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ULTRAMAN ~初代マン・セブン・エース型強化服vs人間サイズ宇宙人! 高技術3D-CGに溺れない良質作劇! 歴代作品へのオマージュ満載!

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ULTRAMAN』 ~初代マン・セブン・エース型強化服vs人間サイズ宇宙人! 高技術3D-CGに溺れない良質作劇! 歴代作品へのオマージュ満載!

(文・T.SATO)
(2019年5月3日脱稿)


 かつての巨大ヒーロー・初代『ウルトラマン』(66年)のデザインを模して、銀色のボディーに赤いラインが施されたメタリックな光沢を放つ金属製の強化スーツ。制服男子高校生クンが右拳を天に突き出すや、その強化スーツが科学特捜隊のヒミツ基地から粒子化されて転送・装着されることで、おなじみの効果音とともに超人的なパワーを発揮して悪と戦う人間サイズの変身ヒーローが誕生!


 エネルギー源としては初代ウルトラマンの必殺ワザ・スペシウム光線のそれと同じでスペシウムを基としており、戦闘時には両腕の側腕部分にナイフや防御用とおぼしきスペシウム・エネルギー由来であろう細長い電光が終始流れることで暗闇にも映えている。初代マンのように両腕を十字に組んで、左腕と右腕のアタッチメントを結合させれば、その右手側面からはスペシウム光線を! 両手を胸の前で合わせれば光輪を発生させて、初代マンとも同様にウルトラスラッシュとしても放つことができる!


 中盤からは、初代『ウルトラマン』の後継作『ウルトラセブン』(67年)の主人公・モロボシダンの名を踏襲した諸星弾なる細メガネをかけた黒背広姿のクールな青壮年が、科学特捜隊の厳しい上司として登場する。しばらくはモッタイぶった末に、期待にたがわずウルトラセブンのデザインを模して赤を主体としたカラーリングで頭部と胸部がシルバーでもある、ウルトラマンスーツ・タイプ・バージョン7.0(ナナ・テン・ゼロ)、通称「セブン」と呼称される強化スーツを、おなじみの効果音とともに装着!
 原典における頭頂部のトサカが外れてブーメランとなる武器・アイスラッガーを想起させる刃物も投擲(とうてき)! セラミック調のハイテックな装飾や空隙が多数穿(うが)たれた真っ直ぐな長剣も武器に、主人公よりも先輩のヒーローとして八面六臂の活躍を開始する!


 終盤では、『ウルトラマンエース』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070429/p1)の主人公・北斗星司(ほくと・せいじ)の名前を冠した中性的なハスキーボイスの華奢な美少年も登場――演じるのは『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年)で美少年ボイスの敵幹部・九右衛門(きゅうえもん)や『ウルトラマンジード』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170819/p1)のペガッサ星人の幼体・ペガも演じた潘めぐみ――。
 彼もご多分に洩れずに、原典同様に拳骨を組んだ両腕を胸の前で左右からブツけるや、閃光とともにおなじみの効果音が響いて、頭頂部の巨大なトサカに円型の空洞が穿たれたウルトラマンエースを基にした、銀色に赤いラインが施された強化スーツをまとった姿に変身! 両腕も左右や上下に開げるや、原典のウルトラマンエースも得意としていた光学合成の必殺ワザ・バーチカルギロチンやホリゾンタルギロチンを想起させる巨大な光の弧を発生させて、そのまま懐に飛び込んできた敵を斬ったり、遠方に高速で放つや強敵を一刀両断にもする!


 セル画ライク・2DライクなCGアニメでは不可能な、フル3D-CGだからこそ可能な、金属の銀色のグラデーション豊かな反射や輝きを質感豊かに再現することで、劇中内特別感・重厚感・ハイブロウ感・カッコよさ・ヒーロー性もいや増して、たとえ虚構作品の範疇ではあっても物質感・実在感、ひいては硬質な作品の空気感をも喚起する。
 そして、そんなズッシリしたスーパーヒーローたちが、人間サイズの悪い宇宙人(笑)相手に軽妙にパンチやチョップやキックを連発、側転やバク転を幾度も繰り出し、腰を地に着けるほどに低く落としてコマのように回転しながら蹴りを見舞う! カナリの長尺を使って、しかもダレることなく、カッコよくて血湧き肉も踊るバトルを、エピソードによっては1話分の尺をも費やすくらいにして披露する!


 幼児向け作品ならぬマニア向け・年長者向けの作品でもあるので、TVの「ウルトラマン」シリーズでは90年代から封印されている切断ワザも披露! たとえ大ウソの虚構作品であっても、束の間・一瞬のショッキングさを出すために、視聴者にもその痛みを一時的に錯覚させる手法で、悪い宇宙人キャラ相手や超人と化して死にそうもない人間キャラに限定して(笑)、時に片腕が切断されたり、頭頂部から左右に両断されたり、手刀や光線がボディーを貫通!(~しかして、大抵は死なない・笑)


プロダクションI.G製作! 実力派・神山健治&荒牧伸志のダブル監督体制!


 我らが『ウルトラマン』の名を冠する新作のフル3D-CGアニメ『ULTRAMAN』(19年)がネット配信媒体・Netflix(ネットフリックス)にて、全世界で各国語吹き替え版までもが製作されて全13話を一挙に同時配信。製作はタツノコプロ分派で今や世界のプロダクションI.G。監督は神山健治(かみやま・けんじ)と荒牧伸志(あらまき・しんじ)のダブル監督体制!
 本作の原作となったのは、読者もご承知の通り、東日本大震災があった2011年、『月刊ヒーローズ』創刊号の目玉として鳴り物入りで大々的に喧伝されて連載が開始された漫画『ULTRAMAN』である。大手出版社・小学館が母体となったことで実現できたのであろうけど、コンビニでの陳列売りも実現したので、筆者もアタマの数話については立ち読みした記憶があるモノだ。そのうちにまとめて読もうと思ってノロノロとしていたら、早くも8年が過ぎており……。歳を取ると歳月が経つのは早い(汗)。


 ちなみに、私事で恐縮だが、漫画『ULTRAMAN』の原作&作画コンビが月刊『チャンピオンRED(レッド)』で連載した巨大ロボット漫画の深夜アニメ化『鉄(くろがね)のラインバレル』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090322/p1)であれば、筆者も鑑賞している。
 正義感はあっても空気が読めない虚栄心満々の主人公少年のイタい言動もヒイた視線で描いていく、作品テーマ的には意欲作ではあり、その志しは壮とすべしなのだが、ダメダメではないけれどもイマイチな出来だとも思われて――その原因は原作漫画版に起因するのかアニメ版に起因するのか、前者を未読の筆者には不明なのだが――、この原作&作画コンビが手掛ける作品だということで、あまりイイ印象は持っていなかったのも極私的な事実ではある。


 しかし、特撮作品のみならずアニメも鑑賞するロートルオタであれば、神山健治と荒牧伸志のダブル監督布陣は衝撃的ではなかったろうか?
 神山は実質的には70年代刑事ドラマに電脳ネタを散りばめたような骨太な傑作深夜アニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(スタンド・アローン・コンプレックス)』全2作(02年・04年)で名を上げた御仁。以降も、『精霊の守り人(もりびと)』アニメ版(07年)や『東のエデン』(09年)、本作と同じくフル3D-CGアニメ映画『CYBORG 009 CALL OF JUSTICE(サイボーグゼロゼロナイン コール・オブ・ジャスティス)』3部作(16年)などの良作を手掛けてきた御仁でもある。
 氏の師匠スジに当たる押井守カントクがムダにハイブロウで難解・晦渋な作風となっていく中で、ハイブロウではあっては無意味な難解さはなくて、間違って一般層が鑑賞してしまったとしてもナチュラルに観られる作品群を放っているようにも思えて、筆者のごくごく個人的な評価も高い御仁である。


 対するに荒牧も、アクションや芝居部分にモーションキャプチャーを用いたフル3D-CGアニメ映画の先駆けで、やはり『攻殻機動隊』(89年)を手掛けた士郎正宗(しろう・まさむね)が放った本邦電脳系SFの古典漫画ともいえる『アップルシード』(85年)の映画版(04年)なども手掛けており、コチラもお高くとまっただけの中身スカスカ作品とは異なり、フツーにメリハリもある娯楽活劇を作れる御仁という感じであって、やはり同様に筆者個人の評価は高かった。


 もちろん、上記の評価は筆者独自のモノではなく、通の間ではワリと一般的な見解であろうとは思うけど、その両者が『ULTRAMAN』のスタッフとしてタッグを組んでいたことを知ったときの驚きといったら! てなワケで、俄然興味が湧き、とてもイイ機会なので、原作漫画版ではなくネット配信の3D-CGアニメ版にて、本作の内容を確認してみようと思った次第でもある。


初代『ウルトラマン』のみが史実の世界だが、歴代シリーズへのオマージュも満載!


 本作『ULTRAMAN』は初代『ウルトラマン』(66年)のみが劇中内での歴史的事実とされており、後継の『ウルトラセブン』(67年)以降の歴代ウルトラシリーズは存在しなかったモノとして扱う世界観の作品でもある。
 邦洋・東西で長命なシリーズ作品ではよくある手法でもあり、我らが本邦特撮シリーズでは、1954(昭和29)年の『ゴジラ』初作のみを歴史的事実とし、それ以降のシリーズはなかったモノとして扱う新『ゴジラ』(84年)や、初作は史実でもそれ以降は歴代シリーズとは異なるパラレルな歴史をたどった『ゴジラ×メガギラズ G消滅作戦』(00年)や『ゴジラ×メカゴジラ』(02年)などの前例を、ロートルオタとしてはついつい想起もしてしまう。


 我らがウルトラシリーズでも、初代『ウルトラマン』の歴史のみが存在しており、その最終回で宇宙恐竜ゼットンに敗れて一度は死んで故郷へと帰還したハズの初代ウルトラマンが、単なる敗北のみであって地球に残留したままだと設定された再編集映画『蘇れ! ウルトラマン』(96年)や、『ウルトラセブン』の史実のみが存在していて後続ウルトラシリーズはなかった扱いであった平成『ウルトラセブン』シリーズ(94~02年)などでも採られた手法でもあり、そーいう意味では目新しいモノではない――平成『セブン』は劇中における怪獣データバンクに後続ウルトラシリーズの怪獣も存在していたので別解釈の余地はあれども(笑)――。


 本作でも初代ウルトラマンが地球を去った数十年後、怪獣・宇宙人も出現しなくなったことから、オモテ向きは怪獣退治の専門集団・科学特捜隊が解散した世界を舞台としており、『ウルトラマン』の主人公でもあり、かつて初代ウルトラマンとも合体していた科学特捜隊のハヤタ隊員が初老の姿で防衛大臣へと出世した姿で、今では記念館として公開されている科学特捜隊の基地を見学に訪れて、旧同僚のイデ隊員とも再会を果たすことで、原典との直結感は出している。
 とはいえ、後継の歴代ウルトラシリーズの要素がないがしろにされているワケでは決してナイ。先にもウルトラセブン型やウルトラマンエース型の強化スーツをまとった追加ヒーローが登場したと語った通り、初代『ウルトラマン』至上主義やら、『ウルトラセブン』までのいわゆる第1期ウルトラシリーズ至上主義の気配といったモノもまるでナイ。


 それが証拠に、にぎやかな渋谷の街の路地をヌケると、そこは雪国ならぬ、SF洋画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180610/p1)の中盤に登場した某惑星のバザールのように、おそらく異次元というより空間を人為的に広げた拡張次元のようなモノなのであろうか、天空には白昼でも天の河が浮かぶ東南アジアのような猥雑とした露店街や古びた中層ビル街が構えており、そこには地球人の姿に自力で変身したり、変身できない少数派は変身デバイスなるアイテムで擬態している宇宙人の怪しげで一癖も二癖もありそうな移民たちがタフに――悪く云えば少々の悪事もしながら――暮らしており、そこで筋骨隆々の長身イケメンでもあるジャックと名乗る若き日の俳優・団次郎(現・団時郎)にクリソツな情報屋の青年とも出逢ったりするのだ。


 ジャックに団次郎! 今さら大勢には説明は不要であろうが、『帰ってきたウルトラマン』(71年)に後年の84年に付与された名称・ウルトラマンジャックから引用されたネーミングでもあり、団次郎とはジャックに変身する前の人間・郷秀樹青年の中のヒトでもあり、原典作品ではシリーズ中盤回でウルトラセブンから授与された万能武器・ウルトラブレスレット型のブレスレット(笑)を左手首に装着していることで、彼が「帰ってきたウルトラマン」に相当するキャラクターであることを視聴者にダメ押ししている。


 この3D-CGアニメではジャック青年はウルトラマン型のスーツをまとうことはナイけれども、ググってみるとその後の展開では彼もウルトラマン型スーツをまとうようである!
 「帰ってきたウルトラマン」を一度は倒したこともある、用心棒怪獣ブラックキングもどきの人間サイズの(といっても2~3メートルはある)怪獣型宇宙人までもが登場! しかし、異星人街の賭けバトルのファイターとして活躍するも、超常的な怪力の持ち主でもある地球人・ジャックにブチのめされてしまう役回りを務める。コレもググってみると、ナンと! この3D-CGアニメ独自のオリジナル宇宙人であるのだとのこと!


――余談だが、アニメ映画『バケモノの子』(15年)でも、渋谷の路地を抜けると獣人たちが住まう異界につながっていたが、本作の原作漫画はそれよりも先んじていた? 加えて、『劇場版ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180401/p1)でも、沖縄に同趣向の宇宙人街や情報屋が存在していたけど、コレも本作原作からの引用であったか?――


 そして、科学特捜隊とは別個にウルトラマンエース型のスーツを作っていた、服は着ているも全身は赤い体表とおぼしき、弱そうな宇宙人のご老人の名前はヤプールでもある。
 ヤプール! それは『ウルトラマンエース』のレギュラー敵でもあり(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061012/p1)、その後も『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)や『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)に『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)や『ウルトラファイトビクトリー』(15年)などに登場してきたウルトラシリーズ屈指の悪役でもある! それがカナリ矮小化した姿で登場しているのはやや引っかかるモノの、この作品は歴代ウルトラシリーズとはパラレルワールドの世界なのだから、我らが知るヤプールとは同一の存在ではナイけれど、異なる生物進化をたどった同族だと好意的に深読みしてあげれば許せるのではないのか!?(笑)


 そして極め付けは、『ウルトラマンエース』で異次元人ヤプールの伏兵としてウルトラ兄弟を倒したこともあり、のちに『ウルトラマンメビウス』や『ウルトラマンゼロ外伝 キラー・ザ・ビートスター』(11年)に『ウルトラファイトビクトリー』などにも再登場を果たしたロボット超人・エースキラー! その名を冠して姿や武器を模した宇宙人の殺し屋が、圧倒的な強敵として本作のウルトラマンエースウルトラマンウルトラセブンの前に立ちはだかるのだ!
 そして、この殺し屋とタッグを組んでいる植物宇宙人は、地に伏したマンやセブンをそのツルで縛って、十字架状にも吊してみせる!――『ウルトラマンエース』#14「銀河に散った5つの星」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060805/p1)にて描かれたマイナス宇宙(ウラ宇宙)にあるゴルゴダ星でのウルトラ兄弟・十字架ハリツケシーンへのオマージュ!――


 コレら70年代前半のいわゆる第2期ウルトラシリーズ帰ってきたウルトラマン』や『ウルトラマンエース』へのオマージュにも満ち満ちたキャラクター! 70年代末期~90年代にかけての第1期ウルトラ至上主義者による第2期ウルトラシリーズへの酷評や弾圧を受忍してきた身からすれば、実にうれしいモノがある。


 またまたググってみると、まだ映像化はされていない今後の展開では、『ウルトラマンタロウ』の隠れたドラマ的名編でもある#45「赤い靴はいてた…」の悪役であったドルズ星人も登場するのだとのこと!――同じく童謡「赤い靴」を材のひとつとしていた映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101223/p1)でもぜひともドルズ星人を再登場させ、あのエピソードの後日談をもあくまで出しゃばらずに本流の脇で慎ましくもやることで、今やヌルオタ層でも一般化した佐々木守脚本&実相寺昭雄監督コンビの第1期ウルトラの異色作だけに留まらず、第2期ウルトラ以降の埋もれた名作・異色作をも発掘しているスレたマニアたちをも唸らせて、それをもってして一般マニア(形容矛盾・汗)たちをも啓蒙するような作品も観てみたい! と願っていたマニアとしても実にうれしい趣向ではある。


 一見さんの視聴者にはわからない趣向ではあろうけど、そのストーリーの理解には支障が出ないサービスや余技の域のモノであるのならば、このようなタブル・ミーニングの作劇で年配マニアにはチョットした喜びを、若いマニアたちには旧作へのフック・引っかかりをもたらす趣向は、コレからも作り手たちには臆せず多用してほしいと考える。ひいては、それが近年のアメコミ洋画シリーズ群における原典マンガや幾度もリセットされたリメイクや続編シリーズ群に対するオマージュや「掛け言葉」的な小ネタの数々のように、ジャンルやシリーズへの関心を永続させて延命もさせていく豊穣な養分にもなると考える。


 もちろん原典の再現志向ばかりではなく、初代『ウルトラマン』の直前作『ウルトラQ』(66年)の悪い宇宙人・セミ人間や初代『マン』のバルタン星人のバリエーションとおぼしきオリジナルの悪い人間サイズ宇宙人、同じく初代『マン』の白黒シマウマ模様の悪い宇宙人ダダとドー見ても同族だろ! というような善悪不明瞭なスマート体型の強敵宇宙人、『ウルトラセブン』のメトロン星人のバリエーションとおぼしき悪い人間サイズの宇宙人などなど、あまたの悪い新宇宙人たちもが登場!
 一応、地球人を除く宇宙人同士での平和協定が結ばれて「星団評議会」なる存在が結成されたから、宇宙人による地球侵略や怪獣出現がなくなったという世界観のワリには、善良な宇宙人は完成フィルムには登場しないことで――もちろん先の移民街では暮らしているのであろうけど――、作風から湿っぽさや下町人情味は廃して、作品世界の空気をクールでシャープな雰囲気に統一もしている。


しかし「ウルトラ」っぽくはない? ヒーローものにおける主人公像や若者像の変遷!


 とはいえ、設定面では歴代シリーズの諸設定やその換骨奪胎を投入することで、我々ウルトラシリーズのマニアをクスぐりには来ているけど、その作風は実はウルトラシリーズっぽくはナイ。しかし、コレは悪い意味ではない。主人公をハヤタ隊員の晩婚のご子息・早田進次郎こと元から超人的な体力を保持していることを父親にも隠している――父親の方はむろん知っている――常にブレザー服タイプの制服姿をした高校生少年としたことで、むしろ思春期的な懊悩ドラマ性を積極的に導入もしている。


 ちなみに、日本であれば、初代『ウルトラマン』にかぎらず、1960年代以前のアニメ・特撮・時代劇のヒーローの大勢は、すでに人格形成が完了した品行方正な「キマジメ誠実ストイック」主人公であった。
 それが1970年前後になると、「子供」時代が終わるやすぐに「大人」の社会に組み込まれて浮わつかずに老成した「オジサン」となっていった前代とは異なり、世の中が相対的に豊かとなり学生時代も延長されて、それを謳歌する人間の人数も増加したことで、モラトリアム期間も延長されたことから「子供」と「大人」の中間である、まだまだ未熟で揺れ動く「若者」といった人格類型がクローズアップ。そんな彼らが主人公となる『ウルトラセブン』や『帰ってきたウルトラマン』が誕生する。


 さらに、そこにヤンチャな不良性感度が同時多発的に投入されたのが1972年であり、コレが我らが『ウルトラマンエース』の北斗星司や『デビルマン』の高校生主人公・不動明に『マジンガーZ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)の高校生主人公・兜甲児や『太陽にほえろ!』で先ごろ逝去した萩原健一が演じた新人刑事・マカロニといった人物たちであったとも私見する。
 さらには、実写特撮では子役の拘束や演技面での困難があるので一般化はしなかったけれども、80年代以降の漫画やアニメでは10代の少年少女がスーパーヒーロー・スーパーヒロインとなることで、そこに思春期ドラマも導入されて、年齢構成的には偏ってはいてもある方向性でのドラマ性は高めていく。


 その点では後塵を拝した実写特撮ではあるも、1992年の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120220/p1)あたりで、ほとんど思春期前の小学生のようなメンタリティのキャラクターが多数派を占めるヒーロー集団が登場(笑)。この場合は複雑なオトナの心理は描けないのでドラマ性もさして高まらないけど、幼児性の再帰的な再発見の妙味は出せていたとは思うので、アレはアレで個人的には好きである。


 読者もご承知の通り、約80年もの歴史を持っているアメコミヒーローも同様の歴史を先行してたどっており、1930年代末期の品行方正な『スーパーマン』(38年)、大人のダークな香りがする『バットマン』(39年)や、時代が飛んで高校生を主人公とすることで思春期性や成長ドラマ性を投入した『スパイダーマン』(62年)に、さらには最初からヒト型をしていない人外や異形であり人格者ではない『ファンタスティック・フォー』(61年)やら『X-MEN(エックスメン)』(63年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170519/p1)などの集団ヒーローを経て、チョイ悪や乱暴者で悪党を懲らしめ過ぎることで背徳感ある暴力のカタルシスも感じさせる後発の膨大なヒーローたちなど、日本でいうなら脚本家・井上敏樹が描くニヒルで欲望肯定・私的快楽肯定なヒーロー像とは同一ではないにせよ、それに類するキャラクターたちもすでに数十年前のアメリカの地で確認できることであろう。


 本作『ULTRAMAN』に関しても、男子高校生が主人公となり、彼がその巨大な力にビミョーに浮かれたりするサマも描くことで、あえてアメコミ洋画をモノサシにカテゴライズをするならば、『スパイダーマン』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170901/p1)に似た香りもしている。


 しかも、序盤のウルトラマン型強化スーツの初装着時の戦闘を除けば、しばらくは悪い宇宙人(笑)相手ではなく、首都高速での交通事故での炎上目前トラックの救出に投入されたり、偶然に遭遇した中層マンションでの監禁事件や高層ビルのガラス拭きのゴンドラ落下事故を解決したりもしているので、善の超人vs悪の超人との大激闘を描く昨今のアメコミ洋画(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180619/p1)(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171125/p1)ではなく古き良きアメコミ作品や、日本の1960年代における超人化する前の覆面をかぶっただけの人間ヒーローもののテイストも本作には感じてしまう。そーいった意味では、「ウルトラマン」に限定したモノではなく、スーパーヒーローもの全般の総括といった感もある。


メインヒロインが女子高生アイドル! そこから構築される華やドラマ性!


 かてて加えて、この男子高校生クンが懸想する女子高生ヒロインが、アイドル活動もしている可愛い子ちゃんでもある。彼女はTVでも「ウルトラマン好き」を公言しており、その彼女が劇中で中堅アイドルとして熱唱する歌曲までワザワザ作られて(!)、アイドルアニメ『アイドルマスター』(11年)やら『ラブライブ!』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150615/p1)などのように観客がペンライトを持って応援する、中規模ステージでのライブシーンまでもが描かれることでトドメを指す!――つまりは、往年のリアルロボアニメ『超時空要塞マクロス』(82年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990901/p1)じゃないけれど、「私の彼はパイロット」ならぬ「私の彼はウルトラマン」なぞというベタな萌えを突いてくるのだ。そーいう部分では実は志しが低い作品でもある(笑)――


 フツーの女子高生ではなく、アイドル活動もしている女子高生とお近づきになるあたりは天文学的な確率となるのでリアルではない気もするけれども、スーパーヒーローだの宇宙人だののキャラ立ちしまくった存在が次から次へと登場する本作においては、コレくらいにケバ立ったメインヒロインを登場させないと「絵」としてやや沈んでしまい「華」が弱くなってしまうやもしれないので、「アイドル」という濃いキャラ付けをするくらいの方がバランス的にはちょうどイイのやもしれない。


 彼女は本作の序盤から渋谷駅のガード下でガラの悪い不良高校生にナンパされて困惑している姿で登場を果たして、それをオズオズと主人公少年クンがトメに入るかたちで接点が作られる。
 しかして、そこですぐにイイ仲になってしまうと安直なので、彼女を近眼として同じ場所で再会してもあのときの彼だとはなかなか気付けないとする。一般公開されている記念館としてオモテ向きはカモフラージュされた科学特捜隊のヒミツ基地の展示物を見学に来ても、彼女はそこで放課後にバイトをしている主人公少年クンが渋谷で助けてくれた彼だとはまたも即座に気付かないことでギャグ描写ともする(笑)。
 主人公少年クン自身もドキマギしながら彼女と同席することにウキウキして、ドー見ても正体バレバレな失言を連発し、しかしそれでもメインヒロインたる彼女が天然ボケにもその正体になかなか気付けないことで、ラブコメとしての味わいも出していき、しかして最後には彼の正体を半ば察知することで、全13話の背骨ともなる甘酸っぱい起承転結感も出していく。
 手法だけを取れば、『スーパーマン』のヒロインなどむかしからよくあるコテコテなのだが、それゆえにヒトの心を普遍的に揺り動かす鉄板・王道なのだともいえる。


 とはいえ、この過程で彼女のウルトラマン好きはタテマエであって、ホンネではウルトラマンvs巨大怪獣との激闘に巻き込まれて死した母親のことを想って、ウルトラマンを実は恨んでもいる両面性も明かされて、作品構造を単純にはしていない。


 彼女の母親が彼女の幼少時に死亡したという事実だけは、彼女や主人公少年が誕生したのも初代ウルトラマンが地上を去って、すでに数十年後が過ぎたあとであったとする世界観とは不整合が生じてしまっているけど(汗)。劇中での回想シーンに登場するウルトラマン初代ウルトラマン以外の別のウルトラマンにして(主役TV作品を持たないウルトラ兄弟の長男・ゾフィー兄さんあたりならばよかった?・笑)、例外的に一度だけ怪獣が出現したことがあったとするとか、死亡したのは彼女の母親ならぬ祖母にすればよかったか?


――後日付記:2023年5月から配信された本作『ULTRAMAN』の第3期こと「FINAL SEASON」を鑑賞していると、本作は初代マンが去ってから20年弱(17年)あとの時代が舞台であったようだ。原典の初代『マン』映像本編の時代設定はあの時代(1966年)に製作された作品にアリガチなことにテキトーで各話ごとにバラバラではある。しかし、某国の宇宙飛行士が怪獣化した#23のラストの墓標碑に1993年と記載されており、これに準拠すれば本作『ULTRAMAN』も配信時期の2020年前後だということにもなって、矛盾はなかったことになっていた。不明を恥じる次第である(汗)――


 老害オタ的なウンチクもココでついでに述べさせてもらえば、怪獣災害の被害者を本格的に描いたのは怪獣映画『ガメラ3 邪神(イリス)覚醒』(99年)が初だと世間的には思われているようだが、ホントは『ウルトラマンタロウ』#38「ウルトラのクリスマスツリー」の方が先である。
 そのことが60年前後生まれの第1期ウルトラ世代のマニアたちの眼中には入らなかったのは、彼らが『タロウ』放映当時はちょうど中高生年齢であり、70年代前半には子供番組を長じて鑑賞する人種がいること自体が世間にまったく流布しておらず、過剰な後ろめたさを持ってしまって、かつ往々にしてマジメなマニア小僧にアリがちなギャグやコミカルにチャイルディッシュを忌避するハードでシリアスでクールな乾いたSF風味至上主義者であったがためだろう。さらに、成人~中年以上の年齢に達すれば理解できたであろうウェットな人間ドラマが、ちょうど年齢&当時主流のマニア間での風潮とも反していたことで盲点となってしまい、あるいは稚気もある児童向けドラマの良さに対して過剰に羞恥を感じて悪印象を持ってしまったからではなかろうか? とも愚考する。
 彼ら先達オタクたちも還暦前後(!)に達してマルくなったであろう昨今、改めて第2期ウルトラを再鑑賞してみれば、おのずとかつての見解も改まると思うのだけれども、いかがであろうか?



 加えて、ご都合主義だともいえてしまうけど、この女子高生ヒロインの父親は警視庁の刑事でもある。しかして、警察と科学特捜隊とは競合関係にもあることで、怪事件に対する複眼的な描写や、警察よりも科学特捜隊の方が上位にあるとする描写も可能となっている。


――19年冬アニメの『魔法少女特殊戦あすか』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201206/p1)でも、級友の父親が警視庁の刑事であり、警察と特殊部隊がライバル関係にあって、その級友が悪党に狙われるという話を観たばかりだけれども(笑)。もちろんお約束で、本作『ULTRAMAN』の刑事さんは『ウルトラセブン』#8「狙われた街」に登場したようなアパートに張り込んで、アイドルでもある娘のファンの間で実は進行していた不可能殺人事件を捜査したりもしている――


 そして、殺人事件の被害者たちこそがネット上の巨大掲示板に当のアイドルに対する悪口雑言をカキコミしていた人間たちであり、その抹殺をウラ社会の人間に依頼していたのは、今は滅びた異星から来たゴリラ顔の亡命王子であり、彼は今では零落してアパートでの一人住まいの身でもあったとゆー。しかして、彼を真に唆していたのはヤンキーDQN(ドキュン)な日本の不良若造どもでもあって……。
 そんな没落王子を中心に、アイドルとの握手会でマゴついていた体格には恵まれないチビで貧相な彼を蹴飛ばして転ばせるようなガラの悪い若造たちをも同時に描くことで、純然たる子供向け作品のような安直な人間性善説、牧歌的な手触りの方は放棄しているあたりは、地球人と宇宙人をその品性下劣さにおいてフェアに描いており含蓄もある。


 極め付けは、サンデル教授の白熱教室における線路を高速で突進するブレーキの壊れた「トロッコ問題」。ひとり(アイドル)の生命を救うのか? 大勢(観客)の生命を救うのか? という永遠に解決が付かないアポリア・難問を、ライブ会場にて崩れた天井の鉄骨を支えているウルトラマン型強化スーツを着用した主人公少年に、「アイドルよりもオレたち観客を守れ!」と絶叫して主張してくる先の黒幕不良少年たちの姿でブツけてくることで、テーマ的にもトドメを刺す!


――この3D-CGアニメ版では描かれなかったけど、ググってみるとコイツらは死人にクチなし、近代法における証拠裁判主義&推定無罪の原則の欠点を突いて、その後も無罪を主張して、警察もパクれないでいる模様だ(爆)――


善悪がめまぐるしく変転していく、意表外でトリッキーなストーリー!


 直前の例示はわかりやすい人格悪だが、やはり年長マニア向けの作品なので、技巧的・トリッキーな作劇や、善悪が定かならずで一見善人のようでもありながら悪人のようでもあり、悪人のようでもありながら善人のようでもある作劇も、本作では多用している。


 まずは初代ウルトラマンをその最終回にて宇宙恐竜ゼットンをけしかけて敗死させた、黒背広を着ているゼットン星人の生き残りでもある、名前はエドなる御仁が科学特捜隊の重職を務めている。ワウ・フラッター(回転むら)があるテープレコーダーによる再生のような、『ウルトラマンエース』#1(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060514/p1)でナレーターの岸田森(きしだ・しん)が「ウルトラエース」と語っているらしきところを急遽の改題に伴い「ウルトラ“マン”エース」にオーバーダビングしたらしき箇所のような不協和な音声でしゃべるゼットン星人の彼は、どうやら高校生主人公クンを意図的にピンチに陥れて、しかもその彼が都度切り抜けていくことをも目的としているらしい。
 イデ隊員の成れの果ての初老のオジサンも、ゼットン星人ほどではないし邪気もナイけど、ゼットン星人とは別個に高校生主人公クンが徐々に新たに力に目覚めるサマを喜んでもいるようでもある。


 宇宙人連合である「星団評議会」のエージェント(おとり捜査官?)でもあるダダの同族モドキも、最初はアイドル事件の黒幕かと思わせて、その真意は前2者ともまた別に、主人公少年に試練を与えて、新たなる力を覚醒させることにあるようで、しかもその真の目的は平和連合ではなく悪の連合やもしれない「星団評議会」とも一戦を交えようともしているサマも描いていく。


 本作序盤では、初老のハヤタ隊員や早田進次郎少年を襲撃した、シルエットがトゲトゲになっているウルトラマン型強化スーツをまとった「始まりの敵」なる別名を持つベムラー――初代『ウルトラマン』#1に登場した宇宙怪獣の名前であることはご承知の通り――と呼ばれる存在は、当初は12年前の航空機爆破の真犯人かと思わせておいて、先のダダだかヤプールに彼は航空機を守ろうとしていたのだとも語らせる。


 片やウルトラマンエース型の強化スーツをまとう北斗星司少年も、当初は第3勢力の敵なのか? と思わせて、ウルトラマン型やウルトラセブン型とも交戦するけど、彼はかの航空機事故の唯一の生き残りでもあるとすることで――公的には死亡扱い――、『仮面ライダーアギト』(01年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011108/p1)における客船「あかつき号事件」のようなナゾともしていく。


 トドメはベムラーで、終盤で透明化していた姿を現わした超巨大宇宙船とそれが放った巨大ミサイルを、人間サイズの姿ながらも十字に組んだ圧倒的な光量の必殺光線で撃破することで、コレはドー見ても彼の正体は零落した初代ウルトラマンであり(?)、当初の一連の行動もまた早田進次郎少年の特殊能力を次から次へと覚醒させるための実に手の込んだ茶番劇だったということをも示唆していく。


しかして本作は、やはりコラえた末に発散するカタルシス志向のヒーローものであった!


 ……なぞと書き連ねてしまうと、シチ面倒クサいストーリーなのか? と未見の読者に誤解をされてしまうので、大急ぎでフォローをしておこう。
 本作もまたよくできたヒーローもの、娯楽活劇作品のセオリーに乗っ取った、往年の竹熊健太郎サルでも描けるまんが教室』(89年)で云うところのいわゆる「イヤボーンの法則」、往年のアニメ映画『幻魔大戦』(83年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160521/p1)などにも顕著な、主人公の少年少女が悪党によって大ピンチに陥って「イヤ(嫌)~~~!!」となったところで、潜在パワーや潜在武装が覚醒して「ボ~~~ン!!」と超絶パワーで反撃に転じて、それまでとの落差から生じる作劇的メリハリ・カタルシスを強制的に発生させる心的メカニズムにも準拠した物語にもなっている。


 不良どもにカラまれていたアイドル少女を助ける!


 事件や事故に巻き込まれた人々を助ける!


 渋谷のスクランブル交差点でのバルタン星人モドキとの戦闘で、科学特捜隊司令部からの電波で強化スーツのリミッターが解除されることで3分間の制限付きで超絶パワーを発揮する!


 やはりスクランブル交差点での怪獣型宇宙人・ブラックキングとの激闘で、強い思念から空中浮遊・飛行能力をも獲得する!


 エース型スーツをまとった北斗星司との相打ちで、第2期ウルトラシリーズの一部怪獣たちのようにボディーに喰らったパンチでチープな筒抜け穴が空いても生き返ったエースキラーを、激情パッションとともに自らの超精神パワーで強化スーツのシステム・プログラムをも改変して自力でリミッターを解除した主人公クンが、超絶の域に達した太っといスペシウム光線の光の奔流を発してついに溶かし去ってしまう! ……等々。


 ハイブロウな意匠に包まれてはいても、ヒーローものや娯楽活劇作品の根源・セオリーとは、短すぎず長すぎずのボリュームでの一進一退・シーソーバトルの果てに逆転大勝利を収める運動エネルギーの作劇的な型にすぎないようにも思うのだ――もちろんイイ意味で!――。


 そんなことをも再確認させてくれた――自説に牽強付会もさせてくれた(笑)――本フル3D-CGアニメ作品『ULTRAMAN』を筆者は高く評価したい。


追伸


 文脈的に収まらなかったのでココに書くけど、シャープでクールな作風やスタイリッシュな画面でゴマカされてしまいがちだけど、本作に登場する悪い宇宙人たちはのきなみ、第2期ウルトラでいうところの石堂淑朗(いしどう・としろう)脚本回に登場するような、宇宙のSF的神秘とは程遠い、ベラベラとしゃべり下品に哄笑もする、マニア間では悪しざまに罵られてきたいわゆる「チンピラ宇宙人」たちでもある(笑)。
 しかしだからこそ、SF性はともかく善悪の対比・メリハリは付くので、勧善懲悪のヒーローものとしては、殺っちゃってもイイ悪党、罪悪感なく殲滅できる悪党の造形法としてはコレが正解でもあり、その観点から第2期ウルトラにおける石堂脚本に登場したチンピラ宇宙人の再評価も切に望みたい。いやマジで。


 なお、主人公少年のモーシャンキャプチャーを担当したのは、平成ウルトラセブンに変身するカザモリ隊員を演じた山崎勝之(やまざき・かつゆき)。ハヤタ隊員のモーションを演じたのは『忍者戦隊カクレンジャー』(94年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120109/p1)のニンジャレッド・サスケを演じた小川輝晃(おがわ・てるあき)。モロボシダンのモーションを演じたのも『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20001102/p1)で追加戦士・タイムファイヤーを演じた笠原紳司(かさはら・しんじ)であり、そのへんはロートルオタであればスタッフ・ロールでとっくにお気付きでもあるよネ。


 ネット配信会社も、全世界のケーブルTV&個人から集金する「規模の経済」で、映像製作に乗り出せて、黎明期だから本作のような企画が通っているのだろうけれども、数年を経て何が売れて何が売れないというマーケティングが判明してしまったならば、ニッチな『ULTRAMAN』みたいな企画は通らなくなって、続編も製作されないんじゃないのかとも恐れる。アマゾン・プライム・ビデオでも、『仮面ライダーアマゾンズ』(17年)は第2期(18年)が作られたけど、『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』(ジ・オリジン・サーガ)』(16年)の方は同系企画が続かなかったみたいなモノで(汗)。


(2020年1月2日・後日付記:ネット配信媒体・Netflixの日本での2019年度に最も観られたアニメ作品は、本作『ULTRAMAN』だったそうで、上記の懸念(けねん)は杞憂(きゆう)に終わったのであった・笑)


 本作におけるウルトラマン型強化スーツの装着は、往年の『宇宙刑事ギャバン』(82年)のように戦闘スーツを戦場へ微粒子化しての電送~蒸着だが、原作マンガでは基地などに戻って装着するスーパー戦隊ジャッカー電撃隊』(77年)や『電脳警察サイバーコップ』(88年)のパターンなのだそうだ。一長一短・好みの問題だが、後者の方がリアリティは高いけど展開がモタつき、前者の方がヒーロー性・万能性は高まり展開もサクサクと行く。長じると良さもわかるのだが、筆者は幼少時『ジャッカー』の変身に憧憬を感じなかったので、本作の蒸着変身の方が好みである。


後日付記


 2019年6月12日(水)、本作フル3D-CGアニメ『ULTRAMAN』の「SEASON2」の製作決定が、フランスの「アヌシー国際アニメーション映画祭2019」にて発表された。



(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年ULTRAMAN号』(19年5月4日発行)~『仮面特攻隊2019年GW号・第2刷』(19年5月6日発行)~『仮面特攻隊2020年号』所収『ULTRAMAN』評より抜粋)


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