていること自体がダメなのであって、害毒ですらあるのだ! などといった批判を加えはじめたならば、反論ができなくなってしまうゾ!(汗)


 特撮の製作会社・円谷プロダクションがいかに「平和を訴えたエピソードなのだ」と主張しても、「話し合い」ではなく「戦い」の構図を採っている時点で、往年のTV特撮『ウルトラセブン』(67年)の放映禁止に追い込まれた欠番である第12話「遊星より愛をこめて」についても認めない! といった、「被爆者団体」の1970年の時点のクレームにおけるロジックを論理的にも乗り越えないかぎりは、同じような各話単位での放映禁止や作品自体の封印といった事態が未来にも起こりえることだろう(爆)。


 まぁ、筆者個人は「無抵抗・非暴力」の「絶対平和主義者」ではないし、その発動には厳密な要件を有するけど、時と場合によっては「物理的」な「反撃」や「攻撃」についても容認する立場なので、そんな批判なぞは脅威にも思わないし、歯牙にもかけないのだけど(笑)。


 とはいえ、「物理的」な「反撃」や「攻撃」を容認するからといって、一応のカッコつきの「悪」であっても根絶してしまえばイイのだとは思ってはいないし、一応の「悪」の根絶によって物事が解決するとも思ってはいない――そもそも根絶自体が不可能でもある――。


 「小さな悪」程度の存在や行為であれば、許容・包摂してあげて、世間の少々の猥雑さについては許容をすべきだとも思っているのだ。


 その伝で、本作『ヒーリングっど♥プリキュア』は、憎めない「小さな悪」程度の存在である「病原菌」なり「ウイルス」であるならば、体内にも大量ではなく少量は取り込んで包摂してみせて「ワクチン」化もすることで、実は「排他的ナショナリズム」「純粋血統主義」などにも通じていく可能性もある過度な「清潔」志向や「潔癖」志向の賞揚なぞではなくって、「小悪」程度であれば許容してソレらとも共存・共生をしてみせるような「タフさ」の賞揚! といったことを物語のオチとしてみせる可能性なども、モチーフ的にもメイン監督・池田洋子やメイン脚本・香村純子なども一度は構想したり、脳裏に思い浮かべていたこととは思うのだ(……多分)。
――「悪」を許して「改心」させるといったストーリー展開は、往年の『美少女戦士セーラームーン』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)第1部の第3クールから始まる、今や定番でもあったのだし――


 ……ところが! 「改心」の可能性を示して、「救い」&主人公少女の「体内での共生」(!)を求めてきた悪の美少年幹部・ダルイネンを、本作の主役プリキュア少女こと、花寺のどかは懊悩の末に拒絶してみせた!


 そう来たか!


 まぁ、『プリキュア』シリーズ史上では初だったとしても(?)、コレもまた


フェミニズム」や「反差別」の文脈で、「『女性』や『黒人』が泣き寝入りをせずに、『男性』や『白人』に『No』や『抵抗』を唱えよ!」


といった文脈との合致によって、賞揚される恐れもある。


 しかし、無制限に「悪」を「包摂」するのも間違いではあるだろうし、ある許容範囲の範疇の中での「包摂」でしかないのも、神ならぬ身の人間の事実であり限界でもある。


 だから、特に気持ちが優しすぎるがゆえに「悪」に付け込まれて、喰いものにもされてしまうような性格類型の人間たちに対しては、局所的には絶対的に必要な「No!」ではあったり、悪人に対しての必要な「疑念」や「老獪」な立ち回り方でもあったのだ!



 とはいえ、本作で描かれた「悪」への対処方法は、唯一絶対の「解」ではないとも思うのだ。


 無限背進してハシゴ外しをしていけば、


●自分がイヤなことでも、そのように伝えることは「相手に対して悪い」と思ってしまって、本人を目の前にして「No!」だという拒絶をハッキリとは云いにくくなってしまうような、主役プリキュア個人の性格!
●一見は改心したようでも、実は相手の弱みに付け込もうとしているズル賢さを捨て去りきれない、生まれつきの性悪な性格も残っている美少年幹部!
●実はプリキュアになる以前の幼少期からの大きな「痛覚」とともにあった入院生活の根源は、この美少年幹部が体内に潜んでいたゆえ!


といった組合せで、この「解」が成立するのである。


 美少年幹部にガチで改心の兆しがあって、今後は寄生先の主人公少女の肉体を苦しめないし、今は衰弱している美少年幹部が回復したあとでも悪事を一切しない! と本心から誓った場合には、本作での「解」は成立しないのだ。


 加えて、本作の「解」の弱点を云ってしまえば、のどかのような性格弱者にとってはこの処方が有効ではあっても、他人や弱者に対する共感性には乏しくてナチュラルにイジワルや差別をしてくるる圧倒的大多数の庶民・大衆(汗)にとっては、そういった行為を自己正当化できてしまえる「No!」にもなりかねない危険性があるのだとも思えるのだ!(爆)


 歴代の明るくて元気な主役プリキュア少女たちをも見ればわかる通りであって、彼女らや庶民・大衆の大勢は、特に威圧的な権力者の教育などにもよらず、性格的に呼吸をするように


「イヤだ、キライだ、メンドウだ、気持ちが悪い」


などと「No!」を云えることが普通なのであって(笑)、ワザワザ「No!」も云えるようになろう! などと教え諭すようなことでもナイのだろう(汗)。


 そーいう意味では、悪の美少年幹部を救わなかった本作を過度に持ち上げ、悪をも救った従来の『プリキュア』や『セーラームーン』シリーズを過度にディスる向きにも組みしない。


 それらが相矛盾する異なるオチだと認識しつつ、いずれのオチにも「理」を認めて肯定をしたいのだ。


――その一方の極北には、将来的にも「絶対平和」は決して到来することがなく「悪」が不断に発生する可能性も承知の上で、「悪」を完全撲滅した先の静的で管理社会的な千年王国の到来の肯定・歓迎なぞではなくって、「試行錯誤の自由」を、ひいては「小さな悪」程度であれば「愚行の自由」すらをも認めて、しかもそれを認めることによって、将来的には原理的に生起してしまえる「大きな悪」と、その「戦い」にまで「許し」を与える「大慈悲の境地」を描いていた、『セーラームーン』最終作『セーラースターズ』の原作マンガ版ではなくミュージカル版(汗)が到達していた感涙の高邁なる境地なども挙げておきたい――


 そして、そーいった「弱点」や「懸念」があるという「条件付け」をして、「万能な唯一解」ではないと重々強調した上でなお、窮状を訴えてきた敵の美少年幹部を本作の主役プリキュアが懊悩の末に拒絶して、その後もそのことが正しかったのかについて引きずる一連、そしてそれを断ち切る一連については、高く評価をしたいのだ。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.79(21年5月30日発行))


後日付記


 TVアニメ版放映92年の翌年93年度から上演がはじまった玩具会社・バンダイ主催の『美少女戦士セーラームーン』のミュージカル版は、4作目の94年夏季公演版から98年夏季公演版まで、脚本&演出は平光琢也(ひらみつ・たくや)が務めている。バンダイ主催ではなく2.5次元ブームの文脈で再開された2013年~2017年版でも平光が脚本&演出で再登板しており、筆者が鑑賞した『セーラームーン』最終作『セーラースターズ』相当版はこちらに該当する。
 しかし、拙ブログ主宰者の交友関係にある『セラミュー(セーラームーン・ミュージカル)』マニアの各氏に確認したところによると、『セーラースターズ』相当版の98年夏季公演版の時点で、すでに平光は前述した「高邁なる境地」に到達していたとのことだそうだ!
 平光は古い世代(汗)には80年代初頭のお笑いブームで、赤星昇一郎郷田ほづみとトリオを組んで、藤子不二雄の人気マンガ『怪物くん』のキャラクターを模したとおぼしきお笑いグループ「怪物ランド」のメンバーとしても知られている。その後は舞台演出にも転じており、90年代末期から現在に至るまでTVアニメの音響監督(アフレコ現場での声優への演技指導などをする役職)などもほぼコンスタントに途切れなく務めてもいる。


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