『ウルトラマンメビウス』総論 『メビウス』総括・赤星政尚論!
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『ウルトラマンメビウス』15話「不死鳥の砦」 ~ゾフィー・アライソ整備長・ガンブースター登場!
(脚本・谷崎あきら 監督&特技監督 北浦嗣巳)
(『ウルトラマンメビウス』〜ウルトラマンヒカリ編・短期集中連載!)
(文・久保達也)
本作の「設定考証」でもあり、メインライター・赤星政尚と同じくオタクライターたちが集う編集プロダクション・タルカス所属の谷崎あきらが、本作の脚本に初登板。
その第15話『不死鳥の砦』において、遂にウルトラ一族が設立した宇宙警備隊の隊長でありウルトラ兄弟の長男でもあるゾフィーが登場!
そして、もうひとり。長年のファンにとっては、なんともたまらない経歴を持った人物が登場する!
防止組織・GUYS(ガイズ)の宇宙部隊であるGUYSスペーシーが宇宙空間で撃破したはずの宇宙礫岩(れきがん)怪獣グロマイトが、中枢器官の破壊を免れて地球に到達!
地球のがれきや岩石を口から吸収して再度の成長を遂げたグロマイトは、全身が漆黒の岩石状の鎧(よろい)に被われた四足歩行の大怪獣となって進撃を開始したのだ!
出撃しようとするGUYS隊員たちだが、
「そいつはできねえ相談だ!」
と待ったをかけられる。
正体はウルトラマンメビウスであり本作の主人公でもあるミライ隊員が初めて見たその初老の男は、GUYSの大型戦闘機・ガンフェニックスの整備責任者であるアライソ整備長だった!
「まだエンジンコイルのならしが終わってねえ!」
親方職人気質を見せたアライソは、GUYSの長官・トリヤマに「単なる調査だから」と拝み倒されるが、
「拝んで飛ばせりゃ、整備はいらねえんだよ!」
と断固拒否。
すると、「ええい、いたしかたあるまい!」とトリヤマは副官・マルに「立入禁止」と書いたテープでアライソをグルグル巻きにさせて、「クルー(隊員)の諸君、今のうちだ!」と出撃させてしまう(笑)。
こうした描写で『メビウス』という作品は、「リアリズム」が最優先される世界観ではなく、「コミカル」で「漫画チック」な事象も許容する世界観であることも改めて描写する!
本作の2人目のウルトラマンでもあり、青い体色のウルトラマンでもあるウルトラマンヒカリと合体している、小高い丘の上に立っているセリザワ前隊長が見上げた上空を、彼方からガンフェニックスが飛んでくる!
そのセリザワが見送った先では、怪獣グロマイトが破壊の限りを尽くしている描写もまた、リアルに考えたらば被害甚大なのだから不謹慎な感想になるのだけれども、映像的には実にカッコいい!
ガンフェニックスにその口からプラズマ火球を浴びせるグロマイト!
からくも避けた合体戦闘機・ガンフェニックス!
ガンフェニックスは、その機能を活かして2機に分離した!
そして、ジョージ隊員が登場するガンフェニックスの後ろ半分の部分である戦闘機・ガンローダーは、その機首から重粒子砲「バリアブル・パルサー」を放った!
と、グロマイトは突然、プラズマ火球を放たなくなる……
「弾(たま)切れか?」
その行動はグロマイトのエネルギー不足のためだった。岩石を口から吸収し、エネルギーを充填する怪獣グロマイトを観察したテッペイ隊員は、その際に岩石の鎧に隙間が生じることを発見し、それをねらって攻撃するようリュウ隊員に進言する。
だが、グロマイトの口から発する火球を避けて、攻撃を命中させるのは至難の技であった。
リュウ隊員はアライソ整備長に「整備不良だから絶対に使うな」と、昭和ウルトラシリーズに登場した侵略宇宙人の残骸円盤群から取得したオーバーテクノロジー(進み過ぎた科学技術)こと「メテオール」による、航空力学を無視した飛行を可能とする「マニューバモード」の使用をとめられていた。
しかし、トリヤマが「私が許可する! メテオール解禁!」(笑)とけしかけたことから、これを使用!
黄金色に輝きながらグロマイトに接近していく、ガンフェニックスの前半分が分離した戦闘機・ガンウインガー!
それをグロマイトのプラズマ火球が襲う!
間一髪! 空から降下してきたウルトラマンヒカリが盾となり、リュウを救った!
そして、グロマイトが放ったプラズマ火球を、なんとヒカリは右手でキャッチし、その場でコマのように一回転してから、それをグロマイトめがけて放り返してみせた!!
火球はグロマイトの頭部に命中して爆発!
怒りに燃えたグロマイトは、ヒカリに向かって突進する!
ヒカリはグロマイトの首を押さえつけてはねかえそうとする!
しかし、逆に大地に吹っ飛ばされて、巨体に組み伏せられてしまった!
グロマイトが前脚を上げた際になんとか脱出!
そしてグロマイトを蹴り上げたヒカリは、その巨体を「ウリャ〜!」とばかりに放り投げた!
ヒカリが右腕甲に装着されたアイテム・ナイトブレスに、天空からイナズマ状のエネルギーを呼び集める!
両腕を十字型にクロスさせて、そこから必殺光線・ナイトシュートを放とうとした瞬間!
グロマイトは口から猛烈な量のプラズマ火球を放った!
そして、周辺を大爆発させて、地中へと姿をくらませてしまった!
戦闘が突如として終結してまったことで、ヒカリもまた静かに姿を消していく……
霧雨が降っているような暗がりに包まれた異空間。
胸の中央にあるウルトラ一族の活動限界を示すカラータイマーはせわしなく点滅していた。
そのとき、上空からヒカリを呼ぶ声が響いた!
なんとここでウルトラ兄弟の長男・ゾフィーが登場! 直接に地球に赴いてきたワケではないだろうが、そのテレパシーでヒカリに通信をしてきたのだろう!
ゾフィー「もう充分だ。光の国に帰りたまえ」
ヒカリ「(『メビウス』第1話~第10話までの宿敵怪獣である)ボガール亡き今も、怪獣が現れ続けている! 放ってはおけない!」
ゾフィー「君も『弟たち』と同じだな」
ヒカリ「エッ?」
ゾフィー「長くは待てないぞ……」
昭和のウルトラシリーズ直系の正当続編として製作された『ウルトラマンメビウス』。
●その第1話『運命の出逢い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)の冒頭に登場したウルトラの父
●同じく第1話の冒頭に登場したウルトラ兄弟やウルトラの一族たち
●第11話『母の奇跡』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060910/p1)に登場したウルトラの母
彼らに続いて、歴代のウルトラマンたちが登場することは望まれていたことだし、予想もついていたことであった。
本話でも、第1話や第11話につづいて、彼らが参戦こそしなかったけれども、それでも主人公級やスター級のレジェンド・ヒーローが登場するだけでも場面が盛り上がるのだ! 心もウキウキと浮き立ってきて嬉しくなってくるのだ!(笑)
初代『ウルトラマン』(66年)第39話(最終回)『さらばウルトラマン』や、そのはるか後年に製作された『ウルトラマンネオス』(00年)第11話~第12話である最終回の前後編(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120513/p1)などとも同様に、地球で活躍する現役のウルトラ戦士にM78星雲への帰還を勧める役回りとしては、たしかに歴代シリーズを観てきた身としても、宇宙警備隊の隊長でもある上司役のゾフィー兄さんはピッタリの適任者でもある!
夜の闇状で霧雨が降っている異空間に、ヒカリがウルトラ兄弟とも同質のメンタルを持っている趣旨の発言。今回はまだ許すが、近いうちに召喚することの予告。そういったことを、重々しい箴言(しんげん)のように託宣してくる、その神秘性あふれる演出もあって、本作『メビウス』への本格初登場としてはこれで大満足! 次回の登場では、必ずやバトルの披露して、ウルトラ兄弟最強の強いゾフィー兄さんの姿を見せてくれることを期待する!
いまだ危機下にある地球を放ってはおけない! というウルトラマンヒカリのその「自己犠牲」的で「博愛」的な性格や心性! そして、それは結局のところは、長兄・ゾフィーから見れば「弟たち」、つまりは歴代のウルトラ兄弟たちが持ち併せていた性質とも同質のものなのだ! ウルトラマンヒカリもまたウルトラ兄弟たちが持っていた高潔(こうけつ)なメンタルとも等質のものを持っている! と見抜いてみせるゾフィーの慧眼(けいがん)ぶり! つまりは、ヒカリとゾフィー両者のキャラも一挙に同時に立てることもできているのだ!
しかしそのころ、GUYSの作戦室では、忠告を無視されたアライソ整備長が怒り心頭に発していた!(笑)
リュウ「メテオールが…… マニューバモードさえ使えりゃあ、あんな怪獣、倒せたんだ!!」
アライソ「メテオールなんて得体の知れねえもんに頼らなきゃ、戦えねえってのか!? ……むかしはあんなモン、なくったって立派に戦ってたんだ!」
リュウ「だから墜落ばっかりしてたんだろっ!!」
アライソ「なんだと! 小僧!!……(怒)」
「だから墜落ばっかりしてたんだろっ!!」。……ウルトラシリーズでも暗黙のお約束となっている、云ってはいけないことを、ついに云ってしまった(笑)。
もちろんこれは、広い意味では「苦笑」程度のギャグとしても機能しているのだが、タチの悪い特撮マニアがするような「冷笑」的で「罵倒」的なギャグにはなってはいない。
昭和の70年代の第2期ウルトラシリーズに登場する防衛組織の戦闘機群は毎回、撃墜されてしまうことで、視聴者である子供たちにも第2期ウルトラの戦闘機や防衛隊は、第1期ウルトラや第3期ウルトラの戦闘機や防衛隊と比べたらば「弱い!」という悪印象を与えてしまっていたことは確かなのだ。
こういったことは、長年、酷評に見舞われてきた第2期ウルトラシリーズの再評価に邁進する派閥の中でも、質が低くて宗教の信者のようでファナティック(狂信的)な連中であれば、自説に都合が悪いことだからとあえて政治的に無視・黙殺してしまうのだろう――それでかえって、反発を喰らって逆効果にもなっている(汗)――。
しかし本作では、第2期ウルトラシリーズへのオマージュにはあふれながらも、どこぞの信者のようにもならずに、第2期ウルトラにもあった明らかな欠陥(けっかん)についても、タブー視することなく自己言及的にふれてみせている! 長年のウルトラシリーズのマニアたちに対しては、作品の表層部分だけではなく「メタ(形而上)」的な視点を提示するサプライズ(驚き)も惹起しているのだ!
そして、このリュウ隊員の発言の後ろでヒヤヒヤしているテッペイとコノミの両隊員が対比としてもイイ味を出している(笑)。もはや、GUYSの恒例行事となった作戦室での大ゲンカが今回も勃発!!
今回も殴り合う寸前で抑えられたがアライソは、
「隊長さんよ〜、威勢のいい若いのを一匹、借りるぜ」
とミライを連れて出ていった。
ところが、リュウはサコミズ隊長から、隊員たちの命を救うためにガンフェニックスに、宇宙人の残骸円盤由来の超絶科学・メテオールを搭載するのを決定した人材が、実はよりにもよってアナログ感覚なアライソ本人であったことを知る! なんと、「メテオールなんて得体の知れねえもんに頼らなきゃ、戦えねえってのか!?」と叫んでいた当のアライソ自身の進言によるものだったのだ!
アライソをただの昔気質(むかし・かたぎ)の「精神主義者」として描くのではない。メテオールを「全肯定」するでもない。「全否定」するのでもない。「その中間にある第3の道」として、「危険」の域には達しないことが確認されている「時間制限」の範疇内においては「プラクティカル(実用的)」にメテオールを使用してみせよう! といった選択は、「進みすぎた科学は危険だから、永久に放棄しよう!」といったような、むかしからよくある陳腐で後ろ向きな結論の作品群よりも、実に合理的だしナットクもいく作劇なのである!
『ウルトラマンコスモス』(01年)第61話『禁断の兵器』では、第38話『オヤジ星人』に登場したベリル星人の侵略ロボット・ヘルズキングの残骸を回収して、同作においては悪役の役回りを務めており、競合組織でもあった「防衛隊」が改造した対カオスヘッダー殲滅兵器・ヘルズキング改が登場していた。それはまさに、『メビウス』でいうところの超絶科学・メテオールにあたる存在なのだった。
しかし、同作のレギュラーチームである怪獣保護組織・チームEYES(アイズ)のメンバーが、このロボット怪獣ヘルズキングを地球人の兵器として転用することにも一理があることを認めたその上で、その危険性を指摘する作劇であったのならばともかく、そこに一理があることすら一顧だにもされずに「悪魔の兵器」ばりに全否定ばかりしているような作劇については、子供番組にはある程度、そういった単純化された作劇になってしまうことも必要悪だとはいえ、やはりあまりにもあんまりだといった感はあったのだ……
初代『ウルトラマン』のレギュラー防衛組織であッタ科学特捜隊の戦闘機・ジェットビートルの模型を手にするアライソ……
ミライ「これ?」
アライソ「ジェットビートル。40年前、オレが実戦整備について はじめてさわらせてもらったのがコイツだった。ホークに、アロー、ファルコン、コンドル、ハイヤー。みんな、オレの子供みてえなもんだ。たしかによく落っこったけどよぅ。けど、みんな生きて帰ってきたじゃねぇか。帰ってこさしたじゃねぇか。メテオールだろうがなんだろうが、生身の人間を乗せるからには、目的はひとつよ」
●ホーク ――『ウルトラセブン』(67年)の戦闘機・ウルトラホーク1号~3号!――
●アロー ――『帰ってきたウルトラマン』(71年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230402/p1)の戦闘機・マットアロー1号~2号やスペースアロー!――
●ファルコン ――『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)の戦闘機・タックファルコン!――
●コンドル ――『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)の戦闘機・コンドル1号!――
●ハイヤー ――『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)の戦闘機・スカイハイヤー!――
昭和の歴代ウルトラシリーズの防衛組織が所有していたスーパー戦闘機の写真パネルを前に、アライソは感慨深くこう語るのだ。なんと、彼は歴代の防衛組織に継続して所属おり、これらのメカのメンテナンスを一貫して手掛けてきた人物だったのである!
そして、かつての戦闘機がよく撃墜されていても、搭乗していた隊員たちが死ななかった理由は、レギュラーの登場人物たちを殺してしまうワケにはいかないという作劇上のご都合主義が真相ではあった。しかし、もちろんそんなことを劇中で云うワケにはいかない(笑)。
ここでは、敵の怪獣の攻撃を受けても、即座に爆発しなかった機体のちょっとした強靭さ! 致命傷の直撃を即座にかろうじて回避もできていた動体性能! そういったものは、アライソたちメカニックマンたちによる日々の整備・メンテナンスの成果であったのだ! とも受け取れる、このたった一言のセリフに集約してみせたウマさ!
昭和の人気怪獣や昭和のウルトラ兄弟たちの再登場ばかりではないのだ! 過去のシリーズとの関連性をうたいつつも、それに血肉を通わせるために、それらに良い意味での「SF合理」的なリクツを持たせているのだ!
歴代ウルトラシリーズの戦闘機のひんぱんな墜落ひとつを取ってみても、全面的な擁護はできなくとも好意的には解釈してみせて、少しでも擁護・正当化をしてみせよう! そういった新たな意味合いのリクツで、過去シリーズの一連の描写をも「上書き」して、新たに肯定してくれる「高等描写」についても、長年の特撮マニアとしては嬉しくなるばかりなのだ!
……いや、ちょっと待てよ?
アライソが整備してきた歴代スーパー戦闘機の名前の中には、『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の防衛組織・MAC(マック)が装備していた、マッキー1号・マッキー2号・マッキー3号といった機体たちの総称になる「マッキー」の名前が挙がっていなかった。『レオ』のMACでは、アライソは整備を担当していなかったのであろうか?(笑)
思えばMACの基地は、日本上空400kmに固定された巨大な宇宙ステーションだった。そして、そのMAC基地は、『レオ』第40話『恐怖の円盤生物シリーズ! MAC全滅! 円盤は生物だった!』において、円盤生物シルバーブルーメによって溶かされて全滅してしまったのだ! アライソがMACでも整備をやっていたならば、本作でも整備の責任者になることもなかったことになってしまうのだ(汗)。
まぁ、そういったウルトラシリーズ内における「歴史」に準拠して、それとの矛盾を来たさないようにした……といっただけでもないのだろう。
『レオ』においては、今回のエピソードにおける
「オレたちが額に汗して機体を完璧に整備するのは、生きて帰ってこさせるためなんだ……」
といったセリフや同話のテーマとは盛大に矛盾していることに、無名の隊員たちが地上戦でも空中戦でも死にまくっていたからだ(汗)。
つまりは、本話のテーマは、『レオ』とMACに関するかぎりは、まったく当てハマらないのだ!(笑) だから、本話の脚本家が、あえて『レオ』のMACについてだけは意図的に除外をしてみせた……といったあたりが真相なのだろう。
もちろんこれは、『レオ』という作品とMACの隊員描写への「批判」や「否定」などではない。『レオ』のオープニングテロップを観てみても、民間人レギュラーの方が先に来て、MACの隊員たちが後に配置されている。つまり、『レオ』においては、MAC隊員たちの「キャラ描写」「キャラ確立」に失敗したのではない。意図的・確信犯的に「その他大勢」として描いていたのは明白だったのだ。
それに、ホントウにリアルに考えれば、怪獣との戦闘において、あるいは現実世界においても、あれだけデリケートでちょっとしたアクシデントでもアッという間に墜落してしまう「飛行機」や「戦闘機」といった存在は、たとえ虚構の存在だとはいっても敵の怪獣の攻撃を受けてしまえば、脱出する余裕もほぼなく、アッという間に墜落してしまって死者が出てしまうことの方が、よほど真の意味では「リアル」なのだ(汗)。
そのへんの機微が、長じてから『レオ』を再鑑賞してみるとよくわかる。そして、その渋いリアルさがたまらなくスキにもなってくる。こういったところが、近年に至って『レオ』がカルト的な高い人気と再評価を高めつつある一因でもあるのだろう。
さりげに、モロボシ・ダン隊長が多摩川ぞいで無名隊員の殉職跡地に献花をしてみせる、第15話『くらやみ殺法! 闘魂の一撃』のラストシーンなどは、実に渋くてカッコよくてたまらない!
とはいえ、今時の作品や本作『メビウス』でもこういった「人の生き死に」をヘビーに描いてくれ! とはもちろん単純には云えないのだ(汗)。しかし、第1期ウルトラ至上主義者たちにはまったく無視されてきた、『レオ』のそういった美点については、ここであらためて指摘をしておきたいのだ。
ただし、レギュラーの登場人物たちが操縦する近未来的なスーパー戦闘機が、敵怪獣の攻撃を受けてすぐに墜落されて爆発などしてしまうと、「弱い!」といった印象をたしかに醸してしまのだ。よって、そういった印象を緩和するためには、たとえ敗退するのだとしても、被弾してもすぐには撃墜や破壊はされずに、地表に不時着させるなどの処置をした方がよいだろう。
たとえ、ヒーローVS怪獣バトルの「前座」にすぎないのだとしても、防衛組織や戦闘機の「弱さ」を少しでも減らしておくことは、子供向けエンタメ作品としての「憧れの対象」であるスーパーメカや防衛隊やその隊員たちの描写としては重要なことなのだ。その意味では、第2期ウルトラシリーズにおける戦闘機の撃墜描写の多さには問題があったのだ……
「オレたちが額に汗して機体を完璧に整備するのは、生きて帰ってこさせるためなんだ……」
リュウが慕うセリザワ前隊長は、かつてはアライソの下でメテオール試験機のテストパイロットに就いていた。しかし、失敗の連続で結局、メテオールは旧GUYSの戦闘機・ガンクルセイダーには採用されなかった。けれど、第1話の冒頭での成層圏における戦闘で宇宙怪獣ディノゾールにガンクルセイダーが撃墜されて、生死不明となってしまったセリザワ前隊長のことを「オレはあいつを救えなかった……」と悔やんだアライソにより、メテオールをガンフェニックスに搭載することが決定したのだというのだ。
ここでもアライソの言動やその行動動機に、取って付けたような単発なものではなく、どうせならば劇中内での過去の事象をヒモ付けしておこう! といった処置がほどこされているのだ。つまり、直接の共演描写はなかったけれども、アライソにもリュウ以上にセリザワ前隊長との接点・因縁をつくってみせているのだ。そして、そのことによって、アライソのみならず、直接的には描かれずともセリザワ前隊長の人物像のちょっとした補強までもができているのだ!
加えて、これらのシーンで歴代戦闘機であるジェットビートル・ウルトラホーク1号・マットアロー1号・タックアロー・スカイハイヤー(?)の昭和ウルトラシリーズにおけるバンクフィルムのストップモーションを流用したかたちで撃墜時の静止画像が挿入されていた。これらの映像がイメージ映像ではなく、劇中内での事実だったといった意味での映像描写であったのならば、セリザワ前隊長が搭乗したメテオール搭載のテスト機には、往年の歴代ウルトラシリーズの戦闘機も採用されていたということになるのだ!
アライソはミライを連れて、なぜかニューヨークのGUYS本部に飛んでいった。その留守を見計らって、リュウはテッペイをお供にガタガタに傷ついたガンフェニックスに整備を施していた。
「冗談じゃねぇ! オレたちは今まで父っちゃんにオンブにダッコで戦ってたっていうのかよ!? 冗談じゃねえ! 冗談じゃねえぞ! オレたちは自分の力で飛べるんだ! 戦えんだよ! そいつをオレが証明してやる! 証明してやるぜ!!」
しかし、怪獣グロマイトが再び出現してしまった!
その進撃を受けて、窓ガラスが粉々に吹っ飛んで炎上するビル!
リュウがガンウインガーに、ジョージとマリナがガンローダーに乗って出撃する!
彼らはグロマイトに火球を大量に吐かせて弾切れにさせ、グロマイトがエネルギーを吸収する隙を見計らって、鎧の隙間をねらう作戦を敢行する!
そのためには、禁じられたマニューバモードを使うしかない!
だが、リュウは……
「こんな奴、クルーズモード(通常形態)で充分だ!!」
「うぉ~~~〜!!!」と雄叫びをあげて、ほとんど特攻に近い無茶な攻撃でグロマイトに突撃していくガンウインガー!
マニューバモードを使用せずとも、機体が「分解」してしまうかのような勢いだ!(汗)
しかし、グロマイトのプラズマ火球が容赦なくリュウを襲った!
まさにそのとき、天空からビーム攻撃が放たれ、リュウをねらったグロマイトのプラズマ火球を撃ち落とした!!
いったい何者なのだ!?
それはGUYS最新鋭の高速追跡戦闘機・ガンブースターだった!!
アライソとミライを乗せて、ニューヨークのGUYS総本部から救援に駆けつけたのである!
リュウたちの攻撃の最中、宇宙空間から見た地球のニューヨークのあたりから東京へと、猛烈なスピードで飛ぶ光の正体はまさにこの機体だったのだ!
そして、ガンウインガー・ガンローダー・ガンブースターは各機の共通型コクピット部分のガンスピーダーを分離させた!
これら操縦席部分のガンスピーダーを相互に入れ換えることも可能なのだ!
ガンウインガーのリュウをガンブースターに移すために、シミュレーションの成果を見せるときが来た!
「行くぞ、みんな〜~~っ!!」
「G・I・G!!!」
往年の合体ロボットアニメ調の三分割の画面もカッコいい!
リュウ「ガンスピーダー・ワン! リジェクション(分離)!!」
ジョージ「ガンスピーダー・ツー! リジェクション!!」
ミライ「ガンスピーダー・EX(イーエックス)! リジェクション!!」
おもいっきりの大声で機体の操縦操作を叫んでいるあたりは、実は昭和のウルトラシリーズの防衛隊っぽくはない。往年の大人気作品だった合体ロボットアニメ『ゲッターロボ』(74年)や『超電磁ロボ コン・バトラーV(ブイ)』(76年)などを思わせる70年代スーパーロボットアニメ的な熱血演出なのである。
しかし、実に盛り上がってもいる。どうせ「戦闘」を描いた子供向けの娯楽活劇作品なのだから、今後のウルトラシリーズでもこういった往年の合体ロボットアニメ調な「熱血絶叫演出」を恒久的に導入して、作品を盛り上げていった方がいいとも思うのだ!(笑)
ジョージ「さあ、空中大サーカスの始まりだ!!」
リュウ「ジョージ、ガンウインガーをこわすんじゃねえぞ!!」
ジョージ「オレを誰だと思ってる! ハデに決めてやるぜ!!」
「空中大サーカス」、もとい1980年前後のむかしには「板野サーカス」(笑)の異名を持っていた大人気アニメーター上がりの板野一郎によるCG特撮演出によって、ガンウインガー・ガンローダー・ガンブースター、そして3つのガンスピーダーが華麗に、そして猛スピードで宙を舞う!
ジョージ「リュウ! 気流が不安定だ! 気をつけろ!!」
リュウ「わかってるって。まかせとけって」
サコミズ隊長(作戦室からの通信)「リュウ! ガンブースターの機体感覚は、ガンウインガーほど甘くない! ノボせるな!!」
リュウ「……GIG!」
なんと、あの温厚なサコミズ隊長が『メビウス』という作品ではじめて声を荒らげた! それはサコミズがただの昼行燈(ひるあんどん)や温厚なだけの人物ではない! やるときはやる! 命令力・人格力・人間力をも併せ持ったパーソナリティーであることをも示した、ここぞとばかりの肉付けでもあったのだ!
そして、ガンスピーダー・EXで地上に降り立ったミライは、ウルトラマンメビウスに変身する!!
再びリュウが搭乗しているガンスピーダーを襲ってくるプラズマ火球!
宙を回転して地上に舞い降りたウルトラマンメビウス!
そのままメビウスはグロマイトにチョップを喰らわす!
そのメビウスに、プラズマ火球の連続発射を浴びせて反撃してくるグロマイト!
これを連続側転でカワしたメビウス!
メビウスはグロマイトの首に再度チョップを浴びせて、回し蹴りを喰らわした!
ガンブースターへの合体がなかなかうまくいかないリュウが搭乗しているガンスピーダー!
リュウ隊員の心臓の鼓動のみが鳴る演出が、ベタでも緊迫感を煽り立てる!
アライソ「小僧、アセるな!!」
アライソまでもが、リュウに自制をうながす!
そして、ようやくガンスピーダー・ワンが、見事にガンブースターのコクピット部分へと合体!!
ついに、メテオールを起動させたガンブースター!
その場でグルグル超高速で回転・自転を開始して、黄金色に輝くバリヤーを張りめぐらした!
そして、猛スピードで宙を舞う!
リュウ「ガトリング・デトネイター!」
ガンブースターはリュウの叫びとスイッチ押下とともに、何条もの光線をグロマイトに浴びせかけた!
グロマイトの背中に着弾! 連続爆発を起こして、大きく燃え上がる!
そして、ウルトラマンメビウスも左腕甲のメビウスブレスの周囲に輝かせた「無限大マーク」のかたちをした光のエネルギーを集積!
グロマイトに接近して、腹に猛烈なパンチを見舞った!!
グロマイトは炎の玉となって大きく膨張し、じょじょに姿を消していく!
そして……
アライソ「命、ひろえたな」
イザとなればウルトラマンメビウスたちを助けようと、控えていたセリザワ前隊長。
しかし、メビウスとGUYSの大活躍によってウルトラマンヒカリへと変身する必要もなくなったのだった。
自身の変身道具・ナイトブレスを見つめて、そしてガンブースターを見上げるセリザワ前隊長。かつての部下であるリュウ隊員の頼もしい成長ぶりに、彼もまた感慨深く思わずにはいられなかったことだろう……
勝利の歓喜にわいている作戦室に、
「ガンフェニックスをイジくったスカたんは、ドコのドイツだ!!」
とアライソが怒鳴り込み、またもやリュウと一戦をはじめてしまうという、ドラマ一般のお約束ともいえる微笑ましいオチでこのエピソードは締めくくられている……
アライソ整備長を演じたのは、本当によくぞ出てくれました! としか云いようがない綿引勝彦(わたびき・かつひこ)であった。氏はNHKと円谷プロとの共同製作『生物彗星WoO(ウー)』(06年)にも出演していた縁がある――まぁ、同作は円谷プロ主導ではなく、近ごろ流行りのNHKのドラマの制作部門の方から各界の映画会社や製作会社に働きかけての企画、云ってしまえば、ドラマの実制作を下請けに出すことの一環だったのだろうと憶測するのだが(笑)――。
いずれにせよ、
●ゾフィー兄さんの登場!
●魅惑的なゲストキャラのアライソ登場!
●新メカ・ガンブースター登場!
そういった「見せもの」を次々に登場させて、あとはただひたすら画面の勢いだけで魅せるという、とはいえ「1話完結ルーティン」のバトルものに回帰するのでもなく、過去のシリーズも劇中内での実際にあった「史実」だとして、そういった広義での連続ドラマ性も踏まえた「今の時代に合った魅惑的なヒーロー活劇作品とはこういったものなのだ!」と力強く主張するかのようなエピソードとしても成立しているのだ!
……そして、続く第16話『宇宙の剣豪』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060928/p1)もまた、そういったテーマやストーリーなんぞもロクになくても、ひたすらに勢いに任せて突っ走れば、立派に面白い特撮変身ヒーロー作品をつくることができることを証明した作品なのであった!(笑)
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『ウルトラマンエース』#26「全滅! ウルトラ5兄弟」 ~一大イベント巨編だが、実は高いドラマ性!(それ故の問題も!)
『ウルトラマンエース』#35「ゾフィからの贈りもの」 〜子供に過ちを犯す主役!
『ウルトラマン超闘士激伝』 ~オッサン世代でも唸った90年代児童向け漫画の傑作!
『ウルトラマンメビウス』#1「運命の出逢い」 〜感激!感涙!大傑作!
『ウルトラマンメビウス』#15「不死鳥の砦」 ~ゾフィー&アライソ整備長登場!
『ウルトラマンメビウス』#24「復活のヤプール」 〜第2期ウルトラの映像派鬼才・真船禎演出リスペクトが満載!
『ウルトラマンメビウス』最終回 最終三部作 #48「皇帝の降臨」・#49「絶望の暗雲」・#50「心からの言葉」 〜ありがとう!
『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』 ~岡部副社長電撃辞任賛否!
『ウルトラファイトオーブ』完結評 〜『オーブ』・『ジード』・昭和・平成の結節点でもある年代記的な物語!
綿引勝彦・追悼で、『メビウス』#15「不死鳥の砦」評
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『メビウス』15話「不死鳥の砦」17周年評! ~ゾフィー・アライソ整備長・ガンブースター登場!
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