(2023年5月14日(日)UP)
『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』『私、能力は平均値でって言ったよね!』『旗揚!けものみち』 ~2019秋アニメ・異世界転移モノの奇抜作が大漁!
『異世界かるてっと』 ~原典『幼女戦記』・『映画 この素晴らしい世界に祝福を!-紅伝説-』・『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』・『盾の勇者の成り上がり』・『劇場版 幼女戦記』評 ~グローバリズムよりもインターナショナリズムであるべきだ!
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深夜アニメ『くまクマ熊ベアー』(20年)の2期『くまクマ熊ベアーぱーんち!』(23年)が放送中記念! とカコつけて…… ライト・コメディー・マイルド系の深夜アニメ『くまクマ熊ベアー』1期(20年)・『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』1期(21年)・『メルヘン・メドヘン』(18年)・『金装のヴェルメイユ~崖っぷち魔術師は最強の厄災と魔法世界を突き進む~』(22年)・『賢者の孫』(19年)・『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』(21年)評をアップ!
『くまクマ熊ベアー』『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』『メルヘン・メドヘン』『金装のヴェルメイユ~崖っぷち魔術師は最強の厄災と魔法世界を突き進む~』『賢者の孫』『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』 ~オボコいライト・コミカル・マイルドな異世界ファンタジーにも相応の良さはある!?
(文・T.SATO)
『くまクマ熊ベアー』(1期)
(2020年秋アニメ)
(2021年1月21日脱稿)
西欧中世ファンタジー風の異世界の片田舎が魔物に蹂躙されている。そこを辛うじて逃れてきた年端もいかない少年クンが冒険者ギルドに助けを求めてくる。しかし強敵相手に立ち向かえる冒険者は出払っており、その域に達していない冒険者たちは済まなさそうな顔をするしかない。そこに「ワタシが行こうか?」と声をかけてきたのは、顔出しでもフード付きでムクムクとした黒いクマの着ぐるみを着ている、やや低音ボイスの女の子!
超安直なタイトル。それゆえにインパクトはある(笑)。内容はオボコい女子オタ向け「俺TUEEE(ツエーー)系」作品と要約できるけど、バカにしているワケではない。その範疇で気持ちよくはできている。
別のモノサシで測れば、股旅・ロードムービーもので、旅先で困っている庶民をクマ女子がその超チート能力を善用して助けたり、悪人を懲らしめるといったもの。タドタドしい展開はなくフツーに楽しめる。
往年のオタク論『趣都の誕生―萌える趣都アキハバラ』(森川嘉一郎・幻冬舎・03年2月1日発行・ISBN:4344002873。08年12月1日に増補版が幻冬舎文庫化・ISBN:434441232X)的に観ちゃうと、自身のボディーラインを見て見て的なギャルとは対極的な、自身の体形を隠したい系、モフモフとしたクマ的な可愛いものが好きだけど、ベタベタと愛想よく異性に媚びるのには抵抗があるオタ少女にとっての、感情移入しやすい女子主人公&居心地のよい世界観の結晶といったイジワルな分析もしたくなる――それが悪いワケでもない。むしろマーケティング的には盲点だった新たな鉱脈の発見やも?――。オタク評論家・大塚英志の弟子筋だった女子オタによる往年の著作『少女民俗学パート2 クマの時代』(荷宮和子・大塚英志・光文社(カッパ・サイエンス新書)・93年9月1日発行・ISBN:4334060773)との通底なども想起する。
ただし、本作の異世界は当今流行りのゲームの中だったハズが、そのへんはあやふやとなり、むしろ引きこもりぎみで居場所がなかった彼女が、オボコい庶民少女との出逢いを契機に異世界に守るものや居場所を見つけたようにもなる展開は……。引いて考えるとオカシい。けど、絵柄的にも頭身が低くてファンシーでリアリティーの喫水線が下がった世界なので、筆者個人はあまり気にならない(笑)。
『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(1期)
(2021年春アニメ)
(2021年8月9日脱稿)
女子が異世界に転生して無双する作品。異世界ファンタジーのラノベを読む層に女性オタも増加、高齢化も進んだ反映なのだろうが、2010年代以降は高校生ではなく社会人、30代や40代のオッサンまでもが異世界へと転生。ラノベ世代よりも上のオタクも、怪獣や変身ヒーローから卒業できなかったモノだけど、彼らも材が違うだけで同じ運命をたどっているようだ(笑)。
本作も現世では萌え媚び臭が全然感じられない、恋も遊びもしてこなかったという、グレーのスーツに身を包んで染めてない黒髪を後ろに束ねただけの地味な20代後半、デスクワーク三昧の社畜OLが過労死するところからスタート(爆)。
死後の世界で神さまに「来世ではスローライフを送りたい」と願った彼女は異世界へと転生。村外れの高原で最低限の仕事&人的交流でスローライフを送るのであった……。
と思ったら、不老不死なので300年が経っていて(笑)、西欧中世風異世界ファンタジーのお約束で最弱の敵キャラであるアメーバ状のスライムを倒していただけなのに、その経験値が蓄積して「レベル99」の最強キャラとなっていた! そのウワサを聞きつけて人々は訪問、魔族も挑戦を仕掛けてくるのであった……といった設定からしてギャグ主体の作品だ。
正直、志は低い作品だけど、その範疇では相応に楽しめる。転生後の主人公少女は永遠の17歳(笑)で金髪ロングだけど、前世の性格を継承して媚びてはおらず小サッパリとした性格だ。その意味では萌え文脈での商業的キャラ人気は出そうにない。
しかも、中身は27歳の地味OL人格だ。過労死した経験から、弟子になった赤毛の健気な美少女キャラに対して「頑張るって言葉をイイ意味で使いすぎちゃダメ!」とか、「血の滲むような努力」発言には自己陶酔や他人への見せつけといった邪心の混入を指摘して、あくまでも一発逆転ではなくコツコツとしたムリのない謙虚な努力の重要性を賞揚してみせる。
このへんは前世での経験やトラウマがあまり活かされていないように思えた、2021年の深夜アニメ『無職転生~異世界行ったら本気だす』や『蜘蛛ですが、なにか?』に対するアドバンテージだとも私見。
ただまぁ、作品を個々で観ている大多数のオタはともかく、深夜アニメを膨大に観ている病的オタは(汗)、やはり同季に主演声優が同じ悠木碧(ゆうき・あおい)である『蜘蛛ですが~』後半2クールが放映されているせいで、作風はカナリ異なるのに両作を無意識に比較してしまうのではなかろうか?
テンションは異なるも声のトーンは両作で同じ感じなので、マニア的にはドーしても本作の主役女子に蜘蛛少女のイメージもダブってくるのでは?――作品や彼女の罪ではなく、観ている側が腐れオタクだった場合の問題なのだけど(笑)――
『メルヘン・メドヘン』
(2018年冬アニメ)
(2018年4月27日脱稿)
紺色セミロングの髪を後ろに編んだ、ほっぺたプニプニ系のキャラデザで、オドオドビクビクしていかにもトロそうな、他人に対して嫌悪や悪意もいだかず、しかも読書・空想好きの夢見がちで性格もよさげな女のコ。
そんな彼女は、他人に話しかけられると内気・照れ屋さんなあまり、赤面してパニクって、その場から走って逃げ去ってしまうという(笑)。
いかにも大好物が弱者女子である弱者男子の好みにもマーケティング的に沿った作品だが、そんな彼女がクールな黒髪ロング女子のサブヒロインを見掛けて、ストーカーのようにあとを付け(汗)、図書館経由で異世界へと転移して、序盤では魔法少女の修行をする作品だ。
キャラデザ原案は、昨2017年秋の深夜アニメ『妹さえいればいい。』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20221211/p1)や、早5年前の『変態王子と笑わない猫。』(13年)の原作ラノベ挿絵や、アニメ映画『ガラスの花と壊す世界』(16年)のキャラ原案などでも見掛ける、今をときめく「カントク」によるもので、そのへんでも売上を狙ってきている。
書籍・図書館・魔法修行。こう書くと、女児向けアニメテイストもあるような、深夜アニメ『リトルウィッチ・アカデミア』や『魔法使いの嫁』(共に17年)みたいな良質のファンタジーになることを想起するのだが……。
異世界の旅館みたいな大浴場で全裸となり、古式な革表紙の百科事典サイズの大部の書物で胸と前を隠して、廊下を一目散に駆け逃げる図で、その志は推して知るべし(笑)。萌えを前面に出したキャラ造形・キャラデザともに、いかにもオタ受けウケしそうだが、序盤の段階では文芸面では特筆すべきことはナイ(多分)。
物語好きという設定があるのならば、そこを前面に押し出して、そのこととウラハラの浮き世離れや教室でのボッチぶりを深掘りし、現実・粗暴・実務・効率至上などを象徴させる物や者をゲストで対比的に登場させることで、いくらでもお話を肉付けできそうにも思うのだが……。
――そのへんの、物語愛好家のオタたちや、創作や二次創作に奇妙な執念を燃やす作り手たちの多様さや作劇秘術や業を描き究めたのが、昨2017年春の深夜アニメ『Re:CREATORS(レクリエイターズ)』だと私見するけど、比較対象としては不適切だネ・笑)――
もちろん、甘ったるい美少女ウリ自体が罪というワケではないし、ターゲットを絞った嗜好品である以上は、ナイものねだりな要望をブチまけているようだったらスマンです。
(後日付記:中盤以降の作画崩壊~再放送連発~最終展開未放映(翌年CSで放映)については、ふれないでおきます・汗)
メルヘン・メドヘン第1巻(初回限定生産) [Blu-ray]『金装のヴェルメイユ~崖っぷち魔術師は最強の厄災と魔法世界を突き進む~』
(2022年夏アニメ)
(2022年8月7日脱稿)
西欧中世風異世界ファンタジーだけど、冒険モノではなく学園モノ(魔法学園モノ)。
そして、実にオボこそうな銀髪ショートの制服男子生徒クンが基礎的な召喚魔法をいつまで経っても習得ができずに留年になりそうになったところで、書庫にあった本の中から使い魔の召喚に遂に成功。
しかし、召喚されたことで使い魔となったのは、黒いミニスカ・ボディコンで両腕・両脚の素ハダ成分も実に多い服装の妖艶でグラマーなお姉さん! 彼女は古来から恐れられていた大悪魔だったが、この男子生徒の使い魔になってしまったのだ。しかも、彼女の魔力の補充には男性生徒クンとの濃厚キスが必要なのだった。
といったところで、オボコい弱者男子だけど人並みに性欲はあるので、グラマーなお姉ちゃんが大スキで眼で恋もしてしまうローティーンのオタには訴求力があるやもしれない。筆者もウン十年前で審美眼もなかった10代前半であれば執着したやもしれない(笑)。
しかし、もう少しドーにかならないモノなのか? いや、基本設定はコレでイイとして、語り口や話運びの部分の問題であろうか? 男子生徒クンは劣等生だけど、こんな目標があるから頑張っている! その背景にはこんな過去があった! お姉さんのイロ気を強調するにしても、脚本ではなく演出の部分で、ココでネチっこくヒイてジラして誘ってくるような演技を入れることで、キャッチーにしていった方がイイですよ~、というような。
『賢者の孫』
(2019年春アニメ)
(2019年4月27日脱稿)
残業三昧で毎日終電のクタびれたサラリーマン青年。同季で似たような導入部の深夜アニメの#1を観たばっかだゾと思っていると、意識朦朧でフラフラと歩いていた青年クンが交通事故にあう!(汗)
で、シーンが転換すると、そこは西欧中世風の異世界の明るい森の中で、オボコい天真爛漫そうな少年が魔法でイノシシ狩りに成功した姿が描かれて、彼こそが先のクタびれたサラリーマン青年の転生だと説明される(笑)。
加えて、彼は両親を早くに亡くし「賢者」と呼ばれる爺さんに引き取られ、爺さんから直々に英才教育も受けているらしい。のだが、爺さんが教えるまでもなく、ソツなく前世の記憶とカラめて魔法を次々とこなすばかりか、新魔法まで次々と編み出している姿が描かれる。
スナオな少年クンは爺さんはもちろん爺さんの元妻だという婆さんにも愛され、このふたりはかつては国家の重鎮だったらしく、そのふたりの友人だと云って田舎の家屋に顔を出す爺さんたちも実はその正体は国王だったとか騎士団長だったとか――主人公少年はその正体を知らなかったけれども――、コレはもう作者が確信犯で人脈にも恵まれさせておりイイ加減にしろ(笑)。
努力・友情・勝利の3大テーゼから、努力が消え去って久しいけど(?)、本作は明らかに意図的にそれを全般で徹底しており、そうなると想定内であろう批判をする気もなくなるどころか笑ってしまう。
ググってみると、本作も小説投稿サイト発祥の作品。そんなに優れているとも思わないけど、ダメダメというワケでもない。拙さからから来るストレスなどはナシでフツーに観られる。出オチのインパクトだけの作品として終わってしまうのか、それともアニメ化されたくらいなのだから、相応のナニかがあるのか、しばらく様子見としますかネ。
『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』
(2021年冬アニメ)
(2021年4月27日脱稿)
ニコニコ笑顔のオボコいローティーンのお坊ちゃんが、その劇中内最強のチートな魔力をオゴらずタカぶらずに世のため人のために善用する作品。かてて加えて、そんな可愛い少年クンに周囲のお姉さんキャラや、その師匠でもある見た目はロリ少女でも長命なので年齢は婆ァ(笑)キャラどもがモーション・誘惑を掛けまくる!
という意味では、近年ではアリガチな作品ではある。もちろん「そんなのは陳腐凡庸だよ」というツッコミも今時の作り手たちは想定内で、判っていてあえてベタではなくネタとして確信犯で作っているワケだ。
デザイン骨格シッカリ系ではない丸っこいキャラデザ的にもリアリズムが優先される世界観ではなく、漫画アニメ的なナンチャッテ感が優先される世界観を強調。
デタラメな展開やご都合主義な成功、イイ意味でコテコテの記号的なキャラたちによるお約束反復ギャグも楽しく観られる。もちろん深みはナイけど、その範疇では面白く楽しく仕上がっているとは思うのだ。
とはいえ、何らかの歯応えとか鑑賞後に心が豊か(笑)になるような作品ではないので、同世代のオッサンオタクたちに薦めようとも思えない作品ではある(汗)。ただまぁ、細かいヤボを云わせてもらえば、終盤があまり盛り上がってはいないように思えるあたりについてはイマイチ。