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マクロス7序盤&中盤評 ~SF性よりも精神主義!? 虚を突き殲滅ではなく、真に歌のみで平和に導くことは可能か!?

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マクロス7(セブン)』序盤&中盤評 ~SF性よりも精神主義!? 虚を突き殲滅ではなく、真に歌のみで平和に導くことは可能か!?

(文・T.SATO)

マクロス7』 〜序盤評!

(1994年11月執筆)


 『マクロス』と聞いては世代人の血が騒がずにはいられない。『ガンダム』や『マクロス』の看板がついていれば、出来はどうあれ、とりあえずはチェックを入れていたであろうことはまちがいなし!(笑)


 とはいっても、筆者も海千山千(うみせんやません)だし、観る前に過剰にウキウキワクワクしていたり、ツマラなかったら過剰にののしるほどにはアオくはないけれど。


 さてさて、『マクロス7(セブン)』本編。もとより初作『超時空要塞マクロス』(82年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990901/p1)からでも12年がたった今、かつての『マクロス』マニア諸氏の思い入れも適度にウスれているだろうから、ある程度は自由に世界観を改変したりズラしたりすることも構わないとも思うし、それによって面白いドラマができるのならばむしろカンゲイするくらいだ。


 特に本作の設定面で好感を持ったのは、敵のエイリアン(?)種族が生体エナジーとでもいうべき『マクロス』らしからぬ、いやリアルロボットものらしからぬ、一般的には非科学的・非物質的(?)なものを奪取せんとする連中であることだ! これはもう、女児向けTVアニメ『美少女戦士セーラームーン』(92年・)の敵種族の妖魔たちとも大差がない(笑)。


 反発は大きいだろうが、これは90年代に『マクロス』を復活させるにあたっては、正しい選択であったとすら筆者は捉えているのだ。


 10年前の80年代前中盤ならばいざ知らず、異種文明との遭遇によるカルチャーショック・テーマなぞというSFチックなテーマは、アニメマニアの過半もスレてしまった現在では、そんなにカウンターカルチャーな衝撃力をもう持ちえないだろう。


 『マクロス7』でも前作『マクロス』を上回って、すでに地球圏を遠く離れて外宇宙を航行中という大設定があるけれど、そんなものは90年代においてはセンス・オブ・ワンダーなワクワク感を呼びさましやしない。
 ファースト『マクロス』において「反重力エンジン」を始動させたら艦体を突きやぶってエンジンだけが飛んでいってしまったという同作初期編の描写に、そんなに濃くはなくても、当時のSFアニメファンなら心の奥底でさもありなんと思っていたシチュエーションが、さりげなく映像化された痛快さ・センスオブワンダーさで拍手喝采できたある意味でウブな時代は、スレたSFマニアだけでなく一般のアニメファンにとってでさえも、宇宙SFのブームが過ぎ去った今となってはとうに過ぎ去ったものなのだ。


 だから、ベタな意味、狭義の意味での「SF」をねらわないこの作品の方向性は正しいと思う。そして、本作の敵陣営側の設定は、この作品が「SF性」より「精神主義的なテーマ」(たとえば熱血パワーが奇跡を起こして世界を救うとか!・笑)というアリガチだけれど、普遍的なエンターティメント指向寄りにシフトしたことを同時に示しているのだろう。


 そして、何より見た目に単純明快な、今後の展開ではともかく、第一印象としては明快な「悪」の設定、あるいは「悪事」の描写は、日曜朝11時という時間帯で放映されるのにふさわしい、小さなお友だち(笑)にもわかりやすくさせるための、タコツボマニア向けだけではないバランス感覚も感じられて実によいのだ。
 余談だが、昨1993年の『機動戦士V(ヴィクトリー)ガンダム』(93年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990803/p1)の敵陣営・ザンスカール帝国も、ウラ設定や思想的なバックボーンの深さはともかく、ビジュアル的にはいかにも「悪」! もしくは「敵」! 「帝国」! といったところが、ライト層にもわかりやすくて取っつきやすくさせるという意味では、実によかったと思うのだ。


 そういったことは決して視聴者への媚びではない。青クサい、あるイミで素朴な80年代前半的なリアル指向を卒業した、幅広いターゲットに向けての大人の態度、大人の余裕がある態度でもあるのだ。
 表層的にはじゃっかん媚びて間口を広げてみせても、作品テーマには変化がない。そーいったことは充分可能であるというのが筆者の持論でもある。芸術至上主義なりディテール面での妥協なしが、無意味なわかりにくさで間口を狭めたり、そんな作劇をする我のみを潔し(きよし)とする、鼻についてキリキリ・ギスギスしたものになるのであれば、そんなものに真にエポックメイキング(時代を作る)なパワーなどがハラまれようハズがないのだ。


 さてさて、改めて今度こそ、『マクロス7』本編。PART2ものは正編に匹敵するべきだ! などという期待が個人的にはなかったせいもあるかもしれないが、ほどほどのテンションを維持しつづけていると私見する。
 若者バンドが野外のライブ会場で歌いっぱなしの#1は、制作者にとってもかなり実験的なものがあったと思うが、とりあえず退屈もせずに鑑賞できた。歌唱ロックのみで、BGMは一切なし(#2以降も同様!)。主人公たちのロックバンドのネーミングも、「Fire Bomber」(ファイアーボンバー)という、テレずにヒネることもなく奇をてらうこともない、ベタベタ真っ正面なネーミング!(笑)


 ただし、作品世界の雰囲気やカラーの提示。スタッフの思惑(おもわく)以上に、潜在的な部分で作品の方向性を規定してストーリー展開をも牽引していく、力作にはよくある不可視な雰囲気パワーの獲得には一応、成功していたと思う。


 残念なのは、ナゾの敵側のメカのフォルム・外見が、我らが可変戦闘機・バルキリーとそんなに大差がなかったこと。画面上のメリハリというのか戦闘シーンがじゃっかんわかりにくいのだ。この点に関しては、ファースト『マクロス』における敵・味方のメカデザイン・カラーリングの対比の明快さに劣ってしまったと云わざるをえないであろう。……と思っていたら、某話において、別の惑星に向かった開拓船団のバルキリーに酷似しているとかいないとか。なにかの伏線であるようだ。というか、敵は吸血エネルギー種族の異星人ではなかった?


 現在、初期8話くらいまでの視聴。ストーリー展開自体は実にスローで似たような話が連続しており、流用バンクカットも多用されており(笑)、今のところは市井(しせい)のバンドメンバー少数の個性と日常だけをじっくりと描いている。
 本作のヒロインであるバンド歌姫・ミレーヌ嬢は14歳のワガママ娘だから、これまた若者でも一応の成人男性である主人公青年・バサラとは年齢差が大きいことからも、マジメな恋愛劇があるとはとても思えない。しかし、キーボードの色黒無骨な兄ちゃん(オジサン?)、ドラムの無口な長身姐ちゃんなどは、パッと見は無頼なロッカーでも、中身は頼りになりそうな常識人っぽくて好印象だ。


 そして毎回ラストになると、なぜか空襲警報があって(笑)、われらがナゾの主人公・熱気バサラが、ドコからカッサらったのか、新型バルキリーこと名前もベタベタなファイアーバルキリー(!)にて宇宙空間へとひとりで出撃!
 しかも人型に変型するや、特撮戦隊もの電脳警察サイバーコップ』(88年・東宝)の主役ヒーロー・ジュピターの顔を想起させる、機能的には意味がないハズの人間の目鼻口型の意匠が付いていて(笑)、由緒あるバリキリーの伝統と狭苦しいメカフェチマニアのこだわりを踏みにじるかのような(笑)、リアルロボットというよりかはヒーローロボット(スーパーロボット)のような真っ赤っかな出で立ちで……。


 「オレの歌を聞けーーー!!!」


 の号令一下、操縦桿を兼ねたエレキを奏でながら、宇宙の戦場をかけめぐって、敵味方の弾幕の雨をアクロバティックに避けながら、歌いまくるワンパターンな展開をココまで引っぱるのも、個人的には実に面白い!――エッ? イヤですか?(汗)――


 結果的にここまで執拗にやられると、しかも武器を一切使わずに戦闘行為もせずにストイックに「歌」だけを歌って、戦場で行動されてしまうと、今風のチャランポランな若者像の安易な転写を超えた、あるいはそれらを含みつつも物語的なプラスアルファがあるキャラクターの芯にある心意気に興味を抱かされざるをえない。なんなのだ! コイツは!?(笑)


 敵のエイリアン種族(?)による、『マクロス7』艦内に潜入してのドラキュラもどきの暗躍描写も面白い。


 ……まったくの余談だが、それに比べてもっとシンプルな舞台・スジ立て・キャラデザの女児向け(?)TVアニメ『魔法騎士(マジックナイト)レイアース』(94年)が、その内容自体はムズカしくはないのに明快さとカタルシスに欠いており、ゴチャゴチャとした内容になっているのは何事だ!?(笑) このテのアニメにこそ子供番組的な王道を突っ走ってほしかったのに……。余談終わり。


 本作『マクロス7』には大傑作になる! というような多大な期待もしていない代わりに、ほどほど以上に楽しませてくれそうだナ、という予感がある。……というか、けっこう気に入っている(笑)。そんなワケで、今後とも温かく見守っていくつもりだ。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『きみこそ勇者』号数失念(94年12月発行)投稿文「晩秋にTV評(94年秋季番組評)①」より抜粋)


(後日付記:「敵のエイリアン種族」と記述していますが、最終的には「エイリアン」ではなかったことが劇中で判明していくのはご存じの通り)


マクロス7』 〜中盤寸評

(1995年4月頃執筆)


 80年代前半にはリアルロボットアニメの信者だった筆者も、今そのテの作品をやっても決して革命的ではないし、マニアだけがウケる独り善がり作品ならば、ガキ向けの方がエエやんけ(笑)と思うクチ。


 そんなスレた筆者にも好印象の『マクロス7』。制作者の意図は不明だが、『美少女戦士セーラームーン』のごとく精神エナジーを奪う幼児にもわかる悪事(笑)、そこから推測されるSF性より熱血が世界を救うという、より普遍的なテーマへの傾斜、無意味な複雑さではなく市井のバンドメンバー少数の人格・心理をじっくり描く点に、タコツボマニア向けではない健全さを感じたのだ。


 その上でよく見ると、作品前半では主人公バサラの「歌」は敵に対して効果がなく(!)、人々がたまに認めてくれても、それは彼の「歌」そのものではなく、「体を張った行動」の方だったりするという、実にイジワルな作劇。主人公・バサラと歌姫・ミレーヌが、劇中内での初作『マクロス』の映画化(笑)において主役男女を演じるも、撮影中に敵陣営のホントの攻撃に遭遇して、あの根拠不明な自信に満ち満ちていたようにも見えたバサラがラストシーンで自身の無力を、かの「ミンメイ・アタック」をもフィクションではなかったのか?(大意) とついつい吐露するエピソードがあったりするという、「歌で平和を!」というよりも「歌で敵を驚かして殲滅していただけかもしれない!?」という、初作の歌姫・ミンメイと初作そのものに対する疑義&否定的な観点の導入までもが果されていたのにはビックリ!


 しかしいろいろあって、あげくの果てにシリーズのターニングポイント回では、巨大怪獣(! 劇中での名称はこの大宇宙に太古から存在していたらしきプロトデビルンなる精神生命体?)に対して、Dr.チバが発明した胡散(うさん)クサい設定の「歌エネルギー」(笑)でもって、一機にて対峙するファイアーバルキリーと我らが熱気バサラ! といった荒唐無稽な熱い図も登場! リアルというよりもドラマチック、熱血少年バトル漫画チックだというべきシチュエーションだが、物語一般の在り方の根源の方まで考えてみれば、フィクションとはかくあってしかるべし!


 アニメ史的なインパクトとしてはともかく、『マクロス』初作自体は各話単位では出来のバラツキが激しかったハズだから、冷静に客観的に見たところでの平均点では『7』の方が高いのではなかろうか? 初作における『マクロス』世界の太古の星間文明における人類の原文明・プロトカルチャーの設定もシリーズ後半では登場したが、できれば設定のタネ明しで「結び」とするのではなくって、バサラたちの圧倒的な情念がベタでも本作のラストを導いていくことを期待したい。


(了)
(初出・失念。直上とは別の同人誌か、アニメ誌の読者欄に投稿してボツになった文だったかと記憶・汗)


(後日付記:……というワケで、『マクロス7』に対する筆者の最終的な評価はかなり高いです!)


[関連記事] ~「マクロス」シリーズ作品評

超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(84年) ~シリーズ概観 & アニメ趣味が急速にダサいとされる80年代中盤の端境期

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990901/p1

マクロスプラス MOVIE EDITION』(95年)

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マクロス7(セブン)』(94年)序盤&中盤評 ~SF性よりも精神主義!? 虚を突き殲滅ではなく、真に歌のみで平和に導くことは可能か!?

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『地球防衛家族』(01年)

  (ワープロのフロッピー(汗)から発掘できたらUP予定)