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Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2 ~前作を凌駕する善悪変転作劇! 悪の美女の懊悩、正義の僧侶の闇落ちも!

虚淵玄脚本! 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 ~虚淵玄脚本の中華ファンタジー! 台湾の特撮人形劇の大傑作!
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 2019年10月25日(金)から虚淵玄(うろぶち・げん)脚本の中華ファンタジーThunderbolt Fantasy 東離劍遊紀(サンダーボルト・ファンタジー とうりけんゆうき)』の番外編映画『Thunderbolt Fantasy 西幽玹歌(サンダーボルト・ファンタジー せいゆうげんか)』が公開記念! とカコつけて……。
 日本でも2018年秋季クールに深夜ワクで放映された台湾の特撮人形劇にして大傑作『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』(16年)評をアップ!


『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 ~前作を凌駕する善悪変転作劇! 悪の美女の懊悩、正義の僧侶の闇落ちも!


(文・久保達也)
(2019年2月15日脱稿)


 かの虚淵玄(うろぶち・げん)が原案・脚本・総監修を務めることで、日本と台湾の共同で製作された、台湾の伝統芸能・布袋(ほてい)劇=人形劇による『Thunderbolt Fantasy(サンダーボルト・ファンタジー) 東離劍遊紀(とうりけんゆうき) 2(ツー)』が、2018年10月から12月にかけ、TOKYO‐MX(とうきょう・エムエックス)・BS11(ビーエス・イレブン)・サンテレビなどで、深夜枠で放映された。


*「風来坊」主役・優雅な「口八丁」・「赤毛の麗人」が織りなす中華ファンタジー


 前作『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191109/p1)は、200年前に魔界の軍勢が人類を滅亡させようと攻めてきた際、人類が魔神たちを魔界に追い返すことに成功した力をもつ刀剣類の中で、特に危険な力を秘めた剣をめぐり、主人公側と悪側との間で「お宝争奪戦」が繰り広げられる、実にシンプルな王道冒険ファンタジーであった。


 今回の2作目は、第1作目の第1話でヒロインの「お姫様」の兄が悪党に殺されたのが5年前だとして語られる続編である。


・声優の諏訪部順一(すわべ・じゅんいち)が声を演じる、黒髪で茶色や黒を基調とした質素な衣装を着た「風来坊(ふうらいぼう)」

鳥海浩輔(とりうみ・こうすけ)が声を演じる、白髪で青い羽毛のようなセレブな衣装に銀のアクセサリーをジャラジャラと飾りつけ、常にキセルを吹かせている、優雅(ゆうが)かつ飄々(ひょうひょう)とした「口八丁」


 このダブル主人公による、ボケとツッコミのかけあい漫才的な軽妙なやりとりを中心に、主人公側と悪側との間で「お宝争奪戦」が繰り広げられる冒険ファンタジーであるのは第1作目と同じだ。


 しかしながら後述するように、前作と比べると、かなりハードな趣(おもむき)が強くなった印象なのだ。


 前作の最終回で「風来坊」が魔神を封じる際に使った剣をはじめ、魔剣・妖剣・聖剣・邪剣を36種も封印した「魔剣目録」。
 これを魔界の軍勢の再来に備えて築(きず)かれた難攻不落の城の老城主に「風来坊」が預けようとするも、毒サソリの群れをあやつる「銀髪美女」の襲撃により、「風来坊」は「魔剣目録」の中から2種類の魔剣を奪われてしまい、それが悪用されることで惨劇が繰り返される。


 第1話の初登場時のセリフが


「ひさしぶりだな」


であり、


「風来坊」が


「あのときはすまなかった」


と返すことで、旧知の間柄であることが示される今回の新キャラで、赤い琵琶(びわ・楽器)を常にかかえた、盲目(もうもく)で超人的な聴覚をもつ「赤毛の麗人(れいじん)」。


 そして、この新キャラと、「風来坊」・「口八丁」のダブル主人公が、それぞれの思惑(おもわく)の違いによって離合集散を繰り返しつつも、魔剣を取り戻すために強者集結を重ねていく。まさに「平成」仮面ライダーシリーズなどにも通じる、実にヒロイックな群像劇・様式美・カタルシスこそが本作最大の魅力なのだ。


 序盤で「風来坊」は、毒サソリをあやつる「銀髪美女」によって体内に毒を注入され、洞窟(どうくつ)に潜(ひそ)むしかないほどの窮地(きゅうち)に立たされるが、そこに「口八丁」が現れ、


「困ったときは友の手を借りるのが人の世の習いだ」


と語る。
 第1期で相棒となるも、さんざん振り回された「風来坊」は「口八丁」を友として認めようとしないのだが、


「私の手を借りた時点でおまえは私の友なのだ」


と今回も「風来坊」を助けることで、自身の悪党退治のために利用してやろうという算段が、「風来坊」のみならず視聴者にも透けて見えるのだ(笑)。


 盲目だが聴覚とカンに優れた「赤毛の麗人」は、そんな「口八丁」を


「言葉も所業もうわべだけ。おまえは悪だ!」


と判断、一戦まみえるも、「風来坊」を解毒するためにその効力があるとされる角(ツノ)をもつ、人の言葉を話す「邪竜」を退治するため、ともに「邪竜」が住む「業火(ごうか)の谷」に向かう。


 ゾンビ軍団や口から火を吐(は)く直立歩行の巨大怪獣である「邪竜」に襲われるも、戦いを「赤毛の麗人」にまかせ、その強さを見極めるとして、自分はキセルを吹いて高見の見物を決めこむ「口八丁」に、


「おまえこそ、役立たずなら(ここに)置いていく!」


と「赤毛の麗人」は叫ぶ。


 自己紹介的な説明セリフではなく、こうしたバトルアクションにおける各自の行動描写こそが、そのキャラクターを深く掘り下げるための手法なのだと、実感させてくれる演出となっている。


 「赤毛の麗人」と「邪竜」に「のど自慢対決」(笑)をさせ、口から吐く炎の勢いが強すぎてひっくりかえった「邪竜」の角から、まんまと解毒の成分を抜いた「口八丁」の手口は、「邪竜」にまで「詐術(さじゅつ)だ!」と云われてしまうほど(爆)。


 「風来坊」が大軍勢に囲まれて絶体絶命の危機の最中(さなか)、第1期にも登場した魔界に住む猛禽(もうきん)類の足につかまって、空から「赤毛の麗人」が颯爽(さっそう)と登場、解毒剤を投げ渡された「風来坊」が服用するや、


「100回くらい生まれ変わった気分だぜ!」


と、マントを翻(ひるがえ)して見得(みえ)を切るに至るまでの流れは、それぞれのカッコよさを存分に描きつくした名演出であった。


*新キャラ「赤毛の麗人」の声優は、主題歌も熱唱するTMRの西川貴教


 なお、「赤毛の麗人」の声を演じたのは、虚淵氏の強い希望で第1期・第2期ともに主題歌を歌唱した歌手の西川貴教(にしかわ・たかのり)――90年代後半から00年代にT.M.Revolution(ティー・エム・レヴォリューション)の名義でヒット曲を連発。近年はアニメソングの女王・水樹奈々(みずき・なな)とのコラボも話題となった――。
 第1期のプロモーションの際に氏をモデルにして製作された人形が、第2期の撮影では流用されている。


 その喉(のど)には魔性があり、歌声がこれまでに厄介(やっかい)な騒動をひきおこしてきたという設定により、この「赤毛の麗人」は実に無口。
 しかし、彼の想いを代弁するのが、常にかかえている「赤い琵琶」の先端にある小さな「鬼の顔」なのだ。


 「口八丁」に対して、


「アンタは年がら年中しゃべりまくり。オレといっしょだ」(笑)


とホザくなど、「風来坊」や「口八丁」に対して憎まれ口をたたきまくり、よけいなことをしゃべると「赤毛の麗人」が赤い琵琶をかき鳴らすことで苦しんだりするコミカルな「鬼の顔」キャラは、その赤鬼のような顔からして『仮面ライダー電王』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080217/p1)に登場した正義側のイマジン(怪人)・モモタロスを彷彿(ほうふつ)とさせる。
 「赤い麗人」が赤い琵琶をかき鳴らして振り回すや、その音圧が多数の刃(やいば)となって周囲の軍勢を吹っ飛ばす威力(いりょく)は、『仮面ライダー響鬼(ひびき)』(05年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070106/p1)の必殺技として描かれた「音撃(おんげき)」をも彷彿とさせるが、琵琶の先端にある鬼の顔が


「へんけ~い(変型)!」


だの


くるりんぱ!」(笑)


と叫ぶと、「琵琶」が「必殺剣」に変型する稚気(ちき)マンマンな描写自体もまた、一見シリアスなようでも玩具的でチャイルディッシュな要素も多々備えた「平成」仮面ライダーにも通じる魅力を放つものだ。


*魅力的な悪役たち! 公権力を盾に虐殺を重ねる外道役人の「青髪メガネ」!


 今回の第2期が第1期よりもハード寄りの展開となったのは、新たに登場した敵キャラたちによるところが大きいものがある。


 幻術を遮断(しゃだん)可能なオシャレなフチなしの「丸メガネ」をかけた「青髪」で赤い衣装をまとうキザ野郎は、奪われた剣によって起きた惨劇は「魔剣目録」を所持していた「風来坊」が諸悪の根源だとして「悪党」に仕立てあげるなど、序盤から公権力を盾(たて)に汚職や虐殺(ぎゃくさつ)を重ねる「外道(げどう)役人」として描かれた。
 このキザな「青髪メガネ」が悪事をたくらむ際に、白い歯を見せていやらしく笑う口元をアップでとらえたカットがシリーズを通して何度も見られたのだが、第1期を含めこのような演出をされたキャラはほかには皆無(かいむ)であり、魅力的なキャラにあふれたシリーズの中で、こいつだけは唯一(ゆいいつ)の例外であるとして、明確な差別化がなされていたのだ。


 「口八丁」は第1期で「人生とは娯楽」(笑)を信条とするほどに、


「世の悪党どもをからかうことが、最大の生き甲斐(がい)だ」


と語ったが、その行動原理は「興(きょう)が乗るか否(いな)かが最も重要」なのであり、今回の第2期では、この「青髪メガネ」が「私のオモチャ」(笑)として「口八丁」のターゲットにされる。


 中盤では「風来坊」と「青髪メガネ」の軍勢の対戦中に、「口八丁」は「風来坊」を「悪党」呼ばわりして「青髪メガネ」に近づき、一時的に行動をともにするようになるが、第1期で「口八丁」の悪党退治に利用され、さんざんな目にあわされた「風来坊」が、「こりゃ放っておいても(青髪メガネは)運の尽(つ)きだな」と語るのが笑えた。


 一方、「青髪メガネ」の方も実は「口八丁」のたくらみを察知してだまされたフリをしていただけであり(!)、ハデな剣術バトルばかりではなく、こうした腹のさぐり合い・キツネとタヌキの化かし合いといった心理戦・スパイ戦が存分に描かれるのも本作の大きな魅力なのだ。
 「口八丁」は「青髪メガネ」が寝ている間に、幻覚を見破るメガネをフツーのメガネとすり替えるセコい戦法に出るのだが(汗)、それを「風来坊」に語る場面では、殷・周革命時の古代中国の名軍師・太公望(たいこうぼう)のように優雅に釣(つ)りを楽しんでいた(笑)。
 先述した「赤毛の麗人」が所持する赤い琵琶が『仮面ライダー電王』のモモタロスとするなら、その琵琶に「インチキ・キセル野郎」と云われてしまう「口八丁」は、「ボクに釣られてみる~?」が口グセのイマジン・ウラタロスといったところか?(爆)


*銀髪で色白の「サソリ使い美女」。悪辣と思いきや苦悩を見せ改心を仄めかすも…


 ただ、「青髪メガネ」以外の敵キャラは確かに「悪」ではあるものの、意外なほどに「人間的な魅力」が感じられ、魔剣に導(みちびか)れてさえいなければ、哀(あわ)れな末路をたどることもなかったのではないのか? と、おもわず感情移入せずにはいられないほどだったのだ。
 このあたりは虚淵氏の代表作『魔法少女まどか☆マギカ』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120527/p1)や、『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年)、アニメ映画『GODZILLAゴジラ) 怪獣惑星』(16年・東宝https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171122/p1)にはじまる『GODZILLA』三部作などに共通していた「虚無感(きょむかん)」・「無常観(むじょうかん)」が濃厚にただよっていたものだ。


 銀髪で色白の女(め)ギツネといった印象の、赤くて長い両手のツメが印象的な「サソリ使い美女」。
――「魔剣目録」から魔剣をとりだすために妖術を使う際の、両腕・両手のすばやい縦横反復の動きはさすが伝統芸能だと、感嘆(かんたん)の声をあげずにはいられなかったほどだ――
 彼女は魔剣を取り戻しに来た「風来坊」を、人間の精神を支配する魔剣で市民たちをあやつって襲撃させ、自身は町娘に化けて「風来坊」に助けを求め、背後からサソリの毒を注入して窮地に陥(おとしい)れるなど、徹底した悪辣(あくらつ)ぶりを見せる。


 だが、休戦を申し入れて共闘関係と見せかけた「青髪メガネ」にその魔剣を奪われてしまい、「風来坊」にも剣術ではかなわず、「サソリ使い美女」は悪の首領に忠義を果たせない無力感にさいなまれ、深い葛藤(かっとう)に苦しむ描写により、本来は実に生真面目(きまじめ)なキャラであることが掘り下げられていくのだ。


 その「サソリ使い美女」の心を救うこととなるのが、黒髪短髪が仏像や大仏のようにパーマした螺髪(らほつ)となっていて顔面が蒼白(汗)の「イケメン僧侶(そうりょ)」だ。
 彼はあらゆる所業において意味を見失い、その答えを求めるために行脚(あんぎゃ)の旅をしており、出会った者の要求を受け入れる代わりに、その意味を問いたださずにはいられない。


 雨宿りのために「サソリ使い美女」が住処(すみか)とする掘っ建て小屋に入った「イケメン僧侶」は、


「成果を早急に求めるのは報償を求める我欲にすぎず、それは忠節ではない。失敗しない範囲の行ないを地道に積み重ねていけばよい」(大意)


 などと、我々サラリーマンの視聴者からすれば目からウロコな説法で「サソリ使い美女」を諭(さと)すのだ。


 このあたりから「サソリ使い美女」に心の変遷(へんせん)、迷いや改心の兆(きざ)しが見られるようになる。
 それにも関わらず、いや、だからこそ皮肉にも、「風来坊」から奪ったもうひとつの魔剣で、それを見た者はその魔剣を手にせずにはいられなくなり、人を斬ることに最高の快楽をおぼえさせ、血を吸うことでその魔力が高まる剣の呼びかけに翻弄(ほんろう)されてしまい、その虜(とりこ)となることでさらなる悪行を重ねていくのだ!――赤い照明の中で人形が目をトロ~ンとさせる操演が実に秀逸(しゅういつ)だ――


 この魔剣の妖(あや)しい声を演じたのは、先述した『魔法少女まどか☆マギカ』の主人公・鹿目(かなめ)まどかや、『仮面ライダーゴースト』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160222/p1)のマスコットキャラ・ユルセン、2018年度の深夜アニメの最高傑作といっても過言ではない『SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190529/p1)の「新世紀中学生」(笑)の一員であり、黄色髪ツインテールで言動も態度もやたらと乱暴な低身長の少年・ボラーなどを演じた悠木碧(ゆうき・あおい)なのだ!
 そのロリ顔や低身長からファンには「子供先生」(笑)なる愛称で親しまれる彼女が、まさかこんな妖艶(ようえん)な声を出すとは夢にも思わず、これには「サソリ使い美女」でなくとも虜にならずにはいられない(爆)。


 再び悪行を重ねつつ、「これでいいのか?」と葛藤する「サソリ使い美女」の心を最終的に救ったのは、首領に忠義を尽くすための宿敵であったハズの「風来坊」だった。


 最終展開の手前で一騎打ちとなり、敗北した「サソリ使い美女」は、「弱者」にふさわしい落としどころとして、自身を斬るように「風来坊」に請(こ)う。


 だが、「風来坊」は


「勝った奴が生き残るのはあたりまえ。負けてなお生き残る奴は、もっと強いのが道理だろ」


と諭すのだ!


 これこそが、本作の世界観とさして変わらないような、人心がすっかり荒廃した弱肉強食の無法地帯と化した現代社会に最も必要かと思われる「心を救う力」であり、先述した『SSSS.GRIDMAN』で、自身の気にいらない人間を怪獣で殺していた美少女高校生・新条(しんじょう)アカネの心を救った、最終回でグリッドマンが放つ「フィクサービーム!」や、同級生の3人組「グリッドマン同盟」の呼びかけに匹敵するものではないのだろうか!?


 「サソリ使い美女」が魔剣であやつった民衆を斬れずにいた「風来坊」を、


「そこで迷うのがおまえの弱さだ」


と「赤毛の麗人」が民衆をすべて斬り殺してしまったり(汗)、ここは魔境であり「風来坊」の優しさは通用しないと「赤毛の麗人」が「風来坊」を評したり、


「あの男は、おのれよりも他人の血が流れるのを嘆(なげ)く」


と魔剣が語る場面なども見られたが、そうした実に殺伐(さつばつ)とした世界観の中で、「風来坊」の弱さ・優しさを強さに転じさせる展開こそが、弱肉強食の無法地帯に生きる現代人に対する虚淵氏の暖かいまなざし・エールを、最大に象徴するものだといえるだろう。


「おまえの強さは?」


と問いかけた「サソリ使い美女」に、「風来坊」は


「負けた奴の仕返しにおびえない。ただのバカともいえるがな。どうだ、オレはつえぇ(強い)だろ?」


と、こんな場面でも軽妙におどけて見せる「風来坊」こそ、本来の姿なのだが、それが


「何もかも失ったのに、むしろそれがすがすがしい」


と、「サソリ使い美女」の心をさらに浄化させていく。


 「サソリ使い美女」は自分を見つめ直すきっかけを与えてくれたとして、「イケメン僧侶」に流浪(るろう)の旅の同行を願い出る。
 だが、今度は彼が先述した妖しい魔剣の虜となっていたために(!)、短髪パーマから長髪ストレートへアとなり、質素な僧侶の衣装から全身黒の衣装に金のアクセサリーを飾りつけたハデな格好と化した「イケメン僧侶」に、皮肉にも斬殺されてしまうのだ!


 先述した新条アカネもそうだったが、こうしたいわば「破滅型」のヒロインこそ、筆者が最も好みとするところであり、アカネ同様、なんともいとおしくてたまらないのだ(爆)。


*正義の「イケメン僧侶」。無常感や俗世の軽佻浮薄さへの嫌悪からの闇落ち


 一方の「イケメン僧侶」も、初登場は「サソリ使い美女」の毒に侵(おか)された老城主を解毒(げどく)する場面であり――そこでいきなり無遠慮にも「この老人を生かす意味は?」とやらかしたことで、城主の臣下たちの反感を買ってしまう(汗)――、倒れていた行きずりの老夫婦を助ける献身(けんしん)的な姿なども描かれてはいた。
 しかし、その老夫婦が「サソリ使い美女」の魔剣で殺されたことに、自身の行為も老夫婦の命にも「意味はなかった」などと虚無的なことを語りだしてしまう……


 「イケメン僧侶」が「人の命は無意味だ」と語ったことに、「赤い琵琶」の先端に付いたしゃべりまくる「赤鬼」の顔が、


「ロクでもないことに答えを見いだしたら……」


と警戒するのだが、「人を斬ることこそに意味・価値があるのだ」という最悪の「答え」を得てしまい、「イケメン僧侶」が悪党へと転じる契機となっていくのだ。


 それ以降、多数の人間を魔剣の毒牙(どくが)にかけた「イケメン僧侶」は、確かに断罪されて然(しか)るべきである。


 しかし、


「人のにぎわいが理解できない」


と語ったほどに、虚栄的で軽佻浮薄で無意味な喧噪・空騒ぎに明け暮れて悦に入る、俗世間における庶民のリア充(リアル充実)的な生き方には常日頃から疑問を呈(てい)しており、おそらくはそれとは真逆な半生を歩んできたのであろう「イケメン僧侶」が開いた悟(さと)りの境地には、危険な思想かもしれないが、我々のような陰キャ(ラ)・ネクラな人種たちには共感せずにはいられないものがあるのではなかろうか?(汗)


 とはいうものの、「サソリ使い美女」から取り戻した、人の精神をあやつる魔剣を駆使して、「口八丁」にあやつられ尋常(じんじょう)ではない力を発揮する「風来坊」が、


「斬るのではない。その行ないとなった縁(えにし)を断じる!」


として、「イケメン僧侶」とラストバトルを展開する最中、赤い琵琶曰(いわ)く「主役は遅れてやってくる!」と「赤毛の麗人」が途中参戦!
 「風来坊」が空に浮かべた紋章に「口八丁」が「イケメン僧侶」の魔剣を封じこめるといった、最終回ならではの主人公側の華麗な連携(れんけい)プレーによる様式美の連続には、おおいなるカタルシスがあふれていたのだ。


 「ならば一曲、歌いましょう!」との赤い琵琶の合図で、「赤毛の麗人」の声を演じた西川氏の主題歌が流れるエンドロールとなった。



 しかしその直後、赤・青・黄・桃・緑と、スーパー戦隊かよ!?(笑) とつっこみたくなるような妖(あや)しい光の群れが、暗闇の中で会話するさまが描かれる。


 古い世代としては第1次怪獣ブームの時代の特撮時代劇『仮面の忍者 赤影』(67年・関西テレビ 東映)第3クールの「根来(ねごろ)十三忍」編の毎回のラストを彷彿とさせたものだ。
 しかし、この怪しい光の群れこそが「サソリ使い美女」が所属していた闇の組織であり、第1期で魔神を復活させたあとに消息不明となっていた「妖怪女」の「まずは私が!」との高笑いが響き渡った直後、


「第3期決定!」


がクレジットされた!


 実に期待が高まるあおり演出だが、特撮やアニメではない「人形劇」であることから、本作に注目していなかった人はきっと多いことだろう。
 第3期の放映は数年先のことと思われるが、その前に、ぜひ本作の魅力を多くの人々に知ってほしいと、個人的には願わずにはいられない。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年冬号』(19年2月17日発行)~『仮面特攻隊2020年号』(19年12月28日発行)所収『東離劍遊紀2』評より抜粋)



Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2 公式ビジュアルファンブック【書籍】
Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2 オリジナルサウンドトラック
#東離劍遊紀 #東離劍遊紀2 #サンファン #サンダーボルトファンタジー #ThunderboltFantasy #虚淵玄


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