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巨大ロボットアニメ『交響詩篇エウレカセブン』のリメイク劇場版第3作『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(21年)公開合わせで、リメイク劇場版第2作『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(18年)が30分枠4話形式にてBS11で放映中記念! および、一応(笑)の巨大ロボットアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』(06年)も「15周年」と銘打ってTBS金曜深夜枠にて再放送中記念! とカコつけて……。映画『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』評と映画『コードギアス 復活のルルーシュ』(19年)評をアップ!
『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』・『コードギアス 復活のルルーシュ』 ~00年代中葉の人気ロボアニメのリメイク&続編勃興の機運!
(文・T.SATO)
『ANEMONE(アネモネ)/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』
(2018年11月10日(土)公開)
(2018年12月26日脱稿)
巨大ロボットアニメ『蒼穹(そうきゅう)のファフナー』(04年)や『コードギアス 反逆のルルーシュ』(06年)に、歴史上の英雄を召喚し合ってバトルロイヤルする『Fate/stay night(フェイト/ステイナイト)』(06年)などの、10年経ってからでもリバイバルされて総集編映画や続編作品が製作される作品は、やはり当時においても相応に人気があったというべきで、延命にも成功した作品だとはいえるだろう。本作の原典でもある巨大ロボットアニメ『交響詩篇エウレカセブン』(05年)もそのひとつである。
――大英帝国占領下での日本独立を描いた『コードギアス』だけは神懸った大傑作だったとは思うけど、それ以外の作品に対しての個人的な評価はあまり高いモノではない。『ファフナー』と『エウレカ』に至っては90年代後半に一世を風靡したロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)モドキ・フォロワー・影響下の作品群から脱していないといった印象だったけど(汗)――
同作は文明崩壊後の巨大植物が繁茂する世界で、背中にしょったボードに巨大ロボットが乗ることで、大空を波乗りサーフィンのように超高速で雄飛してバトルする巨大ロボットたちを描いた作品で、田舎町でくすぶっていた主人公少年が空から落ちてきた少女&巨大ロボットに遭遇し、巨大ロボットに搭乗して街を出て、反政府組織・月光ステイトに身を寄せて戦いに身を投じていくというストーリーであった。
本作公開の1年前の昨2017年秋には、原典『エウレカセブン』のTVシリーズ序盤ならぬ、イキナシ中盤にて主人公少年が母艦を脱走して寄宿することになった夫妻との番外エピソード(#21~26!)だけをメインに据えていた(汗)、新規作画も少ない総集編映画『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』が、その時系列を細切れにして何度も前後させる実にオシャレでハイブロウな(?)――単純にわかりにくい(笑)――編集が施されて公開されて不評をこうむっている(汗)。
しかし、劇場版2作目の本作ではそれとは一転、ほとんどが新規作画で、原典のTVシリーズの映像も引用されてはいるものの、原典との整合性はまるでない。どころか、原典ではロングのピンク髪の美少女でも悪役ライバル・ポジションの巨大ロボットで、たびたび主人公少年とも交戦していたヒステリックなキチガイ美少女・アネモネが主人公!
内容・ストーリー展開も原典たるTVアニメ版とはまるで異なっている(爆)。ピンク髪の美少女の境遇や性格(!)までもが異なっている(笑)。けれども、面白い!(個人的には・笑)。一応は1本のフィルム・映画としても成立しえていると思う。
……と思ってしまうのは、やはり筆者がジャンル作品に対する素養があるキモオタだからであろうか?
原典のTVアニメ版とは並行宇宙の関係にある現代の東京の延長線上にある都市光景ともなっている本作が、ナゾの巨大植物が繁茂してその生態系が激変した原典世界での激戦による影響を受けてか、本作映画の現代世界の延長線にある劇中においてはエウレカ(エウレカセブン)と仮称される超巨大物体が出現しており、そのための災厄ですでに数十億人(!)もの人類が死亡したあとだとされている!
少女アネモネも軍人であった亡き父の遺志を継いで地球を守るために超巨大物体に攻撃を仕掛けている正義のロボット乗りとして再設定。何度も物理攻撃やら精神攻撃やら電脳攻撃やらを仕掛けているその先の超巨大物体「エウレカセブン」の内部世界が、ナンとTVアニメ版の原典世界でもあるという超展開!――厳密にはTV版とも似て非なる世界だけれども――
そして、超巨大物体・エウレカの真の正体は、原典のメインヒロインでもあった青緑色髪のベリーショートの少女・エウレカであって(爆)、彼女が愛情&絶望の狭間で死してしまった主人公少年を蘇らせるために並行世界に干渉していたゆえの事象で、自身も近親者である父を喪っているアネモネも困惑&同情をしつつの戦闘の果てに、エウレカを救い出してみせるというのが大雑把なストーリー――チョット違うかも?(笑)――。
ただし、この展開だと少女エウレカはロボットアニメ『マクロスF(フロンティア)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091122/p1)のヒロイン・ランカ嬢をはるかに上回る、意図せずとも大量殺人を惹起してしまっていた大罪人になってしまうんじゃね? などとも理性では思うし、実写作品だとそのへんのクサみや重みがもっと浮上してきてシャレにならなくなるようにも思うのだ。しかし、そこはアニメ媒体ゆえのリアリティーの喫水線の違いなのか、過剰には気にならない――あくまでも個人の主観です。気になるヒトにはご不興でしたらゴメンなさい(汗)――。
原典とはストーリー展開どころか作品テーマの次元で全然違っているじゃねーか!? とも思いはする。けれども、実は筆者は原典作品のことを全然評価はしておらず(爆)、往時は何度かあった再放送を追っかけても都度都度タイクツで、中盤でいつも視聴を打ち切っていたくらいの不良視聴者なので、この改変自体は私的には抵抗がなく、むしろ積極的に賛成であったりもする(汗)。
後日付記:
「往時は何度かあった再放送を追っかけても都度都度タイクツで、中盤でいつも視聴を打ち切っていた」。……やや偽悪的に執筆(汗)。厳密には最終的には1年間・全50話の最終回まで鑑賞済。トータルでは原典たるTVアニメ版もまぁまぁの良作だったとも思っている。
ただし、最初の第1クールにおける覇気あるヤンチャな少年が地元の街を旅立っていくという展開が、良く云えばマンガ・アニメ・記号的ではなくナチュラル、悪く云えばツカミには弱くて思わせぶりでカッタルいという気が個人的にはしており、そのへんの感慨起因で第1クールいっぱいまで視聴をしたあたりで幾度か脱落しており、それで「中盤でいつも視聴を打ち切っていた」という記述とさせてもらっている。
加えて、作品自体の罪ではないけど、この作品を擁護していた若きプチ・インテリ的なオタクの皆さまによる、文弱な(ハズだと思われる?)自分自身や我々オタク自身とはカナリ異なる、ややヤンキーでミエっぱりな少年に体育会系パワハラも横行している遊撃母船のメンツたちとの人格類型・性格類型面における断絶・亀裂とまではいかないにしても、我々オタとは相当に距離感があるどころか真逆ですらある荒々しい人間関係描写に対しての「華麗なるスルー感」(笑)なり、やや背伸びをした「わかったフリ感」「理解をしたフリ感」にも引っかかりを覚えている。
いやまぁ、こーいう昭和チックで1980年代まではあったようなヤンキーDQN(ドキュン)的な上下関係がキビしい体育会系な人間関係が人間社会の全面を占めていたならばイヤだけど、片スミに局所的にであれば存在してもイイとは個人的には思うのだ――その中には入りたくはないけれど(笑)――。
80年代のヤンキー的な若者が完全にはオトナになりきれずに歳を喰って反体制組織における年長の艦長級キャラとなり、やや理不尽に時に感情にも任せて部下や少年を怒鳴ったり殴りつけたりもしていて、しかしてそれをも時に引いた視点で相対化もしてみせている姉御キャラの冷めた視線などは本作独自のモノだとは思うのだ。
しかし、そのへんの黒さにスポットを当てずに、「少年の成長」の部分だけを論じている論客たちを見ていると、「いやいや、我々のような口舌・文筆の輩である評論オタこそ、現実世界での人間関係で揉まれて人格形成したのではなく、脳内だけでの思弁を積み重ねて人格形成・思想形成をしてきており、『エウレカセブン』的なモテ趣味でもあるサーフィン&音楽青年たちの男女交流も込みでの延長線上としても描かれている劇中キャラクターたちとは最も縁遠い地点にいるワケで、ソコと自身との距離感を測ったり自分たちの未成熟さ、あるいはその成熟方法の違いに対しての目配せや距離感の表明なり自己相対視がナイような論考には、やや物足りなさを感じてしまうのだ……。
アニメ映画『コードギアス 復活のルルーシュ』
(2019年2月9日(土)公開)
(2019年4月27日脱稿)
2006年と2008年の全2期で放映された当時の覇権アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20081005/p1)。
優勝劣敗の英米流「新自由主義」を戯画化した「大英帝国」モドキによる占領下で、「爆弾テロ」で抵抗を続ける「日本人」を描いて、当時の「イラク戦争」をも想起させた本作。良くも悪くも第2次大戦の戦勝国では抵抗のシンボルにすらなる「ナショナリズム」が、敗戦国の日独などでは絶対悪とされたことで、本作でも大英帝国は敵役だけど、独立抵抗運動に「日の丸」を掲げることでキナ臭さも漂い、しかしてコレならタブーも正当化できるような背徳感もブレンド、作品の構図に安直な勧善懲悪ではない複雑性をも与えていた。
極め付けは日本独立運動の首魁に収まる黒仮面の男の正体! それは母を殺され廃嫡されたことで父皇帝に復讐を誓う、東京の英国租界で正体を隠して暮らす、戦災で死んだハズの大英帝国第11皇子の少年主人公! 彼は天才的な戦略眼とナゾの少女に授与された制限ルール付きの超能力で大英帝国と対峙し、日本独立はダシにすぎない!
まぁイラクやアフガンの地での反米レジスタンス、2~3世になってもチャイナタウンやコリアンタウンを維持できている中韓などの世界標準とは異なり、「ギブ・ミー・チョコレート!」と米兵に群がったり、空気を読んで過剰に同化したがる我が日本民族は、サヨクの分析とは真逆で世界で最も「ナショナリズム」が弱い卑屈な民だと私見する。大作映画『日本沈没』(73年)のラストで世界各地に散らばった亡国の日本人たちは、2~3世代で日本語&日本文化を消失、現地に同化するだろうから、爆弾テロで抵抗する日本人像はホントはリアルじゃないと思う(笑)。
「ナショナリズム」の話かと思いきや、世界各国の亡命政権とも結んで――「グローバリズム」な「世界統一政府」ではない――「各国」の存在は残したままでの「インターナショナル」な「合集国」vs「大英帝国」、劇中内超能力の源泉たる心理学者・ユング的な全人類の「集合無意識世界」での「神」殺し(?)を経て、世界を平和目的で一致団結させるために自身は大悪党のフリ(!)をして、憎悪を一身に集めて殺されていく主人公! 真相は少数だけが知っている。まさに男子の本懐と云ったら今だと男女差別だが(汗)。
個人的にも高く評価する大傑作の続編が、放映終了10年後に3本の総集編映画を経て登場。
ちなみに、総集編1作目はTVアニメ版1期全25話の冒頭11話、成田山の攻防で弱小抗英組織が名を上げるまでのTV版通りの展開。
2作目は1期中盤~2期全25話の中盤までを駆け足で展開。1期終盤~2期序盤はヤマ場とせずに、大英帝国皇族たちから見た辺境の事件として流していく。
3作目は2期終盤をジックリ描くけど、尺の都合かオレンジ髪の長髪少女は延命。完成作品ではともかく脚本のト書きの公表で明かされた、死んだハズの少年主人公がラストで馬車の馭者として延命か? という描写は批判も多かったか馭者ナシに改変されている。
その続編たる本作では、冒頭から精神が幼児退行した状態で少年主人公が早々に登場。先に超能力を授与した少女が未練で先の集合無意識世界から復活させたとした。
あとは劇中世界のその後の平和な光景と、往時は敵味方に別れて戦った主要キャラが一同に介する結婚式の二次会(笑)を経て、主人公が目指した「弱者が虐げられない世界」の象徴でもあり、実は主人公少年の妹でもある車椅子で盲目の少女――だから廃嫡皇女でもあり、戦後は高官――が、超能力教団の残党に拉致されることで新たな紛争が勃発!
かつては骨肉の争いを繰り広げた姉でもある元日本総督の皇女や、日本最後の総理の息子でありながら大英帝国内では名誉白人として体制内改革を目指した親友少年、日英混血少女らとも心ならずも共闘して、ベテラン・戸田恵子が演じる敵の女首領と中東チックな土地で大攻防戦を繰り広げる。
ジャンルの歌舞伎的様式美と化した「時間ループ」要素も導入して、その能力を幾度も駆使する女首領とそれを見抜いてウラをかく知謀合戦をも描いていく。しかして策謀が成功するや狂的に高笑いする描写で、主人公少年を劇中内での絶対正義ではなく中2病としても描いている二重目線は、この続編映画でも健在だ(笑)。
もちろん10年後のファンムービー、石原莞爾『世界最終戦論』(1940(昭和15)年)の域に達した原典終盤と比すれば実にミニマムな話に過ぎないけど、劇中内での世間では「世界制服を一時は達成して世間を震撼させた最悪の独裁者でもあるあの悪逆皇子」の復活ではない活躍としている。キレイに完結した大名作でもある原典を毀損(きそん)させずに、ファンサービス的なボーナス続編を構築するのならば、見事に妥当な落としどころのストーリーだったとは思えるのだ。
ベタつかないけど、主人公少年に超能力を授与したクールな少女の不老不死にまつわる裡(うち)に秘めた孤独に寄り添って、主人公&少女が歴史の闇へと消えていくボーイ・ミーツ・ガール・アゲインのミクロな帰結も、本作のキャラクタードラマを完結させる「小さな救い」で良としたい。
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