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劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします! ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!

(2020年4月10日(金)UP)
『ウルトラマンオーブ』最終回 ~田口清隆監督の特撮で魅せる最終回・ジャグラス改心の是非・『オーブ』総括!
『ウルトラファイトオーブ』完結評 ~『オーブ』・『ジード』・昭和・平成の結節点でもある年代記的な物語!
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 『ウルトラマン クロニクル ZERO&GEED(ゼロ・アンド・ジード)』(20年)にて、『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17年)の編集映像が放映記念! とカコつけて……。『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』合評をアップ!


『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』 ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!


『劇場版ウルトラマンオーブ』合評1 ~『劇場版オーブ』短評

(文・仙田 冷)


 一言で言うなら、いい感じに詰め込まれた幕の内弁当のような映画だった。同時期公開の映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 超スーパーヒーロー大戦』(17年)は、詰め込みすぎてふたが閉まらなくなったスーツケースのような状態だった。しかし、こちらは話の焦点を主人公・ガイ青年と民間捜査組織・SSPによるウルトラマンエックス救出作戦に絞り込んだことで、要素の取捨選択がうまくいき、いい感じにまとまっている。


 こじんまりと言うなかれ。ものには適正な規模というのがある。キャパシティを無視して無理やり突っ込んでも、最後には破綻するだけだ。かの『シルバー仮面』(71年・宣弘社)第20回「必殺!! シルバーミサイル」に登場したインバス星人も、『伝説巨神イデオン』(80年・日本サンライズ)第31話「故郷は燃えて」に登場した重機動メカ・アブゾノールも、エネルギーを無制限には吸収しきれず自爆したのだ(笑)。


 本作は1時間20分という時間の中でやれることを吟味し、そのうえでできる限り詰め込んだという感じだ。時間が短いわりには、盛りだくさんな印象がある。


 SSPの面々はアクションを披露する。ガビヤ星人サデスはいい意味でバカだ。ガイのライバルであるジャグラスジャグラー青年は相変わらず得体が知れない。『ウルトラQ dark fantasy』(04年)や『ウルトラセブンX(エックス)』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080413/p1)に登場した宇宙人は雑兵として出てくる。
 しまいにはウルトラセブンが来援するというありさまだ――もっともこのセブン来援には、何か前振りがほしかった気もしないではない。あと、せっかくウルトラマンゼロも登場したのだから、親子共演が見たかったというのは欲のかきすぎか――。


 本作で意外な収穫だったのが、女賊ムルナウを演じた椿鬼奴(つばき・おにやっこ)さん。彼女なら、故・曽我町子さんの後を襲えるのではないかと思うのだ。今度戦隊オールスター映画をやるときには、彼女にへドリアン女王を演じてもらうことも検討してみてはどうでしょう東映さん。


 ともあれ、程よくお腹もいっぱいになり、充実した1時間20分だった。


(了)


『劇場版ウルトラマンオーブ』合評2 ~絆の力、拝見します!

(文・J.SATAKE)


 TVシリーズに継いで公開された『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17)は、新キャラクター・アイテムを投入しつつその世界観を継承、発展させた作品となった。


 まずはウルトラマンをサポートするSSP=サムシング・サーチ・ピープルの3人と、実はビートル隊の万年平社員ではなく要職についていたことがTVシリーズ終盤で判明した渋川一徹氏の活躍! 今回も妖しい洋館に潜入し、宇宙人たちから逃げまくるドタバタ要員として楽しませてくれる。カッコよく窮地を引き受けるも、押し寄せる星人の群れにビビって退散する一徹おじさんのアタフタぶりはやはり柳沢慎吾氏ならではのシーン!


 しかし本作ではそれに収まらない。メカニック担当のシンが開発したパワーアシストスーツを装備したSSP女キャップ・ナオミをウェブレポート担当のジェッタがコントローラーで巧みにあやつり、星人相手に戦うアクションシーンも展開する! その活躍によってウルトラマンオーブ=クレナイ ガイとスペシャルゲストであるウルトラマンエックス=大空大地の危機を救うのだから、SSPが主に物理的有用性ではなく精神的な支えに留まっていたTVシリーズでもどかしい思いを抱いた方々も溜飲を下げたのではないだろうか?


 そして彼らの強い思いがウルトラマンとつながることで、オーブはウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックスのカードでトリニティフュージョンを実現! この劇場版限定の最強形態・オーブトリニティへと変身する。
 三大ウルトラマンの意匠をデザインしたスタイルはもちろん、それぞれの技も使いこなす戦士だ。専用の回転ノコギリ型の新アイテム・オーブスラッシャーは小ぶりだが、TVシリーズでの長剣・オーブカリバーに負けない多様な技を引き出し戦いを彩る!


 歴代ウルトラヒーローとの共闘もシリーズでは見られなかった画であり、劇場版としてのサービスは万全! ギンガ・ビクトリー・エックス、さらにゼロを加えそれぞれにバトルの見せ場を設けつつ、オーブの各フュージョン(融合)形態も展開してみせるアクション構成の巧みさが光る!!


 ガイのライバルであるジャグラス ジャグラー青年は洋館の執事として登場! またもや敵か味方かナオミたちをはぐらかすような言動で戸惑わせるが、結局ガイを打ち倒すのは自分であるというプライドを掲げることで、前に進もうとしていた。
 それを示すように、TVシリーズ中盤でも登場した宇宙恐竜ゼットンと双頭怪獣パンドンが融合した合体魔王獣・ゼッパンドンフュージョンしてオーブと共闘するジャグラー! 因縁を越えた先に数奇な絆が紡がれる。


 ウルトラマンと怪獣の激闘を伝える特撮映像も安定した技術に支えられて展開。倒壊する建物などをスタジオに配置した精密なミニチュアセットと、ヒーローたちの巨大感を見せるためのオープンセットの併用。怪獣の侵攻に逃げまどう人々を捉えた実景と、爆発・爆煙・光線など様々な特殊効果の合成。


 さらに今回はガイ・ジャグラー・ナオミたちが宇宙人と肉弾戦を展開する等身大アクションも見せる。


 たとえ規模は大々的ではなくとも継続して撮影を続けることで、こうした技術は磨かれ向上してゆく。尺があるからただ戦いを流せばよいとするのではなく、短くともいかに魅力的で熱いバトルシーンを構築するか。そこに注力することが観客を飽きさせない作品となるポイントであろう。


 そして本作ではオーブの過去を知るゲスト悪役が登場したことで作品世界の相関図が広がり、様々な星を戦いで渡ってきたであろうガイの風来坊キャラを改めて際立たせることとなった。


 かつてオーブとの戦いに敗れたガピヤ星人サデスは、その身のほとんどを機械化してまでも戦いから得られる刺激を求め、代償に命すらもいとわない狂戦士だ。おもちゃをねだる子供のようにオーブに対戦を求める台詞は声優・山寺宏一氏の怪演も相まって、笑わせながらもそこに狂気を醸し出すキャラクターであった――彼とともに戦う奇機械怪獣デアボリックは、その全身が強大な砲台となる生体兵器の運用面を押し出した新怪獣だ!――。


 そして今回のウルトラゾーンを生み出した洋館の主・宇宙魔女賊ムルナウ。移ろう心を信じることができなくなり、世界すべてを形の定まる宝石にし、それにすがる悪行を続ける。
 囚われの身となったガイとの会話の端々、そして最期(さいご)の散り際に見せた涙に、彼との愛憎の深さが滲む。女芸人・椿鬼奴(つばき・おにやっこ)氏が演じたことでその妖しさ悲しさも表現されていた。


 それに対してムルナウ配下の星人役で声優として起用されたジャングルポケットの三方は、悪役として今一つ生彩を欠いていた印象だ。演者の出自から色眼鏡で見るつもりはないのだが、やはりこれまで担当されてきた声優陣との力の差を実感させられた。



 スペシャルゲスト最後を飾るのは元祖風来坊・モロボシ ダン=ウルトラセブン! オーブのピンチに「お困りのようだね」とふらりと現れるレジェンド!!


 『劇場版ウルトラマンX(エックス) きたぞ! われらのウルトラマン』(16)におけるレジェンド=初代ウルトラマンが言葉を発せず重厚な印象であったのとは対照的に、本作では軽快なキャラを押し出したセブンが参戦してオーブを鼓舞する。
 主題歌になぞらえてセブンの名を連呼する演出でも登場を盛り上げる! バトルでもサデスを余裕で退けるアクションを展開し、貫禄を見せつけてくれた。


 こうしたレジェンド・ゲストヒーローへのリスペクトあふれる演出については、同時期に公開された東映の『仮面ライダー×スーパー戦隊 超スーパーヒーロー大戦』(17)との違いがハッキリ出ている。個々のヒーローの特徴や技をていねいに拾って積み上げ、ラストは主役に集約するバトルアクション。素面のヒーローたちの扱いも正統派の立て方をしており、筆者は好感が持てた。


 ほかにも、普段は変身アイテムであるエクスデバイザー内にいて頻繁に会話するエックスがただの「ナビ」扱いされてしまうくだりは、『劇場版エックス』のリピートだったり、さらにエックスは『劇場版エックス』のラストで地球に迫る宇宙怪獣デザストロを目指す途中で本作『劇場版オーブ』の世界に引き込まれたのだと語るなど、その作品世界も直結させているサービス精神なのだ!


 銭湯でガイたちがじゃれあうなかにジャグラーも加わるノホホンとしたんシーンも、渋川一徹を演じる慎吾ちゃんお約束の「あばよ!!」のセリフがしっかり織り込まれるなど、これまでのシリーズを見てきたファンはもちろん、初見の子供たちにもわかりやすくてクスッとできるお笑いシーンを挟むことで緩急もつけていて、飽きることなくクライマックスバトルまで見せてくれた。


 風来坊に別れはつきもの。しかし本作を経たことでガイ=オーブが多くの宇宙人・ウルトラマンたちと関わってきたことが、より感じられた。再び地球に彼が戻ってくるのもそう遠くないかもしれない……。


 ラストではその腕を買われてウルトラマンゼロから助っ人に誘われるガイ。この戦いは『新ウルトラマン列伝』枠内で放映される短編シリーズ『ウルトラファイトオーブ 親子の力、おかりします!』(17・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1)で描かれる! 新たなるフュージョンスタイルでの戦いがまだまだ見られそうだ。


 並行宇宙をまたいで活躍するようになったさまざまなウルトラマンシリーズという世界観を強調するように、これまでの歴代シリーズの展開をしっかりと拾いながら織り込んで、個々の作品を深めてゆく。本作はここ数年で制作陣が堅実に進めてきたものを、また一歩広げる展開として充分楽しめる劇場版であった。


(了)


『劇場版ウルトラマンオーブ』合評3 ~帰ってきたウルトラマンオーブ 続編構想にも期待!

(文・中村達彦)


 半年間にわたる放送で楽しませてくれた『ウルトラマンオーブ』(2016年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1)が劇場新作で帰ってきた。
 ポスターを見て、一昨年の『劇場版ウルトラマンギンガS(エス) 決戦!ウルトラ10勇士!!』(2015年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)、昨年の『劇城版ウルトラマンX(エックス) きたぞ!われらのウルトラマン』(2016年)同様、ウルトラヒーローが共闘する内容と想像したが、その通りだった。ウルトラマンオーブをはじめウルトラ戦士たちが宇宙魔女賊ムルナウに率いられた怪獣・宇宙人を相手に大活躍する流れで、1時間20分楽しませてもらった。


 TV本編に登場した強敵ロボット怪獣ギャラクトロン、神々しささえ感じるデザインとパワーに再び苦戦を強いられるオーブ、そこへウルトラマンゼロが駆けつけ、共闘してギャラクトロンを倒すバトルはかっこいい。
 次に特捜チームSSP面々との再会、ジェッタの珍発明による騒動を経て、前作主役ヒーロー・ウルトラマンエックスとの接触。続いて宇宙人の刺客からSSPを救うアロハ姿のガイ。ウクレレでいつもの曲を奏でながらの登場はお茶目だ。


 仲間を危険な目にあわせまいと単独行動を取るガイを、それでも追うヒロインのナオミたちSSPやビートル隊の渋川隊長。中盤では彼のことを「放っておけない」と訴える。その声を推す大地とウルトラマンエックスのシーンがよかった。


 ヒロインはすでにガイの正体をTV本編で知ることになっていたが、本作でようやくオーブの正体がガイと知ったシンとジェッタが、ナオミとガイを守ろうとするくだりは、今までのウルトラシリーズ最終回のウルトラマンと防衛チームのドラマの延長線上にある。改めてSSPがウルトラマンオーブと向き合うことができたのだ。
 ビートル隊が登場しなかったのは残念だが、渋川隊長の見事なガンさばきは健在で、人間サイズで登場したガッツ星人相手に決めてくれていた。演じる柳沢慎吾は撮影中、アクシデントがあったものの頑張ったと共演者から絶賛されたそうである。


 「こいつなしでは『ウルトラマンオーブ』は物足りない」キャラクターであるガイのライバル役ジャグラス・ジャグラーも再登場し、やはりふてぶてしいながらも、憎めない怪演で楽しませてくれた。ガイとはつかず離れずの関係が続いている。正義と悪の間で揺れ動き、決めかねているのだろう。SSPも渋々ながら彼を受け容れ、後半には過去にひどい目にあわされたことも忘れて応援するにまで至る。
 ジャグラス・ジャグラーの合体魔王獣ゼッパンドンへのフュージョンアップ(変身)シーンは笑わせてもらった。ガイが先輩ウルトラマンの力を借りての変身時に先輩ウルトラマンを「さん付け」するのと同様に、怪獣を「さん付け」している。


 ジャグラーは結局、変身アイテム・ダークリングも放棄した。どうなるのか? 『ウルトラマンガイア』(1998年)の2号ウルトラマンであるウルトラマンアグルや、『ウルトラマンギンガS』(2014年)の2号ウルトラマンであるウルトラマンビクトリーのように、オーブに準じるウルトラマンになる可能性もあるのか?


 熱いドラマを見せてくれた一方で、脚本を手がけた中野貴雄の趣味が入っていたのか、ギャグのカットがいささか多かった。上映中、観客席あちこちからクスクス笑いが何度も起こった。


 今回の敵の首魁宇宙魔女賊ムルナウは迫力がなく、さほど強さ・怖さを感じない。正直「誰です? このおばさん」状態だった。ボスキャラとして立ちはだかるかと予想したが役不足だ。最後も流れ弾が館を直撃して、あっけなかった。ダークリングを手に入れたその目的からも、ウルトラシリーズよりスーパー戦隊もしくは女子向けのアニメ『プリキュア』向きかと……。


 配下の宇宙人たちも、ことあるごとに漫才を繰り広げて緊張感がない。ヒッポリト星人とテンペラー星人コンビのトークに、ガッツ星人はSSPとラグビーを繰り広げる。せっかくの強敵宇宙人がもったいない。反面、山寺宏一が好演したガビア星人サデスは、オーブと渡り合った強さと強烈なトークで強いインパクトを与えてくれた。
 一方、洋館内でSSPを執拗に追跡するガッツ星人の演出が、映像の画質を変えた効果からかインパクトが強く、怖い印象を与えていた。泣いた子供がいたかもしれない。


 奇機械怪獣デアボリックは強敵として描ききった。都市破壊やオーブを苦戦させる戦いぶりと怪獣らしい暴れっぷり。往年の元祖合体ロボットアニメ『ゲッターロボ』(1974年)の各話のゲスト怪獣・メカザウルスたちのような怪獣兵器のデザインはなかなか。口内から砲塔が回転しながら伸延してくるカットは近年ではあちこちの特撮作品で見かけるが、怪獣兵器として見ごたえがある。


 今回、ウルトラセブンもといモロボシダンの出演は嬉しかった。『ウルトラセブン』(1967年)誕生50周年を記念しての客演なのは言うまでもない。森次晃嗣はダン役を半世紀にわたって演じ続け、今回もその雄姿を見せてくれた。同一の役を一番長く演じた特撮俳優のはずで、藤岡弘らと同じく氏の健在ぶりは嬉しい。変身シーンでは主題歌BGMのイントロが流れ、セブンの姿に宿敵のムルナウまでがその名前を三回叫ぶシーンは笑わせながらも、スタッフの愛を感じた。


 セブンがオーブと共闘し、SSPや後輩ウルトラマンたちに語りかけるメッセージもまた嬉しい。惜しむらくはもう少し早くダンを出演させ、もっと物語に絡めてもらいたかった。例えばSSPを逃がすため苦戦する渋川隊長の前に現れ、窮地を救ってから「息子の友達を助けに行くところです」という台詞と共にSSPの許へ向かうとか。
 加えて、フュージョンアップして現れたゼッパンドンを観て、その素体のひとつである双頭怪獣パンドンに苦戦したかつて苦い記憶から、「ううーっ」と頭を抑えるシーンを入れてもらいたかった(笑)。


 なじみの銭湯の親父さんなど、TV本編ゆかりの人が出てくれたのもよかった。


 欲を言えば、大地と一緒にアスナもこの世界に飛ばされ、ナオミと共演してもらいたかった。
(『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)でも大人気深夜アニメ『ソードアート・オンライン』(2012年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190922/p1)のメインヒロインでもない、前作『ウルトラマンX(エックス)』(2015年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)のメインヒロインであるアスナのことです。念のため)
 大地とアスナ、ガイとナオミのカップルに、ダンがかつてのアンヌと自分をダブらせるのもありだ。


 戦いのクライマックスで、SSPはガイの助けになろうとしながら、マスコミとしての活動も継続して、画面を通してウルトラマンのピンチとその声援を人々に訴えるシーンにはウルッと来た。
 たしかに平成ウルトラシリーズでは観衆が声をあげてウルトラマンを応援するのは度々繰り返されてきたシーンではある。しかし、このシーンでスクリーンに向かって「頑張れ、ウルトラマンオーブ!」と叫びたくなった大人も結構いたはずだ――『プリキュア』映画における劇場で配布されるペンライトで子供たちが銀幕に応援する恒例ミラクルライトのシーンにも重なる――。


 今回の映画もヒットした。TV本編の続編として、ウルトラマン・怪獣どちらにも見せ場を作った快作に仕上がっている。しかし新作を毎年作り続けているのは嬉しいが、劇場版のカラーは東映ヒーロー劇場作品に近くなり、クライマックスなどは相通じている。展開がパターン化しつつあり、ウルトラシリーズ独自の色が薄れているのではないだろうか? 円谷プロウルトラシリーズを存続させる努力を続けてきた。『ウルトラマンオーブ』以外にも複数のコンテンツを展開中だ。だがそれも限界に近づきつつあり、新たなヒット作品を生み出さなくてはいけない。難しいところだ。


 なお監督・田口清隆&脚本・中野貴雄は、『ウルトラマンオーブ』についてはまだ前日談や後日談の物語の構想があるのだという。今回の映画の相応のヒットでそれは前向きに進んでほしい。ラスト、TV最終回と同じようにガイは仲間たちに見送られて去っていったが、そう遠くないうちに再会を望みたい。


(了)


『劇場版ウルトラマンオーブ』合評4 ~劇場版ウルトラマン史上初の「バカ映画」(笑)

(文・久保達也)
(2017年3月20日脱稿)

*『ウルトラマンライブステージ』の映像化!?


「さあ、みんなでウルトラマンを応援しよう!」
「いくよ! せーの!」
「ウルトラマ~ン! がんばれ~~~!!」


 まんま、夏休み恒例の催事イベント『ウルトラマンフェスティバル』(89年~)内でのアトラクショー「ウルトラマン ライブステージ」などに代表される、むかしからあったヒーローショーの司会のお姉さんの掛け声やないか!?(笑)


 クライマックスでは、ウルトラマンオーブウルトラマンエックス・ウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリーら新世代ウルトラマンたちが勢ぞろい! 本映画の新怪獣である奇機械怪獣デアボリック、既存の着ぐるみの流用である同族別個体設定であった分身宇宙人ガッツ星人ドッペル・地獄星人ヒッポリト星人カリスト・極悪宇宙人テンペラー星人バチスタらの強豪宇宙人集団と、破壊され尽くした都心のビル街で大乱戦を繰り広げる!


 その様子を全世界に向けて実況中継している、怪奇現象追跡サイト・SSP(サムシング・サーチ・ピープル。通称エスエス・ピー)のメンバーである夢野ナオミ・松戸シン・早見ジェッタ、そしてナオミの叔父(おじ)で特捜チーム・ビートル隊の隊員(実は隊長)であった渋川一徹が、冒頭に挙げたヒーローショーでの司会のお姉さんのようなセリフを発していたのだ!


 案の定、観客の何人もの子供たちが、彼らといっしょになって、


「ウルトラマ~ン! がんばれ~~~!!」


と叫んでしまったではないか!(笑)


 実に微笑ましい光景である! いやホントに、劇場版ウルトラマン映画にかぎらず、観客がここまでスクリーンとの一体感を得られた映画が果たして近年存在したであろうか!?


 思えば、第2期ウルトラマンシリーズでは、たとえば『ウルトラマンA(エース)』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070430/p1)のナレーターを務めた往年の名優だった故・岸田森(きしだ・しん)が、


「さぁ、このあとどうなるんだろうね。じゃあ、もうちょっと続きを観てみよう」(笑)


などという調子で、その後の展開を視聴者に期待させるように語りかけてみたり。あるいは『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』で、『A』では防衛組織・TAC(タック)の竜五郎隊長を演じていたナレーターの嵯川哲朗(さがわ・てつろう)が、


「みんな知っているかな? これが土星だ。その土星で(暴君怪獣)タイラントと戦っているのは、ほら、あの人だよ。君たちはウルトラセブンのことを知っているかい?」


などと、視聴者の子供たちにウルトラの知識のみならず、一般常識についてまでも問いかけたものである(笑)。


 1970~90年代にはこういうノリがいかにも子供ダマしで恥ずかしく、「子供扱いされていて不愉快だ!」「子供たちは子供扱いされることがキライなのだ!」などと、当時まだ10代~20代中盤の特撮マニアが主体であった時代には猛烈に批判を浴びたものだった。
 しかし、特撮マニアの上限が中年化・高齢化していくのに伴い、一周まわってチャイルディッシュな描写も許せるようになってしまい、むしろその手の描写を過剰にイヤがったのは、我々特撮マニアが幼少時からマニア予備軍の気があった異形(いぎょう)の者たちだったからであり(笑)、圧倒的大多数の子供たちはそこまで気にしていなかったのでは? などといった自己相対視もできるようになってくる。


 その果ての、


「さあ、みんなでウルトラマンを応援しよう!」
「いくよ! せーの!」
「ウルトラマ~ン! がんばれ~~~!!」


なのであり、「大人の鑑賞にも堪えうるリアルな特撮作品をつくらなければならない」などと叫んでいた時代を知っている身には、まさに隔世(かくせい)の感があるのだ(笑)。


 ちなみに、CS放送のファミリー劇場で2008年に『ウルトラマンレオ』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090405/p1)が放送された際、同局でオンエアされていた『ウルトラ情報局』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090419/p1)の「2008年11月号」に、第27話『日本名作民話シリーズ 強いぞ! 桃太郎! 桃太郎より』で気弱なゲスト少年・桃太郎を演じた、往年の児童向けテレビドラマ『俺はあばれはっちゃく』(79年)や特撮戦隊ヒーロー『電脳警察サイバーコップ』(88年)主演などでも有名な吉田友紀(よしだ・とものり)がゲスト出演したことがあった。


 その際に、氏はウルトラシリーズの魅力について、


「ナレーションが視聴者の子供たちに優しく語りかけるのがよかった。そんな子供番組はほかになかった」


などと語っている。


 もちろんハードでシビアな『ウルトラマンレオ』では、ナレーターが視聴者の子供たちに優しく語りかけるパターンは例外ケースであり、牧歌的な『日本名作民話シリーズ』ゆえの例外的な処置であった(笑)。しかし、『ウルトラ情報局』に出演するにあたって参考用に進呈されたであろうビデオで自身が出演した『強いぞ! 桃太郎!』を再見して、改めて牧歌的に子供たちに語りかけるようなノリもよいと思ったといったところなのだろうが、それには筆者も同感なのだ。


 話を戻すが、『ウルトラマンフェスティバル』は1989年(平成元年)以降現在に至るまでTBS主催で毎年夏に開催されている恒例行事だが、会場で行われるライブステージこそがその最大の目玉となっている。今回の『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆(きずな)の力、おかりします!』は、この『ウルトラマンフェスティバル』の名物であるライブステージの映像化と云っても過言ではないだろう!?


*圧倒的な数を誇る凶悪宇宙人軍団!


 近年のウルトラマン映画は、スーパー戦隊並みに複数のウルトラマンが大集合・大活躍する姿が描かれることが当然になっている。


 だが、今回は正義側ばかりでなく、悪側もかなりの数のキャラクターが登場するのだ。先述した


ガッツ星人
●ヒッポリト星人
テンペラー星人


以外にも、巨大化しない人間大サイズの侵略宇宙人として、


●遊星人セミ
●昆虫宇宙人クカラッチ星人
●憑依(ひょうい)宇宙人サーペント星人
●殺戮(さつりく)宇宙人ヒュプナス
●電波怪人レキューム人
●ガルメス人……


 ん? 『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)に登場したサーペント星人はともかく、他の宇宙人は、


●『ウルトラQ dark fantasy(ダーク・ファンタジー)』(04年)
●『ウルトラマンネクサス』(04年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060308/p1
●『ウルトラセブンX(エックス)』(07年)


など、今となっては黒歴史(くろれきし)と化した作品群(汗)に登場した、製作側でもすでに忘れ去られていたであろう、どマイナーなヤツばかり。スミマセン、あなたたちのこと、筆者も完全に忘れていました(爆)。


 ただ、これは『ウルトラマンオーブ』(16年)の前半に登場した、悪質宇宙人メフィラス星人ノストラが率いる「惑星侵略連合」なる宇宙人軍団の頭数を、はるかに上回る数なのだ!
 そして、本編場面ではこれらの等身大の宇宙人が大挙登場することにより、主人公の風来坊(ふうらいぼう)、クレナイ・ガイ=ウルトラマンオーブはもちろんのこと、本作で初登場した黒いパワードスーツを着用したヒロイン・ナオミや渋川一徹、テレビシリーズでは非・戦闘隊員にすぎなかったレギュラーキャラである松戸シン青年や早見ジェッタ青年までもが、ド派手な格闘を演じる姿がひんぱんに描かれるのだ! これではまるで坂本浩一監督作品か? と、錯覚をおぼえてしまうほどにである!――むろん、坂本作品から着想を得たものでもあろう!――


 あえて難点をあげるとするなら、頭だけ宇宙人のかぶりもので、手足は人間のままというのが……(笑) 特にセミ女とガルメス人は女性型の黒いワンピース姿であるため、人間の腕と足がおもいっきり露出しており、カブりものであることがバレバレである(爆)。
 まぁ、たしかにその方が動きやすいワケだ。等身大宇宙人たちの人間態を演じたのも、おそらくはそれぞれのスーツアクターアクトレス本人であると思われることから、ふだんはなかなかお目にかかれない貴重な姿を拝(おが)ませてもらったということで、この点は大目に見ようではないか!?(笑)


 それにしても、80年代に東宝の怪獣映画・ゴジラシリーズの復活を求める特撮マニアたちの間では、複数の怪獣を登場させることは作品の質を下げてしまうことだ! ましてや怪獣対決として怪獣プロレスを演じさせるのは邪道だ! などと云われていたものだった。いや、『宇宙船 YEAR BOOK 2000』あたりでも、平成ウルトラ3部作の円谷プロ側のプロデューサー・笈田雅人(おいだ・まさと)が、「ウルトラには『ウルトラマンA』の異次元人ヤプールや『仮面ライダー』(71年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140407/p1)のショッカーのような、組織化された悪を出す必要はないように思う」などと語っていたっけか(汗)。


 それが今ではウルトラシリーズに何匹もの怪獣軍団や、「惑星侵略連合」なんて組織化された悪が登場するのが当たり前になっている。これまた隔世の感があるのだ――個人的には大カンゲイ!――。


*「人間ドラマ」よりも、「SSP」メンバーの大活躍を重視!


 巨大化しない人間大サイズの侵略宇宙人たちのアジトである怪しい洋館にSSPメンバーが潜入するのは、正直『ウルトラマンフェスティバル』というよりかは、それこそ先述した昭和の『仮面ライダー』シリーズみたいなノリなのだが(笑)、その中で異次元空間に送られてしまったSSPメンバーは、ガッツ星人に散々に追い回されるかたちでドタバタ劇を繰り広げる。
 これは初代『ウルトラマン』(66年)第17話『無限へのパスポート』で、四次元怪獣ブルトンに占領された防衛組織・科学特捜隊の基地から脱出を試みるものの、出るに出られなかった隊員たちの描写をオマージュしたものでもあるだろう。
 ところで、テレビシリーズではガイが通っていた銭湯(せんとう)である「鶴(つる)の湯」を舞台に、石鹸(せっけん)でガッツ星人を転倒させて逃げ回るSSPメンバーをよそに、無表情でただひたすらに床を掃除しつづけている「鶴の湯」の主人が最高にウケる(笑)。


――「鶴の湯」の主人を演じたのは、興行収入80億円を超えるほどの大ヒットとなり、日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した怪獣映画『シン・ゴジラ』(16年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160824/p1)や平成ウルトラシリーズに平成仮面ライダーシリーズなど、特撮作品への出演が多い諏訪太朗(すわ・たろう)である。特撮マニア的には『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)の泣かせる佳編であった第34話『鉄人鬼(てつじんオルグ)、泣く!?』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011113/p1)に登場した敵怪人・炭火焼きオルグの人間体が代表作だろう――


 クライマックスでは、優勢だったウルトラマンオーブに対して、ガッツ星人がSSPメンバーを人質にしてオーブに降伏(こうふく)を迫ってくるあたりも、昭和の『仮面ライダー』っぽいが(笑)、


「誰か忘れてねえかなぁ」


と、それを狙撃してSSPメンバーを救出する渋川の姿も最高にイカしてる!


 これは異次元空間でナオミたちを逃がしてひとりガッツ星人に立ち向かおうとするも、ガッツ星人が何十人にも分身して襲ってきたために、自身も逃げてしまった(笑)ことに対する、渋川の雪辱(せつじょく)にもなっているのだ!


 第2期ウルトラシリーズに登場した侵略宇宙人たちに準じて、その「どチンピラ」ぶり(笑)を発揮したヒッポリト星人とテンペラー星人にタコ殴りにされ、オーブは変身を解除されてガイの姿に戻ってしまう!


 迫り来る巨大ロボット怪獣・デアボリックの前に、SSPメンバーは立ちふさがって、


「ガイさんを倒すなら、私たちを倒してからにしなさい!」
「僕たちは仲間だ!」
「オレたちは絶対にあきらめない!!」


などと、口々に叫ぶ!


 たったそれだけの彼らの善行で、宝石状に固められたウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックスそれぞれの胸中央のカラータイマーからガイに光が注(そそ)がれて、3人のウルトラマンの能力を持ったウルトラマンオーブの究極形態・オーブトリニティへと強化変身をとげてしまった!(笑)


 これはもうご都合主義以外の何物でもないのだが、短い尺数の中で手っ取り早くストーリーを進めるには、こういった展開も間違ってはいないだろう(笑)。


 昭和の時代はともかく平成以降のウルトラマン映画であれば、こうした最大のクライマックスを盛り上げるためにも、逆算して構築された「人間ドラマ」が「特撮バトル」の助走台として準備されており、それはそれでヒーローが巨悪に対して立ち向かってみせる熱い動機や必然性を確保させるためにも必要なことだった。


 だが、今回の『劇場版オーブ』では、テレビシリーズの特に後半に顕著(けんちょ)に見られた、やや暗くて重苦しい「人間ドラマ」は皆無(かいむ)であったと云い切っても過言ではない。今回のSSPメンバーや渋川はひたすら体をはったドタバタとアクションを演じるのみであり、いわゆる「人間ドラマ」はいっさい演じてはいなかった、と思えるほどなのだ!(イイ意味で!・笑)


 『ウルトラマンフェスティバル』のライブステージでさえも、子供を連れてきた親たちをもおもわずホロリとさせるような(マジで!)、仮面劇による「人間ドラマ」がアクションの中でもウマく点描されているようなご時世にもかかわらずである!(笑) そんな要素よりも、登場キャラすべての「活躍」「見せ場」を描くことを最優先にするという、これまでのウルトラマン映画とは完全に方向転換を図(はか)っているかのような印象だ! そう、「鶴の湯」の主人でさえも立派に活躍していたのだ!(笑)


*ジャグラス・ジャグラー、「らしさ」たっぷりの大活躍!


 その意味では、テレビシリーズでのガイのライバルであり、レギュラーの悪役キャラとして登場していた無幻魔人ジャグラス・ジャグラーの今回の活躍ぶりは実にめざましいものがあった! 当初は旧来の悪役のように登場しながらも、捕らわれたガイを救出しようとするSSPメンバーに手を貸したり、ロボット怪獣デアボリックや宇宙人軍団に苦戦しているオーブを、


「おまえを倒すのはオレだ! こんなヤツらにやらせはしない!」


などと手助けしたりする描写は、テレビシリーズでもその善悪が一筋縄ではいかなかったジャグラーのそのキャラを踏襲(とうしゅう)しつつも、その印象を好転させるのには絶大な効果を上げていたのだ。


 テレビシリーズ中盤でも披露していたが、なんと云っても


「(宇宙恐竜)ゼットンさん!」
「(双頭怪獣)パンドンさん!」
「闇の力、お借りします!」


などと、ガイが2大先輩ウルトラマンの力を借りてウルトラマンオーブに変身するシーンをパロって、2大怪獣を「さん」付けで呼んで(笑)、合体魔王獣ゼッパンドンに合体変身したジャグラーが、ウルトラマンのように光の奔流の中から巨大化変身をとげながら登場する様式美的な特撮シーンを新撮で披露したのは、もう良い意味での笑えて、かつカッコいい「バカ映画」だとしか云いようがない(爆)。


 一連の騒動の末に、今回のラスボス・宇宙魔女賊(まじょぞく)ムルナウから奪い返した、オーブリングの対となる変身アイテム・ダークリングを破壊したことにより、ジャグラーも完全に改心したかに見える。「ガイを倒す!」と語るのも今後は悪役としてではなく、あくまでライバルとしての発言であると解釈すべきところだろう。


 もっとも、ゼッパンドンに変身したものの、あっけなく敗れて人間態に戻った際にもジャグラーは、


「正義の味方は…… メンドくさい」(爆)


などとツブやいたほどなのだから、今後もやさぐれたヒネくれキャラを貫き通してくれることだろう!(笑)


*サデスとムルナウ! メインの悪役も「お笑い系」!


 何千年も前にウルトラマンオーブに倒されたという、実に因縁(いんねん)が深い設定になっている、本作で初めて登場した奇機械宇宙人ガピヤ星人サデスは、その妙にハイテンションな体育会系のキャラのために、いわゆる「悪役」というよりはガイ=オーブの新たな「ライバルキャラ」として、「復讐(ふくしゅう)」というよりもオーブとの「再試合」を果たすためにやって来たという感が強い。なにせ、異次元空間での初登場の場面が、怪しい洋館の白日下の庭園でラジカセの音楽に乗ってエクササイズをしているという、ほとんどスーパー戦隊シリーズに登場するギャグ系怪人のノリなのだから(笑)。


 サデスがロボット怪獣デアボリックの背中にその腕を接続することで、デアボリックの口から大砲が露出して「デアボリックキャノン!」を発射するだなんて、ほとんど漫画的なノリだ(笑)。
 華麗に宙を舞ってオーブにパンチを食らわせる必殺技の名前も「ギャラクティカ・サデスファクション!」。これもまた、ロートル世代であればご存じのとおり、往年の『週刊少年ジャンプ』連載の大人気漫画『聖闘士星矢(セイント・セイヤ)』(85年)で有名な車田正美(くるまだ・まさみ)による、大人気SFボクシング漫画『リングにかけろ』(77年)に登場したライバルキャラの有名必殺技「ギャラクティカ・マグナム!」と、「サデス」と「サティスファクション(満足)」を掛け合わせたネーミングなのだろう(爆)。


 それにしても、オーブに何度倒されようとも、ウルトラマンたちが激アツバトルを展開しているところに


「死んでなんかいられないよ!」


とよみがえる展開などは、もうデタラメもいいところで、またまた笑ってしまう(笑)。


 こんなファンキーなノリの敵キャラはウルトラマンシリーズ初といってもよいくらいだ。やはり声を演じたベテラン声優・山寺宏一(やまでら・こういち)の名演技の賜物(たまもの)というよりほかにないであろう。


 なお、今ではベテランの山寺氏がウルトラマンシリーズで声優を務めるのは、オーストラリアとの合作『ウルトラマンG(グレート)』(90年)に登場した防衛組織・UMA(ユーマ)のロイド・ワイルダー隊員以来であり、なんと四半世紀以上ぶりのことだった! 実はこの『G』では、『オーブ』で渋川を演じる柳沢慎吾(やなぎさわ・しんご)もまた、同じUMAのチャールズ・モルガン隊員の声を演じている。そこから着想されたキャスティングでもあったのだろうか?


 サデスは地球侵略というよりかは、ほとんどオーブがいる地球に遊びに来たというノリであった(笑)。


 ラスボスのムルナウ自体も、自身の気に入ったものを宝石に変えてコレクションするという、まさに初期・平成面ライダーに登場した快楽主義者のキャラを彷彿(ほうふつ)とさせるノリであった。魔女のコスプレをした年増(としま)のオバサンという印象が濃厚に感じられるムルナウではあったものの、逆にそれが愉快犯的なキャラにはピッタリとハマっていたようにも思えるのだ。


 ロボット怪獣デアボリックを出撃させたり、宇宙人軍団をけしかける際の、エキセントリックでハイテンションなムルナウのキャラは、サデスと同じく終始コミカルに描かれいていた。そのことから、どれだけ街が破壊の限りを尽くされようが、良くも悪くも、いや子供向けの映画としては良い意味で、終末的な悲壮(ひそう)さをこの映画は漂わせることはない。これは両親なり片親といっしょに楽しく外出して鑑賞する、子供向けのヒーロー共演のお祭り映画としては正しい処置のつくりだろう。


 その逆にほとんどの子供たちが自宅で鑑賞するであろう、テレビシリーズの最終回前後編である第24話『逆襲の超大魔王獣』~第25話『さすらいの太陽』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170415/p1)における、古今の特撮変身ヒーロー番組全般と比較すれば大したものではないのだが、やや悲壮感や人間ドラマ性を強調していた処置とは、実に対照的となっている印象が強いのだ――優劣の話ではないので、念のため――。


 よって、『ウルトラマンA』第1話が出自で『ウルトラマンメビウス』(06年)以降のウルトラシリーズでも着ぐるみの流用で何度も再登場を果たしているミサイル超獣ベロクロンのように、デアボリックが全身から乱射する多彩な破壊光線や、それらの直撃を受けたビルが真下にガラガラと崩れたり、その様子を俯瞰(ふかん)して捉えた実景との合成カットには、リアルに考えてしまえば大変な大惨事が起きているのだけど(汗)、「ただひたすらに美しい!」と感嘆(かんたん)の声を上げるのみで済ませてしまえるのであった(笑)。そういった「破壊の快感」と、


●SSPメンバー&渋川 VS 等身大宇宙人軍団
●新世代ウルトラマン VS 巨大宇宙人軍団&怪獣兵器


による逆転・逆転また逆転といった、まさに『ウルトラマンフェスティバル』のライブステージのようなシーソーバトルの楽しさを満たすだけのために、今回の『劇場版オーブ』の作劇は組み立てられているといっても過言ではない! やはりそこでは陰気な「人間ドラマ」なんぞは描く必要もなかったのであった!(笑)


モロボシ・ダン、「ちょっとだけ」の再登場!(笑)


 本作公開の2017年で放映50周年を迎えた『ウルトラセブン』(67年)の主人公であるモロボシ・ダンウルトラセブンの再登場は、やはり本作の最大の目玉だったハズである。
 ところで、テレビシリーズ『オーブ』のメイン監督につづけて、この『劇場版』でもメガホンをとった1980年生まれの田口清隆監督は、小学校低学年で親の目を盗んで深夜の再放送(爆)で鑑賞した『ウルトラQ』(66年)・『ウルトラマン』(66年)・『ウルトラセブン』(67年)こそが自身にとっての「ウルトラ」であると公言する、ぶっちゃけ第1期ウルトラ至上主義者なのだ(笑)。ゆえに、ダンを再登場させるからには、やはり往年の特撮マニア諸氏が賞揚してきた『セブン』におけるアンチテーゼ編の名作のような陰鬱でマニア向けなドラマを田口監督は展開してしまうのではなかろうか? と個人的には少々の危惧(きぐ)していたものであった。


 だが、本作のダンはピンチになったオーブの前に、いきなり何の伏線も脈絡もなく(笑)、


「お困りのようですね」


フラリと現れる。


 だからこそ、元祖「風来坊」なのだろうが(笑)、ダンは「人間ドラマ」を演じることもなく、すぐさまウルトラアイを着眼してセブンに変身してしまうのだ!


 まぁ、ダンを演じる森次晃嗣(もりつぐ・こうじ)もかなりの高齢に達しているワケで、長時間にわたって拘束(こうそく)するのはキツいだろうと、あくまでゲスト的扱いにとどめたのではあろうけど。さすがにもう少し出番があってもよかったのではなかろうか?(笑)


 それでも、セブンが登場するや、『ウルトラセブン』の主題歌『ウルトラセブンの歌』のメロディに乗せて、ウルトラマンや宇宙人軍団、ムルナウまでもが次々に「セブン」と口にすることで、


♪ セブ~ン セブ~ン セブ~ン セブ~~ン


♪ セブン! セブン! セブン!!


といったイントロ(ダクション)の歌詞部分を再現してしまう演出に至っては…… やっぱり、この作品は「バカ映画」だよな……(イイ意味で・笑)


「さすが、生涯現役(しょうがい・げんえき)!」


と、実はセブンの存在を知っていて、そんな大物のセブンの登場に大喜びしてしまったサデスが、


「セブンのキック、きく~~~」(苦笑)


などと駄洒落を吐きながらヤラれてしまうという、プッと吹いてしまう笑えるフザけた返しをするあたりなども…… やっぱり、この作品は「バカ映画」だよな……(イイ意味で・笑)


 つまり、『ウルトラセブン』の主にアンチテーゼ編におけるドラマ性やテーマ性などではなく、お笑いを少々まぶしつつも、まずは何よりもセブンのカッコよさの方を優先! 夕闇に染まるビル街にてアクロバティックなバトルを繰り広げさせることで、とにかくセブンの本来の魅力である戦闘ヒーローとしての勇ましさの方を再現しているのだ!


 ただ惜しむらくは、セブンの息子であるウルトラマンゼロも本作序盤に登場していたのにもかかわらず、セブンとの親子共演が描かれなかったことである。実は本作でのゼロは、冒頭で奇機械改竜ギャラクトロンに苦戦するオーブを助けて以降、なんとラストまでずっと不在なのであった(笑)。これもまた、一人数役なのでスーツアクターが他のウルトラマンや怪獣・宇宙人に着替えなければならないために、冒頭に登場したウルトラマンや怪獣が不在になってしまう『ウルトラマンフェスティバル』の再現だったのだろう!?(爆)


*昭和ウルトラマン&平成ウルトラマンが総登場!?


 実は出番が少ないのはダンやゼロばかりではない。今回も近年のウルトラマン映画がそうであったように、歴代ウルトラマンの華麗なる競演が目玉ではあった。ただ、ウルトラマンエックスはクライマックスに至るまで、ずっとエックスへの変身アイテム・エクスデバイザーの中に閉じこもったままだった。ウルトラマンギンガ&ウルトラマンビクトリーは登場時点ですでに宝石状に固められた姿になっていた(汗)。
 その意味では、本作ではヒッポリト星人が登場したこともあって、古い世代としては『ウルトラマンA』第26話『全滅! ウルトラ5兄弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061030/p1)~第27話『奇跡! ウルトラの父』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061105/p1)の前後編で、ヒッポリト星人によってブロンズ像にされることであまり活躍できなかったウルトラ5兄弟の描写については、少々不満だったことを彷彿とせずにはいられなかったのだ(笑)。


 だが、それでも本作に関しては、先輩ヒーロー活躍の少なさに対して、観客も大きな不満を感じることはあまりなかったのではなかろうか? それは主役であるウルトラマンオーブのタイプチェンジの活躍がひんぱんに描かれることで、そのたびに歴代2大ウルトラマンとの合体変身の全バリエーションのバンク映像が繰り出されていたからだ。そして、それによって、映像的には疑似的な先輩ヒーロー共演が果されていたからなのかもしれない! つまり、


ゾフィー
初代ウルトラマン
ウルトラマンジャック
ウルトラマンタロウ
ウルトラマンティガ
ウルトラマンメビウス
ウルトラマンベリアル


 新撮映像はなかったけど、テレビシリーズでのオーブの各種タイプチェンジへの変身バンク映像を流用しまくって、全編にわたって先輩ヒーローを疑似的に総登場させることができているのだ! これによって、画面的なにぎやかさや、華(はな)といったものを醸(かも)し出すこともできていたのだ! そういった意味でも、やはり2大先輩ウルトラマンの力を借りて変身やタイプチェンジをとげるオーブの設定は、個人的には評価するのだ。


 冒頭のオーブ&ゼロ VS ギャラクトロンの特撮場面の、実景の青空を背景にした、少々やりすぎの感もある超アオリのオープン撮影も強く印象に残った。


 加えて、クライマックスでの横並びのオーブ・エックス・ギンガ・ビクトリー VS やはり横並びのデアボリック&宇宙人軍団! 彼らを左右の陣営に配して、その中央の合間をカメラが真下からアオリで捉えながら画面奥へと進みきってから、ふたたび画面手前へと戻ってきてしまう映像は、スレたマニア的には実に素人の発想のような演出のようにも思えてしまうのだが、そういった想いを上回って、なぜだが面白いシーンに仕上がっていた! まぁ、カメラを台車に乗せて前後に往復させただけなのだが(笑)、ウルトラマンや怪獣たちの圧倒的な巨大感を実にウマく表現できている!


 実景のビルの谷間に合成されたその特撮怪獣バトルを、SSPメンバーが見守っている場面がつづいていくのも、絶大な臨場感をもたらすことができていた!


 加えて、


●オーブのオーブカリバー
●ゼロのゼロツインソード
●ギンガのギンガスパークランス
●ビクトリーのシェパードンセイバー


など、今となっては当然のように繰り出されるようになったウルトラマンの派手な「剣術」を中心としたアクション演出がさらに華を添えている! 今回の敵キャラがデアボリック・サデス・ギャラクトロンなど、全身をメカで武装したヤツが多かったことがまた、ウルトラマンたちが武器を持って戦わざるをえないことにも説得力を与えていた!


*「男の子」はやっぱりロボット怪獣が好きなのだ!


 ロボット怪獣といえば、


●宇宙ロボット・キングジョー
●地底ロボット・ユートム
●軍艦ロボット・アイアンロックス
●ロボット怪獣・クレージーゴン
●宇宙竜ナース
●ロボット超人ニセ・ウルトラセブン


など、主に『ウルトラセブン』に登場したロボット怪獣などを特撮マニアであれば思い出すことだろう。それこそ戦車怪獣・恐竜戦車、双頭怪獣・改造パンドンなどは、まさに半獣半メカのサイボーグ怪獣のデザインになっている本作のデアボリックの元祖ともいえるのだ!
 『セブン』を批評的に改めて語り直すのであれば、そのドラマ性やテーマ性といったことばかりではなく、むしろそうした男の子をおもわずワクワクさせずにはいられないスーパーメカや、メカニカル怪獣の魅力といった要素などにも改めて注目すべきだし、むしろそちらの方の「魅力」が、『セブン』という作品の魅力の「本質」により接近しているのではなかろうか?


 もっとも、今回ほどの地球最大の危機でさえも、出てくるのは渋川だけで、テレビ本編の『オーブ』最終回のようにビートル機の編隊をいっさい出動させないビートル隊の描写は、そんなにCG予算がかかるような代物だとも思えなかったので、やや不整合には思えた。昨年度の映画『劇場版ウルトラマンX きたぞ! われらのウルトラマン』(16年・松竹)では、防衛組織Xio(ジオ)の各種飛行メカ・地上メカが大活躍するのみならず、隊員たちが


「(宇宙ロボット)キングジョー・デストレイ砲、発射ぁ~~っ!!」
「(火山怪鳥)バードン・フェニックス・アタぁ~~~クっ!!」


などと、激アツに叫んで熱血活劇度を上げてくれていただけに、正直この部分に関してはやや物足りなさを感じたのも事実である。


*新世代ウルトラマン、激アツな必殺技名の連呼!


 もっとも、本作では


「トリニティウム・ストレート!!」
「トリニティウム・ブレイク!!」


だのと、ウルトラマンオーブの最強形態・オーブトリニティの体内(精神世界)で全身黒づくめのタイツに身を包んだガイが、オーバーアクションを繰り出しながら激アツに必殺技名を叫んでみせる演出が、それらの代わりを立派に果たしてくれていた!


 クライマックスの特撮バトルも良い意味でけっこう尺が長かった。


 しかし、本作にかぎった話ではないのだが、2010年代に再開した『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)以降の手法を踏襲して、オーブの体内にいるガイの素面でのセリフ・お芝居・感情演技を描くシーンがある。これによって、子供たちも我々年長マニアも変身後のウルトラマンに対して感情移入が高まることは確かなのだ。そして、ウルトラシリーズの弱点でもあった変身後のヒーローと変身前の人間との分断感はウスまっており、「ドラマ」と「バトル」の一体化にも貢献してきた――もちろん、その半面でウルトラマンの神秘性や超越性がややウスまってしまうことも事実だが――。


 しかし、この処置によって、昭和の特撮変身ヒーローもののように「バトル」シーンになると「ドラマ」がほぼなくなって、「ドラマ」と「バトル」が分離してしまったかのような感覚を抱かなくなることも圧倒的な事実なのだ。つまり、2010年代以降のウルトラシリーズでは特撮怪獣バトルのシーンになっても人間ドラマを継続させることができているのである!


 加えて、子供たちのお財布のヒモをにぎっている、変身ヒーローや怪獣たちよりもイケメン青年を見たい! と思っている母親層への訴求(そきゅう)効果も考えれば、これはまさにもはや外せない要素にもなっており、この大転換はまさに一石二鳥の「発明」だったといえるだろう!(笑)


 特撮変身ヒーロー番組の主人公にはこれまで新人俳優が起用されることが通例だった。しかし、ガイを演じる石黒英雄(いしぐろ・ひでお)は、不良青年が大挙として登場する学園ドラマ『ごくせん』(02年・日本テレビ)第2シリーズ(05年)のゲスト出演がデビューであった(笑)。同作第3シリーズ(08年)では金髪の不良生徒役でレギュラー出演を果たしてもいる。
 もちろん、我々特撮マニアにとっての石黒英雄は、もう10年も前の作品となってしまった『仮面ライダー電王』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080217/p1)のシリーズ後半に登場した、知的障害者(失礼)のようにニヤけていたラスボス青年・カイである!(笑)


 氏は下品な三下(さんした)の悪党といった感じではない。いわば、ややワイルドな風貌のイケメン不良キャラではあったのだ!



 本作のラストで、ガイが松戸シン青年や早見ジェッタ青年と「鶴の湯」の湯船につかるシーンなどは、「先にあがってるぜ」とまさかの「裸体(らたい)」を披露してくれたジャグラーも含めて、まさに年長の女性ファンを意識した最大のサービスカットであろう!(笑)


 しかし、ここにSSPメンバーが、


ウルトラマン(=ガイ)の体がどんなだか、見せてくださいよ!」


などという天然ギャグを重ねることで、女性向けサービスとしても少々発生してしまうかもしれない「イヤらしさ」を中和することもできているのだ(笑)。



 本作ではゲスト扱いとなった前作ヒーローであるウルトラマンエックスが、ひさびさにテレビシリーズ当初のスタイルであったゴモラアーマーを装着した姿を披露してくれたことも熱くさせてくれるものがあった。
 そして、まるで昭和の仮面ライダーX(エックス)が必殺技の「Xキック!」を放つ直前に、ジャンプしたあとの空中で両腕と両脚を拡げて「X」の文字を形作っていたように、ウルトラマンエックスも空中で両腕と両脚を拡げた「X」字型のポーズを形作って、その全身からX字型の光線を放ってみせる「アタッカーX(エックス)!」なる必殺技を、テレビシリーズにつづいて久しぶりに放ったさまも超絶にカッコよかった!


 空から見下ろした実景のビル街に合成された何人ものガッツ星人に対して、画面手前に背面から描かれて「X」を形作ったエックスが、


「アタッカー X!!」


と叫んで強烈な光線を放つや、地上に大きく広がった「X」字の炎の中でガッツ星人が燃え上がるのである!


 ヒッポリト星人とテンペラー星人のコンビに対して、宙に舞ったギンガとビクトリーが必殺技「ギンガサンダーボルト!」「ビクトリウムスラッシュ!」をダブルでキメるのもまた、世代人としては昭和の仮面ライダー1号・2号が「ライダーダブルキック!」を放つのを彷彿とせずにはいられなかった!(笑)


 巨悪や多数の敵に対して、正義の味方も複数人が集って対抗してみせる! これぞまさに「強者集結のカタルシス」なのである!


 そういえば、70年代末期から00年代前半にかけてば、「ウルトラマンの技が多すぎると、その印象が弱体化する」などという、的外れなことが云われてた時代があったなぁ(汗)。真実は逆である! 観客に対してヒーローの強さ・カッコよさ・万能性・超越性を高めるためにも、こういったあまたの秘術をヒーローが駆使できることが重要なのである!


*「絆 ≒ つながり ≒ 継続 ≒ 連続性(笑) の力」を「お借り」した成果だ!?


 本作は公開1週目の興行ランキングで第7位となり、1週目が第10位だった前作『劇場版ウルトラマンX』以上の好スタートを記録した。もちろん、興行ランキングは相対値であって、観客動員数ではない以上は絶対値として比較には用いることができない。しかし、前作同様に本作も上映劇場は全国で50館ほどしかなかったことを思えば、これはかなりの健闘であると云い切っても差し支えはないだろう。映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)以降、興行的には厳しいことになっていた平成ウルトラマン映画であったが、本作ではちゃんと客が入っているという事実を、筆者個人もついに実感することができた。


 筆者は公開初日と2日目の初回上映を鑑賞したが、静岡県静岡市のMOVIX清水(ムービックス・しみず)では、近年では客入りがあまり芳(かんば)しくなかった「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」の劇場版並みに観客が入っていたのだ。一地方の一映画館での事象をもって普遍化・一般化もできないことは重々承知しているが、MOVIX清水での『劇場版ウルトラマンX』では客席は半分も埋まっていなかっただけに、本作は初日などはあまりにも席が埋まっていたことから、筆者はてっきり入るシアターを間違えてしまったか? と誤解してしまったほどであった(爆)。


 もちろん、新世代ウルトラマンたちやレジェンドヒーロー・ウルトラセブンの華麗なる競演なども、客寄せ効果としてはあっただろう。魔女ムルナウを演じたのが、近年人気のお笑いタレント・椿鬼奴(つばき・おにやっこ)であったことから、各バラエティ番組などでも多少は宣伝してもらえたといった理由もあるだろう。


 しかしながら、それら以上に大きいことは、『ウルトラマンギンガ』(13年)で地上波の放映が復活して以降、『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年)・『ウルトラマンX』(15年)・『ウルトラマンオーブ』(16年)と、実に4年連続で新作テレビシリーズを製作することによって、子供や若いファミリー層の間でも改めてウルトラマンが定着してきたことの賜物でもあっただろう!


 4年間といえば、


●特撮マニア人気が絶大だった平成ウルトラ3部作である『ウルトラマンティガ』(96年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19961201/p1)・『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)・『ウルトラマンガイア』(98年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19981206/p1)の3年間
●逆にウルトラの商品的価値の凋落(ちょうらく)が深刻になり始めた、『ウルトラマンネクサス』(04年)・『ウルトラマンマックス』(05年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060311/p1)・『ウルトラマンメビウス』(06年)の3年間


 これらのシリーズ3年連続放映をすでに上回っているのである! それどころか、第1期ウルトラシリーズである『ウルトラQ』・『ウルトラマン』・『ウルトラセブン』の連続放映をも上回っており、ウルトラマンが幼児のみならず小学生にも人気があった時期であった昭和の第2期ウルトラシリーズである『帰ってきたウルトラマン』(71年)・『ウルトラマンA』(72年)・『ウルトラマンタロウ』(73年)・『ウルトラマンレオ』(74年)のロングランに匹敵しており、しかもウルトラシリーズの一時休止といった気配も見えないのだ!


 もちろん、現在のウルトラの商品的価値から来る円谷プロの予算調達能力の限界から、かつてのような1年間の放映ではなく、近年の作品は実際には約半年間だけの放映にとどまってはいる。


 だが、それでも新世代ウルトラマンシリーズは、昭和の第2期ウルトラシリーズの4年間の連続放映記録を超えて、今年2017年度で早くも5年目に突入するのだ! 毎年夏になれば「ウルトラマン」の新作が放映されるものとして、我々が当然のように期待できる状況が、すでに形成されているのである!


*「ゼロがオーブの力をお借りします!」


 本作でのすべての事件が解決したあとに、別次元の世界からウルトラマンゼロはようやく戻ってくるというボケをかましていた(笑)。しかし、ウルトラマンゼロはこの地球に怪獣デザストロが迫っていると警告して、ガイに協力を求めた!


 このデザストロという、劇中では名前のみが語られた怪獣は、前作『劇場版ウルトラマンX』のラストでもその存在が語られていた。『X』と『オーブ』の両作の世界観につながりを持たせることでワクワクとさせることもまた、子供たちの小学レベルでの怪獣博士的な知的・SF的な好奇心(笑)を子供たちや特撮マニア諸氏に喚起させるものでもあって、実に好印象である!



 そして、この映画の真のラストで、その横顔が大きく映し出されたウルトラマンオーブの新たなる姿! それは、頭頂部のトサカがひとつであるセブンと、頭頂部のトサカがふたつであるゼロの頭部、その両方を合わさて、トサカが3つになっていた!


 これは『ウルトラマンオーブ』の放映が終了して、つづけて同放映枠にて2017年1月から放映中である、ウルトラマンゼロが登場した映画・ビデオ作品・短編シリーズを半年にわたって再放送していくテレビ番組『ウルトラマンゼロ THE CHRONICLE(ザ・クロニクル)』(17年)の枠内にて、20174月15日から放映される短編シリーズ『ウルトラファイトオーブ 親子の力、おかりします!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1)に新たに登場するらしい、セブンとゼロの力を併せ持ったウルトラマンオーブの新形態・エメリウムスラッガー(!)の登場告知でもあったのだ!


 東映の特撮変身ヒーロー番組やアメリカのアメコミヒーロー映画などでも2000年代末期以降は実践されてきた、個々の作品が独立して存在しつつも、同一の世界を舞台として、ゆるやかな連続性なども持たせることで、子供たちやマニア諸氏にその作品や作品世界そのものにも興味・関心を持続させていくための手法となっているのだ! こういった手法こそが、「ウルトラマン」をまさに「シリーズ」として未来永劫(みらい・えいごう)に継続させていくための、最大の「力」となるのではなかろうか!?

2017.3.20.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2017年GW号』(17年4月30日発行)~『仮面特攻隊2018年号』(17年12月30日発行)所収『劇場版ウルトラマンオーブ』合評より抜粋)


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  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1

『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17年) ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1(当該記事)

ウルトラファイトオーブ』(17年)完結評 ~『オーブ』と『ジード』の間隙ほかを繋ぐ年代記的物語!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1

ウルトラマンジード』(17年)序盤評 ~クライシス・インパクト! 平行宇宙のひとつが壊滅&修復! その原理とは!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1

ウルトラマンジード』(17年)中盤総括 ~Wヒーロー・特オタ主人公・ラブコメ! 希代の傑作の予感!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1

ウルトラマンジード』(17年)最終回「GEEDの証」 ~クライシスインパクト・幼年期放射・カレラン分子・分解酵素・時空修復方法はこう描けば!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1

『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』(18年) ~新アイテムと新怪獣にも過去作との因縁付与で説得力!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1

『ウルトラギャラクシーファイト』(19年) ~パチンコ展開まで前史として肯定! 昭和~2010年代のウルトラマンたちを無数の設定因縁劇でつなぐ活劇佳品!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1

ウルトラマンタイガ』『ウルトラギャラクシーファイト』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1

ウルトラマンZ(ゼット)』序盤総括 ~巨大ロボ・セブンガー大活躍! 「手段」ではなく「目的」としての「特撮」!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1


[関連記事] ~ウルトラシリーズ劇場版

ウルトラマンUSA』(89年) ~日米合作80年代アニメ!

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ウルトラマンティガウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』(98年) ~合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971206/p1

ウルトラマンティガウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』(99年) ~合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1

ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY(ファイナル・オデッセイ)』(00年) ~賛否合評・万人が超人たりうる一般性を宿命性の物語に回帰させた是非!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1

『劇場版 新世紀ウルトラマン伝説』(02年) ~今こそ昭和のウルトラ兄弟が復活するべきだ!

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ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟2』 ~東光太郎! 幻の流産企画!

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『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年) ~岡部副社長電撃辞任賛否!

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ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年) ~大傑作!(なのに不入りで暗澹たる想い・汗)

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ウルトラマンサーガ』(12年) ~DAIGO・つるの剛士杉浦太陽AKB48・昭和OB投入の是非!

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ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』(13年) ~ジュブナイルじゃない!? アイテム争奪コント劇! 「見せ場」重視!

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『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17年) ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!

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『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』(18年) ~新アイテムと新怪獣にも過去作との因縁付与で説得力!

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『劇場版オーブ』評! ~オーブトリニティーが『ギャラファイ3』に登場記念!
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『劇場版ウルトラマンオーブ』賛否合評! ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!
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