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仮面ライダービルド最終回・総括 〜三国志・火星・宇宙・平行宇宙へ拡大する離合集散・二重人格劇!

『仮面ライダービルド』前半・戦争編総括 〜北都が東都へ武力侵攻をドー観る!?
『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイド withレジェンドライダー』 〜ヒーロー大集合映画の教科書がついに降臨か!?
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『仮面ライダー』シリーズ評 〜全記事見出し一覧


仮面ライダービルド』総括 〜三国志・火星・宇宙・平行宇宙へ拡大する離合集散・二重人格劇!

(文・T.SATO)
(2018年10月28日脱稿)


 IQ600(?)の天才物理学者でもあるトッポい青年。その青年はナゾの組織に拉致され陰鬱な手術台の上で改造されたらしい……という『仮面ライダー』初作(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)の設定を想起させる、今どきの変身ヒーローものとしてはやや陰鬱な映像でスタートして、ナゾの組織・ファウストが繰り出すスマッシュ怪人との人知れずの暗闘を描く、非常にミクロな世界を舞台に開幕した平成仮面ライダーシリーズ第19弾『仮面ライダービルド』(17年)。
 赤い発光ガスを放出する超常的な万里の長城の出現により、3国に分断されてしまった日本という舞台設定は、当初は遠景にすぎなかったけれども、第2クールでは北朝鮮社会主義諸国を想起させる「北都」国の大軍が我らが「東都」国へ軍事進行! 首都にまで攻め込まれる「戦争」状況を描く。
 しかし、アメリカ的な新自由主義経済や帝国主義も想起させる「西都」国が、手薄となった「北都」国の首都に電撃進行してコレを陥落。今度は「西都」国が「東都」国を攻めてくる!
 その「西都」国でも政変が起き、シリーズ序盤から顔を見せ、3国ともウラでつながっていた『仮面ライダーストロンガー』(75年)の敵組織ブラックサタンの幹部タイタンもとい、往時タイタン役であった濱田晃が演じる巨大財閥・難波(なんば)重工の和装の杖をついた老会長が「西都」国の首相を暗殺! 超常の力で顔面を変えて成り代わる!
 すべては日本を3分割する万里の長城を突如出現させた、超常パワーを有する火星の超古代文明由来の「パンドラボックス」を奪取して軍事兵器に転用し、日本を統一してその勢いで世界に覇を競うためだ。


 中盤では戦争状態は継続するも、超古代の火星の気高き王妃の霊が黒髪ショートのメインヒロインに憑依している驚天動地の事態も発覚! 王妃はメインヒロインの両瞳を緑色に光らせて精神を一時的に乗っ取り、地球における火星文明崩壊の再来を警告する。と同時に本作におけるラスボス・エボルトは外宇宙に出自を持つことも明らかとなる。
 本作の2号ライダー・仮面ライダークローズに至っては、胎児の時分に肉体・DNAのレベルで外宇宙の生命体と融合、ラスボスと同根の存在であったことまでもが判明! 第1クールではメインヒロインの父であり、正義の味方たちの年長の後見人、昭和ライダーにおける「おやっさん」ポジションであった喫茶店の飄々としたマスターが、ライダーたちの特訓やパワーアップに協力していたのも、真の理由は2号ライダークローズの悪の本性を覚醒させることにもあったとする!


 物語のスケールも一挙に「宇宙」規模にまで拡大。ついにその正体を現し、本来の力も取り戻しつつあるラスボスは空間跳躍・ワープして、宇宙の彼方の太陽系外惑星へと仮面ライダーたちを拉致。そこの住民をブラックホールで惑星まるごと滅ぼす光景を見せつけもする! ラスボスは「東都」国の首都上空でもミニブラックホールを出現させ、人々は都市の瓦礫とともに阿鼻叫喚の悲鳴をあげながら宙に吹き上げられ、漆黒の闇へと吸い込まれていく!
 東映メタルヒーローレスキューポリスシリーズ第3作『特捜エクシードラフト』(92年)終盤では、神と悪魔の最終決戦・ハルマゲドンが描かれるも、その映像は埼玉県寄居のアリゾナ州(爆)で、赤いサンタクロースと黒いサンタクロースが細かいカット割りで3人ずつ「組み体操」バトルをしているビジュアルであったことを思うと(笑)、異星文明や「東都」でのカタストロフを視聴者にチャチな映像で幻滅させて作品外の現実=日常に引き戻すことなく、物語に没入させたままで危機感・絶望感・圧倒的強敵感も実現できるようになった、ここ四半世紀の特撮CGデジタル映像のエボル=進化には改めて隔世の感もいだく。


 終盤では、昨年末の正月映画で、世界観が異なる本作『仮面ライダービルド』世界と直前作『仮面ライダーエグゼイド』(16年)以前の第2期平成ライダーシリーズ(09年〜)の世界を連結させるために導入された「平行宇宙」=パラレル・ワールドの概念までをも投入。別の世界の「地球」をこの「地球」にブツけて、ここ20年ほどの時間も含めて「歴史改変」することで、無敵のラスボスを消滅させる秘策とする。
 コレは次作『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190126/p1)が、歴代平成ライダーシリーズ20作品を個々の独立した別世界ではなく、1本の歴史時間軸上にある同一世界(?)だとする設定にインスパイアされて着想されたアイデアで、出来れば『ジオウ』ともリンクさせられれば……との欲張った意図もあったのであろうか?


 ……そして、時間がいったん巻き戻った上でヤリ直しされたのか、オルタナティブ(代替可能)な別の歴史をたどった「新世界」のイマがココに出現! 人々は「旧世界」での3国分断&惨劇をもはや覚えてはいない。非業の死や野望の果ての死を遂げた人々も、ヒーローや怪人などが存在しない平和な社会で現実的な人生を送っている。仮面ライダービルドや仮面ライダークローズに変身する運命をたどらなかったふたりの青年も別の人生を生きていた。
 しかし、「旧世界」での激闘の記憶を持ち越した、いや「旧世界」からその肉体まるごと「新世界」にたどりつき、「歴史改変」をまぬがれ「時空の常識」からは逸脱して、「新世界」で別の人生を送っていた「自分」とも分岐・独立した「特異点」とでもいうべき青年が淋しくひとり。いや、にぎやかにふたり……。といったところで、物語は幕を閉じる。


――ご存じ「特異点」とは物理学の用語で、ブラックホールの内部など、通常の物理法則が通用しなくなる特異な地点を指す。『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)の主人公がそう呼ばれたのが記憶に新しいが、ロートルオタであれば『超時空要塞マクロス』初作(82年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990901/p1)の後番組にして、あまたの平行世界の地球が「超時空振動爆弾」の影響で混在してしまった世界を描くリアルロボアニメ『超時空世紀オーガス』(83年)のキーパーソンたる主人公青年も劇中でそう呼称されていたことを想起するであろう――


 ……本作『仮面ライダービルド』#1を視聴した時点で、だれがこのような二転三転の果てに世界観もエスカレーション、インフレーションしていくシリーズ構成を予想しえたであろうか!?
 当初の本作は、『仮面ライダー』初作第1クールのいわゆる「旧1号ライダー編」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140601/p1)や『仮面ライダーBLACK』(87年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015/p2)序盤のミクロでクールな「夜」の映像的雰囲気にも通じるモノがあるとする声も一部では仄聞したほどであったが、結局はそれとは真逆のマクロな方向で、昭和ライダーシリーズをも含む全『仮面ライダー』シリーズ史上最大の広大な時間的・空間的スケールを誇る作品世界に着地した。


「戦争編」再総括 〜政変劇&個人の懊悩劇。強者に抗う弱者の力も暴走する逆説!


 一方で、第2クール中盤〜第3クール序盤のいわゆる『ビルド』「戦争編」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180513/p1)では、大状況の主導権は各国の政治家たちに握られ、「北都」国の女性首相や「西都」国の壮年首相に「難波重工」の老会長らが繰り出す老獪な権謀術数や奇策に奇襲や外交的な角逐で、戦争の趨勢やストーリーの行く先が決まり、仮面ライダーたちはそれに翻弄されるしかなく、そのことに悩みまくる存在としても描かれた。
 コレらのあまりに高踏な描写の子供向けヒーロー番組としての是非はともかく、ある意味ではコレはリアルな現実そのもののメタファーでもある。トオのたったマニア視聴者は「そうそう、世の中って、あるいは一個人の営為なんて、そんな程度、1億分の1だよネ。世界や社会はたしかにそーなっているよネ!」的な滋味や寓話的リアリティ、ニガい共感もさせてくれる、悪をやっつける明朗なカタルシスとはまた異なる「重たいカタルシス」を味合わせてもくれた。


 昨年末の正月映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイド withレジェンドライダー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171229/p1)においては、仮面ライダービルドこと桐生戦兎(きりゅう・せんと)クンをはじめ、第2期平成ライダー各作の主人公(1号ライダー)たち、仮面ライダーエグゼイド(16年)・仮面ライダーゴースト(15年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160222/p1)・仮面ライダー鎧武(ガイム)(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)・仮面ライダーフォーゼ(11年)・仮面ライダーオーズ(10年)の変身前の中のヒトらが、底抜けの善人ぶり・熱血ぶり・博愛ぶりで巨悪に立ち向かう熱い姿も描かれた。
 そして地球崩壊の危機が迫っていて、巨悪を倒すという大目的もあるのに、目的地に向かう通りすがりに危難に遭っている弱者を見かける度、天秤の秤で大小を計らずに迷うことなく彼らに手を差し伸べていく姿の連発が、美談としても叙述されていく。
 『ビルド』世界の2号ライダー・仮面ライダークローズこと博愛精神や公共心には少々欠けるキライのあるプチ・ヤンキーの万丈龍我(ばんじょう・りゅうが)クンは、その光景に「見返りもないのにナゼにそこまで……」と疑問を浮上させつつも、彼らに大いに感化されていく姿をドラマ面での1本のタテ糸としていた。
――「大の虫を生かすために小の虫は犠牲にする」ではないけれど、大災害や大事故の場合には救える命を優先し、軽傷者や救命が困難な重篤者への治療は優先順位を下げ、マンパワーをその分、救命可能な重傷者に回すことで結果的に救える人間の数をもっと増やせるという、ある意味では命の選別・優生思想であり「平等」の理念に反するやもしれない「トリアージ」の概念が先進各国で勃興し、日本においても10年前の08年の秋葉原通り魔事件(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080617/p1)の現場でそのような救命処置がなされてからも久しい昨今、先輩ライダーたちのその態度もホントウに正しいのか? というイジワルなツッコミも可能ではあるけれど(汗)。「99匹の子羊」の生命を救うべき「政治」として正しいかはともかく、子供や大衆たちに観せる「1匹の子羊」の生命・心をも救わんとする「説話」「文学」としては、このような博愛精神の称揚は十全ではなくともまぁ正しいとは思う――


 しかし、この「戦争編」では、仮面ライダーの超人的な力をもってしても、広大な戦場のすべての人々を救うことなどできはせず、通りすがりに見かけた弱者を助けるのがせいぜいであるとする「無力感」の象徴として、その意味合いを反転させて描かれる(爆)。
 この事態に、スマッシュ怪人と戦いながら「東都」国の諜報機関とも一戦を構えていた彼は、当初は「北都」と「東都」の「戦争」に軍事兵器として加担させられることは拒む。しかし、「東都」首都の惨状や傷つき落命していく犠牲者を前にして仕方なく、緊急救命行為として「東都」側と連動してこの戦争に加担していくことになる。
 そしてこの加担行為には、記憶喪失の身である自分の前身が、実はライダーや怪人自体を生み出した「悪魔の科学者」であり、この戦争の発端にも関わったかもしれない不安、アイデンティティ・クライシスと、それでも科学が大スキであり科学的真理と科学がもたらす希望を信じたい、科学の成果であるハズの「ライダーシステム」の「正義」もついでに証明したいという、純真&邪心&自己逃避とが入り交じったような情動&動機にも基づいていた。


 多くの人々や弱者を守るためには、たしかに逆説的に自身が強くなる必要はある。しかしその力を制御できずに発揮してしまったり、力の発揮の万能感に陶酔して自己懐疑や自己点検を怠ってしまえば、無関係な周囲にも意図せざる甚大な被害を惹起してしまう恐れもある。コレは大は戦争にかぎらず、文明の利器、どころか個々人の腕力やナイフに包丁、小は口舌や我々キモオタ同人のペンや文筆(汗)に至るまで、太古から普遍的に万物を串刺しにして遍在するアポリア――相反する真逆の2つの答えが同時に得られてしまう難問――ではある。
 本作においても、ワリとベタに可視的に、禁断のアイテム・ハザードトリガーを変身ベルトに追加挿入することで、全身が黒色に変化しただけ……といったあたりがシンボリックな意味でもミエミエ(笑)な仮面ライダービルド・ハザードフォームに強化変身。
 この形態に長時間、変身していると自我を失い、狂戦士(パーサーカー)と化してしまう危険性が指摘され、数度目の使用後には実際に、「北都」の仮面ライダーにして本作における3号こと金色のライダー・仮面ライダーグリスの子分の3バカ不良たちが変身する強化スマッシュ怪人のひとりを必殺ワザ・ライダーキックで蹴り殺してしまうことで、戦地での軍事行動とはいえ、その正体はひとりの人間である存在を殺めてしまったことに主人公は恐怖して、人格崩壊の危機に陥らせてしまう作劇を行なった。


 正直、筆者個人としては本作「戦争編」こそが、


・マクロなポリティカル・フィクション(政治劇)
・ミクロな個人の懊悩ドラマ
・それらの中間レイヤー(層)での、「東都」首相の実子にして、諜報機関ファウストの長としての独断で、首相も知らない不要な汚れ仕事もするダンディなヒゲ面の壮年所長・氷室幻徳の野望&政治的没落、首相による解任と「西都」への亡命劇


 なども含めて一番見応えはあった。


 しかし、あくまで過剰な会話劇ではなく細かいカット割りや場面割りにアクションが中心であったとしても、小学校中学年以上であればともかく、絵的にハデでヒーローにも変身する若者たちではなく、地味なオッサン・オバサンらによる絵柄的には変化に乏しい「戦争編」の怒濤の展開は、幼児や小学校低学年が観たらドーであったろうか? 今思えば、あまり面白くはなかったであろうかと危惧はする(笑)。
――3号ライダー・グリスが出現、2号ライダー・クローズが強化形態クローズチャージに変身、「戦争編」終盤ではCGで上空へウサギのようにピョンピョン跳ねつつパーツを徐々に装着していくハデな変身シーンの赤い強化形態ビルド・ラビットラビットフォームや青い強化形態ビルド・タンクタンクフォームが登場するなど、子供ウケしそうなキャッチーなイベントや映像も節目節目にあったとはいえ――。
 それに、このようなハイブロウな描写も、仮にスレたマニアだけがお客さまであったとしても、せいぜい1クールが限度であって、それ以上は反復となりアキてきて、「ニガみもあるカタルシス」も含めて爽快感が欠如していく可能性は高い。


 そのあたりの危険性に先回りをして網も張ったのか、「北都」国vs「東都」国の勝敗は、そして「西都」国vs「東都」国の決着も、各国の仮面ライダーや疑似ライダーたちが代表選手としてリングで決着をつける協定が政治的に合意されたことにして、子供向けヒーロー番組における「仮面ライダー」という存在に、改めて劇中内における特権性・超越性を付与していく(そこだけは非リアルではあるけれど・笑)。
――まぁこのへんも、勝敗を無視して軍事侵攻が継続されたり、そも密室バトルとされることで勝敗がネジ曲げられて世間に伝えられ、ヒーローの強さやその強化形態の初登場回としては特撮&アクションのカタルシスが全開になっていたとしても、ドラマ・テーマ的にはビターな一筋縄ではいかないダブル・ミーニングの技巧的作劇が連発されたけど――


最終「エボルト編」総括 〜火星・宇宙・平行宇宙。7大ライダーの離合集散!


 『ビルド』のシリーズ後半戦では、国家vs国家の戦争状況だけではなく、改めてレギュラーの登場人物たち、主に複数いるあまたの仮面ライダーへの変身者たちの活躍にもフィーチャー。
 強化変身の果てに戦争の戦局すら左右する、戦術レベルから戦略レベル、あるいは政略レベルにまで達した仮面ライダーたちや、その亜種の疑似ライダーとでもいうべきスマートなダークヒーローたちが、「パンドラボックス」の争奪をめぐって、拳や蹴りを交えつつする会話や討論(笑)で、彼ら自身の背負った出自・動機・美学・哲学・テーマをブツけあう作劇に帰着する。


・「東都」の仮面ライダービルド&仮面ライダークローズ!
・「北都」の仮面ライダーグリスは亡国の民となり、遺恨は残しながらも、仕方なくビルド&クローズと共闘!
・「東都」から亡命したヒゲ面の貴公子が、「西都」でまさかの再起を果たして、故郷に復讐を誓う仮面ライダーローグに昇格!


 本作には序盤から、仮面ライダーもどきのスマートなダークヒーローとして、黒いコウモリ男型のナイトローグと、赤いコブラ男型のブラッドスタークも登場していた。


・前者はファウスト所長から亡命貴公子に没落の果て、前述した4号ライダーこと仮面ライダーローグに転生!
・後者もライダーの最強の敵は悪のライダー! あるいは技術的オリジンは実はコチラ! というパターンで、その正体は地球外生命体であったエボルトが仮面ライダーエボルへと変身!


・さらには、もうひとりの仮面ライダービルドも出現! その正体は、我らが主人公・桐生戦兎クンの前身、葛城巧(かつらぎ・たくみ)青年の死んだハズの実父の科学者! 本来、実父が装着するために製造された変身スーツだから、マッチングも抜群でむしろ強いのだと設定する。
――シリーズ後半では登場しなくなっていた、左右半身が赤と青のビルド基本形態・ラビットタンクフォーム等々の姿を取ることで、強化形態の姿で終始登場するようになっていた現役ビルドとの描き分けもバッチリ!――


・4号ライダーこと仮面ライダーローグのマイナーチェンジ(着ぐるみ微改修版)である仮面ライダーマッドローグまでもが登場! やや取って付けた感があるけれど、ラスボスライダー・エボルと同型の赤い変身ベルトを用いて変身することで(!)、その番外ヒーロー的な存在感の弱さはカバーする。
 変身者は「東都」ではヒゲの貴公子・幻徳のクールな秘書であり、シリーズ前半では人身御供として幻徳に狙撃され、高い橋から落下して退場するも、その正体は難波重工に忠誠を誓うスパイでもあった眼鏡の青年・内海のリベンジ!


 『ビルド』後半は、都合7人のカラフルな仮面ライダーたちが順列組合せマッチメイクで激突、かつ目まぐるしく離合集散・叛服常無しで動く、個々人のブラウン運動の意外性の連発もねらった方向性に作劇の舵を切る。
 云うなれば、紀元後の「三国志」を紀元前の「春秋五覇」や「戦国七雄」に変えただけで、作品構造的には実は「戦争編」と大差ナイともいえるけど、抗争の主体を国家法人からカラフルな変身ヒーローに変えるだけでも、子供たちには共闘・離反・鞍替え・再共闘などのシャッフル群像劇が随分とパターン認識しやすくなったのではあるまいか?(笑)


・寝食をともにすることで和解していく3号ライダーグリスと、1号ライダービルド&2号ライダークローズ。
・4号ライダーローグvs3人のライダー。
・3号ライダーグリスを離反させるため、彼の故郷の「北都」の人々を人質に取る「西都」、ひいては「難波重工」の悪辣さ。
・その卑劣な手段にいくらなんでもついていけず、「西都」を裏切り、人質を解放してしまう4号ライダーローグ。
・父である「東都」首相の目前での死により、本格的に改心した貴公子ローグ
・貴公子ローグと3人のライダーとのギクシャクした関係。
・実は世間知らずで生活力もなかった貴公子ローグを、その奇矯な言動&各話で異なる格言(?)が書かれたTシャツを内心の声代わりに指さす代弁で、ギャップ笑いのキャラにジョブチェンジ!――ローグ変身時に鳴り響くスリラー映画のごとき「女性の悲鳴」の音響効果も、ボケに対するツッコミに意味合いを変えて多用される(笑)――
・そのコント劇の果てに、ヒゲ(ローグ)とジャガイモ(グリス)が、そして正義側レギュラーたちとも和解。
・DNA的にはラスボスと半分同根であると知らされた2号ライダーの懊悩――いや脳ミソ筋肉だから、あまり懊悩していなかった?(汗)――
・生きていた実父はもうひとりの仮面ライダービルドに変身するも、ラスボスライダー・エボルと組んで、主人公たちの前に立ちはだかる!


 コレらの離合集散劇に、玩具販促による新キャラ続々登場も、あたかも劇中内では必然性があったかのごとく、後付けのリクツも込みで、巧妙なパズルのように当てハメていく。
 強敵の出現! 押されるヒーロー大ピンチ! しかして、決してアキらめない頑張りや人々の善意に応援(笑)やテクノロジーが後押しして、ヒーローは新たなる強化形態に再変身して大逆転!
 敵側にもこの作劇的法則は適用され、地球外生命体であるラスボスも、その超常的な特殊能力で1号ライダービルドや2号ライダークローズに次々と憑依!
 その肉体を乗っ取り、頭部だけ1号ライダービルドのマスクをかぶった仮面ライダーエボルや、頭部だけ2号ライダークローズのマスクをかぶった仮面ライダーエボル、そしてついには赤色ではなく白色の仮面ライダーエボル・究極形態へと次々にタイプチェンジしていくことで、ビジュアル的にも変化をつけつつ、一進一退の攻防劇と、新キャラ加勢や強化形態を登場させる物語内での必然性を作っていく。


 この展開に応じるかたちで、4号ライダー加勢や、2号ライダーの新強化形態・クローズマグマ、さらにはグレートクローズ、3号ライダー強化形態・グリスブリザードに、1号ライダービルドも通常の2本の属性成分液体ボトルではなく全60本ものボトルを全身と顔面(笑)に装着した白い最強形態・ジーニアス(天才・笑)フォームへと変身することで、絶体絶命のピンチを脱する大逆転劇のいくつもの連発(笑)にも「設定」的な説得力を与えている。
 シリアスで息詰まる展開でありながら、仮面ライダー各々への変身時の背景には、おそらくは佛田洋特撮監督による悪ノリ絵コンテであろう、オトナ目線では少々笑ってしまうナンセンスな溶鉱炉やらブリザードやらを出現させ、前後から変身者を仮面ライダー型の鋳型にハメる派手派手なバンク映像ならぬ3D−CGの映像データを、さまざまなアングルやアップに引きの実景映像へと合成することで、あるイミではこのテの作品のキモ・本質でもある、子供やマニアに大衆たちも実は望んでいるであろうスペクタクルな光景や、全能感・万能感・身体拡張・変身願望のカタルシスを擬似的に満たす、子供番組的なケレン味についてもバッチリ!


――そのむかし、メインヒロインが作ってくれた料理をバクバク食べたら強化形態に変身しちゃった仮面ライダーアギト(01年)や、特にイベント編でも強敵相手でもない通常回なのに子分の西洋3大モンスターもどきを召喚合体して強化変身しちゃった仮面ライダーキバ(08年)などの、異形のキャラクターたちによる愛憎激突劇やその動機の延長線上としてのバトルには関心があっても、ヒーローの玩具性や純粋パワーゲームにはまるで関心がナイとおぼしき井上敏樹脚本作品というモノもあってだなぁ。ゴホッ、ゴホッ(汗)――


最強の敵もライダー! マスター=スターク=エボル=エボルトの変転劇の妙!


 スーパー戦隊シリーズでは『動物戦隊ジュウオウジャー』(15年)、平成仮面ライダーシリーズでも『仮面ライダー鎧武/ガイム』(13年)あたりから、合体巨大ロボットのバリエーション、ヒーローの頭数や特にその形態変化がまたまた膨大に増えた。そのことによる、着ぐるみ予算の増大対策としてか、敵のゲスト怪人の数が顕著に減らされることになる。
 その代わりにゲスト怪人は、00年代後半以降のウルトラマンシリーズのゲスト怪獣たちとも同様、同族の別個体や上級戦闘員、再生怪人としてリサイクルされたり、新造着ぐるみの幹部級怪人が強敵として数話〜約1クールに渡って前線で連戦する作劇を導入したりした。そして等身大戦ではレギュラー敵幹部と抗争、巨大戦では再生巨大化怪人をやっつけるなどで、各話単位における必殺ワザ披露による敵をやっつけるカタルシスは担保して、予算不足をクレバーなパターン破り作劇などでカバーする工夫もなされてきた。


 第2期平成ライダーシリーズでもここ数作の終盤では、長期にわたって登場する新造着ぐるみの幹部級怪人のポジションに、悪の仮面ライダーを配置! 第1期平成ライダーシリーズの劇場版ではすでに多用されていたけど、ヒーローの最強の敵は、見た眼的にも少々劣位にあり道義的にも悪の存在であろうと思われやすいやや格下の怪獣・怪人ではなく、ヒーローとも拮抗するかそれを上回るやもしれないと一瞬錯覚させる同族的なカッコいいダークヒーローパターンを投入。
 『仮面ライダー鎧武』最終回では既存スーツの微改造とおぼしき仮面ライダー邪武が登場したが、その次作『仮面ライダードライブ』からは同作2号ライダーの実父でもある新造スーツの金色の仮面ライダーゴルドドライブ、1作飛んで直前作『仮面ライダーエグゼイド』では同作5号ライダーの実父でもあるメタリックグリーンの仮面ライダークロノスが登場して、複数のライダーが束になっても叶わない強敵ぶりをシリーズ後半では延々と披露した。
 本作でも同趣向で、この役回りを先にも言及したメインヒロインの実父(?)でもある仮面ライダーエボルが務めて、新造のゲスト怪人を登場させられない代わりに、シリーズ後半をバトル面でもスケール面でも心情面でも大いに盛り上げてくれた。


 このラスボスライダー・エボルであり、地球外生命体・エボルトでもあった存在の描写も二転三転を極めていく。シリーズ前半では赤いダークヒーロー・ブラッドスタークでもあった彼の正体は、序盤では正義の味方のファンキーで愉快な後見人であり、昭和ライダーでいう「おやっさん」ポジションで、メインヒロインの実父でもある喫茶店のマスターであった! と第1クール終盤では明かしておいて(笑)、第3クール序盤ではさらなるヒネりを入れ込んで、マスターはエボルトに憑依されていただけであった! と二段構えで攻めてくる。終盤では本来の万能に近き超常能力も回復、マスターとは分離して、独力で具現化・物質化・肉体化することで、マスターの姿を擬態して行動するようにもなる。


 筆者個人も第2クールの「戦争編」時点では、マスターの悪行はパワーファイターではなく小賢しい小悪党レベルで、各勢力のウラを行き来して操るだけのトリックスター的な存在なのだから、正義の味方を鍛えるために悪を演じている「偽悪」やも……なぞと穿った予想もしていたのだけれども。
 それらは我々のような年長キモオタに対するミスリード描写であったようで(汗)、正義の味方の仮面ライダー側のパワーアップ劇でさえ、彼の遠大な文明崩壊計画のための一助であり、一連のすべては彼の手の平の上のことであったとして、ラスボスへと次第に昇格していく……。


 それでも憑依したマスターの記憶を用いてだろう、実父としてメインヒロインに接したり、記憶喪失であった戦兎青年や龍我青年との同居生活で、疑似家族を演じているうちに情が移り、ホンキで心配したりウルッとしたこともある……なぞと泣きつくメインヒロインを前に、済まなさそうに真相を告白したりする多面性もある心理描写をラスボスごときにも与えている。
 その果てに、この複雑怪奇で矛盾した繊細でもあり破滅的でもあるメンタルを持つ地球人に興味・関心を持ったことで学習し――そこまでは『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)において再定義された昭和のウルトラ兄弟が地球人(劇中ではあえて「人間」と呼称)を守護する二次的な目的=「ヒューマニズム・人間心理の学習による自らの精神の向上・人格の陶冶(とうや)」と同じだけど――、本来の宿願であり彼にとっての至上の快楽であるハズの「惑星文明の破壊」を棚上げにして、「全人類の支配」に関心が移ったかのようなことも難波老会長を相手にウソぶく。


 それもこれも作品外のことを云えば、なんでそれだけの超パワーがあるのに、ライダーや人類をさっさと滅ぼさずに遊戯のように戦っているのか?(笑) という年長視聴者や小賢しい小学校高学年以上のガキんちょどものジャンル作品への実に正当・合理的なツッコミに対する予防線ではある。ヒイてジラして半年なり1年をもたせていることへのいくつかの設定的回答を先回りして提示して、しかもそれら回答群をも煮詰めて派生・自生・積層するかたちで、後付けでも辻褄が合うストーリーを構築していこうという、作家の作劇的な都合や技巧でもある。
 しかし、それゆえにウェルメイドで面白い作品ができるのであれば、そんな賢(さか)しらな作為(さくい)こそがまさに創作のキモなのだと云っても過言ではナイであろう。


――60本ある成分液体ボトルなども同様で、「ウサギ」だの「戦車」だの「ゴリラ」だの「掃除機」だの「海賊」だの「列車」だの「UFO」といった稚気満々なそれらの成分は、個人的にはその脈絡のないセレクトに理由付けなどなくても、このテの番組ではいつものことなのだから、USBメモリ型の「地球の記憶=ガイアメモリ」(笑)のようなモノだと、視聴者の側で勝手に割り切ってもよかったのだけれども……。それでも一応の合理的・暫定的なリクツがナイよりかはあった方がイイとはいえるので、それらはメインヒロインの幼少時の落書きに依拠していたと終盤で回想映像込みで語らせて、そこから後付けでも父娘ドラマやラスボスの陰謀劇を当てハメていくのもうまい……とは思うモノの、このあたりの描写は少々取って付けたような感もあったかナ?(汗)――


 地球外生命体であるラスボスも人間性の何たるかを多少理解したことで、女児向け・マニア向けの魔法少女アニメのごとく、少女の母性や博愛精神で魔性や悪の存在をも癒やして和解せんとする方向に転じることも論理的にはアリだったやもしれないけれども……。本作は基本は男児向けの戦闘ヒーローという節をまっとうして(?)、ヒト型に変異したネウロイがより上位のネウロイに抹殺されることで、異種コミュニケーションではなくイイ意味で頭の悪い勧善懲悪バトルに舞い戻る戦闘美少女アニメストライクウィッチーズ2』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150527/p1)#1冒頭のパターンで、和解の可能性は放棄して巨悪を倒すカタルシスを目指す方向性に収束していくのも、娯楽活劇作品としては正しい選択だとも思う。


メインヒロイン。そして難波チルドレンであったサブキャラたちの描写の達成度!


 かわいいけどプチ・アンニュイ(気怠げ)でもあるメインヒロインには、全60本中の20本が「東都」にだけ不完全なかたちで存在していた属性成分ボトルを、科学の力か超常の力で浄化(復元?)する特殊能力を持たせて、実父の正体への困惑や、10年前の3国分断勃発の現場に居合わせたことへの因縁でもドラマを構築していく。
 『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年)ではメインヒロインの女性隊員であった女優さん演じるサブヒロインも、フリーのジャーナリストだと思わせて、第1クールで早くも難波重工・老会長の子飼いのスパイであったとし、しかして改心して正義側について、それでも「戦争編」終盤ではやはりまだ幼少時からの洗脳が解けておらず正義側を裏切るのやも……と思わせておいてから、二重スパイとして情報収集を行なったことにして、ビルドにパワーアップ&勝機をもたらす。


 第1クールでは「東都」の貴公子・幻徳のクールな秘書であり、幻徳にコマ扱いされて降板するも、先に身を寄せていた「西都」であとから亡命してきた貴公子を土下座させ、嗜虐的な喜悦の表情をしながら靴の底で踏みにじった眼鏡の青年・内海もまた、幼少時からの集団寄宿舎生活で育った身寄りのない難波チルドレンとして老会長の薫陶を受けて育った者と設定し、サブヒロインとも同窓であったとする。
 エボルトによる老会長殺害を目前にして驚愕しつつも、長いものには巻かれろで、老会長の形見となった杖をヒザで折り、狂喜の表情でエボルトに忠誠を誓ったと思わせて……。


 さらには昨年末の正月映画の敵のテクノロジーを援用したとの設定によるカラーリングの塗り替え(笑)で流用された「西都」の疑似ライダー2人組――古い世代には東映特撮『キカイダー01(ゼロワン)』(73年)に登場した2人組の敵怪人ライジーン・プラス&マイナスを想起する――の鷲尾風と雷の兄弟もまた、難波チルドレンであって……。


 このへんの一連の展開も、設定的には実に劇的・ドラマチックではあったけど、後付けでもヨコ方向での人間関係、サブヒロイン・内海・鷲尾兄弟との敵と味方に分かれたあとも、同じ釜のメシを喰った仲としての精神的紐帯があるような描写・肉付けがもう少しだけほしかったところではある。
 老会長にアレだけ忠誠を誓うからには、恐怖や圧政による洗脳や面従だけではない、老会長にも老獪な喰えない悪党としての面だけではなく、自分の手足にせんとする野望と同時に、ひとりの人間としては幼き子供たちに自然に情も移っていたからこそ、死したあとも内海らは忠誠を尽くしたのだというような回想シーンの挿入を、事前に入れるとネタバレになるのなら、内海のエボルトへの突如の反逆の渦中や失敗においてフラッシュバックさせてもよかったのではあるまいか? エボルトのメインヒロインに対するアンビバレント・二律背反な情とパラレルで、老会長と幼少時の難波チルドレンらの冷徹だけではない心温まる交情シーンも描いて、多面的にしてほしかったようにも思うのだ。
 ただまぁここまで至れり尽くせりの作品の場合、脚本では描かれ撮影もされていたけど、尺の都合でサブキャラたちのドラマは往々にしてカットの真っ先の対象にはなりそうなので、コレらの弱点の真相はそーいうことやもしれないけれども。


 エボルトと分離したマスターが終始、意識不明で入院したまま役立たずであり、そのまま歴史改変後の「新世界」に移行してしまったのもモッタイなかったが――同じ顔面のキャラがふたりも登場すると、幼児が理解できずに混乱すると思って自粛したのであろうか?――。


明かされた新人格・桐生戦兎=旧人格・葛城巧。二重人格が内面で問答する対話劇!


 本作の文芸面での特記事項は、やはりシリーズ後半〜終盤においては、節目節目で主人公・桐生戦兎クンとは顔面からして異なる前身、若き天才科学者・葛城巧青年の人格も脳内で蘇ってきて、二重人格のように心象風景映像内にて彼との対話・問答もはじめるところであろう。
 ムチャの域には達していないけど明朗で正義感も行動力もある桐生戦兎に対して、ややシニカルでクールで大人しげで行動力に欠けるキライもある葛城巧。
 約25年を生きてきた葛城巧としての蓄積と、その上澄み(?)としての記憶喪失後の1年間で新たな第2の人格を構築した桐生戦兎。その素体はあくまでも葛城巧なのだから、場合によっては桐生戦兎は否定され、葛城巧に回収されるのが本来はヒトとして正しいのだともいえる。
 しかして、四半世紀の間の自分の弱さやムラ世間的シガラミ・思い込み・言動パターンの蓄積を「記憶喪失」でご破算・リセットしたことで、打算や自己保身ナシに公平・公明正大にジャッジしてふるまうと、対外的な行動力にはやや欠けるハズのシニカルな葛城巧もまた正義のヒトとして身体が動くのだ……あるいは行動できるのやもしれない……行動できたらイイなという願望も仮託した(笑)という点においては、後付けでも非常に含蓄もある肉付けであったとも思える。
 そして、「非合理的」な「仲間」や「熱血」よりも「合理的」な「科学」だけを信じるなどとブっていたシニカルな葛城巧も、前者の重要性も賞揚するホットな桐生戦兎の言動に一理があることを認めた果てに、「非合理」の力も加えてビルド最終形態・ジーニアスフォームへと進化する! そうなると、後天的な桐生戦兎としての人格もまた自立・独立したものとして劇中では単純に否定はできなくなってくる。
 そこで本作が最後に取った方策は? 現実に実現可能かはともかく、両者を同時に肯定・両立・並存させる平行宇宙由来のSF的な解決策を、ラスボス打倒の秘策にカラめて提示してみせることで決着させるのであった……。


 #1冒頭では冤罪と思われたプチヤンキー青年・万丈龍我の頼みで情にホダされ一瞬の逡巡の末につい助けて、バイクのうしろに乗せて逃走してしまったがために、「東都」国に追われる身となってしまった我らが桐生戦兎。合理的・理性的な物理学の徒でありながらも、不穏なものを直感したのか司法の手には委ねず、それ以上に正義のヒーローにとっては必須でもある、困ったヒトを放ってはおけないヒトの良さをも体現したキャラ描写。それはシリーズ後半での二重人格による自問自答劇の果てに、「仲間」や「熱血」などの「非合理」の力も認めた戦兎クンと葛城巧の図とも係り結びになったともいえる。


 まぁ戦兎クンの明朗な人格や行動が周囲に許容されたのは、そして自身もそのようにふるまえたのは、実はエボルトに顔面をおバカなイケメンミュージシャン青年・佐藤太郎(死亡・笑)に変えられたためではなかったか?(汗) と、万年・葛城巧でもある筆者なぞは一方でシニカルにも考えてしまうのだけど。イケメンに宿る無意識の自信と適度な自己愛、戦兎クン自身も自己分析・自己言及してみせたエエカッコしいの「自意識過剰なヒーロー」(笑)。それが彼の行動の背中を押しているならば……。エボルトの最大の誤算は、戦兎クンをブサメンに変えなかったことやもしれない(爆)。いやまぁ恵まれた属性・大いなる力を、慢心や自己のためではなく、彼のように他者・社会・公共のために使うのであれば責められるべきことでもないけれど。
――作り手たちは未見であろうけど、古くはTVアニメ『エスパー魔美』(87年)、00年代前半のアニメ映画『クレヨンしんちゃん』シリーズ、『カッパのクゥと夏休み』(07年)、葛飾北斎の娘を主役に据えた『百日紅さるすべり) 〜Miss HOKUSAI〜』(15年)などの原恵一カントクが手掛けたマイナーアニメ映画『カラフル』(10年)において、自殺した少年に憑依(?)した記憶喪失の少年が、しがらみのない他人ゆえに距離を置いて自殺少年の弱さをも突き放して観察、同情しつつも一面においては否定的にジャッジした果てに、それは自身の前世(?)でもあった! と引っ繰り返す展開における「前世」を「来世」に代入した相似も個人的には想起してみたり――


『ビルド』から80・90・00・10年代の東映特撮の変遷を振り返る!


 『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)の三条陸、前作『仮面ライダーエグゼイド』(16年)の高橋悠也と、80年代の上原正三や曽田博久のようにひとりで1年間全話や劇場版をも担当してしまう、旺盛な筆力もある脚本家たちが近年では連続して現れた。全話といわず過半の話数をひとりで執筆してしまうライターも含めれば、その人数はもっと増えるだろう。
 いきなり立候補してヒーロー番組に初参加した一般のTVドラマ畑出自の武藤将吾もまた、本作『仮面ライダービルド』(17年)では全話と劇場版の脚本を手掛けてみせてくれた。
 しかも80年代の1話完結ルーティンバトルの時代とは異なり、いずれも連続長編ドラマ性や二転三転する展開と伏線&その回収などを骨格に持つ作品群でもある。
 平成ライダーシリーズだけを基準にしてみても、『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)や『仮面ライダー555(ファイズ)』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031108/p1)に『仮面ライダーキバ』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080225/p1)など、井上敏樹がほぼ全話を担当した前例もあるにはあり、一応の連続ドラマ性もあったとはいえるのだが、氏の脚本の通例でやや行き当たりばったりの感があり、その最終展開も誤解を恐れずに云えば少々腰砕けで、大スケール・大バトル・大団円といった感じでの完結の仕方ではなかったとも思う。
 そう思えば、80年代・90年代・00年代・10年代という長期スパンで見たときに、東映特撮も確実に進歩を遂げているどころか、すでに別種のモノに変わり果ててもいる(笑)。
 ロートルオタとしては、90年代における東映特撮批評は、ルーティンバトルなりに戦闘の楽しさ・パターン破りの快楽を増大させるためにも、集団ヒーロー中のその話数における主役が名乗りのセンターになって音頭を取ったり、等身大での必殺ワザや、巨大ロボを操縦してメインコクピットで必殺剣を放ったりすれば、作品に感情的な背骨が一本通ってカタルシスも増大する! という次元で語っていれば済んだ時代と比すれば、東映特撮批評も思えば遠くへ来たものだとも思っている――こうすれば良くなるという不満を提言に変えたものではなく、優れた作品がいかように優れていたかを跡付け・腑分けする行為となってしまった(笑)――。


 と、ここまでホメてきてナニだけど、個人的には「医療」と「ゲーム」という水と油のバカげた題材を見事に神懸かったドラマチックさに昇華した前作『仮面ライダーエグゼイド』と比すると、ホンの少々だが劣っていたようには思う。本作のアンチの立場も主にここに立脚して顕微鏡的視点をブースト――アンフェアとも云う――しているとも推測するけど、おそらく『エグゼイド』の直前作として『ビルド』が放映されていれば、このような少々の物足りなさや欠点の発見とその顕微鏡的拡大という感慨はもたらさなかったのではあるまいか?
 昨年末のビルド&エグゼイド共演映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイド withレジェンドライダー』では、『ビルド』と『エグゼイド』の力量ある2大脚本家がタッグを組んで、第2期平成ライダーシリーズ全体をも全肯定した神傑作(かみ・けっさく)エンタメが仕上がった。
 それと比すると、今年2018年の年末のライダー共演映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190128/p1)が『ジオウ』&『ビルド』メインとアナウンスされずに、来夏の映画を待たずに全平成ライダーが客演、脚本も『ジオウ』メインライターの下山健人ひとりだというあたりで、『ビルド』最終回(歴史改変)後の後日談を「平行宇宙SF」&「時間跳躍SF」の2本立てでギミック的に組合せて、「なるほど、そう来るか!」と思わせる知的・SF的サプライズもスパイスとなっているようなヒーロー共演アクションに至る段取りを観てみたい! とドコかで思っていた身には、そこが焦点になりそうもなくて少々残念ではあるけれど(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年秋号』(18年11月4日発行)~『仮面特攻隊2019年号』(18年12月28日発行)所収『仮面ライダービルド』完結・合評1より抜粋)


『假面特攻隊2019年号』「仮面ライダービルド」総括関係記事の縮小コピー収録一覧
・日刊スポーツ 2018年7月27日(金) 仮面ライダーの夏 犬飼貴丈(「劇場版 仮面ライダービルド Be The One」「快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー」 en film」完成披露イベント)
東京新聞 2018年5月19日(土) 筆洗(「仮面ライダービルド」から科学技術の軍事利用を考える)


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