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仮面ライダービルド戦争編・総括 〜北都が東都へ武力侵攻をドー観る!?

『仮面ライダービルド』最終回・総括 ~三国志・火星・宇宙・平行宇宙へ拡大する離合集散・二重人格劇!
『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』 〜ヒーロー大集合映画の教科書がついに降臨か!?
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『仮面ライダー』シリーズ評 〜全記事見出し一覧


仮面ライダービルド』第2クール・戦争編

三つ巴の三国闘争を描く『仮面ライダービルド』。今度は火星へ!?

〜北都が東都へ武力侵攻をドー観る!?〜

(文・T.SATO)
(2018年5月3日脱稿)


 年が明けた2018年1月早々、3つの領土国家に分断された架空世界の日本で、ついに「北都」国が「東都」国に武力侵攻を開始した! CGやデジタル合成の進歩に伴ない、数百数千の兵士と、鉄塔の鉄骨がごとき二脚歩行の中型メカの群れがワラワラと国境を越えて襲来!
 100年前の第1次世界大戦を想起させる最前線とおぼしきヨコ一列に掘った塹壕にこもって銃撃する兵士たちから始まって、壮大なる肉弾戦や乱戦が描かれる。ナマナマしさを減じるためであろう。兵隊たちの顔面はフルフェイスのヘルメットで被われて苦悶の表情などは見せないことで、適度に記号化・様式化されて、そこで倒れた兵士たちは死したのであろうけど、過剰な残酷さは醸してはいない――もちろん充分に悲惨ではあるけれど――。


 そして、「北都」軍は「東都」の首都付近にも侵攻! 町々は崩れたビルの瓦礫に覆われて人々は逃げまどい、親御さんを失ってしまったのであろう幼児が泣き叫んでいる! ……コレはドコの「シリア」であろうか?(汗)


 年明け前の第1クールまでは我らがヒーローでありローカルな事件を局所的に解決してきた「仮面ライダービルド」こと桐生戦兎(きりゅう・せんと)クンとその相棒である2号ライダー「仮面ライダークローズ」こと万丈龍我(ばんじょう・りゅうが)クンは、これらの戦災にまったくの無力とはいわないまでもトータルでは無力である。
 先に公開された映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171229/p1)では仮面ライダービルドと仮面ライダーエグゼイドが大局はさておき「目前の小さな命をついつい救ってしまう」底抜けの善人さ加減をさも「美談」のように扱っていたけど、この「戦争編」ではそのアンチテーゼでもあるかのように、良い意味ではなく悪い意味で云うのだが、せいぜいが「目前の生命を救う」ことができる程度なのだ……。
――同じく物語の舞台を、ユニオン(米・日)・AEU(西欧)・人革連(中・ロ)の「三国抗争」として描くも、この3国の軍事力をも上回るであろう圧倒的な超兵器である巨大ロボ・ガンダムを所有することで第4勢力となった、私的武装組織が衛星軌道上から「戦争根絶」(!)のために地球各地の戦場へと武力介入に乗り出して、ついに地球統一がなった物語の最後でも「武装解除」をすることなく地球政府が暴走した際の「抑止力」(!)として衛星軌道にとどまりつづけた『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100920/p1)などと比すると、あまりに無力なヒーローたちである(汗)――


特撮作品も時代の風潮を反映! キナくさい『ビルド』戦争編!


 歌は世に連れ、世は歌に連れ……。流行歌の歌詞にも、たかが子供向けの特撮変身ヒーロー番組にも、好むと好まざるとに関わらず、作り手が意図したモノも意図しなかったモノも含めて、時代の空気、人々のその時代における気分や思想風潮が、一色とはいわずとも、いくつもの色合いで淡く染まってしまうモノのようだ――もちろん染まっているから優れている……なぞと云いたいのでもない。時代に染まらずに人間や社会の「普遍」的な何かを描いたがゆえに古びない作品もあれば、時代に染まりきって突き抜けたがゆえに、後世にその時代を象徴・体現する作品となって残る場合もある――。


 「戦争」のイメージといえば、我々敗戦国・日本の国民にとっては、長らく「イラク戦争」でも「湾岸戦争」でも「ベトナム戦争」でも「朝鮮戦争」でもなく、本土がガチンコの戦場と化したとまでは云えないけれども(沖縄を除く)、空襲には見舞われて主要都市は焦土と化してしまった「太平洋戦争」であった。
 戦後73年。リアルタイムで「太平洋戦争」を銃後も含めて体験した世代は今や極少であるとはいっても、あまたの学校教育・映画・TVドラマ・アニメ・回顧番組などで、「戦場」というよりかは「戦時下の生活」というかたちで、「太平洋戦争」は国民的な歴史の記憶にはなっている――ファッション&スイーツにしか関心がない輩は、教育されてもこのテのことは耳の右から左へと抜けていって残らない人種なので、ココでは考慮外としてください(笑)――。


 1960年代の第1期ウルトラシリーズを信奉する第1世代マニアによる、70年代前半の第2期ウルトラシリーズに対しての過剰な蔑視で埋もれてしまった観のある、往年の『ウルトラマンエース』(72年)の隠れた名作エピソード、#18「鳩を返せ!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060907/p1)の冒頭では、定期パトロールで市井(しせい)を特殊車両で巡回していた怪獣攻撃チームの隊員たちが、昼下がりの街中で「平和の象徴」とされる「鳩」を見かけて、そこに「平和」を束の間感じてそのことをクチにする。しかし、異次元人ヤプールに地球が襲撃されている今でも世界の各地では戦火が絶えていないことに思いを馳せて、苦渋の面持ちで「平和だ」発言を取り消すという名シーンがあった。とはいえ、そこで連想される戦争の戦場は日本のことではナイ。当時まだ終結していなかったベトナム戦争や中東の地のことであろう。


 しかし2018年現在、日本人にとっての戦争といったら、地球のウラ側の国々を舞台とする戦争のことではない。日本列島の頭上を通過するICBM(大陸間弾道弾)や地下核実験をくりかえした隣国のことである。あるいはかの国と日本とが直接、戦火を交えることはなくても、隣国と超大国が戦端を開くことで、その余波として超大国の一応の同盟国でもある本邦・日本にもミサイルの雨が降ってくることである。


 「北都」による我らが「東都」への侵攻開始に伴ない、「北都」側の圧倒的戦力(の一部の遊撃部隊?)を一応は象徴させる存在として、実は「北都」側にも「仮面ライダー」がいた! という新設定を持ってきて、年末お正月映画のラストでもお披露目されていた3号ライダー「仮面ライダーグリス」へとのちに変身する猿渡一海(さわたり・かずみ)も新登場する! 加えて、80年代ヤンキー不良青年のようなリーゼントの髪型の3バカ不良キャラたちもグリスの子分として登場! 彼らはスマッシュ怪人に変身しても自我を失わなずに、しかも桁違いに強いゲルショッカー怪人、もといハードスマッシュ怪人へと変身! 戦場で大暴れをくりひろげる。


 この危機に際して、新たな変身ベルト・スクラッシュドライバーで、2号ライダー・仮面ライダークローズは、顔面を半透明パーツで覆った仮面ライダークローズチャージへと強化変身して敵を圧倒!――新変身ベルトの音声ガイダンスには、ついにラスボス級の大ベテラン声優・若本則夫(わかもと・のりお)も登板! ドス&コブシの効いた朗々としつつもトボケた感じの低音ボイスを聞かせてくれている。特撮ジャンル作品では映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)における敵幹部宇宙人・アイアロンなどでも登板していたが、内海賢二が亡き今、ウルトラ一族の宿敵・暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人が復活することがあれば、若本氏に担当してほしいものである――


 しかし、新たな変身ベルトの設計図データが早くも秘かに盗まれていた(!)との設定で、我らが難波重工が製造したモノとまったく同型のベルトを使って変身した黄金色の3号ライダー・仮面ライダーグリスも登場!
 グリスのアクションをスピーディーに演じるのは、平成ライダーの女敵幹部・メズールやヴァルゴ・ゾディアーツ、仮面ライダーメイジなどの女性キャラを演じてきた細身の女形スーツアクター・藤田慧(ふじた・さとし)! このテの番組の常套(じょうとう)で初登場からしばらくの間は(笑)、グリスは我らが仮面ライダービルド&仮面ライダークローズをも圧倒してみせる!――本作においてはご存じの通り、特殊ガスを注入されてもスマッシュ怪人化しない特異体質の持ち主が「仮面ライダー」の資格者ともなっている――


 のちにアダナは「カズミン」(笑)と呼ばれることになる、3号ライダーグリスこと猿渡一美を演じるのは、早くも10年も前の作品となってしまう『仮面ライダーキバ』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080225/p1)においては天才ナンパ師(笑)を演じていた武田航平!――主人公・仮面ライダーキバでもある彼の息子クンは、父親とは正反対な性格の内向的な引きこもりに育ってしまったとゆーのに(爆)――


 「福祉」を重視している国家だとは謳(うた)っていても「ナイ袖は振れない」でビンボー国家による「福祉」なぞはタカが知れているとも思うけど、華美な文化「北都」の出身である以上はもっとマジメで朴訥とした青森県プラウダ高校、もとい北国っぽい東北弁的なキャラかと思いきや……。素手のパンチだけでスマッシュ怪人を倒してみせた(!)あとでオオゲサに痛がってみせたり(笑)、外国のハズである「東都」のネットアイドルでもある本作の黒髪メインヒロイン・美空(みそら)ちゃんのミーハーなファンでもあったりするあたりで(笑)、『キバ』での別役のころとも変わらないキャラのような気もしてくるけれども……。
 大規模農場(?)の御曹司でありながらもお高くとまらずに、困窮を究めていた小作人の3バカ不良たちを私財を投げ売ってまで助けていた苦労人の過去が判明したあたりで、過去作での別役との差別化にも成功しつつ好感度もアップ!


 とはいえ、それが「ねらい」でもあるのだろし、今の時代に「戦争」を描くのならばこーするのが誠意でもあり、またそーしなければツッコミも入るほどに日本人の民度が高くなった証左でもあるだろう。かの隣国をも象徴させている「北都」の国民でもある彼らもまた「鬼畜米英」ではなく「人間」ではあることで憎めない存在となっていく。つまり、「殺ってもイイ悪党」ではないので、「エンタメ活劇」としては敵をやっつける「カタルシス」を構築するのが良くも悪くも困難となってしまい、大状況を俯瞰して「三国」すべてを相対化しつつもイーブン・公平にも描いていく、より高次なる神のごとき視点にも物語は登りつめていくのだ。
――まぁ大むかしの物語作品などはイザ知らず、ここウン十年のNHKの大河ドラマなどでも、東軍(徳川方)vs西軍(豊臣方)、官軍(新政府)vs賊軍(旧幕府)、源氏vs平氏を、善悪ではなくイーブン・是々非々に描くような作劇はけっこうやっているので、『ビルド』が本邦物語作品中でも空前絶後の試みをしているとか、そんな極論・暴論は云いたいワケではないので、念のため(汗)――


 コレらの描写ともパラレルで、本来の主人公である仮面ライダービルド&仮面ライダークローズは、自分たちの生活基盤である「東都」がピンチだとはいえ、その「東都」政府の軍事兵器としての参戦を打診されるや、コレには抵抗を覚えて反発してしまうのもムベなるかな
 しかし、目前の危機に際して、ベルト装着者の好戦性を高めてしまう新変身ベルトを2号ライダー・龍我クンは思わず装着・変身して戦ってしまう! 限度を超えて使用すると自我を失ってバーサーカー(狂戦士)にもなってしまう強化変身パーツを1号ライダー・戦兎クンも多用するようにもなっていく! 緊急避難的には仕方がナイことだし、罪のない善良なる庶民を守るためだとはいえ、結果的には消極的に「戦争に加担」していく皮肉なサマも描かれるようにもなっていくのだ……。


 ここで思う。カミさん・娘が殺されそうになったりレイプされようとしているときに、インドの独立運動家・ガンジー的な「無抵抗・非暴力主義」を採ることは果たして絶対的に正しいことなのであろうか? と。ましてや、「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」「たとえ何十回裏切られようとも無限に許せ」と説くようなイエス・キリストの説法は、いついかなるときも常に絶対に正しいのであろうか? 叶わずとも負けるとわかっていても戦うべきときもあるのではないのか? と。


 ただまぁ、エンタメ活劇としては、近年の『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)におけるオーブの一形態・サンダーブレスターや、悪の黒いウルトラマンことウルトラマンベリアルの息子である『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)などとも同じく、ダークヒーローやピカレスク(悪漢)ヒーロー的な「魔性」の力をも借りて、少々の犠牲もやむなしとしてしまう「破壊」や「乱暴」に「暴走」、イキがってワルぶって「オラオラ」的に威嚇・恫喝するような不遜で不良的で暴力的なアクションなどに、不謹慎な背徳感をも伴なう少々のカタルシスを筆者も感じていないワケでもないのだけれども(汗)――我々視聴者の方も決して聖人君子ではないので――。


やむなしだが、殺人を犯してその罪に悩む仮面ライダービルド!


 ついには、戦時下とはいえヒトの命だけは奪いたくなかった戦兎クンのハズなのに、強化パーツで黒い仮面ライダービルドことビルド・ハザードフォームに変身して、長時間戦闘により正気を失ってしまった彼が、3バカのひとりが変身していたスマッシュ怪人を必殺ワザ・ライダーキックで蹴り殺してしまうのだ!!
 そして、正気に返った戦兎クンを、罪悪感と悔恨の念と自己嫌悪によるアイデンティティー崩壊の危機に陥らせてしまうという非常にイジワルでもある作劇が展開されていく……。加えて、戦兎クンを演じる若者向けファッション誌の「ジュノンボーイ」出身の若手役者クンの芝居がまた新人とは思えないほどにウマいものだから、真に迫る迫る……。
 たとえスマッシュ怪人化していたとはいえ、その正体は人間であった存在を殺めてしまった現場に出向いて花束を手向けて合掌するシーンは、コレまた『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)#15ラストにて通り魔宇宙人により無名隊員が犠牲となった多摩川のほとりでモロボシダン隊長が献花する名シーンを腐れオタとしてはつい想起もしてしまうけど、人格崩壊してしまいそうなまでに落胆している戦兎クンを演じる若手役者さんの力演には思わずコチラも泣けてくる……。


 と同時に、不謹慎にも手のヒラの上で世界中のあまたの人物の物語を転がせてみせる神さまの視点に立って、本作の今後の展開はいかんともしがたく解(ほど)けがたい憎しみ・誤解の延々なる連鎖・復讐合戦にもなっていってほしい! それこそが人の世の真実・実相だ! ……なぞとも思ってしまったり(汗)――往時の「ガンダム」オタクたちは酷評したけど、筆者個人は(初作は除く)本家富野「ガンダム」シリーズ以上にその作劇を高く評価していた(どうぞ罵倒してください・笑)21世紀初頭の『機動戦士ガンダムSEED(シード)』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060324/p1)シリーズ中盤におけるストーリー展開などのように――。


 しかし、すっかり腑抜けてしまった戦兎クンを、同じく偶然その場に献花に出向いた3号ライダー・一美ことカズミンが目撃してしまう。そして、その行為だけで戦兎クンを赦(ゆる)きったワケでは決してないけど、カズミンは敵である戦兎クンの立場&人格にも少々の理解の端緒を示すようにもなっていく……。敵側の登場人物も味方側の登場人物もともに高所・大局から見て今の自分個人の立場をもローカルなものに過ぎないとも相対視ができる近代的・ポストモダン的な視座を持つ心境・境地にも近づいていくクレバーな展開ともなっていく……。


 そして、第1クールではあんなに飄々としていた性格よさげな兄ちゃん主人公が記憶喪失の身だとはいえ、そもそも前身は青年マッドサイエンティストであり、彼自身がある意味では大ショッカーの首領もといスマッシュ怪人の産みの親であり、引いては今の「三国」の戦争状況をもたらした元凶かもしれない!? という「原罪」を背負わせてしまうという、あまりにドラマチックかつ実にイジワルでもある作劇も同時に展開されていく。
 正直、平成ライダーシリーズも20年近くの歴史があることから、『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)や『仮面ライダーディケイド』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090308/p1)でも記憶喪失の主人公は登場してはいた。とはいえ、10年近くのインターバルをおいていれば「またかヨ!」という気持ちにはならないし(笑)、それで面白くなるのならばオッケー!
 どころか、自身の記憶喪失をさして悩むことなく、生来のユルい性格ゆえか実に前向き(笑)であった『アギト』や『ディケイド』とは異なり、本作においてはその悪魔の科学者ぶりの出自が明らかになるや、マジメな主人公クンは大いに悩みまくるワケであり、差別化もバッチリではある――腐れオタとしては、同様に前身が青年マッドサイエンティストであったことに苦悩した記憶喪失の青年が主人公であった昨17年の巨大ロボットアニメの良作『ID−0(アイディー・ゼロ)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190924/p1)なども連想。ただし、その作品のクオリティはともかくこんなドマイナーな話題にもならなかった深夜アニメを、超多忙であろう本作のスタッフが鑑賞していたということはアリエナイであろうから、映画の神さまのイタズラ・単なる偶然なのだろう――。


群雄割拠の戦国時代ばりの離合集散・権謀術数! 国際社会の風刺!


 イロイロあって「東都」と「北都」との戦争を、「東都」と「北都」の仮面ライダー同士の1vs1の対決によって「決着」を付けようとするストーリー展開などは、「地球がリングだ!」で世界各国のガンダムが4年に1度バトルロイヤルして、勝者の国家は国際政治の盟主(笑)となれる異色作『機動武闘伝Gガンダム』(94年)並みに漫画的で非リアルなモノではある――もちろん「仮面ライダー」を看板に据える作品として、子供にも理解しやすいバトルの構図としては「仮面ライダー」vs「仮面ライダー」のビジュアルを持ってくるのも正しい――。
 しかし、「北都」側は仮に負けたとしても、その取決めを遵守する気は毛頭なく、すでに軍隊を「東都」に向けて進軍中である! というあたりは……コレまた良くも悪くも、倫理的な是非はともかく実に政治軍事的にはリアルではあった(爆)。


 で、ココからは現在のキナくさい世相に対する風刺色も込めていたであろう、ハッキリ云って「北朝鮮」を想起・揶揄している一面もあった「北都」が急遽壊滅! 仮面ライダーもどきの赤いダークヒーロー・スタークの策士ぶりにしてヤラれて、全軍が出撃した空隙(くうげき)をねらって「西都」の軍隊が「北都」を制圧してしまう!!


 日本や古代中国の「戦国時代」でも、隣国を攻撃するや背面の国が好機と見て攻めてくる「国盗(くにと)り合戦」は世の習いではあり、そーいうイミでもリアルではある。
 一部の偏向した学者(笑)によって近年ではその実在を疑問視されてしまっている聖徳太子が遣隋使に託して、「隋」の煬帝(ようだい)を激怒させたという「日出ずるところの天子、日没するところの天子に捧ぐ」という文言も、朝鮮半島北部にあった「高句麗」と抗争中でもある「隋」は「日本」に軍事侵攻することはできないし、「隋」としても「日本」と「高句麗」が同盟して二面攻撃してきても困るであろうという歴史的・戦略的タイミングも見据えた、聖徳太子による高度な政治計算に基づいた、戦争に陥る危険はあれどもギリギリでそれを回避しつつ、「隋」の属国ではないところの「日本」の自主独立を訴えたモノでもあったという説もあるのだけれども、さもありなん。


 大変残念ながらも、日本国憲法の前文にある「平和を愛する諸国民」とは程遠い、500年後や1000年後ならばイザ知らず、教科書にも出てきたホッブスが云う「万人の万人に対する闘争」状態にある人類の「幼年期」の段階にいまだに留まっているのが、我らが実に愚かしい地球人類という存在でもある。
 ここ70年ほどは東西や南北間の内戦を除けば「国盗り合戦」はほぼなくなって、イラクがクェートを盗ったときでも国際社会が一丸となって失地を回復させたモノだけど(湾岸戦争)、先年はついにロシアが禁忌を破ってクリミア半島を併合!(爆)


 既存の権威・秩序・法律・習慣を何とはなしに守ろう、尊重しようという機運・空気が弱まって、戦国大名第1号の北条早雲(ほうじょう・そううん)が伊豆を盗ったり、古代中国の「周」が地方の諸侯「鄭公」の征伐に失敗して、諸侯同士が領地を掠め盗りあっても中央政府による実力行使も伴なったお咎めもナシになったりすると、途端にタガが外れて「戦国時代」が招来してしまったりもするモノなのである。
 一度タガが外れてしまうと、アメリカが良くも悪くも世界の警察から撤退しつつある現在、中国による尖閣南沙諸島・台湾などを併合する気配などからも、そーはなってほしくはないのだけれども、今後の世界の歴史はまたまた「国盗り合戦」の「戦国時代」に先祖返りしていくのではないかとも悪寒する(汗)。実に嘆かわしいけれど。


 在日米軍基地があるからその地がねらわれるのだ! というのは半面の事実ではあるけれど、フィリピンのように90年代初頭に米軍基地が撤退するや、途端に対岸の南沙諸島岩礁を中国が掠め盗ってしまって、ついには滑走路まで造ってしまったりするのもまた半面の事実であったりもする……。進むも地獄、退くも地獄。地獄しかこの世には選択肢がナイのであろうか?(汗) 国際司法裁判所で敗訴しても罰則などはナイのだし、中国自身も判決は「紙クズ」だとも云っている。50年後か100年後には我らがヘタレ国家・日本も、台湾ともども中国の一省に落ちぶれて、日本人も中国語を喋っているのではなかろうか?(笑)


 アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20081005/p1)では大英帝国に占領されて爆弾テロで抵抗している日本人を描いていた。しかし、イラクやアフガンなどとは異なり、良くも悪くも「ギブ・ミー・チョコレート」な、世界でもマレに見る卑屈な国民性を持つ我らが日本人(汗)は、そのムラ世間的な空気を読みすぎて他人に合わせすぎる長いモノには巻かれろのメンタリティが裏目に出てしまって、チャイナタウンやコリアンタウンを数世代を経ても継続ができているナショナリスティックな中韓などとは異なり、映画『日本沈没』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060716/p1)ラストで世界中に逃散した日本人なども同様なのだけど、数世代が経つと子供や孫の世代は現地の文化や社会に過剰適応して、日本文化も日本語も消失してしまうであろうと推測する。
 世評とは異なり、良くも悪くも世界でもっともナショナリズムが弱い国が我が日本であり、戦前の日本を数倍上回るナショナリズムが勃興してしまっているのが今の中韓であるというのが筆者の私的な見解である。……エッ、ネトウヨの勃興? 田母神サンや在特会の桜井が都知事選に出馬しても泡沫候補で、舛添さんや小池さんに惨敗していて、あげくの果てに逮捕されてるし。中韓に対する品性下劣なロジックも礼節もないヘイトスピーチを筆者個人はまったく容認しないけど、動画で見ると100人前後しか動員できていないソレ(笑)と、中国50都市以上で各々数千・数万人規模での略奪・破壊・放火行為を行なった反日デモと比して、ドッチもドッチと喧嘩両成敗で公平を気取っている輩もなぁ。ヘイトでも同情でもなく、もっとフラット・計量的に物事の大小を見ようヨ〜――ただし、安易に移民を入れた暁には、日本でもネット上ではなくリアル世界で極右が勃興するとは思う(汗)――。


各国内の下克上! 権力闘争&宮廷陰謀劇の下で戦うライダー!


 今度は「北都」を制圧した「西都」が、「東都」に対して宣戦布告! 「西都」の軍隊が進軍してくる。
 技術&経済&競争を信奉するらしき、しかして貧富の格差も拡大したのか人倫の退廃により治安も悪くて監視カメラだらけの「西都」を代表する、濃ゆい紫色の4号ライダー・仮面ライダーローグが新たに登場!
 加えて、先の年末お正月映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイド withレジェンドライダー』でのゲスト悪役・大槻ゲンヂ(笑)が変身していた歯車がモチーフであるダークヒーローに装着者を変身させることができるカイザー・システムを秘かに盗んで継承していたというワクワクさせる設定で、塗装を変えたレフトカイザー&ライトカイザー、そして両者の合体形態であるバイカイザーまでもが名前を変えて登場する!


 加えて、4号ライダーの正体は……、「東都」首相の子息で、諜報機関ファウストの所長として人体実験によりスマッシュ怪人を産み出して、自身も仮面ライダーキバもどきのコウモリ型の黒いダークヒーロー・ナイトローグに変身して度々戦場に出張ってきて、首相が病に倒れたあとは首相代理に登りつめるも、権力闘争に敗れて亡命の憂き目にあっていたダンディーなヒゲ面の貴公子壮年・氷室幻徳! ファウスト時代の秘書であり、幻徳を裏切って「西都」に先に付いていた長身クールなメガネ青年との再会や角逐なども勃発する。
 並行して、今回の戦争のまさに当事者でもあるハズの「西都」首相の暗殺までもが描かれて、赤いダークヒーロー・ブラッドスタークの超常能力によりその顔面を「西都」首相に変えてみせた難波重工の老会長によって、「西都」が乗っ取られてしまう政権交代劇までもが描かれる!


 戦争状況と並行して、大河ドラマや海外歴史ドラマのような宮廷内紛劇・宮廷陰謀劇などの東西両陣営の権力闘争までもが描かれて……。人間とはホントにしょーもない、業(ごう)も深い存在だよなぁと思いつつも、筆者も結局は人間が下世話にできているので、ワイドショー・週刊誌の覗き見趣味的なゴシップ・醜聞劇としてはコレほど面白いものはナイ(爆)。


 故郷の「北都」が「西都」に制圧されて帰る場所がなくなってしまった3号ライダー・グリスことカズミンも、状況的にナシ崩しでビルドこと戦兎クンとクローズこと龍我クンの「仲間」のような存在になって共闘を果たすようにもなっていく。


 それに引き換え、たとえ首相個人が知らなかったとしても、第1クールで「東都」政府は秘密組織ファウスト機関も抱えていたから決して無罪とはいえず後ろ暗いところもあるけれど、「北都」や「西都」と比すれば相対的にはお坊ちゃまではあった平和主義を掲げる「東都」政府の脆弱ぶり。
 大急ぎで氷室首相老人が付け焼き刃で、本作のキーアイテムでもある火星の超古代遺跡の遺物・パンドラボックスを武力として利用することをチラつかせて外交・和平交渉をしようとするも、かのトランプ大統領などとは異なり(笑)、そのおおよそ武力行使などをしそうもナイ善人の人柄では「抑止力など発生しない!」と交渉相手に嘲笑されて、和解や停戦どころか相手からの多少の譲歩すらもが引き出せない始末で終わってしまうのだ(汗)。


 まぁたしかにコレも良くも悪くも「抑止力」とはそーいうモノではある。もちろん「抑止力」という概念自体を認めない! というウルトラ絶対平和主義者たちの議論も知ってはいるけどスイマセン。筆者はあくまでも「必要悪」としてではあるけれど、全人類が天使ではナイ以上は、乱用ではなく厳正なる手続き・ルール・法律に基づいた上ではあるけれど、法律・警察・刑務所などの存在は必要なのであり、その延長線上には罰則なり拘束なり死刑なり軍事力なり抑止力が存在することを、消極的には仕方がナイものとして認める者ではあります――この一連に特撮変身モノなどの戦闘ヒーローをも含めます(笑)――。


 もちろん我らが「東都」の弱腰ぶりは、作劇的には「抑揚・メリハリあふれるストーリー展開のため」であって、そこには我らが敗戦国・日本の良くも悪くも情けない体たらくを積極的に風刺・批判をしてみせよう! といったような主張はおそらく良くも悪くもナイのだろう。
 もしも「積極的に(日本も)敵は討つべし!」といった主張が本作に込められているのだとしたら……、「東都」の仮面ライダーであるビルドやクローズが、「北都」や「西都」にまでヘタに出陣してしまったならば、「専守防衛」の域を越えて侵略になってしまうので、政治的に考えたら動けない! と元ヤンキーで筋肉バカの2号ライダークローズ・龍我クンなどはともかく、IQ600(?)の天才物理学者でもある1号ライダービルド・戦兎クンが政治的・軍事的な影響・効果までをも見据えて自制・抑制してみせるストーリー展開やその旨のセリフの存在などもアリエナイことになるからだ。


 エッ、政府・自民党もこの慎重さを見習うべきだって? いやいやいや。我が専守防衛の国・日本は、いかに防衛予算が増えようとも、敵国で爆弾投下できる爆撃機も敵地に届くミサイルも持つことすらできない軍隊なので、イザとなっても敵国本土への反撃さえできずに座して死を待つだけだから、そのへんの懸念は杞憂ですヨ(笑)。
 ついでに云うと、真珠湾アメリカに謝罪したり慰安婦合意したり「河野談話」と大差ない「安倍談話」を発表したり、国粋主義とは程遠い売国的なTPP加盟、放送の独占ならぬ自由化、移民緩和政策を推し進めて、そもそも第1次内閣成立直後には恒例の「アメリカ詣(もう)で」ではなく真っ先に「中国詣で」をしてみせた保守政権とも云いがたい史上最高のヘタレ内閣・安倍ちゃんや、それを保守の星だと持ち上げる保守陣営、それを極右だと罵る左翼陣営という、このデタラメな日本の左右の思想状況には三重のイミで筆者は絶望しております(笑)。


 いやまぁたしかに、かつての日本が――厳密には「国家」や「参謀本部」にはその気がなかったのに、それを無視して勝手に暴走した現地の「関東軍(中国東北方面軍)」が――、ヘタを打って中国に対して侵略性のある行動を起こしたことは事実であり、そこに対する反省や謝罪や恥じらいの気持ちは持たなくてはイケナイのだ――しかし、だからといって、土下座して未来永劫・子々孫々、ことあるごとに乞食や奴隷や犯罪者のようにあつかわれて小さく卑屈になって生きる云われまではナイとも思うが――。
 大航海時代以来の数百年にわたる植民地争奪戦――最終的には19世紀〜20世紀前半のいわゆる帝国主義の時代にまで至る――、欧米列強によるアジア・アフリカに対する人的・経済的搾取・収奪の果ての世界史のほぼ必然的な人的運動として、大変残念ながらも白人vs有色人種国家――日本でなければドコかのアジアの国家――の世界大戦規模での衝突はいずれは発生したのだろうと、一介のオタにすぎない卑小な筆者ではあるけれども、世界史レベルで鳥瞰すればそのようにも私見する。


 たいていの事物の原因はひとつには限定されない。膨大に因子があって、アミダくじやクモの巣のような無数にある糸の結節点として現在があったり、戦争が起きたりもするのだ。ゆえに、太平洋戦争の原因を世界史の流れに求めずに、ひたすら日本の国内政治だけに求めたり、いわんや「統帥権の干犯」や「天皇機関説」などに求めて事足れりとしている内向きな議論は、戦争とは自国だけでなく相手国側の意志や計算や決意もあってするものだという片側の面を見ていない、個人的には「知識はあっても知恵はない」、重箱の隅だけに固執していく愚者の思索だとも思う。
 とはいえ、だからといって、日本が「正義」であったとか「神の国」(笑)であったと云いたいのではないことはくれぐれも念のため。同様に、イラク戦争湾岸戦争ベトナム戦争朝鮮戦争における「アメリカの侵略性」――それ以前にも、西部・中米・ハワイ・グワム・フィリピンを盗ってきた――を糾弾してきたような陣営による、太平洋戦争時点におけるアメリカだけは絶対正義であった……なぞというダブル・スタンダードを唱えてテンとして恥じないような論法には疑義を唱えていきたい。
 しょせんは紙切れ1枚だとしても、すでに20世紀初頭の1907年の第2回万国平和会議で採択されて1910年に発効した国際法規「ハーグ陸戦条約」にあの時代でも各国は批准していたのだから、その法的論理で戦地における軍人のみならず民間人をも殺傷する「空襲」や「原爆投下」を「仕方がなかった」「戦争とはそーいうモノである」では済まさずに、当時においてもすでに「戦争犯罪」「戦時国際法違反」であったのだ! と批判をしてみせる論理を世界的にも構築・醸成していくことで、未来に世界各地で起きうる惨劇をも先回りして極力減らすべきなのだ!


 ……書いていて恥ずかしくなってきた(汗)。学校や職場のスミっこでひとりショボ〜ンと生きてきた、自分ひとりのことさえも面倒を見きれない一介のコミュニケーション弱者であるキモオタごときが、エラそうに天下国家を大言壮語してもイケマセンね。


和平交渉下でも政治的判断で戦ったライダー! 最後の敵は火星人!?


 本作におけるミクロな手ざわり・肌ざわりの次元に立ち返ろう。サブヒロインの紗羽(さわ)ちゃんは第1クールで敵側が正義側へ遣わしたスパイであったことが判明し、改心するドラマも描かれてきた。しかし、実は幼少時からの洗脳が解けておらず、まだ難波重工チルドレンのスパイであったのか!? と思わせるストーリー展開が浮上する! しかし、かなりズルいといえばズルい、子供向け番組らしからぬ作劇なのだけど(汗)、二重スパイな頭脳戦による権謀術数で主人公側に勝機を与えて、仮面ライダービルドが仮面ライダーローグに、ひいては「東都」が「西都」に勝利していく一連までもが描かれる!――しかし、この「東都」の勝利は情報操作で対外的には「西都」の勝利とされてしまい、その後も「東都」は「西都」による侵略で蹂躙されっぱなしではあるけれど(爆)――


 この過程で、平和主義者であったハズの「東都」首相は絶対平和主義的にではなく現実主義的に、「東都からの侵略だ!」との言質(げんち)を敵側に与えてしまう可能性があっても、政治的には灰色でイキな命令を与えることによって、2号ライダークローズ&3号ライダーグリスに1号ライダービルドのサポートのための自由行動を許してみせる!
 よくTVドラマなどや言論人なども、「無能な上層部」と「有能な現場」というステロタイプな「階級闘争図式」を主張することがあるものだ。しかし、もしも「現場が絶対正義」であったならば、戦術・ミクロな局面では現地のことがよく判ってはいても戦略・マクロな大局眼などはない「関東軍」などの軍隊が現地で暴走してしまうことのブレーキも効かなくなるワケで、「現場の方が常に正義である」という見方には個人的には疑問を覚える。
 よって、近代的な軍事行動においては、基本的には現場での融通無碍にすぎる行動は「関東軍」のような独断専行を誘発する危険があるために御法度ではある。しかし、とはいえそれもまた官僚主義的に硬直した運用になって、戦争における惨禍を拡大してしまう局面があるのであれば本末転倒になってしまう以上は、そして「東都」首相やビルドこと戦兎クンらにモラル・倫理・節度・抑制心もある以上は、今回は条件付きで超法規的に許容されてしかるべきなケースであったと個人的には考えたい。
 太平洋戦争の終結後であるのにも関わらずソ連が千島列島を南下してきて軍事侵攻してきた際に、占守島(しゅむしゅとう)で武装解除中の旧陸軍が上層部にお伺いせずに臨機応変に判断の上で戦闘を開始して、その南下を喰い止めてみせたようなモノである――コレがなければ、北海道や東北地方はソ連の領土となり、日本も南北の分断国家となっていた――。
 コレらとチト異なりはするけれども、「絶対平和主義」をかかげる気高い金髪メインヒロイン少女が元首を務める国家を、ガンダム乗りたちが秘かに「汚れ仕事」として国境周辺での他国からの軍事侵攻を「武力」で抑えている矛盾をも描いてみせていた(汗)、往年の『新機動戦記ガンダムW(ウイング)』(95年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990805/p1)中盤なども思い出してみたり――この力なき「絶対平和主義国家」は、劇中ではガンダム乗りたちの尽力にも関わらず滅ぼされてしまうのだけど(爆)。極真空手大山倍達(おおやま・ますたつ)や哲学者のパスカルも、「力なき正義は無力なり」と云っている(だたし同時に「正義なき力は暴力である」とも云っているけれど)――。


 紀元前の漢の宣帝も「王道」と「覇道」の両立を「王道」の実現だけにハマっている息子に唱えていたが、実父たる「東都」首相も亡き今、正義に目覚めた壮年御曹司こと4号ライダーローグは「正義」と「力」の関係をどう捉えて、「東都」をドコへと導くか!?


 いわゆる正義側の後見人、昭和ライダーの「おやっさん」のポジションであったメインヒロインのお父ちゃんでもある喫茶店のナンパなマスターの正体が、赤いダークヒーロー・スタークであると判明した第1クール終盤には驚いた。しかし、でもやっぱり彼はイイ人なのでは? ビルド&クローズを強化するための特訓として偽悪的に悪人を演じていたのでは? と予想をしていたのだけど……。
 その行為自体がまた、「火星の超古代文明をも滅ぼした、来たるべき『大破局』『大災害』の再来をもたらすためだった!」と明かされて、予測がハズれたことによって筆者個人の予想遊びも終了(笑)。しかし、マスターとスタークが同一人物であるのに変身前と変身後とで声が異なる理由を単なる「正体隠し」だけにとどめない、作り手側としては後付けの可能性も高いだろうけど、マスターの娘さんでもあるメインヒロインにも超古代の火星人の霊(!)が憑依していて、異なる声音でしゃべりだす描写までもが登場することによって別次元での設定的な「統一性」は出していくという、またまた予想の斜め上を行ってみせている!!


 そして、オタ向け深夜アニメに出てくるヒロインのような、キャピキャピしすぎない範疇での少々アンニュイ(倦怠)な可愛さというあたりのサジ加減が実に絶妙で(笑)、長袖やロングスカートなどで素肌も隠すことによってオトナしめで保守的なイメージもあって、我々弱者男子でも懐柔可能なようにも一瞬だけ錯覚(汗)させてもくれる黒髪ショートのメインヒロイン・美空ちゃん。
 失礼ながら最初はルックス目当てだけの演技力がないキャスティングであろうかと見ていたけれども……。その正体は赤いダークヒーロー・スタークでもある実父こと行方不明となっていたマスターと再会できた折には、表層はいつもの日常会話でありつつも内心では異常を察知している「涙目」と「震え声」での演技などで、彼女には第2クール以降は幾度となく泣かされてきたことか……。筆者も動画配信サイトで愛くるしいブリっ子アイドルを演じている「ミーちゃん」にならば、いくらでも課金をしちゃうゾ!(笑)


 そんなミーちゃんの両瞳が緑色に光り出して、高貴な少女の声にて周囲の人々に語り掛けるようになっていく。
 その声の正体は……。深夜アニメ『一週間フレンズ。』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201011/p1)・巨大ロボットアニメ『アルドノア・ゼロ』(14年)などでも、お上品で柔らかくて可愛らしいボイスのメインヒロインを演じてきたアイドル声優雨宮天(あまみや・そら)ちゃん! もとい、火星の王妃・ベルナージュさま!――そーいえば、彼女は『アルドノア・ゼロ』でも火星の王女さまだった―― まぁ彼女の地(じ)は、ライトノベル原作の深夜アニメ『この素晴らしい世界に祝福を!』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210912/p1)のメインヒロインである「駄目(女)神」ことおバカなアクアさまに近いようだけど(笑)。


 マスターとミーちゃんは単に火星人(?)の霊の憑依だったけど、2号ライダークローズこと龍我クンの正体に至っては、肉体・DNA的にも太古の火星人との混血だっただと!? ドーなっていってしまうのでしょうか? この『ビルド』という作品は……。


 火星というと、1950年代のアシモフやクラークなどのハイブロウな古典SFよりもむかしの、西部劇を火星&光線銃に置き換えただけの通俗パルプSFであったり、あるいは21世紀初頭に火星に移住した地球人たちが超古代の火星人たちの霊に苛まれる古典SF『火星年代記』(1950年)や、それらに影響を受けたとおぼしき火星の荒野を舞台に超古代の火星の機械獣(!?)たちと戦う巨大ロボット漫画『マジンガーZ』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)のリメイクにして『週刊ヤングジャンプ』に連載されていた『マジンサーガ』(90〜92年)などもロートルオタクとしては想起をしてしまったり。


 しかし、三国抗争の次なる敵はタコ型火星人であったとは!?(違う) コレはSFの元祖、H.G.ウェルズ『宇宙戦争』(1898年)へのオマージュなのであろうか!?(多分違う) ワクワク! ぜひともラジオドラマ化して、全米に火星人が襲来してくるのだと誤解させて、パニックを惹起してほしいモノである!(笑)


追伸


 本作においては、「北都」は社会主義国家、「西都」は資本主義国家、「東都」は平和主義国家をもちろん措定しているのであろうが、筆者個人はこれらの3国のいずれの政治体制にも共感はしない。筆者が理想とするのは、礼節のある徳義国家・道義国家・道徳国家・人文国家である(ホントかよ!?・笑)。といっても、汚職はナイかもだけど、王さまではなく聖職者が支配するようなイランみたいな宗教国家でもナイですよ(爆)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年GW号』(18年5月4日発行)所収『仮面ライダービルド』戦争編・合評1より抜粋)


『假面特攻隊2018年GW号』「仮面ライダービルド」戦争編関係記事の縮小コピー収録一覧
伊勢新聞 2017年12月4日(月) 「わくわくインタビュー」俳優の犬飼貴丈さん 思い出いっぱいつくって
北国新聞 2017年12月17日(日) 「わくわくインタビュー」俳優の犬飼貴丈さん 思い出いっぱいつくって(直上記事の短縮版)
・日刊スポーツ 2017年12月30日(土) 仮面ライダー6年ぶりコンビ 渡部秀三浦涼介
中日新聞 2018年1月16日(火) 「将来は学者」1位 仮面ライダー影響!?
東京新聞 2018年1月11日(木) 「学者になりたい」 ライダーが影響?(直上記事と同一内容)
・デイリースポーツ 2017年12月25日(月) 藤岡弘、日本は武士道で世界を救う
福島民報 2017年8月25日(金) 今作主人公は天才物理学者 仮面ライダービルド


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