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ウルトラマンギンガ序盤評 ~低予算を逆手に取る良質ジュブナイルだが、それゆえの危惧もアリ!?

(2020年8月20日(木)UP)
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 ウルトラマンギンガも客演する映画『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年)が公開中記念! とカコつけて……。『ウルトラマンギンガ』(13年)序盤評を発掘アップ!


ウルトラマンギンガ』序盤評 ~低予算を逆手に取る良質ジュブナイルだが、それゆえの危惧もアリ!?

(文・久保達也)
(2013年7月26日脱稿)


 はるか遠い昔、M78星雲・光の国を、怪獣軍団が襲撃したことから勃発(ぼっぱつ)した「ウルトラ大戦争」!


 厳密(げんみつ)に云えば、『ウルトラマンギンガ』(13年)第1話『星の降る町』冒頭で描かれたのは、ウルトラシリーズのファンには広く知られている暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人が率いる怪獣軍団が光の国に攻めてきた3万年前の「ウルトラ大戦争」=「ウルティメイトウォーズ」ではない。「ダークスパークウォーズ」というらしい。
 3万年前の「ウルトラ大戦争」は宇宙警備隊大隊長ウルトラの父が若かったころの話であり、年齢が2万歳の初代ウルトラマンさえもまだ生まれてはいなかった時代である(笑)。もっとも、ウラ設定にふれずに完成映像だけを観ていれば、宇宙恐竜ゼットンと戦っていたのは初代マンの父か祖父であるなどと解釈すれば、今回描かれたのはまさしくあの3万年前の「ウルトラ大戦争」であるという見方も可能ではある。が、それもまたややこしくなりそうなので、今回描かれた「ウルトラ大戦争」はせいぜい数千年前に起きた別の戦争であり(?)、戦っていたのはあくまで本人たちであると認定した方がよさそうだ!?


 初代ウルトラマンVS宇宙恐竜ゼットン
 ウルトラセブンVS双頭怪獣キングパンドン
 そして、極悪宇宙人テンペラー星人と戦っていたのは、ウルトラマンタロウ
 そして、ウルトラマンティガ


 えっ!? ウソだろ! マジかよ!(爆)


 昭和ウルトラシリーズとは世界観が異なるハズのティガが、はるか遠い昔に「光の国」で起きた「ウルトラ大戦争」に参戦していた!? 見間違いと思って何度繰り返して観ても、たしかにあれはティガの姿だ! しかも、声までもが『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)と同一のものを使っている。


 しかしながら、この数年東映が製作・公開している映画『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』(11年)や『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z(ゼット)』(13年)などのヒーロー大集合映画において、昭和の仮面ライダー平成ライダーがいつの間にか作品世界を共有しているのをはじめ(笑)、スーパー戦隊宇宙刑事、そして故・石ノ森章太郎(いしのもり・しょうたろう)が「昭和」の時代に生み出した数々の変身ヒーローまでもが次々と共演するのが当然になってしまっている。であるならば、細(こま)かな設定はなかったことにするか忘れてしまったフリをして、ドサクサにまぎれてティガを「ウルトラ兄弟」の一員にしてしまうのも、今後の商業展開を展望した上での戦略としてはむしろ歓迎すべきなのかもしれない!?


 数多くのウルトラマンと怪獣たちが画面を埋めつくすほどに繰り広げられる「ウルトラ大戦争」! トータルすれば数十秒程度の描写ではあるが、エンディングには「スーツアクター」として十数人もの名前がクレジットされており、しかもその中には女性の名前が数名含まれている。
 ということは、作品には使われていない部分も含め数多くのカットが撮影されているはずであり、その中では『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)で初登場したウルトラの星の王女・ユリアンや、アメリカとの合作アニメ映画『ウルトラマンUSA』(89年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100821/p1)に登場したウルトラウーマンベスなども戦っていたのかもしれない。


 この「大戦争」の背景に浮かび上がった巨大な悪霊(あくりょう)のような黒い人影。その人影が発動させたダークスパークによって、ウルトラマンたちも怪獣軍団も一瞬のうちに白熱して姿を消してしまう! この一連のシーンではウルトラマンレオウルトラマンメビウスの姿も確認できる――『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)でヒビノ・ミライ=ウルトラマンメビウス役で主演した五十嵐隼士(いがらし・しゅんじ)の掛け声を加工したメビウスの悲鳴のような声をしっかりと使っている(笑)――。しかし、なにせ数秒の描写なので、筆者にはレオ・メビウスを追うだけで精一杯だった。ググってみてマニア諸氏による観察結果などを読んでみると、ウルトラマンダイナや平成ウルトラの怪獣である超古代怪獣ゴルザなどもいたらしい。


 そして、ウルトラマンたちも怪獣軍団もそのすべてが「人形」と化してしまい、地球の日本、それも本作の高校生主人公・礼堂ヒカル(らいどう・ひかる)の故郷にある降星山(ふるほしやま)に降り注(そそ)いで、長年のあいだ眠り続けることとなっていた……というのが本作の基本設定である。


 したがって、本作の舞台は「過去にウルトラマンも怪獣も出現したことがない」世界であり、映画『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)の舞台のような「アナザーアース」としての並行宇宙の地球なのである。


 しかし、いかに並行宇宙の地球だとはいえ、数万年~数千年のむかしにウルトラの一族たちがすべて「人形」と化してしまって、仮に歴史が改変なり分岐したかたちでの西暦2013年の現在へと至ってしまったとなると、20世紀後半(1966年)~21世紀初頭(2007年)を舞台としていた昭和ウルトラシリーズの時点でも、ウルトラ兄弟たちはまだ「人形」のままだったことになってしまって、昭和ウルトラの歴史もなかったことにもなりかねない!?
 そうなると、昭和ウルトラ直系の正統続編として登場した『ウルトラマンメビウス』(06年)に始まって、その100年後だか1000年後だかの大宇宙に進出した未来の時代の地球人類を描いていた『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)シリーズや、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)以降のウルトラマンゼロを主人公とした連作の数々もなかったことになってしまう!?


 それは実にイヤなことである(笑)。昭和ウルトラやウルトラマンゼロの物語をなかったことにしないためには、本作冒頭の「ウルトラ大戦争」とは3万年前の「ウルトラ大戦争」や数千年前の出来事などではなく、『ウルトラゼロファイト』第2部『輝きのゼロ』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200314/p1)の直後の時系列に起こった事件とし(!)、その際に「人形」化されてしまったウルトラ一族と怪獣たちは、光の国があった宇宙での昭和ウルトラやそれに近しい地球ではなく、光の国がない並行宇宙の地球へと飛ばされてしまって、その時点からの「はるか遠い未来」(笑)の時代が、本作『ギンガ』の西暦2013年の日本になっている……といったことにでもしないかぎりは、整合性が取れないことだろう。


 今回のこの舞台設定だけを見ると、本来なら「またリセットかい!?」と個人的には批判したくなるところではある。だが、「人形」化されたウルトラマンの中で唯一(ゆいいつ)、意識を残していて言葉も話し、「ウルトラ念力」も使えるウルトラマンタロウの口からヒカルに「ウルトラ大戦争」の逸話(いつわ)が話されることによって、少なくとも昭和ウルトラの系譜である「M78星雲・光の国」の物語とだけは、屈折したかたちで地続きとなっていることだけはたしかだろう。
――「ウルトラ念力」とは、『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)で変身能力を失ったウルトラセブン=防衛組織MAC(マック)のモロボシ・ダン隊長も使用した念力。その能力を発揮する際には『ミラーマン』(71年・円谷プロ フジテレビ)のオープニング映像でもおなじみとなっていた幾何学的(きかがくてき)な光学映像が半透明で合成されているが、本作でも同一の映像素材を使用! 効果音まで同じであった!――


 映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』以来、総集編や旧作を再放送する番組『ウルトラマン列伝』(11~13年)の枠内で放映された短編シリーズ『ウルトラゼロファイト』(12年)に至るまで、さまざまな媒体(ばいたい)でイレギュラーに描かれつつも、見事に世界観の統一を保ち続け、そのすべてが前作の続編となっていたウルトラマンゼロが主役の物語群。
 それらとの直接的な関連がないように見える本作『ウルトラマンギンガ』には、子供たちやマニアたちへの強烈なヒキが欠けてしまうように見える一点で、けっこうな危惧(きぐ)をおぼえている筆者ではあるが、今回は物語の大前提としてM78星雲・光の国とウルトラ一族が描かれているだけに、やや苦しいけれども一応の納得はせざるを得ないところではある。


 メタ的な擁護になってしまうが、『ウルトラマンギンガ』自体が放映されている番組枠でもあり、『ギンガ』第1話が放映される1週前に放映された『新ウルトラマン列伝』(13年)の記念すべき第1回の冒頭で、ウルトラマンゼロの父・ウルトラセブンが天を仰(あお)いでゼロの名を呼び、初代マンとゼロについて語るという、一応のフォローもされていたし(笑)。


 ただ、第2話『夏の夜の夢』にて、「光の国の歴史」にも確認されていないウルトラマンであるギンガの存在を不思議に思った「人形」状態のウルトラマンタロウに、ヒカルが「そもそもウルトラマンって何?」と尋(たず)ねて、「我々の故郷のM78星雲は……」などとタロウがせっかく話し出したのを、尺の都合だろうがすぐに画面がフェードアウトしてシーン転換しまうという処置はどうにもなぁ。


 我々古い世代の特撮マニアには既知のことでも、『ギンガ』が初の「ウルトラ」体験である現役幼児は当然として、現在はその親の世代もまたリアルタイムでウルトラを体験していない人々が大多数にのぼることを忘れてはいないだろうか?


「パパ、『ファイヤーマン』(73年・円谷プロ 日本テレビ)って知ってる?」
「知らないなぁ」
「『ジャンボーグA(エース)』(73年・円谷プロ 毎日放送)は?」
「知らないなぁ。観たことないのばっかだなぁ」


 「円谷プロ創立50周年」である今年2013年は、東映ビデオから円谷プロの過去の作品がDVDとして続々発売されている――この動きは2011年末発売の『ミラーマン』から始まっていた――。これらの広告は東映が公開するヒーロー作品の劇場版のパンフにも掲載されているが、先に挙げたのはそれを見ながらの観客の親子の会話であった。


戦隊シリーズには詳しいのに、『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090802/p1)に登場する悪の仮面ライダー・シャドームーンのことを一切知らない若い特撮マニアたち
●あらゆる媒体で露出が高いにもかかわらず、『仮面ライダー』初作(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)の敵組織・ショッカーの戦闘員のことを「まったく知らない」若い父親


 平成仮面ライダーシリーズがこの10数年間、継続して放映されて好評を博しているにもかかわらず、その劇場版を観に行くとそうした人々の存在を目にして驚かされることがある。


 昭和の仮面ライダーを「全然知らない」人々が存在するのだから、昭和から平成にかけて何度も放映に長いブランクが生じていたウルトラマンのことを「全然知らない」人々がこの国にも少なからず存在すると考える方が自然である。


 また、基本的には「再放送」作品であるということで、これまで『列伝』のことをチェックしてこなかった現役東映ヒーロー主体の特撮マニアやライト層でも、何年かぶりの30分まるまるの新作「ウルトラ」である『ウルトラマンギンガ』の放映を機に、この際「ウルトラ」とはいったいどんなものなのか? と「お試し」として視聴するという「初心者」の存在もあるかもしれない。
 なので、今回そうした層に向け、あらためて「ウルトラマンのこと」について「いささか長い話」(笑)ではなく、簡単でいいからタロウの声を演じる石丸博也(いしまる・ひろや)の優しくも説得力のある語り口で聞かせてほしかったように思えるのである。


主人公がまずは怪獣に変身! さらにウルトラマンへと二段変身!!


 脱線が長くなってしまったが、『ギンガ』の方に話を戻そう。


 降星山のふもとにあり、1ヶ月ほど前に隕石が落下したことによる火事で焼失してしまった山中にある銀河神社は――これまた数秒とはいえ、リアルなミニチュアの神社が焼失するカットは絶品である――、ヒカルたちの母校で廃校となった降星小学校の音楽室にその場所を暫定的に移されていた。


 神社の神主(かんぬし)=ヒカルの祖父には津川雅彦(つがわ・まさひこ)。校長先生には木野花(きの・はな)。……って、超低予算作品なのによくギャラが出たなぁ。その予算を少しでも「ミニチュア特撮」の方に回すべきではなかったかとも思えるのだが(笑)。


 そこに、「御神体(ごしんたい)」として安置されていた「光の国の言い伝え」にもあったギンガスパークこそが、本作での変身アイテムである。そして、それを発見したヒカルの右手の甲に紋章(もんしょう)が浮かび上がってきたことが、ヒカルが劇中内での「選ばれし者」であることを証明しているとされるのだ!――銀河神社の社(やしろ)にも、同じ紋章がしっかりとモールドされている(笑)――。


 「人形」状態のタロウは自分の足の裏にもヒカルの手に表れたのと同じような紋章があり、ギンガスパークの先端でそれをなぞることによって、自分を元の姿に戻してくれるように依頼する。だが、何も起きることはなかった……


 そして、ギンガスパークが山中で探知して、発見した用心棒怪獣ブラックキングの人形の足の裏で、ヒカルが同じことを試してみるや、


「ウルトライブ! ブラックキング!」


などというギンガスパークからガイダンス音声が発せられて、ヒカルとブラックキングの人形が一体化! まさに歴代ウルトラマンの各話でのバンクフィルムによる変身巨大化パターンのパロディのごとく、右手のこぶしを大きく前に突き出し、画面奥の「選ばれし者」の紋章から画面手前に飛び出してくるブラックキング!! 効果音までもが初代ウルトラマンマン・ウルトラマンジャックウルトラマンエースたちの変身時の効果音と同一だ!(笑)


 本作で登場する過去作品の人気怪獣たちは、『ウルトラセブン』(67年)のカプセル怪獣、『ウルトラマンメビウス』のマケット怪獣、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』シリーズで主人公の怪獣使いの青年・レイが怪獣召喚アイテム・バトルナイザーで操った怪獣たちのように、ヒカルがギンガスパークで人形を巨大化させて「操る」ものだとばかり、筆者は思いこんでいた。だが、まさかヒカル本人が直々に巨大怪獣に「変身」してしまうとは!


 第1話の敵怪獣である、『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)第1~2話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971201/p1)にも登場した怪獣ダランビアやネオダランビアの系列にある超合成獣サンダーダランビアの電撃攻撃を受けて、ブラックキングがヒカルの声で「うわぁ~~!!」と苦しんだり、ダランビアの攻撃を背中で受けとめて本作の女子高生メインヒロイン・石動美鈴(いするぎ・みすず)に「早く逃げろ!」などとブラックキングがヒカルの声で叫んでいる描写は、正直に云うとおもわず笑いがこみあげてしまう。


 しかしながら、筆者のように長年、特撮マニアを続けている者でさえも想像だにしなかったような今回の「掟(おきて)破り」の設定には、まさしく「やられた!」と感服(かんぷく)せずにはいられないものもあったのだ。


 ヒカルから怪獣へ、そして怪獣からウルトラマンギンガへという「二段変身」! そうした稚気満々(ちきまんまん)な要素こそが大事なのである!


 『仮面ライダー』の爆発的人気で巻き起こった70年代前半の「変身ブーム」。両腕を大きく振るって特定のポーズを取ることで超人ヒーローへと「変身」するシーンに、子供たちは身体拡張・身体強化の全能感・万能感を刺激されておおいに夢中となっていた。その子供たちの機微に目ざとく気づいた各製作会社は、乱立する変身ヒーロー作品の中で他作品と少しでも差をつけようと、「変身」そのものにも創意工夫を凝(こ)らして、カッコいい変身ポーズを考案し、男女合体変身やら少年ふたりが合体変身するなどのバリエーションも産み出して、そこに派手派手な特殊映像効果もかぶせていった。


●『イナズマン』(73年・東映 NET→現テレビ朝日)では、主人公青年の渡五郎(わたり・ごろう)がまずサナギマンに、そしてイナズマンへと「二段変身」!
●『サンダーマスク』(72年・ひろみプロ 日本テレビ)では、主人公青年の命光一(いのち・こういち)がまず人間大サイズのサンダーマスクに変身し、「サンダ~~! にだ~ん! へ~ん、し~~ん!!」(笑)という、実に長~い掛け声によって「二段変身」も披露していた!(二段目の変身は単なる巨大化・笑)


 いや、単なる巨大化を「二段変身」と云い切ってしまうようなハッタリ(笑)こそが大事なのである。権利関係の諸問題から放映や映像ソフト化はほぼ絶望的かと思われる『サンダーマスク』ではあるものの、そのハッタリもあったからこそ、「世代人」の心にいつまでも残る存在となり得ているのではなかろうか?


 本作『ギンガ』で描かれる「二段変身」は、初心者にも長年のファンにとっても、画面から受けるインパクトはあまりに絶大なものがある。


 ヒカルが変身したブラックキングの登場場面は、着地した瞬間に土煙があがる瞬間がローアングルで捉えられ、オープンセットで樹木の間からあおりで捉えられたあと、「スッゲェ~!」と得意になったヒカル=ブラックキングが振り返りながら振り回したシッポを、画面手前に合成されている美鈴があわててよけるなど、その巨大感や臨場感が絶妙に表現されていた。


悪人も怪獣に変身! 前座バトルが怪獣vs怪獣!!


 一方、本作ではタロウが云うところの「命ある者の時間をとめる」アイテムである「ダークスパーク」も登場し――「ギンガスパーク」と同型の黒バージョン(笑)――、人間大サイズで暗躍している宇宙海人バルキー星人が見つけた粗大ゴミの不法投棄をやらかす産廃業者(さんぱいぎょうしゃ)2人組とか、迷彩服姿でバイクで人々を追っかけ回して楽しむ追跡魔などの小悪党(笑)たちが「怪獣人形」と一体化することで、こちらもまた巨大怪獣に「変身」するのであった!


――ご存じのとおり、バルキー星人は『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)最終回(第53話)『さらばタロウよ! ウルトラの母よ!』に登場したタロウの因縁(いんねん)の敵であった。いや、本作でのバルキー星人はその同族の別個体にすぎないが。タロウがヒカルを「見どころある若者」として選んだのと対(つい)を成し、「見どころある悪人(笑)」を次々とスカウトする役目を演じさせるには実に適役かもしれない。最終回で人形から元の巨大な姿に戻ったタロウと巨大化したバルキー星人との因縁バトルを演じるのを観てみたい! ただ、闇の支配者の前で軽快なダンスを繰り出すような本作の憎めない軽妙なキャラ設定からすると、そこまでの宿敵には昇華しそうもないが(笑)――


 変身アイテムという子供向け玩具を目立たせるために、そのネガである同型・色違いの悪の変身アイテム・ダークスパークも登場させて、悪役側も「怪獣人形」で「巨大怪獣」に変身させるという、おそらく玩具会社側からの要望ありきとはいえ、90年代後半の平成ウルトラ3部作では人間のダークサイドにスポットを当てることもままあった、本作『ギンガ』のシリーズ構成・脚本も担当する長谷川圭一(はせがわ・けいいち)の過去の幾作との作風ともコジツケもできるのかもしれない。
 だが、『ウルトラマン80』初期編の設定にあったマイナスエネルギー=「人々の悪い心が怪獣を生み出したり、怪獣に力を与える」が、いささか抽象的でドラマ的にはやや陰鬱(いんうつ)な概念(がいねん)になってしまったことを思えば、本作のそれは「内面」「心」よりも「外面」「形」として現れる「悪事」であって、視覚的・即物的にもはるかにわかりやすく(笑)、「悪」ではあっても過度に「陰鬱」にはならないことから、楽しく観られることが第一である子供向けの娯楽活劇作品としては、ダークな色合いも適度に薄まってバランスが取れているようには感じられるのだ。


 本作『ギンガ』のように、昭和ウルトラにも人間がそのまま怪獣化した例は少数ながら存在する。


●『ウルトラQ』(66年)第16話『カネゴンの繭(まゆ)』に登場した、金にガメついゲスト少年・加根田金男(かねだ・かねお・笑)が変身したコイン怪獣カネゴン
●同じく『ウルトラQ』第22話『変身』に登場した、巨大モルファ蝶の鱗粉を浴びてゲスト昆虫学者が巨大化した変身人間・巨人
●『ウルトラマン』(66年)第23話『故郷は地球』に登場した、某国の宇宙飛行士が宇宙で漂着した星で怪獣化した棲星怪獣ジャミラ
●『ウルトラセブン』(67年)第2話『緑の恐怖』に登場した、ゲストの人々が同化液で植物宇宙人ワイアール星人と同じ姿にされた姿である人間生物X(エックス)
●『帰ってきたウルトラマン』(71年)第47話『狙われた女』に登場した、防衛組織MAT(マット)のレギュラー女性隊員・丘が人魂(ひとだま)型の宇宙生命に乗り移られて怪獣化した人魂怪獣フェミゴン
●『ウルトラマンA(エース)』(72年)第16話『夏の怪奇シリーズ 怪談・牛神男(うしがみおとこ)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060903/p1)に登場した、食肉牛の霊を鎮(しず)める鼻ぐり塚から鼻ぐりを盗んだゲスト青年・高井が異次元人ヤプールに変身させられた牛神超獣カウラ――高井を演じる若かりしころの蟹江敬三(かにえ・けいぞう)による滑稽(こっけい)さと恐怖感が渾然(こんぜん)一体となった見事な演技は必見!――
●同じく『ウルトラマンA』第41話『冬の怪奇シリーズ 怪談! 獅子太鼓』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070209/p1)に登場した、獅子舞の面をかぶったゲスト少年が邪神カイマに変身させられた獅子舞超獣シシゴラン
●『ウルトラマンタロウ』(73年)第31話『あぶない! 嘘つき毒きのこ』に登場した、お化けキノコを食べた人間たちが変身したキノコ人間
●『ウルトラマン80』(80年)第39話『ボクは怪獣だ~い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110122/p1)に登場した、ゲスト少年・テツオが変身した少年怪獣テツオン
●『ウルトラマンティガ』(96年)第11話『闇へのレクイエム』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)に登場した、エボリュウ細胞を自らに移植した科学者が変身した異形進化怪獣エボリュウや、第47話『闇にさようなら』に登場した同じく第エボリュウ細胞で猿が怪獣化した異形進化怪獣メタモルガ
●『ウルトラマンダイナ』(97年)第39話『青春の光と影』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971208/p1)に登場した、やはりエボリュウ細胞で科学者が変身した超異形進化怪獣ゾンボーグ
●映画『ULTRAMAN(ウルトラマン)』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060305/p1)に登場した、海上自衛官がナゾの生命体にその身体を乗っ取られて怪獣化したザ・ワン
●悪役たちが変身した偽ウルトラマンである、イーヴィルティガ・ダークファウスト・ダークメフィスト・ダークメフィストツヴァイ・ダークザギ


 人間の悪い心がやや陰鬱な苦悩ドラマのようなワンクッションを踏んでから、怪獣に乗り移ったり怪獣を操ったりするよりも、そのまま怪獣やダークヒーローに「変身」して動いてくれた方が、子供やライト層や一般大衆が観た場合にははるかにわかりやすいことは自明だろう。


 往年の大人気女児向けアニメ『美少女戦士セーラームーン』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)も、そのシリーズ第1作目の第3クールからは各話のゲストキャラがゲスト怪人に「変身」してしまうパターンが採用されており、これは今に至る女児向けアニメ『プリキュア』シリーズ(04年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191107/p1)にも延々と採用され続けている手法である。近年の平成ライダーシリーズでも、『仮面ライダーフォーゼ』(11年)のゾディアーツ、『仮面ライダーウィザード』(12年)のファントムなど、各話に登場するゲスト怪人には必ず人間体の姿も描かれており、ライダー同様に「変身」するのである。
 それを思えば、毎回ゲストの悪人が怪獣や怪人に「変身」する場面があるというのは、古い世代のウルトラシリーズのマニアたちにはやや違和感があるかもしれないが、その回のゲストキャラが異形(いぎょう)の敵怪人に変身してヒーローともバトルを繰り広げることで、ジャンル作品にありがちなバトルとドラマが分離してしまう問題も回避ができて、むしろバトルとドラマが一体化する効用をもたらしてさえいるのである! よって、「ウルトラ」においてもこのような作劇は積極的に採用してもよいのではないかと考えるのだ。


 そのようなワケで、ヒカルがウルトラマンギンガに変身する直前に「ウルトライブ!」で一体化した怪獣と、悪人たちが「ダークライブ!」で一体化した怪獣が、各話で繰り広げてくれる前座バトル!


 第1話では、「全部、黒焦(くろこ)げにしてやるぜ!」などと人間の悪党声(笑)でほえている怪獣サンダーダランビアが、樹木を踏みつぶしながら進撃してきたり、ダランビアの電撃で吹っ飛ばされたブラックキングが大地に転がるさまが、そして木々の間でガッチリと組み合う両者の姿が、美鈴の目線からのあおりでローアングルで捉えられる!


 第2話では、「さぁ、ビリビリ(電撃)いきますか!」などとヒカルの声で叫ぶサンダーダランビアと、追跡魔がダークライブした誘拐怪人ケムール人とが激突!――よく見ると、追跡魔が乗るバイクまるごとケムール人と化していることから、その後に披露した身軽な動きはバイクが理由なのかもしれない?(笑)――


 だが、サンダーダランビアの重厚なスーツに比べてはるかに動きやすいのをいいことに(笑)、ケムール人は瞬間移動でサンダーダランビアを翻弄(ほんろう)するばかりか、背後からキックをかますわ、頭の上で放屁(ほうひ)するわ、口に樹木を突っこむわと、もうおちょくりまくりのやりたい放題!(笑)


 これこそが先述の『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』で味わえた「怪獣VS怪獣」との戦いの再来なのである。そのテレビシリーズとアーケードゲームバンダイ発売のソフビ(ソフトビニール人形)『ウルトラ怪獣シリーズ』が連動した「大怪獣バトルプロジェクト」は当初は堅調(けんちょう)な動きを見せていたにもかかわらず、ウルトラマンゼロがデビューして以降、新展開がおろそかになってしまったのか、当初の想定よりも売上がよくなかったのか、ウルトラマンゼロを売ることにシフトしていったのか、2011年春には終了してしまったものであった――個人的にはウルトラマンゼロの物語を描きつつも、それと並行して、『ゼロ』を主役とした作品内でも『大怪獣バトル』的な「怪獣VS怪獣」のバトルロイヤル要素も織りこむべきであったと考える――。


 しかし、2013年9月に『大怪獣ラッシュ ウルトラフロンティア』と題した「怪獣VS怪獣」の要素を前面に押し出した新たなアーケードゲームが新規に稼働(かどう)を開始するそうだ。
 『ウルトラマンギンガ』の放映が夏休み時期に6週6本、クリスマス商戦合わせの年末時期に5週5本と分割集中放映で、この二者のブランクが空いてしまう時期に、奇しくもおそらく玩具会社・バンダイ主導ではあってもそのような新企画がスタートする以上は、『ギンガ』が放映されているテレビシリーズ『新ウルトラマン列伝』の枠内にて『大怪獣ラッシュ』とも連動した企画をなんらかのかたちで継続させるべきだろう。


明らかに超低予算な特撮でも、努力と工夫とセンスで安っぽくてもカッコいい!(笑)


 怪獣の姿でピンチに陥ったヒカルにウルトラマンギンガへと変身するキッカケを与えるのは、メインヒロインの美鈴である。


 第1話では、サンダーダランビアに首を絞められる中で、「和菓子職人になるのが夢」などと健気(けなげ)に語っていた和風の美少女・美鈴の姿を回想して、


「つぶされてたまるか!」


とヒカルが叫んだ途端に、ギンガスパークの中からウルトラマンギンガの「人形」が出現して、怪獣ブラックキングからウルトラマンギンガへと「二段変身」をとげている!


 第2話では、ケムール人の触覚から消去エネルギー液を浴びせられた際に、


「負けないで、ヒカルくん!」


などと美鈴の声援を受けたことからヒカルは、


「テンション上がったぜ!」


などと満面の笑(え)みでギンガスパークをかざして(笑)、「ウルトライブ!」でギンガへと「二段変身」を果たすのだ!


 まさに渦巻き状の「銀河系」のイメージ映像の中から、『ウルトラマンA』や『ファイヤーマン』の変身パターンのように高速で回転しながら飛び出してくるウルトラマンギンガ! その登場場面の演出にはかなり力が入っていた!


 第1話では、大地に低姿勢で着地したギンガの周囲で円陣状に土煙が垂直に素早く舞い上がり、洋画『マトリックス』(99年)やそれを早々にパクった『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001102/p1)パターンで、カメラが被写体を360度周囲から回りこんで捉えて、さらにはその土煙がギンガの周囲を回転しながら「銀河系」の姿のようになっている!
 第2話では、バトルシーンが夜間であることから、ギンガの頭部・胸部・両腕・両足にあるクリスタル状の青白く発光した部分が強調されて印象づけられる!


 これらの華々(はなばな)しい演出はメチャめちゃカッコいいのだ!


 ギンガのスーツアクターを務める寺井大介(てらい・だいすけ)は、テレビシリーズの前日弾でもある映画『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT(ザ・ファースト・コンタクト)』(01年・松竹)で伝説薬使獣・呑龍(ドンロン)を演じたあと、『ウルトラマンコスモス』(01年)テレビ本編、およびその後日談である劇場作品群において、コスモスの青い基本形態・ルナモードと最強形態・エクリプスモードを主に演じていた。
 そして、つづく『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)と『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)の3作品で続けて主役ウルトラマンを演じており、今回の『ギンガ』で久々に主役ウルトラマンのアクターに返り咲いたことになる。
 映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE(ザ・ムービー) 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)では、あのゼロに味方する炎の戦士・グレンファイヤーも演じていた。


 また、『メビウス』第21話『虚空(こくう)の呼び声』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061026/p1)では宇宙船アランダス号の船員、ビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111201/p1)では侵略星人サロメ星人の女性・ヘロディアの助手役で顔出し出演していることから、そのうち『ギンガ』でも小悪党役とかでコッソリ出てくるかもしれない(笑)。


 第1話のバトルではサンダーダランビアを怪力で押しまくるギンガや、ギンガに投げ飛ばされたサンダーダランビアをカメラが横移動して追いかけまくる! ブラックキング戦から引き続き、カメラは美鈴目線のローアングルを多用。しかも、終始画面の手前に美鈴の姿が合成される!
 ギンガの身体のクリスタル部分が黄色く光って発生させた「雷」を渦(うず)状にして放つ必殺技「ギンガサンダーボルト!」を受けて、宙に舞い上がって爆発するサンダーダランビア!――古いタイプのウルトラシリーズマニアだといまだに反発を持つかもしれないが、子供ウケするヒーロー性を高めるためには、未知なる超人としての神秘性がたとえ少々ウスれようとも「必殺技の名称」は叫んだ方がよいと思う――


 第2話のバトルでは、ギンガの体内にいるヒカルと、ケムール人の体内にいる追跡魔による会話を、画面2分割で描くという斬新な演出も!


 ギンガに地球の衛星軌道まで放り投げられたケムール人! ヘタな宇宙遊泳のように手足をバタバタさせ、地球の周囲を逃げ回る!


 ギンガは身体のクリスタルを赤く発光させ、宇宙空間でケムール人を追跡するギンガの背面に円陣状に「炎と化した隕石群」を多数発生させる!


 画面手前に逃げてくるケムール人、奥に飛行状態のギンガを配し、ケムール人に炎の隕石群を浴びせる第二の必殺技「ギンガファイヤーボール!」を放つ! 赤熱とともにCG加工で体が熱膨張して宇宙空間であえなく爆発を遂げるケムール人!


 そもそもの大前提として超低予算作品であるために、大がかりなビル街のミニチュアセットはまったく用意されていないし、特撮ステージもいかにも手狭そうだし、特撮部分のホリゾント(背景)も単調で曇天の安っぽい色彩で、どうしても安っぽさが拭いがたく漂う(汗)。


 しかし、巧(たく)みなカメラアングルや合成・アクション演出によって充分に迫力の感じられるバトルが描かれているし、ギンガの必殺技はネーミングも描写もマジでカッコいい!


 そもそも、本作の舞台はヒカルの故郷である降星山周辺が中心なので――エンディングには「協力」として、大きく「多摩市」とクレジットされている――、ビル街のセットを組む必要がそもそもないのだとも好意的に解釈ができ、このあたりも上手に逃げていると思える――我ながら実に苦しいフォローだが(笑)。舞台となる校舎の全体像のミニチュアさえも準備ができないくらいの超低予算作品であることがスレたマニアたちにはアリアリとわかってしまうけど(汗)――。


 ただし、本編班側の担当となるが、第2話のケムール人の描写についてなどは、たとえばケムール人の初出である『ウルトラQ』以来の独特の跳躍力を表現したスローモーな「ケムール走り」をカメラを傾(かたむ)けたり不安定に揺らしたりしながら再現したり、夜の学校の暗い廊下で美鈴を追うさまをケムール人の光る目だけが強調されるように捉えるなど、アクターの演技や効果音もさることながら、年少の視聴者にはトラウマになると思えるほどの恐怖感が充分に演出されていたのだ。


 満月と学校を背景にあおりでケムール人が巨大化するさまを捉えた場面のあと、逃げるヒカルと美鈴を俯瞰(ふかん=高いところから見下ろすこと)して撮った絵にケムール人の巨大な足のみを合成した場面。逆にケムール人の足もとをローアングルで捉えたミニチュアセットの絵にヒカルと美鈴を合成した場面をつなぎ、さらに建設現場の事務所をのぞきこむように姿勢を低くしたケムール人をローアングルで捉えた場面をつなぐという編集の妙は、臨場感と巨大感が絶妙に表現できていた!


気怠い夏休みの山あいに近い廃校を舞台としたジュブナイルドラマ&等身大バトル!


 さらに、この第2話では人間サイズの着ぐるみのケムール人との「等身大バトル」も描かれているのだ! ケムール人に襲われている美鈴を助けようとするヒカルが吹っ飛ばされて廃材やロッカーに突っこんだり、散々ケムール人に踏みつけられたりする描写には、マジでヒカル役の根岸拓哉(ねぎし・たくや)に同情してしまう――スタントマンのよる代役じゃないよね?(汗)――。


 ヒカルに何度も助けてもらった場面を回想した美鈴もまた、倒れたロッカーからこぼれ落ちた掃除用のモップを手に「この野郎!」とケムール人に殴りかかる! そのモップ攻撃がケムール人の股間(こかん)を直撃! 「チ~~ン!」というコントのようなお約束の効果音とともにのたうちまわるケムール人(笑)。


 美鈴はバトルのはずみでヒカルからこぼれ落ちたギンガスパークを手に、倒れたロッカーを踏み越えて(!)ヒカルのもとに駆け寄る! 銀河神社で巫女(みこ)のバイトをし和菓子職人になるのが夢だという「和風美人」の美鈴を演じる宮武美桜(みやたけ・みお)ちゃん、よくぞここまでアクションをやってくれたものである!
 個人的にはウルトラのヒロインとして久々の大ヒットである。第2話でヒカルに送るアイ・コンタクトとか、追跡魔に襲われたあと座りこんで震(ふる)えているときの表情とか、足手まといになるからいっしょにいない方がいいとヒカルに告げたあとのバイト中にため息をつく姿とか……
 「ふたりだけの秘密」を共有できることで、思春期年齢の少年ドラマ的なジュブナイル性も強調。こんなコに「負けないで!」なんて声援をされたら、たいていの男の子であればおもわずニヤけてしまうことだろう(笑)。


 ヒカルを演じる根岸は両親がロックミュージシャンであるという設定(笑)もあってか、現在(いま)っぽいキャラだけど、下品な域には堕(だ)さない範囲で留めた少々ヤンチャな感じは、どちらかといえばウルトラマンゼロと合体した方が似合いそうでもある。『新ウルトラマン列伝』の主題歌を担当し、大のウルトラファンであることを公言しているTHE ALFEE(ジ・アルフィー)の高見沢俊彦(たかみざわ・としひこ)が、最終回あたりで父親役でゲスト出演してくれないものかと思う。もっとも、氏は2014年に「還暦(かんれき)」=60歳を迎えるので、ヒカルの祖父に相当しそうな実年齢ではあるのだが(爆)――。


 実はアイドルになるのが夢とだいう、ロリ声で終始、笑顔を絶やさないのに、クールな美少年転校生の一条寺友也(いちじょうじ・ともや)の姿を見るや露骨(ろこつ)に表情を変えてくる(笑)、サブヒロインのレギュラー少女・久野千草(くの・ちぐさ)を演じる雲母(きらら)ちゃんもなかなかによい。よくもまぁ、こんなに可愛いコたちばかりを揃えられたものである――「きらら」という名は勝手な「当て読み」ではなく、「雲母(うんも)」という鉱物を意味する漢字の正規の「読み」である!――。


 本作はそういった狙いなのだろうが、ヒカルと美鈴、そして幼なじみたちによる「ひと夏の思い出」を描いたジュブナイル的な味わいが強い。ダークな心を持った人間が怪獣化するという設定も含めて、これは『ウルトラマン80』第1クールの中学校編の現代風リメイク・リベンジ戦でもあるのでは? などと筆者としては捉えてしまうのだ。中年世代の筆者からすれば、舞台が山間に近い地方の町に設定されていることもあり、そこで描かれる「青春」ドラマには実に懐かしい感覚・居心地(いごこち)のよさをおぼえてしまうものもある。


 もっとも、彼らと同じ高校2年の夏休みといえば、筆者は購入したばかりのVHSビデオデッキで『ウルトラセブン』の再放送を連日録画し、全国の東宝系劇場にて往年の名作特撮映画10本がリバイバル公開された『復活フェスティバル ゴジラ1983』において、ビデオ機器やビデオソフトがまだ普及していない時代だったので(汗)、もう死ぬまで観られないと思っていた映画『ゴジラ』第1作(54年・東宝)を鑑賞できたことに感動し、今後も特撮マニアとして生きていく! という決意を固めた「運命の夏」であった(爆)。とてもではないが「青春」どころの騒ぎではなかったのであった(笑)。


 アベユーイチ監督の演技指導も的確なのであろうが役者たちの好演もあり、「ふたりだけの秘密」を共有するヒカルと美鈴の淡い恋愛模様も描いたドラマは個人的には申し分のない出来かと思える。
 ただ、これは『80』もそうであったが、現在の観点では実に完成度が高いと思える『80』第1クールの「学校編」に対して、本放送時には舞台となった桜ヶ岡中学校の生徒と同じ中学1年生であったのにもかかわらず、「学園ドラマとしてはリアルじゃない」などと筆者は反発していたものであった(汗)。
 ヒカルたちと同じ17歳の世代なり、歳若い特撮マニアならば『ギンガ』を観てどう思ったであろうか? いまどき地方の高校生でさえ母校の小学校の校庭でサッカーボールをパスして遊ぶという姿には「ないないない、絶対にあり得ない」などという反応が即座に返ってきそうではあるが(笑)。本作で描かれている「青春」群像劇には正直、「昭和レトロ」的な感覚の古さを多少感じるのであった。


 もちろん「ウルトラマン」という作品は、本来は幼児・児童向け作品であって、中高生をターゲットにしているワケではない――90年代後半に平成ウルトラ3部作のエピソードを多数手がけていた村石宏實(むらいし・ひろちか)監督は、21世紀に至ってもテレビ特撮ヒーロー『超星神(ちょうせいしん)グランセイザー』(03年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041104/p1)を担当時に「中高生にも観てほしい」などと発言していたが、そういった感覚はいかがなものだろうか?(爆)――。


 主人公がウルトラマンタロウの人形と会話を交わし、倒した怪獣の「人形」を次々に集めていくという設定上、従来の成人男性の主人公ではやや無理や違和感があるということからか、少しでもその違和感を緩和するために高校生を主人公にしたという一面もあったのかもしれない――もちろん超低予算作品なので、未成年の役者さんを使った方がギャラが安くて済むという要素が一番大きかったのだろうが――。
 『80』学校編においても、現在の幼児中心の視聴者層とは異なり、当時の視聴者層の中心が小学生の児童だったことから、彼らが背伸び盛りの時期であることも考慮して、彼らよりも少しだけ上である中学生たちの物語を描くことで「身近さ」だけでなく少々の「憧憬」も感じてもらおうという狙いもあったかとは思えるのだ――もちろん、小学生よりも中学生の子役たちの方が撮影現場でもお芝居がスムーズに進みやすいという製作進行上の都合もあっただろう――。
 だから、まだ成人男性ではない高校生男子だとはいっても、子供たちの憧憬の対象にもするためには、怪獣の「人形」で遊んでいる幼い姿ばかりを描くワケにもいかないだろう(笑)。よって、当然のことながらふつうの高校生としての姿も描きこむことになるワケなのである。


良質ジュブナイルだが、それゆえに娯楽活劇性が欠如してしまう危惧もアリ!?


 ただ、第1話と第2話だけを観た印象では、先に長々と書いてきたような変身ヒーロー作品本来の「バトル」的な魅力よりも、そうしたジュブナイル的な「ドラマ」の方が主導権を握ってしまっている。


 最近、『ウルトラマンメビウス』の初期編(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)を再視聴した。M78星雲光の国・宇宙警備隊・ウルトラ兄弟など昭和ウルトラの設定を大前提とした正規の続編として鳴りもの入りでスタートし、特撮マニアの期待を集めることとなった『メビウス』ではあった。
 しかしながら、実際には初期編ではそういった部分に関しては映像ではほとんど描かれることはなく、防衛組織GUYS(ガイズ)の各隊員の主役話、あるいは隊員たちが結束を固めていく人間ドラマが完全に主導するかたちになってしまっていた。
 それもまた当然な作劇ではあったのだが、バトルや作戦の楽しさや爽快なカッコよさ、宇宙警備隊の隊員ではない青い体色をした同作における2号ウルトラマンであるウルトラマンヒカリのウラ設定やバックボーンなどを描くことよりも、ややドロくさくて暑苦しい防衛組織の若い未熟な隊員たちのドラマを描くことが優先されたつくりにはなっていたかと思えるのだ。
 それはそれで個人的にはよかったのだが、リュウ隊員のガラの悪い巻き舌ゼリフなどではなく(笑)、もっとウルトラマンメビウス自身がウルトラの父ウルトラ兄弟たちから託されてきた使命の反芻(はんすう)や、正義のウルトラマンヒカリが悪のハンターナイトツルギに闇落ちした過去の経緯、ヒカリ(ツルギ)と合体したゼリザワ前隊長の心理や彼とヒカリとの会話などを描いてくれよ! と思っていた御仁たちには、『メビウス』初期編にも不満があったことだろう。


 しかし、この『メビウス』が放映されていた00年代中盤あたりから、特撮マニアの大勢の意識も大きく変わっていったようにも思う。すなわち、いい歳こいて子供向け番組を観ている自分を正当化するために「ドラマ性」や「テーマ性」や「大人の鑑賞にも堪えうる」といったことを過度に強調するのではなく(笑)、それらも大事ではあっても「娯楽活劇性」や「子供の鑑賞にも堪えうる(!)」ことの方を優先するような風潮が急速に台頭していったことだ。


 こうした論法は実は特撮評論同人界では1990年前後に勃興し、90年代にはすでに一般化していたのだが、残念なことに商業誌レベルや一般の特撮マニア(←字義矛盾・汗)の間には広まることはなかったが(爆)。
 しかし、00年代前半に当時隆盛を極めていたネット上の巨大掲示板、草創期の「2ちゃんねる」における、特定個人というのではなく無数のマニア諸氏による論戦の積み重ねゆえだろう。「娯楽活劇性」や「子供の鑑賞にも堪えうる」ことを重視する論法は、「云われてみればごもっとも」「そちらの論法にこそ理があった」と思われるようになったからか、急速に普及して特撮マニアの主流を占める論調になっていくのであった――その過程においては各位の弁舌はかなり攻撃的で口汚かった問題もあったかもしれないが(汗)――。


 それらの風潮も反映してか近年の平成ライダー作品も、00年代初頭の初期シリーズのころから一貫して「ドラマ性」を重視する姿勢自体に変化はないものの、明らかに「見せ場主導」に方向転換をはかっており、しかもそれが功を奏(そう)しているようには感じられる。
 本稿執筆時に放映中の『仮面ライダーウィザード』にしても、オープニング明け早々に必ず前哨(ぜんしょう)戦としてバトルが描かれたり、毎回のように主人公ライダーがパワーアップすることで新しいスタイルを続々追加、2号ライダーが登場したかと思えばすぐさまパワーアップ編が描かれたり、しまいには遂に女子高生ライダーが登場したり(笑)。


 極端な話、そうした華のある仮面キャラクターや彼らのバトルを目で追っているだけでも、ちっとも飽きることなくカッタルさも皆無であり、毎回いつの間にか放映枠である30分が終わってしまっているという感があるのだ。
 ダークな話・ハートウォーミングな話もあって、それらが印象に残らないワケでは決してないのだが、そうした人間ドラマの流れにバトルが組みこまれているのではなく、むしろテンポのよいバトル演出の流れの中に人間ドラマが巧妙に組みこまれているようにすら思えるのである。


 正直、娯楽活劇作品としては、あるいは娯楽活劇作品に「テーマ」や「ドラマ」も込めるのであれば、近年の平成ライダーの手法の方が子供にも一般層にも退屈させずにサクサクと観させることができて、なおかつ心にも残るようにも思うのだ。


 近年の平成ライダー作品と比較すると、やはり『ギンガ』はまだまだ悪い意味で「ドラマ主導」であって、爽快な「娯楽活劇性」は付け足しであるように感じられる。70年代末期から00年代初頭のころ、特撮マニアたちが過度に「ドラマ性」や「テーマ性」を重んじて、「特撮」ジャンルの市民権を獲得しようとしていた時代であれば、平成ウルトラ3部作が特撮マニアの大勢に好意的に受け取られたように、『ギンガ』の「ドラマ性」重視の作風も好意的に受け取ってもらえたかもしれない。


 ……いや、それはないな。ややヤボったい「児童ドラマ」や「ホームドラマ」よりも、日常から遊離した「少し不思議」な「怪奇事件性」やらシャープでクールでスマートな「SF性」といったものが求められていた時代ではあったから、80年代~00年代前半に仮に『ギンガ』がつくられていたとしても、その「高校生ドラマ」がウケることはなかったであろう(笑)。


 だだ、「ドラマ性」よりも「娯楽活劇性」や「イベント性」を重視して、歴代スーパー戦隊OBが続々ゲスト出演して主役戦隊が歴代戦隊にも毎回、変身する「百花繚乱(ひゃっかりょうらん)」的な見せ場に満ちていた『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)に特撮マニアたちが夢中になって、「リアル志向」で「ドラマ重視」路線となっている後番組『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)に特撮マニアが総スカンを喰らわせるといった(汗)、今はそんな反転してしまった時代なのである。


 就学前の幼児どころか、年長マニアたちもまた「ドラマ」や「テーマ」ではなく、特撮変身ヒーロー作品の「本来の魅力」であった爽快な「娯楽活劇性」を求める傾向が年々強くなってきている。良質な「ジュブナイル」作品を決して否定するワケではないのだが、先述したような状況をふまえて考えても、今日(こんにち)の変身ヒーロー作品においては、そうした「ジュブナイル」要素を主眼とすることは、商業展開上は必ずしもプラスには働かないのではなかろうか?


 まぁ、長谷川圭一ばかりではなく、文芸陣には赤星政尚(あかほし・まさなお)や荒木憲一(あらき・けんいち)、監督陣もアベ氏以外に梶研吾(かじ・けんご)や石井良和(いしい・よしかず)といった布陣(ふじん)が名を連ねていることから、今後はいかにも「特撮」的な「見せ場主導」のエピソードが輩出されてくることを期待しよう。


第3話「双頭の火炎獣」の陰鬱な作風にやや危惧。……宿敵・ジャンキラー登場!


 しかし、第3話『双頭の火炎獣』の作風にはやや危惧をおぼえた――『ウルトラマンメビウス』では「設定考証」を担当して長年、ホビー誌でも各種記事を執筆している、先の赤星同様、編集プロダクション・TARKUS(タルカス)に所属しているライター・谷崎あきら(たにさき・あきら)が本話の脚本を担当している――。


 ヒカルと仲がよかったハズのレギュラー少年・渡会健太(わたらい・けんた)も実はメインヒロイン・美鈴のことが好きだったらしくて、ヒカルと美鈴が常にいっしょであることが内心では面白くない。それゆえに、プロのカメラマンになるという夢も「モチベーションが上がらない」と捨て去ろうとしてしまう。


 第3話といえば、『ウルトラマン80』の第3話も『泣くな初恋怪獣』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100516/p1)であった(笑)。その題材それ自体は否定しないが、その代わりに健太が美鈴以外の卒業生の年上の女性に恋をするという展開がどうにもなぁ。フツーはその年頃であれば、いま好きな美鈴以外の女性はいっさい眼中に入らないと思うんだけれどもなぁ。同じく年上の女性に対する少年の恋愛話でも、それこそ『仮面ライダーウィザード』第40話『自転車に乗りたい』の方がよほどドラマチックに描かれていたし、それがバトルのクライマックスともキチンと融合していたのになぁ。


 問題はまさにそこなのであった。同話のバトル場面も、一応はバトルのクライマックスとドラマのクライマックスが分離しないことを意識して作劇・演出したのであろうとは思われる。だが、双頭怪獣キングパンドンがせっかく燃えまくっているのに、肝心のギンガとキングパンドンとのバトルが熱血してこないのだ(爆)。民家のミニチュアなどは洗濯物まで飾られているほどリアルなのに…… それらを画面手前に配して、ヒカルがウルトライブしたケムール人がキングパンドンとのバトルで劣勢となり、倒れてそれによっかかることで臨場感も出せているのに……


 肝心の「バトル」が悪い意味での「人間ドラマ」そのものになってしまっているのだ。「バトルのクライマックス」と「ドラマのクライマックス」を融合させることが娯楽活劇作品の理想的な作劇なのだとしても、同話のような描き方ではそれはそれで「違うだろ!」とは云いたい。今回のようなバトルとドラマの融合は、それこそ悪い意味での究極の「ドラマ主導」以外の何物でもなかったのだ。


 そして、最後にギンガの第三の必殺技「ギンガセイバー」という光の剣で、パンドンがいる方向に向かって大地を斬り裂いていく! それはいいけれど、その途端にキングパンドンが「光」となって消滅していくというのでは……
 一応はパンドンダークライブで合体している連続放火犯(!)でもあったゲスト女性の心も「浄化」されたことを、この「光」の昇華の映像で意味させていたのだろうが、敵怪獣を爽快にやっつけるカタルシスには乏(とぼ)しくなってしまったし、やや明瞭ではない抽象的なオチである。
 それも含めて、美鈴に夢中なハズの健太がなぜに卒業生の年上女性に惹(ひ)かれたのか? その女性の「ダーク」な心とは何であったのか? 尺の都合でカットされているのだろうが(笑)、いろいろなことが「わかりにくい」(汗)。



 ゲスト女性の着替え場面をタロウ人形が絶対に見るまい! と背を向けて、顔を赤面させる演出には爆笑させてもらった。


 しかしそのタロウ人形が、ラストでヒカルたちのライバルになるらしい一条寺少年に拉致(らち)された先は、なんと一条寺の相棒ロボット・ジャンキラーの機内であった!


 えっ!? ジャンキラーって、オリジナルビデオ作品『ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』(11年・バンダイビジュアル)で改心してジャンナインと名づけられ、その後はウルトラマンゼロが率いるウルティメイトフォースゼロの一員として、宇宙のワルをブッ倒していたのではなかったか!?(笑)


ヒカルの導き役、40年目のウルトラマンタロウ! 来たる映画版『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』への所見!


 ヒカルの導き役としてウルトラマンタロウが起用された理由は、一般的にも人気・知名度ともに初代マンやセブンに次いで高いからだろう。奇しくも「円谷プロ創立50周年」である2013年は、「円谷プロ創立10周年記念作品」として製作された『ウルトラマンタロウ』放映40周年でもある。さらに、『ギンガ』放映開始直前の2013年6月21日には、バンダイビジュアルから『ウルトラマンタロウ COMPLETE(コンプリート) DVD-BOX(ボックス)』(ASIN:B00BLWNH5G)が発売されることとなった。
 また、タロウがクローズアップされたことで、マニア上がりの記者がひとりだけで大活躍しているのだろうが(笑)、近年やたらと円谷プロ作品にかぎらず特撮新作情報が充実している『スポーツ報知』が発行した『円谷プロ50周年特別号』において、『タロウ』で主人公・東光太郎(ひがし・こうたろう)を演じた篠田三郎(しのだ・さぶろう)の独占インタビューが実現している。これらは絶妙な相乗効果を発揮し、世間の『ギンガ』への関心を高めるのに貢献(こうけん)するとさえ思える。


 ヒカルに置いてきぼりにされて「お~い、ヒカル~~!」などと呼んでみたり、サンダーダランビアの人形が空から落ちてきたハズミでコケてしまったり、『ギンガ』巻末のコーナー『スパークドールズ劇場』で「早く大きくなりた~い!」などと往年の名作人気アニメ『妖怪人間ベム』(68年)の名セリフ「早く人間になりたい!」のパロディを叫んだり(笑)。本作でのタロウはヒカルの導き役としてばかりではなく、芸達者な石丸氏によってコメディリリーフとしての役割も兼ね備えており、タロウ人気をさらに上昇させることとなるであろう。



 2013年9月7日(土)から『ギンガ』の前期放映6話分の総集編に新たなエピソードを追加した映画『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』が公開される。筆者は当初、この映画は『ギンガ』が放映されていない地域向けの措置(そち)であるのかも……などと甘いことを思っていた。だが、現実はまったく逆であり、この映画は関東・関西のほか、札幌・名古屋・岡山・福岡、つまり『ギンガ』を放映しているテレビ東京系列6局の受信エリアにある劇場にかぎって公開されるのであった。その劇場数は全国でたったの19館にすぎない。


 テレビで『ギンガ』を観ることができない地域に住む者は、劇場で『ギンガ』を観ることすらかなわないのだ。たしかに、それに該当している筆者(爆)が2005年から居住している静岡では、『ギンガ』関連玩具で最も高額商品であるバンダイ発売「DX(デラックス)ギンガスパーク」なんぞは実際、売りようがないのだし、当地の子供たちも本作の映画を観たいと思う子は極少ではあろうから(汗)、収支を考えれば『劇場スペシャル』が『ギンガ』未放映地域で上映されることもないのだった。


 2013年6月28日、その「ギンガスパーク」と組み合わせて遊べる「スパークドールズ」として、従来「ウルトラヒーローシリーズ」と「ウルトラ怪獣シリーズ」の2大ブランド名で30年の長きにわたって発売されつづけてきたバンダイのソフビ人形が、サイズを縮小して価格も値下げしてリニューアルされた――2013年はバンダイ「ウルトラヒーローシリーズ」と「ウルトラ怪獣シリーズ」発売30周年の年でもある。これまた発売が開始されたのは、筆者の「17歳の夏」のことであった(汗)――。


 しかし、『ギンガ』が放映されていない静岡の玩具店では当然ながら、これらの商品の動きは鈍い。そして、リニューアル品の発売により従来品は無惨(むざん)にもそのすべてが「半額処分」のワゴンで山積みにされている。
 いまだそこに残っているのは、『ウルトラマンネクサス』後期に登場した青いタイプチェンジ形態・ウルトラマンネクサスジュネッスブルー、同作最終回に登場したネクサスの最強形態・ウルトラマンノア、『ウルトラマンマックス』にチョイ役で登場したウルトラマンゼノン……。つまり初登場以降、ろくに活躍の機会を与えられなかったウルトラマンたちが大半なのである。
 このままでは『ギンガ』直前のヒーロー・ウルトラマンゼロも彼らと同様の運命をたどることになるのではないのか? いや、そもそも今回の「スパークドールズ」ではそのゼロの「人形」自体が発売されていないのであった!


 地上波テレビ放送の完全デジタル化が完了し、それらを録画した高画質の映像がいつでも家庭で楽しめる時代の「円谷プロ創立50周年記念映画」がこれなのか?…… 本来であれば、最新ヒーローであるギンガとその直前まで活躍していたゼロが共演する劇場作品『ウルトラマンギンガVSウルトラマンゼロ』などを製作し、ウルトラ兄弟のみならずM78星雲・光の国出身ではないウルトラマンたち、そしてギンガつながり(笑)で「銀河連邦」に所属する往年の円谷ヒーローたちも総登場する『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』(12年)的な百花繚乱映画をつくるべきところではあっただろう。そうであれば、先に挙げた東映ビデオ発売の円谷過去作品DVDも少しは売上が増えたかもしれない。


 現在の「ウルトラ」の売上高からすれば、そこまでのものを製作することがかなり困難に近いという事情は充分に承知している。衛星放送・WOWOW(ワウワウ)で『ネオ・ウルトラQ』(13年)なども放映されたが、おそらくこれも円谷プロ主導ではなくWOWOW側主導の企画なのであろう(憶測)。



 ただし、『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』の新撮部分には、歴代ウルトラ怪獣の怨霊が合体して誕生した暴君怪獣タイラントの「一部」を構成している異次元宇宙人イカルス星人が登場するという情報がある――暴君怪獣タイラントとは往年の『ウルトラマンタロウ』第40話に初登場して、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100211/p1)や『ウルトラゼロファイト』第2部『輝きのゼロ』や映画『ウルトラマンサーガ』などにも再登場を果たしてきた有名な強敵怪獣でもある――。
 2013年8月下旬にはバンダイから「スパークドールズ」として、イカルス星人と同じくタイラントの各部を構成していた、どくろ怪獣レッドキング・竜巻怪獣シーゴラス・宇宙大怪獣ベムスター・殺し屋超獣バラバ・大蟹超獣キングクラブが発売される。タイラントの後頭部のツノを構成していたブラックキングはすでに発売されており、あとはイカルス星人と液汁超獣ハンザギランが発売されたら「合体」遊びが楽しめるのだ!(笑)


 これらのことから、怪獣や宇宙人が合体してタイラントが誕生する過程を映像で観てみたい! というウルトラシリーズファン長年の願望が遂に『ギンガ』で実現する可能性も出てきたか!?
 「ジュブナイルドラマ」もいいのだが、「ドラマ」や「テーマ」ではなく、怪獣や宇宙人が合体してタイラントが誕生する過程を観てみたい! そして、そんな通常編に登場する並みの怪獣とは異なるスペシャル感あふれる強敵合体怪獣が、最新ウルトラマンとどのように戦って、どのように知謀も尽くして倒してみせるのかを観てみたい! といった稚気満々な願望を、迫力のある特撮映像で実現することこそが「特撮」ジャンルというものの本質・真髄なのである。


 作品自体には好印象を感じるのに、それを取り巻く状況を思うにつけ、前途多難さを感じる『ギンガ』ではあるが、見えてきた「希望」が『ギンガ』にプラスと働くことを願いつつ、幕とさせていただく。

2013.7.26.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2014年準備号』(13年8月11日発行)~特撮同人誌『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『ウルトラマンギンガ』序盤評より抜粋)


『假面特攻隊2014年号』「ウルトラマンギンガ」序盤評・関係記事の縮小コピー収録一覧
・読売新聞 2013年6月12日(水) 「ウルトラマンギンガ」登場 円谷プロ50周年 高校生が主人公(同世代にも見てほしい 根岸拓哉)
・日刊スポーツ 2013年6月23日(日) ウルトラ光栄 津川雅彦初出演 来月放映「ギンガ」主人公の祖父役 「大好き特撮娯楽作」芸歴57年念願叶う
・スポーツ報知 2013年7月6日(土) ウルトラマンギンガ大特集!! タロウ東光太郎も登場!! 「円谷プロ50周年特別号」10日から発売


朝日新聞 2013年3月9日(土) beランキング ぼくらのヒーロー「ウルトラ戦士」(1位・初代マン、2位・セブン、3位・タロウ、4位・ゾフィー、5位・エース、6位・レオ、7位・母、8位・父、9位・ジャック、10位・ティガ、以下略~20位まで)
朝日新聞 2013年3月15日(金)夕刊 円谷プロ創立50周年特別上映会(4/12金午後6時半:前夜祭「快獣ブースカ」「ファイヤーマン」、4/13土と14日の1時と4時「ウルトラマン」ハイビジョンリマスターや「ウルトラゼロファイト第2部」など日替わり上映。招待のみ。読者ペア50組
・スポーツ報知 2013年5月9日(木) カリガリ君がウルトラマンとコラボ
・デイリースポーツ 2013年9月13日(金) 我らのウルトラマン ギネス「最も派生テレビシリーズが作られたテレビ番組」


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ウルトラマンギンガ』(13年)序盤評 ~低予算を逆手に取る良質ジュブナイルだが、それゆえの危惧もアリ!?

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ウルトラマンマックス』(05年)#1「ウルトラマンマックス誕生!」 ~序盤評・原点回帰は起死回生となったか!?

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ウルトラマンネクサス』(04年)#1「Episode.01夜襲 -ナイトレイド-」 ~ハイソな作りだが、幼児にはドーなのか!?

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ウルトラマンダイナ』(97年)#1「新たなる光(前編)」~#11「幻の遊星」

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