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ウルトラマン超闘士激伝 ~オッサン世代でも唸った90年代児童向け漫画の傑作!

(2021年2月7日(日)UP)
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 歴代ウルトラマンたちが大宇宙を舞台に大活躍を繰り広げるネット番組『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)が配信完結記念! とカコつけて……。ウルトラ一族が大宇宙を舞台に活躍する作品の元祖のひとつでもある、90年代児童マンガの傑作『ウルトラマン超闘士激伝』評を発掘アップ!


ウルトラマン超闘士激伝』 ~オッサン世代でも唸った90年代児童向け漫画の傑作!

(文・久保達也)
(2010年7月26日脱稿)


 筆者を含めた70年代に少年時代を過ごした者たちは、かの内山まもる大先生・かたおか徹次先生などが小学館の学習雑誌や児童漫画誌コロコロコミック』で描いてきたウルトラシリーズのコミカライズ作品や、ウルトラ一族が大宇宙を舞台に活躍するオリジナル展開漫画『ザ・ウルトラマン』(ASIN:B017TYZ8H4)や『ウルトラ兄弟物語』(ASIN:B07TTLQXKN)などに夢中になってきた。
 80年代前半にも、5年もの長きにわたって幼児誌『てれびくん』において居村眞二(いむら・しんじ)先生によるウルトラシリーズのオリジナル漫画にして、鎧(よろい)を着用した新たなウルトラ戦士、アンドロ警備隊のアンドロメロスとウルトラ一族が、大宇宙どころか時間跳躍やタイムパラドックスまで織り込まれていた名作漫画『ウルトラ超伝説』(ASIN:B002DE75TK)が連載されていた。


 しかし、90年代にも4年間にもわたって当時の少年たちに向けたウルトラシリーズのオリジナル展開の傑作漫画があったのだ!
 それが講談社の月刊の児童漫画誌コミックボンボン』(81~07年)において、93年4月号から97年3月号にかけて連載されていた『ウルトラマン超闘士激伝(ちょうとうし・げきでん)』(原作/瑳川竜(さがわ・りゅう) まんが/栗原仁(くりはら・じん)・ISBN:4063216853)である!



内山まもる入ってる! ――というのがかつて「コミックボンボン」(講談社)誌上で見かけた『超闘士激伝』の第一印象だったりするのだケド、懸命なる「ボンボン」読者世代にとって、そんなコト無縁には違いない。
 にも関わらずそこから話が始まってしまうのは、この『激伝』に溢れる熱き「ウルトラ魂」こそかつて内山まもる小学館の学習雑誌で描き、後に「コロコロコミック」誌での再録によって70年代末から巻き起こる、俗に“第3次怪獣ブーム”と呼ばれるムーブメント起爆剤のひとつになる快作『ザ・ウルトラマン』(というのは再録時の改題。もちろん79年4月放送開始のアニメーション番組とは無縁)の後継者たる資格アリ、とこちらが勝手に判断してのコトなのだケド……


 もちろん、この平成の世に繰り広げられる『激伝』には、周到なマーケティング・リサーチによって導き出された(に違いない)格闘色の強調や、例えば装鉄鋼(メタルブレスト)といった「バンダイ・ベンダー事業部」&「コミックボンボン」誌が『SDガンダム』――引用者註:2頭身の児童向け玩具(85年~)――で培ったノウハウの転用によるガジェットの充実、といった魅力的なエレメントは詰めこまれている。
 でも『激伝』を読んで唸らされるのは、やっぱし過去の『ウルトラ』シリーズにおける設定を、過剰なまでのオマージュを込めて再生産しようとする、その姿勢にこそ、だったりするのデスネ。


 事実、現在商業誌で展開されている漫画で、これほどまで“ワカる奴だけ大喜び”的にツボを突いている作品は、ちょっと他には見当たらない。
 しかも、そのツボが、熱血少年漫画としての『激伝』の世界観の枷(かせ)になるコトなく、否(いな)、それどころか世界観をヒートアップさせるべく組み込まれているコトには、驚かされると同時に、怒涛(どとう)のような感動を覚えずにはいられないノダ。


 例えば、金子修介伊藤和典樋口真嗣といった“ゴジラで育った世代”が、新作『ガメラ』シリーズで、多くの“自分たちと同じ魂を持つ観客”を納得させ、かつ新たな観客層を取り込んでいるように、原作者・瑳川竜&栗原仁“ウルトラ(それも第2期の!)で育った世代”コンビはこの『激伝』で、それに非常に近い地平を目指し、かつ到達できてんじゃないかなあ、と思うのだ。
 もちろん前者が“一般層”を、後者は、“少年層”を切り拓こうとしている、という違いにはあるにせよ」


(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』(エアーズ 96年9月21日発売・ASIN:B000064C7F)ライナー・ノーツ「EXPLANATION」赤星政尚)



 いやぁ、のちに『ウルトラマンメビウス』(06年)のメイン脚本家を務めた、当時はまだ一介のライターに過ぎなかった赤星政尚(あかほし・まさなお)先生(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)にこのような立派な作品解説を書かれてしまっては、筆者ごときが何を書いても蛇足になってしまうなぁ(汗)。



 この『ウルトラマン超闘士激伝』に小学生のころに「ウルトラ魂」を植えつけられ、成人してもそれが離れない世代人はかなり多いようである。
 ネット上の「復刊ドットコム」には、実に同作が完結した4年後の、今から思えばまだまだネット草創期の2001年ころから、すでに復刊を求めるリクエストが多数寄せられ続けていたのである。


 復刊を求めていた声を総合すると、以下の通りである。
 講談社から全6巻で刊行された『ボンボンコミックス』レーベルの単行本には、シリーズ途中までのエピソードしか収録されていない。それらの続きとなる、それまでの巻数と同等(爆)のエピソードが未収録である。それらも含めた完全版での復刻を! といった声が多数を占めている。


 その当時に子供向けのガシャポン自販機で発売されていたミニフィギュアを熱心に集めていたという声も実に多かった。
 そして、連載自体が97年3月号までに急場しのぎのように完結しており、それを残念がる声も根強いものがあったのだ。


 そうして、最初の復刊希望からまる10年近い歳月を経(へ)て、遂に2009年12月20日に第1巻(ISBN:4835444094)が発行されたのを皮切りに、2010年3月1日に第2巻(ISBN:4835444108)、5月1日に第3巻(ISBN:4835444116)、7月1日に第4巻(ISBN:4835444124)と、未収録部分も含めて完全なかたちでの完全復刻がめでたくなされたのである!


 筆者は連載当時はすでに20代後半であり(汗)、本作に登場するスーパー・デフォルメの略称であるSDキャラたちはあちこちで目にした記憶はある。しかし、SDキャラゆえに「どうせギャグものだろう……」と関心が低かった。さすがに児童漫画誌である『コミックボンボン』を立ち読みすることも気恥ずかしかったので、この作品に関しては実はほぼノーマークだったのだ。


 それで、今回の復刻を契機に改めて読んでみた。


 ……ムチャクチャおもしろい!!


 本作の作風・ストーリー展開・キャラクターは、『週刊少年ジャンプ』連載の超人気漫画で、長年テレビアニメも放映されていた、いまだに根強い人気を誇るバトル漫画『ドラゴンボール』(84年~)に似ているとよく評されている。


 しかし、オッサンの筆者としては幼少期にぎりぎりカスった、クラスの中での番長を決めて、次は学年の番長 ⇒ 上級生の番長 ⇒ 隣町の番長 ⇒ 県規模での番長 ⇒ 関東規模での番長 ⇒ 日本規模での番長 ⇒ アメリカの番長(笑)と戦う、「町内最強武闘会」のはずが、国家同士の戦争レベルにまで発展してしまう、『週刊少年ジャンプ』創刊当初から連載されていたという往年の大人気漫画『男一匹ガキ大将』(68~73年)を想起してしまう(汗)。


 後年のジャンプ漫画のすべてが同じだろうが、要するに敵のスケールが次第に大きくなっていったり、以前の敵が味方となって新たな強敵に共に立ち向かうところに、共通点が見いだされるのである(笑)。


第1部『メフィラス大魔王編』

ウルトラマン超闘士激伝

*93年4月号『銀河最強武闘会開幕』
*93年6月号『謎の覆面格闘者』
*93年7月号『優勝者決定!?』
*93年8月号『恐怖のハイパーゼットン
*93年9月号『セブン復活指令』
*93年10月号『試練の星キング星』
*93年11月号『鋼魔(こうま)四天王あらわる』
*93年12月号『ウルトラ戦士集結』
*94年1月号『闘士ウルトラマンの帰還』
*94年2月号『宿命の対決!』
*94年3月号『最終決戦!!』


 ウルトラマンたち巨大超人一族や巨大怪獣や宇宙人、そして地球の防衛組織までもが参加する、宇宙最強を決める「銀河最強武闘会」が「銀河連邦」(!)の主催で行われるところから物語は始まる。
――この「銀河連邦」とは1972年に円谷プロが自社製作の作品群はすべて同一世界の物語である! と定義した際の総称である。その後に定着しなかったウラ設定ではあるのだが・笑――


 はるかなる太古よりこの宇宙に伝わる伝説の最強戦士、「超闘士」(ちょうとうし)となる可能性を秘めている初代ウルトラマンの力を暴こうとする謎の覆面選手。


 その彼と手を組んだのが、初代『ウルトラマン』(66年)第39話(最終回)『さらばウルトラマン』で、初代マンを一度は殺害したことがある超強敵怪獣・宇宙恐竜ゼットンだった!


――本作に登場する巨大怪獣たちは皆、意思を持っており人語もしゃべるが、絵柄がSD調であるためか違和感は少ない・笑――


 ウルトラ兄弟 VS 歴代強敵怪獣たち! あまたの対戦カードでの激戦が展開される!


 その果てに、初代マンは謎の覆面戦士と対戦した!


 難敵相手に苦戦する初代マン。決勝で当たるだろう対ゼットン戦用に温存していた隠し球を、初代マンは遂に使用せざるをえなくなる。


 両腕を十字型に組んだスペシウム光線の構えから、伸ばしていた両手のひらをグッと握って、左右の腰許まで引いてから右拳だけを突き出す、いわゆるアタック光線の構えで、新必殺技スペシウム・アタックを放つ初代マン!!


 この光線に押された謎の覆面戦士は、余力を残した風でありながらもアッサリと降参。しかし、初代マンもエネルギーを使い果たし、倒れてしまって担架(たんか)で運ばれてしまう……


 控え室で横になって、しばしの休憩を取る初代マン。


初代マン「だめだ この負傷では(決勝戦の)ゼットンと互角にはやりあえん……!! もう…… だめか…!?」
科学特捜隊の隊員たち「ウルトラマン!!」
初代マン「きみたちは…… 地球の科特隊のみんな……!!」


 本作『超闘士激伝』は、ウルトラシリーズ番外編のテレビシリーズ『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)や映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(ザ・ムービー)(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)での発想をはるかに先駆けており、ウルトラシリーズの未来の時代がその舞台となっている。


 そして、ここは良い意味で漫画なのだが、この未来世界には歴代ウルトシリーズの防衛組織がそれぞれ併存していて、「銀河最強武闘会」の舞台である「ウルトラの星」まで来ているのだ! 加えて、地球人の身長もウルトラマンたちのせいぜい1/3くらいの大きさで描かれている(笑)。
 まぁ、作品の絵柄的にもリアリズムが優先される世界観ではないし、身長比率の描写についてはデフォルメ表現だとして、読者諸兄の大勢も許せるのではなかろうか!?



イデ隊員もどき「これをつかってください。きゅうにあつらえたんで 見ばえはよくないけど……!」
初代マン「あっ!!!」
ムラマツ隊長もどき「あなたにはかつて地球をまもってもらった恩がある!(中略) ぜひこの装鉄鋼(メタルブレスト)をつかってやってください!!」
初代マン「……ありがとう!!」


 両胸・左肩・左上腕だけを覆った黒鉄(くろがね)の「装鉄鋼」を装着して、ゼットンとの決勝戦にのぞむ初代ウルトラマン


観客の怪獣A「なんだっ!? あの鎧みたいなのはっ…!!」
観客の怪獣B「ゼットンのパンチをモロにうけとめやがった!!」


イデ隊員もどき「ハ~ッハッハッハッ!! 見たかあ!! あれこそわが科特隊がプレゼントした巨大防御装甲「装鉄鋼(メタルブレスト)」だあーっ!!!」


観客の怪獣C「メタル……」
観客の怪獣D「ブレスト!!」


ムラマツ隊長もどき「ウルトラ戦士の急所カラータイマーをガードし 防御力を数段アップさせるプロテクターだっ!! あれを装着したウルトラマンこそ まさにきたえぬかれた武闘家が武装した最強戦士! 闘士(ファイター)ウルトラマンだ!!」


 「闘士ウルトラマン」となった初代マンは、強敵ゼットンを圧倒していく!


 初代マンが少しでも回復してくれる時間を稼ぐために、ゼットンとの準決勝で粘った末に昏倒したウルトラマンエース! エースの友情に報いるためにも、闘士マンはエースの必殺投げ技・エースリフター(!)を使って、ゼットンに大ダメージを与えた!!
――エースリフターもまたマニアであればご承知の通り、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)第28話・第29話・第44話でも使用されたことのある技である!――


 敗北を予感したゼットンは、観客席にいた謎の覆面選手からのテレパシーでの指示で、授与されていたハイパーカプセルを砕く! その超エネルギーを浴びるや、ゼットンはハイパー化(強化)、筋骨隆々の姿となって暴走を開始した!
 その強大なるパワーにはウルトラ戦士たちが束になってかかっても抑えることができない!


 だが、「闘士ウルトラマン」は負けじと立ち上がった。
 闘士マンとハイパーゼットンとの拳と拳の応酬がはじまる!
 そして、ついに光線技ではなく、闘士マンによる高速突進による渾身の拳による一撃が決まった!


 闘士マンは遂にゼットンを倒して、「銀河最強武闘会」の優勝者となったのである!!



「『超闘士激伝』のスタートラインは元々バンダイさんで、SDキャラクターで『騎士(ナイト)ガンダム』――引用者註:『SDガンダム』の系列で、日本武者をモチーフとした『武者ガンダム』(85年)に続く、西欧騎士をモチーフとしたシリーズ(89年)――みたいな強力なものを新たに立てたいという話があり、いくつかあるビッグキャラクターの中からウルトラマンを選び、『激伝』の形のものを企画してバンダイさんに逆提案してスタートしました。
 その頃には『ボンボン』デビュー――引用者注:読み切りラジコン漫画『スカイボンバー一直線』(87年)――時の担当さんが編集長になっていたこともあって、漫画連載もスムーズに決まりました。


 企画の発進元だったベンダー事業部でカードやガシャポンになるという時に、当然本物のウルトラマンと『激伝』版には差があった方が良いだろうと、鎧(よろい)や剣といったトイ要素を入れることになり、ウルトラマンにプロテクターを着けました。


 物語のテイストとして考えたのは、『騎士ガンダム』は『ドラゴンクエスト』――引用者註:86年開始の云わずと知れた今でもシリーズが続く超有名テレビゲーム――をベースにした話になっていたので、(引用者註:週刊少年)ジャンプ漫画っぽいのが良いのでは? という話になり、バトルっぽい作風になったんです」


(『フィギュア王』No.139(ワールドフォトプレス・09年7月24日発売・ISBN:4846527891)「光の国◆人物列伝」瑳川竜 ~『フィギュア王』プレミアムシリーズ6『ウルトラソフビ超図鑑』(10年7月15日発行・6月1日実売・ISBN:4846528278)にも再掲載)



 本作におけるウルトラマンが鎧を着用するという設定の直接の発端は、内山ウルトラ漫画やアンドロメロスありきの発想ではなく、鎧や武装の着せ替え人形でもあるSDガンダムの亜流として発想されたことがこれでわかる。
 しかし、それがバンダイ側の発案ではあっても、単なるメディアミックスの一環としての漫画のストーリーの「原作者」レベルではなく、この企画の発端のタイミングに臨席していて、そこにウルトラマンを選定して格闘技漫画のスタイルとすることをも逆提案(!)してみせるという、「企画」「プロデューサー」級のポジションとしても、『激伝』の原作者・瑳川竜氏は関わっていたというのだ。まさに名実ともに『激伝』の産みの親だったといえるだろう。




 ……しかし、戦いは終わったワケではなかった。


 覆面戦士の配下である分身宇宙人ガッツ星人の謀略で、初代マンの親友・ウルトラセブンが透明な十字架の中に封じこまれてしまったのだ!
――もちろんこれは『ウルトラセブン』(67年)第39話~第40話『セブン暗殺計画』前後編で、セブンがガッツ星人によって透明な十字架の中に閉じ込められてしまった鮮烈なシーンへのオマージュでもある!――。


 殺害しないまでも中のエネルギーをゼロにしてしまう、特殊元素でできた透明な十字架。この状態からセブンを復活させるためには、膨大なエネルギーを秘めたダイモード・クリスタルが必要だと判明した。
 それを手に入れるために、初代マンはウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングが住まうキング星へと向かう!
――ダイモード・クリスタルも、『セブン暗殺計画』前後編で十字架に囚われたセブンを復活させるために、同作の防衛組織・ウルトラ警備隊が必要とした、セブンに照射するマグネリウムエネルギーを発生させるための「ダイモード鉱石」が由来。後年の『ウルトラマンメビウス』終盤でのセブン客演編でも、同アイテムの発展型とおぼしき「メテオール・マグネリウムカートリッジ」なる新アイテムが登場していた――


 別名“試練の星”と呼ばれているキング星の砂漠地帯で、初代マンはかつて地球でも対戦したことがある、光線技の通じない蟻地獄怪獣アントラーと戦う!
――ウルトラマンキングはキング星にたったひとりで住んでいるというウラ設定があったハズだが、実際には初代マンに登場した中東の「バラージの街」そっくりの街も登場。地球の中東風の住民たちも多数住んでおり、少々違和感もあるのだけれども…… 許そう!・笑――


 苦戦の末にアントラーを倒して、初代マンはウルトラマンキングからダイモード・クリスタルを授かった!


 しかし、その留守をねらって、謎の覆面戦士、その正体はメフィラス大魔王(!)の配下である「鋼魔四天王」である4大・闘士(ファイター)!


・宇宙忍者バルタン星人が鎧をまとった、闘士バルタン星人!
・凶悪宇宙人ザラブ星人が鎧をまとった、闘士ザラブ星人
・誘拐怪人ケムール人が鎧をまとった、闘士ケムール人!
・三面怪人ダダが鎧をまとった、闘士ダダ!


 ひとりでも百軍に匹敵するという彼らが、ウルトラの星を襲撃してきたのだ!!


 ここからストーリーは完全に「銀河最強武闘会」を離れて、ガチの「戦争」へと転じていく!!


 ウルトラ兄弟たちジャック・エース・タロウも、4大強豪宇宙人の大猛攻に絶体絶命のピンチに!


 しかし、そこに当時はシリーズ最新の日豪合作作品でもあるウルトラ戦士であった筋骨隆々のウルトラマンG(グレート)が加勢する! グレートは『激伝』ではウルトラ一族が設立した宇宙警備隊には参加していない、はぐれ戦士であるという設定なのだが、強力なパワーファイターでもあるのだ!


 宇宙忍者でもある闘士バルタン星人の分身体である「PSY(サイ)バルタン」たちと単身で戦うことになったウルトラ兄弟の長男・ゾフィーもまたピンチに陥(おちい)る!


 しかし! そこにウルトラ学校の生徒たちを避難させたあとだという、ウルトラマンエイティが両腕をL字型に組んで放つ必殺技・サクシウム光線が炸裂した!!


――ウルトラマンエイティは『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)テレビ本編の序盤(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)では地球人の姿をしているときは防衛組織の隊員と中学教師も兼任していた。その設定をきちんと継承しており、ウルトラの星へと帰ったあとは、ウルトラ学校の教師をしていたのだという、さもありなんな設定も付与されての嬉しすぎる助っ人!――


 ウルトラの星に来ていた地球人の防衛組織もこの戦いに参戦! しかし、防衛組織・MAT(マット)の戦闘機・マットアロー2号が撃破されて墜落してくる……


 その機体をガシッと受けとめる巨人の手があった!


加藤隊長もどき(笑)「!!? ウ… ウルトラマンが… かえってきた!!?  いや…… ちがう!! ウルトラマンジョーニアスとU40(ユーフォーティ)戦士団だっ!!!」


――太陽エネルギーを補充するために一度は戦線を離脱したウルトラマンが、墜落していくマットアロー2号をガシッと受け止めて、操縦していたMATの加藤隊長が「ウルトラマンが……帰ってきた!」とつぶやくのは、『帰ってきたウルトラマン』(71年)第18話『ウルトラセブン参上!』からの引用でもある!・笑――


 そしてなんと! ここで助けに登場したウルトラマンは、第3期ウルトラシリーズのテレビアニメ作品『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)の主人公ヒーローであるウルトラマンジョーニアスなのである!
 しかも! ジョーニアスはM78星雲にあるウルトラの星とはまた別の星である、ウルトラの星・U40出自なのだが、同作の第20話『これがウルトラの星だ! 第2部』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090914/p1)で初登場して以降、度々ジョーニアスを加勢してきた、U40のウルトラマンであるエレクとロト! それに5大戦士たちも駆けつけてくれたのだ!!
 ジョーニアスのみならず、エレクやロトたちまで! この漏れなく総ざらいにしていくような感覚! 作り手たちは、よくある第1期ウルトラシリーズ偏重ではなく、ウルトラシリーズ全般を等しく愛するマニアたちの感慨をも、実によくわかっていらっしゃる!(笑)


 闘士バルタン星人がその両腕のハサミから超爆撃光線「バルタン・ミクスド・ファイヤー」で、ウルトラ兄弟たちを抹殺にかかった!
 しかし、ウルトラマングレートが敵の光線を受け止めてハネ返す秘技「マグナムシュート」で、逆に相手を撃滅させる!!
 けれど、バルタン星人は敗れたが、グレートも相討ちとなり昏倒してしまった……


 バルタン星人の敗退によってバルタン星人の分身体も消滅! 手透きとなったゾフィー・エイティ・ジョーニアスが、ジャック・エース・タロウの加勢へと向かった!
 しかし、四天王で残った3人の闘士宇宙人とウルトラ戦士たちとの激突で、双方ともにひとり、またひとりと欠けていく……


 そこに闘士ウルトラマンがキング星から遂に帰ってきた! ダイモード・クリスタルをウルトラの父や防衛組織・ウルトラ警備隊のアマギ隊員もどき(笑)に手渡すと、颯爽と戦場に到着!


 闘士マン VS メフィラス大魔王、今までとは段違いの強者VS強者の対決がはじまる! 
 互角の戦い! しかし、メフィラスはハイパー化して身の丈も倍になる! 闘士マンは大苦戦!


 エースの発案で、エースのトサカ部分のまるい穴、エネルギーホールに、ゾフィー・ジョーニアス・エイティは「スペースチャージ」する! エースがそのエネルギーを結集して、トサカから必殺光球・スペースQ(!)を放とうとするや……


 メフィラスが人差し指から放った光線が、エースのトサカ部分を砕いてしまう!! 後ろ向きに倒れてしまうエース!


――「スペースチャージ」とは、『ウルトラマンA』第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』で、マイナス宇宙にあるゴルゴダ星でウルトラ4兄弟たちがエースだけを地球に返すためにエネルギーを分け与えた「ウルトラチャージ」と、続く後編である第14話『銀河に散った5つの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)で披露された5兄弟のエネルギーを結集した必殺光球「スペースQ」を混同した誤記だと思われるが、エースのエネルギーホールに限定してチャージ(充電)する行為を「スペースチャージ」と称しているのかもしれない・笑――


 メフィラス大魔王が闘士マンにトドメの超魔光閃(ちょうまこうせん)をその片腕から放とうとした瞬間! なにかが片腕に当たって光閃の軌道がそれることで、闘士マンをかろうじて救った!
 それはウルトラセブンのトサカ部分を外して放つ、宇宙ブーメランであるアイスラッガー


 ダイモード・クリスタルの超エネルギーで復活し、防衛組織・ウルトラ警備隊から託された「装鉄鋼」を両肩と両脛(すね)にまとった「闘士(ファイター)ウルトラセブン」が駆けつけてきたのだ!


 しかし、闘士マンと闘士セブンの力をもってしてもメフィラス大魔王を倒せるかは厳しい! 闘士セブンの発案で、セブンのアイスラッガーゾフィー・ジャック・タロウ・グレートがエネルギーをチャージする!
 闘士マンはそのアイスラッガーを片手に握って渾身の一撃! 遂にメフィラス大魔王を打ち破ったのであった!!




 本作の独自性は、内山まもる大先生のウルトラ漫画で前例はあるものの、ウルトラマンが鎧を装着したことだろう。



「鎧はちょっとな。もはやウルトラじゃないよな」
龍騎(『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021109/p1))もカードバトルがそんな風に論争巻き起こしたけど、マーチャンダイジング的には大成功してシリーズの裾野を広げた。売れそうな冒険なら議論を呼んでもウルトラでやってみてもいいんじゃないだろうか」
「鎧のウルトラマンって準備稿ではあったみたいだね。今回日の目を見たわけだ」
「(ウルトラ)セブンのデザインは西洋の甲冑をイメージしたそうだけどね」
「たとえば、地球人が巨大ロボ操縦して、子供がウルトラのフィギュアと連動遊びができるように、劇中でもロボが鎧に変形してウルトラマンと合体するおもちゃ出すとか」
「そこまでやるなら別のシリーズを立ち上げればいい。鎧なら(ウルトランマン)ヒカリが持ってるし、(ウルトラマン)ゼロも(テクター)ギア着けてるけど、ウルトラマン本来のかっこよさには及ばないよ。『激伝』みたいにすれば別だけど。そもそも(仮面)ライダーみたいな装着系と同一視するのはおかしいと思う」
「そこでアンドロメロス(『アンドロメロス』(83年))の復活でつよ(°∀° )!」
「『超闘士激伝』ぐらいの鎧なら良いな。顔が隠れたりウルトラマンのスタイルを損なうような物はNG」
「デカレッド・バトライザー(引用者註:『特捜戦隊デカレンジャー』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041112/p1)後半の強化形態)みたいな感じならウルトラマンの顔も隠れないしいいかも。鎧に変形する防衛戦闘機を操縦する地球人との友情が形になった姿って感じで。そんな感じでとにかくおもちゃがドンドン欲しくなる展開をしていって、まずマーチャンダイジングで成功して欲しい」
平成ライダー仮面ライダーメタルヒーローだから、ウルトラマンも他の円谷ヒーローの要素を+してもいいんじゃないか? どうせウルトラマン以外をやる余裕なんてないだろ。超闘士・メロス・グリッドマン(『電光超人グリッドマン』(93年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190529/p1))みたいにアーマー装着したり、ウルトラマンがメカ怪獣みたいなものに変身すれば玩具も売れやすい。賛否両論だろうが宇宙を守るヒーローとしての軸がぶれなければ何をやっても許せる」


2ちゃんねる「特撮!」掲示板『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』Part19 2009年12月21日~2010年1月6日)



 映画『ウルトラ銀河伝説』感想スレ(ッド・掲示板)のハズなのに、玩具展開の是非やウルトラマン武装をすることの是非についての論争に転じてしまっている(笑)。


 『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)のころにはティガが赤・紫・銀の標準の姿であるマルチタイプから赤&銀のパワータイプや紫&銀のスカイタイプにタイプチェンジするという程度のことに対してさえ、「商業主義」だ! などという素朴な批判がおどっていたものだ。
 それを思えば世間もやっと追いついてきたどころか、2010年現在でのウルトラシリーズにおけるウルトラマンの在り方を超えており、はるかに将来を見据えている提言をしている!


 60~70年代のむかしの子供たち向けではなく、アニメやゲームなどとの競争も激しい当今の子供たちの興味関心をゲットするための意匠やアイテム、商業的な収益をも見据えた現実的な提言まで主張してくれているのだ。
 こういった意見は90年代から特撮評論同人界でもごく少数あるにはあったのだが、ほとんど世間一般・特撮マニアの大多数への影響力はなかった(爆)。
 しかし、『激伝』世代がようやく発言権を得てきたためか、商業誌の読者投稿欄や同人誌などといった意見交換に数ヶ月ものタイムラグを要する媒体とは異なり、ネットという媒体自体が議論や個人の見解の変化のスピードを加速させるのか、これまであまり一般的ではなかったタイプの意見が、00年代以降に勃興したネット上の超巨大掲示板で可視化されて、先進的な議題となるに至っているのである。


 「闘士ウルトラマン誕生」の瞬間は、「ウルトラマンとはかくあらねばならない!」というドグマとは無縁な子供時代に『激伝』に接した彼らの世代の大勢からすれば、特に気張って興奮したり、その逆に反発されることもなしにナチュラルに受容されたものだと思われる。
 しかし、筆者のような古い世代からしても――といっても70年代前半が原体験である第2期ウルトラ世代だが――、「鎧」の着用に地球を守ってくれた恩があるからと「装鉄鋼」を科学特捜隊がプレゼントしてくれるという理由付けをきちんと与える描写については、「ジ~ン」と心の琴線(きんせん)にふれてくるものがあるのだ。


 古くはテレビアニメ『ザ★ウルトラマン』最終章4部作(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20200508/p1)という前例があるにせよ、近年の『ウルトラマンメビウス』や映画『ウルトラ銀河伝説』のように、地球人の方が逆にウルトラマンを助けるという設定の、ある意味では先駆けですらあるのだ!
 「長年の功労に対する恩返し」「地球人がウルトラマンを助ける」。この2大エクスキューズも設けることで、ウルトラマンが「鎧」を着用することに抵抗があるような、年長のウルトラシリーズマニアたちの反発もやや緩和されるようなワンクッションもある描写に昇華できていたとも思うのだが、いかがだろうか?



 なお、「イデ隊員もどき」「ムラマツキャップ(隊長)もどき」「アマギ隊員もどき」(笑)などについては、以下のような経緯があったそうだ。



「当初、科特隊などの防衛軍は、肖像権の問題があるため、似せないで描く事になっていた。が、連載前のキャラシートにふざけて描いたら、ちょっとウケて「これだけふざけて描いてあったら別人でしょう」と、GOサインが。万が一クレームがついたら、「別人」で押しとおすつもりだったのだ。(たぶん)」

(復刻版『ウルトラマン超闘士激伝』第1巻カバー内表紙「激伝ひみつメモ」栗原仁)



 そのようなワケで、『ウルトラマンA』の防衛組織・TAC(タック)の「今野(こんの)隊員もどき」をはじめ、頭身も縮めた大幅なデフォルメではあっても、元ネタの俳優さんたちにそっくりである(笑)。


第2部『ヤプール編』

ウルトラマン超闘士激伝 2

*94年4月号『第2回銀河最強武闘会開幕』
*94年5月号『復活! メフィラス大魔王』
*94年6月号『怪僧マザロン』
*94年7月号『デスマッチ開始!』
*94年8月号『決定! ベスト4(フォー)』
*94年9月号『マザロン豹変』
*94年10月号『ハイパーマザロン』
*94年11月号『最強タッグ結成!』
*94年12月号『超闘士誕生!!』
*95年1月号『ヤプール軍団総攻撃!』
*95年2月号『超闘士ウルトラマンタロウ
*95年3月号『メビウスの三つの鍵』
*95年4月号『最強闘士(ファイター)集結!!』
*95年5月号『怨霊超獣あらわる!!!』
*95年6月号『ハイパーヤプール
*95年7月号『宇宙最大の危機』
*95年8月号『闘士(ファイター)ウルトラマン復活!?』
*95年9月号『テリブル・ゲート オープン』
*95年10月号『ヤプール大戦終結!!』


 惑星・Q-49で「第2回銀河最強武闘会」がループ星人ヤンドの主催で開かれた。
 激戦の末に、闘士ウルトラマン・メフィラス大魔王・闘士エースキラー・怪僧マザロンがベスト4に勝ち残る。


 しかし、マザロンはヤンドの配下としての本性を現わす! 対戦相手でありロボットでもある闘士エースキラーをかつて製造したのは自分なのだと!!
 この一言で自身もかつては異次元人ヤプールの手先であったエースキラーも、マザロンの正体に気付いた! ヤツはヤプール人の一味だったのだ! マザロンはその怪力でエースキラーを自身の「オモチャ」だったとして破壊してしまう!!


――怪僧マザロンの原典であるマグマ超人マザロン人も、『A』の埋もれている大傑作である鬼才・真船偵(まふね・ただし)脚本&監督作品の第24話『見よ! 真夜中の大変身』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)の前話に登場した怪僧こと通称・ヤプール老人がマグマの中で変身した姿であって、ヤプール人のひとりでもあるのだから、それを踏襲して、この怪僧マザロンもヤプール人のひとりだったという描写を与えているのだ! そして、ヤプール人のひとりであるのならば、かつてエースキラーを製造したことがあったとしても不思議ではないのだ!――


 闘士マンとメフィラス大魔王は協力してマザロンを一度は倒すが、マザロンはハイパー化して、闘技場を爆破しようとする!


 闘士マンはメフィラスとハイパー化のためのエネルギーを合わせて、観客席を除いた競技場のグラウンドまるごとマザロンと爆弾を無人の惑星に超テレポーテーション(瞬間移動)させる!
 だが、エネルギーを使い果たした闘士マンは力尽き、ハイパーマザロンから彼をかばおうとしたメフィラスも倒れて、遂に超空間時限爆弾が大爆発してしまう!


 「友」となったメフィラス大魔王を守りたい…… その想いは、超空間時限爆弾の大爆発の中で、「その拳は惑星をも砕き、その輝きは暗黒の宇宙をも光で満たす」という、伝説の最強戦士「超闘士(ちょうとうし)」としての初代ウルトラマンを誕生させた!
 「超闘士ウルトラマン」はその開いた右掌を突き出して「スペシウム超光波」を上空に放った! ……遂にハイパーマザロンを打ち破る!!


 しかし、そのすさまじいパワーは初代マンの肉体をも破壊してしまい、駆けつけたウルトラ戦士たちとメフィラスの前で、初代マンは超光波を放った直立不動の姿のままで帰らぬ人となっていた……


 おもわず号泣してしまうメフィラス大魔王……


 帰るべき肉体を失った初代マンの魂は、死後の世界・霊界でもある「あの世」をさまよい、そこで霊界にも出入りができる超能力を持ったウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングと出逢った。
 キングはこの3次元世界である「この世」では物理的な機械にすぎないウルトラの星の人工太陽であるプラズマスパーク核融合装置の、天上世界における本体・精神・魂でもある「太陽神」(!)の存在を説明して、女性のような声で語りかけてくる「光」だけの存在である「太陽神」に初代マンの肉体を復活してくれるように懇願する。
 しかし、承諾はされたものの、それには3年もかかると告げられてしまう!


 極悪宇宙人テンペラー星人からウルトラ司令室に送られた通信で、ループ星人ヤンドの正体がかつてエースやタロウらウルトラ一族とも戦った異次元人ヤプールであることが判明する!


――この場面でのテンペラー星人の回想映像では、たむろしている居酒屋で地獄星人ヒッポリト星人・暗殺宇宙人ナックル星人といった、歴代のウルトラシリーズでも前後編の2話にわたってウルトラ兄弟を苦しめた強豪宇宙人たちがそろっている。後年の映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)や映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1)でも、強豪宇宙人連合として復活したメンツでもあり、強豪は強豪同士でつるんでいるというのもまた、実によくわかっていらっしゃる!・笑――


ヒッポリット星人「い、いま宇宙に生き残っている超獣たちの生みの親だったという(ヤプール)……!」


エース「昔オレが…… 必死の思いでやっつけたヤプールが下の下のヤツだったなんてっ……!!」



「あともう一点ビジュアル的には、自分が内山まもる先生の『ザ・ウルトラマン』世代で、ウルトラマンが大勢出てくるバトルストーリーっていうのに慣れていたので、内山先生風のスッキリした顔立ちが一番合っていると思い、じゃあ内容的にも、ウルトラシリーズの全内容を網羅したサーガ的な要素も取り入れようということであの形に落ち着いたんです」

(『フィギュア王』No.139「光の国◆人物列伝」瑳川竜 ~『フィギュア王』プレミアムシリーズ6『ウルトラソフビ超図鑑』にも再掲載)



 そう。歴代のウルトラマンたちが登場しながら、原典のテレビシリーズとはまったくの無関係であるとされてしまっては、なぜにそこにウルトラマンというキャラクターを用いているのか? という地に足が着かない不自然さ・不安定・不如意感が作品世界に生じてしまったことだろう。
 しかし本作は、完全パラレルストーリーなどではなく、あくまでもテレビシリースでの出来事も史実として肯定して、その世界とも直結している未来の時代での一応はアリエそうでもある続編世界の後日談とすることで、SD調のキャラデザと鎧を着用するという変化球でありながらも正統な血筋であるサラブレッド感も醸し出すことができているのだ!


 この異次元人ヤプールも、ウルトラシリーズを昭和の『仮面ライダー』シリーズのような単なる善VS悪との攻防劇に堕落させた張本人だ! と70年代~90年代にかけては第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちからは糾弾されてきた存在なのだ。
 しかし、各話単位のゲスト悪役、あるいは前後編のかたちでウルトラ兄弟を苦しめた強豪宇宙人をも超えた、大きなスケールを有する強敵といったら、やはり「怪獣」よりも強い生物兵器「超獣」を製造した『A』のシリーズ前半の宿敵を務めた異次元人ヤプールだろうから、実に納得がいく巨悪としての再登場だ!
――次作『タロウ』で「超獣」よりも強い「宇宙大怪獣」が登場したことには目をつむろう・笑――



 数日後、全宇宙にヤプール超獣軍団(!)の一斉攻撃もはじまってしまった!
 大蝉超獣ゼミストラ! 大蛍超獣ホタルンガ! 気球超獣バッドバアロン! 絵面的にはビミョーだが、初戦の三下のヤラれ役としてはちょうどイイ!(笑)


 防衛組織・ウルトラ警備隊の戦闘機・ウルトラホーク1号にそっくりのホーク・ウェポン1号の両翼に両足で立って乗っかった闘士ウルトラセブンがそこに駆けつけてくる!


闘士セブン「H(ホーク)・W(ウェポン)1号!! アームドアップ!!!」


 ホーク・ウェポン1号が3機に分離して、セブンの背中の鎧と剣と盾になる!
 ホークウェポンでパワーアップした「フルアーマー闘士ウルトラセブン」をリーダーに、一致団結したウルトラ戦士・怪獣・地球人連合軍 VS 異次元人&超獣軍団 との全面戦争がはじまった!
 キングジョー・ガメロット・クレージーゴン・ビルガモといったロボット怪獣たちもウルトラ戦士たちに加勢する!


 そして、この「ヤプール編」の後半から、初代ウルトラマンが主人公ではなく、ヤプールとの因縁が深いウルトラマンエースでもなく(笑)、ウルトラマンタロウが新たな主人公に昇格するのだ!


 大戦のさなかなのだが、ヤプールの首を討ち取って戦争を終結させるために、メフィラス大魔王は闘士タロウを連れて修行の旅に出る。
――本作の原典(爆)である『ドラゴンボール』で、ナメック星人・ピッコロ大魔王が、一度死んでしまった主人公・孫悟空(そん・ごくう)への贖罪か、その息子である孫悟飯(そん・ごはん)を連れて、修行の旅に出るのと同じパターン!・笑――


 惑星・TM-27でヤプール軍に打ち勝ったふたりは、出来損ないの大鳩超獣ブラックピジョンの案内で、ヤプールの本拠地であるメビウス星へと向かった。


キャプション「メビウス星……… それは マイナス宇宙という この宇宙の空間のゆがみに存在する惑星である。特定の宇宙座標から超光速で突入して はじめて到達できる星なのだ……!」


 ナンと! メビウス星は『A』第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)に登場してウルトラ兄弟が十字架にかかった、そして同作の防衛組織・TACも超光速ミサイルNo.7で破壊しようとした「ゴルゴダ星」と同じマイナス宇宙にあるというのだ!
 原典ではTACの兵器開発研究員・梶(かじ)隊員が「マイナス宇宙」を「裏宇宙」とも云っていたので、「空間のゆがみ」ではなく「宇宙全体自体が二つ折りの布団(ふとん)のように湾曲しており、その布団を折ったウラ側にあたる部分がマイナス宇宙」であると捉えている筆者の私的見解とは異なるのだが(笑)。


 そして、メビウス星の内部はテープがネジれてオモテとウラが通じている「メビウスの輪」が大量にあるような「無限回廊」ともなっている。これも『A』第23話『逆転! ゾフィ只今参上』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061012/p1)に登場した、梶隊員が発明した「メビウスの輪」の原理と梶自身の「脳波」(!)などで「空間」自体を湾曲させて、我らが「3次元世界」のウラ側にある「異次元世界」――梶隊員が装着したヘッドギアから伸びるいくつかの電線経由の「脳波」も駆使するということは、半ばは「精神世界」でもある!?――へと局所的につなげるという、実は『A』には多数ある「SF」色豊かなアイテムのひとつである「異次元転移装置」(仮称・笑)へのオマージュでもあるのだろう!


 そのメビウス星の番人であった、『A』第25話『ピラミットはスフィンクスの巣だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061021/p1)にも登場した古代超獣スフィンクス(!)から、ヤプールに会うためには扉を開ける「3つの鍵」が必要だと告げられ、ブラックピジョンがその事実を伝えるためにウルトラの星へと向かう!


 激戦の末、全宇宙にいるヤプールの幹部超獣たち、殺し屋超獣バラバ・変身怪人アンチラ星人・天女超獣アプラサールから、「朱(あか)の鍵」・「蒼(あお)の鍵」・「翠(みどり)の鍵」」を奪い取った闘士ゼットン・フルアーマー闘士セブン・闘士ウルトラマンエースエースキラーR(リベンジャー)!
――ロボットであるエースキラーは頭部は残っていたのでボディーだけを新造して、ついでに名前も変えたのだ・笑――


 彼らが3つの鍵を携えて集合してくることを待っていたメフィラス大魔王・闘士ウルトラマンタロウともども、ヤプールが鎮座する“輝きの場”へと赴く!


 だが、その道中には超獣たちの怨霊がただよっていた。そして、その怨霊たちが結集していき…… 最強超獣ジャンボキングが現れた! しかも、ジャンボキングの主導権を握っていたのは、先に滅ぼした怪僧マザロンであったのだ!
――ジャンボキングは『A』第52話(最終回)『明日(あす)のエースは君だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)に登場した人間ふたりが獅子舞いのように着ぐるみに入る四つ足型の怪獣で、超獣たちの怨霊や空気中にただよう超獣の残骸分子などが集合した合体超獣であり、原典でもマザロン人がパーツの一部を占めていた存在である!――


 メフィラス大魔王は闘士セブンたちにジャンボキングを任せて、タロウとともに“輝きの場”へと急行する!




 月刊漫画誌における1年半もの長期連載となって、個人的にも内容的に最も充実していると思える「ヤプール編」である。
 この異次元人ヤプールとは、もちろん往年の『ウルトラマンA』シリーズ前半のレギュラー敵にして、その次作『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)でも前後編で復活して、はるか後年の『ウルトラマンメビウス』(06年)でも復活を果たし、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年)ではラスボスをも演じた存在である。


 ウルトラシリーズでは珍しい組織悪、通常回のゲスト怪獣や宇宙人を上回るシリーズを通じたラスボス的な悪役といったら、この異次元人ヤプールを想起するだろう。


 先に掲げた『フィギュア王』のインタビュー記事によると、原作者の瑳川竜のペンネームの由来は、長年のウルトラシリーズのマニアであればすぐにピンと来たと思うが、『ウルトラマンA』に登場する防衛組織・TAC(タック)の竜五郎(りゅう・ごろう)隊長を演じた瑳川哲朗(さがわ・てつろう)の名字と役名の名字をくっつけたものなのである。


 1964年生まれで8歳で『A』を視聴している瑳川竜は、それと同時に本邦初のマニア向け書籍である『ファンタスティックコレクションNo.2 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマン』(78年1月25日発行)や第2期ウルトラシリーズを否定的に論評した同『No.10 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマンPART2』(78年12月1日発行)の論述の直撃を受けた世代でもあるだろう。
 よって、当時の子供たちはともかく小学校高学年以上のマニア予備軍やすでにマニアであった中高生以上となっていた特撮マニアたちのほとんどと同様、『A』をはじめとする第2期ウルトラシリーズに対しては、子供時代の感慨とは真逆に、氏もおそらくは全否定の立場に洗脳されてしまっていたであろうことは容易に推測されうることではある……(多分・汗)


――『メビウス』の時期になると、立候補してエース客演編や異次元人ヤプール・ネタに臨んでいた脚本家・長谷川圭一なども、メインライターを務めた『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)放映開始当初の特撮雑誌『宇宙船』でのインタビューに答えて、『セブン』が一番好きであり、「第2期ウルトラも子供が観たら面白いのでしょうが」などと、婉曲的に第2期ウルトラシリーズのことを否定していたのだ・爆――


 しかし、当時の先進的な特撮マニアたちは、早くも80年代中盤から、家庭用ビデオデッキの急速な普及なども手伝って、当時はまだひんぱんにあった地上波での再放送などでの第2期ウルトラシリーズの再鑑賞などを通じて、その作品内容が第1期ウルトラシリーズと比しても決して卑下されるべきものではない。どころか、部分的には優れている点もあることに気付いて、同時多発的に草の根で再評価を進めてはじめていたのであった……
 本作『超闘士激伝』を拝読するにつけ、第2期ウルトラシリーズにおける小ネタの数々のみならず、特撮評論同人誌ではすでに研究・発掘が進んでいたのだが、商業誌レベルでは話題にすらされてもこなかった(汗)、第2期ウルトラの知られざる名ドラマ編や名テーマ編にも、瑳川竜氏は非常にくわしいと思われる。独自のご見識もお持ちとおぼしき瑳川竜氏もまた、独力で80年代のうちにはもう第2期ウルトラシリーズを再評価してみせる境地に早々に辿り着いていたのだろう。


 本作『激伝』においても、第1期ウルトラシリーズである初代『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』だけを持ち上げるようなことはしていない。
 かといって、その逆張りとして、第2期ウルトラシリーズ作品にして自身のペンネームの由来ともなった『ウルトラマンA』を特別に偏重するような、私情まるだしの不公平なことなども一切していない。
 どころか、第3期ウルトラシリーズであるテレビアニメ『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)の主人公ヒーロー・ウルトラマンジョーニアスまでをも登場させる!
 自身が成人して以降に誕生したウルトラ戦士たちであるから、子供時代に遭遇したウルトラマンたちと比すれば必然的に思い入れは薄いだろう、1990年代のウルトラマングレートウルトラマンパワードウルトラマンネオスウルトラセブン21(ツーワン)にまで、単なる個人の好悪や思い入れのごときでの手抜きを一切感じさせない!
 人間だから個人的な好悪はもちろんあるだろうが、私情には決して走らず、それを前面に押し出すようなことも決してしない、氏の実に公平・公正な人柄も偲ばれようというものだ!


 とはいえ、ヤプール編であることから『A』ネタは随所に盛り込まれてはいる。
 「第2回銀河最強武闘会」の主催者であるループ星人ヤンドは、「ドン(首領)・ヤプール」を逆さ読みにした名称だった(笑)。


 そのループ星人ヤンドが、武闘会の会場で自身の側近として連れていたのは、


・『A』第10話『決戦! エース対郷秀樹』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060709/p1)でヤプール配下の宇宙人として登場した変身怪人アンチラ星人!
・『A』第48話『ベロクロンの復讐』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070402/p1)に登場した「Q歯科医院」の女医に化けていた女ヤプール


 であり、これまた知性を持たない超獣ではなく、知性を持ったヤプール配下の宇宙人やヤプールの同族キャラを配しており、配下として登場させるキャラクターとしては実に納得ができる人選でもある!


 しかも、後者はエースの口を強引に開けて、「あ~~~ら!! こんなところに虫歯がっ!!」などという、原典作品へのオマージュでもあるギャグ描写のオマケつき!(笑)


 『A』第24話『見よ! 真夜中の大変身』に登場するマグマ超人マザロン人が、本作『激伝』では「怪僧」として描かれているのは、その原典の前編にあたる『A』第23話『逆転! ゾフィ只今参上』(このエピソードも大傑作!)にも登場した、通称・ヤプール老人の仮の姿が「怪僧」であったからだというのは、先にもふれた通りである。


 闘士ウルトラマンのスペシウム超光波に敗れた際には、


マザロン「……こりゃあ すごいぜ…… ホンモノだぁ……!! 気合いをいれないと殺されちゃうなぁ!! がんばらなくっちゃ! がんばらなくっちゃ!!」


 というセリフを吐いている。これもまた、その原典の『A』第24話でマザロン人が吐いていた「がんばらなくっちゃ、がんばらなくっちゃ!(喜悦)」の引用で、なおかつこのセリフは1972年放映当時の流行語でもあるのだ――71年放映の中外製薬「新グロモント」のCMや、幼児向け大人気番組『ママとあそぼう! ピンポンパン』(66~82年)のエンディング歌曲「ピンポンパン体操」の歌詞などで多用されていたフレーズ・笑――。


 そして、やはり埋ずもれてしまっている大名作である『A』第18話『鳩を返せ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060907/p1)に登場した大鳩超獣ブラックピジョンは、『激伝』でも物わかりの悪い失敗作の超獣として描かれている。


ヤプールコマンド(戦闘員)「光線を吐けっ!! 光線を吐くんだあっ!!!」


 と命令されたブラックピジョンは、惑星・TM-27の生物に対してではなくヤプールコマンド部隊に、しかも光線ではなく口から火炎を吐いてしまう(笑)。


 これだけでも一応のギャグとして機能しているのだが、実は『A』第18話ではヤプールから同様に、


「光線を吐くんだあっ!!」


 と命令されたブラックピジョンが、口から火炎を吐いてしまって、それまでイイ感じでテンション高く鑑賞ができていたのに、「アレ?」とズッコケてしまうような描写があったのだ(笑)。


 シナリオを無視した特撮現場でのアドリブ演出を、本編監督なりアフレコ現場へフィードバックするような横の連携が、あの時代はラフな体制ゆえにできていなかったためだろう(爆)。


 大鳩超獣に改造される前の鳩の飼い主・三郎少年が吹いている鳩笛に反応してしまい、時折りヤプールの命令を聞かなくなるという原典での設定にも則して、『激伝』でも出来損いの超獣として描かれており、それを知っていれば二重の意味で笑えるギャグなのである。


 赤星政尚先生が『激伝』を評していわく、“わかる奴だけ大喜び”的なツボは、当の赤星政尚自身がメインライターを務めた昭和ウルトラの25年ぶりの正統続編として描かれた『ウルトラマンメビウス』でも、一部のマニアたちからそれを理由とする批判を受けていたように、「それを知らなきゃ楽しめない!」という作品の間口が狭くなる危険性もあるので、やりようによってはたしかに手放しでは絶賛できるものではない。


 しかし、その元ネタがメインターゲットである90年代や00年代の子供たちに理解ができなかったとしても、作品の本スジのストーリーの理解に支障が生じない、独り善がりなものでなければ、そのようなネタの挿入もまったく問題はないだろう!


 それで云うならば、メフィラス大魔王の配下である鋼魔四天王は、メフィラス星人の初登場回である初代『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』で、バルタン星人3代目・ザラブ星人2代目・ケムール人2代目を配下に従えていた描写の踏襲として、


・闘士バルタン星人
・闘士ザラブ星人
・闘士ケムール人


 を登場させている。しかし、それだけではなく、


・闘士ダダ


 まで連れてきているのだ! このダダは、初代『ウルトラマン』放映当時に怪奇漫画家としてすでに名をあげていた楳図かずおが『週刊少年マガジン』(講談社)に連載していた同作のコミカライズ「メフィラス星人の巻」で、テレビ本編に登場していた3大宇宙人に加えて、漫画独自に三面怪人ダダまで配下としていたことに対するオマージュでもあるのだ(笑)。
 同コミカライズは70年代末期の第3次怪獣ブームに便乗して78年に再版もされたことから、当時はビニールカバーがかかっていなかった漫画の単行本は立ち読みしほうだいでもあったから、第3期ウルトラブーム世代の子供たちにもけっこう知られていた事実である。以降も何度も再版されてきたことから、年長マニアであれば即座に鋼魔四天王にダダも含めていた意味までわかってニヤリとしたことだろう。


 闘士エースとエースキラーRがその両腕をL字型と鏡文字の逆L字型に構えて、伸ばした上腕を接したかたちで放った「W(ダブル)メタリウム光線」もそうである。
 これはエースキラーがウルトラ4兄弟の能力のみならず、原典ではエースキラーが4兄弟の光線技を使って爆砕してしまった、ウルトラマンエースの能力を擬似的にコピーしたエースロボットの能力をも併せ持つことで、今回のエースキラーはウルトラ4兄弟ならぬ5兄弟の能力を持っていることから、エースの必殺技であるメタリウム光線も放てるのだ! ということを、クドクドと説明しなくても瞬時に年長マニアたちに理解させているのだ。そして、そのメタリウム光線をエースとエースキラーが当時に合体光線として放ってみせる快感!
 内山まもる大先生が小学館の学習雑誌『小学三年生』74年9月号の『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)のコミカライズの一編『ウルトラキラーゴルゴ』の回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210124/p1)において、この漫画オリジナルの展開である直前作のヒーロー・ウルトラマンタロウとの客演編を描いている。ここではレオとタロウがその両腕を接しあって「ダブル・ストリウム光線」を放つという燃える描写がある。年長マニアであれば「Wメタリウム光線」には、この「Wストリウム光線」へのオマージュまで含まれていることは一目瞭然でもあるだろう!


 そして、メフィラス大魔王・フルアーマー闘士セブン・闘士エース・闘士ゼットンたちの最後のエネルギーを充填した超闘士タロウが、ヤプールの故郷である「異次元世界」こと「ヤプール次元」と、「3次元世界」であるこの「宇宙」との狭間にある「門」でもある「テリブル・ゲート」に放つことで、ふたつの宇宙を同時に救ってみせる奇跡の光線がまた、あのコスモミラクル光線である!!
 この光線技は、映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹富士)で、ウルトラ5兄弟と合体して「超(スーパー)ウルトラマン」となったタロウの超必殺技なのだ! 84年当時としてもやや安直な名前の光線ではあり、それまでの光線の名称であったスペシウムやエメリウムといった元素チックなネーミング・ルールからは外れている違和感も少々あったのは事実だ(笑)。しかし、「宇宙の奇跡」を起こしてみせる光線としては、そのネーミングが幸いして、この場面ではこれほどふさわしいものはない!


 要は流用の仕方や、曲解に近いところはあってもアリには思える巧妙にズラしたアレンジが実にすばらしくて、「内輪ウケ」に陥るどころか、むしろ「バトル」や「ドラマ」の盛り上げにおおいに貢献しているくらいなのである!


 子供のころは気にもとめていなかったが、長じてから『激伝』を再読してみたら、膨大な小ネタの元ネタがわかってさらに楽しめた! などという感想などは、2ちゃんねるの『ウルトラマン超闘士激伝』スレッドなどを見ると当然ながらにけっこうある。『激伝』もまたテレビのウルトラシリーズとも同様、一粒で二度オイシい、幼少時とは異なる別の読み方も可能としている、一応の知的(笑)な作品でもあったのだ。



Q:ウルトラ作品の中で、もっとも好きなキャラクターは何ですか?
A:ゾフィーが好きでした。M87光線、あれだけ覚えているんです。マンガで読んで強そうだったんですね。

円谷プロダクション会報『TFC.15』(09年9月号)『ウルトラマンメビウス外伝 ゴーストリバース』(バンダイビジュアル・09年11月25日&12月22日)監督・横山誠インタビュー)



 オリジナリビデオ作品『ウルトラマンメビウス外伝 ゴーストリバース』(09年)は、2009年度の児童誌『てれびくん』や『テレビマガジン』などでの展開とも共通した、製作タイミング的には後付けなのだが、09年末に公開される映画『ウルトラ銀河伝説』の前日談・つなぎとしての意味も兼ねた、その映画同様にグリーンバックで撮影した背景を、高精細なCG映像による宇宙や惑星の地面に置き換えたアクション主体の仮面劇の佳作であった。
――アナログ特撮ではよくあった、背景とキャラクターの境目に、手作業でマスクを切ったためのズレのようなノイズがチラチラと見えていたような気もしたけど、作品自体は面白かったので見逃そう!?・笑――


 『ウルトラ銀河伝説』の監督を務めた坂本浩一にスカウトされて、坂本同様にアメリカの『パワーレンジャー』シリーズ(93年~・)のスタントマン・アクション監督・監督を務めてきた1967年生まれの横山氏の世代だと、ここで云っている「マンガ」とはもちろん90年代の『超闘士激伝』ではなく、ゾフィーが主人公であったりM87光線を披露していた内山まもるの70年代の大人気漫画『ザ・ウルトラマン』シリーズに相違はない。
 「ウルトラへの愛が足りない僕」とインタビューで自称する氏でさえ、M87光線が強く印象に残っているくらいなのだから、子供向け漫画だってあなどれないのである。実作品の映像インパクト以上に……


 実際に『激伝』を『コミックボンボン』で小学生時代に読んでいた世代は、すぐあとの90年代後半の『ウルトラマンティガ』にはじまる平成ウルトラ3部作を幼児期に鑑賞して育った世代以上に、当然ながら昭和のウルトラ兄弟やウルトラの星の歴史やその組織、昭和のウルトラ怪獣たちや、『激伝』のラスボスともなったウルトラ一族との3万年にもわたる宿敵・エンペラ星人のことまでくわしいので、その影響は実に大なるものがあるのだ。



「連載が始まる前に、瑳川先生から「マンやセブン達には絶対にギャグをさせないで下さい」と釘をさされていた。当時しょーもないギャグものしか描いた事がなかったので、懸念なさったのだ。でも、「A(エース)はギャグをしてもいいですよ」と、お許しをいただいたので自由に描かせてもらった。もっとも自由すぎて、今見るとずい分暴走しているのだが…」

(復刻版『ウルトラマン超闘士激伝』第3巻カバー内表紙「激伝ひみつメモ」栗原仁)



「あんにゃろう! ブン殴ってやる!!」
「なんでい! テンペラー星人の一匹や二匹!」(笑)


 名声優・納谷悟朗(なや・ごろう)の声でしゃべる神秘的な宇宙人としてのウルトラマンエースではなく、ウルトラ5兄弟の5番目としてのエースは、地球でエースと合体したチンピラ(笑)もとい北斗星児(ほくと・せいじ)隊員の性格と近しい、ウルトラ一族としては未熟で熱血な「弟キャラ」としての印象を我々は強く持っている。
 『ウルトラマンタロウ』第34話『ウルトラ6兄弟最後の日!』における、テンペラー星人(の影武者)を倒して増長したタロウこと東光太郎(ひがし・こうたろう)に対して、チンピラ北斗(爆)ことエースがその性格を如実に表現している先に挙げた名セリフ(笑)が、それをウラ打ちしてくれている。
 まぁ北斗隊員みたいな、未熟で失敗ばかりしても能動的にストーリーを駆動していくようなキャラクターは筆者も大好きだし、以降のアニメや特撮作品では北斗のような性格タイプが主流となっていくのだが……


 1960年代に放映された初代マンやセブンは、それまでのヒーローもの全般にいえることだが、ある程度の完成された人格である禁欲的な「大人」のキャラである。
 70年代に入ると、世の中が豊かとなり、学校を卒業すると「子供」がすぐに「大人」の社会に組み込まれてしまっていたそれまでの時代とは異なってきて、「子供」と「大人」の中間である「若者」のままで試行錯誤ができるモラトリアム期間が延長されてくることで、「若者」という在り方が社会一般でもクローズアップされるようになる。
 こういった「若者」がジャンル作品で急速に勃興しだしたのが『A』が放映されていた1972年であった。同時多発的にチンピラ北斗(笑)をはじめとして、永井豪原作のテレビアニメ『デビルマン』の高校生主人公・不動明(ふどう・あきら)や人間搭乗型の巨大ロボットアニメの祖『マジンガーZ(ゼット)』の高校生主人公・兜甲児(かぶと・こうじ)、名作刑事ドラマ『太陽にほえろ!』でショーケンこと荻原健一(はぎはら・けんいち)が演じていた新人刑事・マカロニといった、少々不良チックで未熟な発展途上の「若者」像が遂にドラマの主人公としても成立するようになった大地殻変動があったのだ。


 よって、マジメな初代マン(ハヤタ隊員)やセブン(モロボシ・ダン隊員)がギャグを演じることには違和感があるだろう。ウルトラ兄弟の4番目である「帰ってきたウルトラマン」ことウルトラマンジャック(郷秀樹(ごう・ひでき)隊員)は発展途上の若者像ではあったけど、そこまではまだ崩れてはいない二枚目である。飛んでウルトラ兄弟の6番目・ウルトラマンタロウ(東光太郎)は未熟な若者でもお上品なお坊ちゃまキャラだから、あまりに崩して描いてしまうとこれまた少々違和感が生じてしまう。
 そうなると、本作におけるコミックリリーフを担当する役回りは、チンピラ北斗もといエースこそが適任であることは、満場の一致となる実に的確で納得ができる采配だっただろう(笑)。


 エースは『激伝』では、鳥のクチバシのようなかたちで口を大きく開いて驚いてみせたり(笑)、宿敵であったハズの異次元超人エースキラーとの掛け合い漫才を楽しんでいるかのようなキャラクターとなって、「漫画」本来の在り方でもある楽しいギャグ描写を一手に引き受けており、場面をなごませてもくれている。


 しかし一方で、ヤプール編の『最強闘士集結!!』では、「メビウスの3つの鍵」をめぐっての闘士エースの以下のようなエピソードも、『激伝』ではすっかり相棒と化してしまったエースキラーRによって、回想のかたちで語られているのである。
――本来は回想ではなく『激伝』本編でストーリーをつむぎたかったのだろうが、子供向けバトル漫画としてのバランスを考えれば、悲劇臭のするエピソードは軽く済ませるたかちで処置するのも仕方がないだろう――


エースキラー
「……オレたちのようなロボットでもないかぎりは…… だれでもみんな異性を愛したりするんだろう……?
 エースにとって…… アプラサールとはそういう女性だった……
 そして、オレたち全員を守るために死んだ……!!
 ……彼女は最初から超獣ではなかった。アプラサという少女がその能力をヤプールにねらわれ、改造されてしまった姿だったんだ……
 彼女はヒール星の避難民全員とそれを守っているオレやG(グレート) エースらを全滅させる使命をもっていた……
 だがエースと出会って…… 最後にはヤプール軍をうらぎった……!!」


アプラサ(回想)「……さよならエース…… この鍵で…… 宇宙に…… 平和を……」


――このアプラサの元ネタは、もちろん『A』第21話『天女の幻を見た!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061009/p1)に登場した乙女座の精霊・天女アプラサで、異次元人ヤプールによる異次元エネルギーで天女超獣アプラサールと化したゲストキャラクターの引用である。ただし、テレビ本編でも最後は爆発した乙女座を離れて白鳥座へと旅立っていったので、その彼女の成れの果てがやはり結局は死んでしまった……という解釈はやや問題があるかもしれないのだが、ギリギリでアリかもしれない――


 奇しくも、同じく講談社『月刊マガジンZ(ゼット)』連載の漫画で、こちらはウルトラ兄弟たちの前日談を描いている『ウルトラマン STORY 0(ストーリー・ゼロ)』(05年~)でも、ウルトラマンエースの主役回では淡い恋愛ネタのエピソードが描かれていた。テレビ本編でもシリーズ前半では男女合体変身だったエースには、変身前の北斗隊員と南夕子隊員にやや一方通行ではあっても(笑)そのような淡い恋情のニュアンスがあったので、そうした男女間での恋愛描写が比較的に似合うというイメージもあるのだろう。
 「ギャグ」と「恋愛」とは「水」と「油」ではあるのだが、上手くやれば「ギャップ萌え」や「悲劇萌え」というものに転化することもできる。やや軽率そうで異性に対して軽口なども叩きそうだから、そこから男女交際もはじまりそうなイメージもどこかで持っていた『激伝』におけるエースだからこそ、異性との浮いた話が唐突に浮上しきてもアリエそうなエピソードに思えてくるのだろう。



 そして、あのウルトラの父も、『A』第38話『復活! ウルトラの父』を元ネタにして、サンタクロースの扮装をしたミスターサンタ(笑)として「第2回銀河最強武闘会」に出場してしまっている!


ノタニー博士「あんなバカ丸出しの道化者(どうけもの)が これ以上マグレで勝ちぬけるわけがないだろ!?」


 ウルトラシリーズの元祖であり変身ヒーローが登場しない『ウルトラQ』(66年)に登場した、イレギュラー登場人物であった一の谷(いちのたに)博士もどき(笑)である、武闘会の実況解説担当であるノタニー博士がこのように解説していたのには笑ってしまう。
 しかし『A』第38話では、ウルトラの父が変身していた地球人の姿である、名優・玉川伊佐男が演じていたサンタクロースもけっこうお茶目だったから、ウルトラの父の素の性格も厳めしいだけではなく、愛嬌・包容力・茶目っ気もあるキャラクターであっても不思議じゃない!?



 ウルトラマンメビウスの教官を務めていたという新設定以降、最近では頼もしいキャラとして定着している感のあるウルトラマンタロウだが、それ以前は『ウルトラマンタロウ』放映当時の設定をひきずり、「末っ子の甘えん坊」というイメージが根強かったものだ。
 90年代に描かれた『激伝』でもそれは当然ながら踏襲されており、「心優しい戦士」であることが強調されている。ヤプール編の終盤である『宇宙最大の危機』には、ヤプールとの以下のような会話がある。


ハイパーヤプール「……助けあい いたわりあう精神…… そんなキレイごとが!! きさまらの宇宙では尊重されたり賛美されたりしているのかね……? フフフッ……!!」
闘士タロウ「あっ…… あたりまえだっ!!! 仲間どうし助けあったり 傷ついたものや弱いものをいたわったりするのはあたりまえのことだっ!!!」


 悪と戦う動機にある意味ではキレイごとでもある道徳的・人道的な理由を主人公キャラが戦闘中に掲げてくるあたりは、まさに『週刊少年ジャンプ』の漫画的な作劇でもある。そして、そのような理想主義的なキレイごとを吐かせるには、お上品なお坊ちゃまキャラであるタロウにこそふさわしいだろう。


 そして『闘士ウルトラマン復活!?』では、力尽きた闘士タロウを勇気づけるために、霊体だけの存在となっている闘士ウルトラマンが、ウルトラマンキングの力を借りて、霊界から自身のビジョンをタロウの心に送っている。


闘士マン「……タロウよ もし私が…… 伝説の超闘士と呼ばれるに値する男だったとしたら…… 私の武器はたった一つしかない!! それは黄金に輝くオーラでも底なしのパワーでもない!! みんなの宇宙をどんなことがあっても守りぬきたいという使命感……! ウルトラ魂だっ!!!」


 09年11月15日にTBS系で放送された『オレたち! クイズMAN(マン)』では、格闘家の高田延彦(たかだ・のぶひこ)が、「ウルトラマンから学ぶ男の生き様(ざま)クイズ」というのを出題していた。
 そして、『タロウ』第43話『怪獣を塩漬にしろ!』に登場した食いしん坊怪獣モットクレロンや、第48話『日本の童謡から 怪獣ひなまつり』に登場した酔っ払い怪獣ベロンを、タロウが倒さずに宇宙へ返した件を「男の優しさ」として紹介していた。
 この際に、解答者のマリエや里田まい、観客の女性たちからは一斉に「タロウやさし~い!」という歓喜の声があがっていたものだ。


――アッ、放送作家がさも高田延彦が提示した例題のように執筆していて、マリエや里田まいや観客の女性たちのリアクションも含めて、放送台本にも書かれていた仕込みの演出でしたかネ?・笑――


 まぁこの論法で行くと、怪獣を倒さずに保護に務めていた『ウルトラマンコスモス』(01年)こそがウルトラシリーズ最高傑作となってしまって、憎っくき悪をやっつけるアクションのカタルシスを主眼とする変身ヒーローものの本質を否定することにもなってしまうので、それもまた痛し痒しではある。
 しかし、戦闘一本槍だけでもジェノサイド(大量虐殺)の思想に通じていくところはたしかにあるので、時にはこのような「異文化との共生」を――厳密には共存もできないので「棲み分け」としての「共生」なのだけど・汗――、この作品(やその作り手たち)は「単なる殺し合いの戦い」ばかりを描いているばかりではない! とするエクスキューズのための変化球を提示するのも、広い意味での「ウルトラ魂」ではあるのだろう――ただし、勧善懲悪の娯楽活劇作品としては本道・王道ではないとも思うけど――。


 よって、ヤプール編の最終回である『ヤプール大戦終結!!』においては、原典の『タロウ』でも見られたような「男の優しさ」は、以下のような描写として昇華されている。


闘士タロウ「……みんなの宇宙を守りぬきたいというウルトラ魂こそが超闘士の最大の武器だって 闘士マンはいっていた…… その魂でぼくらの宇宙は救えた……! だから あと少し…… ほんの少しだけ残っている ぼくの魂の炎をっ…… 違う宇宙の人にも…… わけてあげたいんだ……!!」


 そして闘士タロウは、ヤプールのみならず、崩壊の危機にあった「違う宇宙」である「ヤプールの宇宙」=「ヤプール次元」の世界をも救ったのである!!


闘士セブン「奇妙な大団円だったな……」


 その後、異次元人が襲撃してくることは二度となかったという……



 そして3年後、「第3回銀河最強武闘会」に参加するために、宇宙中を修行の旅に回っていたタロウが帰ってくる場面で「ヤプール編」は幕となるのであった。



――ここでタロウが乗船していた、その姿は地球の大型客船のデフォルメである船舶の船長さんが、『ウルトラマンレオ』第28話『日本名作民話シリーズ! 帰ってきたひげ船長! 浦島太郎より』に登場した「ひげ船長」ではなく(笑)、同話に登場した海棲人パラダイ星人ふたりが合体して誕生する星獣キングパラダイ! しかも彼が「ひげ船長」のようにパイプ煙草をくゆらせている二重のダブらせ描写は、それこそ“わかる奴だけ大喜び!”だったりする!


「……船長~~っ~!! ありがとうございましーーーー!!」


 寝袋かサンドバックみたいなバッグを担いでいるタロウによるお礼のセリフが入ってくる一連のシーンも、『タロウ』第1話『ウルトラの母は太陽のように』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)冒頭における、主人公青年・東光太郎が、乗船させてもらったタンカー・日々丸(にちにちまる)の白鳥(しらとり)船長に放ったセリフに対するオマージュである・笑――



 『ウルトラセブン』(67年)~『ウルトラマンA』(72年)の脚本を執筆した高名な脚本家・市川森一(いちかわ・しんいち)先生が、オウム真理教地下鉄サリン事件を引き起こした1995年ごろに、


ウルトラマンから何かを学ぼうとするガキなんてロクなもんじゃない」


 などと発言していたことがあった(爆)。


 当時の特撮マニア諸氏は一斉に大反発をしたものであったが、個人的には氏の意図ともまた別に、一理はある発言ではないか? とも思えるのだ。


 今でも大局としてはそうなのだろうが、娯楽活劇作品の本質・エッセンスだともいえる「アクションのカタルシス」や「ヒロイズムの高揚」などといった言説は、世間でも特撮マニア間でもあまり一般化はしていない(汗)。
 仮に子供たちも大人たちもイケメン俳優目当ての女性であっても、実はそのアクション場面にこそ高揚を覚えていたのだとしても、「ウルトラマンから正義を学びました!」とか、あるいはその逆に「正義の絶対性を疑いました!」などといった「道徳的なテーゼ」や「社会派的なテーマ」で、ウルトラシリーズを持ち上げていたり、いつまでも子供向け番組に執着している自分自身を自己正当化しようとしてやっきになっている(笑)。


 たしかにウルトラシリーズには、「道徳的なテーゼ」や「社会派的なテーマ」による秀逸なエピソードもあった。「アンチテーゼ編」やまさに良質な「SF」としか云いようがないエピソードもあった。その存在も否定してはならないだろう。
 しかし、ウルトラシリーズにかぎらず、この手の戦う戦闘ヒーローものの本質や、ジャンルのアイデンティティーとは、ぶっちゃけ「アクションのカタルシス」や「ヒロイズムの高揚」といったものではなかろうか? 我々が後世に伝えなければならない「ウルトラ魂」とは、そのようなものではなかろうか!?


 『週刊少年ジャンプ』に連載されてきた『キン肉マン』や『北斗の拳』や『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢(セイント・セイヤ)』や『幽☆遊☆白書』といった、かつて少年たちをおおいに熱狂させて、現在でも根強いファンがたくさんいる作品群は、それは時にはグッと来る道徳的なセリフやメッセージも込められてはいたのだろう。
 しかし基本的にはそれらはエクスキューズであって、これらの作品もまた「格闘場面」、そして「善悪攻防のカタルシス」を描いていただけではなかったか!? それらを時代の風潮や流行に合わせて、意匠やパッケージだけを変えていたのではなかったか!? そこの肝どころをこそ押さえるべきだとも思うのだ。


 しかし、たしかに「バトル」の描写だけでも、やや単調になってきて飽きてしまうものかもしれない。80年代のスーパー戦隊シリーズメタルヒーローシリーズのように前後編やシリーズのタテ糸もさしてなく、1話完結のルーティンで極度にパターン化された戦闘シーンが延々と毎回毎回続いていくようでは、アクションの高揚感も薄れてしまうだろうし、それでは子供たちが卒業して『週刊少年ジャンプ』に走ってしまうのも仕方がないことだっただろう。
 よって、シリーズを貫くタテ糸なども必要だっただろうし、バリエーションや変化球に満ち満ちたアクション演出も必要だ。そして、「バトル」を繰り広げる登場人物たちである「キャラクター」の性格設定や、その魅惑的でドラマチックな出自設定、そこに起因する「戦う動機」といった「行動原理」もまた実に重要なものではあるのだ。


 その次に重要なことは、これらの「キャラクター」たちを手頃なサイズの一種の「形見」として手許に置いておいて、それらを眺めまわしていたいというような欲望を喚起することである(笑)。それはもちろん連載漫画をまとめた単行本であったり、人形や玩具やゲームであったりもする。ついでに云うなら、手足が稼働したり鎧や武器が着脱可能なプレイバリューの高いものの方が望ましい(爆)。


 良くも悪くも関連グッズの収集や、ジャンク知識の収集。それこそが商業的にも短期的には重要だ。そして、子供たちや特撮マニアたちを中長期にわたって空想の世界で遊ばせて、作品自体や作品の広大な「世界観」や長大な「歴史観」それ自体に執着させていくこともまた、実に重要なポイントでもあると思うのだ!


 70年代末期の第3次怪獣ブームの時代に、児童漫画誌コロコロコミック』に掲載されていたウルトラ漫画をむさぼり読んでいた小学生たちは、駄菓子屋に足繁く通って、店先に置かれていた20円のガシャポン自販機――当時はガチャガチャと呼称――でポピー(現・バンダイ)のウルトラ怪獣消しゴムを、店内では山勝『ウルトラマン ペーパーコレクション』をはじめとするカード・ブロマイドの類いを購入してダブりカードは友人たちと交換することで、クラス中の男児がコレクションに躍起になっていたものだ。


 このような現象もまた、流行の規模は70年代と比すればはるかに小さかっただろうが(汗)、『超闘士激伝』連載時にはある程度までは再現がされていたようだ。
 90年代の連載当時に発行された『ボンボンコミックス』レーベルの単行本の巻末には、『激熱!! 超闘士道場 出張版』と称して、様々な関連グッズを紹介したページがあった。
 カードからモンスターを召喚しあってバトルする『遊☆戯☆王』(96年・98年にテレビアニメ化)よりも前に、この時点ですでに単に登場キャラクターの絵柄のみのカードではなく、スーパーバトルカードダスとして、パワーレベル・バトルゲージ・軍団マークといったものが付与されて、対戦ゲームとして遊べる機能が存在するカードが発売されていたのである!
 そして、任天堂ゲームボーイ専用の『激伝』のソフトも94年夏に発売されていた。さらには、かの『HGシリーズ』よりも以前の93年よりバンダイ・ベンダー事業部から発売が開始されていた『ガシャポン超闘士激伝』はパート14(プラス『ガシャポン超闘士鎧伝(ちょうとうし・がいでん)』2シリーズ)を数えるほどの人気シリーズとなっていた。
 100円ガシャポンの中では、『騎士ガンダム』や『ドラゴンボール』に次ぐ売上を誇っていたようであり、瞬間最大風速的にはトップをとった月もあったという!



 思えば07年の年末から放映されたテレビシリーズ『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』も、07年5月からバンダイが稼働させたアーケード向けカードゲーム機『大怪獣バトル ウルトラモンスターズ』、さらにはそれで遊べる「応援カード」が付属したバンダイウルトラ怪獣シリーズとの連動企画であったからこそ、視聴が限られてしまうBS放送・BS11(ビーエス・イレブン)での放送であったのにもかかわらず、なんとか人気や知名度は相応に確保ができていたのだろう。


 『ウルトラマンメビウス』の放映が終了した翌年度以降も、


・07年にはバンダイから発売されて、ゲームのプレイヤーが『ウルトラマンメビウス』の防衛組織・GUYS(ガイズ)に入隊して、怪獣撃滅に参加できる仕様であった玩具『DX(デラックス)ウルトラコクピット』(別売専用ソフトも都合3巻発売)
・08年にも小学館の『てれびくん』と講談社の『テレビマガジン』でのカラーグラビア記事連載や連載漫画(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210117/p1)、新作オリジナルビデオも発売された『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』


 などなど、様々な媒体での『メビウス』の続編的な展開が、現時点での最新テレビシリーズである『ウルトラマンメビウス』を今日まで延命させて、2010年時点でのウルトラマンといえばメビウスを指すくらいの人気となっている。
 しかし、そうした商業展開やメディアミックスの手法の種(たね)は、『超闘士激伝』が連載されていた90年代前半の時点ですでに蒔(ま)かれてはいたのである。


第3部『ゴーデス編』

ウルトラマン超闘士激伝 3

*95年11月号『謎の戦士ウルトラマンパワード
*95年12月号『帰ってきた闘士(おとこ)』
*96年1月号『仮面騎士の正体』
*96年2月号『宇宙の悪魔ゴーデス』
*96年3月号『友情の証』
*96年4月号『ゴーデス五人衆』
*96年5月号『邪悪な波動』
*96年6月号『魔神(ましん)復活!!』
*96年7月号『パワードの秘策』
*96年8月号『究極魔神シーダ誕生!!』
*96年9月号『ウルトラの星の秘宝』
*96年10月号『銀河の奇跡』


 この「ゴーデス編」における「ゴーデス」とは、1990年に登場した日豪合作オリジナルビデオ作品『ウルトラマンG(グレート)』全13話のシリーズ前半を通じて登場した宿敵存在である。
 キャラクターとしては、1993年に登場した日米合作オリジナルビデオ作品『ウルトラマンパワード』のパワードを新たに登場させて、このパワードとグレートを今度は新たな主人公格として活躍させている。


 「第3回銀河最強武闘会」が開催され、総勢600名によるバトルロイヤルの末、ベスト16が勝ち残る。
 その中には自分の精神を極限まで鍛え上げ、「肉体の強さ」のみならず、「魂の強さ」まで追求している新たな武闘家一派・パワード流派のウルトラマンパワード・パワードレッドキング・パワードバルタン星人のほか、正体不明の仮面騎士、そして意外にもウルトラマンキングの姿があった!


――パワードレッドキングやパワードバルタン星人などは、『ウルトラマンパワード』に登場した初代『ウルトラマン』の人気怪獣たちのリメイクである。ネタ元の怪獣たちと区別するために、劇中ではそう呼ばれないものの「パワード」を冠した怪獣たちが、ここではパワード流派の門下生たちとして登場した! なにかしらの共通項がひとつでもあると、不思議と違和感も生じないどころか、むしろパワードの門下に怪獣たちがいるならば、そうあってしかるべき! といった感も醸せている!・笑――


 武闘会に参加したウルトラマンキングは、メフィラス大魔王と闘士タロウにだけはその正体を明かした。それは3年を経て、新たな肉体を得て復活した闘士ウルトラマンであったのだ!!
 闘士マンはキング自身から今大会に正体を隠して参加している悪魔の存在を教えられて、それを見つけ出して倒すという使命を受けてきたのである!


 キングのにらんだ通り、仮面騎士の正体は宇宙の悪魔・ゴーデスであった! そして原典『ウルトラマンG』での暗躍と同様に、ゴーデス細胞をまき散らして武闘会に参戦した戦士たちから大量のエネルギーを吸い尽くしていく!


 そのとき、ゴーデスが呼び寄せた暗雲を割って、天空から「太陽神」が精錬してキングと闘士マンが設計した黄金色の「新装鉄鋼」(ニューメタルブレスト)! そして、王冠状の「ウルトラクラウン」が届けられた!


 初代マンはそれらを装着すると、頭部にハメたウルトラクラウンの突起が、ウルトラの父ウルトラマンタロウのような両ヅノと化した「超闘士ウルトラマン」に転生した!
 この人工的な両ツノは、父やタロウのウルトラホーンと同じ働きをして、制限時間なく「超闘士」として戦い続けることができるというのだ!


 同じく両ヅノをやや巨大化させて超闘士となったタロウは、超闘士マンとその両掌底から「W(ダブル)オーラ光線」をゴーデスに放った!!
 しかし、その攻撃によって弾き飛ばされたゴーデスのマントの下にはウルトラマングレートの下半身が! ゴーデスはウルトラマングレートの体を乗っ取っていたのだ!


 しかも、ゴーデスはグレートのことを「ゴーデスハンターだった」と発言した! 初代マンがキングからも聞かされていたふたりの「ゴーデスハンター」とは、このグレートとパワードであったのだ!


 ひとまず退散したゴーデスは、


・宇宙怪獣ベムラー
・原始地底人キングボックル
・緑色宇宙人テロリスト星人
・奇怪宇宙人ツルク星人
・マグマ怪獣ゴラ


 彼らに邪生鋼(エビルブレスト)を装着させて、ゴーデス5人衆と化さしめ、宇宙を地獄にするために出陣させる!


 しかし地球人やウルトラ一族も手をこまねいているだけではない。ノタニー博士はゴーデス細胞を無効化できる新合金を発明した!


 防衛組織・UGMの戦闘機・スカイハイヤーとエイティ腹部中央の四芒星の意匠を模した「重装鉄鋼」(ダブルブレスト)を装備したウルトラマンエイティは、闘士エイティとして!
 同じく防衛組織・科学警備隊の大型戦闘機・スーパーマードックとジョーニアスの額や胸中央のカラータイマーの五芒星の意匠をまとったウルトラマンジョーニアスも、闘士ジョーニアスとして参戦!


 U40最強の戦士・ジョーニアスは、M78星雲のウルトラ兄弟の長男にして最強と謳われたゾフィー兄さんの強さと双璧! と語られているのも、よくわかっていらっしゃる。


 闘士エイティのスーパーバックルビームと、闘士ジョーニアスのスーパーロッキングスパーク――オオッ、身長938メートルの超巨大怪獣バゴンを倒した超必殺光線のスーパー版!――の合体光線で、ゴーデス5人衆のひとり・ゴアを倒すのであった!


 戦いが終わって、ガッシリと握手を交わすエイティとジョーニアス! 本来は世界観を異にしている第3期ウルトラシリーズの2大主人公ヒーローによる握手なのであった……(涙)



 邪悪な波動を感じる超能力を持っているピッコロ王子の手助けも受けて、超闘士タロウはゴーデスの本拠地を突きとめる。しかし、逆に捕らえられて、ゴーデスにそのエネルギーを与えられて超巨大怪獣・海魔神コダラーが復活してしまう!
 超闘士マンや闘士ジョーニアス、闘士エイティ、さらにメフィラス大魔王が呼び寄せた鋼魔四天王らが束になってかかっても敵わず、遂には対となる超巨大怪獣・天魔神シラリーまでもが復活してしまった!
 パワードはその心をミガくことで備わった強烈な精神感応波で、コダラーとシラリーを互いに戦わせるように仕向けた!


――コダラーとシラリーもまた『ウルトラマンG』最終回の前後編に登場した、単なる生物ではなく大自然・地球の自浄作用のごとき強敵の印象が強い怪獣であり、『激伝』でもこの大宇宙自体を無に帰す(!)というラスボス級の怪獣として割り振られているのは実にピッタリでもある!――


 ウルトラの星の王女である女ウルトラマンユリアンhttp://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110219/p1)とウルトラ一族の看護組織である銀十字軍の女性ウルトラ族たち(!)も駆けつけて、ウルトラ戦士たちは撤退する……


 超巨大怪獣同士の激闘になす術もなく、ウルトラの星に帰って状況を見守るしかないウルトラ戦士たちだったが、遂にコダラーとシラリーが相討ちとなった!
 ……戦いは終わったかに見えた。しかし、コダラーとシラリーの2大魔神が合体して超巨大怪獣・究極魔神シーダが誕生!


 現役のウルトラ戦士たちばかりでなく、ウルトラの星の最大の秘宝である鍵型の大型アイテム・ウルトラキー(!)を携えてウルトラの父も参戦してくる!


 だが、シーダの衝撃波で吹っ飛ばされるウルトラの父


 代わりに闘士セブンとメフィラス大魔王のふたりで、ウルトラキーの引き金部分を引いて、かつて悪魔の星・デモス一等星を一撃で破壊したという超光線が発射される!!
――悪魔の星・デモス一等星うんぬんというスケールの大きな逸話もまた、『ウルトラマンレオ』第38話『レオ兄弟対ウルトラ兄弟』でも実際に言及されて映像化もされていた、ウルトラシリーズの史実を踏まえたものである!――


 それでも魔神シーダはすみやかに体を再生させていく…… シーダに敗れた初代マンも大地に伏せたままであった。


 しかし、死の床の三途の川で初代マンは、同じく生死の境をさまよっていたタロウ・グレート・パワードから彼らの最後のエネルギーを授与された!


 立ち上がった初代マンの胸の中央にあるカラータイマーの円周部分が、斜め左上と斜め右上、そして真下の下方の三方へと細く鋭く長々と伸びていく!!


 それは20万歳以上の年齢を誇るウルトラマンキングでも実際にははじめて見たという、銀河永遠の生命「デルタスター」のシンボルでもあった!!


初代マン「スペシウム 超光波!!!!」


 突き出した右腕から凄まじい奔流がほとばしる!!!


 大爆発が生じる!! シーダはスペシウム超光波によって遂にトドメを刺されたのであった!




 『ボンボンコミックス』レーベルの単行本では未収録に終わっていた「ゴーデス」編が、ついに復刻を遂げた章である!


 映像作品でのウルトラマンパワードの掌底(しょうてい)・手のひらを見せつけるヘンにモッサリとした空手アクション(汗)、もとい東洋の神秘(爆)を再現したかのような静的な構え方や戦い方をするパワード。
 それを「初代マンにも似ている静かな戦い方」だと関連つけているのも、初代『ウルトラマン』のリメイクであった『ウルトラマンパワード』の弁護の仕方として、それをも『激伝』本編にて巧妙に意味付けしてみせるエクスキューズの仕方は実にうまいと思う(笑)。


 ファンタジックな童話の人形キャラクターのようなピッコロ王子も「タロウの親友」を名乗って登場! このピッコロもまた『ウルトラマンタロウ』第46話『日本の童謡から 白い兎は悪い奴!』に登場した宇宙人キャラクター・ピッコロ本人である。第1期ウルトラシリーズ至上主義者であるシリアス志向な特撮マニアたちが忌み嫌ってきたコミカル編に登場したことから、旧来の特撮マニアたちからはキラわれていただろうが、一見はマイナーな怪獣キャラクターのようでも実に鮮烈な印象を残していたからか、『激伝』での再登場も妙に嬉しい。
 『帰ってきたウルトラマン』出自のなまけ怪獣ヤメタランスやササヒラーも、原典通りにコミカルながらも重要な役どころで登場している。


 現在でもあまりスポットが当てられることが少ないジョーニアスやエイティ・グレートにパワードらが中心となって活躍するあたりもまた、ホンモノの「ウルトラ愛」が感じられて好印象を残す。
 『ウルトラマン80』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)から『ウルトラマンティガ』(96年)の間にテレビシリーズが16年間も製作されないという空白期間だった当時、グレートとパワードはオリジナルビデオシリーズのヒーローだったとはいえ、当時の子供たちにとっては間違いなく最新の現役ウルトラヒーローであったのだ!
 ゴーデス編が95年11月号から連載開始される直前、95年4月から9月にかけての半年間、関東など一部の地域ではTBS系列で『ウルトラマンパワード』(93年)と『ウルトラマンG(グレート)』(90年)が毎週土曜17時30分枠(後年の『メビウス』の放映枠でもある)で連続放映されており、「ゴーデス編」への呼び水としては絶好のものとなったかもしれない。



パワード「……また心が乱れたぞG(グレート)……」
グレート「……悪リィ……」
パワード「ウルトラの星のこと…… まだ悩んでいるのか?」
グレート「……ああ。オレたちはゴーデスハンターとしてキングから特命をあたえられている身だ。だからヤツをさがし続けて倒さなきゃならねえ…… それはわかってるんだ……! だけど…… せっかく父やゾフィーから宇宙警備隊にさそわれても、なんの説明もしないで断りつづけなきゃいけねえなんて……」
パワード「………」
グレート「正直耐えられねえっ!! ……オレだってセブンやエースたちといっしょに戦ってやりてえのに……」
パワード「……しかたのないヤツだ。おまえはうわべとは違い、内面は情にあつい…… そう思うのもムリはないが…… 我々には他人にできない任務がある。宇宙平和のために表舞台で働くか裏舞台で働くか…… 違いはそれだけだろう?」
グレート「………!! おまえはいいよな。さとりきってて。オレから見たら超人だぜ……」
パワード「強さはおまえが上だ。だからこそ私は魂をみがいている……」
グレート「……ありがとうよ…… またオレがまよったら…… たすけてやってくれよ。 な?(ウインク・笑)」


 ゴーデス編の第4話『宇宙の悪魔ゴーデス』で描かれた回想場面である。ナンと! グレートとパワードはふたりともに幼いころからウルトラマンキングに育てられ(!)、キングのもとで修行を積んでゴーデスハンターの特命を与えられていた! という実にオイシい設定となっているのだ!
 70年代の小学館の学習雑誌や『コロコロコミック』でのウルトラ一族のウラ設定の特集記事のようなノリだが、なぜだが実に納得ができて腑に落ちてくるウラ設定である。
 現在ではすっかり冷遇されている感のあるグレートとパワードであるが、せっかく『激伝』ゴーデス編で主役の任を務めたふたりに与えられた「グレートとパワードはキングに育てられた」という最高のウラ設定! 円谷プロの公式設定にもしてほしい!!


オリジナルビデオアニメ『ウルトラマン超闘士激伝』

バンダイビジュアル『ばっちしV』シリーズ・40分・96年9月25日発売・定価3500円)
ウルトラマン超闘士激伝

ウルトラマン超闘士激伝

ウルトラマン超闘士激伝

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 本作は「ゴーデス編」と、続く「エンペラ星人編」の間に起きた事件として設定されている。



「地球で銀河連邦生誕イベントが開催。記念試合で対戦する闘士マンとメフィラス! 同じころ、タロウ、エース、ジャックらは彗星爆破の任務に向かったが、一同の前に、彗星の中から出現した超強力怪獣が立ちふさがった!!
 タロウらを倒した怪獣は地球へと進軍。マンとメフィラスの試合会場に突如出現して…!?」

(『ウルトラマン超闘士激伝』第6巻(講談社 96年7月5日発行)『激熱!! 超闘士道場 出張版』「OVA(オリジナルビデオアニメ)『超闘士激伝』製作快調!!」「★ストーリー★」)



 ところで、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』は、公開初日の夕方に放映された『メビウス』第24話『復活のヤプール』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061112/p1)中でのセリフから、映画が先で第24話が後だという時系列になっていた。
 NTT東日本フレッツ・スクエアで『メビウス』放映当時にネット配信された『ウルトラマンメビウス外伝 ヒカリサーガ』も、SAGA1(サーガ・ワン)『アーブの悲劇』では、ウルトラマンヒカリ――この時点では謎の鎧の戦士・ハンターナイトツルギ――が初登場した『メビウス』第5話『逆転のシュート』の前日譚。
 SAGA2『勇者の試練』では、ヒカリが地球を去った第17話『誓いのフォーメーション』直後の後日譚で、その次回である第18話『ウルトラマンの重圧』に登場する宇宙大怪獣ベムスターも登場。
 SAGA3『光の帰環』は、ヒカリが再登場する第35話『群青(ぐんじょう)の光と影』の前日譚として同話に登場するババルウ星人も登場していた。
 バンダイの玩具『DXウルトラコクピット』で描かれた事件も、一応『メビウス』本編のどこかで発生していた正編であるという設定であり、07年7月に発売された第2弾は、リュウ隊員が隊長に昇格して指揮する新生GUYSが活躍する『メビウス』最終3部作の後日譚でもあった。


 そして、すでに本作『激伝』は、「ゴーデス編」と「エンペラ編」の間の出来事として、同様の試みを行っていた。それがこの番外編では決してなく、あくまでも正編のひとつでもあったこのOVAなのである!


 もちろんこういう商業展開にも一長一短はあるだろう。重要キャラの生死を描いてしまったOVAを観ていない読者に対して、OVAの続きである漫画の「エンペラ編」の方では説明が少ないことなどは欠点である。
 ただし、そこさえフォローがていねいであれば、媒体が異なる正編といった存在も積極的にアリだろう!


 今回の漫画『超闘士激伝』復刻版でも、OVAのコミカライズを描き下ろしすることや、OVAの静止画キャプチャーを使用することは、予算面や意外とかなり高額であるらしい映像版権使用料的にもムリだったとしても、文章だけでも見開き2ページくらいで当時の事情やOVAのストーリーも紹介してほしかったところだ。
 ……ついでに云うと、原作者や漫画家による後書きや、『激伝』にくわしいライターなどによる解説なども、最終巻にはほしかったところなのだが、これも復刻版製作における予算面での問題か?(笑)




 「銀河連邦生誕記念式典」が開かれた、我らが地球にある巨大闘技場。現れた闘士ウルトラマン(声:森川智之)に、突如メフィラス大魔王(声:檜山修之)が奇襲攻撃をかけてくる!


メフィラス「相手をブチのめす! それが闘いの掟だ!」
闘士マン「手を出さないでくれウルトラセブン! これはメフィラスと私の試合なんだ!」


 闘士マンは「超闘士」の状態を維持するための王冠型のアイテム・ウルトラクラウンを、まるでウルトラセブンことモロボシ・ダン隊員が変身アイテム・ウルトラアイを着眼するかのごとく額に装着する!


闘士マン「ウルトラクラウン! 装着!!」


 ウルトラの父やタロウの両ヅノのようなウルトラホーン(ウルトラクラウンの突起部分の変型)が、闘士マンにも生えてくる! それも光輝く黄金色である!


 そればかりではない! 地球人の防衛組織・ウルトラ警備隊の地底戦車・マグマライザーはライザーG(ジャイアント)なる人型ロボットに変型した!


 ナンと! 未来の時代が舞台だとはいえ、『激伝』では防衛組織にマシンから変型する巨大ロボットまで建造させていたのである!――「ヤプール編」でもアラスジ紹介では省いたが、防衛組織・科学特捜隊の戦闘機・ビートルが変型してビートルG(ジャイアント)なる人型ロボットが登場していた!――


 先に引用した2ちゃんねるでの論争でも、地球人が巨大ロボットを建造してウルトラマンをサポートしたり、巨大ロボットが変型して友情の証としてウルトラマンの鎧として合体してもよいのでは!? という意見が出てもいた。


 そもそもウルトラシリーズを製作した円谷プロも、かの『トランスフォーマー』(85年)シリーズよりもずっと以前、73年1月放映開始の『ジャンボーグA(エース)』(73年)で、正義の宇宙人由来の超常の力によるものだから、玩具での変型は不可能なプレイバリューはないものだったが(笑)、セスナ機をジャンボーグAに、自動車をシリーズ後半に登場する2号ロボであるジャンボーグ9(ナイン)に一応は変型させていた。
 これは先立つこと1ヶ月前の72年12月に放映が開始された『マジンガーZ(ゼット)』(72年・東映動画→現東映アニメーション フジテレビ・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)の放映で、巨大ロボットアニメが大人気となり、第2次怪獣ブームが下火となりはじめていた当時の風潮にも合致して、成功をおさめていたのである。


 かつては孤独に素手で戦っていた昭和ライダーとは似ても似つかぬ、複数のライダーたちが登場して武器や武装も多用し、多段変身を繰り広げている平成ライダーたちだが、今では誰もそのことに対して文句も云わない。
 『仮面ライダーBLACK RX』(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1)がはじめてレーザー剣を使ってクルマに乗ってロボライダーやバイオライダーに2段変身したときには、当時の子供たちはともかく年長のマニアたちからはアレだけ凄まじい非難囂々(ひなんごうごう)があったというのに……(汗)
 だから多分に単なる「慣れ」の問題なのである。よって、ウルトラマンが鎧を着用したり、地球人が巨大ロボットを建造してサポートしても、そのうちに慣れちゃうと思うゾ(笑)。



闘士セブン(声:関俊彦)「ホーク・ウェポン、アームド・アップ!」


 さらにさらに! 3機に分離した防衛組織・ウルトラ警備隊の戦闘機・ウルトラホーク1号が3機に分離したα(アルファ)号が剣となってセブンの右手に、β(ベータ)号は盾となって左手に、γ(ガンマ)号とウルトラホーク2号は翼となってセブンの背中に装着される!
 ウルトラホーク3号は変型してライザーGの右腕に装着! ウルトラマンエイティとともに、地球に天変地異を巻き起こした、本作のメイン悪役である彗星戦神ツイフォン(声:梁田清之)に立ち向かうのである!


 圧倒的なパワーを誇る強敵相手であれは、多少の武装をしても卑怯には見えない! ということもある。と同時に、「ウルトラ」の玩具の主流であるソフビ人形は、変型や着せ替え的に遊び倒すのには限界があり、これくらいのプレイバリューがないと今の子供たちにも興味を持ってもらえないとも思うのだ。



「武器だの合体ロボだの、お前ら本気かよ! 発想が幼稚過ぎて幼児も見放すぞ! ウルトラマンというキャラがなんで40年以上も生きつづけたのか、もう一回考えてみることをお勧めする」
「一人のファンとしてウルトラマンを商売の道具にしたいとは一切思わない(以下略)」


「これからの商品展開を含めた案は? みんなそう言いたい気持ちを持ちつつ、なるべく逸脱(いつだつ)しない案を出している」
「まあなんだな。此処(ここ)でみんなが言ってることは「夢だけじゃ食っていけない」ってことなんだな。(武装や巨大ロボに反対するのは)わからんでもないけど(円谷プロが)倒産しかけた現実を考えるとね・・・」
「割りと無理矢理感や逸脱が少ない案がそれなりに出てたと思うけど」
「まぁみんなの言いたいことは「マーチャンダイジングでも成功して欲しい」ってことだよな。それだけ利益が制作費になるわけだし」


2ちゃんねる「特撮!」掲示板『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』Part19 2009年12月21日~2010年1月6日)



 その存在自体を全否定するかのように評されてしまうことも往々にしてある巨大掲示板2ちゃんねる」なのだが、実際にはこのような理性的かつ建設的な、経済的な現実をも見据えた応酬もあったのだ。



メフィラス「おまえに倒されたあいつのため…… いや、おまえにはわかるまい! あいつとの闘いで、オレに生まれたものがなんなのか…… 闘う男の、誇りってヤツだよ!」



――『超闘士激伝』って監督好みのお話ですよね?
「ホントは殺伐(さつばつ)としたのは好きじゃないんで、あんまり殴る蹴るっていうのは得意じゃないんだけど(笑)、まあそれだけじゃないですからね。そこにちゃんと友情とかそうゆうのがあるから作品として成り立ってるワケで、まあ男っぽいですよね。そういう意味での男っぽさ、汗クサさはわりと好きなんで(笑)」


――監督の過去の作品だと『アイアンリーガー』に…。(引用者註:児童向けテレビアニメ『疾風(しっぷう)! アイアンリーガー』(93年・サンライズ テレビ東京)。SD調のロボットたちがスタジアムで各種競技をする作品で、当時のオタクのお姉さんたちの一部にも人気があった・笑)
「近いモノはありますよね。ちょっと恥ずかしいぐらいの感じが(笑)。まあ『アイアンリーガー』の時もそうだったんですけど、生身の人間がやると、どうも照れちゃうと言うか…
 「誇りってやつだよ」とか言われると、“お前ナニ言ってんだよ”みたいな(笑)。そんな気分になるところが、――引用者註:漫画アニメやSDキャラ、着ぐるみの仮面キャラクターである――ウルトラの兄弟、あるいはメフィラス星人だったらストレートに出せる部分があるんで、そういう助けはかなり借りてるかな、とは思いますね」


(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「INTERVIEW」監督:アミノテツロー



 ハイパー化の数十倍のパワーを誇る「超エネルギー増幅装置」を装着したメフィラスは、遂に彗星戦神ツイフォンを倒した!! だが……


闘士マン「メフィラス、なんてことを!」
メフィラス「最後まで説教か?…… それもおまえらしい……」
闘士マン「しゃべるな! 今すぐ地球へ運んでやる」
メフィラス「よせ、ムダだ。オレはおまえみたいに不死身じゃない。オレなりに頑張ってはみたが、おまえのようにカッコよくはいかなかったぜ……」
闘士マン「なにを云う! ツイフォンを倒したじゃないか!? おまえは私より上だ!」
メフィラス「そうだな…… おまえでも勝てなかったアイツをな……」


 だが、背後にただならぬ殺気を感じる闘士ウルトラマン


メフィラス「どうした……」
闘士マン「すごかったよ、メフィラス。すごかった! ヤツはコナゴナだ! 地球は救われた! おまえのおかげだ!」


 ヒトをだまして陥れるためのウソではなく、ヒトを安心させるための気遣いとしての優しいウソも咄嗟に機転を働かせてつくこともできる、愚直なだけではなく実に人間が良く出来てもいる闘士マン。


メフィラス「そうか…… よかったな……」
闘士マン「メフィラス……」


 闘士マンの腕の中で静かに息絶えるメフィラス大魔王……



――監督から提案されたコトってあります?
「こういう話の常なのかもしれないですけど、死んでは生き返り死んでは生き返り、みたいな、そういうニュアンスってあるじゃないですか。でも、やっぱり死んだ人は戻ってこない……って言うのかなあ、そういうケジメはどっかでつけられるとイイですね、って話はしましたね。
 だからメフィラス(大魔王)も、死ぬんだったらちゃんと死んでくれよ、みたいな気分で(笑)。あと、死にに行くんではなくて、結果として死んでしまったという部分も欲しいなって、これは言葉のアヤですけど“命に替えて”と“命を賭けて”ってけっこう違うんじゃないかな、っていう、そのへんの微妙なこだわりだけ明確にして貰(もら)ったって感じですね。
 例えば、ハイパーエネルギー増幅装置って極端なコトを言うと、最初はつけると絶対に死ぬって設定だったんですよ。だったらつけないよ(笑)ってそのぐらいの気分なんですけど、そのへんをノリだけでいかずに“押さえ”たいな、と思ってたんで……。
 僕なんか、メフィラスに感情移入しやすかったんですけど、まあ主人公はどうしても(初代)ウルトラマンなんで、(初代)ウルトラマンが最終的に見せ場を作ってくなかで、今回はメフィラスとの友情話の頂点、みたいな気分はありましたね」


(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「INTERVIEW」監督:アミノテツロー



 ツイフォンに怒りを爆発させる闘士マン!


闘士マン「おまえはいったい何者なんだ!? なぜこんな殺戮(さつりく)を続ける!?」
ツイフォン「オレはオレだ。全宇宙をかけめぐり、その先々にあるものはすべて破壊する。それがオレだ」
闘士マン「なんだと! なぜだ!? なぜそんなことを!?」
ツイフォン「なぜはない。それがオレだ。もう何万年もの間、繰り返してきた。そしてこれからもだ」
闘士マン「そうはさせない! もう二度と、こんなことはさせない!!」


 ハナっから話し合いなんぞは通じるハズのない、感情のカケラすらもない倒すべき相手としてツイフォンが描かれているのも、勧善懲悪活劇としては秀逸だが、だからこそ「闘士マン」が黄金のオーラに輝く「超闘士ウルトラマン」へと強化変身する必然性にも、がぜん説得力がわくというものなのである!


超闘士マン「私は宇宙を破壊する者を許さない!!」


 だが、ウルトラクラウンなしで超闘士となったことから、胸の中央にあるカラータイマーが早くも赤く点滅をはじめる!


 ツイフォンは頭のツノでそのカラータイマーを貫いた!! 吹っ飛ばされる超闘士マン……


超闘士マン「死ねない…… 絶対に死ねない…… 私には義務がある! メフィラスが守ったものを、守り通す義務が! 死ぬわけにはいかない!」


 そのとき、超闘士マンのカラータイマーの周囲に神秘なる力が発動した!!


ゾフィー(声:江原正士)「オオッ、あれは!?」
ウルトラの父(声:玄田哲章)「宇宙伝説の永遠の命、デルタスター!!」


 超闘士マンに装着された巨大な紋章・デルタスターをド突いたツイフォンの拳がコナゴナに砕けた!
 一瞬、動揺したツイフォンだが、すかさず全身をドリル状に回転させて超闘士マンに突撃する!
 しかし、それもデルタスターにハネ返される!


超闘士マン「そうだ、それが私だからだ! おまえの長い旅もこれで終わらせる!! ……スペシウム超光波!!!」


 遂にツイフォンを宇宙の塵(ちり)と化す!


 英雄となった超闘士ウルトラマン


ノタニー博士(声:八奈見乗児)「いや、(超闘士)ウルトラマンだけではない。英雄は彼の…… 我々の胸の中にもいるよ……」


 この戦いを目撃していたすべての人々の想いも代弁して、メフィラス大魔王に哀悼の言葉を捧げてみせるノタニー博士……



 OVA版スタッフは『激伝』の世界観を充二分に熟知し、各キャラの描き方に存分に反映させている。脚本は原作者の瑳川竜氏が自ら手掛けることで、完全に『劇伝』正編の一編ともなっていた。



「今回、絵コンテを読み込んでいくうちに、過去に見ていた実写のウルトラマンよりアニメのウルトラマンの方に不思議なリアリティーを感じてしまった。実写の場合に感じていたウルトラマンスーツや怪獣達との質感と風景との間のギャップが、アニメになった途端に見事に解決され、すべての登場人物や背景が同一線上に並んだのである。そして無表情なマスクの向こうにあるウルトラ戦士たちの心の叫びが聞こえてきた。これこそ真実のウルトラマン伝説だと思うのである」

(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「MESSAGE」音楽:池毅)



「今回のウルトラマンの音楽制作は、まず最初にボーカルヴァージョンをつくる時に、ひとつの標語がありました。それはスタッフから出た注文で、〈汗くさい感じのする体育会系サウンドにしたい…〉といったようなものでした。逆に言えば〈オシャレでナンパな音楽から正反対に位置するもの…〉といったようなニュアンスだったと思います。これってある意味で、ウルトラマンの核をなす大事な部分ですよね?」

(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「MESSAGE」音楽:戸塚修


 この発言に続く、戸塚修氏の「備考」による使用機器の目録を読むと、本作のBGMは後年の『ウルトラ銀河伝説』の楽曲群のように、早くも録音スタジオを借りてスタジオ・ミュージシャンを招集してのナマ楽器からの収録は一切行わずに、パソコン上の作曲ソフトとシンセサイザーだけでつくったようでもある。



「そんな意味でも、監督として(系で言うなら“コブシ握り系”あるいは“血液たぎり系”の作風を得意とする)アミノテツロー――引用者註:リアルロボットアニメ『マクロス』シリーズの人気異色作『マクロス7(セブン)』(94年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990906/p1)などが有名――を迎えての映像化は、まさしくベスト・マッチングの印象。演出・絵コンテを手懸けた(平野俊弘監督作品――引用者註:戦闘美少女アニメ『戦え!! イクサー1(ワン)』(85年)・巨大ロボットアニメ『破邪大星ダンガイオー』(87年)と『冥王計画(プロジェクト)ゼオライマー』(88年)などの80年代の草創期OVAなど――における好き者ぶりはつとに有名な)西森章(にしもり・あきら)以下、『ウルトラ』世代のスタッフの大挙参入も頼もしい限りで、このアニメ版『激伝』もツボを突きまくった快作(隕石を目撃した子供のコスプレを見よ! カタストロフィー描写の引用ぶりを見よ! 思わずやってしまいました的オープニングを見よ!)として、原作の“ウルトラ魂”を見事なまでに継承した、燃える逸品(いっぴん)に仕上がっている。(中略)
 ともあれ“ウルトラ魂”を持つスタッフの「限りなきチャレンジ魂」が炸裂した印象の『激伝』アニメ版。この先の展開にも大真面目に期待してマス。本気で!

(96/8/9)」
(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「EXPLANATION」赤星政尚)



 本作の敵である彗星戦神ツイフォンは、初代『ウルトラマン』第25話『怪彗星ツイフォン』で地球に接近した彗星ツイフォンが、同話ラストでの計算通り、地球歴(多分、西暦・笑)3026年に再び接近して、その正体を遂に現わした姿だろう。
 ということは、『激伝』の時代は今から1000年後の西暦3020年代の出来事となるのだ。
――「ヤプール編」冒頭ではエースが「むかしオレが地球をまもっていたころ…… 数十年まえかな~~」と云っていたのだが…… エースの云い間違いだったのだろう・笑――


 日タイ合作の映画『ウルトラ6兄弟VS(たい)怪獣軍団』(75年・79年日本公開)に登場したインドやタイの神話の神様である白猿ハヌマーンの扮装のような服を着た少年コチャンもさりげにモブの中に登場。
 昭和ウルトラシリーズのオープニング映像へのオマージュに満ち満ちた影絵のオープニング主題歌映像にかさなるカッコいい主題歌やエンディング歌曲など、小ネタのマニアックな楽しさにも満ちている。


 VHSビデオソフトとしてリリースされて以来、まったくソフト化の機会に恵まれない本作だが、このまま埋もれさせるにはあまりに惜しい名作である。
 せめて『激伝』復刻版の全巻購入特典としてDVDを頒布(はんぷ)するといったことができなかったものであろうか? 本作は『激伝』の立派な「正編」なのである。


 強いて云うならば、メフィラス大魔王の声を筆者などは勝手に原典の初代メフィラス星人の声である加藤精三でイメージしていたので、『五星(ごせい)戦隊ダイレンジャー』(93年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111010/p1)のイレギュラー敵怪人・神風大将の声であったことには少々イメージが違った(笑)。


第4部『エンペラ星人編』

ウルトラマン超闘士激伝 4巻

*96年11月号『新たなる脅威』
*96年12月号『結成! 銀河遊撃隊』
*97年1月号『ブラック指令の罠』
*97年2月号『光と闇の戦い』
*97年3月号『光の戦士よ永遠なれ!!』


 莫大な量の高純度エネルギーを蓄積できる特殊立方体・EX(エネルギー・エックス)キューブを軍事に悪用し、全宇宙を攻撃せんとする者が現れた!
 正体不明の新たな敵・エンペラ星人の軍団である! 彼らの戦闘機械獣・メタルモンスの圧倒的な軍勢に、宇宙はいまだかつてない危機を迎えていた!


 ウルトラマンネオスウルトラセブン21(ツーワン)が警備するセントール星をエンペラ軍団の陸軍戦闘母艦・ドレンゲランが襲撃する!
 メタルモンスを次々に破壊するネオスとセブン21! その前に姿を現す陸軍参謀・ザム星人!


 ふたりの危機に、伝説の最強戦士・闘士ウルトラマンが駆けつけた! エンペラ軍の侵攻に対抗するために、ウルトラ戦士団は戦力を再編成、闘士マンは銀河遊撃隊隊長に任命されていたのである!


 エンペラ軍団が真にねらうものはウルトラの星の3大秘宝だった。ウルトラキー! ウルトラベル! そして幻の鏡・ウルトラミラー!
 かつてそれらはウルトラの星に所蔵されていたのだが、ババルウ星人にウルトラキーを奪われた際(!)、ウルトラの星が壊滅の危機を迎えたことから、ウルトラの父はウルトラキーなしでもウルトラの星の軌道を維持できるようにウルトラの星の機能を改良し、3つの秘宝を全銀河に隠していたのである!
――ウルトラキーを奪われたうんぬんの逸話は、もちろん『ウルトラマンレオ』第38話『レオ兄弟対ウルトラ兄弟』~第39話『レオ兄弟ウルトラ兄弟勝利の時』の前後編を指している!――


 セントール星を今度は海軍戦闘母艦・サメクジラと、空軍戦闘母艦・サタンモアが襲う!
 超闘士マンはネオス・セブン21とともに、地球人から受領した超光速銀河遊撃挺・スターフェニックスでこれを迎え撃つ!
――フェニックスの名前がまた、初代『ウルトラマン』第16話『科特隊宇宙へ』に登場した金星探査用宇宙船・フェニックスからの引用で、その姿は科学特捜隊のマークである「流星」を模した姿であった・笑――


 海軍参謀・バルキー星人はイーストン星でウルトラベルを手にしてしまう。面白くない空軍参謀・ブラック指令は暗黒司祭・ジェロニモンと手を組み、残るふたつの秘宝を同時に手に入れようと企む。


 セブン21はジェロニモンが作り出した暗黒時空に落ちてしまい、ブラック指令にウルトラの父やタロウの両ヅノのようなデストホーンをつけられてしまう! ブラック指令に操られてしまったセブン21は、ウルトラキーを奪ってしまった!
 ネオスは単身でスターフェニックスに乗りこみ、ブラック指令とセブン21がいる水星へと向かう! 必死でセブン21を説得するネオス!
 だが、セブン21はネオスに向けてウルトラキーの銃口を向けてしまう!


 間一髪! 現れた超闘士ウルトラマンが持つウルトラミラーでウルトラキーの攻撃はハネ返された!
 そしてセブン・エース・タロウ・グレートの4大守護闘士も大集結! エンペラ空軍との決戦の火ぶたが切って落とされた!


――ちなみに、エンペラ軍が「陸軍」「海軍」「空軍」に分かれていて幹部たちが「参謀」の役職だったりするのは、円谷プロの分派がつくった特撮巨大ロボット作品『スーパーロボット マッハバロン』(74年)のララーシュタイン博士が率いるロボット帝国からの引用だろう・笑――


 そしてネオスはセブン21にウルトラミラーを向けて、本当の心を映し出すように説得を試みる! すると脳裏にネオスとの思い出が回想されて苦しみはじめる21!


 サタンモアから脱出したブラック指令の前に、ウルトラキーを携えたネオス、そして正気を取り戻したセブン21が現れた! そのトサカ部分を外して宇宙ブーメラン・ヴェルザードを放つセブン21!
――このへんも内山まもる大先生の『ウルトラマンレオ』コミカライズ最終回の同様シーン(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210124/p1)へのオマージュである――


 生き残ったジェロニモンからエンペラ軍の本拠地を聞き出そうとする守護闘士たちだったが、彼らの眼前にエンペラ星人の巨大なる幻影が現れて、戦いがまだ終わっていないことを告げるや、姿を消していった……




 連載開始当時、すでに96年9月スタートの『ウルトラマンティガ』の放映がはじまっているが、今回の「エンペラ星人編」の主人公格となったのは、ウルトラマンネオスウルトラセブン21である。


 筆者の記憶に誤りがなければ、94年11月23日(祝)にマスコミ向けに新ヒーローの製作発表記者会見が行われ、その席上にてテレビシリーズに向けて準備が進めれているとされたはずである。
 ネオスらのデビューは95年3月11日~6月18日に熊本県三井グリーンランドにて開催されたイベント「95年こども博 ウルトラマン伝説」であり、同年初夏には映像作品化に向けて、高野宏一特撮監督による8分間のパイロットフィルム(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971115/p1)――おそらくフィルムではなくビデオ撮影で、多分に『ウルトラマン80』の特撮バンクフィルムも織り交ぜつつ・汗――がマニア向け媒体や幼児誌などの商業誌のカラーグラビアなどで紹介されている。
 脳魂宇宙人ザム星人と宇宙鉱石怪獣ドレンゲランとのバトル中心で構成され、白昼の戦いがオープンセットのビル街、夜の戦いがスタジオ撮影のビル街で撮られており、ドレンゲランの首が伸縮したり、セブン21の目が細くなったりする場面に当時最新のモーフィング技術――今から見ると実に初歩的な被写体の変型描写を可能とするCG技術――が部分的に使用されている。


 このパイロット映像は、講談社『テレビマガジン』の愛読者向けに頒布されたのみならず、95年よりバンダイビジュアルからおびただしく発売されたキッズ向け再編集ビデオソフト『ばっちしV(ブイ)』シリーズにもたびたび流用されて、ウルトラヒーロー大集合! というような内容のビデオソフトでは、ネオスとセブン21が常に最新ヒーローとしてセンターポジションに位置づけられており、彼らのプロモーションの役割を果たすには絶好のものともなっていた。


 『テレビマガジン』では、なんと赤星政尚(!)による脚本と宮田淳一の作画により、95年11月号から96年2月号にかけて、地球に来るまでの話として漫画版も連載されていたのである!


 『ウルトラマン』放映30周年記念の96年の放映を目指して、前年の95年に着々と準備が進められていた、ウルトラマンネオスウルトラセブン21のダブルヒーローを主役に据えた新番組『ウルトラマンネオス』の企画案は、TBSでは子供番組として適切な放映枠が取れなかったようであり、土曜夕方6時の放映枠を持っていた毎日放送(大阪・TBS系)も難色を示したのかして流れてしまったのはご承知の通りである。
 以降は平成『ウルトラセブン』を製作した円谷昌弘プロデューサーとビデオ会社・バップ側の人脈によって、その5年後の2000年11月から01年5月にかけて発売された全12巻(全12話)のオリジナルビデオシリーズとして企画が再始動するまではお蔵入りとなってしまったヒーローたちでもある。


 95年版の『ネオス』は、原点回帰志向のファーストコンタクトものであった『ウルトラマンG』や『ウルトラマンパワード』とは異なり、『ウルトラマンメビウス』のように昭和のウルトラシリーズとも直結していることを示唆するウルトラファミリーの集合写真、1970年代の学年誌や『コロコロコミック』でのウラ設定のように、


・宇宙警備隊のエリート戦士集団である勇士司令部に所属するという設定のウルトラマンネオス
・宇宙警備隊の特別部隊である宇宙保安庁に所属するという設定のウルトラセブン21!


 といった要素を前面に押し出していて、一部の世代人の特撮マニアたちを大興奮させていた。


 しかし後年の映像化作品では、非常に残念なことに、その『ネオス』95年版の最大のウリをバッサリと捨て去ってしまい(汗)、またしても人類がウルトラマンや怪獣と初遭遇した世界であるという舞台設定に退行してしまっていたのだった……


 『ティガ』放映前年の95年夏休みに開催された『ウルトラマン フェスティバル95』における「ウルトラライブステージ」では、ネオスとセブン21がバリバリで主役を務めており、グレート・パワード・初代マンが準主役として活躍して、その最後にネオスと21がもうしばらくしたら地球へと派遣されるだろうとウルトラの父ウルトラの母が語っていた……
 ところが翌年夏休みに開催されたゴジラウルトラマン仮面ライダースーパー戦隊の合同イベント『史上最大の決戦 ヒーローフェスティバル96』の4大特撮ヒーローが共演するライブステージでは(その内容自体は傑作!)、ネオスとセブン21の姿はなかったと記憶している……
――ちなみに、夏休みが終わったらすぐにテレビで放映が開始されるハズの新ヒーロー・ウルトラマンティガの姿もなかったと思う。同作は96年のゴールデンウィークあたりで急に製作が決定したらしくて(?)、ヒーローの着ぐるみだってデザインから造形までに最低でも2~3ヶ月はかかるだろうことを思えば、このイベントへの登場には間に合わせられなかったといったところだろう――



 セブン21が小川に小石を投げて愚痴る……


セブン21「いっちゃあアレだけど オレもオマエも ウルトラ戦士の中じゃあ けっこう期待の星だったんだと思うんだけどなぁ…… こんな惑星に配属…… しかもたった二人だ。いわゆる左遷でしょコレって。やることといったら農作業をしている怪獣さんたちのあいてと たま~~に襲ってくるメタルモンスの一掃……! モーーー毎日そんだけだもん!!」
ネオス「………」
セブン21「ああ…… いまごろセブン先輩やタロウ先輩たちは 宇宙のあちこちで華々しく戦ってんだろうなぁ………」


 「エンペラ星人編」第1話である『新たなる脅威』でセブン21がつぶやくこのセリフ。テレビ化が流れてイベントでしか活躍できなかったネオスとセブン21の不遇も如実に象徴されているようで、正直シャレにならない(汗)。


 もっともふたりが「いなか星」であるセントール星に派遣されたのは、ウルトラの星の3大秘宝のひとつであるウルトラキーが隠されていたことから、その隠密の警備のために有望な新人であるふたりがそれと知らされずに任命されていたのだ……とのちに判明することで、両者のキャラも立てている。


 それをねらうのは、エンペラ星人の配下となっていた酋長怪獣ジェロニモン・宇宙海人バルキー星人・ブラック指令・脳魂宇宙人ザム星人!
 エンペラ星人のデザインは、後年の『メビウス』で登場したものとは異なるのだが、『激伝』らしくて全身が鎧に被われたハイパーエンペラ星人といった趣である。
 造形的には金銭と手間がかかりそうだが、今さら云っても詮ないことだけど、『メビウス』終盤に登場したエンペラ星人も、『激伝』世代を狂喜乱舞させるためにもこのデザインで登場させてあげてほしかったなぁ……


 陸軍戦闘母艦・ドレンゲラン、海軍戦闘母艦・サメクジラ、空軍戦闘母艦・サタンモアは、いずれも原典では怪獣である。しかし、この陸・海・空の参謀たちが搭乗する怪獣型の巨大宇宙戦艦は、ウルトラシリーズ番外編である映像作品『アンドロメロス』(83年)に登場した悪の異星人混成軍団・グア軍団の3大幹部であるジュダ・モルド・ギナが搭乗していた全長900メートル級(!)の怪獣戦艦キングジョーグ・ベムズン・ギエロニアへのオマージュでもあるだろう。


 そのエンペラ軍団とウルトラ戦士たちとの3大秘宝の争奪戦! それを巡る参謀たちの仲間割れ!
 7つのドラゴンボールを集める漫画『ドラゴンボール』、8つの霊玉を集める江戸時代の長編小説『南総里見八犬伝』など、大むかしからあるコテコテのアイテム争奪戦だともいえるのだが、良い意味で王道の活劇展開となっている!


 そして、ウルトラミラーがただの「物理」的なアイテムではなく、「心」や「魂」や「真実」をも映し出すような「精神」的な「鏡」であると設定されているのも、それもまたベタかもしれないけど、神秘的で超常的なアイテムであるのならば、こうでなくてはダメだろう!


 大宇宙の平和を左右するマクロなアイテムであるウルトラミラーを用いて、ネオスがセブン21を改心させようとする実にミクロでプライペート・ドラマになってくる件りでは、ふたりの出逢いが回想として印象的に描かれており、これまたベタでも実に感動的に仕上がっている。
 「マクロ」な「イベント」と「ミクロ」な「ドラマ」を両立させるためには、主人公にとっての親友や大切なヒトが「悪」に墜ちてしまって、かのヒトと直接に対面させて会話もさせるという、「バトル」と「ドラマ」も両立できるこの手にかぎる!(笑)


セブン21「オイッ、おまえ なんかオレと同じようなのがついてるじゃねえか。席番もとなりあわせだし なんか縁がありそうだなオレたち……!」
ネオス「遺伝的にビームポイントが直線になるウルトラ人は 人口二千人に一人だという…… ウルトラの星の人口は百八十億人だから九百万人はいる計算になる。それが出会うことは たいして珍しいことだとは思わんが……」
セブン21「な なんだこの野郎……! まるっきりおもしろくねぇヤツ……!!


セブン21(心の声)「……そうさ。まるっきし おもしろくないヤツ!! ……いつもいつもオレに差をつける…… アタマにくるヤツ………!! そんなヤツをいつから……? なんで……? なんで……… こんなに好きになっちまったんだ!!?」


 ウルトラ学校の入学式に始まり、徒競走(笑)やテストの順位発表、殴り合いのケンカの末、肩を組んでのツーショット!(笑)


 この場面の直前は、


ブラック指令「ウハハハハッ!!! いい光景だわ!!! ウルトラ戦士どうしで殺しあっているところはっ……!!!」


 という、実に冷酷なシーンなのだが、だからこそよけいにその対比として、このシーンのハートウォームさが際立ってくるのだ!


――『ウルトラマン フェスティバル95』の「ウルトラライブステージ」と本作『ウルトラマン超闘士激伝』での、一応はネオスと対等ながらもヤンチャで未熟なセブン21! というイメージが強烈にあるので、はるか後年の近年になってから設定された、ネオスの年齢が8900歳というのに対して、セブン21の年齢が倍以上も歳上である1万8千歳(!)というのには非常に違和感があるなぁ。しかも、元祖のウルトラセブンの1万7千歳よりも年上じゃねーか!? ……まぁ元祖のセブンも、70年代には小学館コロタン文庫『ウルトラマン全(オール)百科』(78年10月10月発行・ISBN:4092810350)にも記載されていた通り、ジャックと同い歳の1万7千歳ではなく1万9千歳だったハズなのだけどなぁ(汗)。今からでもアレは間違いだったとして、21をネオスと同い歳に再設定してほしい!・笑――



「でも終わるときは非常に急だったんですよ(笑)。もうこれで終わりって話になったのが、エンペラ星人編が始まって一、二回ぐらいのザム星人とか出てくる回。言われてビックリですよね。
 最初が前後編で、その後編を打ち合わせしてる時に、次の前中後編三回で終わりにしなくちゃなんないってなって、強い宇宙人が出てきたばっかりなのに、どうやって終わらせようか非常に考えましたよね。最後は見開きのバトルシーンでバン! と<註5>。
 あと折角(せっかく)出てきたばっかりだったんでネオスとセブン21の関係論だけはその三回の中できちんと終わらせようということでまとめたんですけど。途中で終わったのは残念ですけど、急な終わり方としてはかなり納得していただける形でまとまったんじゃないかと(笑)。


●註5:見開きのバトルシーン…学年誌(引用者註:『小学二年生』)に掲載された、内山まもる作画による『ウルトラマンレオ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210124/p1)最終回のひとコマ。円盤生物軍団とウルトラ兄弟がダイナミックに戦う姿がパノラマ的に描かれており、近年内山氏本人も新作の中で同じ構図を再現している。ウルトラコミックを代表するといっても良い構図のひとつ。


(『フィギュア王』No.139「光の国◆人物列伝」瑳川竜 ~『フィギュア王』プレミアムシリーズ6『ウルトラソフビ超図鑑』にも再掲載。Text by HARUTA seiji(張田精次))



 その通りで、マクロとしての事件は解決していないが、「エンペラ星人編」の主人公であるネオスとセブン21の物語としてはきちんと完結できていたとする、瑳川竜氏の自画自賛(笑)には完全に同意したい。



セブン21(心の声)「そんなヤツをいつから……? なんで……? なんで……… こんなに好きになっちまったんだ!!?」


 女性オタクの全員ではないけど、一部であるBL(ボーイズ・ラブ)ファンも大喜びの展開である(笑)


・「メフィラス大魔王編」の初代マンとセブン
・「ヤプール編」の初代マンとメフィラス
・「ゴーデス編」のパワードとグレート
・「エンペラ星人編」のネオスとセブン21


 いずれも「静」と「動」、「攻め」と「受け」の組み合わせであり、特撮ファンも兼ねていたBLファンたちが本作に興奮していたのもうなずける!?
 ……いや、バカにしているワケではなく、ヒーローもののメインターゲットはもちろん子供たちではあるものの、一部にはこういう受容をされてもイイのではないのかとマジで思うのである。それがダメだと云うのならば、ブーメランとして返ってきて、子供向けヒーロー番組に対して「あーでもない、こーでもない」と論評して楽しんでいる我々自身の存在もまた否定されねばスジが通らなくなってくる(笑)。



ウルトラマン同士の殺し合いを「見世物」とするなら、それは「商売」として、飽きられ枯れるまで続ければよろしい。もう、僕らが幼いころに胸をときめかせたウルトラマンはここにはいないのだから」



 『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』について、日本テレビ系列の中京テレビのプロデューサーであり、『今甦る! 昭和ヒーロー列伝』(93~96年・中部地区ローカル)を担当したことで知られる喜井竜児(きい・りゅうじ)が、自身のブログでこう批判していた。


 氏の云わんとする実にストイック(禁欲的)なヒーロー観そのものは、やや潔癖ではあるけど誠実なものだとは思える。しかし、ヒーローの偽物と戦うとか、ヒーローと同等のダークヒーローと戦うとか、誤解や洗脳からヒーロー同士が一時的に戦ってしまうといった展開なども、実に楽しいものではないか!?(汗)
 ヒーローに比べたら、見た眼的にも分が悪いから、最後には負けるのだろうナ、という感じのルーティンな怪獣や怪人と戦っているのと比べたら、時たまに変化球として登場してくるヒーローの偽物やダークヒーローは、通常回のゲスト怪人やゲスト怪獣たちよりも強そうには見えるのだ! もちろんそれでも最後にはヒーローに負けてしまうのだとわかってはいても(笑)、我々はワクワクとさせられてしまうのだ。
 ヒーロー同士の必殺技の応酬や力比べなども、リアルに考えればたしかに不謹慎な殺し合い(爆)かもしれない。しかし、オラオラ系の暴力的なナマ身の人間が演じるものではない、記号的な仮面ヒーローたちによる舞踏的で様式美的でスマートなアクション描写だと、殺伐とした感じはそれほどしないのではなかろうか?――もちろん意見というものはヒトそれぞれではあるので、そう思われる方々の見解を全面否定するものでもないのだが・汗――



 先のアミノテツロー監督の発言のように、ナマ身の人間に演じさせたらばクサくなってしまうようなセリフや演技や作品テーマでも、漫画アニメのキャラやSDキャラ、アニメ特撮の記号的な仮面キャラに語らせれば、生グサさも減らせてそのストーリー展開やメッセージにひたれたり、そのことで道徳的なテーマまでもが純化して浮上してきて、スナオに受け取れて心に響いてきたりもするものである。こういった利点を活かして、これまで極めて暑苦しいくらいの友情ドラマが『激伝』では展開されてきた。


 たとえば、ごく少数いるにはいた実写特撮『ウルトラマンメビウス』における、漫画アニメ的な防衛組織・GUYSの熱血バカばかりな暑苦しい絶叫調の友情ドラマがやや苦手だった方々でも、こうした漫画のような最初から記号化やデフォルメの度合いが高い媒体であったならば、『メビウス』のような熱血少年漫画的なストーリー展開や人間描写であったとしても、受け入れられやすいのではなかろうか?


 それとは別に、頭身がデフォルメされた『激伝』に、実写のウルトラマンシリーズはまるで観たことがないにもかかわらず、可愛い「仮面キャラ」が演じている「人間ドラマ」(笑)にハマり、そこからウルトラシリーズに興味を持ち始めたようなオタクのお姉さんたちも、『激伝』の各種同人誌などを観るかぎりではいるにはいるのである。後年の『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)で実力派人気声優たちが声をアテていたキモ可愛い仮面怪人キャラ・イマジン4人組が高いオタク女性人気を示したことの先駆けでもあるだろう。こういった仮面ヒーローたちに漫画アニメ的なデフォルメされた性格を与えることも、特撮ジャンルの商業的な新たな鉱脈であるようにも思うのだ。



「エンペラ星人編は、ガシャポンでやっていた展開<註4>はみんなやる予定でしたね。


●註4:ガシャポンでの展開…(ウルトラマン)ゼアスと(ウルトラマン)ティガ、グランドキングをはじめとする陸海空の合体獣、2代目怪獣軍団などが、ガシャポンでは先行販売されていた。この時点で謎の存在だったエンペラ星人の姿がデザイン・商品化され、『ウルトラマンメビウス』以前には公式デザインとして認定されていた。


 どうしても末期の頃になると、漫画は月一連載で、ガシャポンは三ヶ月に一回12体ずつ出るから最低4キャラを月一で消費する話にしない限り、ガシャポンと同時展開できないんですよ。ただそれだけが原因ではなく、ガシャポンのセールス的にも漫画的にも、そろそろほどよいとこかなみたいな感じでした」


(『フィギュア王』No.139「光の国◆人物列伝」瑳川竜 ~『フィギュア王』プレミアムシリーズ6『ウルトラソフビ超図鑑』にも再掲載)


――引用者註:グランドキングとは映画『ウルトラマン物語』に登場した宿敵怪獣。内山まもる作画の挿絵の中に影のような姿として描かれてきたエンペラ星人を、本作のためにデザインしたのは円谷プロ所属だったデザイナー・丸山浩(まるやま・ひろし)。ちなみにグランドキングをはじめとする陸海空の怪獣とは、ガシャポンオリジナルのアクアキング(シーゴラス)とエアロキングバードン)であったようだ――



 先の瑳川氏の発言にもあるように、ネオスとセブン21の関係論は、エンペラ編の人間ドラマ面での背骨であったためか、ドラマとしては「エンペラ星人編」はきっちりとした終わり方となっていた。


 もっともエンペラ軍団にウルトラベルを奪われたままの状態ではあり、「本当の戦いはこれからだ!」という締めくくられ方は、メタ的に見ればいかにも「打ち切り」といった印象ではある(笑)。
 しかし、逆に云うならば、いくらでも続編を再開させることが可能である! というような完結のさせ方なのである。


続編『ウルトラマン超闘士鎧伝』


 『コミックボンボン』における『激伝』の連載は97年3月号で終了した。しかし、ガシャポンの写真を使用した『ウルトラマン超闘士鎧伝(ちょうとうし・がいでん)』なる続編的な内容の記事連載が、同年11月号までは続けられたようである。
 『ボンボン』には、ギャグ漫画ではあるが『ウルトラ忍法帖』(92~05年)というウルトラマンの漫画がもう1本連載されており、こちらは打ち切りにあわずに21世紀までの長期連載を成し遂げている。それはそれで喜ばしいことなのだが、『ウルトラ忍法帖』の方が人気は高かったのだろうか? とてもそうは思えないのだが(笑)。
 ならばせめて、ガシャポン展開が完全終了する前後までの約8号分くらいは、『激伝』にも連載を続けさせてほしかったものである。


 筆者の調査不足で詳細は不明なのだが、エンペラ星人編で結成された「銀河遊撃隊」に初代ウルトラマン隊長の下にウルトラマンゼアスが新人隊員として参加。映画『ウルトラマンゼアス』(95年)本編での宿敵・ベンゼン星人を基にしたダークベンゼン星人(!)と戦うというのがストーリーであり、宇宙の彼方で超古代のウルトラマンティガの石像を発見するというストーリーだったようだ。


 加えて、ウルトラの星の3大秘宝がすべてエンペラ軍団に奪われてしまって、エンペラ星人は3大秘宝を本来の姿である「ウルトラクロス」――超古代ウルトラ人(ティガのご先祖? ティガの同族?)によってつくられた伝説の「闘衣」――に復元するのだが、ゼアスが「太陽の棺」で元の3大秘宝の姿に戻すのだとか、ウルトラクロスを半々に分けてエンペラ星人と初代ウルトラマンがその身にまとって激突するのだとか…… 当時を知っている若い人がいたら、誰かこのオジサンに教えて下さい!(笑)


――後日付記:『鎧伝』のストーリーは後述した「ウルトラクロス編」の方が先行するエピソードであり、前述した「ダークベンゼン編」があとのエピソードだったそうです――


*そして、実写作品でも最新ウルトラ戦士・ウルトラマンゼロが遂に鎧を着用する日が来た!!


 さてさて、もう皆さんも違法にアップロードされている玩具業界向けの写真などで知っているだろうが(笑)、2010年12月23日(祝)に公開される映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)において、ウルトラマンゼロは究極武装! 「ウルティメイトゼロ」として、なんと遂にアーマー――小さい鎧なので全身にまとうといった感じではないけれど――を装着するのである! このアーマーは巨大な弓矢にも変型するという!


 そして、『激伝』でも描かれた、70年代前半に構想されていた、円谷プロ作品はすべて同一世界の物語であるとする「銀河連邦」の構想までもがアレンジされて復活!


 ゼロとともに戦う仲間として、


・「鏡の戦士」である巨大な宇宙鏡の中の2次元世界出自の「ミラーナイト」――最終回で2次元の世界に帰った『ミラーマン』(71年)のアレンジ――
・「炎の戦士」の「グレンファイヤー」――最終回で宇宙に旅立った地底人『ファイヤーマン』(73年)のアレンジ――
・「鋼の戦士」である正義のロボット「ジャンボット」――惑星エスメラルダならぬエメラルド星からの贈りもの『ジャンボーグA』(73年)のアレンジで、セスナならぬジャンバードなる宇宙船から変型するようだ――


 といったリメイクキャラクターたちも登場!


 『ミラーマン』の敵怪獣アイアンの姿かたちや、『ジャンボーグA』のグロース星人の歴代敵幹部の名前にある末尾の「~ゴーネ」も継承した新たなキャラクターも、悪のウルトラマンであるウルトラマンベリアルこと復活したカイザーベリアルが率いるベリアル帝国の幹部としてアレンジ復活する。



初代ウルトラマンとほぼ同年数の人生を送ってきた僕(と言っても2万年では無い。今年(96年)は彼の生誕30周年!)は物心ついた頃からもう毎日がウルトラだった。
 『マン』(初代『ウルトラマン』(66年))や『セブン』(『ウルトラセブン』(67年))の再放送に夢中になり、『ウルトラファイト』(70年)すら一時も見のがさなかったバリバリの第二期世代だ。
 『帰ってきたウルトラマン』(71年)の1話の放送日などは近所の友達全員と正座して、TVの前で待ちかまえていたものだ。あの光輝くオープニングが流れ出した時の感動は忘れない。「ああ、オレたちのウルトラマンがはじまるんだ!!」という実感を子供心にひしひしと感じていた。


 その上に、多感な中学生時代に第三期ブームが起こってしまった。気がつくと劇場版や怪獣消しゴム集めとかにドップリはまっていたのである。僕の同年代に“ウルトラ信者”が非常に多いのも、こうした運命的なタイミングにより、全シリーズを切れ目なく観続けた世代だからだろう。


 生まれた時にはウルトラマンがこの世に存在した僕らには空白期間が全く無い。ずっとウルトラファンだったと言っても過言では無いのである。


 だから『激伝』のストーリー原作という仕事をいただいた時ももうただうれしくて仕方無かった。長年楽しませてもらったウルトラ戦士たちへのご恩返しだ。単にキャラクターを拝借しただけのSD物に終わらせることなく、本家のウルトラマン物語のアフターストーリー的な要素を徹底的に強くした」


(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「MESSAGE」原作・脚本:瑳川竜)



 そう。「アフターストーリー」の要素もまた、人々をワクワクとさせるものなのである!
 『激伝』が終了して早くも十数年、ようやく世間が追いついてきた。『激伝』がいかに先見性に富んでいたかが、『ウルトラマンゼロ THE MOVIE』での展開を見ても窺い知れるというものだ。
 

 しかし、地上波どころかBS放送の新作テレビシリーズ、旧作や準・新作の再放送などもなく、特に目立ったパブリシティー展開もない2010年においては、どうやって集客につなげていくのかが最大の課題ではある。
 しかも、世代人や特撮マニア以外には知る人が少ない『ミラーマン』や『ファイヤーマン』や『ジャンボーグA』のアレンジキャラクターではある。


 とはいえ彼らリメイクキャラクターを使うことで、観客比率で考えればやはり少数派ではあろう特撮マニアの固定客たちにも、あとでビデオが出たらレンタルして観ればイイや……で終わらせずに、小まめに確実にゲットして少しでも興行収入を上げていくべきではあるのだ。


 よって、前年度の映画『ウルトラ銀河伝説』の後日談といった意味だけでなく、もっとさまざまな作品の「アフターストーリー」的な要素を前面に押し出して、


・ミラーナイトはミラーマンのまさに同族だった!
・グレンファイヤーは宇宙に散ったファイヤーマンの不肖(笑)の息子だった!
・惑星エスメラルダも実はエメラルド星のことであり、その住民は地球人と変わらない姿をしているけど、一部の戦士たちは『ジャンボーグA』に登場したエメラルド星人やその息子・カインのような超人ヒーローとしての姿に巨大化変身できるのだ! ジャンボーグ7やジャンボーグ11(笑)といった巨大ロボットも配備されていたのだ!


 くらいのことまでして、往年の『ミラーマン』『ファイヤーマン』『ジャンボーグA』の世界観とも直結してくれないものかなぁ(笑)。


 そもそも、『ミラーマン』の防衛組織・SGMが、『ジャンボーグA』のシリーズ後半にもその防衛組織・PAT(パット)の隊長や一部隊員として参画することから、この2作品は少なくとも放映テレビ局を超えた同一世界の作品なのである。


 もちろん一般層には正直それほどの訴求力がある手法では決してない。しかし、ヒーロー級の多数の仮面キャラクターを登場させることは、画面に華(はな)を添えるものだし、年長マニアのみならずマニア予備軍である怪獣博士タイプの子供たちをゲットするのにも実に良い趣向であると思えるのだ。


 だが、最も肝心なのは、東映平成ライダーシリーズを手懸けてきた白倉伸一郎プロデューサーも最近各誌で発言しているように――氏のつくる作品を必ずしもすべて好んでいるワケではないが、それとこれとは別である――、1960~70年代のような作品の大ヒットは望めないにしても、連続テレビシリーズとして『ライダー』や『スーパー戦隊』のように中断の切れ目なく、今や子供向け番組が各局で集中するようになって、子供たちの視聴習慣も根付いていそうな土日の午前中あたりの放映枠などをゲットして、細々とでも放映をし続けることで、子供たちへの接触面積を少しでも増やし続けることが肝要なのである。


 そのためには、赤字にならないリーズナブルな予算の範疇(笑)で新作シリーズを毎年製作して、シリーズが中断している間に他の人気アニメなどが入ってしまって放映枠を取り返せないとか、あるいは放映枠それ自体が消滅してしまうような最悪の事態(爆)は二度と避けねばならないのだ。
 1990年代までとは違って、久しぶりにシリーズを再開させれば、視聴者や子供たちにも新鮮に思ってもらえたり、ドラマ的・テーマ的・質的にも良い作品をつくりさえすれば、それだけで人気もゲットできるという時代ではもはやないだろう。
 物事の変化のスピードが実に早い今という時代に、シリーズに長い中断期間が生じてしまうと、子供たちにも「終ワコン」(終わったコンテンツ)的な古クサい印象を持たれてしまうような気配がプンプンとするのだ……


 ウルトラマンや怪獣という存在自体がどこまで行っても、今となっては悪い意味ばかりではなく「既成概念」のかたまりなのである。昭和のウルトラ兄弟には頼らないウルトラ戦士を見てみたいという声にも一理はある。しかし、そんなことを云い出したら、そもそも「ウルトラマン」の看板に頼らない新ヒーローをつくるべきだ! という話に帰結していかないと論理的には矛盾してしまうのである(笑)――これは新旧ヒーロー共演が当然となってきた近年の「ライダー」や「戦隊」にも当てはまる議論である――



 そうなると、本作『激伝』のように、「原点回帰」「本格SF志向」「大人向け」(笑)などではなく、オモチャ箱をひっくり返したような感覚の、良い意味でのB級作品であり、バトルを主眼に据えたオールスター総登場路線!


・70年代中盤の学年誌内山まもる大先生に始まる広大なる宇宙を舞台としてウルトラマン一族たちが大活躍するオリジナル漫画!
・イベントでのウルトラ戦士たちが活躍するアトラクショー!
・テレビシリーズ『ウルトラマンメビウス』や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』などのような複数ヒーローや複数怪獣登場もの!


 そういった路線を大前提として、その延長線の方向に、その次の一手として現代の子供たちが喜びそうで、玩具会社・バンダイも収益を高められそうな、プレイバリューの高い玩具性を強めていくしかないのではなかろうか? 昭和ライダーたちのシンプルな姿からははるかに遠ざかってしまった平成ライダーたちの玩具性の高い姿がすでにそうであるように……


 2010年現在、新作テレビシリーズを製作できる体制にはないと思われる円谷プロであるが、そうであるならテレビ以外でもさしあたって、イベントやアトラクや児童誌での特写グラビア展開・漫画連載、低予算ビデオ媒体での続編や番外編、それこそ『激伝』ほかの漫画作品や、そのアニメ化、この『激伝』自体も掲載誌や出版社の垣根を超えた続編の再開など、ムリのないかたちでなにかしらの手を打つことで日々の小銭も稼いで、子供やマニアたちの関心をつなげるべきではなかろうか? そして、その上でのテレビシリーズの復活であるべきだろう。


 角川書店の月刊漫画誌特撮エース』(03~06年)では、初代『ウルトラマン』のリメイク漫画である『ウルトラマン THE FIRST(ザ・ファースト)』(03年)などが連載されていたけど、失礼ながらそんな後ろ向きな企画にニーズがあったとはとても思えないのである。それこそ『激伝』の続編でも引っ張ってきた方が、潜在ニーズもあってよっぽど売れたんじゃないのかしら?


 年1回のウルトラマン映画の公開だけでは、21世紀初頭にシリーズが再開するも早々に終焉してしまった東宝のミレニアム『ゴジラ』シリーズ(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060304/p1)の二の舞となることは必定である。
 映画公開の年末年始のクリスマス商戦に少しでも玩具を売ることは実に重要なのだが、それだけでも翌年の映画の製作費くらいならばともかく、今後の新作テレビシリーズの充分な製作費を稼ぐこともできないだろう。


 しかし、過剰に深刻に考える必要もないだろう。子供も年長マニアもゲットできるような、ヒーロー総登場で熱血バトル路線で歴代シリーズの小ネタや玩具性にも満ち満ちていた、オリジナル展開漫画『ウルトラマン超闘士激伝』という、時代を先駆けていた立派なテキストがあるのだから……



 ……『激伝』の原作を務めた瑳川竜は、『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)で東映特撮にいきなり登板して、しかも最初からメインライターを務めた三条陸(さんじょう・りく)のペンネームであったことが2009年に判明している。なんとライバル作品である『仮面ライダー』シリーズへの登板! ならば、『ウルトラマン』シリーズのメインライターとして、関係者は氏をスカウトしてきてくださいよ!(笑)



<参考文献>
同人誌『ウルトラマン超闘士激伝 小事典』(UNLUCKY BIRD・97年6月1日発行・00年3月26日3刷発行)ほか
同人誌『ウルトラマン超闘士激変』シリーズ(はじめくんとマグロちゃん・97年3月23日発行)ほか


2010.7.26.



P.S.


 復刊ドットコムの復刻版コミックスには、栗原仁によって新たに描き下ろされたギャグ漫画も掲載されている。
 第3巻の巻末にある『続・セブン家の人々』は、映画『ウルトラ銀河伝説』にそろって出演できたり、ソフビ発売を喜ぶセブンとカプセル怪獣ミクラス・ウインダム・アギラの家に、扉の陰から半身だけ覗くかたちで、


セブンガー「みなさん ぼくの事なんか忘れてるんですね」


 と、『レオ』第34話『ウルトラ兄弟永遠の誓い』に登場した怪獣ボール・セブンガーが「恨み節」をグチりに来る(笑)。


 セブンはこともあろうに、セブンガーの陰が薄いのは連れてきたジャックのせいだと云いだし、カプセル怪獣たちもセブンといっしょに住めばソフビ化のオファーかかりまくり、再評価の嵐だとあおる。


 すると今度はジャックが扉の陰から半身だけ覗くかたちで、「どーせ話が地味だよ」「どーせ模様がパンツだよ」「どうせ二代目ゼットンはくさってるよ」などとイジケる始末(笑)。


 こんなことがギャグにされないように、そろそろセブンガーを復活させてやれよ!(笑)


 また第1巻の巻末では『バーナーオン!』なる『メビウス』の4コマ漫画が。毎度デフォルメされているが、GUYSのリュウ・ジョージ・マリナ・コノミ隊員たちがクリソツ! 肖像権は大丈夫なのか?(笑)



(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2011年準備号』(10年8月13日発行)~『仮面特攻隊2011年号』(10年12月30日発行)所収『ウルトラマン超闘士激伝』より抜粋)



後日付記:なんと! 『ウルトラマン超闘士激伝』は連載終了から17年もの歳月を経た2014年から、バンダイのカプセル玩具『ガシャポン(R)』の公式ホームページ「ガシャポンワールド」にて『ウルトラマン超闘士激伝 新章』と題した続編が連載開始されて、秋田書店の『少年チャンピオン・コミックス エクストラ』レーベルから2016年以降は単行本も続々続刊が発売されている!
ウルトラマン超闘士激伝 新章 1 (少年チャンピオン・コミックス エクストラ)


 『激伝』正編も新装版の「完全版」として再刊発行中!(玩具展開のみで語られたエピソードなどの紹介ページもあるそうだ)


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配信完結『ウルトラギャラクシーファイト』の元祖のひとつ!
#超闘士激伝 #ウルトラマン超闘士激伝 #瑳川竜 #栗原仁 #ウルトラギャラクシーファイト



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