『クズの本懐』『継母の連れ子が元カノだった』 ~愛情ヌキの代償行為としての男女関係と、一度は破綻した同士の男女関係を描いた2作評!
『五等分の花嫁』『ドメスティックな彼女』 ~陰陽対極の恋愛劇! 少年マガジン連載漫画の同季アニメ化!
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2023年の夏にはラブコメ深夜アニメ『彼女、お借りします』の3期(23年)が放映中記念! 『カノジョも彼女』も2023年10月から2期放映記念! 『トニカクカワイイ』(20年)も2期(23年)が2023年春に放映終了記念! とカコつけて……。『彼女、お借りします』1期(20年)・『彼女、お借りします』2期(22年)・『カッコウの許嫁』(22年)・『可愛いだけじゃない式守さん』(22年)・『カノジョも彼女』1期(21年)・『トニカクカワイイ』1期(20年)評をアップ!
『彼女、お借りします』1期・『彼女、お借りします』2期・『カッコウの許嫁』・『可愛いだけじゃない式守さん』・『カノジョも彼女』・『トニカクカワイイ』 ~純オタ向け媒体ならぬ少年マンガ誌出自のラブコメ! 同工異曲のようでも成否の差!
(文・T.SATO)
『彼女、お借りします』1期
(2020年夏アニメ)
(2020年8月7日脱稿)
大学1年生の冴えない青年クンが彼女にフラれた落胆から、試しに「レンタル彼女」(恋人代行業)に頼ったところから始まる騒動を描くラブコメ。
黒髪ロング女子でもピンクのブラウスに白いスカートなので、重たいオンナ臭はまったくせず(笑)、清楚かつ如才ない感じのメインヒロインがまずは魅力的だ。
それをまた涼しげかつ可憐さもある声優・雨宮天(あまみや・そら)ちゃんが声をアテることで増幅!――特撮マニア的には『仮面ライダービルド』(17年)のメインヒロインに憑依した超古代火星文明人のお姫様の声だが、2010年代後半以降のあまたのアニメで途切れなくメインヒロイン級で大活躍している御仁でもある――
もちろん、劇中でも「レンタル彼女」としての「お仕事」だから「演技」として可愛らしく恋人を演じているだけなのだけど、そうだとわかっていてもイチャイチャしてくる彼女の態度には、吸い込まれてしまうような魅力があるのだ(笑)。
この娘にハマった主人公青年クンは2度目のレンタルを敢行する。そして、しばらくデートをするうちに彼女に八つ当たりや説教を始めてしまうのだ――ウワァ~。良く云えば潔癖、悪く云えば最低のオトコだ(汗)――。
さらには、入院中の祖母にも自分の彼女だと紹介してしまう! その病院には奇しくも彼女の祖母も入院しており、両家の公認にまでなってしまう!(爆)
ココまで作り込めれば、あとは「状況に応じたリアクション」と「正体を隠すための言動」だけでも、無限にお話を引き延ばせそうではあるけれど……。
ナンと! 主人公青年クンは大学のキャンパスでこの彼女と偶然にも再会。大学ではメガネに三つ編みのモッサリした地味子ちゃんであった! というあたりで、ギャップ萌えも追加する(笑)。
他の「レンタル彼女」たちも登場し、冒頭で主人公を振った元カノまでもが再登場を果たして、両家の家族も巻き込んだラブコメ群像劇となっていくようだ。
原作は「週刊少年マガジン」連載マンガ。近年の大出版社のマンガ作品同様に、原作マンガの売上が上がればアニメの製作出費なども微々たるものであるのか(?)、アニメ製作会社側でも円盤売上に頼らずとも出版社からの製作資金投入だけでも高い収益を得られるのか、美麗な作画&背景美術も達成できており、序盤を観るかぎりでは実意面白い!――今後の展開に対する責任は取れないものの(笑)――
『彼女、お借りします』2期
(2022年夏アニメ)
(2022年8月7日脱稿)
失恋のショックで、実在の業種「レンタル彼女」を利用した冴えない大学生男子クン。容姿端麗の清楚でさわやかな彼女は、実は同じ大学に通っている地味子ちゃんでもあり、しかもアパートの隣の住人でもあった!
発端こそ現代的な職業を材としているけど、「ザ・ラブコメ!」といった、2年前の2020年夏にも1期が放映された深夜アニメの2期が登場。本作もまた「週刊少年マガジン」連載マンガが原作であった。
1期も面白かったけど、2期も安定したクオリティーを達成している。
やや些事ではあるけど、個人的に評価したいのは2期の#1の導入部だ。TVやアニメだけがお友だちの方々は気にしないのやもしれない(汗)。いや、むしろ前話や前期のアラスジは不要だ! くらいの声が、もう20年も前の『機動戦士ガンダムSEED(シード)』(02年)の時代から聞こえてもいた。
しかし、一見(いちげん)さんや途中参加組をゲットできるように、作品を「開かれた作り」にしておくためにも、前話のアラスジで作品世界や主要人物のキャラシフトをも感じさせて、作品を未見のお客さんにも敷居を下げることで参入障壁を下げておくことは、非常に重要なことだとも思うゾ~。
1期の#1であれば、たしかに主人公なりメインヒロインのみを描くことだけで問題はないし、それが正解ですらあるだろう。しかし、この2期の#1冒頭では、増えてしまったサブヒロイン・サードヒロイン・フォースヒロインたちをごていねいにもくわしく紹介してみせる!
●一度は振ってみせたクセに独占欲かチョッカイを出してくる悪女的な元カノ(声・悠木碧)
●メインヒロインにガチで執着している主人公クンに心動かされて、自分もそうされたいとの想いから主人公クンに執着していく同じくレンタル彼女の純朴女子(声・東山奈央)
●極度の人見知りのコミュ力弱者で、そんな自分を変えたくてレンタル彼女の仕事に挑戦中の弱者女子(声・高橋李依)
●そして、先のメインヒロイン(声・雨宮天)
2022年夏季には5年や9年も前の人気アニメの2期も登場していた。その前季にはごていねいにも1期の再放送もなされてはいた。とはいえ、やはり1期の最終回の最終シーンの直後のように、何の説明もなく2期の#1がスタートしてしまうような作り方はチョットなぁ。
もちろん、そのことを致命的な弱点だとはしないけど、やはり前期のアラスジなり基本設定の説明的な描写がたとえ数分でもあれば、腰の据わりがよくなってスンナリと没入できるとも思えるので……。
『カッコウの許嫁(いいなずけ)』
(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)
三角・四角・五角関係のライトなラブコメ作品。なおかつ、主人公男子高校生クンと快活ヒロイン女子高生は出生時の「取り違え子」であったことが本作の独自性。
しかし、そこはイイ意味でのマンガだけど、脳天気にもドーせならば両者を結婚させて共通の子息にしてしまおう! という両家の思惑(おもわく)が一致する(笑)。もちろん、主人公男子クンと快活ヒロインは「冗談ではない!」と思いつつも、両者&両家の奇妙でコミカルな交流が始まってしまう……といったストーリーである。
●血がつながらないので、婚姻可能性もある関係になってしまった妹
●主人公男子クンがもともと好いていた学園トップの成績でもある天然ドジっ娘ヒロイン
噛ませ(?)でも、実に魅惑的なセカンドやサードのヒロインたちも配置している。
●男子高校生クン側はビンボーでも明るいヤンキー家族なのに、家族には馴染みつつも男子クンだけ成績優秀
●ヒロイン側はブルジョワ家庭で、彼女もやはり家族に溶け込みつつも、SNS上に自撮り写真をアップして注目を集める人気者
互いに気質的にも一族の異端であることを発端にして、人間関係ドラマを構築する方法論もあっただろうけど、本作はあくまでもリアル志向ではなくコメディ作品となっており、両家は実に家族円満なものとして描かれている――もちろん、「取り違え子」問題を真剣に扱いたければ、また別のしかるべき社会派ジャンルの作品で作ればイイのだ――。
本作も「週刊少年マガジン」連載のラブコメ漫画の深夜アニメ化作品。ここ5年ほどコンスタントに「マガジン」連載のラブコメ漫画が深夜アニメ化されている。
ググってみると、今や「マガジン」連載の半分がラブコメ漫画であるそうだ(爆)。筆者のようなロートルには同誌はヤンキー・DQNマンガの巣窟といった印象がある(笑)。
今はむかしの70年代末期の同誌での大ヒット作『翔んだカップル』などを除けば、同誌でのオタッキーで美少女アニメ的かつラブコメ&ハーレムもののテイストをまとった作品の初出なり初の大ヒット作は、今年2022年夏の選挙で参院議員になった赤松健(あかまつ・けん)による四半世紀近くも前の『ラブひな』(98年。00年に深夜アニメ化)なのだろう――筆者個人は同作のことを評価はしてはいないけど(汗)――。
00年代前半の同誌では、角川書店的なオタ向け・美少女アニメや美少女ゲーム的な作品が散見されるようになる。しかし、まだ週刊少年マンガ誌を購読する習慣が残っていた会社の同僚たちなどは、「マガジン」の中でも同じく赤松健の『魔法先生ネギま!』(03年。05・06年に深夜アニメ化)などは飛ばして読んでないと公言していたことなども思い出す(爆)――同作は意匠はハーレムものでも、少年バトル漫画の文法で実に面白く、個人的にも評価しているけど(笑)――。
それからでも20年弱。オタク漫画の文法がウスめられて一般層にも普及していることを思えば、今の「マガジン」読者がオタク風味のラブコメ漫画を忌避することもなくなって久しいのだろう。
そーいうワケで、本作の主人公男子クンには「不良性感度」などはない。どころか、同誌の人気ラブコメ漫画『五等分の花嫁』(17年。19年に深夜アニメ化)の主人公男子クンや、他誌「ヤングジャンプ」連載だけど『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(15年。19・20・22年に深夜アニメ化)の主人公男子クンなどとも同様に成績優秀だったりもする。
とはいえ、純粋オタ向けマンガやラノベに登場するような繊細ナイーブなオボコさや(ひとり)ボッチ性はなくて、最低限の覇気や男気(おとこぎ)があるあたりで、オタ向け作品と完全混交してしまったワケでもない。
メインヒロインがクールな黒髪ロングではなく、サブヒロインもツンデレな金髪ツインテではなく、オタにはやや苦手やもしれない多少の気の強さもある快活女子! といったあたりで、やはり純粋オタ向け作品とは異なっているのだ――優劣の話ではないのでくれぐれも念のため――。
そして、個々の作品の市場規模としては、オタ向けマンガよりも大きいであろうことを思えば、ニッチ(隙間)から生まれながらも本家よりも巨大なジャンルとなっており、逆にオタ層にもウケがよかったりもする。
ググってみると、本作の原作者は女性! 2010年にTVドラマ化された『ヤンキー君とメガネちゃん』(06年)、同じくドラマ化(13年)やアニメ化(15年)もされた『山田くんと7人の魔女』(12年)なども手掛けている。後者の深夜アニメ版も傑作とはいわず佳作ではあったことを思い出すのだ――両作ともに、ラブコメでも主人公はヤンキー高校生だったけど(笑)――。
『可愛いだけじゃない式守(しきもり)さん』
(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)
いかにも性格良さげで常にニコニコとしたお坊ちゃまお坊ちゃました男子高校生クンが主人公。彼は道を歩いているだけで危険物に遭遇し、トラックにハネられそうになったりする不運の星の下に生まれついている(笑)。
そんな彼のことを身を挺してバツグンの身体能力で守ってくれる、可愛いカッコいいヒロインが、主人公男子クンの恋人でもある式守(しきもり)さんである。
ウ~ム。深夜アニメ化されるくらいだし、ググってみると「年間重版1位」だの、「書店員が選んだおすすめコミック」上位だのにランクインしているので、相応に人気があることはわかる。しかし、ドーなのであろうか?
まず、主人公男子クンが偶然とはいえない頻度で尋常ではない突発的な危険に見舞われる理由がわからない。アソコまでの頻度だと、劇中内での説明――超自然的な霊的・呪詛的なモノ――がないと、物語作品としては不自然にも思えてくる。
そして、ヒロインがなぜ主人公男子クンにホレていて、そこまでして守っているのかがわからない。もちろんクドクドと説明しなくてもイイけれど、最低限の動機の説明なり点描なりがやはりない。「式守(しきもり)」の名が「式神(しきがみ)」を操る陰陽師なども連想させるので、最初は職業都合から始まって次第に情が移ってホレてしまうストーリーの方がイイんじゃね? ……なぞと思ってしまうのは、的ハズレのナイものねだりで、「ぼくのかんがえたさいきょうの『可愛いだけじゃない式守さん』」の類いなのであろう(笑)。
あるいは、今は滅亡寸前の存在となってしまった颯爽とした「戦闘美少女」属性だけではなく、同じく「強キャラ」の女性に守ってもらえる男子高校生クンを描いていた、同じ講談社でも「マガジン」ならぬ「モーニング」連載のマンガ原作の深夜アニメ『ウィッチクラフトワークス』(14年)のように、ヒロインが貞淑そうでも高身長の巨乳でグラマーなキャラデザであれば、「母性」も醸されてきて説明ヌキでも男子クンを構ってくれることに説得力が出てきそうには思うのだ――「母性」が少なめの快活女子であれば、軟弱男子を好んだり守ったりするとはとても思えないものなので(笑)――。
といって、『ウィッチクラフトワークス』もヒロインは個人的には魅力的でも、作品としての評価はしてはいないけど(汗)。
まぁ、マンガ画媒体では違和感がない表現でも、アニメ媒体だとマンガよりも客観化されることで違和感が生じてくる場合もある。あるいは、アニメに落とし込む際に何らかの不備があった可能性も考えられる。
しかしだからといって、カネをかけて原作マンガを購入してまで比較研究する気はないので、好事家の研究を待ちたい!?(笑)
一応、本作も広義での「週刊少年マガジン」系出自なのだが、もともとはツイッター漫画であった作品を青田買いして、WEB漫画媒体「マガジンポケット」にて配信されていた作品なのだそうだ。
たしかに「少年マガジン」系というよりかはオタク向けラブコメ作品のテイスト寄りではあった。
『カノジョも彼女』1期
(2021年夏アニメ)
(2021年8月9日脱稿)
いかにもアニメ・ラノベ的な絵柄の美少女が登場して、我々オタク的にはなじみやすい深夜の美少女アニメである。
しかし、キャラデザが「赤髪ロング」であることに象徴されるように――適度な「気の強さ」や「派手さ!――、アバズレ女ではないけどやや女王さま系で、メインヒロインに「癒やし」や「従順属性」が感じられないあたりは珍しい……。
と思ったら、純オタ向け媒体ではなく「週刊少年マガジン」で90年代末期あたりから勃興して定着しているオタにも目配せしたラブコメ路線作品出自だということでナットクするのであった。
とはいえ、この作品はそこがキモではない。
#1冒頭で「最近、彼女ができた」という高校生主人公クンのモノローグとともに、スットコドッコイな赤髪ロングヒロインとのサッパリしたイチャイチャが描かれた直後に、校舎の屋上にて健気そうな青髪少女が主人公少年に好意を告白!
そこまではイイとして、交際OKとは云わずとも相手のことを「可愛い」と云ったら、青髪少女も「このために筋トレとジョギングとヨガは毎日4時間」うんぬん、バックにそのイメージ映像も浮かぶ中で滔々と語りだしたことでこの作品はギャグだとわかり、コミカルBGMも流れる中で素っ頓狂な会話をして「二股してイイか、いっしょに彼女(赤髪ロング)に聞きに行かないか!?」と少年が熱弁しだしたところでトドメを刺される(笑)。
そして、主人公少年が青髪少女を紹介するも、赤髪ロングが青髪少女を可愛いと大興奮! いっしょにカラオケに行って歌いだすので議論が始まらない(爆)。
ようやく本題となることで、赤髪ロングは怒って主人公少年を顔パンチ!(笑) しかし、止めに入った青髪少女の理由も振るっている。二股でもイイと熱弁するのだ。
その後もボタンをひとつずつ掛け違えたような明後日な会話が続いた果てに、この3人の同居生活が決定する!(ナンでやねん) 単なるナンセンス漫画じゃねーか!?
そして始まる陽性のドロドロ会話劇。そう、陽性だからラブコメではあるのだ(笑)。オタ向けラブコメのキャラと図式をさらにウラ返したギャグ作品。超面白いです。
『トニカクカワイイ』1期
(2020年秋アニメ)
(2021年1月21日脱稿)
マジメな中学生男子クンが大雪の日に見かけた赤髪の美少女に一目惚れ。彼女に近づこうとしたら交通事故!
彼女は中学生男子クンを助けて去るが、重傷なのに中学生クンは彼女を追いかけて告白。彼女も彼女で「結婚するなら付き合う」という(爆)。
3年後に婚姻可能年齢になった少年クンの許に、会えなかった彼女がやってくる。そして、ふたりは婚姻届を提出して同居生活に!
ウ~ム。ドーなのだろうか? 適度に劇的な設定を入れること自体には賛成。大雪の日はクリスマスにしろ忠臣蔵の討ち入りにしろホーリー(聖)な感じがしてくるので、その舞台立てにも賛成だ。
しかして、一目惚れだとか交通事故で重傷とか3年の空白の果てに結婚して同居とか、そこをマンガ的に楽しめずに「いくら何でも……」と思ってしまうのは、筆者が加齢で男性ホルモンが減少したからだろうか? 空から落ちてきた美少女と同居したいと思いがちな若者には、二の次・三の次の事項となるから許容範囲なのだろうか?
「週刊少年サンデー」連載でアニメ化されるくらいの人気はあるのだから多分、許容範囲なのだろう。本作をスキな方々にはゴメンなさい。黙して語らず(笑)。