『コロコロコミック増刊号 ウルトラマンPART1』&『2』 ~『ザ・ウルトラマン』&『コロコロ増刊』ウルトラ特集記事の時代!
内山まもる『ウルトラマン』漫画1971~2010総覧! ~『ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる』
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歴代ウルトラマンたちが大宇宙を舞台に大活躍を繰り広げるネット番組『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)が配信中記念! とカコつけて……。ウルトラ一族が大宇宙を舞台に活躍する作品の元祖でもある、往年の大人気連載マンガ『ザ・ウルトラマン』「ジャッカル大魔王」編(初出・75年)の33年後の後日談でもあった、幼児誌『てれびくん』で2008年度に連載されたマンガ『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』評を発掘アップ!
『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』 ~前日談『ザ・ウルトラマン』をも上回る!?
(文・久保達也)
(2010年4月25日脱稿・11月10日改稿)
第2期ウルトラシリーズの最終作である『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の放映が終了した直後の1975年度の『小学三年生』に1年間連載された漫画『さよならウルトラ兄弟』。この作品は1978年に創刊間もない時期の児童漫画誌『コロコロコミック』や『コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』&『PART2』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1)に『ザ・ウルトラマン』と改題・再連載されて大ヒットを放った。
この通称「ジャッカル大魔王」編の後日談として描かれてもいる、2008年度の『てれびくん』に連載された漫画『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』(小学館・09年5月29日発行・ASIN:B01CG0VDI4)について、本項では語らせていただこう。
『帰ってきたウルトラマン』(71年)第45話『郷秀樹を暗殺せよ!』に登場した電磁波怪人メシエ星雲人(!)との平和調停を1週間後に控えた、ウルトラ一族の故郷でもあるウルトラの星こと光の国(=ウルトラの国)……
『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)第25話『燃えろ! ウルトラ6兄弟』にも登場した、ウルトラタワーが突如として倒壊してしまう!
そして、その地下に保管されていた「平和の鐘(かね)」であり「ウルトラ族の心の調べ」とも呼ばれる「ウルトラベル」と、その神秘の力で封印されていた「アーマードダークネス」が紛失していた騒動から物語は始まるのだ。
――「アーマードダークネス」とは、ウルトラマンメビウス(06年)がその最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070505/p1)で遂に撃破してみせた、先の『タロウ』第25話でも言及されていたウルトラ一族の3万年にもおよぶ因縁の宿敵である暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人が装着するハズだった漆黒の鎧(よろい)である!――
しかし、事件の手掛かりがないままで1週間が過ぎて、平和調停の当日となった。
――なんとその広大な議場には、『ザ・ウルトラマン』名義の「てんとう虫コミックス」レーベルの単行本にも収録されている1979年度の『小学三年生』に連載された内山大先生のよる漫画『飛べ! ウルトラ戦士』が初出である、『月面要塞大作戦』冒頭でのウルトラの国のやはり広大な議場で開催されていた最高会議にも出席していたアンドロメダ星雲支部代表のゾルビー長官の姿も!
そのご尊顔は「ジャッカル大魔王」編にて初登場を果たした宇宙警備隊・アンドロメダ星雲支部隊長であるウルトラ戦士・メロスに酷似しているが、ウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングのアゴ髭(ひげ)にならったのか、ウルトラ一族の年長者キャラを意味させているチョビ髭姿がなんともカワイイ――。
このメシエ星雲人の使節団の護衛には、宇宙警備隊直下の勇士司令部(!)――ウルトラ兄弟の3番目・ウルトラセブン(67年)の実父が長官を務めており、ウルトラマンネオス(95年)もこの部署に所属していることでも有名!――の精鋭部隊がついていた。
しかし、何者かの攻撃によってこの精鋭部隊も全滅!!
ウルトラ一族が設立した宇宙警備隊の大隊長でもあるウルトラの父は、メロスと直近テレビシリーズの主人公ヒーローであるウルトラマンメビウスを現場に派遣する。
メロスは先にもふれた「ジャッカル大魔王」編にて初登場を果たした宇宙警備隊・アンドロメダ星雲支部隊長のウルトラ戦士である。すでに前年2007年度連載分の『ウルトラマンメビウス外伝 超銀河大戦 戦え! ウルトラ兄弟』でも再登場しており、本作でも連続出演を果たしているのだ!
けれど、
「私も い(行)くわ!」
と志願するウルトラの女戦士がいた!
「ウルトラの母のほかにも、女性のウルトラ族を出してえ! 内山先生、おねがい!」(愛知県・IKさん)
律義な内山まもる大先生はこの女の子の願いを忘れず、30年後にようやくかなえてくれたのであった(笑)。
このアウラなる女戦士の出自の設定がまた秀逸である。
『ザ・ウルトラマン』の「ジャッカル大魔王」編でウルトラ兄弟の長男・ゾフィー隊長の協力を断って単独でジャッカル軍団と戦って苦戦していたメロスをかばって、背中に大鎌(おおがま)を受けて命を失ってしまったウルトラ28人衆のひとりである、メロスを改心へと至らしめたあの印象的なウルトラ族の一般兵士こそがアウラの父だったというのである!
たった3コマにしか登場しない、しかしその自己犠牲がとても印象的であった名シーンの名もなきウルトラの一般兵士を、ここまでの存在に昇華してしまうとは!(涙)
メロスはその恩返しとして、アウラを一人前の宇宙警備隊員として鍛え上げたというのである! 気丈でワガママな性格もメロス譲りなのだとか。
『コロコロコミック特別増刊2号 ウルトラマンPART2』(78年)巻頭のカラーグラビア『初公開! ウルトラひみつリスト ウルトラSFの世界』記事(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1)に準じるならば、おそらくはアウラもタロウ同様に優秀ということで1万2千才で宇宙警備隊に入隊したのだろうか?(笑) しかも、彼女はすでにメロスと同格である宇宙警備隊のS・P5星雲の支部隊長でもあるというのだ!
本作『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』が再録された大判の書籍『てれびくんデラックス愛蔵版』の中では、『ザ・ウルトラマン』の「ジャッカル大魔王」編を
「大昔のウルトラ兄弟とジャッカル軍団の戦い」
としてダイジェストで紹介されていた。
この「大昔」(!)という表現は、幼児誌『てれびくん』のメインターゲットである2008年度の幼児層から見て、「ジャッカル大魔王」編の事件が起きたとおぼしき『ウルトラマンレオ』放映終了直後の1975年の時代がもう33年も前のことだから「大昔」と云っているだけであって、あくまでも西暦2008年の今が舞台なのだろうか?
それとも、『ウルトラマンメビウス』の時代から100年~1000年くらいが経(た)っているような未来の宇宙を舞台とした最新テレビシリーズ『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)のように、1975年の「ジャッカル大魔王」編や2006年を舞台としていた『メビウス』の時代からでも、すでに数百年~数千年くらいが経過した未来の時代が舞台なのだろうか?
宇宙警備隊・勇士司令部の精鋭部隊を全滅させた敵の正体は、なんとあの数十万人もの大陣容を誇っていたジャッカル大軍団の残党!
メロス・メビウス・アウラはジャッカルの残党どもを始末する! しかし、彼らが帰還するや、すでに光の国は怪獣軍団の攻撃を受けていたのだ!
メガトン怪獣スカイドン・猛毒怪獣ガブラ・恐竜戦車・古代怪獣キングザウルス三世・雪女怪獣スノーゴン・さそり怪獣アンタレス! 大人気有名怪獣の復活ではないが、中堅どころのなんともシブい面子(めんつ)たちであることも嬉しい!
内山大先生はかつて、
・『小学二年生』71年9月増刊号に『決戦 ウルトラ兄弟対11大怪獣』
・『小学二年生』72年9月増刊号にも『ウルトラ5兄弟たいヤプール人』
・『小学二年生』73年1月増刊号には『怪獣はか場のけっとう』
・『小学二年生』73年9月増刊号にも『かがやけウルトラの星』
といった、当時は児童たちの夏休みや冬休みの時期に『小学二年生』だけで発売されていた増刊号でも毎回、怪獣軍団対ウルトラ兄弟の決闘を長編漫画として描いていた。
テレビ本編でもそんなイベント編を時には観てみたい! と当然のことながら当時の子供たちも思っていて、我々はチラシのウラやノートや教科書のパノラマ風景写真(爆)などにウルトラ兄弟VS怪獣軍団の戦いを落書きでしたためていたものだ(笑)。そういった子供たちの機微を察知して内山大先生にそういった長編漫画を執筆させた小学館の学習雑誌の編集者の慧眼(けいがん)というよりかは、実に子供じみていたその稚気満々(ちきまんまん)ぶりを(笑)、エンタメ路線ではなくストイックなシリアス志向に走りがちだった後年のマニア上がりのつくり手たちにもぜひとも見習ってほしいものである。
メロスが突き出した両腕から放つ必殺光線であるレーザーショット・アンドロメロス!
メビウスが両手を十字型に組んで放つ必殺光線・メビュームシュート!
アウラの必殺ワザ・アーパッシュ!――巨大な光球を作り、その中をアウラがすばやく移動しながら多数の光の矢を外に放つワザ!――
彼らの必殺ワザが次々に炸裂していく!
怪獣軍団を全滅させることはできた。
しかし逆に、ウルトラの母とウルトラ一族の看護組織である銀十字軍は、ジャッカル軍団に捕らわれてしまっていた!
――これもまた内山先生による漫画『ザ・ウルトラマン』の「若きファイタスの挑戦」編(78年)の冒頭シーンに対するセルフ・オマージュでもあるだろう――
さらに、気を失っているウルトラの父とウルトラ兄弟たちまで、巨大な透明の球の中に幽閉されていた!
そこに現れたのは、なんとあのジャッカル大魔王!!
「どうだメロス! 降伏しなければ、兄弟たちをブラックホールにつき落とすぞ!」
待ってました、大統領! しかも、かつて自身がウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングによって突き落とされたという因縁もある超重力の天体・ブラックホールに、今度は自分が彼らを突き落としてやると豪語してみせるのだ!
別に単なる復讐だけであるならばブラックホールに突き落としてみせる必然性はウスいのだが(笑)、リアリズムよりも象徴・寓意の方が優先する物語作品というものにおいては、かつての事象と共通するアイテムや手法を用いてリベンジに挑んできた方が、盛り上がりの面ではよりドラマチックになろうというものでもあるのだ。
ジャッカル大魔王がメロス・メビウス・アウラの攻撃をものともせずに、ジャッカル破壊光線を発しようとしたそのとき、物陰に潜んでいたウルトラの女戦士・ユリアン王女が剣を手に攻撃を仕掛けてきた!
なんとその剣は、『ウルトラマンメビウス』で明かされた3万年前のウルトラ大戦争でウルトラの父が暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人に深手を負わせた伝説の聖剣・ウルティメイトブレードだったのである!
このシーンもまた、そこらへんに転がっているただの剣による反撃であっては、ムダとはいえないまでもイマイチである。
・ウルトラ世界の中でも由緒があり、どこかに秘蔵されていたのだろう歴史的アイテムを持ち出さなければならなくなったほどのユリアンの悲壮なる決意!
・それにより、ただの足手まといの存在ではなく、敵わずとも戦いには貢献できたことで、ユリアンのキャラを立てることにも成功!
・それと同時に、伝説のウルティメイトブレードすら持ち出さねばならなくなった劇中内での危機的状況ぶり!
・ジャッカル大魔王のそこまでの強敵ぶり!
これらの一連をクドクドと説明しなくても、一挙に同時に瞬時にして四重の説明ができてしまうのである! こうした描写ができるのも、長大な歴史を持つシリーズものの利点なのである。
しかし、この聖剣をもかわしたジャッカル大魔王!
これに対して、ユリアンはメビウスとともに、なんと『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)第49話『80最大のピンチ! 変身! 女ウルトラマン』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210307/p1)において合体怪獣プラズマ&マイナズマを倒した80&ユリアンの合体飛行回転ワザ・ウルトラダブルパワーを披露する!
――オオッ! これまた、ウルトラ一族が大活躍した直近の映画『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)あたりでも観たかったゾ!・笑――
これに対して、ジャッカル大魔王は自身が初登場を果たした原典とも同様に、宇宙恐竜ゼットンへと変身! 1兆度の火の玉をメロスに浴びせてきた!
異次元超人エースキラーにも変身して、メビウスとユリアンをも倒した!
さらには、火山怪鳥バードンに変身して、アウラの背を猛毒のくちばしで突き刺してきた!
往年の『ザ・ウルトラマン』こと「ジャッカル大魔王」編の導入部をも再現している徹底ぶりである。しかし、ウルトラ兄弟たちが一矢(いっし)も報(むく)いることなく敗退してしまった「ジャッカル大魔王」編よりも、敵わずとも反撃を試みたメビウスやユリアンの描写があることで、この一点については本作の方に軍配が上がるのではなかろうか!?
この大魔王の正体は、実はかつてのジャッカル大魔王そのものではなかった! 彼に仕(つか)えていたジャッカル四天王の生き残りのひとりが新たなる大魔王となるために、ウルトラマンキングによって突き落されるも自力で強化して這い上がってきた初代ジャッカル大魔王にならって、なんと自らブラックホールへと落ちることで(!)、そのエネルギーを吸収して最高の力を手に入れて2代目・大魔王と化し、ウルトラ一族たちへの復讐に来た姿であったのだ! なんとも魅惑的でいかにも超・強そうな出自設定であることか!?
そして、逆にブラックホールへと突き落とされてしまうウルトラ兄弟たち!
だが、ウルトラの父が胸の中央にあるカラータイマーを自身でモギ取って放擲(ほうてき)! 自らのエネルギーを兄弟たちに分け与えた!
――このシーンも、『ウルトラマンA(エース)』(72年)第27話『奇跡! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061105/p1)における同様シーンを踏襲した、ウルトラシリーズの設定的にも根拠と整合性もあるシーンなのだ!――
このために、エネルギーが復活したウルトラ兄弟たちだけはブラックホールからの脱出に成功できた! しかし、エネルギーを使い果たしたウルトラの父はブラックホールへと落ちていく……
けれど、『ウルトラマンメビウス』序盤10話分の宿敵・高次元捕食体ボガールに滅ぼされた惑星アーブの不定形生命・アーブの民たちの精神エネルギーが結集した鎧である「アーブギア」の可能性に賭けて、同じく『メビウス』第10話までの姿であった鎧をまとったハンターナイト・ツルギとなって(!)、落下していく父をひとりで救出しに行くウルトラマンヒカリ!
――このヒカリとは『ウルトラマンメビウス』で初登場した、同作における第2のウルトラマンであり、体色も青いウルトラ戦士なのだ――
脱出してきたウルトラ兄弟たちを抹殺せんとジャッカル大魔王が召喚した宇宙鳥獣ガロウラー!
首長ドラゴン型の孔雀(くじゃく)と植物の合成怪獣といった趣(おもむき)で、細くて長い身体に鮮やかな緑と黄色の体色が印象的な怪獣であり、ステージでのアトラク用に着ぐるみも造形されており、本漫画が再録された『てれびくんデラックス愛蔵版』にもそのカラーグラビアが掲載されている。
ガロウラーの決定稿自体はウルトラシリーズを製作している円谷プロのデザイナー・丸山浩(まるやま・ひろし)がブラッシュアップしている。しかし、『てれびくん』の「最強宇宙怪獣デザインコンテスト」のグランプリに輝いた6才の少年の作品が素(もと)となっている。なぜにバンダイはこの新怪獣をソフトビニール人形『ウルトラ怪獣シリーズ』で発売してあげないのか!? 「しっぽのトゲトゲの部分から虹色の光線を出して破壊する」という彼が考案した設定も、超絶破壊光線ガロウ・レインボーとして公式設定となっているというのに!(笑)
このガロウラーに大苦戦するウルトラ兄弟たち!
そのとき、ジャッカル軍団の円盤群が謎の攻撃を受けて、次々と大爆発を起こす!
ファイタス「しっかりしろ! セブン!!」
ウルトラセブン「ファイタス! なぜ、おまえがここに!?」
ファイタス「兄貴のメロスからひそかに連絡があったのだ」
なんと、ここで、メロスの弟でもあり、『ザ・ウルトラマン』「ファイタスの挑戦」(78年)に登場したウルトラ戦士・ファイタスが再登場!!
ウルトラセブン「そうだったのか。たのむ、ファイタス。ブラックホールに落ちたウルトラの父とヒカリを救ってくれ」
ファイタス「なにっ? ウルトラの父とヒカリが……」
ウルトラセブン「メロスと同じおまえのヨロイならブラックホールの力にたえられるはずだ」
ファイタス「ああ、もちろんだ。ヒカリは、かつて俺の命を救ってくれた恩人でもあるからな」
本作にはファイタスも復活登場を果たしたのだ! そして、ウルトラマンヒカリがファイタスの命の恩人であったとしたのだ!!
「科学者は長旅の果て、数々の研究成果を得ており、固形化した「命」によって、その対象を甦らせる研究の完成にも、彼の持ち帰った知識は多大なる貢献を果たしていた。遥かな過去に太陽の爆発で多くの同胞を喪い、誰よりも「命」への執着を持つ彼らの一族にしてみれば、それは悲願達成と呼べるものであった」
『ウルトラマンメビウス』第5話『逆転のシュート』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060704/p1)で初登場したウルトラマンヒカリこと、鎧の戦士であるハンターナイト・ツルギの前日談を描いていたネット配信のオリジナルビデオ作品『ウルトラマンメビウス外伝 ヒカリサーガ』3部作の第1話であったSAGA1(サーガ・ワン)『アーブの悲劇』(06年)。
『メビウス』本編よりも過去の話であった『SAGA1』が描いていた時代よりもさらに以前の時代を描いた、DVD『ヒカリサーガ』同梱のイラストノベルだった『ザ・ウルトラマンヒカリ』では、M78星雲・光の国の宇宙科学技術局に勤めていたウルトラ一族のブルー族でもある科学者・ウルトラマンヒカリの設定を巧みに活かした物語が展開されていた。
DVD『ウルトラマンメビウス』全13巻の解説書に連載されたイラストノベル『ザ・ウルトラマンメビウス』や、DVD『ウルトラマンメビウス外伝 ヒカリサーガ』に同梱されたイラストノベル『ザ・ウルトラマンヒカリ』などによって追加された、40年後や35年後の後出しの新設定(笑)によれば、以下の通りとなるのだ。
初代ウルトラマンが自身の主役作品『ウルトラマン』(66年)の第39話(最終回)『さらばウルトラマン』で宇宙恐竜ゼットンに殺された際に、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーは初代ウルトラマンと科学特捜隊のハヤタ隊員ふたりを分離して両者の生命を復活させるために「命」をふたつ持ってきた。
なんとここで持参してきた「命」とは、ウルトラマンヒカリの発明によるものだったとされたのだ!
そして、『帰ってきたウルトラマン』第51話(最終回)『ウルトラ5つの誓い』では、新ウルトラマンことウルトラマンジャックが地球を去って故郷・光の国へと帰っていった。それは同作劇中でも説明されていたとおり、触覚宇宙人バット星人が率いる宇宙連合軍に攻められている故郷の祖国防衛戦争に加わるためであった。
しかし、ここにも追加設定がなされた! この星間戦争はヒカリが発明した「命」の秘密の情報開示をバット星人たちが求めたためだったとされたのである!
『メビウス』のメインライター・赤星政尚(あかほし・まさなお)と同作の「設定考証」を担当した谷崎あきら。この特撮同人ライター上がりの編集プロダクション・タルカスのメンバーによって、往年の学年誌や『コロコロコミック』特集記事のような良い意味での稚気満々なウラ設定が、『メビウス』の放映時期に新たに追加されていったのだ!(大歓迎!)
この新設定を活かして、「若きファイタスの挑戦」編の結末では死亡したハズであったメロスの不肖(笑)の実弟・ファイタスが、ヒカリによって新しい「命」を与えられたことになって、今回のまさかの再登場となったのである!(涙)
なんとファイタスは自身の鎧をウルトラセブンに貸し与え、セブンをブラックホールに落ちていく父とヒカリの救援に向かわせて、自分はガロウラーとの決戦に加わることになる!
これによって鎧を脱いだウルトラ戦士としてのファイタスの姿も、初登場から30年を経(へ)て本邦初公開になるという、長年のマニア垂涎(すいぜん)の大サービスもあるのだ! その姿は兄貴のメロスにもちろん似てはいるのだが、頭部にトサカ状の出っ張りがないあたりは、ウルトラマンレオと双子の実弟・アストラの頭部の形状の違いを踏襲している(笑)。
セブン「ファイタス、この剣はお前に……!」
ファイタス「行くぜ、ガロウラー!!」
借りるのはその鎧だけだ! とばかりに、かつてはその剣を用いて命を賭けて真剣勝負で戦った(!)という大因縁もあったセブンから返された、ファイタスの鎧の左腰に装着されていたフェンシングの剣のような長剣だけを手に、ガロウラーに立ち向かうファイタス!
なんというステキな華(はな)もある演出! そして、その因縁の剣の切っ先から発せられる必殺光線の名前はスパイラルビームだ!!
ガロウラーはその超絶破壊光線ガロウ・レインボーをバリヤーに転用!!
必死で斬りこむファイタスの苦戦に、初代マンはかつて最強怪獣ゼットンの動きを封じるために使用した、上空で直立不動の姿でコマのように高速回転しながら光のリングを放って相手を拘束するワザであったキャッチ・リングで、ガロウラーを金縛りにすることで助勢する!
そこに、
・ウルトラマンジャックのウルトラフロスト!
・ウルトラマンタロウのウルトラフリーザー!
・ウルトラマンエイティのフリージングレーザー!
彼らの冷凍光線(!)が一斉に発射される! ガロウラーは氷漬けとなった!――こういう特定の共通項がある必殺ワザ縛りでの合体攻撃を、『ウルトラ銀河伝説』でも観たかったなぁ・笑――
ガロウラーをブラックホールに封じようとするウルトラ兄弟たちだが、この一撃だけで撃破できてしまってもガロウラーがやや弱く見えてしまったことだろう。そこで、お約束でも氷結させていた氷を突き破って、ガロウ・レインボー光線が兄弟たちを襲う!
敵キャラだから最後には負けてしまうのだとしても、少しでも一矢を報いてきたり反撃してくる描写もまた実に重要なのである!(笑)
・ジャックは左手首のウルトラブレスレットを変形させたウルトラディフェンダー!
・エースはサークルバリヤー!
・エイティはハレーションミラー!
・レオはなんとウルトラマンキングから授かったウルトラマントを変形させた傘型のレオブレラ!
盾(たて)や光学バリアー技で一斉に防御する! どころか、それらのワザはガロウラーの光線をハネ返してみせた!
その勢いで飛ばされて、ガロウラーはブラックホールへと落下していく!
入れ違いざまに、ファイタスの鎧を装着したセブンが、ブラックホールから父とヒカリを救出して戻ってきたのだ!
そして、メロス・アウラ・メビウスたちが窮地に陥(おちい)っている故郷・光の国へと急いで舞い戻るウルトラ兄弟たち! だが、ジャッカル大魔王のジャッカル破壊光線のすさまじい威力にはさすがのウルトラ兄弟もまったく敵わなかった!
さらに、その破壊光線が最大出力で発せられようとしたそのとき、大魔王を目掛けた光線が発射されて無事に阻止された!!
『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』の続編である『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年)第9話『暗黒の鎧』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100312/p1)においてもウルトラセブンがその全身にまとってしまったらば、その鎧の力で操られてしまったほどの、禁断の暗黒の鎧・アーマードダークネスの胸・右肩・右腕のパーツ部分をウルトラマンメビウスがまとって、その強大な悪のパワーも援用してジャッカル大魔王に一撃の光線を見舞って阻止してみせたのだ!
しかし、まとったのはアーマードダークネスの一部分だけだとはいえ、これは危うい事態でもある!
メビウス「僕はどうなってもかまわない! だがジャッカル大魔王、おまえだけは絶対に倒す!!」
これまた、いかにもテレビシリーズでもそうであったように、純真無垢(じゅんしんむく)なキャラとして描かれてきたメビウスらしい発言とセリフまわしである(笑)。
だが、着用した者自身をエネルギーとして吸収してしまう死の鎧は、次第にメビウスの体と精神を蝕(むしば)み始めていた!
ゾフィー「ウルトラマン、セブン、ジャック、エース、タロウ! メビウスにエネルギーを集中するぞ!!」
なんとウルトラ兄弟たちは自身を光のエネルギー体と化してウルトラマンメビウスへと合体する! 映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(06年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)でも披露した、ウルトラ6兄弟とメビウスがウルトラ7重合体した強化形態であったウルトラマンメビウス・インフィニティーが登場したのだ!
大魔王と互角に戦いを繰り広げていくメビウス・インフィニティー!
だがそのとき、全宇宙に散らばっていたアーマードダークネスのパーツが襲来してきて、メビウス・インフィニティーの全身を覆いかぶしてしまうという再度の大ピンチが訪れた!
アーマードダークネスが遂にその全身すべてを復活させたのだ! しかし、そのとき……!!
ウルトラマンキング「邪悪な力に負けるでない! ウルトラ兄弟たちよ!」
ジャッカル軍団に奪われていたウルトラベルを取り戻したウルトラマンキングが上空に帰ってきたのだ! 宇宙の平和を高らかに謡(うた)いあげて闇の力を一掃させる力を持ったウルトラベルの荘厳なる鐘の音(かねのね)が高らかに鳴り響く!
アーマードダークネスの顔面部分だけが剥がれ落ちて、メビウス・インフィニティーが正気を取り戻したことを映像面でも暗示させる!
アーマードダークネスをまとったままのメビウス・インフィニティーは、映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹)でウルトラ5兄弟とウルトラ6重合体して「超(スーパー)ウルトラマン」と化したウルトラマンタロウがその両方の腕から放った超必殺ワザ・コスモミラクル光線と同じワザを、一定のポーズを取った末に発射する!!
コスモミラクル光線とジャッカル破壊光線の壮絶なるせめぎ合い! その果てに遂にコスモミラクル光線がジャッカル大魔王のヒザを屈せしめた!!
パワーゲーム的には、最後は最新作の主人公を張ったウルトラマンでもあるメビウスにきちんと華を持たせている。
しかし、本作の心情ドラマ面を背負っていたともいえるのは、ウルトラの女戦士・アウラである。そこで、メロスはアウラに父の仇を討たせようとする――時代劇における仇討ちの助っ人(すけっと)ものや、江戸初期の剣豪・荒木又右衛門(あらき・またえもん)のようだ!・笑――
けれど、すでに勝敗が決した無抵抗な者に対しては、さすがにアウラも手をくだせなくなってしまい、見逃そうとしてしまう。
すると、その隙をついてジャッカル大魔王がアウラを返り討ちにしようとした!
機転を利かせたメロスが投げ与えた聖剣・ウルティメイトブレードを受け取って、アウラはジャッカル大魔王にすかさずトドメを刺してみせる!
オオッ! このシーソーバトルな攻守逆転を幾度か経てみせる、ラストバトルでの実にていねいなアクション描写と心情描写!
最終決戦がワリとアッサリと決着がついてしまったり、セブンが幼いころにウルトラの父がその引きガネを引いたことで発射された強大な光線が悪魔の星・デモス一等星を一撃で破壊してしまったという、ウルトラの星の軌道をも司(つかさど)るという大きなカギ型のアイテム・ウルトラキーが、ストーリーの中盤では伏線のように扱われながらも忘却されてしまった(笑)、元祖『ザ・ウルトラマン』「ジャッカル大魔王」編のラストバトルなどよりも、よほどこれは勝(まさ)っていたのではなかろうか!?
残ったジャッカル軍団員たちをメロスが退治しようとしたそのとき……
メビウス「まってください。メロス支部隊長! 彼らにはもう戦う力は残っていません。見のがしてあげてください」
メロス「だまされるな、メビウス! かつての戦いで生きのこったジャッカル軍団に情(なさけ)をかけたばかりにこのありさまだ!! おなじ過ちをふたたびくり返すつもりか!!」
メビウス「……やさしさを失わないでくれ。弱い者をいたわり、たがいに助けあい、どこの国の人びととも友だちになろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえその気もちがなん百回裏切られようと。……エース兄さんが地球を去るときに子どもたちに残した言葉です。そうですよね、エース兄さん!!」
エース「ああ、その通りだメビウス」
メビウス「ですから、彼ら軍団員にもチャンスを……」
ファイタス「兄貴だって無抵抗の者に手出しはできないんじゃないのか」
メロス「ちっ、余計なことを。……ええい、勝手にしろ!」
ファイタス「聞いたか! 地下にひそむジャッカル軍団! 今すぐ立ち去れ!!」
降参して光の国を飛び去っていくジャッカルの軍団員たち……
この敵軍団を全滅させないで撤退をうながすラストも、元祖「ジャッカル大魔王」編ラストと同じなのである。今回は敵への温情を示す立場を、本作の主人公であるウルトラマンメビウスに譲ることで、最後に彼を主人公らしく立ててもみせている。
そして、彼のその温情の動機を、ウルトラマンエースが客演した『ウルトラマンメビウス』第44話『エースの願い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070408/p1)でもエース本人が引用してみせた、往年の『ウルトラマンA(エース)』(72年)第52話(最終回)『明日(あす)のエースは君だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)のラストにおけるエースが地球の子供たちに送った最後の言葉である
「やさしさを失わないでくれ。弱い者をいたわり、互いに助けあい、どこの国の人々とも友だちになろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえその気持ちが何百回裏切られようと……」
なる名セリフを引用してみせることで、メビウスがこの温情へと至った動機と、そして当のエース自身をも、加えて歴代ウルトラシリーズが時折り内包していた高等テーマをここぞとばかりに引用して、作品自体の品位も最後に底上げしてみせているのだ!
ラストのキャプション「ジャッカル大魔王はやぶれ去った! 光の国が、かがやきを取りもどす日も近いだろう!!」
テレビシリーズ『ウルトラマンメビウス』でも、脚本家の赤星政尚と長谷川圭一などが過去の昭和ウルトラシリーズからの流用ネタを散々にやらかしていたものだ。
小説『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』(朱川湊人・光文社・09年12月25日発行・12月17日実売・ISBN:4334926924・ISBN:4334766633)でも、作家の朱川湊人(しゅかわ・みなと)が実は一般文芸寄りの人ではなくただの重度の特撮オタクであったならではの(笑)、歴代シリーズの登場人物たちのその後の去就(きょしゅう)などが披露されてきた。
そんな作品群とも同じような香りがする、長年のウルサ型のマニアであってもナットクさせられてしまう、小ネタや設定的なエクスキューズによる整合性の出し方のウマさの数々……
内山大先生自身の過去作品にとどまらず、70年代前半の学年誌や70年代後半の各種書籍でひんぱんに披露されてきたウラ設定、メロスだのファイタスだのアウラだのヒカリだの、ウルトラベルだのウルティメイトブレードだのコスモミラクル光線だのメビウス・インフィニティーだのと、まさに良い意味での新旧「ごった煮」状態のシリーズ全肯定的な作品にも仕上がっているのだ。
これらのネタの数々は大変失礼ながら、我々のように幼少時から子供時代どころか思春期・青年期に至っても、歴代ウルトラシリーズにどっぷりと浸かってきて、そのトリビアルなウラ設定をも熟知して血肉の域にまで達している特撮マニアたちとは異なり(汗)、青年期にウルトラ漫画を大量に描き下ろしてきたとはいえ、幼少時からウルトラシリーズを夢中で観てきたワケではない、今ではどうもゴルフに夢中のようであられる(爆)、終戦直後の1949(昭和24)年1月16日生まれであり、今や還暦をすぎてしまった、いわゆる「団塊の世代」でもある内山大先生のアイデアではないだろう(笑)。
往年の学年誌に連載された『ザ・ウルトラマン』こと「ジャッカル大魔王」編などは、『小学三年生』側の担当編集者・八巻孝夫(やまき・たかお)氏が原作を担当していたという趣旨の発言が、つい最近に発売されたばかりの書籍『ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる』(小学館・10年10月1日発行・ASIN:B01CQLG9IC)の特典である特別復刻コミックス『ウルトラ戦士銀河大戦争』巻末の「内山まもる担当編集者に聞け!!」(「小学三年生」編集部(当時)八巻孝夫インタビュー)などでもなされていた。
おそらく、このようなことは本作や内山大先生だけにかぎった話ではないのだろう。漫画にかぎらず小説やテレビ脚本などでも、実際には担当編集者やプロデューサーとの二人三脚でつくられていた……というようなケースも多々あるのが実情ではあるのだ。
本作の場合も名前こそ大々的には出てはいないものの、連載媒体である小学館の幼児誌『てれびくん』側の担当編集者でもあると思われる、同誌の「別冊」扱いともなってきた歴代特撮作品の『超全集』シリーズなども編集されている間宮尚彦氏あたりが実質的な原作者なのではなかろうか? と推測するのだが……
「居村先生にウルトラマンシリーズのコミカライズをお願いする際、私はTV用脚本を簡略化したシノプシスを書いてお渡ししていました。大抵は脚本を作画家に渡し全てお任せすることが多いのですが、TVの脚本にはまんがになりにくい場面が少なくなく、アレンジを加えざるをえなかったのです。それが高じて『ウルトラ超伝説』(引用者註:『てれびくん』1981年5月号~86年3月号に長期連載されたウルトラ漫画)の1年目になると全編私のオリジナルということになります。しかし、もともとはウルトラファンの私です。そこここに見たことのある場面になっていることに気づいて、驚き呆れたこともしばしばでした」
『てれびくん別冊② ウルトラセブン』(78年11月15日号・10月15日実売・ASIN:B0076GM1GC)で明かされた、名脚本家・上原正三が執筆された『セブン』の未映像化脚本「三百年間の復讐」を、名編集者であられる安井ひさし氏が居村眞二(いむら・しんじ)先生にお願いして『てれびくん』78年12月号(78年11月1日実売)の小冊子付録として長編コミカライズにしてしまったこととも同様に、この良い意味での極めてマニア上がり的なトリビアに満ち満ちた至れり尽くせりの作劇やディテールは、内山大先生自身によるものではなく、きっと「編集協力」としてクレジットされている間宮尚彦氏によるものではなかろうか?――あくまでも憶測です――。
だから内山大先生は、ギャグ漫画家・赤塚不二夫が公言していたようにネーム(コマ割り)だけを描いてペン入れなどもアシスタントたちにやらせてラクをして、頭の中はゴルフのことでいっぱいだったのではなかろうか?――お歳のせいかもしれないが、描線がかつてと比べて微妙に劣るんだよなぁ。でも、表紙やカラーイラストなどは往年の筆致に近いんだよなぁ。オカシいよなぁ。……いや、大家(たいか)なのだから、それも許されます!・笑――
本作の前年2007年度の『てれびくん』連載『ウルトラマンメビウス外伝 超銀河大戦 戦え! ウルトラ兄弟』も同様なのである。その第7話で、怪獣軍団に苦戦するウルトラマンエースが南夕子と再合体を果たすことで(!)、エースバリヤーをも繰り出すことが可能となる! などといったストーリー展開となっているのだ。
このエースバリヤーが披露された『ウルトラマンA』第8話『太陽の命 エースの命』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060624/p1)では、球形をしたこの光学バリヤーにメトロン星人Jr.(ジュニア)を封印した際に、南夕子の方のエネルギーを使ってしまったことをふつうに記憶している、幼少時から再放送の度に毎回必ず視聴をしてきて同話のことも何十回も鑑賞してきた我々や間宮先生ならばともかく、ここまでトリビアルなネタを内山大先生が覚えているワケがないとも思うからだ(笑)。
もっとも、本作『アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』は、内山大先生に描いてほしかったのであろう、
・ジャッカル軍団やメロスやファイタスの再登場
・ヒカリが発明した「命」の技術によって、ファイタスがすでに復活
・ファイタスが30年を経て、遂に明かした素面の姿
・歴代ウルトラ戦士たちのマイナーな光線ワザや武器の描写
といった、子供たちも喜ぶだろうけど、我々に対する「マニア転がし」的な要素が実に充実していたというのに、作品の看板になっている肝心の「アーマードダークネス」をめぐって繰り広げられる攻防戦は、実は第2話でジャッカル軍団員が着用して以降、第10話でメビウスがまとうまでは全然置き去りだったりもするのだが(笑)。
新怪獣ガロウラー自体が「アーマードダークネス」の体内エネルギーによって生み出された怪獣であるという設定で、接点はかろうじて保たれてはいるけれど。
「アーマードダークネス」という鎧つながりで、映像作品では鎧をまとったウルトラマンの存在は、ウルトラシリーズ番外作品である平日帯(おび)番組であった『アンドロメロス』(83年)の主役ヒーロー・アンドロメロス――本作のメロス支部隊長とは別人ですよ~・笑――やアンドロウルフにアンドロマルスやアンドロフロルを除けば、2006年に登場したウルトラマンヒカリまで待たねばならなかった。
彼らをはるかに先行して1975年や78年に登場していた、鎧を装着する漫画オリジナルのウルトラ戦士であったメロスとファイタスを強引に引っ張り出してきて、この際だから「ジャッカル軍団」編の後日談的なストーリー展開にもしてしまおう! ついでに我々のような「大きなお友達」も少しでもゲットしよう! というような商業的な目論見(もくろみ)ももちろんあったことだろう。
しかし、このようなメロスやジャッカル大魔王の再登場といった目論見は、昭和ウルトラシリーズとも直結していた、その25年後の正統続編としても描かれていたテレビシリーズ『ウルトラマンメビウス』でも、実際に企画されていたことでもあったのだ!
「僕はボガール編(引用者註:『メビウス』初期10話分)のあと、ジャッカル大魔王復活編でメロスも来るよっていうのをやりたかったんですけど、十何話目でウルトラマン3人も出てこなくていいですと言われて(笑)」
そんな要らんことを云うたヤツは島流しの刑に処せ! ……『メビウス』の円谷プロ側のプロデューサー・渋谷浩康あたりの発言だろうか? まぁ同氏こそが昭和ウルトラシリーズと直結する世界観にウルトラを回帰させた最功労者だともいえるので、あまり責めたり犯人捜しをするような行為はやめておこう(笑)。
そう、『メビウス』のメインライターであった赤星政尚は、ウルトラマンメビウスやウルトラマンヒカリといった、同作に登場したふたりのウルトラマンに続いて、第3のウルトラマンとしてメロスを登場させようとしていたのだ!
つまりは本稿で論評した『ジャッカル軍団大逆襲!!』の発端ともなっている『ザ・ウルトラマン』こと「ジャッカル大魔王」編をも、ウルトラシリーズにおける正史としてしまおうとしていたのだ!――まぁ世代人であれば、あれは半ばの正史だ! 正史にしてほしい! と大勢が思ってきたこととは思うけど・笑――
「ジャッカル大魔王」編を70年代前半の第2期ウルトラシリーズと1980年の第3期ウルトラシリーズの間に起きていたウルトラシリーズにおける歴史的な事実とする!
そのことを当たり前の前提としている後日談として、復活を遂げたジャッカル大魔王が地球に再襲来!
大魔王を追って、我らが宇宙警備隊・アンドロメダ星雲支部隊長であるウルトラ戦士・メロスも地球に再来訪!
このような実に血が沸き肉も躍る、熱い展開を構想していたというのである!
……あぁ、なぜにこれを実現してしまわなかったのであろうか? ここでジャッカル大魔王やメロスを映像作品で登場させてしまえば、漫画『ザ・ウルトラマン』こと「ジャッカル大魔王」編は完全にウルトラシリーズの正史として位置付けられて、第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちはいざ知らず(汗)、ウルトラシリーズのマニアたちの大多数を熱狂と興奮のるつぼで包んでいたであろうというのに!!
そして、「ジャッカル大魔王」編の単行本もついでに便乗で再販されることで、世代人ではない若年の特撮マニアたちにも啓蒙(けいもう)ができたことであろうに……
ついでに、
・各作家先生方によるウルトラシリーズ各作のアンソロジー漫画
・かたおか徹次先生による連載漫画『ウルトラ兄弟物語』(78~79年・ASIN:B000J8GFFC)
・居村眞二先生による長期連載漫画『ウルトラ超伝説』(81~86年・ISBN:4886531067)
といった作品群も、テレビのウルトラシリーズとはあからさまな矛盾や不整合が生じない範囲内で、昭和のウルトラシリーズの正史として組み込んで、年若い特撮マニアたちにも番外編ではなく正史として息長く語り伝えていこうではないか! といったような好ましい機運も高まったのではなかろうか!?
エッ? 『ウルトラマン80(エイティ)』(80)第1話『ウルトラマン先生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090502/p1)で、『ウルトラマンレオ』放映終了から5年の放映ブランクを経たことを反映して、劇中でも「5年ぶりに怪獣が復活した」と云っているから、児童漫画誌『コロコロコミック』79年1月号~10月号(4月号で隔月刊から月刊化)に連載されて、シリーズ中盤では地球も戦場となった『ウルトラ兄弟物語』は、この『80』第1話での描写と矛盾が生じるのでムリだって?
……いや、地球に出現した同作の宿敵集団・スペースサタンキングたちは、悪の宇宙人軍団であって怪獣ではないのだから、ぎりぎりセーフだ!(笑)
エッ? 『ウルトラマンメビウス』第1話『運命の出逢い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)で、『80』最終回『あっ! キリンも象も氷になった!!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210315/p1)から25年ぶりに怪獣が復活したと云っていたから、『ウルトラ超伝説』を正史に組み込むのは矛盾が生じるのでムリだって?
……いや、あの作品の第1回も『80』最終回直後の事件だったのだから、これもぎりぎりセーフだ!(笑)
今からでも遅くはない! 「ジャッカル大魔王」編も『ウルトラ兄弟物語』も『ウルトラ超伝説』も、ウルトラシリーズの正史に組み込んでしまって、1990年前後に児童間で大ヒットしていた『ビックリマン』における天聖界と天魔界の数億年にわたる歴史年表に当時の子供たちが熱狂していたように、幼児はともかく児童たちのジャンク知識収集癖に強く訴えて、長期にわたって子供たちを空想世界で遊ばせるべきなのだと強く主張をしておきたい!
本家『メビウス』では、序盤10話分が通称「ボガール編」、第11話『母の奇跡(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060910/p1)』~第17話『誓いのフォーメーション』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061001/p1)は「ウルトラマンヒカリ編」となっていた。
このヒカリ編の中に位置する『メビウス』第16話に『宇宙の剣豪』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060928/p1)というエピソードがある。本来はイベント・アトラクション用におクチが見えてMC(司会)もできるキャラクターとして生み出された宇宙剣豪ザムシャーというキャラクターのテレビ本編への転用であったようだが、一匹狼のアウトロー的な人格を持っているキャラだという点ではメロスにも近い。ザムシャーをメロスの代替(だいたい)として、赤星はウサを晴らしていたのかもしれない!?(笑)
そのようなワケで、メロスが映像作品に登場する見込みは今のところはほとんどないだろう。メロスが大好きなオジサンもメロスを知らない若い特撮マニアたちも、今ならばまだ入手可能ですので、この『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』を収録した『てれびくんデラックス愛蔵版』を買っておいた方がいいですよ。
ちなみに、前年2007年度の『戦え! ウルトラ兄弟』の方を収録した『てれびくんデラックス愛蔵版』(小学館・08年4月8日発行・ASIN:B01CG0VDJI)の方はオタク友だちに借りることで読めたのだけど、版元品切れのようで筆者は某通販サイトからの「入荷お知らせメール」を待っている次第です。後悔先に立たず……
――後日付記:内山大先生の漫画『ウルトラマンメビウス外伝』シリーズは、2021年に合本形式で『完全版 ウルトラマンメビウス外伝プラス平成ウルトラマン作品集』(小学館クリエイティブ・21年6月22日発行・ISBN:4778038401・電子書籍ASIN:B09G9T3V52)と銘打って500ページもの体裁で再販! 書籍のみならず電子書籍化も果たされた。コレで品切れの心配もなく、後続世代にも恒久的な一読が可能となった!――
編集者・後日付記:
2020年度作品『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)と連動してネット配信されていた、ウルトラマンゼットが地球に来る前の前日談を描いたオーディオドラマ『ウルトラマンゼット&ゼロ ボイスドラマ』第23回『採用試験②』(脚本・足木淳一郎)では、サラッと「メロス支部隊長」や「アウラ支部隊長」といった語句が出てきている……。映像作品ではないとはいえ、さりげにメロスとアウラの存在がついに公認されてしまったゾ!(笑)
2021年に発行された『完全版 ウルトラマンメビウス外伝プラス平成ウルトラマン作品集』の20ページ目には、小学館の幼児誌『てれびくん』の2007年度連載漫画『ウルトラマンメビウス外伝 戦え!ウルトラ兄弟』第1話についての詳細なアラスジ、登場するウルトラ兄弟や怪獣・宇宙人、その対戦組み合わせ、微に入り細を穿ったアクションの細部までをも記した「プロット」が収録されていた。名編集者・間宮尚彦から内山まもる宛てに送付されていたものだ。同ページの解説でも、「間宮尚彦がプロットを用意していたようだ」と記されている。
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ASIN:B08GFLZ53Q:detail
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