『昭和レトロ冬まつり』 ~月光仮面・黄金バット・帰マン・キカイダー・マッハバロン・バトルフランス・メタルダー・磁雷矢! 昭和特撮俳優座談会・撮影会 2019年師走!
『企画展 スーパー戦隊レジェンドヒストリー ~ゴレンジャーからリュウソウジャー、そして未来へ~』 ~神秘・恐怖から親近感・コミカルへ。日本特撮の画期にして文化・歴史となった「戦隊」!
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『第弐回 新仲見世 昭和レトロ祭り』 ~バトルフランス・バイオマン・磁雷矢! 昭和特撮ヒーロー俳優サイン会・撮影会 2018年GW!
(文・久保達也)
(2018年4月30日脱稿)
アイドルアニメ『ラブライブ! サンシャイン!!』(第1期・16年 第2期・17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200628/p1)の「聖地」として、今や全国的に知られるようになった静岡県沼津(ぬまづ)市にある、「昭和」の香りが濃厚にただようアーケード商店街に、「昭和」の特撮ヒーローたちが帰ってきた!
先述した『ラブライブ! サンシャイン!!』が放映された2016年から、沼津市では駅前商店街復興の一環として、「昭和レトロ祭り」と題したイベントを何度か行ってきた。
混乱を避けるために一応補足しておくが、今回のイベントが「第弐(に)回」と銘(めい)打たれているのは、沼津駅南口の新仲見世(しんなかみせ)商店街で「昭和の日」=4月29日祝日に開催されるのが第2回目ということであり、それ以前の「昭和レトロ祭り」は、主催者も開催場所も新仲見世商店街とは異なっていたのだ。
今回の「昭和レトロ祭り」の中で「昭和特撮ヒーロー俳優 サイン会・撮影会」が開催されることとなったのは、新仲見世商店街にある昭和レトロ玩具や駄菓子などを扱う店・「昭和レインボー」の店主・田中剛氏の人脈によるものである。
昭和レインボーは2017年12月にオープンしたのだが、その記念イベントとして、2017年12月9日&10日にも「昭和レトロまつり――これのみ「祭り」でなく「まつり」のひらがな表記――」が新仲見世商店街で開催されており、このときも
・伴大介(ばん・だいすけ)氏=『人造人間キカイダー』(72年・東映 NET→現テレビ朝日)のジロー=キカイダー役
・石田信之(いしだ・のぶゆき)氏=『ミラーマン』(71年・円谷プロ フジテレビ)の鏡京太郎=ミラーマン役
・きくち英一氏=『帰ってきたウルトラマン』(71年)の新ウルトラマン=ウルトラマンジャックのスーツアクター
・倉知成満(くらち・なりみつ)氏=スーパー戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ(ジェイ)』(79年・東映 テレビ朝日・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120130/p1)の志田京介(しだ・きょうすけ)=バトルフランス役
・山添三千代(やまぞえ・みちよ)氏=『少年探偵団』(75年・日本現代企画 日本テレビ)の秋吉(あきよし)めぐみ=通称・マジョ役
・すぎうらよしひろ氏=『スーパーロボット マッハバロン』(74年・日本現代企画 日本テレビ)のオープニング&エンディング主題歌の歌手
と、「昭和」の特撮ヒーロー&ヒロインが大集結したほどであり、マニアのみなさんにはおなじみのショッカーO野(おおの)氏の司会によるトークイベントが行われたのだ。
「昭和レインボー」の店主・田中氏は、『スーパーロボット レッドバロン』(73年・宣弘社 日本テレビ)や『マッハバロン』の同人である「バロン座談会実行委員会」に関わり、公式サイト「バロンスペシャル」の運営など、積極的なマニア活動を展開していることから、氏の呼びかけに対し、往年の名優たちが快(こころよ)く応じて下さったのだと考えられる。
さて、今回の「昭和レトロ祭り」に招かれたのは、先述した倉知氏のほかに、
・坂元亮介(さかもと・りょうすけ)氏=スーパー戦隊シリーズ『超電子バイオマン』(84年・東映 テレビ朝日)の郷史朗(ごう・しろう)=レッドワン役
・筒井巧(つつい・たくみ)氏=『世界忍者戦ジライヤ』(88年・東映 テレビ朝日)の山地闘破(やまじ・とうは)=磁雷矢(ジライヤ)役
のお三方である。
しかし、先述した昭和レインボーのオープン記念イベントの際にはかなりの時間が設けられたらしい、いわゆるトークイベント形式のものは今回は残念ながら行われなかった。
今回のメインイベントは、「昭和」後期に大人気を博した歌謡番組『ザ・ベストテン』(78~89年・TBS)の完全再現であり、当時の人気アイドルたち=キャンディーズやピンクレディー、田原俊彦(たはら・としひこ)に近藤真彦(こんどう・まさひこ)、松田聖子(まつだ・せいこ)や中森明菜(なかもり・あきな)らに扮(ふん)した者たちがランキング形式で登場し、「昭和」の歌謡曲を披露するものだったのだ――商店街の一角に番組のスタジオセットが忠実に再現されたのは、現在静岡県内に在住する、当時の美術スタッフの協力によるものだそうだ――。
で、番組の1コーナー・「今週のスポットライト」を再現するかたちで、順に倉知氏・筒井氏・坂元氏が略歴を紹介されたうえで、それぞれ『バトルフィーバー』『ジライヤ』『バイオマン』の主題歌をステージで歌唱したのである。
当時の撮影裏話や近況などが語られる時間もないほどに、トーク部分が数分程度だったのは残念ではあったが、思えば『バトルフィーバー』も『ジライヤ』も『バイオマン』も、主題歌を歌唱したのは主演俳優ではなかったワケであり、その意味では今回の機会が貴重であることは確かだ。
それにしても、倉知氏と筒井氏は「昭和」のころとまったく変わっていないし(!)、坂元氏は2016年に余命宣告まで受けたほど、食道ガンによる闘病生活を余儀(よぎ)なくされたのだが、『バイオマン』の主題歌を朗々と歌いあげるほどまでに、すっかりお元気になられた姿を拝見できたことは感動もひとしおであった。
『バトルフィーバー』の主題歌といえば、バトルフランス・バトルコサック・バトルケニア・ミスアメリカ・バトルジャパンの名が順にあげられ、ヒーロー&ヒロインが応じる部分があるが、倉知氏が器用にもひとり5役でそれらを演じるコミカルな姿は観客の笑いを誘ったものだ。
また、筒井氏は『手裏剣(しゅりけん)戦隊ニンニンジャー』(15年)第34話『伝説の世界忍者、ジライヤ参上!』のゲスト出演時には当時の撮影用衣装を着用していたが、今回の黒装束(しょうぞく)は新調したものとのお話であり、当時から維持しているスリムな体型を活(い)かし、歌唱しながらステージでハデなアクションを繰り広げたり、間奏時に握手に応じるなど、サービス精神の旺盛(おうせい)ぶりには実に好感が持てたもので、長年のファンを大事にする姿勢を象徴するものだった。
『ザ・ベストテン』のランキング発表がひととおり終わったあと、ステージでは「平成」のこの世にピンクレディーやキャンディーズをトリビュートする活動を各地で展開中の、オレンジレディ&ミルキィーズによるヒット曲メドレーが披露され、会場はおおいに盛りあがることとなった。
思えば『ザ・ベストテン』がスタートした1978年は、番組開始直前の1977年末に発売された本邦初の特撮マニア向け書籍『ファンタスティックコレクションNo.2 ウルトラマン 空想特撮映像のすばらしき世界』(朝日ソノラマ・78年1月25日発行名義)を皮切りに、空前の第3次怪獣ブームが起きた年でもある。
開始当初の『ザ・ベストテン』では、ファンコレと同じく77年末に発売されたピンクレディーの『UFO(ユーフォー)』と、キャンディーズの『微笑(ほほえ)みがえし』が首位を争っていたものだ。
『UFO』を作詞した故・阿久悠(あく・ゆう)氏は、映画『スター・ウォーズ』(77年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200105/p1)や映画『未知との遭遇(そうぐう)』(77年)がアメリカで77年に大ヒットしていたことから、この波が翌78年には必ずや日本に訪れるとして、『UFO』をつくったとのことだった――『未知との遭遇』は翌78年2月に、『スター・ウォーズ』も翌78年7月に日本で公開――。
氏の思惑(おもわく)どおり、実際78年に日本ではSF映画&SFアニメブームも巻き起こったのであり、1978年大晦日(おおみそか)の日本レコード大賞をこの『UFO』が受賞したのは、まさにその時代を象徴するものであったのだ。
良くも悪くも、その後の自分の人生を決定づけることとなった第3次怪獣ブームが起きた78年=昭和53年は、筆者にとっては「昭和」の中で最も忘れられない年であり、その当時にヒット曲を連発していたピンクレディーのメドレーには、感慨深く思わずにはいられなかったのである。
『ザ・ベストテン』が終了すると、「昭和特撮ヒーローもの上映会」と題して、『バトルフィーバーJ』第10話『ナウマン象を見た』と、『スーパーロボット マッハバロン』最終回(第26話)『マッハバロンの超秘密』が、16mm(ミリ)フィルムによって上映された。
デジタルの高画質映像がいくらでも楽しめる時代に、あえて全体的に色が赤みがかってしまい、カラーというよりもセピア色に近い(笑)映像で観るからこそ、「昭和レトロ」感を醸(かも)しだすというものであり、この趣向は個人的には大カンゲイである。
そういえば70年代後半に名古屋圏で再放送された元祖『ウルトラマン』(66年)や『マグマ大使』(66年・ピープロ フジテレビ)なんかは、こうした退色しまくりのフィルムが平気で使われていたものだった(笑)。
ゲストの倉知氏の主演作品ではなく、大葉健二(おおば・けんじ)氏が演じた曙四郎(あけぼの・しろう)=バトルケニアが主役の第10話がセレクトされたのが謎だったりするのだが、高層ビルの外壁(がいへき)をロープを使って実際に降りる大葉氏の大胆なスタントは、まさにあの時代だからこそ実現したものだ。
『バトルフィーバー』も当時としてはテンポの良さやポップなノリが印象的だったように思えるのだが、現在の観点からすると意外にまったりとした作風に見えてしまうのは、やはり「平成」仮面ライダーや近年のスーパー戦隊が、当時と比べて技術面で飛躍(ひやく)的な進歩をとげてしまっているからにほかならない。
だが、当時のスタッフたちの試行錯誤(さくご)の日々がなければ、「平成」ライダーが生まれることも、スーパー戦隊が40年以上もつづくこともなかったのだと、「昭和」を知らない若い世代には頭の片隅にでもとどめておいてもらいたいものである。
一方の『マッハバロン』最終回は、防衛組織・KSS(キス)の女性隊員・小杉愛が、仲間を助けるために殉職(じゅんしょく)する展開が、「子供番組」のレギュラーが亡くなるのは極力避けられていた時代だっただけに――『帰ってきたウルトラマン』や『ウルトラマンレオ』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090405/p1)など一部例外もあったが――、リアルタイム視聴時はかなり衝撃的だったことが印象強く残っている。
また、ギンギンのロック調であるオープニング、アコースティックなバラード調のエンディングと、当時の特撮ヒーロー作品としては圧倒的に音楽性が高い主題歌も魅力のひとつだ――ちなみにどちらも作詞は先述した「歌謡曲」のヒットメーカー・阿久氏によるものだ――。
最後に「昭和」のレトログッズなどが当たる抽選会が行われたが、ここで筆者は坂元氏の直筆(じきひつ)サイン入りCDを当ててしまった!
氏は現在は演歌歌手として活動しており、2018年4月1日に新曲『生きてゆく~こんな乱れた時代を~』が発売されたばかりなのだ。
ちなみにカップリング曲の『夢の鍵(かぎ)』は、『超力戦隊オーレンジャー』(95年・東映 テレビ朝日・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110926/p1)で星野吾郎(ほしの・ごろう)=オーレッドを演じ、現在は坂元氏と同じく演歌やムード歌謡の歌手として活躍する宍戸(ししど)マサル氏が、「ししどまさる」の名義で作詞を手がけたものだ。
「平成」の時代にずっと居心地の悪さ・居場所の無さをかみしめてきた筆者にとって、『生きてゆく~こんな乱れた時代を~』は人生の応援歌となり得るような感があり、それを頂いたうえに再度握手までして下さったことに、坂元氏に深々と頭を下げずにはいられなかった筆者であった。
そしてトドメとなったのは、バトルフランス・レッドワン・磁雷矢の名乗りカットが、お三方によって連続で披露されたことである!
スポーツ選手による優勝だの金メダルなどの祝賀パレードを見た庶民(しょみん)たちが、「元気をもらいました!」「感動をありがとう!」などと報道で語っているのを冷ややかに見ていた筆者だったが(笑)、今回ばかりはようやくその気持ちが理解できたものだ。
「来年(2019年)の「昭和の日」にまたお会いしましょう!」との司会者の言葉で「昭和レトロ祭り」は幕となったが、その翌日、2019年4月30日で、ついに「平成」も幕を閉じることとなる。
「昭和」ギリギリの1988年=昭和63年に放映された『世界忍者戦ジライヤ』が、すでに30年も前の作品だ。それが「平成」の終焉(しゅうえん)により、いよいよ「昭和」もはるか遠い昔となってしまう……
イベント終了後、夕焼けに染まる沼津駅前の中心市街地をブラブラと散策してみた。日曜&祝日であるにもかかわらず、人影はまばら、多くの商店がシャッターを閉じており、先述した『ミラーマン』の第10話ではないが、まさに『時計が止まった街』という印象を強く感じてしまった。
「昭和」の時代に全盛だった特撮ヒーロー作品を、アーケード商店街のように衰退(すいたい)させないために、我々「昭和」を知る世代のマニア活動には、今後いっそう大きな責任がともなうこととなるだろう。
そんなことをぼんやりと考えながら、「昭和」の時代から50年以上つづく中華料理店でラーメンをすすり、『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)のイエローバスター・宇佐見ヨーコや映画『劇場版ウルトラマンギンガS(エス) 決戦! ウルトラ10勇士!!』(15年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)のアレーナ姫役を演じた小宮有紗(こみや・ありさ)が声を演じる、『ラブライブ! サンシャイン!!』の主人公アイドルグループの一員にして浦の星女学院・生徒会長でもあるキャラ・黒澤ダイヤ(くろさわ・だいや)の等身大ポップが飾られた和菓子屋でみやげを買うことで、沼津駅前の活性化も願いつつ、家路へとついた筆者であった。
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