(2018年2月17日(土)UP)
『アベンジャーズ/エンドゲーム』 ~タイムパラドックス&分岐並行宇宙解析!
『ジャスティス・リーグ』 〜スーパーマン・バットマン・ワンダーウーマン共演作は、ヒーロー大集合映画の教科書たりえたか!?
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『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
(2016年4月29日(金・祝)・日本封切)
ヒーロー内紛劇は成功したか!? 日本特撮が立ち遅れた原因は!? 世界観消費へ!
(文・T.SATO)
(2016年7月1日脱稿)
『アベンジャーズ3』!? 『キャプテン・アメリカ3』!? 『アイアンマン4』!?
スイマセン。アメコミ洋画にくわしくない筆者は、アメコミ・ヒーローがワンサカと登場する本作のことを、てっきり同趣向の洋画『アベンジャーズ』(12年)シリーズの『PART3』で、それが何の事情かシャレっ気かは知らねども、カッコをつけた小賢しい変化球ねらいで、改題されたモノかと憶測してました。
つーか鑑賞後も、作品の内実的にはアメコミヒーロー集団・アベンジャーズの内紛劇だから、『アベンジャーズ PART3』にしか筆者には見えない(汗)。
てゆーか、発端の事件自体が『アベンジャーズ PART2』こと『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(15年)での出来事じゃん。
加えて、あとで知ったことだけど……。
本作って位置付け的には、初出が太平洋戦争開戦の年である『1941』(イチ・キュウ・ヨン・イチ!)の、アメリカ国旗=星条旗をモチーフにした古き良き野暮ったい(汗)デザイン&スーツで、巨大な円形の重厚そうな鉄の盾をブーメランのように投げ飛ばして戦う、アナクロ(時代錯誤)なスーパーヒーローにして、21世紀に冷凍睡眠から目覚めたという新設定でリメイクされた洋画『キャプテン・アメリカ』(11年)シリーズの第3作目なんだって!?
そ、そうなのかなぁ。筆者にはこの映画の主人公・視点人物は、バットマンのような金持ち富豪社長にして、メタリックレッドな硬質の強化スーツを身にまとった、初出がコレまた1963年で今年で御年53歳になられる(違う)、21世紀の御代にリメイクされた洋画『アイアンマン』(08年)シリーズのあのオジサンにしか見えなかったけど(爆)――どうぞお前の眼は節穴だと罵ってください!――。
多数のヒーローにイイ意味で濃淡! 物語後半ほど伏線・動機ウス(笑)で増員! 2大陣営のヒーロー同士が対決!
アイアンマン(陣営)VSキャプテンアメリカ(陣営)!
それが筆者の印象だ。……てか、まぁだれが観ても、同様かとは思うけど。
多数のアメコミヒーローが登場はするものの、もちろん均等に描かれてもワケがわからなくなるので、描き方には濃淡があり、そしてその作劇は正解ではあるだろう。
中核となるアメコミヒーローたちは徹底的にその人となりや心理を描き、そーでもないガヤで賑やかし的なアメコミヒーローは、かの洋画『バットマンvs(ブイエス)スーパーマン ジャスティスの誕生』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160911/p1)におけるワンダーウーマンのように、物語の後半へと至るほど、取って付けたように突如として伏線もなく(?)登場するようになる。
まぁずーっと懊悩したり禅問答をしていてもアレなので、エンタメ作品としては最後は怒涛のアクションに有無を云わさず雪崩れこむのも正解だろう。
我らのウルトラマンや仮面ライダーよりも古い、共に初出が60年代前半のスパイダーマンやら蟻ん子サイズのアントマンやらのリマジネーション版ヒーローたちは、スカウトされたり誰それのファンだから……と、ノンポリシーのケーソツな理由でそれぞれの陣営に加入してしまう。……ヒーローたるもの、それでイイのか?(笑)
ミクロ化できる『アントマン』は、昨2015年にリメイク版洋画で銀幕デビューを果たしたばかり。今回はクライマックスの白昼の飛行場を舞台にした東西が雌雄を決する関ケ原で、劇中では呼称されてなかったけど設定によると「ジャイアントマン」なるウルトラマン・サイズの巨大ヒーローへと巨大化!
「アメコミはリアルで、日本のヒーローは非リアル」なぞというテーゼ(?)を鼻で笑う、「質量保存の法則」という科学的原理を無視したシークエンスを見せてくれます(笑)。まぁおそらくSF的なウラ設定もあるのでしょうけど、そんなものは言い訳にすぎなくて、単に巨人と等身大ヒーローたちの闘いを見てみたい! という欲望に沿ったシチュエーションではあるだろう。倫理的にはドーかと思うけど、お約束で停泊していたジャンボジェット機を勢いあまって壊していた(笑)。
ただ……。このへんのビジュアルもさすがアメリカ! と「おフランスざます」的に「植民地の民の奴隷根性」に陥るのもドーかナと。
近年の日本特撮でも、『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091213/p1)、『仮面ライダー×仮面ライダー W(ダブル)&ディケイド MOVIE(ムービー)大戦2010(にせんじゅう)』(共に09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101220/p1)、『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.(フィーチャリング)スーパー戦隊』(14年)などにおける、巨大化可能なライダー「仮面ライダーJ」の白昼・自然光でのデジタル巨大特撮などで観たような既視感のある絵面だし。もちろん日本の方が勝っているとも云わないが、今となっては過剰に見劣りするほどでもナイだろう、とそんなことも想起する。
『スパイダーマン』の方は、21世紀に入ってからでも「無印」が3作(02・04・07年)、仕切り直しの『アメイジング・スパイダーマン』が2作(12・14年)も公開されている。しかし今回は、またもリブート・仕切り直しで、21世紀以降では3人目となる、すでに活躍中の新たなスパイダーマンである弱そうな(笑)高校生が登場!
本作『シビル・ウォー』がお披露目となって、観客に親近感を与えて、今後の新々『スパイダーマン』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170901/p1)の興行を少しでも優位に、かつマーベル・コミックもとい『アベンジャーズ』世界観シリーズの1本として、それらのファンをも誘致しようという作戦なのだろう。わかります(笑)。
日本特撮がヒーロー共演ネタで立ち遅れた原因とは!?
以上、突き放してシニカル(冷笑的)に書いてしまったが、コレらの個々の作品をクロスオーバー・フュージョンして、より壮大な世界観を構築して、ヒーローたちの共闘や、場合によっては内紛劇を構築して、観客をワクワクさせること。それこそが日本のジャンル作品も目指すべき方向性であると思える。
このように、過去の歴史的な経緯を踏まえずに、シンプルに書いておけば、その主張に賛同してもらえる日本の特撮マニアの方々は多いかもしれない。しかし、それに引き換え、アメコミヒーローものの企画力は素晴らしいけど、日本のヒーローものの企画力は……などという方向に流れるようであれば、それは筆者の本意ではナイ。
日本のヒーロー作品のクロスオーバーや共闘作品がうまく構築・作劇できていないのは、受け手の方の側にも歴史的な原因があると思う。
もうすでに日本の特撮マニア評論の歴史も、40年近い歴史があるので、瞬時に紐付けして全的に把握することがムズカしくなっているのだろうけど、思い出してみてほしい!(……アッ、まだ読者のみなさまが生まれてないころですネ?・汗)
かつて、日本特撮を再興するためには、「怪獣」は「恐怖」でなければイケナイ! 「ヒーロー」は「神秘」の存在でなければイケナイ! 子供に媚びた幼稚なものであってはならない! そしてそれらのテーゼを実現するためには、怪獣やヒーローは「既知」の存在ではなく「1回性」の初見の存在の方が望ましい! 歴代シリーズの先輩ヒーローとの共演は幼い視聴者たちにとっては夢の共演であったかもしれないが……ウンタラカンタラと奥歯に物が挟まったような物言いをして、シリーズ化――イコール、シリーズ化こそが原初的なクロスオーバーでもある!――を作品の質的な堕落であるかのようにやんわりと否定してきた風潮が長らく続いてきたのであるのだから……。
強者集結のカタルシスの普遍性! 年表・地図のごとき世界観消費の楽しさ! その両者を日本特撮も目指せ!
まぁたしかに単独の作品としてのクオリティ――ドラマ性とかテーマ性――だけを問うた場合には、それらの意見は頷けなくもない。というか一理も二理もある。
しかし、翻って、そこにエンタメ性という尺度・モノサシを当てはめてみた場合にはドーなのか? ヒーロー・強者たちが集結するカタルシス(爽快感)・ワクワク感。この感慨は低劣なものといえば低劣なものなのだが(笑)、単体ヒーローが登場するだけでも憧憬や高揚が発生するのに、単体で主役を張れるヒーローが複数登場することによるカタルシスはいかばかりであることか? コレはコレで「恐怖」や「神秘」に負けじ劣らず、いやそれ以上に原初的で根源的で普遍的な感慨ではあるまいか? そうであるのならば、ここにこそ訴えかけることにも理はあるのである!
加えて、マーベル・コミックスだけでなく、『スター・ウォーズ』(77年・日本公開78年)や『スタートレック』(66年)に『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)などもそうであるように、個別作品に対する鑑賞だけで興味を終わらせず、長大なシリーズを歴史年表や世界地図のように扱い、外伝・後日談なども含む仮想空間の中でファン・マニアたちを遊ばせる。
すでに平成の初頭にオタク第1世代の評論家・大塚英志は、コレを「物語消費」(ISBN:4044191107)と名付けて――個人的にはコレは「世界観消費」と呼称するのが適切だと思えるが――、その萌芽のひとつとして70年代のウルトラマンシリーズも挙げていた。
1930年代に始まるアメコミの歴史も約80年。ヒーローVS・ヒーロー共闘・ヒーロー大集合漫画が登場しだしたのは、初登場から20〜30年も経った1950〜60年代のことである。そこからさらに50年が経ってようやっとハリウッドの大作映画として流通するようになったのである。そう考えばアメリカだってその歩みは遅々としたものである。日本の現状をムダに悲観してみせることもナイだろう。
私見では大傑作とは云い難い。しかし、ヒーローVS・内紛モノにテーマ的優位性があるとすれば…
以上、観客の情動面におけるメリットを論じてきたが、作品のクオリティの面でも、ヒーロー共闘・ヒーローVS・ヒーロー内紛劇で、優位性を発揮することはできる。
なんというか、「ヒーローVS悪人や怪人・怪獣」であれば、多少の紆余曲折はあっても、「前者」が勝利をおさめるのに決まってはいる。そして、それは単に「パワー」の問題ではなく、「道義・倫理」の面でも正しいことですらある。もともと、物語の構造的にも「後者」の方が分は悪いことは決定している。
しかし、「ヒーローVSヒーロー」の場合は異なる。一応、両者は共に「正義」であり、物語の構造的に「パワー」「道義」両面でも優劣が決定した存在ではなくなる。つまりは物語の先が見えない……もしくは見えにくくなるのである。あるいは結果論ではあるけれど、どちらにも理がある、ふたつなり複数の「正義」を描くことも可能となるのである。
で、結論を急ぐけど、個人的には、出来の悪いヒーローVSものとして『バットマンvsスーパーマン』、出来の良いヒーローVSものとして『シビル・ウォー』と整理して、両者を対比し、その作劇術の差異を剔抉(てっけつ)してみたかったのだが、アテは外れた(笑)。
個人的には『シビル・ウォー』も『バットマンvsスーパーマン』ほどではないけど、ワリとこなれていない生硬な作りで、題材とテーマ自体はイイけれど、それをうまく料理して腑に落ちる感じでは観客へ提示できていない作りのように思えたからだ。
さほどにはノれなかったという前提の上で、パーツ(部品)としてホメるべきと思えた箇所は、国家権力寄りのスーパーマンの分が悪くてフリーな立場のバットマンの方が分が良いように描かれていたと私見する『バットマンvsスーパーマン』とは異なり、国家権力寄りになったアイアンマン陣営とフリーな立場のキャプテン・アメリカ陣営を完全にイーブンに描いていたことだと思える。
まぁ個々人の思想信条もあるので、大声では云わない方がイイことかもしれないと一応日和ってみるけど、カビ生えコケむしたような左翼的思想、権力は悪で、庶民は善であるという陳腐・凡庸な図式自体に筆者個人はアキアキとしており(笑)、権力者であろうが庶民であろうが人間なんて悪人ばっかだヨ! ドッチも悪だよ! あるいは権力者にも善人がいれば権力を善用してもらえばイイし、庶民でもヤンキーDQNやパワハラ上司や小さなイジメはOK的な輩であれば糾弾されてしかるべきだ! とゆーことに尽きる。
マジメに考えれば銃刀法と同じで、強大すぎる力は刀狩りして、国家が独占か免許制度にした方がイイだろう。ヒーローだって悪に落ちたり、あるいは悪意はなくても誤った行為をしかねない。本作でも実際に悪意はなかったのに大規模被害が出てしまっている。そう考えれば、ヒーローを国家といわず民間組織でもイイけれど、登録して管理する方法が一概に誤っているとも思われない――と同時に民主(=官僚制)的な法律・ルールに則した手続きを経て意思決定をしていたら、緊急事態に即応できない問題もあるけれど――。
……てなワケで、筆者個人はアイアンマンのオジサンの見解に同意します(笑)。
この作品の美点は、両陣営のトップともに双方に理があることをわかっているらしきことだろう。それゆえにクレバーすぎて、娯楽活劇作品としては対比・対立がスッキリしない弱点があるともいえるけど(笑)。
ドチラかが非を認めて折れるのではなく、両者の闘いは決着がつかずに終わる。「正義」の相対化などというニヒリズムではなく、「正義」という「目的」はまぁまぁひとつでも、そこに至る「手段」の相違といったところに決着した本作は、ラストではお互いを真の意味で敵視しているのではなく認めており、将来の危機には共闘することも匂わせる。
そーいう点では、テーマ決着的には高度だし、正しいとすら思うけど……。スイマセン、作品としては地に足が着いていない感じがして、せっかくのテーマも浮わついてしまって、筆者の心は打たれませんでした(汗)。
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