(2018年2月17日(土)UP)
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『デッドプール』
(2016年6月1日(水)・日本封切)
『デッドプール』 〜合評1
『デッドプール』評(2016年6月1日公開)
(文・くらげ)
マーベルコミックの異端児、不死の傭兵“デッドプール”がついに一枚看板で映画化です。
あらゆる傷を再生する特殊能力(ヒーリング・ファクター)と特殊部隊仕込みの体術にマシンガントーク。気分次第でヒーローにもヴィランにもなり「第四の壁」を破って観客やスタッフに話しかける無敵の超人。それがデッドプールです。
不死身ながら所属を嫌う一匹狼なのでスーパー兵器とかスーパー乗り物とかありません。ちょっとした任務もジェット機で移動するX−MENに対しデッドプールはタクシーで移動します。しかも金を払いません。
映画ではどんなデタラメをやってくれるかと期待したんですが、顔を醜くされ恋人を奪った敵に復讐を誓う「オペラ座の怪人」風の割とまっとうな話でした。第四の壁とか言っても日本じゃギャグマンガとかでさんざんやってる手法だし。
デッドプールを演じるのはライアン・レイノルズでプロデューサーを兼ねてのリターンマッチです。というのも『ウルヴァリン:X−MEN ZERO(2009)』で一度デッドプールを演じてるんですね。ハゲ頭に上半身裸で日本刀を振り回すシャブ中のヤクザみたいな風体でしたが。
金を貰ってチンピラを懲らしめる日々を送っていた元特殊部隊のウェイド・ウィルソンの前に、ある日娼婦のヴァネッサが現れ、似たもの同士の二人はあっという間に燃え上がって結婚します。このヴァネッサがオッサンが夢見る「純粋な娼婦」そのもので、エマニュエル・ベアール似の美女でスタイルも抜群なのに下らないサブカルネタにもつきあってくれます。ウェイドが「君ってパソコンで作ったみたいな理想の女性だ」と言うのも無理ないですね。
その幸せな日々がウェイドの末期ガンで絶たれます。「幸せはコマーシャルみたいなもので、すぐにクソみたいな本編が始まる」という言葉にウェイドの悲しい人生観が象徴されてますね。
そこで悪のミュータント・エイジャックスが支配する怪しげな研究所の実験でミュータントになるわけですが、よく考えるとエイジャックスは形はどうあれウェイドを末期ガンから救ったわけで、顔が醜くなったから復讐ってかなり無茶な話です。
デッドプールが「顔は醜くなったけど君のおかげで命が助かって恋人にも再会できた。ありがとう」と考える人間ならだいぶ違ったかも。まあそこが性格破綻ヒーローのゆえんですか。
このデッドプールのかなり無理のある復讐劇に手を貸すのがX−MENのコロッサスと坊主頭のゴス少女(ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド)ですが、デッドプールの性格にあきれながらも要所要所ではちゃんと助けてくれる頼れる仲間です。
コロッサスは『X−MEN:フューチャー&パスト(2014)』版よりこっちの方が人間臭くて良いですね。ロボットみたいな外見に似合わずティーンエイジャーの朝食の心配をし、デッドプールにヒーローの道を説き、血を見てゲロを吐く心優しきナイスガイです。敵の女のポロリに動揺するところを見ると童貞ですね。金属人間だからしょうがないか。
デッドプールは「これから『127時間(2010)』のネタバレをするよ!」と手をギコギコ切り落としたり、エンドロール後にいきなり『フェリスはある朝突然に(1986)』になったりするので、小ネタが分からない人はネットで検索すると良いでしょう。ゲーセンで取った指輪の「ボルトロン」は日本の『百獣王ゴライオン(1981)』のことです。ギブアップせい!
ちなみに吹き替え版のデッドプールは加瀬康之ですが、もうちょっと軽い感じが良かったかなと。見るまでは全盛期の広川太一郎で妄想してました。
「俺ちゃんデッドプール、泳ぐの市民プール。それいけやれいけ公園の池。俺ちゃんが好きな物チミチャンガ。な〜んつって、ちょんちょん。」
『デッドプール』 〜合評2
私的快楽優先のヒーローは、日本のヒーロー界隈でも80年代以降ならば珍しくないヨ!(笑)
(文・T.SATO)
(2016年7月1日脱稿)
パチモンのスパイダーマンみたいな、ウエットスーツだか皮だかのピッタリしたスーツを身にまとった、ハイテンションで軽薄どころか犯罪者一歩手前のスーパーヒーロー!
正義や大義のために戦っていません。我が身の欲望と快楽のために戦っているように見えます。エンタメ作品だから、ウェルメイドに落すために、ご都合主義的に結果的に正義を守れているだけで、それをカネをかけた特撮&アクションで壮大にやるからカタルシスも全開なのであって、リアルに考えれば、自堕落な生活の果てに身を持ち崩して「悪」に身をやつしてしまってもムベなるかな、というヤツでしょう(笑)。
日本においても80年代以降は、滅私奉公は個人主義を否定し戦前的な軍国主義・全体主義に通じるものとして、中間のグラデーションやX軸のみならずY軸やZ軸で4象限や8象限の分類方法は忌避されて、赤勝て白勝て巨人か阪神かレベルの左右二元論からの二者択一で、「公」のために戦うよりも「私」や「個」のために戦うヒーローの方が圧倒的に優勢になってしまいました。
その伝で云えば、デッドプールさんも日本においては、そんなに斬新な存在ではないような気もします。初期・平成ライダーシリーズにおける脚本家・井上敏樹センセが描いてきたキャラ連も良くも悪くもそーとーにアナーキーだったり、斬新だったし(汗)。
なととイジワルなツッコミをとりあえずしてみました。筆者個人は古典的なストイックなヒーローの方がスキですけど、それ以外のヒーローを受け付けられない! というほどオケツの穴が小さくはナイので、本作もOKです。どころか、1本の作品としてのまとまりやベクトル感だけで云えば、『バットマンvs(ブイエス)スーパーマン ジャスティスの誕生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160911/p1)や『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(共に16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160701/p1)よりも本作の方が、そのヒーローの人となりは別として、テーマ的な高尚さも別にして(笑)、1本の映画としては断然に面白いじゃん! と思ってしまった次第です。
興行的なことは知らないけど、エンタメとしては本作の方が上!
ただ、こんなイロモノ・ヒーローの作品でも、『X−MEN』のひとり――と姉ちゃんヒロイン1名――が出てきて、後半は終始出ずっぱりでラストバトルにも参加しているやないけー! 『X−MEN』と同一世界のお話なのかヨ、知らなかったヨ(笑)。
作品としての良心というか、作劇的なブレーキというか、一応のデッドプールに対する批判的、というか否定はしないまでも相対化はする客観的な視点については、ストイックというよりも愚直の域に達している、スローモーで機転は利かなさそうだけど善良そうで人格的な重しはあるX−MENの全身金属人間が担当してました。
ココでも「世界観消費」が!
こーいうのを見るにつけ、もう3年も前の映画『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z』(13年)に宇宙刑事を登場させるなら、事前に平成『仮面ライダー』に2代目・宇宙刑事シャリバンを、戦隊シリーズには2代目・宇宙刑事シャイダーを前後編でゲスト出演させて、用意周到にメディアミックスで盛り上げてほしかった……と死んだ子の歳の数を今日も数えるのでありました。
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- 発売日: 2017/06/09
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