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『俺たち賞金稼ぎ団』 ~ヒーロー経験者と「獣電戦隊キョウリュウジャー」の面子で、同作メイン監督・坂本浩一が手掛けた良作バカ映画!

(文・久保達也)
(2014年7月19日脱稿)

「イケメンヒーローブーム」の系譜! 批判ではなく、それすらも善用してみせよ!


「仮面を脱ぎ捨てたヒーローが新たなステージへ挑む」


 こんなキャッチフレーズにより、


●『PIECE(ピース) ~記憶の欠片(かけら)~』(2012年9月公開)
●『ぼくが処刑される未来』(2012年11月公開)
●『恋する歯車』(2013年2月公開)


といった作品が製作されている。それぞれで、


●『仮面ライダーオーズ』(10年)で火野映司(ひの・えいじ)=オーズを演じた渡部秀(わたべ・しゅう)
●『仮面ライダーフォーゼ』(11年)で如月弦太朗(きさらぎ・げんたろう)=フォーゼを演じた福士蒼太(ふくし・そうた)
●『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・)でキャプテン・マーベラス=ゴーカイレッドを演じた小澤亮太(おざわ・りょうた)


が主演し、『TOEI HERO NEXT(東映・ヒーロー・ネクスト)』と題して、実質的には低予算のVシネマとして製作され、劇場公開もされていたことは記憶に新しいところである。


 これらを製作した意図として、東映プロデューサー・白倉伸一郎(しらくら・しんいちろう)は、東映ヒーローを演じた役者たちに次のステージを用意したい、という趣旨の発言をしていた。


 90年代以前、変身ヒーロー作品で主人公を演じた役者たちは、ごく一部の成功例を除き、世間に根づいたそのイメージを払拭(ふっしょく)することができず、その後は仕事が来なくなるという苦境に立たされる者が多かった。
 具体的な言及はここでは避けるが、中にはその果てに、人生を転落させた者もいたほどだったのである。


 芸能事務所が新人俳優にこぞって特撮変身ヒーロー作品のオーディションを受けさせたり、放映終了後に主演俳優に対して一般向けドラマの出演オファーが殺到する、というような具合いに風向きが変わったのは、一部では「ホスト・ギンガマン」(笑)と称されていた『星獣戦隊ギンガマン』(98年・)あたりから萌芽(ほうが)はあったものの、『仮面ライダーアギト』(01年・)の放映により、「イケメンヒーローブーム」が巻き起こった00年代以降のことなのである。


 その好況が現在に至るまで続いていることを考えれば、東映があえて若手俳優たちに次のステージを用意してあげる必要性は、さほど感じられないようにも思える。
 しかしながら、平成ライダースーパー戦隊を演じたからといって、そのすべての役者がメジャーな存在になれるとはかぎらないのだ。よく思い返してみれば、最近すっかりご無沙汰になってしまっている者も存在するハズである。


70年代的な先輩ヒーロー客演の再定着! ライト層や子供層の「卒業」も遅延させよ!


 そして近年(2014年)では、平成ライダーが毎年12月()、スーパー戦隊が毎年1月()に、現行ヒーローと前作ヒーローがコラボする映画が、さらには歴代ライダーや歴代スーパー戦隊が大集合する映画()が毎年春に公開されるのが慣例となっている。


 通常、オタク予備軍以外の子供たちは、進級するにつれて、非日常を描いている特撮変身ヒーロー番組から卒業して、もう少し日常に近しい世界を描いている少年漫画やアニメや一般の大人向けドラマへと興味・関心を移していく。あるいは、同級生たちの空気・同調圧力もあって特撮変身ヒーロー番組などは「幼稚」なものだとして認定していく。
 それ自体は必ずしも間違っているワケではないので(汗)、子供一般の成長過程においては否定されるべきことでは決してない。しかし、日本の特撮変身ヒーロー番組やその劇場版映画のファンの増員や売上自体を上げていくうえでは望ましいことではないことは事実だった。


 1990年前後からは特撮変身ヒーロー番組は年長マニアを除けば幼児のみで小学校に上がったタイミングですでに卒業しているような状態が一般化してしまった。
 しかし、筆者のようなオッサン世代は覚えていることだろう。1980年前後までの子供たちは特撮変身ヒーロー番組を小学校中高学年になっても視聴していたことを……
 一度は卒業した子供たちであっても、70年代末期に到来した第3次怪獣ブームの時代は、ウルトラマンシリーズと仮面ライダーシリーズだけは別だ! とばかりに、小学校の高学年や中学生に上がっても再放送を視聴したりシリーズ最新作を試しにチョコチョコと鑑賞するようなことはあったものなのだ。


 けれど、1980年代~00年代前半にかけては、特撮ジャンル作品の続編やシリーズ化は「悪」だとされて、シリーズ初作や初期シリーズだけが「正義」だとされた悪影響で、作品世界を刷新したヒーローや怪獣が初登場したリアルシミュレーション的で原点回帰的な作品ばかりが賞揚されてきた。それはそれで単発的には一般層をゲットできたり、相応の作品的・興行的な成果もあっただろう。


 しかし、00年代後半からは、70年代までの特撮ジャンル作品と同様に、シリーズ作品が同一世界を舞台とすることで、先輩ヒーローが後輩ヒーローの助っ人に参戦してくれても不思議ではない作品が、ウルトラにしろライダーにしろ戦隊にしろ、ふたたび続々と製作されるようになってきた!


 そうなると、そろそろ子供番組を卒業しようと思ってしまうような子供たちも、自身が幼少時なり昨年度に鑑賞していたヒーローたちが、そのシリーズの続編・新旧2大ヒーロー共演映画・スーパーヒーロー大集合映画に再登場すると知れば、オモテ向きは冷静を装っても内心では秘かにワケもなく興奮させられてしまって(笑)、それらの作品を映画館で鑑賞してみよう!
 あるいは、シリーズの続編作品群でも、幼少時のようには純真には観られなくなっても継続して鑑賞していこう! と思ってしまうような子供たちも一定数は存在することであるだろう。


 つまり、これらの同一世界を舞台とするシリーズ作品や映画は、特撮変身ヒーロー作品からの「卒業」を遅延(ちえん)させる役割を立派に果たしている。それが証拠に、近年では以前は見られなかった小中学生の男子の姿を、劇場でよく見かけるようになっていたのだ。これは実に喜ばしいかぎりではある。


 同じようなことは、そのシリーズ全体に対する特撮ファンではない、その作品単独の年長ライト層や役者ファンにも拡張して応用ができるだろう。彼らライト層にも個別単独の作品ファンだけにとどまらせないためにも、シリーズ次作などに彼らを先輩ヒーローとして再登場させる手法は、そういった面からも一粒で三度も四度もオイシいといった効用があるものなのだ!


ヒーロー経験役者たちによる「ネキスト」としての『俺たち賞金稼ぎ団』!


 しかしながら役者さんにとっては、放映終了後も数年間にわたって、同じヒーローを演じつづけることになるワケで、かつてのヒーローOBたちのように、そのイメージから逃れられなくなる危険性をかかえていることも、一方ではまた事実なのであった。


 その意味では、同じヒーローではなく別人の役を演じさせる作品をつくる手法もおおいにアリだろう。これによって、役者ファン・特撮ファン双方をたとえ小規模でもゲットができるのだ。そして、若手役者さんたちには演技の経験の幅を広げさせ、スタッフたちにも特撮変身ヒーロー番組とは異なるジャンルの作品を経験させて、我々オタクたちにもジャンル作品以外の作品に対する見識を広げさせられる(笑)、そういったメリットも確実にあるハズなのだ。


 『TOEI HERO NEXT』製作にあたっては、そうした意図も少なからずあったかとは思われるのだ。



●ホラー・サスペンス
●近未来SF
●純愛ミステリー


と続いてきた『TOEI HERO NEXT』。


 『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)の若手役者さんたちに用意された「次のステージ」は、2014年5月10日(土)から順次劇場公開された『俺たち賞金稼(かせ)ぎ団』!
 同作はそれまでのややハイブロウな「TOEI HERO NEXT」作品とは打って変わって、『キョウリュウジャー』をメインで撮影していた坂本浩一(さかもと・こういち)監督による「バカ映画」にもなっていた!(笑)
――いや、原典である『キョウリュウジャー』自体も良い意味での「バカ映画」だったのだけど(笑)――


 もちろん、興行的な大ヒットは見込まれない作品なので(汗)、予算は掛けられないから、そこで起きている事件は「地球存亡の危機」などではまるでない。それらと比較すれば、かなりミニマムな事件なのである。


 「劇団バズーカ」を主宰する金原寿朗(きんばら・としろう)――キョウリュウゴールド=空蝉丸(うつせみまる)役だった丸山敦史(まるやま・あつし)――。


 彼はもともとは刑事であった警官であった青木純蔵(あおき・じゅんぞう)――キョウリュウブルー=有働ノブハル(うどう・のぶはる)=役であった金城大和(きんじょう・やまと)――から、かつて自身が逃がしてしまった母親を放火殺人した容疑者・リコに、300万円もの懸賞金が懸けられているという話を聞かされた。


 劇団の自主公演の資金繰りにも悩んでいた金原は、懸賞金を目当てに(笑)、劇団員たちを率(ひき)いてリコの行方を捜索をはじめる! すると、そのうちに意外な事実が次々に明らかになっていく……といったストーリーなのである。



 ちなみに、事前に告知されていたとおりで、同作は一応、『キョウリュウジャー』とも同一の世界を舞台とした、同作終盤ともリンクしている物語ともなっている。それによって、少しでも同作のファンにも本作に親しみを持ってもらったり、劇場に足を運んでもらおうといった算段だろう。


 劇中のテレビでは『キョウリュウジャー』の悪の軍団・デーボス軍の侵攻が緊急生中継されていた。金原が青木に懸賞金の話を聞かされた喫茶店も、キョウリュウジャーたちのタマり場だった喫茶店「TIGER BOY(タイガー・ボーイ)」だったりするのだ。キョウリュウブルー=ノブハルが経営していた「なんでもや まるふく」の軽トラックが登場する場面まであったのだ(笑)。


 もちろん、お遊び程度の点描(てんびょう)であって、キョウリュウジャーやデーボス軍がストーリーにカラんでくることは一切ないという点では無意味なシークエンスともいえるのだ。とはいえ、ストーリー自体の理解に対する支障になるようなものでもないことを考えれば、わかるヒトだけわかる描写にすぎなくても内輪ウケだとして目クジラを立てて否定すべきようなものでは決してないだろう。


 それにやはり、一応の『キョウリュウジャー』とも同一世界での出来事だと聞かされてしまうと、たしかに特撮ファンとしては不思議なもので俄然、本作に対して親近感がわいてくるのも否(いな)めないのであった。こうやってゴキブリホイホイ(笑)に引っかかってしまうような特撮マニア諸氏も相応数はいたことであろうし。



 金原は聞きこみや張りこみ、真の悪党をこらしめる方法などについてはその都度、台本のかたちで執筆して、劇団員に手渡してみせる「ルーティン」とすることで、それをこの作品における「お約束」の「反復ギャグ」ともしている。
 そして、本作の全体のノリを一言で要約するならば、彼の最後の台本のタイトルでもあった『過剰(かじょう)サスペンス劇場』(笑)のようなものなのだ。つまり、「家政婦」や「掃除のオバサン」をはじめ、ありとあらゆる職業の人間たちが名探偵となっている、「なんでアンタらが事件を捜査するんや!」とツッコミしたくなるような、コメディタッチの2時間サスペンスドラマといった趣なのである。


 今どきそういったコメディ・サスペンス作品を「リアルじゃない!」などと云って批判をするようなヤボ天はもう少ないことだろう。むしろ、「非リアル」であることを承知で、「事実よりも真実」、リアリズムやドキュメンタリーではない虚構・フィクションやギャグ中心の作品の中にあってさえも、なんらかの真実や人間の真情を宿らせることはできるのだ! と見ることができるのが、「近代」後期の成熟社会を生きている先進国のイイ意味でスレてしまった庶民・大衆たちなのである。


 よって、本作のような小品で、そういった出来事を面白く見せようとするのであれば、これはもう「バカ」や「喜劇」を徹底するしかないワケである(笑)。


 そして、だからこそ、『キョウリュウジャー』の若手役者たち6人が、『キョウリュウジャー』における役柄と似ているようでも違っていたり、あるいは全然まったく違っていたりと、彼らが正義のヒーロー&ヒロインしか演じられないワケでは決してないのだ! と、同作を観ていたファンたちにも強力にアピールすることもできるし、役者さんたちの新境地を開拓することにつながるワケである。


桐生ダイゴ=キョウリュウレッドを演じた竜星涼が、真逆なオタク青年を演じる!


 桐生ダイゴ(きりゅう・だいご)=キョウリュウレッド役であった竜星涼(りゅうせい・りょう)が本作で演じた主人公青年は、「憑依(ひょうい)の役者」こと赤井達也(あかい・たつや)である!――オープニング映像ではこの「憑依の役者」と彼が演じた「役名」が、スーパー戦隊の「名乗り」の合成シーンのようにテロップされている!(笑)――。
 『キョウリュウジャー』では「キング」のアダ名で、若造なのに自身満々な役柄だったのだが、なんと本作ではそれとは真逆な役柄を演じていて、就職活動に失敗しつづけるオタク青年という設定なのだ!


 竜星は本作の1ヶ月後に発売されたオリジナルビデオ作品『獣電戦隊キョウリュウジャー 100 YEARS AFTER(ハンドレッド・イヤーズ・アフター)』(東映ビデオ・14年6月20日発売)でも、ダイゴとは正反対の気弱な曾孫(ひまご)であるダイくん(笑)を演じていた。
 だが、本作ではオカッパ頭にメガネをかけることによって、そうしたキャラをさらに徹底! しかも、赤井は『キョウリュウジャー』の次作である『烈車(れっしゃ)戦隊トッキュウジャー』(14年)のカグラ嬢=トッキュウ5号(戦隊ピンク)の


「私は強い、私は強い、私は強い、私は強い!!」


といったお約束の定番セリフのように(笑)自身が幼少時から大スキであった、同作の劇中世界における往年の特撮変身ヒーロー作品『ヘルズフェイス』の主人公になりきって、


「地獄の業火(ごうか)で焼かれてみるか!?」


などという決めゼリフを口にして、メガネをハズした途端に凶暴になってしまうのだ!


――赤井はやたらと、「まるで『ヘルズフェイス』第3期24話みたいだ!」などと、オタッキーな「例え」を口走って周囲にイヤがられているのだった(笑)――


 もっとも、悪党どもに立ち向かうにしろ、赤井の『キョウリュウジャー』で云うところの「ブレイブ」ぶりはともかく、彼の「ブレイブ」は単に両腕を振り回して突進していくというバトルスタイルであって、その周囲で悪党どもが勝手に自滅していくといったアクション演出になっていた(笑)。


 これまでの坂本監督作品からすれば、本作は「アクション」が占める比重が非常に少ない印象があるのは否めない――それでも「階段落ち」ならぬ「エスカレーター落ち」という、まさに命がけのアクションシーンはあったが!――。


 しかしながら、そういった「アクション」については本家『キョウリュウジャー』でも充分に描かれてきたのだから、変身ヒーロー役者に「次のステージ」を用意するといった製作意図からすれば、本作は「アクション」よりも、役者たちの「演技」や彼らの別の「一面」を強調することが、的確な作劇であり演出ではあったのだ。


熱血でもコミカルな作風だが、それはコテコテの古典的なギャグ喜劇でもあった!


 コメディ劇の観点からすると、本作の脚本や坂本監督の演出センスは正直「都会的」ではなかった。金原が悪党に対して、ヘンな拳法のポーズを繰り出したあげく、足のニオイをかがせて気絶させるとか(笑)。
 むしろ「コテコテ」なお笑いであって、それこそ大阪の「吉本(よしもと)新喜劇」や、1970年代に大人気を博していたコント55号ザ・ドリフターズを彷彿(ほうふつ)とさせる古典的なものなのだ。つまり、体を張った繰り返しによるギャグ演出なのであった。


 一例を挙げるなら、リコに殺されたとされる実の母について、金原が聞きこみをする場面。美人だったリコの母と仲がよかったことを、得意げに語る同僚のオッチャンに対して、おだてながら聞きこみをする金原だったが、


オッチャン「オッチャンじゃねえよ。ジェントルマンだよ!」


などと返されて、そのたびにアタマを盛大にハタかれて、事務所に積まれていたダンボール箱に何度も頭から突っ込んでしまうのだ(笑)。



 これは『キョウリュウジャー』と同時期に放映されていた『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・)でのバトル演出でもよく見られるものである(笑)。……冗談はともかく、たしかに軽妙なセリフ回しによるお笑いもイイのだけれど、やはり視覚的にインパクトが強いこうしたギャグ演出の方が、個人的には「王道」であって「普遍性」もあるようには思えるのだ。


 ちなみに、このオッチャンを演じていたのは、女丈夫でも良家の子女であったキョウリュウピンク=アミィ結月(あみぃ・ゆうづき)の執事「ジェントル」役を務めていた島津健太郎(しまづ・けんたろう)である。「ジェントルマンだよ!」という反復セリフは、それ単独でも笑えるものにはなっているのだが、『キョウリュウジャー』を視聴していた我々「大きなお友だち」には二重の意味で笑えるギャグでもあったのだ。


 しかし、一歩引いてマニアックに観てみれば、『キョウリュウジャー』とは完全に差別化ができていた竜星の演技もたしかに見事だったのだが、おもいっきりのブルーカラー(肉体労働職)とホワイトカラー(事務職)で両極端なキャラクターを、完全な別人として器用に演じ分けてしまっている島津の技量にも脱帽なのだった。


 さらにマニア的には、『キョウリュウジャー』の悪の軍団・デーボス軍のレギュラー幹部であった「怒りの戦騎ドゴルド」のスーツアクターでもある、JAE(ジャパン・アクション・エンタープライズ)所属の清家利一(せいけ・りいち)が年輩のチンピラ役で顔出し出演しているばかりか、ドゴルドの口癖だった「腹立たしいぜ!」を叫んでみせていることには、個人的には感涙した(笑)。


スーパー戦隊OBばかりで脇役が埋まっていたという、マニア歓喜のキャスティング!


 いや、特撮変身ヒーロー番組マニアから見たお楽しみは、こればかりではない!


●放火犯のリコは杉本有美(すぎもと・ゆみ)!(『炎神戦隊ゴーオンジャー』(08年)須塔美羽(すどう・みう)=ゴーオンシルバー)
●リコの母は斉藤レイ!(『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)敵組織オルグの女幹部ツエツエ)
●リコの母の主治医は榊英雄(さかき・ひでお)!(『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)黒木タケシ(くろき・たけし)司令官)
●詐欺師・ワタルは山田裕貴(やまだ・ゆうき)!(『海賊戦隊ゴーカイジャー』ジョー・ギブケン=ゴーカイブルー)
●不動産屋は伊藤陽佑(いとう・ようすけ)!(『特捜戦隊デカレンジャー』(04年)江成仙一(えなり・せんいち)=デカグリーン)
●強盗は山本康平(やまもと・こうへい)!(『忍風戦隊ハリケンジャー』(02年)尾藤吼太(びとう・こうた)=ハリケンイエロー)
●ヘルズフェイスは相馬圭祐(そうま・けいすけ)!(『侍戦隊シンケンジャー』(09年)梅盛源太(うめもり・げんた)=シンケンゴールド)
写真屋店員は海老澤健次(えびさわ・けんじ)!(『炎神戦隊ゴーオンジャー』石原軍平(いしはら・ぐんぺい)=ゴーオンブラック)
●ニュースキャスターは平田裕香(ひらた・ゆか)!(『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年)女敵幹部メレ)
●ランジェリーショップ店員は小宮有紗(こみや・ありさ)!(『特命戦隊ゴーバスターズ』宇佐見ヨーコ=イエローバスター)
●ホステスは山崎真実(やまざき・まみ)!(『轟轟(ごうごう)戦隊ボウケンジャー』(06年)敵女幹部・風のシズカで、本作での役名も風間静香(かざま・しずか)!・笑)
●赤井の父である警視総監(!)は山下真司(やました・しんじ)!(『獣電戦隊キョウリュウジャー』でも主人公ダイゴの父・桐生ダンテツ=キョウリュウシルバーを演じていた!)


 これではもう、完全に『スーパーヒーロー大戦(たいせん)』である(笑)。いや、スーパー戦隊に出演後、「次のステージ」を重ねてきたことにより、当時のイメージを払拭したどころか、なかには面影(おもかげ)をも残していない者もいるくらいなのであった。詐欺師ワタルを演じていた山田なぞは、短髪になっただけのハズなのに、云われなきゃ全然誰だかわからない!


 個人的には、


●おもいっきりのチャラ男の不動産屋を演じた伊藤
●妙な威圧感があったファンキー野郎の写真屋を演じた海老澤


 このふたりの演技が、気弱なオタクとして設定された赤井が最も苦手であろう性格類型の人物として、その芝居によっても絶妙に表現されていることが印象に残った(笑)。


 特に伊藤は、面接場所を間違えた赤井を徹底的にバカにするかなり長いセリフを、ワンカットの長回しで云い切っているさまが実に見事であった――デカグリーン=江成が得意としていた「逆立ち」を、ナゼか彼が事務所で披露するあたりは完全な楽屋オチであったが――(笑)。


 彼らスーパー戦隊OBの熱演には、『キョウリュウジャー』の役者さんたちもこんなふうに成長していく姿を、今後とも暖かく見守ってあげねば……と思わせてくれるほどのものもあったのだ。もっとも、本作での好演を見るかぎりでは、将来のことをそれほど心配する必要もないようにも思えたものだけど。


性的多様性の実現なのか!? ギャグでもBL描写が当たり前のように実現してしまう当今!


 「妄想(もうそう)の役者」こと黒田賢(くろだ・けん)を演じたのは、イアン・ヨークランド=キョウリュウブラック役の斉藤秀翼(さいとう・しゅうすけ)。これまたプレイボーイのナンパ師だったイアンとは正反対の女性恐怖症であり、しかも蚊の鳴くような声でボソボソとしゃべるばかりか、アヒル口になったりもするのだ(笑)。


 その黒田は、同じ劇団の「切れ者の役者」こと緑慎太郎(みどり・しんたろう)に恋をしていたりもする(爆)。
――緑慎太郎も立風館ソウジ(りっぷうかん・そうじ)=キョウリュウグリーン役の塩野瑛久(しおの・あきひさ)が演じたが、緑自身はソウジとあまり変わらないキレやすいキャラであった(笑)――


 黒田の「妄想」として、両腕を広げて黒田を迎え入れようとする全裸姿の緑などという、ボーイズ・ラブ描写が何度も挿入されたりもする(爆)。
 現在でもスーパー戦隊の男性キャラを題材にした、20世紀だと「やおい」と呼称されていた「BL」同人誌が市場をにぎわせているようであるが、本作ではついにそれが映像化されてしまったのであった! 「BL」についても、男性オタク間でも「一部の女子オタ間ではそういう受容がされていることを空気のように知っていて、今となっては特に驚きも反発もしなくなった……」どころか好意的な「笑い」としても機能する! といった意味では、世の中は筆者も含めて悪い意味ではなく随分と変わったものだよなぁ。都心の劇場などではやはり黄色い悲鳴が飛びかっていたのであろうか?(笑)


 ただ、同じ坂本監督が手掛けた地下女子プロレスを描いていた映画『赤×ピンク』(14年・角川映画・)におけるヒロインたちのレズ場面などもそうであったが、白バックを背景に黒田と緑がカラんでいる場面もまた、実に美しい映像に仕上がっており、まったくイヤらしい印象は感じない。むしろ、実に「神聖」なものとして表現されているような印象すらをも受けるのだ。


 その逆に、デパートの女性向けランジェリー売場で黒田と緑が抱き合ってキスをしたのを見て、BL好きであったのか大興奮して失神してブッ倒れてしまったランジェリーショップ店員・小宮有紗の太モモを強調したフェッティッシュなアングルで捉えたカットの方が、倒錯的だがイヤらしいものがあった(笑)。


 「ドS(エス)の役者」こと女子高生・桜川カオリ(さくらがわ・かおり)がその色香(いろか)で、担任のマジメそうな教師――なんと、東映の諸田敏(もろた・びん)監督が演じたが、あまりにもそれっぽい!――を職員室で骨抜きにする場面にしてもそうだったが、坂本監督は「日本でいちばん制服姿の女性をエロく撮れる監督」であるようだ(爆)。


――カオリはキョウリュウピンク=アミィ役だった今野鮎莉(こんの・あゆり)が演じていた。やたらと「ウザっ!(ウザったい)」というセリフを連発して、あらゆるキャラに蹴(け)りを入れまくるだけの暴力女キャラであった(笑)。長身で元気そうでカラッとしたまだ女子高生の彼女にはピッタリな役だったが、彼女だけは演技力がまだまだ未熟なので、さらなる「次のステージ」を用意してあげた方がよいのではなかろうか?(笑)――



 個人的には『仮面ライダーウィザード』(12年)の3大ヒロインである、


●薄幸のメインヒロイン・コヨミを演じた奥仲麻琴(おくなか・まこと)
●稲森美紗(いなもり・みさ)=敵女幹部メドューサと、稲森真由(いなもり・まゆ)=仮面ライダーメイジを二役で演じた中山絵梨奈(なかやま・えりな)
●サブヒロイン・大門凛子(だいもん・りんこ)刑事を演じた高山侑子(たかやま・ゆうこ)


を主役に据えた『TOEI HERO NEXT』ならぬ『TOEI HEROINE(ヒロイン・笑) NEXT』を、坂本監督にぜひとも撮ってほしい(爆)。


 本作『俺たち賞金稼ぎ団』の主題歌は、この奥仲麻琴が所属するアイドルグループ・PASPO(パスポ)によるものだった。そして、本作の公開初日の舞台挨拶でともに立った奥仲の姿に坂本監督は、


「PASPOの姿の『まこっちゃん』を初めて見て、鳥肌が立った!」


と、すっかり鼻の下を伸ばしていたそうだし(笑)。


しかし、マニア受けする「ネタ」だけで語るなかれ! 「ドラマ」たりえてもいたのだ!


 スーパー戦隊OBネタだけを羅列してしまうと、本作にはそれしか見どころがない作品なのかと思われてしまって、逆効果になってしまうかもしれないので大急ぎで補足しておくが、本作はコミカルながらもドラマ自体はキチンとしていたのだ。


 自身には他の劇団メンバーとは違って演技力には欠けていると悩んでしまう主人公青年・赤木の葛藤。


 リコを逃がしてしまったのではなく、彼女の無罪を直観したから、実は見逃してしまったのだと語ってみせた警官・青木。


 赤木もリコに遭遇して、シングルマザーとして生きている彼女の生真面目な人格から無罪を直観して、劇団の仲間たちにはないしょにしてしまう。


 ないしょにしていたことがバレてしまって、劇団メンバーとの間で起きる悶着。


 ラストに全員の大奮闘の末に明かされる、放火殺人事件の真相!


……といったところで、そういった意味ではイロモノのテキトーで退屈な作品などでは決してなく、ストーリーの起承転結も実にハッキリとしており、登場人物たちへの感情移入もさせられる、物語の基本・いろはを満たした良作にも仕上がっていたのだった。

2014.7.19.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2015年準備号』(14年8月15日発行)~『仮面特攻隊2015年号』(14年12月28日発行)所収『俺たち賞金稼ぎ団』評より抜粋)


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ウルトラマントリガー』(21年)中盤各話評 ~Z・リブット・ティガ客演! 『ティガ』とは似て非なる並行世界を舞台とした後日談と判明!

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ウルトラマントリガー』(21年)最終回 ~新世代ウルトラ各作終章の出来も含めて賛否総括! 光と闇を包摂する真理!?

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『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』(21年) ~2大戦隊共闘を劇的に盛り上げるための助走台ドラマとは!?

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正続『白魔女学園』評! 坂本浩一監督映画・公開7周年記念!
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