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快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー オリジナルプレミアムドラマ ~安易なネット配信の番外編だと侮るなかれ。TV正編のらしさ満載!

(2019年10月13日(日)UP)
平成スーパー戦隊30年史・序章 ~平成元(1989)年『高速戦隊ターボレンジャー』
『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』前半合評 ~パトレン1号・圭一郎ブレイク!
『ルパンレンジャーVSパトレンジャーVSキュウレンジャー』 ~イマ半か!? 近年のVS映画や往年の戦隊映画と比較考量!
『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』 ~『恐竜戦隊ジュウレンジャー』後日談を観たくなったけど、コレでイイのだろう!?
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[戦隊] ~全記事見出し一覧

『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー オリジナルプレミアムドラマ』 ~安易なネット配信の番外編だと侮るなかれ。TV正編のらしさ満載!

東映ビデオ・2019年2月6日発売)


(文・久保達也)
(19年5月12日脱稿)


 『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年)の劇場版・映画『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー en film(アン・フィルム)』(18年・東映)が公開された2018年8月4日、および翌週の8月11日に前後編形式で配信されたネットムービー、


・『快盗戦隊ルパンレンジャー+(プラス)警察戦隊パトレンジャー 究極の変合体!』(18年・au(エーユー)ビデオパス)


・『警察戦隊パトレンジャー Feat.(フィーチャリング) 快盗戦隊ルパンレンジャー もう一人(ひとり)のパトレン2号』(18年・東映特撮ファンクラブ)


の2本が映像ソフトとしてカップリングされ、『ルパパト』最終回のオンエアを直後に控えた2019年2月6日に東映ビデオから発売された。


 若い世代のマニアたちは、こうしたネットムービーをフツーに楽しんでいるのであろうが、「昭和」生まれのアナログ世代である筆者のような中年オヤジにはなじみがないものであり、正直登録や視聴の方法もいまだによくわかっていない(汗)。
 なので、今回の映像ソフトのリリース、しかも従来の東映ビデオのオリジナルビデオ作品とほぼ同じ60分強の収録時間の割にはかなりの低価格――ブルーレイが3800円、DVDは2800円。Amazon(アマゾン)で買えば25%オフ(笑)――のため、テレビシリーズの終了でいまだに『ルパパト』ロス(笑)に陥(おちい)っている筆者としては、手を出さずにはいられなかったのだ。


*『快盗戦隊ルパンレンジャー+警察戦隊パトレンジャー 究極の変合体!』


 敵組織・ギャングラーの磁力を武器にする怪人マグーダ・ポーンによって、ルパンレッドとパトレン1号が磁石のようにくっついて離れなくなったことで巻き起こる騒動を描いた、完全なドタバタコメディであり、テレビシリーズの『ルパパト』の魅力のひとつであった、多数のキャラのさまざまな思惑が複雑に交錯する群像劇といった趣(おもむき)とはほど遠い内容だ(笑)。
 だが、『ルパパト』を知らない人でさえも、前後編あわせて約30分のコレを観るだけで、おおよその雰囲気をつかむことができるのではないかと思えるほど、『ルパパト』の作風・世界観を絶妙なまでに凝縮(ぎょうしゅく)した、冴(さ)え渡る本編&アクション演出は実に秀逸(しゅういつ)である。


 導入部ではマグーダ・ポーンが戦闘員のポーダマンを従え、銀行強盗を働いているが、多数のシャンデリアに照らされた社交場のようなギャングラーのアジトにて、幹部怪人のデストラとゴーシュが、マグーダは先述した映画『en film』に登場した怪人・ウィルソンの指示でカネを集めているのだ、と語る場面があり、ラストではそのウィルソンまでもが登場するのだ。
 また、国際警察日本支部では高尾ノエル=パトレンエックス=ルパンエックスが、やはり『en film』にイギリスの名探偵として登場するも、その正体はウィルソンとコンビを組む怪人だったエルロック・ショルメが、近々来日するという情報をつかむ場面があり、本作が映画の前日譚(たん)であることを強調して集客につなげようとする演出は、さすがは商売上手の東映といったところか。
 ただ、映画でエルロックの人間態である名探偵を演じたお笑いコンビ・ココリコの田中直樹の姿は、ノエルが観るモニターでは口元しか映らず、これはギャラが発生するのを避けるためだろう(笑)。


 マグーダが暴れる銀行内に、テレビシリーズで定番だったスウィング・ジャズ風のテーマ音楽が流れる中、シルクハットにアイマスクを着用した快盗ファッションに身を包む、夜野魁利(やの・かいり)=ルパンレッド、宵町透真(よいまち・とおま)=ルパンブルー、早見初美花(はやみ・うみか)=ルパンイエローが現れ、3人が怪人に向けてひとことづつ放つ口元のみを、黒バックを背景にして順にアップで映しだし、魁利による「世間を騒がす怪盗さ」のキメゼリフと同時に、銃を構える3人の姿があらわになる華(はな)にあふれる演出。
 銃型の変身アイテム・VSチェンジャーを発砲して「快盗チェンジ!」と変身するや、各自がポーダマンを組み伏せながら名乗りをあげ、銀行を飛び出すやバック転・宙返り・足払いをはじめ、カンフーアクションの魅力をも兼ね備えたSF映画『マトリックス』(99年・アメリカ)で描かれたような、宙を大股(おおまた)開きで側転をかますといった映像表現をも彷彿(ほうふつ)とさせる、アクロバティックなアクションを繰りだすルパンレンジャー!
 こうしたエレガントかつスタイリッシュなカッコよさこそが、ルパンレンジャー最大の魅力であるだろう。
 専用車で駆けつけ、「警察チェンジ!」で変身したパトレンジャーもそこに乱入、商業施設の連絡通路で繰りひろげられるバトルを、カメラが上空から俯瞰(ふかん)しながら、そのまま階下でのバトルへとワンカットで移動、そこに発砲の残像や火花・炎の効果が描かれる、実に立体的で臨場感満点のアクション演出もまた然(しか)りだ。


 ここまではいつもの『ルパパト』のカッコよさが描かれるが、先述したようにマグーダの磁力光線を浴びたルパンレッドとパトレン1号は、背中合わせの状態で離れなくなってしまい、あとはコミカルモード全開となっていく。
 パトレン1号=朝加圭一郎(あさか・けいいちろう)=圭ちゃんが、「昭和」の名作刑事ドラマ・『太陽にほえろ!』(72~86年・東宝 日本テレビ)で、故・松田優作が演じたジーパン刑事の断末魔のように、「なんじゃぁこりゃぁ~~!!」と絶叫するさまを俯瞰してカメラが青空へとパン、そこにタイトルが挿入(そうにゅう)される演出は、コミカルさを強調しつつも、やはりいつもの『ルパパト』らしさをも感じさせてくれるものだろう。


 また、本作は時間軸的には先述した映画『en film』で、ウィルソンによって異世界へと幽閉された圭ちゃんと魁利が、一時休戦して共闘関係を組む前の話であり、ふたりの関係性は、テレビシリーズ第30話『ふたりは旅行中』で、夏休みの温泉旅行を装って隠密(おんみつ)捜査に出た圭ちゃんに、ノエルの依頼で同行した魁利が、ギャングラーの幹部怪人・ザミーゴによって行方不明となった兄・勝利と圭ちゃんを、次第に重ね合わせるようになる以前のものなのだ。
 したがって本作では魁利は圭ちゃんを「圭ちゃん」ではなく、終始「熱血おまわり」と呼んでおり、テレビシリーズ終盤にて兄弟のような関係へと至った魁利と圭ちゃんではなく、まだ完全に互いが敵意むきだしであり、離れようと必死になるさまが、より視聴者の笑いを誘うこととなっている。


 ルパンブルー&ルパンイエローと、パトレン2号&3号が双方からひっぱっても、ルパンレッドとパトレン1号を引き離すことができないほど、その磁力は強力であり、やむなくルパンブルーとルパンイエローはパトレン1号が背中にくっついたままのルパンレッドを、アジトのビストロ・ジュレへと連れ去ることに。
 ルパンレンジャーとしての正体を圭ちゃんに知られないために、透真と初美花によってさるぐつわに目隠し、耳にはヘッドホンまであてられた圭ちゃんは暴れまくるが、なんとか目隠しと口の束縛(そくばく)から解放された圭ちゃんは、「誰かいないかぁ~~!! ここに快盗がいるぞぉ~~!!」と絶叫する(笑)。
 近所に気づかれたらかなわんとばかりに、魁利は圭ちゃんを背負ったまま外に飛び出していくが、ギャングラー出現の通報で現地に急行する陽川咲也(ひかわ・さくや)=パトレン2号と明神(みょうじん)つかさ=パトレン3号を乗せた国際警察の専用車を見かけた圭ちゃんは、今度は逆に魁利を背負ったまま、そのあとを全速力で追いかけていく(爆)。
 ツンデレでややヤンキーチックな魁利、ひたすらアツ苦しい圭ちゃんと、まさに水と油であるふたりの体をはったコテコテ演技がサイコーに楽しいが、これがあるからこそ、マグーダがアジトとする廃工場に現れた、快盗姿の透真と初美花が、スポットライトを背景に銃を向けながら静かにマグーダに迫ったり、咲也とつかさが工場内に突撃してくるカッコよさが、より際(きわ)だつというものだ。


 廃工場で繰りひろげられるルパンレンジャーVSパトレンジャーVSギャングラーの乱戦模様がカッコいいだけに、そこに魁利を背負ったままの圭ちゃんがドタドタと割って入ってくるのは、完全に場違いという感すらある(笑)。
 それでも背中合わせのまま、共通するアイテムのVSチェンジャーで同時に変身をとげる魁利と圭ちゃんに、ルパンレッド&パトレン1号のスーツが装着されるカットはカッコいいのだが、やはり背中がくっついたままの両者がむやみやたらとギャングラー一味に発砲することで、工場内は炎の海に包まれてしまう。
 この場面自体はコミカルなのだが、CGではなく火薬を使用することで、ルパンレンジャー&パトレンジャーが最大の危機に陥(おちい)っている印象をも感じさせてくれる演出は秀逸だ。
 さらにブチギレたマグーダが再度磁力を発動させることにより、今度はルパンブルー・ルパンイエロー・パトレン2号・パトレン3号の4人がくっついてしまい、その変身も解除されてしまう!
 4人が「なんじゃぁこりゃぁ~~!!」と絶叫するさまを俯瞰して前編が終了となる、まさに係り結び的な演出も実に見事だ(笑)。


 自身もまだパトレン1号とくっついたままなのに、くっついた4人を「ちょ~笑える」と、現状認識ができていないばかりか、自身の無謀(むぼう)な行動が4人を危機に陥(おとしい)れたことをまるでわかっていないルパンレッド、そんなレッドを真剣にどやしつけるパトレン1号と、こんなコミカルな場面でも両者を対比的に描くことで、しっかりとキャラを掘り下げているのは、まさに『ルパパト』ならではのものだろう。
 おまえがでしゃばるから、いや、おまえが邪魔するからなどと、互いに責任を転嫁(てんか)する魁利と圭ちゃんに、すっかりあきれかえってしまったノエルは、今回は僕ひとりで解決すると主張するが、これに反発した魁利と圭ちゃんは、やはりくっついたままでマグーダのあとを追う。
 ここで一計を案じた魁利は、圭ちゃんを通りかかった建物の入り口の柱に縛(しば)らせ、VSビークルの推進力で自身をロープでひっぱりあげてもらうことで、見事圭ちゃんと分離することに成功する!
 VSビークルにひっぱられて空を舞う魁利を俯瞰する立体的なカットがまた実に臨場感にあふれているのだが、「ご協力、ありがちゅ~~」と去っていく魁利に、一瞬の間を置いたあと、「しまった……だまされたぁ~!!」と地団駄(じたんだ)を踏んでくやしがる圭ちゃんの姿が最高に笑えるものの、これはテレビシリーズ中盤くらいまでの魁利と圭ちゃんの関係性を、最大に象徴する描写だといえるだろう。


 そうしている間にも、透真・初美花・つかさには、最大の危機が迫っていた! 3人にくっついている咲也が、「トイレに行きたい」(笑)と云いだしたのだ。
 透真が咲也に「ここでしたら殺す」(爆)と冷徹に云い放つのが「らしさ」を感じられるだけに、その危機感がより強調されているのだが、4人を分離させるにはマグーダを倒さねばならないものの、周知のとおり、『ルパパト』ではギャングラー怪人を倒す前に、ルパンレンジャーが大事な人を取り戻すという願いをかなえるための、ルパンコレクションを怪人から回収せねばならず、それらを早急に解決せねば、咲也が透真・初美花・つかさを巻きこむかたちで小便をもらしてしまう、史上最大の危機(大爆)に見舞われるのだ!
 クライマックスバトルに緊迫感を与えるためとはいえ、もう、なんつーか……(笑)


 これとは一転、マグーダに孤軍奮闘するパトレンエックスのアクロバティックなアクションもさることながら、ポーダマンたちの発砲でロケ地のテラスの天井や壁に弾痕(だんこん)が、周囲に炎や火花が描かれるCG演出が華を添えてくれる。
 さらにVSビークルにロープでひっぱられながら魁利が空で変身、そのまま画面手前をかすめるように、ルパンレッドがターンしてすべりこみ、着地するやCGからスーツを着用したアクターに瞬時に切り替わっているのはあまりにもあざやか! レッドが指を慣らして名乗りをあげるのも実にカッコいい!
 もっともこれにつづいて咲也が「限界です!」と叫び、透真・初美花・つかさが画面3分割で悲鳴をあげたり、パトレン1号が縛られていた柱を両腕でかかえたまま、銃を構えてラストバトルの舞台に現れ、ルパンレッドが「火事場のバカ力かよ」(笑)とボヤいたりと、最後まで両極端な演出が交互に繰り返される展開となっている。
 だが、ノエルがパトレンエックスからルパンエックスにチェンジしてコレクションを奪い、ルパンレッドとパトレン1号が磁力でひき寄せられるのを利用して双方からマグーダに突撃、剣で斬りつけてとどめを刺すといった連携(れんけい)プレーが、実にあざやかだったことは確かだ。
 3人の活躍で透真・初美花・つかさ・咲也はようやく分離、咲也は全速力で外に駆けだしていくのだった(笑)。


 初美花に恋焦(こ)がれていた咲也が、ジュレを舞台にしたラストにて、「あの快盗の女の子、いい匂(にお)いがした」と発言、初美花が手がすべったとして咲也に水をぶっかけるに至るまで、全編ネットムービーというよりは、むしろ講談社『テレビマガジン』や小学館『てれびくん』といった幼年誌の愛読者全員サービスDVDのノリにかなり近い趣だ。
 ただ、ぶっちゃけドラマ的には極めてユルユルで、ひたすら見せ場を充実させた明るいノリの、本来の視聴層である子供たちこそが大喜びしそうなこうした作品が、ネットムービーとして配信され、それが大ウケしてしまう現状には、やはり古い世代としては、隔世の感をおぼえずにはいられないのである。


*『警察戦隊パトレンジャーFeat.快盗戦隊ルパンレンジャー もう一人のパトレン2号』


 さてこちらはテレビシリーズ第43話『帰ってきた男』&第44話『見つけた真実』に登場した、戦力部隊結成当時に国際警察に所属し、本来ならパトレン2号となるハズだった東雲悟(しののめ・さとる)について、前編の大半を使ってつかさが回想するかたちで語られ、後編では悟の後任としてパトレン2号となり、悟の想いを継承した咲也の奮闘ぶりが描かれる。
 タイトルに「Feat.」とあるように、実はこちらでは魁利・透真・初美花がいっさいルパンレンジャーに変身しないどころか、3人はジュレの買い出しの帰り道に、公園のベンチでひとりたたずむ圭ちゃんを見かける場面と、ラストシーンに登場するのみであり、完全にパトレンジャーが主役の話となっているのだ。
 当初製作側はルパンレンジャーの方が圧倒的に人気が出ると想定していたようだが、いざ放映が始まるや、子供たちの反応はともかく、「圭ちゃん」がネットのHOT(ホット)ワードと化したほど、少なくとも大人の視聴者の間では、パトレンジャーの方が断然人気を得ることとなった。
 『もう一人のパトレン2号』が製作され、ネットムービーとして配信された背景には、やはりパトレンジャーが想定外の人気を得たことが大きかったのではあるまいか?


 つかさの後輩である咲也が2号で、先輩のつかさが3号なのはナゼ? と、『ルパパト』の視聴者であれば誰もが疑問に思ったことであろうが、ノエルが咲也に異様に顔を近づけ、まじまじと見つめたうえでその疑問をぶつけ、咲也が困惑するところから本作は開幕する。
 そこにギャングラー出現の通報が入り、パトレンジャーは現地に急行するが、怪人の姿を見た途端、圭ちゃんはナゼか冷静さを失い、パトレン1号に変身して怪人に怒りをぶつけまくった。
 だが怪人にはかなわず、勝ち誇った笑いをあげて去っていく怪人の姿に、パトレン1号が絶叫して地面にこぶしをたたきつけるカットにタイトルが挿入される演出は、先述した『究極の変合体!』とは見事に差別化されており、これが本来のネットムービーらしい(?)、シリアスな路線であることを象徴している。
 また、『究極の変合体!』のロケ場面が終始ピーカンの青空の下(もと)で撮影されていたのに対し、『もう一人のパトレン2号』のロケ場面がほぼ曇天(どんてん)の空一色であるのも、単なる偶然とは思えないものがあり、やはり作風の違いを明確にする意図が感じられるのだ。


 圭ちゃんとつかさが怪人を既知の存在であるかのような態度だったことを不審がったノエルに、つかさは怪人を「因縁(いんねん)の敵」であるとして、苦い過去を語り聞かせる。
 戦力部隊として着任し、国際警察日本支部に黒のスーツ姿で集結する圭ちゃんとつかさだが、やや遅れてやってきた悟は、携帯音楽プレーヤーのヘッドホンを耳にあてていた。
 ここで悟が聴いていたのは、ドイツのバロック音楽の作曲家・バッハによる『管弦楽曲第3番ニ長調』の第2曲『アリア』を、やはりドイツのヴァイオリニストだったアウグスト・ウィルヘルミが編曲した『G(ジー)線上のアリア』だ。
 テレビドラマやCMでも多用される名曲なので、タイトルはわからなくとも、誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。


 先述したテレビシリーズ第43話&第44話では、既にギャングラーに殺されていた悟に怪人が化けたニセものが登場したが、キザとまではいかないまでも、ややきどった感じのエリート風情(ふぜい)だった悟のキャラには、エレガントな『G線上のアリア』は実にお似合いだ。
 そして、そんな名曲ですらも、「勤務中に音楽を聴くな!」と、悟にヘッドホンをはずさせる圭ちゃんは、『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』(19年)で「きまじめチーム」(爆)に所属していたほど、ここでもそのきまじめぶりが如実(にょじつ)に表れている。
 こうした短いやりとりですらも、キャラたちの「らしさ」を描きつくした演出は、テレビシリーズの『ルパパト』の大きな魅力だったのだ。


 当時の国際警察にはまだパトレンジャーとしての装備がなかったため、圭ちゃんたちは変身することなく、生身でギャングラーと戦うことを強(し)いられており、戦闘員のポーダマンにさえかなわず、市民たちを逃がすのが精一杯だったのだ。
 ギャングラーを倒せない自分たちの非力さにいらだつ圭ちゃんに、悟は音楽でも聴いておちつけと、自身の携帯プレーヤーを手渡すが、圭ちゃんはそれを払いのけ、悟につかみかからんとする。
 そんな圭ちゃんを評して、悟はきまじめなのはいいところだが、それは危(あや)ういところでもある、とつかさに語るのだ。


 ギャングラーのアジトに潜入し、怪人ゾニック・リーに鉄パイプで殴りかかる圭ちゃんだが、怪人が武器として放つ超音波に襲われ、窮地(きゅうち)に立たされる。
 そこにヘッドホンを耳にあてた悟が、『G線上のアリア』を聴きながら駆けつけ、ゾニックに突撃して圭ちゃんを救う。
 悟は音楽を聴くことでゾニックの超音波を防いだのだが、ここで悟が圭ちゃんに、「勤務中だが許せ」と放つのがなんともイキである。
 だが、ゾニックの逆襲から圭ちゃんとつかさをかばった悟は、崩れてきた瓦礫(がれき)の下敷きとなり、重傷を負ってしまう。


 圭ちゃんとつかさの絶叫で前編は幕となるが、後編は神妙な面(おも)持ちで悟の病室の前でたたずむ、圭ちゃんの姿からはじまる。
 「悟の云うとおりだな」とつぶやいたつかさは、悟が以前、「きまじめな奴は自分をもきまじめに追いこむ。自分を見失うことにも気づかずに。それをサポートするのが、2号であるオレの役割だ」と語っていたことを圭ちゃんに告げ、悟の想いを無駄にするなと、悟の携帯プレーヤーを圭ちゃんに手渡し、背を向けて廊下の奥へと静かに立ち去っていく。
 テレビシリーズでもボソッとつぶやくように放ったひとことのみで、ズバッと核心をつくことが多かったつかさを象徴する描写となっているが、きまじめにすぎる圭ちゃんを決して否定することなく、あくまでリーダーとして立て、自身はサポート役に徹するとした悟の想いは、そんなつかさの静的なカッコよさによって、今回も圭ちゃんに充分に伝わったのだ。


 このときに手渡されたプレーヤーを、現在も圭ちゃんが大事に持っていること自体が感動的だが、悟を「幻(まぼろし)のパトレン2号」にしてしまった「因縁の敵」=ゾニックの出現に、公園のベンチでひとりたたずみ、悟が好きだった『G線上のアリア』を聴くことで、悟の想いを再びかみしめる圭ちゃんの姿は、ファンには涙なしでは見られないだろう。
 『究極の変合体!』におけるコミカルな絶叫演技もよかったが、テレビシリーズ終盤での魁利とのからみで顕著(けんちょ)に見られたような、誠実さ・実直さが強調された圭ちゃんの表情演技には、本作でもやはり人間的な厚みが感じられたのである。


 圭ちゃんが『G線上のアリア』を聴きながらゾニックの攻略法を考えている間にも、再度街でゾニックが暴れまわり、ヘッドホンを耳にあてたパトレン2号と3号が急行する。
 だが、体内の金庫にルパンコレクションを入れることでゾニックの超音波は以前より強力となり、2号と3号は変身を解除されてしまう!
 先輩のつかさをかばい、咲也はズタボロになりながらも、自分は先輩たちの想いを決してムダにすることなく、全力でサポートする! などと絶叫しながら、ゾニックに生身で立ち向かった。
 ゾニックに首を締められる咲也のカットで、咲也の主観でとらえられたゾニックの姿が次第にボヤけていく描写が、咲也の危機を絶妙なまでに描いており、これまた実に秀逸な演出だ。
 この場面はまだパトレンジャーの装備がなかったころの国際警察が、怪人と生身で戦っていたのと重ね合わせて描かれているようであり、咲也が先輩たちの想いをまさに体現して見せることで、ドラマ演出とアクション演出のクライマックスを融合させているのだ。
 遅れて駆けつけた圭ちゃんが、『G線上のアリア』を聴くことで編みだした、間逆の波形の音波をぶつけてゾニックの超音波を破壊するのもまた然りだ。


 「遅れてすまん。よくがんばったな」と、咲也の肩に手を置いて誉(ほ)め讃(たた)える圭ちゃん、ゾニックの攻撃で圭ちゃんが落としたVSチェンジャーを拾い、圭ちゃんに手渡す咲也の姿は、まさに理想的な先輩・後輩関係が端的に描かれているといえるだろう。
 パトレンジャーに変身後も、理想的な先輩・後輩関係はつづく。
 「援護を頼む」と、自身のVSチェンジャーを1号=圭ちゃんが2号=咲也に貸し与え、2号が二丁拳銃で1号をサポートする描写で、それぞれの銃から赤と緑のレーザーが発砲されるのは、その最大の象徴として機能しているのだ。
 「国際警察をなめるな!」との1号の合図で、1号・2号・3号が三方から剣で斬りつけることで、パトレンジャーは見事に「因縁の敵」を倒したが、それぞれの剣の残像が赤・緑・ピンクで表現されるなど、全編シリアスな展開ながらも、スーパー戦隊としての華が決して忘れられていない演出は好印象だった。


 ちなみに『究極の変合体!』とは異なり、こちらは先述した劇場版との直接的なつながりは描かれてはいないのだが、劇場版の公開と同時期に放映され、透真と咲也がエアロビクスのレオタード姿を披露した(爆)、テレビシリーズ第27話『言いなりダンシング』では、登場した怪人・ピョードルを、圭ちゃんとつかさがゾニックと見間違える場面がある。
 頭部から上半身にかけて球体をゴテゴテと飾りつけたピョードルの造形は、ゾニックの色を塗り直して若干(じゃっかん)の改造を加えたものだろうが(笑)、それでもネットムービーとつながりを持たせることで、視聴者を誘導しようとする戦略性の高さは評価されるべきだろう。


 それにしても、『究極の変合体!』と同様、こちらもラストの舞台はジュレの店内であり、今回の勝利を圭ちゃんから「頼りになる2号がサポートしてくれたおかげだ」と誉められた咲也が、圭ちゃんが咲也にそうしたように、初美花の肩に手をやる描写があり、咲也が初美花にホの字であることを強調して幕となるのは共通しているのだ。
 テレビシリーズの最終展開で初美花の正体がルパンイエローだと知った咲也は、「許されない愛」に葛藤(かっとう)することとなり、魁利と圭ちゃんの関係性の変化とともに、視聴者の涙を誘うこととなった。
 まだ何も知らずにはしゃいでいた、この当時の咲也の姿を今観ると、あらためて泣けるものがあるのは確かなのだ。


 だが、『もう一人のパトレン2号』は、これだけでは終わらない。
 透真がコーヒーポットを手に、ある客に「おかわりいかがでしょうか?」と勧めるが、その客は「代わりなら、もう大丈夫だ」と答える。
 初美花を相手に有頂天となった咲也を背景に、当初その客は口元しか映しだされないが、そこに流れるのは『G線上のアリア』なのだ……
 ヘッドホンを耳にあてたその客は、帰り際(ぎわ)に自身の想いを立派に継承した咲也の方を振り返って笑顔を見せ、ジュレの扉は静かに閉じられる。
 こんなにもエレガントでスタイリッシュな幕引きも、『ルパパト』のもうひとつの魅力を端的に凝縮したものだろう。


『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー オリジナルプレミアムドラマ』 ~総括!


 なお、どちらのネットムービーの脚本もテレビシリーズのメインライターを務めた香村純子(こうむら・じゅんこ)ではなく、『仮面ライダー響鬼(ひびき)』(05年)の前半や、『仮面ライダーウィザード』(12年)のメインライターをはじめ、シアターG(ジー)ロッソで開催されるスーパー戦隊のバトルステージの脚本をも多数手がけてきたきだつよしが担当した。
 いくら特撮作品の経験があるとはいえ、完全に相反する作風の両者を器用に描きわけるばかりか、テレビシリーズにはまったく参加してはいないにもかかわらず、『ルパパト』のキャラたちを忠実に描きつくした氏の手腕には、敬服せざるを得ないものがある。
 また、監督の葉山康一郎(はやま・こういちろう)は、スーパー戦隊で助監督を務めつづけ、2018年5月13日=母の日に東映特撮ファンクラブで配信されたネットムービー・『ヒーローママ☆リーグ』(18年)で監督デビューを飾っている。
 この『ヒーローママ☆リーグ』は、かつてスーパー戦隊に所属し、現在は母親となったヒロインたちが、再度地球と家庭の平和を守るために戦う内容であり、オリジナルビデオ作品『宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース・スクワッド』(18年・東映ビデオ)の敵・宇宙忍デモストが登場する、同作の前日譚でもあったのだが、これもロートルが集う本同人誌『假面特攻隊』ではレビュー対象から抜けてしまうこととなった(汗)。


 まぁ、『仮面ライダージオウ』(18年)のスピンオフとしてネットで配信された『RIDER TIME(ライダー・タイム) 仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(19年)と『RIDER TIME 仮面ライダーシノビ』(19年)も、2019年秋ごろには東映ビデオから映像ソフトが発売されるかと思えるのだが、『ルパパト』のスピンオフとして初美花とつかさを主人公に据(す)え、『てれびくん』2018年8月号の応募者全員サービスDVDとして通販された『てれびくん超(ハイパー)バトルDVD 快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー ~GIRLFRIENDS ARMY(ガールフレンズ・アーミー)』(18年)は、それ以上に視聴の難易度が高い。
 なんせ6500円と、一般家庭の親が子供に買い与えるにはあまりに高額な、最初からマニアに売りつける気マンマン(笑)な価格設定だったことが大きいのだが、通販された2018年夏ごろに無料動画配信サイト・YouTube(ユーチューブ)に中国語の字幕入りのものがアップされているのを、筆者は勤務中(汗)に発見したのだが、あとで観ようと思って再生リストに保存したものの、仕事を終えて観ようとしたらすでに削除されてしまっていた(笑)。
 誰か買った人、いませんかね? コレの視聴がかなうまで、筆者の『ルパパト』ロスは終わらない……


(了)
(初出・『仮面特攻隊2019年晩夏号』(19年8月25日発行)所収『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー オリジナルプレミアムドラマ』評より抜粋)


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恐竜戦隊ジュウレンジャー(92年)総論 ~子供番組への回帰

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百獣戦隊ガオレンジャー(01年) ~後半合評・6人目ガオシルバー!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1

忍風戦隊ハリケンジャー(02年) ~前半賛否合評1・ゴウライジャー!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021110/p1

特捜戦隊デカレンジャー(04年)#37「ハードボイルド・ライセンス」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041112/p1

轟轟戦隊ボウケンジャー(06年) ~後半合評・6人目ボウケンシルバー&大剣人ズバーン!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1

獣拳戦隊ゲキレンジャー(07年)最終回 ~後半肯定評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080817/p1

海賊戦隊ゴーカイジャー(11年)1話「宇宙海賊現る」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1

宇宙戦隊キュウレンジャー(17年) ~総括・最後は全宇宙の不運な人々の盾になると誓ってみせた幸運戦隊!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180310/p1

騎士竜戦隊リュウソウジャー(19年) ~序盤合評

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190602/p1


洋画『パワーレンジャー』(17年) ~戦隊5人に「スクールカースト」を色濃く反映! 「自閉症スペクトラム」青年も戦隊メンバー!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170715/p1

パワーレンジャーFOREVER RED』(02年) ~坂本浩一監督作品・戦隊を逆照射!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1