『ウルトラマンギンガ』序盤評 ~低予算を逆手に取る良質ジュブナイルだが、それゆえの危惧もアリ!?
『ウルトラマンギンガ』後半評 ~悪のウルトラ兄弟&ラスボス級怪獣グランドキング登場! だけれども!?
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧
ウルトラマンギンガも客演する映画『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年)が公開中記念! とカコつけて……。映画『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』(13年)評を発掘アップ!
『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』 ~ジュブナイルじゃない!? アイテム争奪コント劇で「見せ場」重視!
(文・久保達也)
(2013年9月15日脱稿)
筆者がここ7~8年ほど在住している静岡県では上映がないので(爆)、公開初日の2013年9月7日(土)、JR桜木町駅前の横浜ブルク13(サーティーン)まで早朝から東海道線で足を延ばして、初回9時30分の回を鑑賞。
主人公の礼堂ヒカル(らいどう・ひかる)ら、幼なじみの仲良し高校生4人組が、なんと降星山(ふるほしやま)でスパークドールズ=怪獣人形探しに没頭!
メインヒロイン・石動美鈴(いするぎ・みすず)とレギュラー少年・渡会健太(わたらい・けんた)が見つけたのは、大蟹(おおがに)超獣キングクラブ(!)の人形!
その写真を携帯電話で見せられたサブヒロイン・久野千草(くの・ちぐさ)は、
「この怪獣マジでキモい」
などとヌカす……(爆)
人形化してしまったウルトラマンタロウがヒカルと千草のチームにいたら、
「これは怪獣ではない。超獣だ!」
とフォローしてくれたであろうが(笑)。
ヒカルとタロウが存在を関知していた6体の怪獣人形を無事に集める一同。
そこに人間大サイズの異次元宇宙人イカルス星人が出現!
美鈴を人質に6体の怪獣人形をヒカルから奪い取ったイカルス星人は、それらの怪獣人形の足のウラの模様を、悪の変身アイテム・ダークスパークで読み込みして、次々とダークライブ!(=巨大怪獣へと変身!)
さらに、自身の体もダークスパークでリードすることで、イカルス星人は6体の怪獣と合体し、暴君怪獣タイラントが誕生する!!(感涙!)
ジュブナイルですらない! 「気張り」のないアイテム争奪戦のコント劇! 「見せ場」重視のバトル!
オイオイ、いつものテレビシリーズのジュブナイルな青春ドラマはいったいどこへ行ってしまったんだ!? そもそもドラマが全然ないではないか!? テレビシリーズでも毎週こんな調子でサクサクやってくれてもよいではないか!?(笑)
『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)テレビシリーズ分割放送の前半の最終回にあたる第6話『夢を懸(か)けた戦い』で、ヒカルたちのライバル美少年・一条寺友也(いちじょうじ・ともや)が、
「『僕の夢』は、ウルトラマンギンガを倒すこと!!」
などと発言したことに対してヒカルは、
「そんなことは気張らずに、笑顔で云うもんだぜ!!」
と返していたが、そのセリフをそっくりそのままテレビシリーズの『ギンガ』にお返ししたい気分である(笑)。
合体怪獣タイラントに魅(み)せられた者なら子供でも思いついてしまうような、これまでアリそうで実はなかったネタを、そのまま絵にしただけ(笑)の今回の映画の方が、少々肩に力が入っているような感があるテレビシリーズの『ギンガ』よりもよほど面白いということを改めて実感してしまったのであった。
昭和ウルトラシリーズの世界観に直結していた『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)のシリーズ構成・メインライターを担当しただけあってか、「ウルトラの父」や「ウルトラの母」にとどまらず、映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹)に登場したタロウの幼年期の姿である通称・コタロウを登場させてみたり、「ギンガ&ジャンナイン VS 闇の巨人ティガダーク&宇宙海人バルキー星人」のタッグマッチまでをも描いた赤星政尚(あかほし・まさなお)の脚本回である先に挙げた第6話ですらもが、コタロウやタッグマッチよりも友也のダークな内面の方が印象に残ってしまうほどに、『ギンガ』の作風は悪い意味で「ドラマ主導」の面が強いように感じられる。
「円谷プロの夢」が平成ライダーとスーパー戦隊を倒すことであるならば(?)、やはりあまり気張ることなく、もっと気楽に笑顔で主張ができるような、怪事件ありきでそれに対するリアクションや捜査に探検、ヒーローや怪獣の魅力や能力を前面に出してバトルに決着していく作品づくりをするべきだと考える。そのための助走台として捉えるならば、今回の『ギンガ劇場スペシャル』はけっこうイイ線をいっていると個人的には思えるのだ。
その意味では、本作では『劇場スペシャル』とばかりに大掛かりなミニチュアセットが組まれていたり、ギンガの新たな必殺技が派手にCGで描かれるということもない。テレビシリーズ並みの予算と規模でアクションや特撮が済まされているあたりは、単に超低予算作品だからだろうが(爆)、結果的には良い意味での「気張り」のなさの象徴として捉えてもいいのかもしれない――ちなみに、オープニング映像や主題歌すらも、テレビとまったく同じであった(笑)――。
しかし、それでも「見せ場」はかなり充実しているように感じられるのだ。ウルトラマン映画としては前作にあたる『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)ももちろん悪くはないのだが、バトル・シチュエーションや特撮演出面では必ずしも負けてはいないと個人的には感じているくらいである。これはやはりドラマの流れに押しつぶされることなく、「見せ場」が「見せ場」として立派に機能していたからでもある。
そして、いつものテレビシリーズの『ギンガ』並みの特撮セットだからこそ、そこにイカルス星人(60年代)・暴君怪獣タイラント(70年代)、ウルトラマンティガ(90年代)・暗黒破壊神ダークザギ(00年代)と、まさに各世代にアピールするかのような人気キャラが続々と登場することにより、相対的(笑)にスペシャルな印象が醸(かも)し出せているといった側面もあるのだ。
●等身大のイカルス星人が右手からおなじみのアロー光線を発射したり!
●タイラントの猛攻にピンチに陥ったウルトラマンティガをジャンナインが救い、切断したタイラントの右腕のカマをティガがタイラント目掛けて空中高くから蹴りこんだり!
●ダークザギがあいかわらず宙に向けて吠えるようなポージングのあとに、そのままラリったアクションを展開したり!
●ヒカルがティガへ、そしてギンガへと、ウルトラマンへの「二段変身」を披露したり!
さらには、いつもの降星山の周辺を飛び出して、ダークザギとギンガの超高速スピーディーな空中戦が、砂漠や溶岩が流れる火山地帯で展開されたり!――明らかに日本ではない! どこまで飛んでいったのだ!?(笑)―― 特撮側のヒーローや怪獣キャラそれぞれに実に華(はな)が感じられる演出が用意されていたこともまた大きいのである。
派手派手に活躍させているヒーローや怪獣などの特撮キャラの描写と連動するかのように、本作の本編レギュラーキャラたちはまるで童心に帰ったかのようにシンプルな行動原理だけで動いており、怪獣人形探しに精を出して発見してはハシャいでみせたり、ヒーローVS怪獣バトルに一喜一憂(いっきいちゆう)したりに徹しており、いわゆる一般的な意味での「人間ドラマ」はほとんど演じてはいないのだ。そして、このことこそが変身ヒーロー作品「本来の魅力」を充実させることに大きく貢献(こうけん)していると思えるのである。
いや、本作では本編部分でさえ、イカルス星人が化けた美鈴が両腕を前に突き出しブラブラさせる独特のポージングで、いちいち語尾にベタベタな「~イカ」をつけて話してみたり、正体がバレそうになってあわてるや、まるでネコ耳コスプレのようにニセの美鈴の頭からイカルス星人の巨大な耳が露出してしまったり、ネコ耳もといイカルス耳でバレバレなのにもかかわらず、ホンモノの美鈴を指さして、
「こっちがニセモノ!」
とヌカすなど、深刻な人間ドラマなどで見せるのではなく、そうしたコミカルな演技で見せていく喜劇的な演出がなされているのである!(美鈴ちゃんも、大幅に株が上がったぞ・笑)
合体怪獣タイラントを構成する怪獣! 初登場時はブラックキングもその一体だったじゃなイカ!?
タイラントは周知のとおり、ウルトラ兄弟に倒された怪獣たちの怨念(おんねん)が合体して誕生した怪獣である。
『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』での初登場以来、小学館の学年誌や怪獣図鑑の類(たぐ)いにおいて、
●頭は竜巻怪獣シーゴラス
●耳は異次元宇宙人イカルス星人
●腹は宇宙大怪獣ベムスター
●腕は殺し屋怪獣バラバ
●足はどくろ怪獣レッドキング
●背中は液汁超獣ハンザギラン
●尾は大蟹超獣キングクラブ
などと、タイラントの各部を構成する怪獣たちについては、現在に至るまでこのように紹介されてきた。
しかし、いつの間にか、肝心なことが忘れ去られてしまっている。タイラントの後頭部にある巨大なツノは、用心棒怪獣ブラックキングのものではなかったのか!?
本作で登場した着ぐるみにしろ、バンダイから発売されていた『ウルトラ怪獣シリーズ』のソフビ(ソフトビニール人形)にしろ、このブラックキングのツノはしっかりと造形されているのだ! にもかかわらず、いつしかこれが完全に無視されるようになり、誰も語ろうとはしないのである!(笑)
本作の劇場売りパンフレットにも掲載されているように、初登場時は小学館の学年誌の記事においても、
「角(ツノ)はブラックキングのものだ」
とたしかに紹介されていたのだった!
だが、この記事をしっかりと再録しているのにもかかわらず、パンフの本文ではこの設定になんら触れていない。
映画本編でもブラックキングは合体はおろか、登場すらしていないのだ。リアルタイムでタイラントに出会えた世代としては、いったいいつからこうなってしまったのか、不思議でしかたがなかったのだが……
アレっ!? 先に挙げた当時の学年誌の記事。よく見ると、「角はブラックキングのものだ」と紹介しているのにもかかわらず、そこに掲載されている写真は「宇宙大怪獣アストロモンス」じゃねぇか!(爆)
ひょっとしたら、この学年誌編集部、あるいは当時の写植屋さんの凡(ぼん)ミスが原因で、タイラントの後頭部のツノはブラックキングのものであるという設定が定着しなかったのではなかろうか!?
こんな40年も前の当時の設定を克明(こくめい)に記憶している筆者からすれば、この設定が改変、というかスッカリ忘却(ぼうきゃく)されてしまっていることが残念でならない(笑)。
ちなみに、『帰ってきたウルトラマン』(71年)終盤か『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)序盤が放映されていた当時、小学館の学年誌に、
●頭がブラックキング
●胴体がベムスター
●腕が岩石怪獣サドラ
●足が古代怪獣ツインテール
という合体怪獣が、それぞれのスチール写真をコラージュして掲載されたことがあったのだ!――着ぐるみではスーツアクターの頭が入っている方の、逆立ち体型のツインテールの両脚(?)のような二股のシッポである部分が上下逆転して、この合体怪獣の頼りない両脚(爆)を構成しており、千草ではないがマジでキモかったものだ(笑)――
これなぞはまさにタイラントの「原案」とも呼ぶべきものである。やはり、こうした発想は「ドラマ性」や「テーマ性」を脚本家たちに要求したTBS側の橋本洋二プロデューサーや円谷プロ側のスタッフよりも、子供たちに日々直接に向かい合っていた小学館側の稚気満々(ちきまんまん)な童心を残した編集者たちのものであったのか! と、今日(こんにち)の観点からしても誠に興味深く感じられてくるのだ。
その小学館のオリジナル合体怪獣の中でも、重要な頭部に位置していたブラックキングが、タイラントのツノを構成する重要な要素であったのにもかかわらず、忘れ去られてしまうとは……
筆者は『ギンガ』第1話で、ヒカルが最初に発見したスパークドールズがブラックキングであったことを、今回の『劇場スペシャル』の伏線だとばかり思いこんでいたのに……(笑)
6体の怪獣人形を手にして得意げのイカルス星人に対し、
「おい、イカルス星人! 肝心なヤツを忘れてんじゃないのか!?」
と、ヒカルが得意げにブラックキングの人形をイカルス星人に見せびらかす!
「おっと、こりゃイカん! そんなイカしたヤツを忘れていたとは! まっ、イッカ。そいつなしでもタイラントは充分、強イカも」(笑)
などと、イカルス星人はそれでも6体の怪獣と合体! ツノがない不完全な状態でタイラントが登場!
ツノがない状態でタイラントが登場したことで、タイラントのツノはブラックキングのものなのだ! と40年ぶりにダメ押しして、あるいは学年誌独自の勝手な設定だったのだとしても(汗)、40年後の後出しの追加設定として(笑)、子供たちやマニア連中にも周知をはかってみせる!
しかし、ソフビ人形を売るためにもツノがある完全体のタイラントを登場させないワケにはいかない(笑)。よって、タイラントの体内に潜んで主導権を握っているイカルス星人は、タイラントの腕こと超獣バラバの腕からクサリ付きで伸びるカマでヒカルを攻撃して、弾き飛ばしたブラックキングの人形をゲット!
タイラントの体内でイカルス星人はブラックキングの人形をリード! タイラントの頭頂部にブラックキングのツノが生えてきて、完全体のタイラントが出現してバトルを開始!!
しかし、ティガとタイラントのバトルの最中に、
●初代ウルトラマンがレッドキング
●ウルトラセブンがイカルス星人
●ウルトラマンジャックがシーゴラス・ベムスター・ブラックキング
●ウルトラマンエースがバラバ・キングクラブ・ハンザギラン
といったように、それぞれのウルトラマンがかつての対戦相手に限定して、かつてウルトラ4兄弟がエースに超獣ブロッケンを倒す方法を伝授したように、タイラントの各部分の弱点をウルトラサイン(!)でヒカルに教えるとか!(笑)
たとえ人形状態のウルトラマンたちはふだんは意識がなかったとしても、その瞬間だけは目覚めたことにすればよい!
もちろんヒカルにウルトラサインは読めるはずもないから、タロウがそれらを解読してヒカルに伝える! ギンガスパークを片手に握ってさえいれば、ヒカルでもウルトラサインが解読可能になるといった設定でもよい! タロウもまた「兄さんたち、無事だったんですね!」と安心してみせる(笑)。
タイラントの弱点に次々に攻めこむことでティガが勝利する!
あの栄光のウルトラ兄弟たちがいささか変則的なかたちの助言だけでも助勢さえすれば、超低予算作品でも一点豪華主義的なスペシャル感! 作品自体にサラブレッドな血統感をも醸し出すことができただろう!
まぁ、怪獣レッドキングやベムスターは『ウルトラマンメビウス』(06年)の時代に造形した着ぐるみがまだ残っていたハズだから、タイラントがいきなり登場するのではなく、少しだけでも単独で暴れてほしかったとは思う。
超獣キングクラブやハンザギランを新造する予算などはカケラもなかっただろうことは想像がつく(笑)。それらとの統一をはかるためにあえて単独で暴れさせなかったのかもしれないし、45分程度しかない短尺映画なので、泣く泣くレッドキングやベムスターの登場などはオミットしているのだろう内情なども推測はできるが、それでもこのあたりは少々残念だ(笑)。
身体の各所に強敵怪獣たちの特徴的なパーツをまとうことで、合体怪獣にそれらの怪獣たちのパワーも宿したように我々が感じてしまうのは、冷静に考えてみれば科学的・SF的ではなく非科学的・非合理的な心情である。どころか、各々(おのおの)の怪獣たちのパーツや文様などの「意匠(いしょう)」に何らかの霊的・神的・超常的なパワーを感じてしまう心性は、前近代の中世や古代ですらなく、もっと原始人的で呪術的な感性ですらあった(爆)。しかし、人間とは良くも悪くもそのような感性を失うこともまた永遠にないのだし、むしろそういった心情こそが普遍なのであって、それを積極的に活かしてみせることこそがヒーロー活劇の王道でもあるのだ!
それが証拠に、この合体怪獣タイラントともまったく同じ発想で、映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1)には究極合体怪獣ギガキマイラが、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)にも百体怪獣ベリュドラが登場していた。
『ウルトラQ』(66年)・『ウルトラマン』(66年)・『ウルトラセブン』(67年)といった第1期ウルトラシリーズの本編美術・特撮美術・怪獣デザインなどを手掛けたことで、第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちに神格化されてきた故・成田亨(なりた・とおる)は、ハッキリとした名指しこそ避けたものの合体怪獣タイラントのことを指したとおぼしき、既存の怪獣のパーツ・パーツが合体したようなギリシャ神話の神獣キマイラのような合体怪獣の存在は、デザインとしては邪道であるとして大いに批判をしていたものだ。
そのことで、自分のアタマで物事を考えずに先人の意見にただ屈服してそれのウケウリを繰り返すような一部の特撮マニアたちによって、このタイラントもまた酷評の憂き目にさらされていた時代も実に長かったのだ(汗)。
しかし、1988年12月26日(月)~30日(金)までの冬休み期間中の5日間、TBSローカルで朝10時からの90分枠の特番で、初代『ウルトラマン』再放送2本立てプラス各種トリビア情報の特別番組『おまたせ! 一挙大公開ウルトラマン大全集』なる特別番組が放映された折り、その1コーナーで当時の平日夕方の帯番組『ウルトラ怪獣大百科』(88年・テレビ東京)の影響だろう、ロケ先の幼稚園の園庭で園児たちが「好きな怪獣は何か?」というインタビューに答えて「タイラント!」と口々に絶叫していたことがあったのだ!
これを観て、筆者がタイラントにリアルタイム(74年1月4日)で遭遇した際と今現在(88年)とでも、合体怪獣といった存在に呪術的な強敵感といったオーラを感じてしまうような感性は変わらないのだな……と強く実感したものであった。
それからでも20年もの歳月が過ぎてしまった。しかし、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100211/p1)でライバルの青年が使役(しえき)する強敵怪獣として復活を果たしたタイラントは、今度は特撮マニアたちに特に反発を受けることもなく(汗)、どころかなぜか熱烈に好意的な歓迎まで受けて(笑)、その後は幾度も再登場を繰り返してみせる人気怪獣として復権を果たしたのであった!
巻末にはいつもの『スパークドールズ劇場』も! 短編映画『劇場スペシャル』の可能性!
なんと、巻末には『ギンガ』テレビシリーズ本編でもおなじみの人形劇『スパークドールズ劇場』までもが用意されていた。
そして、『ウルトラマンギンガ』放映中断ブランク後の第7話からの後半シリーズの放映が2013年11月20日に再開すること、映画『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』第2弾が来年2014年3月に公開されることを、タロウや怪獣人形たちがしっかりと宣伝していたのであった(笑)。
しかし、クリスマス商戦合わせの12月いっぱいでの後半シリーズ終了後、『劇場スペシャル』第2弾の公開まで3ヶ月近くもブランクがあるというのはいかがなものか? 『新ウルトラマン列伝』での『ギンガ』総集編の放映程度では、世間や子供たちの関心を持続させるには弱いと思えてならないのだ。
今回の『劇場スペシャル』第1弾のような映画が超低予算で時間をかけなくとも製作可能であることが判明した以上は、近年の平成ライダーシリーズの劇場版のように数ヶ月に1本のペースで短編映画などを公開するようなことはできないものなのか? 幼児たちの集中力の限界という観点からしてもそうだが、ブランクを空けて大作長編をつくるよりも、今回のような短編映画を定期的に連打していった方が世間や子供たちの注目度も高いだろう。
もっとも、『列伝』放送局の少なさと同様に、映画を流してくれる劇場の少なさといった問題もあるのだが(汗)、それが改善されるのもまた本作の興行成績次第といったところか?
『ギンガ』前半おさらいと、ソフビ人形ラインナップに見る『ギンガ』後半への期待!
そのためにも、『ギンガ』後半シリーズには前半シリーズからの大幅な路線変更を望みたいところだ――撮影自体は前半シリーズとのまとめ撮りでもう終わっていることだろうが(笑)――。
第3話『双頭の火炎獣』もそうだったが、第4話『アイドルはラゴン』もまたバトルの中に悪い意味で「人間ドラマ」を持ちこみすぎてしまっている。いくら悪意はなかったとはいえ、ドタキャンしたアイドルの代理としてメインヒロイン・美鈴がグラビア撮影に応じたことは、アイドル志望のサブヒロイン・千草を傷つけるには充分すぎるものであり、それに目をつけたバルキー星人によって千草が海底原人ラゴンと化す流れ自体はアリかもしれない――地球どころか降星町の存亡にも関わらない非常にミクロな事件であっても、何気にけっこうヘビーで残酷な展開の人間ドラマだったとも思うが(汗)――。
しかし、特撮怪獣バトルの方はそれまでのやや鬱(うつ)な心情ドラマをいったん断ち切って、一転して壮快にやらないとヒーロー活劇としてはバランスがとれないし、カタルシス(爽快感)にも欠けてしまうのではなかろうか? それまでの本編ドラマの鬱ノリのままでバトルを展開するなよ!(笑)
どうせなら、『タロウ』第48話『日本の童謡から 怪獣ひなまつり』でタロウが酔っぱらい怪獣ベロンにそうしたように、
「目を覚ませ、千草!」
と、ギンガがラゴンにバケツの水をぶっかけるとか(笑)、コミカルなバトルでここぞとばかりに中和してみせればよかったのに……
とはいえ、そのドラマがいったん終わったあとのラストシーンに、悪のロボット・ジャンキラーが突如として出現してギンガを徹底的に砲撃し、飛行形態に変型する派手な見せ場の場面があったことは、そこは1話完結の予定調和を破ってみせるパターン破りの要素として、そして飽きっぽい21世紀の子供たちに対する、次回も観たくなるようなヒキ(引き)の要素としても実によかった。
しかし、逆に云うならば、単体作品としてヒーロー活劇の尺度で観た場合に、そのドラマ性はともかく、第4話もまた第3話と同様にキツかったとは思うのだ。初期編でやや陰鬱な題材を連続で列挙させたら、やはり子供たちも一般層も今時の若い特撮マニアたちも逃げてしまう危険性が高いと思えてならないのだ。
もっと明るくシンプルに、悪の手先の代理人である等身大のバルキー星人と鬼ごっこ(笑)をしているだけのようなノリの方がよいのに……とも思うけれどもなぁ(汗)。
あと、正義の巨大ロボット・ジャンナインが当初の悪役姿であったジャンキラーとして、本作『ギンガ』では再登場したことには、筆者は『ギンガ』序盤評(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)の原稿で苦言めいたことを呈してしまった。
しかし、ジャンナインが初登場したオリジナルビデオ作品『ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』(11年・バンダイビジュアル)において、ジャンキラーがウルトラマンゼロが率いるウルティメイトフォースゼロのメンバーたちに説得されて改心してジャンナインとなった展開を思えば、『ギンガ』でもそれが踏襲(とうしゅう)されるであろうことは容易に予測されたワケであり…… 浅慮(せんりょ)を恥じるばかりである(汗)。
当初はイヤなイヤなイヤなヤツであったものの、ヒカルに夢を持つことのすばらしさを教えられ、心が揺れ動くこととなった友也が操るメカとしては、前例踏襲主義からもジャンナインほどふさわしいものはない!(笑)
単純にウルトラマンギンガとジャンナインが揃い踏みする姿を見ても、かねてから今時の「ウルトラ」作品ならば、防衛組織にも巨大ロボットを装備させるくらいのことをしろ! と主張していた筆者としてはやはり感慨深い!
バンダイのソフビ人形『スパークドールズ ウルトラ怪獣500』では、2013年9月上旬に暗殺宇宙人ナックル星人・グレイが発売されている。つまり、『ギンガ』前半のレギュラー悪であったバルキー星人と交代して、このナックル星人が後半シリーズに登場するレギュラー悪となるようだ。
2013年10月発売分のラインナップの中には、往年の『ウルトラマンタロウ』(73年)に登場したエフェクト宇宙人ミラクル星人(!)や、『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)に登場した宇宙悪霊アクマニヤ星人(!)など、第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちには黙殺されてきたものの、昭和の全ウルトラシリーズを等しく愛してきたマニアたちにとっては中堅どころであった、驚愕(きょうがく)ものの怪獣キャラクターたちが含まれている。これらの怪獣たちが『ギンガ』後半シリーズにも登場することを期待したいものだ。
さらに2013年11月には、映画『ウルトラマン物語』で宿敵を務めたボリューミーな巨体を誇った怪獣・グランドキングの強化形態とおぼしき超合体怪獣スーパーグランドキング(!!)が通常の倍の定価というスペシャル物件扱いで発売されるのだとか!
今回の『劇場スペシャル』の感動ふたたび! となることを、『ギンガ』の後半戦や来春の『劇場スペシャル』第2弾に期待しつつ、本稿はこれにて幕とさせていただこう。
[関連記事]
『ウルトラマンギンガ』番外編「残された仲間」 ~傑作! 『ギンガ』総論・マイナスエネルギーを材とした『80』『ギンガ』比較
[関連記事] 〜暴君怪獣タイラント・登場編!
『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟2』 ~東光太郎! 幻の流産企画!
『ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO』(08年)#5〜8 キール星人グランデ・暴君怪獣タイラント・偽ウルトラマン!
『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年) ~岡部副社長電撃辞任賛否!
『ウルトラゼロファイト』(12年) ~おかひでき・アベユーイチ監督がまたまた放った大傑作!
[関連記事] ~ウルトラシリーズ劇場版
『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY(ファイナル・オデッセイ)』(00年) ~賛否合評・万人が超人たりうる一般性を宿命性の物語に回帰させた是非!
『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(06年) ~大傑作映画!
『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟2』 ~東光太郎! 幻の流産企画!
『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年) ~ティガあっての新作だ!
『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年) ~岡部副社長電撃辞任賛否!
『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』(15年) ~第2期ウルトラの「特訓」「ドラマ性」「ヒーロー共演」「連続性」も再考せよ!
『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17年) ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!
『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年) ~ヒーロー大集合映画だが、『タイガ』最終回でもあった!
『シン・ウルトラマン』(22年)徹底解析 ~賛否渦巻くワケも解題。映像・アクション・ミスリードな原点回帰・高次元・ゾーフィ・政治劇・構造主義・フェミ!
https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220618/p1
[関連記事]
特撮意見② 怪獣デザイン ~今こそ成田3原則の絶対化を止め相対視を!
特撮意見⑤ ウルトラも敵味方でカプセル怪獣を召還、順列組合せバトルせよ!
★今こそ昭和ウルトラの全遺産を活かせ!★ 〜ドラマやテーマよりも、ウルトラ兄弟・歴代怪獣・世界や年表・児童の神話的年代記やジャンク知識収集癖へ訴求せよ! 武器や鎧・テーマパークな未来都市・2回変身や等身大バトルなど身体性の快楽も!
http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060415/p1
ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル [同時収録] 大怪獣ラッシュ ウルトラフロンティア DINO-TANK hunting [DVD]
(#4~6)
ウルトラマンギンガ 2 [DVD]
#ウルトラマンギンガ #劇場版ウルトラマンタイガ #ニュージェネクライマックス
『ギンガ』劇場版評 ~タイラントが全ウルトラ怪獣大投票で16位記念!
#タイラント #暴君怪獣タイラント #ウルトラマンギンガ #ウルトラマンギンガ劇場スペシャル #ウルトラマン大投票 #全ウルトラマン大投票 #全ウルトラマン
公開当時の『ギンガ』劇場版評! ~タイラントのツノはブラックキングのツノ!?
#タイラント #暴君怪獣タイラント #ウルトラマンギンガ #ジェネスタ #ニュージェネスターズ