『ウルトラマンタイガ』序盤総括 ~冒頭から2010年代7大ウルトラマンが宇宙バトルする神話的カッコよさ! 各話のドラマは重めだが豪快な特撮演出が一掃!
『ウルトラマンタイガ』中盤評 ~悩めるゲストのみならず、ボイスドラマでの超人たちのドラマも本編に導入すべきだ!
『ウルトラマンタイガ』最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?
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ウルトラマンシリーズの正統番外編であるネット配信『ウルトラギャラクシーファイト』(19年)の第2弾『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)が、2021年5月26日(水)にBD&DVD発売記念! そして、同作にウルトラマンタイガも登場記念! とカコつけて、『劇場版ウルトラマンタイガ』評をUP!
『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』 ~ヒーロー大集合映画だが、『タイガ』最終回でもあった!
(松竹系・2020年8月7日(金)公開)
(文・久保達也)
(2020年8月31日脱稿)
*超豪華! 12人ものウルトラマンが大集結!!
『ウルトラマンタイガ』(19年)の後日談の『劇場版』として本来2020年3月6日(金)に公開されるハズだった映画『劇場版 ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年・松竹)が、後述する事情で公開延期の憂(う)き目に遭(あ)い、2020年8月7日(金)にようやく公開された。
近年のウルトラマンシリーズの『劇場版』は、直前作のウルトラマンのみがメインゲストであり、新旧2大ヒーロー共演ものではあっても先輩ヒーロー大集合! といった感じの特大イベント性が高い『劇場版』ではなかった。
現役ヒーローの大ピンチに、ヒーローの変身前の役者さんも大挙登場して、彼らの変身ポーズや変身シーンも見せてくれるような、コアな特撮マニアのみならずライト層や一般大衆も観たいであろうヒーロー大集合映画の実現については、2010年代以降の東映製作の特撮変身ヒーロー大集合映画に一歩も二歩も円谷プロ製作のウルトラマン映画では出遅れていた。ウルトラシリーズのマニア諸氏も「東映に比べて円谷は……」との忸怩(じくじ)たる想いとともに、大勢がもうそろそろ巨悪に対して2010年代以降のウルトラマンたちが結集して立ち向かう! といった「ヒーロー大集合映画」の登場を、内心では待望していたところでもあっただろう。
しかし本作では、『ウルトラマンメビウス』(06年)以来、長らく途絶えていたテレビ放映のウルトラシリーズを、ひさしぶりに毎年放映可能な製作体制で樹立した『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)以降、直前作『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)、そして本作『ウルトラマンタイガ』までのウルトラシリーズ7作品に登場した主役格のニュージェネレーションウルトラマンが全員登場してようやく勢ぞろいしたのだ!!
●ウルトラマンギンガ
●ウルトラマンビクトリー
●ウルトラマンエックス
●ウルトラマンオーブ
●ウルトラマンジード
●ウルトラマンロッソ
●ウルトラマンブル
●ウルトラウーマングリージョ
●ウルトラマンタイガ
●ウルトラマンタイタス
●ウルトラマンフーマ
そして、タイガの父で昭和の時代のウルトラマンであるウルトラマンタロウも含めて、合計12人ものウルトラマンが登場するのだ!
しかも、本作では「声の出演」のみでなく、ウルトラマンギンガに変身する礼堂ヒカル(らいどう・ひかる)からウルトラマンタイガに変身する工藤ヒロユキ(くどう・ひろゆき)に至るまで、変身前の主人公を演じた役者さんが全員出演する快挙も成し遂げた!――ただし、湊アサヒ(みなと・あさひ)=ウルトラウーマングリージョを演じた其原有紗(そはら・ありさ)は登場せず、グリージョの声のみを担当されている――
もちろん本作の企画は、平成仮面ライダーシリーズの年末年始の新旧2大ヒーロー競演映画が興行的にも長期低落傾向にあった中で、直前作の仮面ライダーのみでなく、過去数作品の仮面ライダー複数名を変身前の役者さんも含めて客演させる方向性に舵を切って、華やかさやイベント性や物語やバトルのスケールも拡大させて、そのタイトルも『仮面ライダー×仮面ライダー』シリーズではなく、『仮面ライダー平成ジェネレーションズ』シリーズに改めたことで、興行収入も右肩上がりに急増していった先行の成功例にならっての企画であったことは、まずは間違いないだろう――加えて、製作会社・円谷プロ側の主導ではなく、玩具会社・バンダイ側からの売り上げ増が見込める商品点数を増やせるゆえの要望だったためかもしれない!?(笑)――
そういう意味では後追いのモノマネ。二番煎じの企画ですらある。しかし、アメコミ(アメリカンコミック)ヒーローが大集合する映画『アベンジャーズ』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1)シリーズや映画『ジャスティス・リーグ』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171125/p1)に、女児向けアニメ『プリキュア』シリーズの歴代プリキュアが大挙登場する映画『プリキュア オールスターズDX(デラックス)』(09年)シリーズ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201227/p1)など、世界でも日本でも「ヒーロー大集合映画」の企画がここ10年ほどは途切れることなく今でも続いているではないか!?
70年代~00年代初頭の日本の特撮評論では、シリーズ化やそれに伴うヒーロー共演自体が、ヒーローの神秘性・唯一絶対性を損なう「悪」とされていた時代があった(汗)。今さらではあるのだが、その論法は間違いですらあり、むしろ世界でも日本でも、そして昭和の時代でも、子供たちだけでなく人々は、時に巨悪に対しては作品を越境してヒーローたちが一致団結して立ち向かう! といった作品に興奮を覚えてきたのだ。
つまりそれは、ウルトラマングルーブに変身する際の掛け声である
「まとうは真(まこと)! 普遍の真理!!」
もとい(笑)、「普遍の心理」「普遍の真理」ですらあり「普遍の方法論」でもあったのだ!
*『タイガ』の「多文化・共生テーマ」を象徴するマグマ星人の大活躍!
さて、テレビシリーズの『ウルトラマンタイガ』では地球人・宇宙人・アンドロイド・ウルトラマンなどさまざまな生命体の共存がテーマとして描かれていた。それはそれでその志(こころざし)は高かったのかもしれない。
しかし、映画『劇場版 ウルトラマンR/B セレクト! 絆(きずな)のクリスタル』(19年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)でデビューを飾り、Web(ウェブ)ドラマ『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)でも継続して悪役として登場したレギュラー悪・ウルトラマントレギアにそそのかされ、地球での平和な暮らしを望んでいたゲスト宇宙人が悪へと落ちる話があまりに多かったために、個人的には正直今ひとつの印象を感じていたものだ。
――暗殺宇宙人ナックル星人・触覚宇宙人バット星人・幽霊怪人ゴース星人など、昭和のウルトラシリーズでは凶悪だった宇宙人が、そんな善人の役回りを与えられていたあたりも、その宇宙人種族の全員が悪人ではない! あるいは、その並行宇宙では種族まるごと侵略宇宙人には進化しなかった! といった、まさに多様性の体現といったねらいがあったのかもしれないが、個人的には彼らには常に悪党であってほしかった(笑)――
ただし、最終回(第25話)『バディ ステディ ゴー』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210606/p1)ではそのテーマの結晶として、悪の宇宙人の犯罪組織=ヴィラン・ギルドに所属していたサーベル暴君マグマ星人と宇宙商人(あきんど・笑)マーキンド星人が、地球に迫りつつあった危機を前にそれまで敵対していた民間警備組織・E.G.I.S.(イージス)とも協力・共闘して、そのまま就職するに至っている。
つまり、今回の『劇場版』では、導入部でマグマ星人とマーキンド星人がE.G.I.S.の一員として描かれることで、テレビシリーズの続編であることが存分に示されてはいるのだ――実際の製作過程においては、『劇場版』の脚本が先行しており、最終回でのそれらの描写は『劇場版』でのそれを逆に取り入れた可能性も高いけど(笑)――。
特にマグマ星人は、E.G.I.S.の実働部隊としてヒロユキや正体は宇宙人である宗谷ホマレ(そうや・ほまれ)隊員とともに、「バラージの青い石」を博物館から強奪(ごうだつ)した三面怪人ダダが率(ひき)いる一団と対戦し、ホマレをダダの攻撃からかばって負傷するさまが描かれて、しかもホマレがマグマ星人を見舞いに行こうと主張する描写まであり(!)、そのキャラの立ち位置が完全に逆転していた。
――「バラージの青い石」はもちろん、初代『ウルトラマン』(66年)第7話『バラージの青い石』で砂漠の街・バラージを長年に渡って磁力怪獣アントラーから守ってきたアイテムが元ネタである――
トレギアにそそのかされて悪へと転じたゲスト宇宙人たちよりも、もともとは「悪」だったキャラクターが「正義」側へと転じたマグマ星人のシチュエーションの方が、はるかに感情移入できるよなと実感したほどに(笑)、この場面は映画のツカミとしてもテレビの『タイガ』の続編としても有効に機能しているのだ。
三面怪人ダダも、同族の別個体が『ウルトラマンジード』(17年)第18話『夢を継ぐ者』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)で搭乗していた、全身にダダと同じく黒白のシマ模様で塗装されたロボット怪獣レギオノイド・ダダカスタマイズ(の同型機という設定である同じ着ぐるみの流用・笑)で夜の市街地を破壊しまくってくれたのも、実にうれしいサプライズだった。
――もちろんこのレギオノイド自体も、元々は映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE(ザ・ムービー) 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)に登場した悪のウルトラマンことウルトラマンベリアルが建国したベリアル銀河帝国の量産型ロボット兵器だ!――
そして、このダダカズタマイズとの、ウルトラマンタイガ → ウルトラマンタイタス → ウルトラマンフーマ と3段変身をとげていくヒロユキとの戦いが描かれたことにより、その後の展開に期待をふくらませずにはいられなかったものだ。
いやホントにこのダダカスタマイズ。劇場限定ソフビなどで出してほしかったものだけど、今はこういうキャラの商品化はお金持ちのマニアを対象にしたプレミアムバンダイくらいにしか期待できないのか?(苦笑)
*ピンチの度に次々と集結してくる先輩ヒーロー!
●ヴィラン・ギルドのアジトに単身潜入したE.G.I.S.の女社長・佐々木カナの危機には、クレナイ・ガイ=ウルトラマンオーブが!
●テレビシリーズ終盤で正体がアンドロイドと判明したオペレーターの少女・旭川ピリカ(あさひかわ・ぴりか)が機能が狂って踊りつづけるや、大空大地=ウルトラマンエックスが!
●湊カツミ(みなと・かつみ)=ウルトラマンロッソからの警護の依頼を受けたヒロユキが屋外のマーケットに出向けば、そこに出店(笑)していた湊イサミ=ウルトラマンブルと朝倉リク=ウルトラマンジードが!
●本作のメイン怪獣である邪神魔獣グリムドに敗れたヒロユキが宙から転落するや、彼をガッシリと受けとめるショウ=ウルトラマンビクトリーと礼堂ヒカル=ウルトラマンギンガが!
メインキャラの周囲に次々と「強者」が集結していくさまは、本作と同じく近年の仮面ライダー役者を揃えることでおおいに盛り上がり、興行的にも大成功した映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL(ファイナル) ビルド&エグゼイド with(ウィズ)レジェンドライダー』(17年・東映・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171229/p1)のそれには及んでいないという点では、もっと大きなピンチに際しての助っ人参戦であった方がより盛り上がったであったろうに! といった想いは残るものの(汗)、それらの「ヒーロー大集合映画」と同趣向の作劇ではあったのだ。
しかし、ガイがカナ社長をお姫さまダッコ(笑)してカナの足を利用して宇宙人を蹴散らすさまは、『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)でもヒロインの夢野ナオミを同様のシチュエーションで救っていた描写が何度か見られたものではあったし、坂本浩一監督回のアクション演出ではよく見られる男女のペアダンス(爆)によるギャグ的なアクションの応用のようでもあり、ガイのワイルドな風来坊らしさも巧(たく)みに見せつけた演出だったといえるだろう。
アンドロイドであるピリカの不調を、『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)では防衛組織・Xio(ジオ)の研究開発セクション・ラボチームに所属していた理系男子の主人公・大地が修理するのもまたしかりである。ピリカがラストシーンでもタイガに「大地さんによろしく」と語っていたほどにテレビシリーズでは見せることのなかった恋愛感情が初めて描かれたのも、『タイガ』のヒロインであるピリカを立てつつ、そのお相手が理系男子だというあたりで、それらしくて妥当だろう。
ちなみに、『X』のXioには健啖(けんたん)宇宙人ファントン星人のグルマン博士が所属していたが、本作ではピリカとホマレがヴィラン・ギルドの情報を得ようとして訪問した先はグルマン博士とは別個体であり(着ぐるみ自体はもちろん同一・笑)、『タイガ』第4話『群狼(ぐんろう)の挽歌(ばんか)』にゲスト出演した方のファントン星人であり、彼を見て一瞬戸惑うもグルマン博士とは別人だと即座に無言で判断する、大地の表情演技が描かれていたのもまたよかった。
さらに、本作のメインゲスト怪獣である魔獣グリムドに苦戦するウルトラマンタイガ・ウルトラマンロッソ・ウルトラマンブルを助けるために、颯爽(さっそう)と並行宇宙まで超えてM78星雲・光の国から駆けつけたものの、逆にグリムドの魔力によって「闇堕(やみお)ち」してしまったウルトラマンタロウと敵対することとなって悩むウルトラマンタイガ=ヒロユキ! 彼を励ますことができる役回りは、これはもうタイガと同様に実の父であるウルトラマンベリアルと戦わざるを得なかったウルトラマンジード=リクが一番適切なのである! それぞれのキャラ設定を適格に活かすことで観客を感激させる作劇が存分に発揮されていたといえよう。
一方、『ウルトラマンギンガ』当時はまだ高校生であり、ファンの方々には申し訳ないが個人的には常にニヤけたチャラ男(汗)という印象が強かったヒカルは、まぁ演じる根岸拓哉(ねぎし・たくや)自身が年齢を重ねたことが大きいのだろうが、本作ではニュージェネレーションウルトラマンのリーダーとしての風格を感じさせる精悍(せいかん)な表情も見せていてカッコよかった。
1970年代の小学館の学年誌などの毎号のウルトラシリーズ特集記事の成績記事(笑)などでは、当時の最新現役や直近のヒーローが高く採点されて、原点の初代ウルトラマンの成績が相対的に悪かったり、映像本編にてウルトラ兄弟が全員集合した際にも真っ先にヤラれてしまったりして、一番の先輩格であるハズなのだから相応に強いハズだろうと思うのに、そうは描かれてはこなかったことで子供心にもガッカリしたものだ。おそらく、そういった子供たちこそ感じてしまうような欠点を先回りして、2010年代最初のウルトラマンであるギンガこそ一番頼もしく描いてみせていたのだろう! これも正解である!
そのヒカルによる
「行こうぜ~~!」
を掛け声を合図に、変身前のニュージェネヒーローが横並びでいっせいに同時変身をとげて、変身バンクが連続して炸裂する描写こそ、子供たちも観客も最も観たかった場面だろう! ヒーロー名を叫ぶだけなど、ワリとシンプルな変身方法のヒカル・ショウ・大地・ガイに対して、
リク「ジ~ッとしてても、どうにもならねぇ!!」
カツミ&イサミ「オレ色に染めあげろ! ルーブ!!」
などと変身時に長々とした前口上(まえこうじょう)まで口にするのも、マニア的には2010年代のウルトラシリーズも長期にわたったことによる変身演出の変遷、そしてそれらの優劣ではなく全肯定をここに感じてしまうのだ!
変身を果たしたニュージェネウルトラマンたちが、斜め前方向から撮った映像でご都合主義にも律儀に様式美的に順番に(笑)、ズシーーン!! とひとりひとりが着地していくさまが重厚感を強調したスローモーション映像で描かれる演出もまた、ウルトラマンたちを有象無象のその他大勢ではなく個々人としても、その巨大超人としての存在感を高めさせている。
*待ってました! 再生怪獣軍団!!
そして、本作で特筆すべきは、ウルトラマントレギアや魔獣グリムドのみならず、
●最凶獣ヘルベロス
●毒炎怪獣セグメゲル
●悪夢魔獣ナイトファング
●惑星守護神ギガデロス
●雷撃獣神ゴロサンダー
で構成された再生怪獣軍団が登場したことだろう!
近年のウルトラマン映画では等身大サイズの宇宙人軍団を登場させることで、レギュラーの登場人物たちを人間ドラマのみならずアクション面でも活躍させる、東映の等身大の特撮変身ヒーローにも通じる演出がなされている。
自身の幼少時を振り返ってみても、30分枠の前半ことAパートでも敵怪人との前哨戦を繰り広げる東映特撮変身ヒーローものを、それらのシーンになるとワクワクとして観ていたものだ。本編の人間ドラマ部分になると退屈してしまうであろう幼児たちの心をゲットするためにも、毎回といわず時折りの各話でこの手法を「ウルトラ」にも導入してみせたことは正解だったと思うのだ!
本作でもヴィラン・ギルドの構成員として、先述したダダ以外にも、
●策略宇宙人ペダン星人
●宇宙帝王バド星人
●暗黒星人シャプレー星人
●宇宙怪人ゼラン星人
といった、筆者のようなロートルには子供のころから馴染み深い昭和のウルトラ宇宙人たちのほかに、ウルトラシリーズのマニア、かつての怪獣博士少年としてはあるまじきことだけど(汗)、平成や21世紀以降の登場した一見では名前も出自となる作品もわからないようなウルトラ宇宙人たちが多数登場している。
だが、本作のような大所帯の再生怪獣軍団となると、たとえば、
●ウルトラマンゼロの相手として、悪の黒いウルトラマンことウルトラマンベリアル!
●ウルトラマンメビウスには、暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人!
●ウルトラマンティガとウルトラマンダイナとウルトラマンガイアには、彼らが過去に対戦した強敵怪獣5体が合体した超合体怪獣ファイブキング!
といった因縁の相手をぶつけていた、映画『劇場版 ウルトラマンギンガS(エス) 決戦! ウルトラ10勇士!!』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)以来のこととなるのだ。
『ギンガ』ではじまった2010年代のテレビシリーズの当初は、新規造形の怪獣の登場は第1話や最終回が中心で、円谷プロの倉庫に眠っている過去怪獣の着ぐるみの再利用が中心だった(汗)。しかし、次第に売上が増えることで予算も増やすことができるようになっていき、作品を重ねるごとに新規にデザイン・造形される怪獣が増えていった。『タイガ』に至っては、それら新怪獣だけでも立派に再生怪獣軍団を構成できる数に至ったこと自体が実に喜ばしい!
ただし、怪獣の数のことばかりではない。
●『タイガ』第1話に登場したヘルベロスと、ニュージェネ最初のウルトラマンであるギンガとビクトリーが対戦!
●コミカルなゴロサンダーとは、やはりコミカルなロッソ&ブルの兄弟(笑)が戦うようなマッチメイク!
●当初は優勢だったニュージェネウルトラマンたちだったが、魔獣グリムドの超能力によって強化された怪獣軍団によって劣勢となるようなシーソーバトル!
これらによって怪獣軍団が決してにぎやかしなだけ、ましてや昭和の時代にあった「再生怪獣は弱い」といった常識(爆)をくつがえすだけの確固とした存在感が示されていたこともやはりうれしいのだ!
再生怪獣軍団に取り囲まれたニュージェネウルトラマンたちが一斉攻撃を受けて炎に包まれるさまが、上空から市街地を俯瞰(ふかん)して描かれる!
しかし、その炎の中から、
●ギンガとビクトリーが合体したウルトラマンギンガビクトリー!
●ウルトラマンエクシードエックス ベータスパークアーマー!
●ウルトラマンオーブ オーブトリニティ!
●ウルトラマンジード ウルティメイトファイナル!
●ウルトラマングルーブ!
といった、かつてそれぞれの『劇場版』で披露された各ヒーローの最終&最強フォームが登場する!!
並みクラスの怪獣相手にではなく、それらを超越した強敵の猛攻による大ピンチに際しては、最強形態に変身してみせることも合理的で必然性も生じてきて、とてもうれしいのだ!
それとは逆に、今度はニュージェネウルトラマンの最強形態に取り囲まれた再生怪獣軍団が、ウルトラマンたちの必殺光線の一斉発射で燃えあがるさまを俯瞰して描いた特撮演出もまた、実に係り結び的に対比が効いていた!
弱い怪獣たちを倒しても大きなカタルシスはあまり生じてこない。強い怪獣を倒してみせるからこそ、それを上回るヒーローの強さも感じられてカタルシス・爽快感も倍増するのだ! ニュージェネウルトラマンのカッコよさを最大限に盛り上げる役目を、本作の再生怪獣軍団たちは立派に果たしたのだった!
*トライスクワッド、そして3大ウルトラマン合体の感動が再び!
さらに、本作ではウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマの3人が、主人公・ヒロユキの体を長らく借りている間に、ヒロユキの力なしでもそれぞれが単独で実体化できるようになるまでに回復したとした!――このへんは伏線なしだったのでご都合主義だし(笑)、テレビシリーズの終盤でこそ実現してほしかったネタでもあるけど(汗)――
「われら、トライスクワッド!」
テレビシリーズではついに描かれなかったタイガ・タイタス・フーマのそろいぶみ・共闘が、クライマックスバトルで実現したのも感動的だった。
72分という短い尺で多数のキャラを登場させているワリには、本作では先述した導入部のバトルをはじめ、半透明で人間大サイズやミクロ化した姿となっている、テレビシリーズ序盤でもおなじみだったタイガ・タイタス・フーマのコミカルなやりとりも、意外に多く点描(てんびょう)されている。
テレビシリーズ序盤では、これらの3人のコミカルな描写こそが若い特撮オタクたちを『タイガ』に注目させて、作品カラーも明朗にさせたのにもかかわらず、シリーズ中盤以降ではこれらの点描が前面には出てこなかったことも、『タイガ』の人気・勢いが失速した一因だっただろう。そのことを思えば、やはり子供向けかつ、現代的な大衆向け娯楽活劇作品、そして特撮変身ヒーロー番組としても、タイガ・タイタス・フーマのコミカルなやりとりこそ、もっと前面に押し出すべき要素だったのではなかろうか!?
テレビシリーズの中盤では、タイガ・タイタス・フーマのみならず地球人のヒロユキの合計4人が合体したという設定で、彼らの最強形態であるウルトラマンタイガ・トライストリウムが登場していた。
本作のクライマックスでは、そのトライストリウムに全ニュージェネウルトラマンが力を結集して、合計11人のウルトラマンが合体したことで、新ヒーロー・ウルトラマンレイガが誕生する! タイガのやや横長の黄色い目・頭部・目の周囲のヘコみ部分を継承して、両耳のツノは廃したデザインだ!
ニュージェネウルトラマンたちがトライストリウムのツノにその力を結集させる場面は、ゾフィー・初代ウルトラマン・ウルトラセブン・ウルトラマンジャック・ウルトラマンエースのウルトラ5兄弟が、ウルトラマンタロウの両耳にあるウルトラの父ゆずりのツノ・ウルトラホーンに力を結集させつつ合体したことで、タロウがスーパーウルトラマンと化した映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹)の再現だ! とネット上では狂喜する声も多い。
それはたしかにそうだし、個人的にも感動させてもらった。しかし、それ以前に『ウルトラマンタロウ』第25話『燃えろ! ウルトラ6兄弟』でも、宇宙大怪獣ムルロアが吐いた黒煙に包まれた地球を救うために、タロウがウルトラ5兄弟とウルトラ6重合体(!)で身体密度を上げて、ウルトラタワーに安置されたウルトラベルを取り出す場面があったことを、細かいところにこだわるマニアの皆さんのことだから決して忘れているワケではないのだろうし、後続世代の皆さまにとっては『ウルトラマン物語』でのウルトラ6重合体の方が印象深いのだろうけど、ホントウの原点である『タロウ』第25話についてもちょっとだけでもふれてあげてください(笑)。
しかし、2000年代初頭くらいまでは主流を占めていた、守旧的な特撮マニア間ではしきりに云われていた「ヒーローはひとりで戦うべきだ!」などといった主張に至っては、まったく見られなくなっている! ヒーロー競演を大喜びする声であふれている今日は、昭和のウルトラ兄弟の設定さえ全否定をするマニアが多かった時代と比すれば、個人的には天国である!
『タイガ』の世界の地球から去っていくために、空に飛び上がったニュージェネウルトラマンたちが旋回して、地上に近づいてきてカメラ目線(笑)で観客にあいさつする、ウルトラマンの「神秘性」よりも「親しみやすさ」を強調した描写などは、まさに今の時代のヒーローにはとてもふさわしい演出だろう。
*最後まで語られることがなかった、トレギアとタロウの因縁についてはいかがなものか!?(汗)
さて、ここまで百花繚乱(ひゃっか・りょうらん)で実に見せ場にあふれている本作だが、個人的には先述した映画『劇場版 ウルトラマンギンガS』や、映画『劇場版 ウルトラマンX きたぞ! われらのウルトラマン』(16年・松竹)、映画『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)などに比べて、その完成度は今一歩という感がある。その原因はいったい何なのか? 順に考察してみたい。
まず、ウルトラマンタロウのかつての親友で、青いウルトラマンことウルトラマンヒカリらと同じく光の国の科学者だったが、闇堕ちするに至ったウルトラマントレギアとその旧友・ウルトラマンタロウとの因縁に関してである。本作は『タイガ』の「完結編」であるのにもかかわらず、今回もトレギアがナゼにそこまでタロウへの復讐に執着するのかが、いっさい明かされることはなかったのであった。
導入部とタイトルにつづいて、かつて魔獣グリムドが封印されていた宇宙遺跡ボルヘスの墓場にタロウが現れ、トレギアが
「かつてはこんな場所をよく探検したな」
などとタロウに語りかける描写があった。両者の関係性が示されるのはホントにそれだけ(汗)。
いったいトレギアとタロウの間に過去に何があったのか? タロウの何がそんなに気に入らないのか?
もちろん、タロウへの嫉妬や対抗意識だとはだいたい想像はつく(笑)。しかし、それをお約束でも具体的なセリフとしてトレギアにしゃべらせなければ、ドラマ的にも盛り上がらないではないか!?
ここで比較例として挙げられるのが、やはり悪のウルトラマンであったウルトラマンベリアルである。彼はかつてはウルトラの父の戦友であり、3万年前のウルトラ大戦争でウルトラの父とともに大活躍した功績もあった。しかし、宇宙警備隊の初代隊長にウルトラの父が任命されたことでプライドが傷つけられる。
さらなる強大な力を求めて、光の国の人工太陽・プラズマスパークのコアを奪おうとして光の国を追放されてしまった。あげくの果てに、復讐しようと怪獣軍団を率いて光の国を襲撃しようとするも、ウルトラマンキングによって宇宙牢獄に投獄されてしまう!
そういった経緯が、初登場作品の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)ではしっかりと語られていたのだ。
『ウルトラマンオーブ』のレギュラー悪であり、『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)では「正義にめざめた」――ウソつけ!(爆)――として、地球防衛軍日本支部のロボット部隊・ストレイジのヘビクラ・ショウタ隊長として活躍することで、その人気が再燃中のジャグラス・ジャグラーも比較対象としてふさわしい。
彼はかつてはガイと同様に光の勢力に身を置いて、ガイとは良きライバルの関係にあった。しかし、その力自体はガイよりも上であったのにもかかわらず、ガイがウルトラマンとして選ばれたことを恨んで闇の力に魅せられるようになった発端(ほったん)の物語が、『オーブ』放映終了直後に配信されたWeb(ウェブ)ドラマ『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA(ジ・オリジン・サーガ)』(16年)などで後付けでも描かれていた。
むろん、無料で観られるネット配信ドラマなので、その作品を大勢が観ていたワケではなかったが、そのことがネット情報やネット世論などでも喧伝されてきたし、もっと云えば『オーブ』本編を観ていても、ガイとは旧知の関係でそのような過去を遠回しに匂わせてもいたから、幼児はともかくふつうのリテラシー(読解能力)があれば、小学生でもそのへんのジャグラーの行動動機は腑に置いてきたことだろう(笑)。
本作と同時期に放映中である『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)のレギュラー敵幹部・ガルザも比較対象にできる。魔進戦隊のパワーの源泉でもある宝石の国・クリスタリアの王でもあった兄のオラディンよりもその能力は優れていたにもかかわらず、次男であったために兄のオラディンの格下となることに反発して、彼は敵組織・ヨドンヘイムの将軍となったことが、感情移入を惹起するかたちで描かれてもいたのだ。
ウルトラマンベリアルもジャグラス・ジャグラーもガルザも、そうした因縁がていねいに描かれることでキャラクターとしての厚みが増し、敵役ながらもその動機におもわず同情の余地を感じてしまうほどに、観客や視聴者の感情移入を誘っていたのだ。
だが、トレギアは最後の最後まで、ついにそれが描かれずに終わってしまっていた。いや、厳密にはテレビシリーズ最終展開では、そのようなある意味では通俗的な「私怨」ではなく、もっと大きな「虚無」そのものを行動動機として描くことで、スタッフは意外性をねらっていたのかもしれない。しかし、それは成功していたであろうか? 筆者には成功していたとは思えない。意外性をねらって失敗するよりも、ある意味ではアリがちでも王道ではある、個人の普遍的な「私怨」感情にしておいた方が、トレギアの行動動機にも一本のスジを通せて、しかも視聴者もナットクできたのではなかろうか?
つまり、トレギアは『タイガ』の序盤で登場した際の「ナゾめいたキャラクター」という初期の「ほのめかし設定」のままであり、悪役なりの人物像をじょじょに小出しで描くことで深めるようなこともできていなかったのだ(汗)。
トレギアといえば、人間態の青年・霧崎(きりさき)を演じた七瀬公(ななせ・こう)に対する、やや「静的な演技演出」にも問題はあったと思うのだ。『オーブ』のジャグラス・ジャグラー、『ジード』のSF作家・伏井出ケイ(ふくいで・けい)、『R/B』の愛染マコト(あいぜん・まこと)社長などは、若いマニアいわく「円谷のヤベー奴ら」(笑)とネタにされるほどの人気を獲得できていた。この時流に乗るのであれば、彼にももっと半分は笑ってしまうようなハッチャけたオーバーアクションの悪役演出も必要だったのではなかろうか!?
そこまでいかなくても、タロウやその息子のタイガに対する恨みや韜晦(とうかい)を繰り広げるようになった経緯が、テレビシリーズ本編でも小出しに具体的に描かれていったならば、トレギアに対する印象も全然違ったかと思えるのだ。タロウやタイガへの私怨を前面に出さずに、ただ出てきて各話のゲストを翻弄(ほんろう)しながら戦うだけの、きわめてドラマ性が希薄なキャラとしてトレギアを終わらせてしまったのは、やはりあまりにもったいなかったのではあるまいか?
ちなみに、『ウルトラマンタイガ超全集』(小学館・20年3月25日発売・ISBN:4091051677)には『タイガ』のシリーズ構成を務めた中野貴雄(なかの・たかお)によるトレギアの過去を描いた書き下ろし小説が掲載されているそうだ。プロデューサーやスポンサーもいる以上は、メインライターの一存だけでもテレビシリーズを思い通りにはシリーズ構成はできないのだろうが(汗)、本来のターゲットである子供たちがそんな高価な書籍を手にできるハズもないし、そもそも文章のページの記事などは読まないだろう(笑)。筆者もせめてそこだけ立ち読みしようとしたのだが、近年では「ウルトラ」にかぎらず『超全集』シリーズ自体が、近所の書店では全然売っていない。ウ~ム(汗)。
*悪側に「円谷のヤベー奴ら」(笑)も登場してほしかった!
●『劇場版 ウルトラマンギンガS』では、敵の新キャラとして『ウルトラギャラクシーファイト』にも再登場した超時空魔神エタルガーと、エタルガーによって故郷の星をウルトラマンに滅ぼされたというニセの記憶を植えつけられたアレーナ姫が登場
●『劇場版 ウルトラマンX』では、新怪獣として閻魔(えんま)獣ザイゴーグが、それを封印から解いてしまう張本人としてWeb-TV(ウェブ・テレビ)番組のネタのために世界を探検する男・カルロス黒崎や、ウルトラマンティガに変身をとげるに至る少年・玉城ユウト(たまき・ゆうと)らが登場
●『劇場版 ウルトラマンオーブ』では、かつてオーブとの戦いに敗れて、体の半分を機械化して復活した奇機械宇宙人ガピヤ星人サデスや、美しいものを宝石にして奪う宇宙魔女賊(まじょぞく)ムルナウがメインの悪役として登場
そうした『劇場版』限定のゲストキャラが、本作では怪獣グリムド以外に、本編にも特撮にもいっさい登場しなかった。そのグリムドすらもトレギアと合体しても、その姿は変えずに超巨大化するのみであって、もっとそれらしい強化&最終形態に姿を変えないあたりは、画面に変化が足りなくてイマイチかもしれない。
本作の場合、ニュージェネレーションウルトラマンの変身前の役者を総出演させるために、短い尺の中でこれ以上のキャラを増やすのはたしかに限界だったかと思える。ギャラに使える予算の方だってもう限界に近かっただろう(汗)。また本作のような「お祭り映画」において、ゲストキャラ側の本編ドラマを主軸に描くことは避けて正解だったかとは思える。
ただ、人格のある憎々しげな悪役として登場するのが、いつものトレギア=霧崎のみだったという構図自体もいかがなものなのか? やはり、7大先輩ウルトラマンが変身前の役者さんも含めて勢ぞろいした本作としては、「悪」側にも「善」側と拮抗するだけのボリュームが必要だったのではなかろうか!?
マニア諸氏のほとんど全員が思っていたことではあろうが(笑)、やはりここは、近作の悪役を務めた役者さんたちにも功労賞として、「円谷のヤベー奴ら」(笑)こと、
●ジャグラスジャグラー
●SF作家の伏井出ケイ
●愛染マコト社長
●永遠の17歳(笑)であるらしい美少女・ツルちゃん
彼ら四天王が、その一部は死者をもよみがえらせることができる亡霊魔導士レイバトスの呪術などによって復活! 彼らに往時のままの「強烈な演技」(笑)をふたたび披露してもらえれば、「客寄せ」面でも「善悪のメリハリ」面でも効果絶大だったのではなかろうか!?
個人的には、『タイガ』のセミレギュラーとして登場していた、カナ社長がかつて所属していた宇宙人がらみの事件を扱う警察組織・外事X(がいじエックス)課の警部・佐倉が不在であったのも、やや不満だったりはした。佐倉を演じた風見しんごは、映画『ウルトラQ(キュー) ザ・ムービー 星の伝説』(90年・松竹)の戸川一平役を皮切りに、『ウルトラマンコスモス』(01年)の『劇場版』や、映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(06年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)、映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1)などのウルトラマン映画に多数出演してきただけに、出演交渉は容易に思えたのだが、やはり製作予算やギャラがネックになったのだろうか?(汗)
*地球の危機なのだから、市民のエキストラも必要!
さて、不在といえば地球最大の危機がおとずれて、これまでに何度も地球の危機を救ってきたニュージェネレーションウルトラマンが全員集合しているのにもかかわらず、その場に一般市民の姿が皆無であり、何のリアクションも描かれなかったことも正直残念であった。
仮面ライダークウガから仮面ライダージオウに至る20作品の「平成仮面ライダー」が大集結した映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER(フォーエヴァー)』(18年・東映・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190128/p1)のクライマックスにおいては、メタフィクション的な作品世界ゆえに市民が仮面ライダーたちの存在を知っていた(笑)。彼らのバトルを見守る観衆たちがそれぞれの世代にとっての最も印象深い仮面ライダーに声援を送っていた描写もあった。これによって、観客の代弁者としても劇中内の観衆が盛り上がることで、疑似的な一体感をより強く得られる演出としてもおおいに機能していたのだ!
ウルトラマンジードが実の父であるウルトラマンベリアルの強化形態・ウルトラマンベリアルキメラベロスと決闘を演じた『ジード』第17話『キングの奇跡! 変えるぜ! 運命!!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)においても、市民がジードに声援を送る描写もクライマックスを盛り上げていた。タイガが実の父・タロウと対戦する本作においても、予算面での都合があったのだろうが、そういった描写はほしかったものだ!
『ウルトラマンメビウス』(06年)第1話『運命の出逢い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)のウルトラマンメビウス初登場の場面で、
息子「あっ、ママがむかし見たって云ってた……」
父親「あぁ、ウルトラマンだ!」
などといったやりとりがあったことを記憶されている方々もおられるだろう。本作のような「お祭り映画」こそ、大集結したウルトラマンたちを感慨深く見つめる代弁者としての市民の描写はあった方がよかったと思えるのだ。
近年のテレビシリーズでは都市破壊場面でエキストラが大量に動員されているだけに、この処置は意外だった。とはいえ、平成ウルトラ3部作の時代の『劇場版』でも、実はテレビシリーズよりも映画の方が予算は少ないというスタッフからの声はあったが、そういうことなのだろうか? たとえ1人1日1万円の金額でも「チリも積もれば……」でギャラが問題だったのならば、それこそ「円谷プロファンクラブのみなさま」に声をかければ、ノーギャラで大画面映画にふさわしい大動員が可能だったようには思うのだけど(汗)。
個人的には、各ニュージェネウルトラマンたちが住む並行宇宙を渡り歩いてきたウルトラマンゼロを本作でも登場させてほしかった。ゼロは『タイガ』テレビ本編でも第23話『激突! ウルトラビッグマッチ!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210606/p1)に登場したことで、『タイガ』世界の市民たちにも認知されているし、
「こいつらみんな、こことは違う地球の平和を守りつづけてきたスゲぇヤツらなんだぜ!」
などという調子で、右ヒジから先をグルグル廻して指差しながら(笑)、ゼロがニュージェネの面々を市民に紹介することでウルトラマンたちが大喝采を浴びる! などといった描写をぜひ観たかったものである。
しかし、ゼロが登場してしまうと、場面のすべてをかっさらってしまって、メインゲストであるハズのニュージェネウルトラマンたちも霞んでしまい、本作でのニュージェネ先輩ウルトラマンたちを立ててみせる! といった目的がボヤけてしまった可能性を考えると、スタッフもバカではないのだから(失礼)、本作ではそこまで考えた上で作劇バランス的にも除外してみせたと見るのが妥当だろう。
けれど、エキストラの大量動員が不可能であったのならば、『劇場版 ウルトラマンオーブ』のクライマックスバトルをネットで中継していたレギュラーキャラである怪奇現象追跡サイト・SSP(エスエスピー)の夢野ナオミ・早見ジェッタ・松戸シンが、
「みんなでウルトラマンを応援しよう!!」
「せ~~~のっっっ!!!」
などと観客である子供たちに呼びかける描写で、毎年夏の恒例催事『ウルトラマンフェスティバル』、いや20世紀のむかしからアトラクショーでは付きものだった、子供たちが「がんばれ~~~!!!」と返してみせることで、観客にも映像との一体感をより喚起してみせる演出などもアリだったかもしれない。しかしまぁご承知のとおりで、全世界がコロナウィルスの脅威に包まれているご時世では、基本的には経口感染(けいこう・かんせん)であるので、飛沫による感染防止のためにも、劇場でウルトラマンに声援を上げるなんぞは百害あって一利なしですな(汗)。
ちなみに、このコロナ禍で2020年夏の『ウルトラマンフェスティバル』も中止となり、その代わりとしてYouTubeの円谷プロ公式チャンネル・ULTRAMAN OFFICIAL(ウルトラマン・オフィシャル)では過去のライブステージの傑作選が配信されていた。それらを鑑賞していると、コレはやはりナマで観るにかぎると実感してしまう。
クライマックスバトルに向かうヒロユキを、
「待ってるから……」
などと見送ったE.G.I.S.の面々の描写は実によかった。しかし、それからラストまで彼らがずっと不在となってしまうことも、過剰に気になったワケではないがやや違和感が残った。所詮(しょせん)は警備会社で超兵器を持っていないのだから「共闘せよ!」とまではいわないが、せめてヒロユキらニュージェネウルトラマンの決戦を見守って、声援をひんぱんに送っているような描写は入れてほしかったようにも思うのだ――尺の都合で撮影したけどカットされたのであればゴメンなさい(汗)――。
*「タイガを守るため」という「私」ではなく、「悪と戦い宇宙を救うため」という「公」のためにこそ集結すべきだった!
先輩ニュージェネのヒカル・ショウ・大地・ガイ・リク、そしてカツミ&イサミ兄弟が、皆一様に「ヒロユキが宇宙人たちにねらわれていることを知って地球に駆けつけた」と語っていることも少々違和感があった。あの『タイガ』第1話の冒頭での7大ウルトラマンVSトレギアの宇宙空間での大決戦を思えば、行動動機のスケールがかなり小さくはないだろうか?(笑)
封印を解かれた魔獣グリムドが地球に向かったから! 復活したトレギアが再度何かをたくらんでいるから! といった理由ではなく、タイガと合体しているとはいえ、「ヒロユキ個人がねらわれているから」だという理由では、「公」よりも「私」としての動機で動いているようにも見えてしまうのだ。
ガイやリクであれはそんな「私情」でも似合っているのだが、他のメンツは「宇宙の危機」を動機としていたり、彼ら7人の先輩たちの中にもあるちょっとした「微差」なども描くことで、そのキャラをもう少しだけ描き分けてもよかったのではあるまいか!?
ついでにここに記すけど、ホントウの想いを云ってしまえば、
●ジャグラー襲撃に対してはガイが!
●伏井出ケイの襲撃に対してはリクが!
●愛染社長の襲撃に対しては湊兄弟が!
といったシチュエーションでの彼らの助っ人であれば、本作はもっと盛り上がったことであろう(笑)。
『タイガ』の最終回でタイガがトレギアを倒したことで、実はトレギアの体内に封印されていたグリムドが抜け出しており、ふたたびそのグリムドを宇宙で封印したニュージェネウルトラマンたちが、その代償として変身能力を失ったとする後日談が映像で描かれたこと自体はよかった。
しかし、その変身前の姿である人間たちが変身能力を取り戻すために、第1話の冒頭でタイガ・タイタス・フーマに授けた自分たちの力を「返してくれ」とヒロユキに頼みこむ描写も、やや「ウン?」と思えるものがあったのだ。
『タイガ』第1話の冒頭では、ニュージェネウルトラマンが自分たちのエネルギーをアクセサリー状にしてタイガ・タイタス・フーマに授ける描写があった。だが、それはあくまでも各ウルトラマンの片手間程度のエネルギーにすぎなかったようにも見えたのだ。それが証拠にエネルギーを渡したからといって、彼らは特に弱体化している様相も見せてはいなかった。そんな片手間なエネルギーを返してもらっただけで、グリムド封印で喪失してしまっただろう全身全霊の変身エネルギーまでもが全復活をとげるというのは、その吊り合いが取れていないような気がする(笑)。
タイガによってグリムドの魔力から解放されて以降のタロウにも、見せ場らしい見せ場はほとんどなかった。せっかくウルトラ兄弟が登場してもロクに活躍もせずに危機に陥(おちい)ってばかりだった昭和の第2期ウルトラマンシリーズをここでは悪い意味で継承してしまっているのだ(汗)。
『タイガ』の「完結編」としては、本作はタイガの「父超え」も意識されていたことと思う。それならば父であるタロウの「善」に目覚めてからのカッコよい反撃も相応に描いてこそ、それが助走台となって、そんなタロウをも超えることができた最後の最終最強形態のタイガことウルトラマンレイガのスゴさをドラマ的にも示すことが可能になったのではなかろうか!?
映画『劇場版 ウルトラマンR/B』における同作の主人公の高校時代の同級生を怪獣化してしまったトレギアとの因縁対決を継承して、「トレギアは自分が倒す!」と主張するカツミとヒロユキが対立して、イサミが「まぁまぁ」などとなだめる描写が数回あった。しかし、テレビシリーズの『R/B』では弟のイサミの方がゲストキャラと対立することが多く、兄のカツミが抑(おさ)え役として描かれていた印象が個人的にはあったので、いかに兄のカツミの方がトレギアとの因縁が深いとはいえ、コレも少々引っかかった(笑)。
ヴィラン・ギルドの宇宙人たちに勝利したリクも、幼少時にあこがれていた劇中内での特撮変身ヒーロー番組『爆裂戦記ドンシャイン』のキメポーズを「ドン・シャイン!」と披露していた。彼は特撮オタクだからいつまで経(た)っても卒業できないのはリアルな描写なのかもしれないが、あれから数年は経ったハズなのでややイタい気もした。それもまた「ねらい」だったのだろうが(笑)。
余談になるが、本作のパンフレットは小学館『てれびくん』編集部による編集ではなかった。従来のパンフレットは映画に散りばめられた小ネタに関する詳細な解説が楽しめた。しかし、このパンフレットにはそういった記述がほとんどない。やはりマニア上がりのこだわり編集者が担当しないと、てきめんに誌面のクオリティーが下がってしまうということか!?(汗)
*「別離」も描いて『タイガ』真の最終回としても成立!
そんなワケで本作は良作なのだが、『仮面ライダー平成ジェネレーションズ』シリーズなどのヒーロー大集合映画の大傑作などと比較してしまうと、勝っていたとは云いがたい。
しかし、意表外にも、それまでの2010年代のウルトラシリーズの『劇場版』とは異なり、『タイガ』の真の「最終回」としては成立していたのだ! そして、ヒロユキをはじめとするE.G.I.S.の面々とタイガ・タイタス・フーマとの別れを描いた感動的なラストは、失礼ながら『タイガ』という作品にさほど夢中になっていたワケではなかった筆者ですらも感慨深くさせてくれた。
ショウ=ビクトリー、ガイ=オーブ、リク=ジード、カツミ=ロッソ、イサミ=ブルは変身前の青年主人公と変身後のウルトラマンが完全な同一人格や同一人物であって、視聴者の目線からすればその方が感情移入はしやすいという利点はあるだろう。
ただ、未来の世界からやってきたというウルトラマンことギンガと一体化して、『ギンガ』の最終回で一度は分離したものの、次作『ギンガS』第1話ではふたたびギンガと一体化することとなったヒカル。データ生命体と化した電脳世界のウルトラマンことエックスとユナイト(一体化)した大地。ウルトラマンと人間とが別人格であった彼らの物語の最後で描かれたウルトラマンとの切ない別れも、個人的には捨てがたい。
『X』完結編の『劇場版 ウルトラマンX』ラストでは、エックスと大地をはじめとするXioのメンバーとの涙ながらの別れが描かれていた。そして、エックスが「地球に再び危機がおとずれるとき、私はふたたびやってくる!」と約束していた。云ったそばから、その地球の危機がすぐに来たことで別離は反故(ほご)にされて、アッという間に帰還してくるオチではあったのだが(笑)。
ちなみに、ネット上での本作の感想を読むと、エックスの声を声優の中村悠一(なかむら・ゆういち)ではなく、大地役の高橋健介だけで演じていたことに不満の声が多数あった(笑)。それを云い出してしまうと、昭和ウルトラでも初代ウルトラマン・ウルトラマンジャック・ウルトラマンエース・ウルトラマンジョーニアス、平成ウルトラでもウルトラマンコスモスなども、宇宙人と地球人が合体した二重人格の存在なので、リアルに考えればウルトラマンひとりに対してふたりの人格でしゃべる方が正しい!
しかし、それではストーリー展開が煩雑になってしまうし、『X』を未見の観客は混乱してしまったことだろう。声優のギャラの少しでもの節約なども理由だったのだろう。けれど、たしかにエックスと大地のコミカルなやりとりは『ウルトラマンZ』でのウルトラマンゼットと主人公のナツカワ・ハルキの元祖のようなノリだっただけに、久々にそれを見たかったという意見もわかるのだ。
なお、ウルトラマンエックスの声を演じた中村は、先述した『魔進戦隊キラメイジャー』では敵幹部・ガルザの声を熱演している。そういえば、兄のオラディン王の声を演じる杉田智和(すぎた・ともかず)は、『ギンガ』でウルトラマンギンガの声を演じていた(笑)。
2020年3月上旬に新型コロナウィルス感染拡大防止のために政府から出された自粛要請によって、本作は3月上旬の公開予定が5ヶ月も延期されて、『タイガ』の後番組『ウルトラマンZ』の放映開始後に公開されてしまったことで、あまりにも面白い『Z』と比較するとやや見劣りするといった意見もネット上では散見された(汗)。
しかし、そんなおもわぬ不幸に見舞われることとなってしまった本作だが、ニュージェネレーションウルトラマンの華麗なる大競演を期待する向きには万全とはいわないまでも、その期待を裏切る出来でもなかった良作だったとは思うのだ。
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