假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

海賊戦隊ゴーカイジャー2話「この星の価値」


炎神戦隊ゴーオンジャー 〜ゴーオンレッド江角走輔 &ゴーカイ#35〜36
五星戦隊ダイレンジャー 〜リュウレンジャー天火星・亮 &ゴーカイ#33
超力戦隊オーレンジャー 〜オーレッド&オーピンク &ゴーカイ#31
超獣戦隊ライブマン総論 〜イエローライオン大原丈
鳥人戦隊ジェットマン総論 〜ブラックコンドル結城凱
忍風戦隊ハリケンジャー シュシュッとTHE MOVIE 〜絶賛合評 &ゴーカイ#26
救急戦隊ゴーゴーファイブ 〜前半総括・1999−9955!?
救急戦隊ゴーゴーファイブ 〜前半合評・ゴーピンク巽マツリ & 7月の傑作群!
轟轟戦隊ボウケンジャーVSスーパー戦隊 〜アカレッド! &ゴーカイ#21
轟轟戦隊ボウケンジャー 〜30作記念にふさわしいか!?
星獣戦隊ギンガマン 〜6人目・黒騎士ヒュウガ! &ゴーカイ#20
爆竜戦隊アバレンジャー前半合評 〜アバレキラー登場! &ゴーカイ#17
激走戦隊カーレンジャー 〜戦う交通安全! &ゴーカイ#14
女シンケンレッド志葉薫姫・スーツアクター大研究! &ゴーカイ#11〜12
百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊 〜&ゴーカイ#9
獣拳戦隊ゲキレンジャー最終回 〜後半肯定評 &ゴーカイ#7
特捜戦隊デカレンジャー#37「ハードボイルド・ライセンス」 &ゴーカイ#5
魔法戦隊マジレンジャー THE MOVIE インフェルシアの花嫁 〜絶賛合評・再UP!
スーパー戦隊シリーズ 〜全記事見出し一覧


 『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)#37「最強の決戦機」〜#38「夢を掴む力」の前後編では、歴代戦隊の“大いなる力”ならぬ、ゴーカイジャー自身の“大いなる力”が発動して、後編ではハデハデな最強ロボ・カンゼンゴーカイオー(カンゼン=完全! 日本語での形容、冠言葉じゃねーか!?・笑)が登場!


 戦隊シリーズはいつぞやのころから――『光(ひかり)戦隊マスクマン』(87年)のころとも、戦隊巨大ロボが初登場した『バトルフィーバーJ』(79年)のころからとも、商業誌のスタッフインタビューでも2種の証言があり判然としない(笑)――、初登場回や2号ロボや新メカ初登場編などを除き、特撮班ではなく本編班がスタジオ内にて巨大ロボ戦も担当している。
 それでも90年代前中盤から、当時の若手の渡辺勝也カントク回ではパターン破り的に、ガラス張りの壁面を含むミニチュアのビル群をロケに持ち出しての自然光のもとでのオープン撮影で、巨大感あふれる戦隊ロボ戦を果敢に試みてくれていたものだった。


 そして今やベテランの渡辺勝也カントクが2010年代に改めて挑む、『超獣戦隊ライブマン』(88年)中盤に登場するギガボルトや『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)終盤のベロニカのごとく、最初から巨大ロボとして登場する最強の決戦機・グレートワルズのオープン撮影!
 オッサンオタクとしては感無量(笑)。


 ところで、ミもフタもなく云っちゃうと、このテのヒーローものの常で、基本設定を説明的に描いていくことも宿命付けられているメインライターの作品より、良くも悪くもそのようなしがらみ抜きに変化球を投げたり、脇役に意外なドラマ性や肉付けをすることに専念できる――しかしそれは冷静に見れば、ゼロから構築したものではなく、アレンジャーとしての手腕でもある――サブライターの作品の方が一般的には、われわれ“大きなお友だち”としては面白かったり見応えがあったりもする。


 その伝で行くと、マヌケで弱いバカ殿(笑)である殿下ことレギュラー敵幹部ワルズ・ギルの、自身の立場も弱い実力も実は自覚していて、そのことに屈折や怒り・鬱憤も覚えていて、それをついに爆発させて、メカロボ(?)幹部であり忠誠心しか持たない(?)バリゾーグにだけは心を許している描写などには、哀れで敵キャラながらも同情を誘われてしまう。
 ま、それがメインライターではない脚本家・下山健人(しもやま・けんと)氏の欲張った狙いでもあったのでしょうから、その狙いにマンマとハマってるんですが。


 ただし、人生経験のない未就学児童の“小さなお友だち”にはほとんどわからないであろう心情描写でもあることは付け加えておこう。
 もちろん児童はともかく幼児にわからなくても、タイクツさせない点描程度ならば、このテの描写はシリーズ後半には入れてもイイだろう。それを入れ過ぎても、あるいはそれがシリーズ前半だったりしたら、作風がクラくなりすぎちゃうかもしれないのでアレですが。


 ただし、スーツアクターや声優陣、現場の撮影スタッフ的には、リキが自然と入っちゃうようなシーンではなかったかと(笑)。



 後編#38「夢を掴む力」では、“ゴーカイジャーの大いなる力”の正体が明かされる。
 それは! サブタイトルの語句そのものであったとゆー!


 いやはや、愚輩たる小生、サブタイですでにネタバレしていたとはまったく気付きませんでした(笑)。そこまで真正面から大胆に来られるとは。
 ふだん、小賢(こざか)しい重箱のスミ突つきの深読みばかりしていたせいで、精神的貧血に陥っていたせいか、そのさらにウラを掻くような(?)そんなベタな迫り方をしてくるとは思いもよらなんだ……と思ったのは小生だけですか?(汗)


 新ロボ自体は、ガオライオンとゴーカイオーが合体したガオゴーカイオーがさらにシンケンゴーカオイオーに変形するパターンのバリエーション。
 炎神マッハルコンとゴーカイオーが合体したゴーオンゴーカイオーがさらにカンゼンゴーカイオーに変形するパターンですけど、最終最強ロボ(?)にふさわしい王者的・皇帝的な上下ともに末広がりなハデハデしさが子供ウケしそうだし、個人的にも最終形態ロボとしてはスキなデザインだ!


 ゴーカイブルーのライバル(?)であった、ブルーの元・師匠が改造された姿である敵ロボ幹部・バリゾーグとの決闘と決着も悪くはなかった。
 けれども、本作『ゴーカイジャー』は敵味方の因縁劇よりも、先輩戦隊ゲスト回というイベント編を連発するというお祭り作品である特性上、ブルーとバリゾーグとの因縁をこれまでネチっこく描いてきたワケでもなく、点描の羅列に留まっていたところもあるので、そのかぎりでは劇中内キャラの感情の蓄積の結果としての落着面では多少弱いかな……とも。


 とカコつけて、ムリクリだけど、『海賊戦隊ゴーカイジャー』#2(?)合評をUP!


 (#1合評は先週日付記事にUP済!)


海賊戦隊ゴーカイジャー#2 〜合評1

(文・鷹矢凪弥寿士)

海賊戦隊ゴーカイジャー』開巻評

#2「この星の価値」

〈脚本:荒川稔久/監督:中澤祥次郎〉


マーベラス「守りたきゃ、お前は別の方法で地球を守れ。


 (どうやって、と訊〈き〉かれて)


 甘えてんじゃねえよ、そんなのは自分で考えろ!
 ……おい、この星に守る価値はあるか?」


少年「ある、どこにでも……海賊なら、自分で見つけろ!」


マーベラス「(苦笑して)なるほど……。じゃあな!」


☆今回のアバン・ナレーションにて


 「(34のスーパー戦隊の)力を受け継いだのは、とんでもない奴らだった!」


 と紹介されたゴーカイジャー


 確かに、背景や活動理由からして“とんでもない奴ら”なのであるが……。



ナビィ「黒い服を着た人間が、イイことを教えてくれるぞよ」


 案内役のオウム型ロボット=ナビィ〔声:田村ゆかり〕の預言〈よげん〉に従い、黒い服を着た人間を捜して、街を駆け回る海賊たち。


 だが、そんな人間はあちこちに居る。


 困窮していると、黒い学生服を着た中学生くらいの少年〔演:泉 大智〈いずみ・だいち〉〕が、


 「お宝の在りかを知ってます」


 と声をかけてくる。


 眼を輝かせる海賊たちに、少年は“スーパー戦隊”の伝説を語るが、海賊たちはレンジャーキーを持ってはいても謂〈いわ〉れは知らないようだ。


 と、少年はマーベラス(ゴーカイレッド)からレンジャーキーを奪い取ろうとする。
 たちまち取り押さえられるが、すると少年はそれまでの丁寧な態度を翻〈ひるがえ〉し、宝なんか知らないと毒づいて逃げ去る。


 だが、隙を突いてレンジャーキーのひとつをひったくられていたと気づき、ギタギタにしてやる! と憤慨して少年を追うマーベラス
 制止しようとアイム(ゴーカイピンク)もまた追う。
 残る3人は、マーベラスは少年の無鉄砲さに惹かれたのかも……と語り合い、更に追いかける。


 街を襲撃するザンギャックの行動隊長・ボンガン〔声:廣田行生ひろた・ゆきお〉〕。


 追いついた二人に少年は告げる。
 自分は“レジェンド大戦”で自分を庇〈かば〉ってくれた祖父の死を目の当たりにした。あんたたちに地球を守る気持ちがないのなら、自分が戦う!……と。


少年「俺は、もう嫌なんだ。自分の周りで誰かがやられるのは……」


 その言葉に、マーベラスも過去を思い出す。
 嘗〈かつ〉て“赤い戦士”〈注9〉〔声:古谷 徹〈ふるや・とおる〉〕と共に旅をしていた彼だが、ザンギャックに追い詰められた時、赤い戦士は彼にレンジャーキーを託し、奴らの中に斬り込んで消えて行った。


赤い戦士「お前との旅はここまでだ。俺の分まで生きろ。そして、宇宙最大のお宝を必ず手に入れろ。いいな!」


 マーベラスにとって、レンジャーキーは命の恩人との約束を果たすための、大切な預かり物なのだ。
 (実はナビィも、元は赤い戦士と組んでいたらしい)


 しかし、少年の気持ちを酌〈く〉んでか、彼は少年に変身アイテム・モバイレーツを渡し、ボンガンを倒せたらキーを譲る……と告げる。


 少年は奮い立ち、レンジャーキーでシンケンレッドに変身、ザンギャックに立ち向かう。
 兵士たちはどうにか叩き伏せたが、ボンガンには圧倒されてしまう少年シンケンレッド。


 打ちのめされた彼を、マーベラスが冷静かつ厳格に諌〈いさ〉める。その際の会話は、先に挙げた通りだ。


 これほど殺伐としたヒーローと少年キャラの交流も珍しい。
 しかし、後述の心情にまで思いを巡らすと、この舌戦にさえ静かな温かみが漂う。


○互いの信条をぶつけ合いながら、どこか似通うものを感じ合ったかのようなマーベラスと少年。
 その証拠に、言い負かしたつもりの少年から逆にやりこめられたマーベラスは、どこか嬉しそうだ。


 本話ラストでアイムやハカセも指摘したが、子どもであっても容赦しない代わりに、その気概は一応認めてやったようにも映る。
 正義を気取らないが、冷酷でもない。そんなマーベラスの言動には、裏返しの優しささえ覗〈のぞ〉く。


 年少ファンは、マーベラスにどんな印象を持っただろうか。初めは怖がるかも知れない。だが一方で、無闇に甘やかさない姿を「カッコイイ」と憧れそうな気もする。
 シビアだがホットなヒーロー像に、密かな期待が持てる。


△ナビィ「♪どうするどうする、君ならどうする?♪」


 本話冒頭でナビィが口ずさむのは、『デンジマン』ED〈エンディング〉主題歌・「デンジマンにまかせろ!」の一節である。コレも古参ファンへのサービスであろう。……とはいえ、


 「♪まかせるんだ、俺たちに、海賊戦隊ゴーカイジャー!♪」


 とならない辺りの展開が、本シリーズのニクイところである。


□ザンギャックの旗艦〈きかん〉・ギガントホースでは、またもや殿下ワルズ・ギルが理不尽な指示を出していた。
 表向きはそれに従いながらも、坊っちゃん気質丸出しの司令官に対する静かな軽蔑を覗かせるダマラス。
 決して一枚岩でない敵軍の脆〈もろ〉さが伺える。


ゴーカイジャーは、ガンとサーベルを交換しながら縦横無尽に暴れ回って、戦闘員ゴーミンやスゴーミンを次々に薙〈な〉ぎ倒す。
 これは#1でも見られたが、意外とチームワークは良いようだ。
 結果的に、ブルー&イエローは二刀流、グリーン&ピンクは二丁拳銃で決めている。
 それぞれの得手を裏打ちするアクションが巧〈たく〉みだ。


 《※これも#8で語られるが、ブルー=ジョーも「元はザンギャックの特殊部隊に居た」(!)という背景を持つ。何故離脱したのか、そして“或る人物”との因縁も、今後明かされるはずだ
 ちなみにジョー役/山田氏は本作が俳優デビューとのことだが、それを感じさせない熱演ぶりに拍手したい》


◇ボンガンとの戦いでは、ゴーカイジャーはまず『特捜戦隊デカレンジャー』[04・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110321/p1]の特捜戦隊デカレンジャー5人に変身し、奴を射撃する。
 続いて、ボンガンが腕から剣を出して襲いかかってくると、『忍風〈にんぷう〉戦隊ハリケンジャー』[02・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110822/p1]の忍風戦隊ハリケンジャー3人と電光石火〈でんこうせっか〉ゴウライジャー2人に変身し、“超忍法・影の舞”で斬りつける。
 銃の次は刀と、ゴーカイジャーが備える武器を交互にぶつけてゆく変化ある戦術が冴える。


 なお、ゴウライジャーは史上初の“ライバル戦隊”にして“二人兄弟戦隊”、そして“援軍戦隊”である。
 また兄・カブトライジャーのシンボルカラーは臙脂〈えんじ〉色、弟・クワガライジャーは群青〈ぐんじょう〉色と、いずれも11年現在では唯一のカラーだ。〈注10〉


◇そして映画『天装〈てんそう〉戦隊ゴセイジャーVS〈たい〉シンケンジャー エピックON〈オン〉銀幕』[11]に続き、全員がレッドに変身!
 ただし今回は、レッドから順番に、シンケンレッド・ガオレッド・マジレッド・ゴセイレッド・ゲキレッドという組み合わせ。また『ゴセイVSシンケン』ではイエローがゲキレッドに、ピンクがマジレッドに変身したが、今回は逆になっている。


 (『ゴセイVSシンケン』ではゴーオンレッド・ボウケンレッド・ゲキレッド・デカレッド・マジレッドという組み合わせだった。
 ちなみに、この時ゴーカイイエローがゴーカイチェンジしたゲキレッド/この文章では便宜的に「ゴーカイ」の略称のアルファベット2文字を取って「GKゲキレッド」と呼称させていただく……が「ま、“海賊版”ってことで」と嘯〈うそぶ〉いている)


 GKマジレッド・GKゴセイレッドが炎の術で遠隔攻撃、GKガオレッド・GKゲキレッドがパンチやキックでの接近攻撃、最後にGKシンケンレッドの斬撃という戦術である。
 同じレッドでも戦法の違いが明確に区別され、見栄えがあった。


 そして、シンケンレッドに変身したゴーカイレッドの呼びかけ――


GKシンケンレッド「さっきは世話になったな」


 少年の無念を晴らすようにも響く、粋〈いき〉な言い回しだ。


 今回の必殺技“ファイナルウェイブ”は、サーベルとガンの混合攻撃=“ゴーカイスクランブル”だった。(呼称は無し)


◇女敵幹部インサーンの開発した装置の放つ、旗艦からのエネルギー砲で、倒されたはずのボンガンとスゴーミン3体が巨大化した。
 ゴーカイジャーも赤い帆船〈はんせん〉ゴーカイガレオンを起動させる。


ゴーカイレッド「ド派手にいくぜ!」


 そして、ゴーカイガレオンから4つのマシンが飛び出した。
 ガレオンの“ガレオンキャノン”と4マシンの各武器が、それぞれ巨大スゴーミン2体を撃破した。
 さらに4マシンがガレオンを中心に合体し、巨大ロボット・“ゴーカイオー”になった。


 ガレオンの衝角〈ラム/しょうかく=船首の体当たり戦術用突出装備〉が変形した“ゴーカイケン”を振るい、巨体に似合わず、後方回転など身軽さを見せるゴーカイオー。
 巨大ボンガンはゴーカイオーを羽交絞〈はがいじ〉めにして残り一体の巨大スゴーミンとともに挟み撃ちを狙ったが、背中のダイヤルを回してしまい、胸の巨砲=“ゴーカイホー”を作動させ、スゴーミンへ砲弾を直撃させてしまう。ダイヤルは非常用の発射装置だったのだ。


 そして、巨砲の弾丸連射=“ゴーカイスターバースト”でボンガンにとどめ!
 いかにも海賊らしく少々アンフェアではあったが、地球での初戦を勝利で飾った。
 ゴーカイオーの装甲をオープンにして砲弾の充填を見せ、砲撃の威力に説得力を持たせる映像も上手〈うま〉い。


 湾岸のコンビナート内での戦いも、巨大戦士の大きさを納得させ、なかなか迫力がある。セットではなく合成だろうが、無茶なバトルフィールド設定も初回なら許容できよう。


◆前話のシカバネンもそうだが、ボンガンは悪=怪人としてはステロタイプで、個性が少々弱く、戦法も単純だ。
 開巻編ゆえ主人公チームの特性や物語の背景を印象強く打ち出す必要があったため、やむを得ないとも言えるけど。


ゴーカイジャーが駆る他の4マシンは、以下の通り。


 ゴーカイブルーが操る青いジェット機=“ゴーカイジェット”。
 ゴーカイイエローが駆る黄色いトレーラー=“ゴーカイトレーラー”
 ゴーカイグリーンが走らす緑色のレースカー=“ゴーカイレーサー”。
 ゴーカイピンクが進める白+ピンクの潜水艦=“ゴーカイマリン”。


 形に限らず、いずれも宇宙での活動も可能なようだ。
 それぞれロケット弾やレーザー砲などの武装も持っている。
 今回披露されたのは、ジェット機首のバルカン砲、レーサー機首のエネルギー砲、トレーラー上部及びマリン尾翼のレーザー砲だが、他にも幾つかの武装があるらしい。いずれ各機でのバトルも見られよう。


 ゴーカイガレオンには、下からトレーラー → マリン → レーサー → ジェットの順で格納されている。
 ロシアの民芸品“マトリョーシカ”のように入れ子式で収納されているようだ。
 理屈からすると物理的におかしいが、最小限の動力源と駆動システムで、内部が空洞でも普通に動ける技術によって製作されている……という解釈もできる。《※》


 《※のちに「次元圧縮によって格納されている」との公式設定が発表された》


 今回のマシン群のモチーフは、久々に動物ではなく乗り物である。『轟轟〈ゴーゴー〉戦隊ボウケンジャー』[06・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110717/p1]以来だ。子どもが憧〈あこが〉れる存在を巧〈うま〉く取り入れる姿勢は、相変わらず見事である。


 ゴーカイオーは、


・ガレオン → 頭部&胴体
・ジェット → 右腕&兜〈機体後部〉
・レーサー → 左腕
・マリン → 右脚
・トレーラー → 左脚


 という構成である。


 カラフルではあるが、海賊船が中核を成すこともあり、従来の戦隊巨大戦士群と比較しても、渋さと重厚さを強く感じさせるデザインだ。


○去りゆくゴーカイガレオンを、微笑んで見送る少年。
 ヒーローにはなれなかったが、「別の守り方」を彼なりに見出だしていくことだろう。


 ところで、この少年の本名は最後まで語られない。少々穿〈うが〉ったクサい理由づけをすると……。
 「彼は、昔“スーパー戦隊”に憧れ、今“スーパー戦隊”に胸をときめかせる……そんな私たちの、あなたたちの投影なんだよ」という暗示ではないだろうか。


 もちろん“ヒーロー”に憧れることそれ自体を純粋なものだとして手放しで賞賛するのではなく、そのダークサイドとしてそれなりの同情すべき動機や理由はあっても、安易に変身アイテムを盗みまでして性急に“ヒーロー”としての力を手に入れて安上がりしようとするような自堕落さも含めてである。もって自戒すべし。


★少年の今後に思いを馳せる海賊たち。
 アイムとハカセマーベラスの配慮を褒めるが、ジョーとルカは買いかぶりだろう……と冷ややかだ。


 それを知ってか知らずか、舳先〈へさき〉に立ち静かに微笑むマーベラス
 どちらが正しいのか? 想像してみるのも一興だろう。


 過去は垣間見えたが、未だ底の知れぬマーベラス
 そんな彼が、赤い戦士と別れたあと、如何にして海賊戦隊を結成したのか……それは、追い追い明かされていくだろう。
 いずれにせよ、彼らの地球に於ける“お宝探し航海”は、まだ始まったばかりである。


★そんな彼らを静かに見送る、“黒い”ローブを纏〈まと〉った若い男〔演:橋本 淳〈はしもと・あつし〉〕。〈注10〉


ローブの男「海賊か……」


 ナビィが告げたのは、どうやら彼のことらしい。
 なんとなく見覚えのある顔だが……!?


 早くも大波乱の様相を呈している、海賊戦隊の船出。
 連中がお宝探しを超え、真に地球を守るヒーローへ進化する時はやってくるのだろうか?
 彼らの航海をジックリと見届けたい気分は、私の中で早くも高まりつつある……。



 ※文中引用のセリフは、一部大意です。
 なお、本文は初鑑賞時の気分を重んじて執筆しておりますので、のちのTVエピソードや劇場映画版、雑誌記事などで判明した固有名詞・人物&メカニック背景などについては、必要最低限の言及に留めさせて頂きました。
 合わせて、ご了承下さい。



〈注9〉その姿は、“戦隊”30作記念Vシネマ『轟轟〈ゴーゴー〉戦隊ボウケンジャーVS〈たい〉スーパー戦隊』[07・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110718/p1]に登場した赤い戦士=「歴代レッド戦士の魂を継承する」と言われる“アカレッド”に似ていた。ただし胸のマークの数字が「30」→「35」など違いもある。
 なお、アカレッドのCVも古谷氏が務められている。古谷氏は子役出身で、熱血系キャラからクールガイまで様々な役柄を演じられたベテラン声優。


〈注10〉オリジナル『ハリケンジャー』では、ハリケンブルーは女性・ハリケンイエローは男性だったが、ここではゴーカイジャーに合わせてコスチュームの仕様が男女入れ替わっている。
 色彩まで変えて別ヒーローに変身しては、過去作を知らない一般視聴者や幼児に混乱を招くための当然の配慮だろう。
 またゴウライジャーも本来ふたりとも男性なのだが、こちらはゴーカイジャーと色彩の統一ができるわけもなく(笑)、またピンクが変身したGKクワガライジャーの服装は女性仕様=スカート式になっている。


〈注11〉『假面特攻隊』2010年号100〜103P『侍戦隊シンケンジャー銀幕版・天下分け目の戦〈たたかい〉』[09・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100810/p1]評中、102P左段/39〜40行目にて、橋本淳氏の御名前の読みを〈はしもと・じゅん〉としてしまいましたが、正しくはこちら=〈はしもと・あつし〉です。
 この場をお借りして、訂正の上、お詫び申し上げます。


●2010/12/13、声優・渡部 猛〈わたべ・たけし〉氏が、享年74歳にて逝去されました。
 “戦隊”に留まらず、数多くの特撮作品、そしてアニメ作品に出演されました。
 “戦隊”最後の御出演は、『星獣戦隊ギンガマン』[98・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110711/p1]の宇宙海賊バルバン幹部・“破王〈はおう〉バットバス”役でした。
 渡部氏のご活躍に感謝し、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。



※文中、以下の各誌並びにインターネットフリー百科事典「ウィキペディア」に於ける本作解説&関連記事を一部参考にさせて頂きました。
☆『東映ヒーローMAX〈マックス〉』Vol.36・37[11/2&5・辰巳出版
☆『宇宙船』131・132号[11/1&4・ホビージャパン
☆『エンターブレインムック/35 SUPER HEROクロニクルfeat.〈フィーチャリング〉 海賊戦隊ゴーカイジャー公式航海ナビ』[11/6・エンターブレイン
☆『栄光のスーパー戦隊シリーズ完全ガイド』[03・メディアワークス


【2011/3/20〜6/25一部改訂】


(了)
(初出・当該ブログ記事。『海賊戦隊ゴーカイジャー』開巻評(#1〜2評)より#2評のみを抜粋)



海賊戦隊ゴーカイジャー#2 〜合評2

(文・田中雪麻呂)
 筆者の躓(つまづ)きの石はこのシーンでした。


 #1のBパート、キャプテン・マーベラス(=ゴーカイレッド)以下、5人のゴーカイジャー達が、執拗に弱者をいたぶる、ザンギャック帝国行動隊長・シカバネンと対峙した時です。
 シカバネンは余裕たっぷりに、こう言い放ちます。


 「貴様ら、確か賞金首の海賊どもだな。(略)見逃してやるから、サッサと消えろ!」。


 そこでゴーカイジャー達が悪口雑言でそれに応え、乱戦の火蓋が切って落とされるのですが、気になったのは、前記のシカバネンの言葉が、ある種、ゴーカイジャーへの“仲間意識”のようなものから出ているように感じられたからです。
 今、侵略しようとしている地球の住人は、逃げ惑うばかりで全く抗(あらが)わないし、事のついでにとゴーカイジャーを倒しに掛かっても良いのに敢えてそれをしなかった。


 これは筆者の想像ですが、シカバネンはマーベラスらに、かつての自分の姿を見たのではあるまいか。
 この悪趣味でドS(エス)なシカバネンが生え抜きの軍人であるとは考えにくい(笑)。元はフリーな無頼の輩で何らかの経緯でその腕っ節を見込まれ、懐柔されて体制側についたのではなかろうか。
 ……って、筆者の妄想はともかく、そう考えるとリアルではあるんだけれども、ヒーロー側が薄汚れてしまうのですね。


 また、ゴーカイジャーがハッキリとザンギャック帝国に反旗を翻(ひるがえ)すというシーンも、明確に示されていなくて残念。……て言うか見せ方が下手だなあと思いました。
 虐(しいた)げられている一介の地球人のために、全くの益の無い行動を無頼なヒーローがしてしまうというのが、#1の最大の見せ場だと思うので、『科学戦隊ダイナマン('83)』で、悪の王子メギドの尻尾をダイナレッドが切り落とした位のインパクトが欲しかったですね。


 たとえば、司令官ワルズ・ギルの記念式典か何かに乱入して、帝国側の誇りを大きく傷付ける、とかすれば、敵さんも本腰をあげ、ヒーローの豪快さも同時に描けたかと思いますが……。


 筆者の隣で視聴していた6才の従兄弟は別のシーンに怒っていました。


 「こいつらは、ヒーローじゃないッ!」


 とまで言い放っていました(笑)。


 よくよく話を聞くと、一度ゴーカイジャーのメンツは虐げられている人々を見捨てた、と言うのです。


 ビデオを見返してみると成程、シカバネンが弱者を足蹴にしているのを、唯一アイム・ド・ファミーユ(=ゴーカイピンク)だけが発見し、ハカセ(=ゴーカイグリーン)は


 「(ゴーカイガレオン=[ゴーカイジャーの宇宙船]に)行かないの?」


 と皆をせかし、ジョー・ギブケン(=ゴーカイブルー)もルカ・ミルフィ(=ゴーカイイエロー)も、心ない言辞を弄するなど、我々のイメージするヒーロー像とは掛け離れたリアクションでした。


 否、それ以前に、シカバネンがあんなドSな振る舞いをしなければ?
 否、そもそもマーベラスらが、1ブロック違う道を通っていたら?


 やはり幼児なので、ヒーローとの奇跡の出会いを喜ぶというより、見捨てられていた公算の方が大きかったという恐怖の方がウチの従兄弟にかぎれば先に来たようです。


 勿論(もちろん)、主人公たちが地球を守る義理の無い宇宙人のクルーという設定は、新機軸として確信犯的に打ち出されたものではあります。
 が、筆者などは斬新さよりも、ドラマのキャラクターとして感情移入ができるのかという不安の方が大きいです。


 で、ぶっちゃけ、あのメンツは宇宙人には見えないし(笑)。
 (キャストの)ファンの方には悪いけど、どうみてもドングリ眼(まなこ)の東洋人なので。
 アレ、ゴーカイジャーのメンツを全員、外国人にしたら良かったと思います。
 あんまりペラペラ喋るキャラはいないし、多少可愛げが無くても、過去戦隊をぞんざいに扱っても、外国人なら仕様が無いかなって思えるし(笑)。


 また、どうしてもレッドが無愛想ということで『侍戦隊シンケンジャー ('09・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090712/p1)』と比較してしまうんですけど、志葉丈留(=シンケンレッド)には忠義者の池波流ノ介(=シンケンブルー)や幼馴染の梅盛源太(=シンケンゴールド)など、殿の口になるキャラがいて、上手く物語が回っていました。
 けど、ゴーカイジャーは各キャラが一匹狼然としていて、緊張感はあるんだけど、ストーリーが動き辛い、って言うかキャラ設定も仕上がり過ぎていていきおい、キャラ同士の化学反応も鈍い感じです。


 この作品は、“スーパー戦隊のタブー”を敢えて犯すみたいな新機軸が前述の様に幾つかあります。
 まず、このシリーズで“宇宙から来る”こと自体が悪側のスタンスであり、また戦闘シーンではほぼ負けることがないという最強の戦隊であります。


 あとモバイレーツ(変身アイテム)はゴーカイジャー以外の人間でも使用可能という設定を早くも#2で顕在化させ、筆者などは衝撃を受けました。
 過去戦隊でも、変身アイテムがその使用者のみに適合するという設定は、逆に少ないものの、敢えてこの作品のように、第三者に変身アイテムを与え、変身させてしまうという描写はダイレクト過ぎたのではないかと思いますが。


 その弊害は割と早く出て、#5でマーベラスが『特捜戦隊デカレンジャー ('04)』の宇宙警察地球署のボスであるドギー・クルーガーと共闘します。
 普通なら、『特捜〜』の主役である赤座伴番(あかざ・ばんばん=デカレッド)とペアを組む筈なのに(実際、デカレッド役の載寧龍二(さいねい・りゅうじ)氏は出演していたので)と思っていたのですが。
 良く考えるとレッドが二人で行動したら、マーベラスがモバイレーツに、デカレッドのレンジャーキーを差し込んで赤座伴番に渡したら、そのままデカレッドに変身できちゃうんですよね(笑)。


 #1のレジェンド大戦の説明で「戦士達は戦う力を失った」とあったので、戦士達は記憶を失ったり、半病人にでもなったのかと思っていたのですが、#3のマジレッド、#5のデカレッド、#7のゲキレッドと(見た目には)健在であり、一体どういう状況なんでしょうか?


 また先程の論を進めると、モバイレーツと各戦士のレンジャーキーを量産できたとして、それを34戦隊分配れば、またレジェンド戦隊は復活するのでしょうか?(笑)
 もっと論を進めて、モバイレーツを量産して日本国民全員に配ったら、国民全員が(映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説THE MOVIE('09・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)』のウルトラマン一族のように)レジェンド戦士になれるのでしょうか?(笑)



 今(2011年4月15日現在)のところ、個人的にはメインライターの荒川稔久(あらかわ・なるひさ)氏ではなく、#7を執筆した香村純子(こうむら・じゅんこ)氏の作品がベストです。
 鈴木裕樹氏演じる漢堂ジャン(=ゲキレッド)がゲストの回です。
 マーベラスやルカの、一見お気楽に見えるキャラが、日々の余人には見えない鍛錬(たんれん)を励行(れいこう)していることを描き、それに触発されたハカセの(自分なりの)高みを目指す姿勢を暖かい眼差しでとらえた佳作です。


 ハッと気付かされることも多い一編ですが、説教臭くなく、ゲストのジャンの立ち位置も無理が無く、結果儲け役となっています。
 各キャラの動かし方がメインライターより、巧みで緻密なことに驚かされました。
 余談ながら、ジャン役の鈴木氏はもうこの役はキツいかな、と憂慮していたのですが、すんなりとキャラにハマっており、改めて役者さんの順応力には敬服しました。


 メインライターの荒川稔久氏は、ヒット作を多く手掛け、特にイベント編の執筆では、ここ何年も右に出る者はいません。
 しかし、本作に関しては少しバテ気味かな、と思います。
 些末なことに拘り過ぎる余り、肝心なドラマの命題や横糸や縦糸が疎かになりがちなように思います。
 #6や#8などの毒にも薬にもならない、四畳半コメディが、もともとの荒川氏の持ち味であり、スペースオペラは荷が重すぎるのではないでしょうか。


 筆者は、荒川氏と同郷の名古屋出身なので、(そのレベルはともかく)考え方は解るような気がします。
 中央志向ながら、出身の出自がローカルという負い目が潜在的にあり、アイデンティティと照れ隠しが交錯し、状況によって当たり外れが激しい作風かと思います。
 また、独自のサービス精神が裏目に出て、作品の核がぼやけてしまうこともあります。
 因(ちなみ)に、本作のプロデューサーの一人で、プレスへのスポークスマンも務める、宇都宮孝明氏も名古屋出身です(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2011年春号』(11年5月1日発行)『海賊戦隊ゴーカイジャー』序盤合評4より抜粋)



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