(「渡り鳥怪獣の子守唄」という表記は間違い。「唄」ではなく「歌」が正解です・笑)
(ファミリー劇場『ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
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第28話『渡り鳥怪獣の子守歌』
渡り鳥怪獣バル スペースジョーズ・ザキラ登場
(作・阿井文瓶 監督・外山徹 特撮監督・高野宏一 放映日・80年10月8日)
(視聴率:関東8.5% 中部12.1% 関西12.1%)
(文・内山和正)
(1999年執筆)
公園やマイカーでのデートカップルの人々が夜空を見上げていると、大量の流れ星の光跡がゆっくりと飛ぶさまが目撃された。「キレイだ……」と人々がうっとりとする。
しかし夜間の東京の各地に燃え盛る塊が、次々と落下して車両や家屋や建物を粉砕していく。ここのミニチュア破壊の特撮シーンは、本作『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)では毎度のことだが凝っていて凄い。
前回27話「白い悪魔の恐怖」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101030/p1)につづいて登場する、宇宙生物学の権威・城野博士の見立てによれば、それは宇宙の渡り鳥怪獣バルの死骸であるらしい。
さっそく防衛組織UGMは宇宙戦艦スペースマミーで宇宙へと上昇。赤道上空のスペースポイントF70(エフななじゅう)で、たしかにバルの大群をバルの天敵怪獣ザキラが襲って幾匹も食しており、落下物の原因は天敵怪獣の仕業(しわざ)であることがわかった。
バルの死骸の細切れだけではなく、卵も地上に落下。主人公・UGMの矢的猛(やまと・たけし)隊員の目前で生まれたバルの赤ちゃんは、矢的を母親と思い込んで育つが……。
鳥の雛(ひな)は生まれてはじめて目にしたものを母親だと思い込むという“インプリント・すりこみ現象”や“天敵”などについての解説が、UGMの城野エミ(じょうの・えみ)隊員の父でもある城野博士によってなされたり、バルを食して周囲500kmに影響をおよぼすエネルギーを蓄えたとされるザキラ迎撃のため、UGM戦闘機が飛行特訓を行なったり、ついに地球に降下をはじめたザキラ対スペースマミーの宇宙空間での戦闘が描かれるために、時間的に矢的とバルの交流を描ききれなかったのかもしれないが、エピソードが多少弱いと思う。
バルのかわいらしい演技や、小股で小走りしたり矢的の物真似をする演技は見物で、スーツアクターの演技力のたまもの。まだ赤ちゃんであり翼があっても空を飛べないため、あまり頑丈そうとも思えない低い柵を作って、郊外の荒野には出られないようにしているが、非常に聞き分けのよいスナオな怪獣で(笑)、柵の外へまでは矢的を追いかけようとはしない。
劇中では“大怪獣”と呼称されるザキラも、地球に降下してからは終始口元のよだれをぬぐうような仕草をしており、旺盛な食欲を示す悪党ぶりの演技付けがなされて、バルとの対比を出している。ザキラは80をも圧倒、昏睡させて、トドメを刺そうとする間一髪のところでバルに邪魔をされるが……
雛鳥のようなかわいい鳴き声とも相まってバルは結構かわいいものの、私事で恐縮だが自分が歳を取ったせいか(?)、むかしリアルタイムで視聴したときのように引き込まれて彼の死に心を痛めるということはなかった。
ラストのナレーションで
「母(=ウルトラマン80)のピンチに自分の危険もかえりみずに戦った」
というようなことが語られても、途中では
「本能で敵と察して戦った」
と語られているのでどちらなのかと迷わせる。現実的・本能的なことなのか、意志的・感情的なことなのかは重要な違いである。
このラストから改めて思うに、本話冒頭は怪獣の死骸が降ってきて大惨事となったのはショッキングであったが、それは自然の摂理であったり死後の意図せざるやむをえない結果であったりして、「悪意」だけが被害をもたらすわけではないことを感じさせもする。
視聴者にとっては今回、イケダ隊員が矢的より後輩であることが、出動時の呼び捨てのセリフにより判明する。
矢的が怪獣バルやイケダ隊員などに対して、1話「ウルトラマン先生」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)〜12話「美しい転校生」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100718/p1)での通称「教師編」における桜ヶ岡中学教師であったころの“人生の先輩としての教育者”である片鱗(へんりん)を見せたことで、意識したわけではないだろうが、奇しくも31話「怪獣の種(たね)飛んだ」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101127/p1)以降の通称「児童編」や「ユリアン編」への布石ともなっている。
#ウルトラマン80 #ウルトラマンエイティ